説明

遠心分離方法

【課題】混合物から高比重物質と低比重物質とを分離する遠心分離方法において、分離操作後の低比重物質の回収の際の高比重物質の混入を防ぐ方法を提供すること。
【解決手段】熱可逆性ゲル化剤の溶解物又は熱可逆性ゲルの存在下で遠心分離操作を行い、高比重物質と低比重物質とを隔てる熱可逆性ゲルの層を形成せしめることを特徴とする遠心分離方法。当該遠心分離方法を用いることにより、低比重物質への高比重物質の混入を簡便に防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合物から高比重物質と低比重物質とを分離する遠心分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
混合物から高比重物質と低比重物質とを分離する方法のうち固液分離方法は、濾過分離法と沈降分離法とに大別することができる。濾過分離法は、フィルター、篩い、多孔質膜等の濾過材を用いて、自然重力、加圧力、減圧力、遠心力等を駆動力として濾過操作を行い、固形物質と液状物質とを分離する方法である。沈降分離法は、自然沈降や遠心力を利用した沈降により混合体中の固形物質を沈降させて沈殿物となし、上清の液状物質と分離する方法であり、このうち遠心力を利用する方法は遠心分離法と呼ばれている。
【0003】
遠心分離法等の沈降分離法では、沈殿物と上清とを分ける際に上清に沈殿物が混入する場合がある。特に、沈殿物の上部がスラリー状になる場合には、上清への沈殿物の混入を避けることが困難となる。この問題を解消する手段として沈殿助剤の利用が知られている(例えば特許文献1)。しかしながら、沈殿助剤は固形物質の種類によって適したものを選択する必要があり、さらには適当な沈殿助剤が知られていないものもあるため、汎用性に欠ける。
【0004】
また、遠心分離法は比重が異なる液体の混合物の分離(液液分離)にも利用されているが、遠心分離を利用した液液分離においても、遠心分離操作により最上層に形成された層の分取の際に下層の物質が混入する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/063979号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の従来技術の欠点を解消可能な遠心分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、遠心分離法による固液分離の際にゲル化剤を用いることによって上清への沈殿物の混入を防ぐことが可能であることを見出した。また、遠心分離を利用した液液分離の際にゲル化剤を用いることによって、低比重物質への高比重物質の混入を防ぐことが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、
[1]遠心分離によって混合物を高比重物質と低比重物質とに分離する方法において、熱可逆性ゲル化剤の溶解物又は熱可逆性ゲルの存在下で遠心分離操作を行い、高比重物質と低比重物質とを隔てる熱可逆性ゲルの層を形成せしめることを特徴とする、遠心分離方法、
[2]遠心分離操作が前記ゲル化剤のゲル化温度以下の温度において実施される[1]に記載の方法、
[3]混合物が固液混合物である、[1]に記載の方法、
[4](a)高比重物質、低比重物質、及び熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤を混合する工程、又は高比重物質及び低比重物質を含む混合物に熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤を混合する工程、
(b)高比重物質、低比重物質、及び熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤を含む組成物を加熱して前記ゲル化剤を溶解する工程、並びに(c)前記ゲル化剤のゲル化温度以下の温度での遠心分離工程、を含む[1]に記載の方法、
[5](A)熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤が溶解した溶液を得る工程、(B)工程(A)で得た溶液を、高比重物質及び低比重物質と、又は高比重物質及び低比重物質を含む混合物と混合する工程、並びに(C)前記ゲル化剤のゲル化温度以下の温度での遠心分離工程、を含む[1]に記載の方法、
[6]高比重物質がイオン交換樹脂である、[1]に記載の方法、
[7]イオン交換樹脂がキレート樹脂である、[6]に記載の方法、
[8]熱可逆性ゲルを形成する親水性ゲル化剤、及びイオン交換樹脂を含む組成物、
[9]前記混合物が有機液体及び水性液体を含む[1]に記載の方法、
[10]有機液体がフェノール、クロロホルム、及びイソアミルアルコールからなる群より選択された少なくとも1種であり、かつ水性液体が核酸水溶液である、[9]に記載の方法、
[11]ゲル化剤が親水性ゲル化剤である、[1]に記載の方法、
[12]親水性ゲル化剤がアガロースである、[11]に記載の方法、
[13]工程(b)における加熱の条件が、ゲル化剤が完全に溶解しない加熱条件である、[4]に記載の方法、並びに
[14]さらに、低比重物質を分取する工程を含む、[1]に記載の方法
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、沈降分離法における上清の分取の際に問題となっていた上清への沈殿物の混入を、簡便に防ぐことが可能となる。また、遠心分離を利用した液液分離の際に問題となっていた、低比重物質への高比重物質の混入を、簡便に防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の固液分離方法の一例を模式的に示した図である。
【図2】従来法による米からのDNA抽出における遠心分離操作後の状態を示す図である。
【図3】本発明の方法による米からのDNA抽出における遠心分離操作後の状態を示す図である。
【図4】従来法による植物からのDNA抽出における遠心分離操作後の状態を示す図である。
【図5】本発明の方法による植物からのDNA抽出における遠心分離操作後の状態を示す図である。
【図6】従来法によるホルマリン固定パラフィン包埋組織切片からのDNA抽出における遠心分離操作後の状態を示す図である。
【図7】本発明の方法によるホルマリン固定パラフィン包埋組織切片からのDNA抽出における遠心分離操作後の状態を示す図である。
【図8】実施例6におけるアガロースゲル電気泳動の結果を示す図である。
【図9】実施例6におけるアガロースゲル電気泳動の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について詳細に説明する。なお、以下の記載において%は、特に断らない限り(重量/容量)%のことを示す。
【0012】
本発明の遠心分離方法は、遠心分離によって混合物を高比重物質と低比重物質とに分離する方法において、熱可逆性ゲル化剤の溶解物又は熱可逆性ゲルの存在下で遠心分離操作を行い、高比重物質と低比重物質とを隔てる熱可逆性ゲルの層を形成せしめることを特徴とする。本発明の遠心分離方法は、固液分離方法にも液液分離方法にも適用できる。
【0013】
本発明における「高比重物質」及び「低比重物質」は、高比重物質が低比重物質よりも高い比重を有する限り、特に限定はない。好適な態様において、低比重物質は、本発明の方法によって他の成分と分離することが望まれる、混合物中に含まれる物質又は組成物である。低比重物質は、好適には液体であり、より好適には水性液体である。また、好適な態様において、高比重物質は、本発明の方法によって除去することが望まれる、混合物中に含まれる物質又は組成物である。高比重物質は、液体であっても固体であってもよい。液体の場合、高比重物質は有機液体あっても水性液体であってもよい。
【0014】
本発明に使用される熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤としては、熱可逆的なゾル・ゲル転移を起こし得るゲル化剤であれば特に限定はなく、親水性ゲル化剤であっても親油性ゲル化剤であってもよい。ゲル化剤の溶解物を調製してそのゲル化温度以下の温度で遠心分離操作を行った際に、所望の位置にゲル層を形成するものが本発明に好適である。特に本発明を限定するものではないが、本発明の方法により分離しようとする混合物に水が含まれる場合には、親水性のゲル化剤が好適に使用できる。熱可逆性ゲルを形成する親水性のゲル化剤としては、アガロース、カラギーナン、ジェランガム、タマリンドシードガム、ファーセレラン、ペクチン、及びゼラチンが例示され、このうちアガロースがより好適に例示される。前記ゲル化剤を含む組成物、例えばアガロースを主な成分として含有する寒天をゲル化剤として本発明に使用してもよい。使用するゲル化剤の量は、沈殿操作後のゲル層形成の状態を確認することにより、適宜決定することができる。ゲル層を厚く形成させ、沈殿物等のその下層の物質の上層への混入を確実に防止したいときには、ゲル化剤、固形物質及び液状物質を含む固液混合物中のゲル化剤の濃度を高く設定すればよく、上層の回収量を多くしたい時には、沈殿操作後にゲル層が形成される範囲で前記の固液混合物中のゲル化剤の濃度を低く設定すればよい。特に本発明を限定するものではないが、ゲル化剤としてアガロースを用いる場合には、ゲル化剤、固形物質及び液状物質を含む混合体中のアガロースの濃度としては0.05〜1.0%が好適であり、0.075〜0.75%がより好適であり、0.1%〜0.3%がさらにより好適である。
【0015】
遠心分離操作の条件は、混合物中の低比重物質が上層を形成し、かつ遠心分離操作後に低比重物質と高比重物質とを隔てるゲル層が形成される条件であれば特に限定はなく、ゲル化剤の種類、混合物中のゲル化剤の濃度、ゲル化剤の溶媒となる液状物質の種類等に応じて検討し、決定することができる。本発明を特に限定するものではないが、ゲル化剤としてアガロースを用いる場合には、遠心力としては5000G〜30000Gが好適に例示され、10000G〜20000Gがより好適に例示され、12000G〜18000Gがさらにより好適に例示される。また、遠心分離操作の時間としては、1分〜1時間が好適に例示され、3〜30分がより好適に例示され、5〜20分がさらにより好適に例示される。遠心分離操作の際の温度は、ゲル化剤のゲル化温度以下の温度であればよい。本発明を特に限定するものではないが、例えばゲル化剤としてAgarose L03「TaKaRa」(タカラバイオ社)を用いる場合、遠心分離操作の際の温度は、好ましくは37℃以下であり、より好ましくは34℃以下であり、さらにより好ましくは10℃以下である。なお、本明細書において下層とは、遠心分離操作によって上層として形成される液体層の下部に形成される層を指し、最下層と区別可能な、前記上層以外の層(中間層)を包含する。遠心分離操作後に3層以上の層が形成される場合、遠心分離後に形成されるゲル層は、高比重物質と低比重物質とを隔てることが可能な範囲で、複数の下層のうちどの位置に形成されてもよい。沈殿物が層を形成しない場合には、ゲル層が沈殿物を包み込む形で形成されることもある。また、例えば固形物質が形成する沈殿物よりも比重が高い物質が固液混合物中に存在する場合には、沈殿物や沈殿物の層は遠心分離操作後に最下層に位置するとは限らない。
【0016】
本発明の遠心分離方法は、例えば固液分離に適用可能である。本発明の固液分離方法では、固形物質(高比重物質)、液体(低比重物質)、及び熱可逆性ゲル化剤の溶解物又は熱可逆性ゲルの存在下で遠心分離操作を行い、上層として形成する液層と沈殿物とを隔てるゲル層が形成される。当該方法は、さらに液相を分取する工程を含んでいてもよい。本発明の固液分離方法の一例を模式的に示した図を図1に示す。
【0017】
本発明の固液分離方法では、熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤が溶解した固液混合物を得る工程の後にゲル化剤のゲル化温度以下の条件下で前記混合物全体又はその一部をゲル化させた後、ゲル化した固液混合物を遠心分離操作に供してもよい。
【0018】
本発明の固液分離方法が液層を分取する工程を含む場合、分取の方法に特に限定はない。従来の沈降分離法では沈殿物上部がスラリー状となり液層への沈殿物の混入を防ぐことが困難な場合であっても、本発明の固液分離方法によれば液層への沈殿物の混入が防止されるため、例えばデカンテーションによって液層を分取することもできる。
【0019】
本発明の方法において、高比重物質、低比重物質、及び熱可逆性ゲル化剤の溶解物又は熱可逆性ゲルを含む組成物を得る方法に特に限定はなく、例えば、(a)高比重物質、低比重物質、及び熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤を混合する工程、又は高比重物質及び低比重物質を含む混合物に熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤を混合する工程、並びに(b)高比重物質、低比重物質、及び熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤を含む組成物を加熱して前記ゲル化剤を溶解する工程により得ることができる。こうして得られた組成物を(c)前記ゲル化剤のゲル化温度以下の温度での遠心分離工程に供すれば、高比重物質と低比重物質とを隔てる熱可逆性ゲルの層を形成せしめることができる。
【0020】
例えば、試料である液状物質中の不要な物質を固形物質により除く(例えば前記不要物質を固形物質に吸着させて除去する)ことを目的とする場合、ゲル化剤と固形物質との混合物を予め調製した後、これを液状物質に添加して本発明の方法を実施し、液状物質からの不要物質の除去を行うことができる。この場合、ゲル化剤と固形物質との混合物は、試料への添加が容易になるように、懸濁液の形態として本発明に使用してもよい。また、試料である固形物質から所望の物質を抽出することを目的とする場合、抽出溶媒となる液状物質とゲル化剤とを含む混合物を予め調製した後、これを試料に添加して本発明の方法を実施し、目的物の抽出を行うことができる。さらには、試料からの不要物質の除去(固形物質使用)と所望の物質の抽出(抽出溶媒使用)を同時に行いたい場合には、ゲル化剤、固形物質、及び抽出溶媒を含む混合物を予め調製した後、これを試料に加えて本発明の方法を実施することができる。
【0021】
上記のゲル化剤の形状に特に限定はないが、その後の加熱による溶解が容易な粉末やマイクロゲルが例示される。マイクロゲルとは細かなゲルの集合体であり、ゲル化剤を溶解した溶液を冷却時に撹拌等の力を加えることによってゲルの形成を壊すことにより得られる、あたかも水溶液のような流動性のあるゲルをいう。ゲル化剤をマイクロゲルの形状で用いることにより、混合処理物中のゲル化剤の分散が容易になる。マイクロゲルの作製方法は、公知の文献(例えば、特許第2513506号)を参考にすればよい。
【0022】
上記の不要物質を除去するための固形物質としては、本発明を特に限定するものではないが、イオン交換樹脂、活性炭、シリカゲル、及びアフィニティー樹脂が例示される。また、イオン交換樹脂としては、例えば陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂、及びキレート樹脂が挙げられる。また、抽出の目的物としては、例えばDNA、RNA等の核酸が挙げられる。
【0023】
「(b)高比重物質、低比重物質、及び熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤を含む組成物を加熱して前記ゲル化剤を溶解する工程」では、ゲル化剤をその溶媒となる液状物質に溶解させる。加熱条件は、その後の遠心分離操作においてゲル層を形成する限り、ゲル化剤が液状物質に完全に溶解する条件であってもよく、ゲル化剤が液状物質に部分的に溶解する条件であってもよい。各種ゲル化剤の溶解性は、例えば国崎直道、佐野征男著、「食品多糖類−乳化・増粘・ゲル化の知識」(平文社、2001年11月25日)等に記載されている。加熱条件の設定にあたっては、これらの公知文献を参考にすることもできる。ゲル化剤の溶媒への溶解の状態は、例えばアガロース粉末の水への溶解の場合、目視によって確認することができる。溶解していないアガロース粉末の懸濁水は白く懸濁しているが、水に部分溶解したアガロース粉末は、透明状の粒又は中心部が白く表面が透明の粒(いわゆるままこ)として観察することができる。加熱条件としては、本発明を特に限定するものではないが、例えばゲル化剤としてアガロースを用いる場合、温度条件としては46℃〜120℃が例示され、50℃〜110℃が好適に例示され、55℃〜100℃がより好適に例示される。また、加熱時間としては、1分〜1時間が例示され、2分〜30分が好適に例示され、5分〜20分がより好適に例示される。なお、本工程における加熱により、試料からの目的物の抽出や不要物質の除去をゲル化剤の溶解と同時に行うことが可能な場合もある。
【0024】
(A)熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤が溶解した溶液を得る工程、(B)工程(A)で得た溶液を、高比重物質及び低比重物質と、又は高比重物質及び低比重物質を含む混合物と混合する工程、並びに(C)前記ゲル化剤のゲル化温度以下の温度での遠心分離工程、を含む方法も、本発明の方法の一態様である。
【0025】
熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤と、所望の物質の分離もしくは精製に有用な固形物を混合した本発明の組成物は、前記の本発明の固液分離方法を簡便に行ううえで有用である。本発明の組成物としては、例えば熱可逆性ゲルを形成する親水性ゲル化剤、及び吸着担体を含む組成物が挙げられる。吸着担体としては、イオン交換樹脂、活性炭、シリカゲル、キレート樹脂及びアフィニティー樹脂が例示され、これらから選択された1種をPCR阻害物質吸着樹脂として用いてもよい。
【0026】
例えば、PCR阻害物質吸着樹脂を用いたホルマリン固定パラフィン包埋組織切片からのDNA抽出〔例えば市販のDEXPAT(登録商標、タカラバイオ社)を用いたDNA抽出〕に本発明の方法を適用する場合、本発明の組成物は、熱可逆性ゲルを形成する親水性ゲル化剤、PCR阻害物質吸着樹脂、及び界面活性剤水溶液を含む組成物とすればよい。ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片を入れた容器によく懸濁した前記組成物を注ぎ、これを約100℃で10分間程度加熱した後、ゲル化剤のゲル化温度以下の温度で遠心分離すれば、最下層にキレート樹脂の沈殿、その上にゲル層、上層にホルマリン固定パラフィン包埋組織切片から抽出されたDNAを含む水層が形成される。当該組成物を用いることにより上層と沈殿物の間にゲル層が形成されるため、水層の分取の際にPCR阻害物質吸着樹脂が混入する可能性が大幅に低減され、水層の分取が容易になる。例えば水層は、デカンテーションによって回収することも可能である。従来の方法では、遠心分離操作後のPCR阻害物質吸着樹脂の沈殿の上部がスラリー状となり、また、PCR阻害物質吸着樹脂が透明であるため、水層の分取の際に誤って樹脂が混入してしまう場合があった。PCR阻害物質吸着樹脂(キレート樹脂)はPCR等のその後の核酸操作を阻害する可能性があるため、DNA溶液への混入は可能な限り避けることが好ましい。当該方法により抽出されたDNAを含む水層は、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片に由来する、PCR等のその後の核酸操作を阻害する物質が除去されている。なお、本発明を特に限定するものではないが、PCR阻害物質吸着樹脂を用いたホルマリン固定パラフィン包埋組織切片からのDNA抽出に本発明を適用する場合、親水性ゲル化剤としてはアガロースが好ましい。
【0027】
また本発明の方法に使用するキットとして、熱可逆性ゲルを形成する親水性ゲル化剤、及び吸着担体を含むキットが提供される。当該キットには、例えば核酸増幅反応用の耐熱性ポリメラーゼ、緩衝液、マグネシウム塩、及びdNTP混合液等がさらに含まれていてもよい。
【0028】
本発明の遠心分離方法は、液液分離にも適用可能である。本発明の液液分離方法は、液体混合物を比重の違いにより複数の液層に分離させる遠心分離方法において、所望の位置に層を形成する熱可逆性ゲル化剤を使用することを特徴とする。本発明の液液分離方法により、上層の低比重物質を分取する際の高比重物質の混入を防ぐことができる。本発明の液液分離方法は互いに混和しない2種以上の液体の分離に使用できる。上記の高比重物質としては有機液体が、低比重物質としては水溶液等の水性液体が好適に例示される。すなわち、熱可逆性ゲル、有機液体及び水性液体を含む混合物を得る工程、当該混合物を遠心分離操作に供して最下層に有機層を、その上層にゲル層を、最上層に水層を形成せしめる工程を含む方法は、本発明の液液分離方法の好適な態様の一つである。本発明の液液分離方法によれば、遠心分離工程後の低比重物質の分取の際に低比重物質への高比重物質の混入が防止されるため、例えばデカンテーションによって低比重物質を分取することもできる。
【0029】
本発明の液液分離方法に用いることができる有機液体としては、水よりも比重が高いものであれば特に限定はなく、例えば、フェノール、クロロホルム、及びイソアミルアルコールが例示され、これらのうち2種以上を含む混合液であってもよい。また、上記の水性液体としては、例えば核酸水溶液が挙げられる。上記の熱可逆性ゲルとしては、遠心分離操作の結果所望の位置にゲル層を形成するものであれば特に限定はないが、前記の固液分離方法で熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤として例示したゲル化剤により形成されるゲルが例示される。
【0030】
本発明の液液分離方法は、特に本発明を限定するものではないが、フェノール処理、フェノール/クロロホルム処理、クロロホルム/イソアミルアルコール処理等の核酸水溶液からのタンパク質の除去方法に有用である。これらのタンパク質の除去方法においては、遠心分離操作後に下層に有機層、その上層に変性タンパク質を含む層、最上層に水層が形成されるが、水層を分取する際に変性タンパク質が混入しやすい。本発明の液液分離方法を核酸水溶液からのタンパク質の除去方法に適用すれば、変性タンパク質を含む層と水層との間に熱可逆性ゲルの層を形成せしめることが可能であるため、水層への変性タンパク質の混入を簡便に防ぐことができる。なお、フェノール/クロロホルム処理には、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコールが25:24:1の容量比で含まれる混合液を用いるのが一般的であり、クロロホルム/イソアミルアルコール処理には、クロロホルム:イソアミルアルコールが24:1の容量比で含まれる混合物を用いるのが一般的である。なお、前記の核酸水溶液のフェノール処理、フェノール/クロロホルム処理、クロロホルム/イソアミルアルコール処理においては、あらかじめゲル化させたゲル化剤を溶解することなく使用することができる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例により限定されない。
【0032】
実施例1
ゲル化剤を用いた遠心分離法について、米からのDNA抽出における遠心分離に適用し、試験した。なお、米からのDNA抽出に用いる各試薬は、コメDNA抽出キット〔(精米20粒スケール)(コメ判別用PCR Kit用)、タカラバイオ社〕に添付のものを用いた。
【0033】
Lysis Buffer A 500μLに対し、SeaKem(登録商標) GTG Agarose(Lonza社)を4.5mg、9mg、15mg、又は22.5mg添加し懸濁した4種類の懸濁液を調製した。調製した4種類の懸濁液を沸騰水浴中に移し、アガロースを完全に溶解させた。次に、予め沸騰水浴中で加温したLysis Buffer B 200μLずつを各懸濁液に加えて混合し、これらをアガロース溶液として以下の実験に用いるまで沸騰水浴中で保温した。
【0034】
米20粒を2mLのマイクロチューブに入れた後に540μLの滅菌水を添加したもの5本を調製し、室温で一晩放置した。これらの試料にLysis Buffer Aを300μLずつ加え、塊がなくなるまで米粒を粉砕し、さらにLysis Buffer Bを120μLずつ添加し混合した。Protease K(タカラバイオ社)を10μLずつ添加して混合後直ちに55℃に加温し、1時間保温した。その間、加温開始から10分後、20分後及び40分後に転倒混和を行った。
【0035】
次に、前記の4種類のアガロース溶液を200μL添加し、4種類の試料を調製した。なお、対照として、アガロース溶液の代わりにLysis Buffer(Lysis Buffer A:Lysis Buffer B=5:2)を200μL添加したものも調製した。これら5本の試料について、4℃、17000Gにて10分間の遠心分離操作を行った。
【0036】
遠心分離後、上清(下層にゲル層を形成した試料については水層)を全量回収し計量した。各試料の遠心分離操作時のアガロース濃度、遠心分離操作後の試料の状態、及び遠心分離操作後の上清(水層)の回収量を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
アガロース溶液を遠心分離操作前に試料に添加し、アガロースのゲル化温度以下で遠心分離操作を行うことにより上層に水層が、その下層にゲル層が、最下層に米破砕物の沈殿が形成された。米破砕物と水層との間にゲル層が形成されたため、米破砕物の混入に注意を払うことなく水層を容易に分離できた。一方、対照では上清液を回収する際に米破砕物が混入してしまった。なお、アガロースを添加した試料は水層の回収量が対照に比べて少なくなったが、アガロース濃度が低濃度であるほど水層の回収量が増す傾向が認められた。
【0039】
実施例2
ゲル化剤を用いた遠心分離法について、塩化ベンジル法による植物からのDNA抽出における遠心分離に適用し、試験した。なお、塩化ベンジル法に用いる各試薬は、Plant DNA Isolation Reagent(タカラバイオ社)に添付のものを用いた。
【0040】
滅菌水1mLを1.5mLのマイクロチューブに入れ、そこにSeaKem(登録商標) GTG Agarose(Lonza社)を4.5mg、9mg、15mg、又は22.5mg添加し懸濁した4種類の懸濁液を調製した。調製した4種類の懸濁液を沸騰水浴中に移し、アガロースを完全に溶解させた。これをアガロース溶液として以下の実験に用いるまで沸騰水浴中で保温した。
【0041】
3mm角以下にカットしたホウレン草を50mgずつ5本の1.5mLマイクロチューブに入れ、−20℃で凍結後、室温にて融解した。ピペットマンチップの先端でマイクロチューブの底にホウレン草を10回程度押しつけ、植物組織を磨砕した。ここにExtraction Solution 1を400μLずつ添加し、ボルテックスミキサーにて5秒間撹拌した。スピンダウン後、Extraction Solution 2を80μL添加し、ボルテックスミキサーにて5秒間撹拌した。スピンダウン後、Extraction Solution 3を150μL添加し、ボルテックスミキサーにて5秒間撹拌した後、再度スピンダウンした。
【0042】
次に、前記の濃度が異なるアガロース溶液を120μL添加し、4種類の試料を調製した。なお、対照として、アガロースを添加していないExtraction Solutionの混合液を120μL添加したものも調製した。これらの試料について、4℃、17000Gにて15分間の遠心分離操作を行った。
【0043】
遠心分離後、上層の全量を新しい1.5mLマイクロチューブに回収し計量した。回収した上層について、以下の操作はPlant DNA Isolation Reagentの標準のプロトコルに従い、DNA溶液を調製した。各試料の遠心分離操作時のアガロース濃度、遠心分離操作後の試料の状態、及び遠心分離操作後の上層の回収量を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
アガロース溶液を遠心分離操作前に試料に添加し、アガロースのゲル化温度以下で遠心分離操作を行うことにより、最下層から順に、有機層、植物組織磨砕物の沈殿物の層、白色の層、ゲル層、水層を形成させることができた。なお、白色の層は植物組織由来の多糖類が主成分の沈殿物と考えられる。水層の下にゲル層を形成した試料では、さらに下層の有機層や沈殿物等の混入に注意を払うことなく、上層を回収することができた。一方、対照では軽くマイクロチューブをはじくだけで沈殿(植物残渣やその上層の白色の層の物質)が舞い上がってしまい、上層のみを回収するには相当の注意を払う必要があった。
【0046】
実施例3
ゲル化剤を用いた沈降分離法について、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片からのDNA抽出用試薬における遠心分離に適用し、試験した。
【0047】
ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片からのDNA抽出に用いられるPCR阻害物質吸着樹脂及び特殊界面活性剤溶液の混合体であるDEXPAT(登録商標、タカラバイオ社)に、Agarose L03「TaKaRa」(タカラバイオ社)を終濃度が0.1%、0.2%、0.3%、又は0.4%となるように添加し、懸濁した。
【0048】
4種類の懸濁液のうち500μLずつをそれぞれ別の1.5mLマイクロチューブに移した。また、対照として、アガロースを添加していないDEXPAT(登録商標)500μを1.5mLマイクロチューブに入れたものについても準備した。
【0049】
これら5種類の懸濁液をヒートブロックにて100℃で10分間加熱した後、4℃、17000Gの条件で10分間の遠心分離操作を行った。
【0050】
遠心分離後、上層の全量を新しい1.5mLマイクロチューブに回収し計量した。各試料の遠心分離操作時のアガロース濃度、遠心分離操作後の試料の状態、遠心分離操作後の上層の回収量を表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
アガロースを添加したDEXPAT(登録商標)をアガロースのゲル化温度以下で遠心分離することにより、最下層の沈殿物(樹脂層)と上層の水層の間の中間層にゲル層を形成させることができた。中間層にゲル層を形成した試料では、最下層の樹脂の混入に注意を払うことなく、上層を回収することができた。一方対照では、上層の回収の際に樹脂層上部のスラリー状の沈殿物が混入してしまった。
【0053】
実施例4
ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片からのDNA抽出用試薬における遠心分離をモデル系として、アガロース粉末及び液体物質を含む混合体の加熱条件を検討した。
【0054】
DEXPAT(登録商標)から樹脂を除いた溶液を調製し、終濃度が0.15%になるようにSeaKem(登録商標) GTG Agaroseを添加した。これを7本の1.5mLマイクロチューブに500μLずつ分注し、ヒートブロックを用いて36℃、40℃、45℃、55℃、65℃、75℃、又は85℃で10分間加熱した。加熱後、4℃、17000Gの条件で10分間の遠心分離操作を行い、上層を回収した。加熱後の各試料の状態、遠心分離操作後の各試料の状態、及び遠心分離操作後の上層の回収量を表4に示す。
【0055】
【表4】

【0056】
本実施例の結果から、ゲル化剤が液体に完全に溶解していない部分溶解の状態であっても、その後の遠心分離操作によりゲル層を形成せしめることが可能であることが明らかとなった。
【0057】
実施例5
固液混合物をゲル化した後に遠心分離操作を実施した場合について試験した。
【0058】
DEXPATにSeaKem(登録商標) GTG Agaroseを終濃度が0.15%となるように添加して懸濁した懸濁液500μLを1.5mLマイクロチューブに入れた。これをヒートブロックにて100℃で10分間加熱した後、懸濁液の全体がゲル化するまで4℃で冷却した。その後、4℃、17000Gの条件で10分間の遠心分離操作を行った。
【0059】
その結果、最下層の沈殿物(樹脂層)と上層の水層の間の中間層にゲル層を形成させることができ、240μLの水層を回収することができた。本実施例により、ゲル化剤を溶解した後に固液混合物全体がゲル化した場合であっても、遠心分離操作により固液分離を行うことが可能であることが明らかになった。
【0060】
実施例6
ゲル化剤を用いた沈降分離法について、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片からのDNA抽出用試薬における遠心分離に適用し、従来法との比較を行った。
【0061】
DEXPAT(登録商標)をよく懸濁し、1.5mLマイクロチューブ2本に500μLずつ分注した(ゲル化剤無添加試料)。また、DEXPAT(登録商標)にSeaKem(登録商標) GTG Agaroseを終濃度が0.15%となるように添加し、懸濁した懸濁液500μLを1.5mLマイクロチューブに注いだ(ゲル化剤添加試料)。
【0062】
これらの懸濁液を、ヒートブロックにて100℃で1分間加熱した。加熱した懸濁液の一部をスライドに固定したパラフィン包埋ラット組織切片に滴下した後、切片を薄くスライスし、懸濁液が入った元のマイクロチューブにそれぞれ回収した。続いて、各懸濁液を100℃、10分間加熱した。なお、加熱開始から5分後には、各懸濁液を緩やかに2〜3回転倒混和した。加熱終了後、4℃、17000Gの条件で10分間の遠心分離操作を行い、氷上で5分間静置した後、上清(水層)を回収した。なお、上清の回収の際、ゲル化剤を添加しなかった2つの試料の一方では上清に樹脂層が混入しないよう相当な注意を払い、もう一方の試料ではあえて上清に樹脂層を若干量混入させるようにした。
【0063】
回収した上清を各1μL又は各2.5μLを鋳型として用いて、ラットCCND遺伝子領域を標的としたPCRを行った。PCRは、Ex Taq(タカラバイオ社)を用い、94℃、30秒〜54℃、60秒〜72℃、60秒を1サイクルとする計35サイクルを行った後に72℃で5分間の保温を行う条件で実施した。なお、PCRは、増幅鎖長が異なる2種類のプライマー対についてそれぞれ実施した。164bpの領域を増幅するためのプライマー対の各プライマーの配列を配列表の配列番号1及び配列番号2に、416bpの領域を増幅するためのプライマー対の各プライマーの配列を配列表の配列番号3及び配列番号4にそれぞれ示す。なお、上記のPCRの際には、陰性コントロールとして滅菌水を鋳型溶液の代わりに用いたPCR、及び陽性コントロールとして1ngのラットゲノムDNAを鋳型として用いたPCRについても実施した。
【0064】
PCRの終了後、反応液のうち各8μLをアガロースゲル電気泳動に供した。ラットCCND遺伝子の164bpを標的配列としたPCRの結果を図8に、ラットCCND遺伝子の416bpを標的配列としたPCRの結果を図9に示す。その結果、ゲル化剤添加試料を用いて回収された上清を鋳型として用いた場合(図8及び図9の第5レーン及び第8レーン)には、増幅産物が安定して得られた。一方、ゲル化剤無添加試料のうち、あえて樹脂層を若干量混入させたものを鋳型とした場合には、PCRの阻害が認められた(図8及び図9の第4レーン及び第7レーン)。また、樹脂層が混入しないように相当な注意を払って回収された上清を鋳型とした場合においても、増幅が認められない場合(図8の第6レーン)やスメア状の泳動像となる場合(図9の第3レーン)があった。
【0065】
上記の通り、ゲル化剤を用いない従来の方法では上清の回収の際に沈殿物の混入を避けることが困難であったのに対し、本発明の方法では特別な注意を払うことなく上清への沈殿物の混入を避けることができた。
【0066】
実施例7
ゲル化剤を用いた液液分離方法について検討した。
【0067】
9mgのSeaKem(登録商標) GTG Agaroseを3mLの滅菌蒸留水に懸濁した後、アガロース粉末が完全に溶解するまで100℃に加熱した。これを1.5mLマイクロチューブに750μL注いだ後、4℃に冷却することにより0.3%アガロースゲルを形成させた。次に、大腸菌JM109株を37℃で一晩培養した培養液100μLより菌体を集菌した。ここに200μLの滅菌蒸留水を加えて懸濁した後、100℃、10分間の加熱により菌体を破壊した。この全量(200μL)を前記の0.3%アガロースゲルが形成された1.5mLマイクロチューブに注ぎ、さらにフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(容量比=25:24:1)混合液を200μL添加した後、手で激しく混合した。続いて、17000g、室温、10分間の条件の遠心分離操作を行った。
【0068】
その結果、最下層に有機層が形成され、その上層の変性タンパク質を含む層と最上層の水層との間にゲル層が形成された。これによって、変性タンパク質の混入に注意を払うことなく水層を回収することができた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば従来の遠心分離法で問題となっていた低比重物質への高比重物質の混入を簡便に防ぐことができるため、遠心分離法が使用される幅広い技術分野において有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0070】
SEQ ID NO:1 ; Primer to amplify the DNA fragment of rat CCND gene.
SEQ ID NO:2 ; Primer to amplify the DNA fragment of rat CCND gene.
SEQ ID NO:3 ; Primer to amplify the DNA fragment of rat CCND gene.
SEQ ID NO:4 ; Primer to amplify the DNA fragment of rat CCND gene.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離によって混合物を高比重物質と低比重物質とに分離する方法において、熱可逆性ゲル化剤の溶解物又は熱可逆性ゲルの存在下で遠心分離操作を行い、高比重物質と低比重物質とを隔てる熱可逆性ゲルの層を形成せしめることを特徴とする、遠心分離方法。
【請求項2】
遠心分離操作が前記ゲル化剤のゲル化温度以下の温度において実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合物が固液混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
下記工程(a)〜(c)を含む請求項1に記載の方法:
(a)高比重物質、低比重物質、及び熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤を混合する工程、又は高比重物質及び低比重物質を含む混合物に熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤を混合する工程;
(b)高比重物質、低比重物質、及び熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤を含む組成物を加熱して前記ゲル化剤を溶解する工程;並びに
(c)前記ゲル化剤のゲル化温度以下の温度での遠心分離工程。
【請求項5】
下記工程(A)〜(C)を含む請求項1に記載の方法:
(A)熱可逆性ゲルを形成するゲル化剤が溶解した溶液を得る工程;
(B)工程(A)で得た溶液を、高比重物質及び低比重物質と、又は高比重物質及び低比重物質を含む混合物と混合する工程;並びに
(C)前記ゲル化剤のゲル化温度以下の温度での遠心分離工程。
【請求項6】
高比重物質がイオン交換樹脂である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
イオン交換樹脂がキレート樹脂である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
熱可逆性ゲルを形成する親水性ゲル化剤、及びイオン交換樹脂を含む組成物。
【請求項9】
前記混合物が有機液体及び水性液体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
有機液体がフェノール、クロロホルム、及びイソアミルアルコールからなる群より選択された少なくとも1種であり、かつ水性液体が核酸水溶液である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ゲル化剤が親水性ゲル化剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
親水性ゲル化剤がアガロースである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)における加熱の条件が、ゲル化剤が完全溶解しない加熱条件である、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
さらに、低比重物質を分取する工程を含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−255369(P2011−255369A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104826(P2011−104826)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(302019245)タカラバイオ株式会社 (115)
【Fターム(参考)】