遠赤外線放射および/または吸収装置および室内環境調整システム
【課題】高いエネルギー効率で室内環境の調整を行える遠赤外線放射および/または吸収装置および室内環境調整システムを提供する。
【解決手段】本発明の遠赤外線放射および/または吸収装置は、主軸と、該主軸に対して垂直をなす副軸とを有し、遠赤外線を放射および/または吸収し、副軸の軸方向に延在する複数の放射および/または吸収部材115を含む遠赤外線放射および/または吸収部を複数有する。2つの放射および/または吸収部材115e,115fは、副軸の軸方向と垂直をなす面による断面形状が略V字型になるように配置され、副軸を通り主軸に対して垂直である面の一方側と他方側とにそれぞれ配置される。また、本発明の室内環境調整システムは、環境調整すべき室内空間に上記の遠赤外線放射および/または吸収装置を配置して構成される。
【解決手段】本発明の遠赤外線放射および/または吸収装置は、主軸と、該主軸に対して垂直をなす副軸とを有し、遠赤外線を放射および/または吸収し、副軸の軸方向に延在する複数の放射および/または吸収部材115を含む遠赤外線放射および/または吸収部を複数有する。2つの放射および/または吸収部材115e,115fは、副軸の軸方向と垂直をなす面による断面形状が略V字型になるように配置され、副軸を通り主軸に対して垂直である面の一方側と他方側とにそれぞれ配置される。また、本発明の室内環境調整システムは、環境調整すべき室内空間に上記の遠赤外線放射および/または吸収装置を配置して構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠赤外線を室内に放射し、室内の遠赤外線を吸収することによって快適な環境に室内を調整する遠赤外線放射および/または吸収装置およびその遠赤外線放射および/または吸収装置を備えた室内環境調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
遠赤外線放射物質である石粉を含んだ漆喰が天井面および壁に塗布され、同じ石粉を含んだニスが塗布された床面を有するリビングに遠赤外線放射および/または吸収装置が配置された室内環境調整システムが従来技術として知られている(たとえば、特許文献1)。この遠赤外線放射および/または吸収装置は、冷水および温水を発生できる冷温水発生装置と接続している。また、この遠赤外線放射および/または吸収装置は、細長いアルミニウム板と、アルミニウム板の表面に設けられたコーティング層とを含むフィンを有する。このコーティング層は、天井面および壁に塗布された漆喰および床面に塗布されたニスに含まれる石粉と同じ石粉を含む。フィンの中には、媒質流路が設けられており、その媒質流路の中を冷温水発生装置によって発生した冷水または温水が通過する。これにより、遠赤外線放射および/または吸収装置のフィンは、冷却されたり加熱されたりされ、リビング内に放射されている遠赤外線を吸収したり、リビング内に遠赤外線を放射したりすることができる。また、フィンのコーティング層に含まれる石粉と、天井面および壁に塗布された漆喰および床面に塗布されたニスに含まれる石粉とは同じであるので、熱放射を介した熱交換が高い効率で行われる。これにより、エネルギー効率がよく、しかも室内の垂直方向における温度分布の差が小さく、気流が肌に当たることによる問題が発生しない室内環境調整システムを実現することができる。
【0003】
また、この遠赤外線放射および/または吸収装置のフィンは、壁面に対して斜めに配置されている。これにより、遠赤外線放射および/または吸収装置のフィンは、床面、壁面および天井面から放射される遠赤外線をまんべんなく吸収したり、床面、壁面および天井面へ遠赤外線をまんべんなく放射したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−96485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、室内に放射されている遠赤外線をさらに効率よく吸収し、室内にさらに効率よく遠赤外線を放射することができる遠赤外線放射および/または吸収装置およびその遠赤外線放射および/または吸収装置を備えた室内環境調整システムが望まれている。
【0006】
本発明は、エネルギー効率をさらに高くした室内環境の調整を可能にする遠赤外線放射および/または吸収装置およびその遠赤外線放射および/または吸収装置を備えた室内環境調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の遠赤外線放射および/または吸収装置は、主軸と、該主軸に対して垂直をなし、平行に並ぶ複数の副軸とを有し、遠赤外線を放射および/または吸収し、副軸の軸方向に延在する複数の放射および/または吸収部材を含む遠赤外線放射および/または吸収部を複数有し、複数の遠赤外線放射および/または吸収部は、主軸に沿って並列に配置され、複数の放射および/または吸収部材のうちの2つの放射および/または吸収部材は、副軸の軸方向と垂直をなす面による断面形状が略V字型になるように配置され、 2つの放射および/または吸収部材は、副軸を通り主軸に対して垂直である面の一方側と他方側とにそれぞれ配置され、複数の放射および/または吸収部材は、少なくともその表面またはその表面の近傍に遠赤外線を放射および/または吸収し遠赤外線の放射率が0.6以上である遠赤外線放射物質を含む材料を有する。
また、本発明の室内環境調整システムは、環境調整すべき室内空間に上記の遠赤外線放射および/または吸収装置を配置して構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高いエネルギー効率で室内環境の調整を行える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ZrO2+CaO皮膜とAl2O3+TiO2皮膜とで、放射率の特性が異なることを示す図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態における室内環境調整システムを備えた部屋の概要を示す概念図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態における室内環境調整システムを備えた部屋の壁に配置された遠赤外線放射および/または吸収装置を示すである。
【図4】図4は、軸部の軸方向と垂直をなす面による遠赤外線放射および/または吸収部の断面形状を示す概念図である。
【図5】図5は、部屋の床の断面構造を示す概念図である。
【図6】図6は、部屋の壁の断面構造を示す概念図である。
【図7】図7は、部屋の天井の断面構造を示す概念図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態における冷房効果の原理を説明する概念図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態における冷房作用を説明する概念図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態における暖房効果の原理を説明する概念図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態における暖房作用を説明する概念図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収部とフィンの数が異なる本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収部の変形例を説明するため図である。
【図13】図13は、フィンが突条部を有する、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収部の変形例を説明するため図である。
【図14】図14は、フィンが突条部を有する、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収部の変形例を説明するため図である。
【図15】図15は、フィンが突条部を有する、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収部の変形例を説明するため図である。
【図16】図16は、フィンが突条部を有する、本発明の一実施形態における冷熱放射部遠赤外線放射および/または吸収部の変形例を説明するため図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態における室内環境調整システムは、遠赤外線を放射および/または吸収し遠赤外線の放射率が0.6以上である遠赤外線放射物質を含む材料で構成された室内面構成部材と、室内面構成部材の遠赤外線放射物質と同一の遠赤外線放射物質を含む材料で構成された冷却および/または加熱面を有する冷却および/または加熱源とを具備し、冷却源が冷却されると、その冷却面の遠赤外線放射物質が室内面構成部材の遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を吸収し、および/または、加熱源が加熱されると、その加熱面の遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を室内面構成部材の遠赤外線放射物質が吸収する。
【0011】
室内面構成部材は、遠赤外線放射物質(下記で詳述する)からなる石材で構成されるか、遠赤外線放射物質を混入した材料で構成されるか、または遠赤外線放射物質からなる皮膜を有する。冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面は、遠赤外線放射物質からなる石材で構成されるか、遠赤外線放射物質を混入した材料で構成されるか、または遠赤外線放射物質からなる皮膜で構成される。
【0012】
本発明の一実施形態において、「室内面構成部材」とは、環境調整の対称となる密閉空間に露出した面を構成している部材を指す。密閉空間は、その内部と外部との連絡を可能にするドアや窓などのような開閉手段を備えることができる。密閉空間の代表例は、人間が生活・活動する建物の部屋や廊下などであり、このほかに、物品を保管あるいは陳列する空間(たとえば倉庫内の部屋や、商品のショーケース又は美術品などの展示ケース)、家畜を含めた動物の飼育用の部屋、人間や貨物の輸送用の移動体(自動車、鉄道車両、船舶、航空機など)が備える部屋、などを挙げることができる。人間が居住する住宅を例に挙げれば、室内面構成部材の典型例は、壁、天井、および床を構成している部材(建材)である。壁の一部に取り付けられて部屋の内部と外部とを仕切るために設けられる開閉可能な建具(戸、障子、襖など)も、室内面構成部材に含められる。部屋に付属して設置された収納のための扉や襖なども、室内面構成部材に含められる。環境調整の対象となる部屋に付属する収納のための区画が、扉や襖などで部屋から完全に仕切られない構造の場合、収納区画の部屋に露出した面を構成している部材も、室内面構成部材に含められる。
【0013】
室内面構成部材の少なくとも一部は、本発明の一実施形態において室内環境の調整に必要な遠赤外線を放射および/または吸収する遠赤外線放射物質で構成されるか、遠赤外線放射物質を混入した材料で構成されるか、または遠赤外線放射物質からなる皮膜を有する。遠赤外線の放射および吸収を効率よく行うため、室内面構成部材に混入される遠赤外線放射物質は、室内空間に露出していることが好ましい。とはいえ、室内面構成部材中の遠赤外線放射物質は、室内空間に直接露出されずに、遠赤外線放射物質の遠赤外線の放射および/または吸収を有意に妨げない程度の保護層(たとえば、1mm程度以下の厚さの塗装膜、ニス層、壁紙等)などで覆われていてもよい。
【0014】
「遠赤外線放射物質」は遠赤外線を放射および/または吸収する物質をいうが、本発明の実施形態において遠赤外線放射物質は、遠赤外線の放射率が0.6以上、好ましくは0.8以上の遠赤外線放射物質である。このような遠赤外線放射物質は、通常、いわゆる無機材料であり、天然および人工の鉱物、金属および半金属の酸化物、窒化物、炭化物、硫化物、水酸化物等、炭酸塩などの塩やそれらの複合物(複塩)、炭などのほか、貝殻などの天然素材なども含まれる。また、本発明の実施形態における遠赤外線放射物質の殆どは広義のセラミックス材料(金属以外の無機材料をいう。)であるが、有機物や有機物由来の物質であっても上記放射率の条件を満たすならば用いることができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、遠赤外線放射物質を含む部材中における遠赤外線放射物質の形態は、遠赤外線放射物質を含む部材が遠赤外線を放射および/または吸収できれば格別に制約はなく、代表的には、遠赤外線放射物質からなる一体物(石材)、遠赤外線放射物質の粒子、粉末、骨材等(これらをもまとめて粒子ともいう。)を含む部材、遠赤外線放射物質の皮膜を有する部材などの形態であることができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、「遠赤外線放射物質からなる石材」とは、天然または人工の無機材料からなる固体一体物のことであって、通常はパネルまたはタイル状の建材等として用いられる。天然の石材の例としては、花崗岩、玄武岩、などを挙げることができる。人工的に製造した石材でもよいことはいうまでもない。人造パネル等の建材やその他の一体物部材は、石材と考えることができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、「遠赤外線放射物質を混入した材料」とは、構成成分の一部として遠赤外線放射物質を含む材料をいう。この場合の遠赤外線放射物質は、典型的には天然または人工の無機材料の粒子として、室内面構成部材の製造材料や冷却源および/または加熱源の冷却および/または加熱面の製造材料中に混入される。
【0018】
本発明の一実施形態において、「遠赤外線放射物質からなる皮膜」とは、室内面構成部材や冷却および/または加熱源の表面に形成した遠赤外線放射物質の皮膜をいう。この皮膜は、適当な皮膜形成技術、たとえば熔射、蒸着などのPVD技術、あるいはCVD技術により、遠赤外線放射物質を対象表面にコーティングして形成することができる。
【0019】
本発明の一実施形態では、室内面構成部材の遠赤外線放射物質と、冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面の遠赤外線放射物質とは、同一である。後に詳しく説明するように、本発明の室内環境調整システムは、同一分子種間における熱放射を介した熱移動が、同一分子種間でない場合に比較して高い効率で行われる現象を利用して、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面との間で熱放射を介し熱移動を高い効率で行わせることにより、室内環境の調整を実現するものである。よって、本発明のシステムが所期の機能を発揮するためには、それらの間で熱放射を介した熱移動が行われる室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面とに、同一分子種の物質が存在する必要がある。
【0020】
本発明の一実施形態では、同一分子種で構成されている、室内面構成部材の遠赤外線放射物質と冷却および/または加熱源の遠赤外線放射物質のことを、同一物質であると称する。ここで「同一分子種」とは、遠赤外線を放射および/または吸収する性質を示し、遠赤外線の放射率が0.6以上、好ましくは0.8以上である一方の物質(たとえば、室内面構成部材において使用する遠赤外線放射物質)と、遠赤外線を放射および/または吸収する性質を示し、遠赤外線の放射率が0.6以上、好ましくは0.8以上であるもう一方の物質(冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面で使用する遠赤外線放射物質)とが、分子レベルで同一であることをいう。ここでの「分子」とは、化学結合により結合された原子の集団を意味する。したがって、ここでいう「分子」には、たとえば天然石材を構成する鉱物の結晶なども含まれる。類似元素が置換あるいは固溶した同一鉱物は同一分子種の物質と看做されている。
【0021】
天然の鉱物の場合、複数の化合物で構成されるのが普通であり、しかも巨視的レベルでは鉱物中の部位によりそれらの化合物の結晶構造に違いが見られることもある。とはいえ、この場合は、同じ原産地から切り出した鉱物は、実質的に同じ分子種の物質の実質的に同じ組成の集合体であり、全体として「同一分子種の物質」と同様に考えてよい。
【0022】
室内面構成部材、あるいは冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面において、上述の「遠赤外線放射物質」として無機材料粒子を使用する場合、そこには、「遠赤外線放射物質」としての無機材料粒子以外の物質が共存するのが普通である。たとえば、遠赤外線放射物質としての無機材料粒子を含む漆喰により室内面構成部材を形成した場合や、遠赤外線放射物質としての無機材料粒子を含む塗料を冷却および/または加熱源の表面に塗布した場合、上述の「遠赤外線放射物質」としての無機材料粒子は、漆喰中の骨材あるいは塗料中のバインダー成分などと共存する。
【0023】
このような場合、上述の「遠赤外線放射物質」としての無機材料粒子以外の物質も、遠赤外線を多かれ少なかれ放射および/または吸収する性質を持つ。しかし、本発明の一実施形態では、同一分子種間における熱放射を介した熱移動が同一分子種間でない場合に比較して顕著に高い効率で行われる現象を利用しているので、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面の両者に共通に存在しない物質が本発明において果たす役割は少ない場合がある。
【0024】
したがって、以下における本発明の一時実施形態のシステムの説明において「遠赤外線放射物質」に言及する場合、それは室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面の両者に共通に存在する、遠赤外線放射率0.6以上、好ましくは0.8以上の同一の物質(下記で説明する、電磁波を介した同一分子間における分子振動の共鳴現象を引き起こす物質)を指す。ただし、遠赤外線を放射および/または吸収する物質に言及していて、上述の「遠赤外線放射物質」以外の物質を指すことを明示している場合や、文脈上からそれ以外の物質を指すことが明らかな場合は、この限りでない。
【0025】
室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面とで遠赤外線放射物質としてともに無機材料粒子を使用する場合には、双方の粒子の粒径や形状は同一でも異なっていてもよい。室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面の双方に含まれる無機材料粒子の配合量も、同じである必要はない。また、たとえば、室内面構成部材が壁面と天井面を形成していて、遠赤外線放射物質として無機材料粒子を使用する場合、壁面と天井面の遠赤外線放射物質の粒子の粒径や形状は、同一でも異なっていてもよい。この場合、無機材料粒子は、室内面構成部材(ここでの例では、壁面及び天井面を形成する建材)中に、本発明による同一分子種間での熱放射を介した所期の熱移動を可能にする含有量で配合される。このとき、壁面を形成する建材と天井面を形成する建材とで、無機材料粒子の配合量は同一でも異なっていてもよい。これらは、2以上の壁面のそれぞれにおける遠赤外線放射物質の無機材料粒子についてもいえる。
【0026】
室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面において、遠赤外線放射物質は複数種を用いてもよい。遠赤外線放射物質が石材の場合は、室内面構成部材あるいは冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面のために、2種以上の石材を組み合わせて用いることができる。遠赤外線放射物質が無機材料粒子の場合は、2種以上の無機材料粒子の混合物を用いることができる。どちらの場合も、室内面構成部材における無機材料粒子の組み合わせと冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面における無機材料粒子の組み合わせが同じであれば(同じ組み合わせが含まれていれば)、それらは「同一物質」であるとみなされる。
【0027】
室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面に含まれる遠赤外線放射物質としての無機材料粒子は、同一分子種間での熱放射を介した所期の熱移動を可能にする量でそれらに存在する。通常、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面は、異なる業者により、建設現場以外で製作して建設現場に搬入されるか又は建設現場において施工されることが多いと考えられる。したがって、室内面構成部材と冷却および/または加熱面には、遠赤外線放射物質としての共通の無機材料粒子が、それぞれの製造業者又は施工業者により混入されることが多いと考えられる。
【0028】
このような場合、遠赤外線放射物質としての無機材料粒子の含有量は、それぞれの業者により室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面の各製造材料に含められる共通の無機材料粒子の量をいう。室内面構成部材中および冷却および/または加熱面形成材料中の無機材料粒子含有量は、本発明の一実施形態において熱放射を介した熱移動を実効あるものにする量として決定することができる。その量は、所期の冷房および/または加熱のために必要とされる熱移動量、熱放射を介した熱移動に利用可能な室内面構成部材と冷却および/または加熱面の面積、使用する遠赤外線放射物質の熱放射特性などに依存する。
【0029】
遠赤外線放射物質としての無機材料粒子は、室内面構成部材材料中、あるいは冷却および/または加熱面を形成している材料中に1重量%以上存在する場合に、有効な効果が認められ、3重量%以上存在する場合により好ましい効果が得られる。一方、遠赤外線放射物質として無機材料粒子を用いる場合のその含有量の上限は、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面を形成する材料中に実際上含ませることができる無機材料粒子の最大量によって決まり、とくに制約はない(理論的には、たとえば90重量%でもよい)。しかし、実用上のその最大量は、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面を形成する材料の取り扱い性や、室内面構成部材と冷却および/または加熱面の製造方法などによって決めればよい。
【0030】
本発明の一実施形態では、遠赤外線放射物質の無機材料粒子として、複数種の物質を使用(上述の「分子レベルで同一」である物質を複数種使用)してもよい。この場合には、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面とで同じ無機材料粒子の混合物を用いることができる。この場合の室内面構成部材材料と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面を形成している材料における無機材料粒子の含有量は、混合物中の複数種の同じ物質の合計量でもって表される。
【0031】
特殊な例として、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面とで、同じ無機材料粒子を1種以上含むならば、異なる混合物を使用してもよい。たとえば、第1の壁面(室内面構成部材)では第1の種類の無機材料粒子のみを使用し、第2の壁面(室内面構成部材)では第2の種類の無機材料粒子のみを使用する一方で、冷却および/または加熱面で2種類の無機材料粒子の混合物を使用することも可能である。
【0032】
遠赤外線の放射および吸収を効率よく行うためには、遠赤外線放射物質は極力、環境調整する室内空間に露出していることが好ましい。とはいえ、遠赤外線放射物質が室内空間に直接露出していなくても、1mm程度以下の保護層(たとえば塗装の層、ニスの層、壁紙等)で覆われているのであれば、大きな問題はない。
【0033】
室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面における遠赤外線放射物質は、それらの表面に露出しているもの、またはその近くのものが主に、本発明の一実施形態による同一分子種間における熱放射を介した熱移動に寄与する。したがって、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面が遠赤外線放射物質を混入した材料で構成される場合、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面における遠赤外線放射物質の必要含有量は、本発明の一実施形態における熱移動に寄与する、それらの表面またはそれらの表面の近傍(上述のとおり、室内空間に直接露出していないが表面から1mm程度までの深さに存在する遠赤外線放射物質も、本発明による同一分子種間の熱放射を介した熱移動に寄与することができる)に存在する遠赤外線放射物質の量で表すことが適切である。言い換えれば、本発明における遠赤外線放射物質の含有量は、室内面構成部材の表面と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱用の表面、およびそれらから1mmまでの深さに存在する遠赤外線放射物質の含有量として表すのが適切である。
【0034】
とはいえ、室内面構成部材(上述のとおり、環境調整の対象となる部屋や廊下などの空間(室内空間)に露出した面を構成している部材として定義される)が、紙(たとえば壁紙)や塗装した塗膜などの薄いフィルムまたはシート状材料で構成されようと、漆喰などから形成した有意の厚さの層状材料で構成されようと、あるいはコンクリートなどから成形された、構造部材を兼ねる一体物の材料で構成されようと、それらの材料が均一混合物である限り、それらの表面とその近傍(たとえば1mmの深さまで)における遠赤外線放射物質の含有量(ここでは、室内面構成部材材料中に占める遠赤外線放射物質の重量割合として表される)は、室内面構成部材材料の全体に占める遠赤外線放射物質の重量割合として表される含有量と同じであると見なすことができる。
【0035】
よって、本発明の一実施形態において室内面構成部材における遠赤外線放射物質の含有量は、室内面構成部材が均一混合物(構成成分の分布が部材の全体にわたり一定である混合物)からなるとみなせる場合、その材料の全体に占める遠赤外線放射物質の重量割合として表される含有量でもって表すこととする。室内面構成部材が均一混合物からなるとみなせない場合(たとえば、部材の厚さ方向において構成成分の分布に偏り(濃度分布)がある場合)には、室内面構成部材における遠赤外線放射物質の含有量は、室内空間に露出した面から1mmまでの深さに存在する遠赤外線放射物質の平均の含有量(重量割合として表される)で表される。これらは、遠赤外線放射物質を混入した材料で構成された冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面についても当てはまる。
【0036】
本発明の一実施形態で使用する遠赤外線放射物質の遠赤外線の放射率は、0.6以上であり、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上である。遠赤外線は、波長が3〜1000μmの電磁波のことをいう。材料の放射率は、同一条件における理想的な黒体の遠赤外線の放射エネルギーをW0とし、当該材料の遠赤外線の放射エネルギーをWとした場合に、W/W0によって定義される。放射率の値は、本発明の一実施形態のシステムの実際の使用温度に近い室温(たとえば25℃)におけるものが好ましく、たとえば、人体に対する熱的な作用の大きい10μm付近における値を採用する。
【0037】
本発明の一実施形態において、「冷却および/または加熱面」とは、室内面構成部材との間の熱放射を介した熱移動によって室内面構成部材の冷却および/または加熱を行う冷却および/または加熱源の、当該熱移動に関与する「面」を指す。言い換えれば、「冷却および/または加熱面」とは、冷却および/または加熱源のうちの、室内面構成部材の遠赤外線放射物質と同じ遠赤外線放射物質が存在する部分の表面を指す。上述のとおり、遠赤外線放射物質は、この表面に露出していることが好ましいとはいえ、1mm程度以下の保護層で覆われていても差し支えない。冷却源の冷却面が冷却されると、その冷却面の遠赤外線放射物質が室内面構成部材の遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を吸収し、加熱源の加熱面が加熱されると、その加熱面の遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を室内面構成部材の遠赤外線放射物質が吸収する。
【0038】
本発明は、同一分子種間における熱放射を介した伝熱(熱移動)が、同一分子種間でない場合に比較して高い効率で行われる現象を利用したもので、フィンを冷却し、1次的な冷放射源とすることで、部屋の内面(たとえば壁面)を人体からの遠赤外線の吸収部材(2次的な冷放射源)として機能させ、人体を冷やす冷房効果を得る点を基本的な発明思想としている。また、この原理と逆の原理として、上記フィンを逆に加熱し、熱の供給源(1次的な熱放射源)とすることで、部屋の内面を遠赤外線の放射部材(2次的な熱放射源)とし、部屋の内面が、人体から吸収する遠赤外線の量を減らし、それにより人間が寒いと感じる感覚を和らげる暖房効果を得る点を基本的な発明思想としている。
【0039】
たとえば、部屋の内面の全体を冷水による冷却面または温水による加熱面とするのは、コストやインテリア性の点から困難である。しかしながら、部屋の内面の一部を冷放射源または熱放射源として利用することで、冷房時には、人体を囲む多方向への人体からの熱放射を周囲に吸収させ、暖房時には、人体を囲む多方向への人体からの熱放射を減少させることができる。そのため、冷却面または加熱面の面積が制限され、またその設置場所が制限されていても、部屋内面全体を使った熱放射を利用した冷房または暖房を行える。
【0040】
以下、同一分子種間における熱放射を介した熱交換が高い効率で行われる原理について説明する。同一分子種間における熱放射を介した熱交換が高い効率で行われるのは、同一分子種の物質(同一組成および同一分子構造を持った物質)であれば、電磁波を介した同一分子間における分子振動の共鳴現象が起こるからである。遠赤外線を介して行われる熱交換の場合、以下、この共鳴現象を遠赤外共鳴と呼ぶ。これは、同じ固有振動周波数の音叉間における音波エネルギーの伝搬現象、あるいは同じ同調周波数の同調回路間における電気信号の伝達や電磁波の伝搬現象において、エネルギーの伝達が高い効率で行われるのと類似な現象として理解できる。
【0041】
以下、データに基づいて、この原理について説明する。図1(a)と図1(b)は、遠赤外放射材料の電磁波の波長に対する放射率のデータとして、それぞれZrO2+CaOとAl2O3+TiO2の熔射皮膜(厚さ400μm)を600℃に加熱した場合における放射特性を示している。なお、ZrO2とCaOの成分比、およびAl2O3とTiO2の成分比はそれぞれ1:1(重量比)である。
【0042】
図1(a)と図1(b)には、ZrO2+CaO皮膜とAl2O3+TiO2皮膜とで、波長に対する放射率の特性が異なることが示されている。これは、遠赤外線放射物質の組成が異なれば(つまり分子種が異なれば)、波長に対する放射率の特性が異なることを示している。
【0043】
ここで、両皮膜間に温度差を与え、ZrO2+CaO皮膜を相対的に高温、Al2O3+TiO2皮膜を相対的に低温とし、ZrO2+CaO皮膜から放射される遠赤外線をAl2O3+TiO2皮膜に吸収させる場合を考える。キルヒホッフの法則より、放射率は、その材料の吸収率と同じあるから、理想的な条件を考えた場合、放射率が一致する波長において、ZrO2+CaO皮膜から放射され、Al2O3+TiO2皮膜に向かう遠赤外線は、Al2O3+TiO2皮膜に100%吸収される。つまり、両皮膜間において遠赤外線共鳴が起こり、エネルギーの輸送効率という観点で見ると、損失がない放射エネルギーのやり取りが行われる。このように、遠赤外線共鳴が起こることによって、少ない損失で遠赤外線が吸収されることを以下、共鳴吸収と呼ぶ。
【0044】
一方、ZrO2+CaO皮膜の放射率がAl2O3+TiO2皮膜の放射率よりも大きな値となる波長では、この放射率(吸収率)の差に起因して、ZrO2+CaO皮膜から放射された遠赤外線の一部は、Al2O3+TiO2皮膜に吸収されない。これは、放射率=吸収率であるから、その波長において(物質Aの放射率>物質Bの放射率=物質Bの吸収率)であれば、物質Aから放射された放射エネルギーの一部が物質Bに吸収されないからである。たとえば、ある波長において、物質Aの放射率が0.9であり、物質Bの放射率が0.1である場合、両皮膜間において遠赤外線共鳴は少ししか起こらず、物質Aから放射された当該波長の遠赤外線は、物質Bで僅かしか吸収されず、そのほとんどは反射される。これは、エネルギーの輸送効率という観点で見ると、損失を伴う放射エネルギーのやり取りであるといえる。
【0045】
また、温度差の関係を逆とし、ZrO2+CaO皮膜に、Al2O3+TiO2皮膜から放射される遠赤外線を吸収させる場合を考えると、同様な理屈により、放射率が一致する波長において、遠赤外線共鳴が起こり、ZrO2+CaO皮膜に向かって、Al2O3+TiO2皮膜から放射される遠赤外線は、ZrO2+CaOに100%吸収される(理想的な条件の場合)。しかしながら、ZrO2+CaOの放射率がAl2O3+TiO2の放射率よりも小さい波長では、両皮膜間において遠赤外線共鳴はあまり起こらず、Al2O3+TiO2から放射された当該波長の遠赤外線の一部は、ZrO2+CaOに吸収されず、損失が発生する。
【0046】
つまり、波長に対する放射率の特性の異なる材料間(すなわち、異なる分子種間)では、理想的な場合であっても、熱放射のやり取りにおいて損失が発生する。一方、波長に対する放射率の特性の同じ材料間(すなわち、同一の分子種間)では、理想的な状況において、遠赤外線共鳴により、熱放射のやり取りにおいて損失が発生しない。本発明の一実施形態は、同一分子種間における熱放射を介した熱交換が高い効率で行われる上述の遠赤外線共鳴の原理に基づく室内環境調整システムを提供するものである。
【0047】
図面を参照して本発明の一実施形態の室内環境調整システムをより具体的に説明する。本発明の一実施形態におけるシステムでは、同一分子種間における熱放射を介した伝熱が高い効率で行われる現象を利用して、室内面構成部材と冷却源の冷却面との間で熱放射を介した伝熱を高い効率で行わせることにより、冷房効果を得ている。
【0048】
このシステムにおいて、冷却面での除湿は、副次的な効果に過ぎない。冷却面は、冷媒などにより冷却されることで、冷房効果を発揮する。その際に、冷やされた冷却面の温度が室内環境中に存在する湿分の露点以下に低下した場合に、冷却面で結露が生じ、その結果実質的に除湿がなされることになる。空気中の湿分は遠赤外線の吸収物質であるので、壁面などの室内面構成材料の遠赤外線吸収機能や、人体から室内面構成部材への遠赤外線吸収を阻害する傾向を有する。したがって、冷却面での結露の結果として室内環境の除湿がなされると、本発明の一実施形態におけるシステムによる放射を利用した冷房効果の効率を高めることができる。さらに、除湿の結果、不快指数が下げられるので、この点でも冷房効果を高めることができる。
【0049】
このように、本発明の一実施形態におけるシステムにおいて、除湿は有利ではあるが、不可欠なわけではなく、除湿が行われるかどうかは、本発明の一実施形態におけるシステムを適用した室内環境の湿度と、冷媒などで冷やされた冷却面の温度とに依存する。
【0050】
図2は、本発明の一実施形態における室内環境調整システムを備えた部屋の概要を示す概念図である。図2(a)は部屋の平面図であり、図2(b)は図2(a)のA−A’断面図である。図2には、部屋100が示されている。ここで部屋100は、一戸建てや集合住宅等の住居用の部屋である。部屋100は、6面体形状の室内空間101を備えている。部屋は、床200、壁300および天井400により構成されている。ここで、床200、壁300および天井400に含まれる材料が室内面構成材料に対応する。また、部屋100には、遠赤外線放射および/または吸収装置110が配置されている。遠赤外線放射および/または吸収装置110の詳細については後述する。
【0051】
図2に示す遠赤外線放射および/または吸収装置110は、冷放射と熱放射を切り換えて行うことができる装置である。冷放射というのは、冷却されることで、周囲からの熱放射を吸収する作用のことをいい、熱放射というのは、加熱されることで、周囲に向かって熱放射を行う作用のことをいう。
【0052】
図2に示すように遠赤外線放射および/または吸収装置110は、室外機である冷温水発生装置111に接続されている。冷温水発生装置111は、ヒートポンプ機能を備え、冷水または温水を発生する。このヒートポンプ機能は、通常のエアコン等に用いられているものと同じ原理により動作する。なお、冷房効果だけを得るのであれば、冷水の発生機能だけでよい。また、暖房効果だけを得るのであれば、温水の発生機能だけでよい。
【0053】
遠赤外線放射および/または吸収装置110に、冷温水発生装置111から冷水が供給されると、後述するフィンが冷やされ、結露による除湿が行われる。また冷却されることで、フィンの表面は、冷放射を行う冷却面として機能する。すなわち、上述の冷却源はフィンに対応し、冷却面はフィンの表面に対応する。また、遠赤外線放射および/または吸収装置110に、冷温水発生装置111から温水が供給されると、上記フィンが温められ、このフィンの表面が加熱面(熱放射面)として機能する。すなわち、上述の加熱源はフィンに対応し、加熱面はフィンの表面に対応する。なお、冷水というのは、冷温水発生装置111の冷却機能によって冷却された水のことであり、温水というのは、冷温水発生装置111の加熱機能によって加熱された水のことをいう。なお、上記フィンに結露した水滴は、樋に滴下させて集められ、屋外に排水される。
【0054】
図3は、本発明の一実施形態における室内環境調整システムを備えた部屋の壁に配置された遠赤外線放射および/または吸収装置を示すである。図3(a)は遠赤外線放射および/または吸収装置110の正面図であり、図3(b)は、図3(a)のB−B’断面図である。遠赤外線放射および/または吸収装置110は、部屋100(図2参照)の床面113と壁面114に固定されている。遠赤外線放射および/または吸収装置110は、アルミニウムにより構成され、上下方向に延在する複数の遠赤外線放射および/または吸収部115を備えている。遠赤外線放射および/または吸収装置110は、熱伝導の良好な他の金属または合金材料、たとえばアルミニウム、鉄および銅など、またはそれらの合金など、で製作することもできる。
【0055】
遠赤外線放射および/または吸収装置110は、複数の遠赤外線放射および/または吸収部115、給水パイプ117、排水パイプ118、支柱119,120、樋121および排水管122を含む。ここで、遠赤外線放射および/または吸収装置110の構成要素の配置を明確に説明できるようにするために、便宜上、吸水パイプ117の軸を主軸とし、その主軸を基準に遠赤外線放射および/または吸収装置110の構成要素を説明する。
【0056】
図3および図4を参照して、遠赤外線放射および/または吸収装置110に設けられた遠赤外線放射および/または吸収部115を詳細に説明する。図3に示す遠赤外線放射および/または吸収装置110では、複数の遠赤外線放射および/または吸収部115は、主軸117と垂直をなし、主軸117に沿って並列に配置されている。また、遠赤外線放射および/または吸収部115は、壁面114と平行に並んでいる。遠赤外線放射および/または吸収部115の内部は、たとえばアルミニウムから作製される。図4は、後述の軸部の軸方向と垂直をなす面による遠赤外線放射および/または吸収部115の断面を示す概念図である。遠赤外線放射および/または吸収部115は、軸方向に延びる媒質流路115hが中に設けられている軸部115aと、軸部115aから放射状に延出し、軸部115aの軸方向に延在する6つのフィン115b〜115gとを有する。また、隣接するフィン115b〜115g同士のなす角度は40〜65°程度である。水などの媒質が媒質流路115hを通過する。
【0057】
6つのフィン115b〜115gのうち、2つのフィン115d,115gは、主軸117の軸方向に延在している。4つのフィン115b,115c,115e,115fは主軸117の軸方向に対して15〜75°程度の範囲の角度で、好ましくは約40〜約65°程度の範囲の角度で、より好ましくは約60°の角度で、斜めに配置されている。
【0058】
主軸117の軸方向に延在しているフィン115d,115gの主軸117の軸方向の長さは、主軸117と軸部115aの軸(以下、副軸と呼ぶ)とからなる面に他のフィン115b,115c,115e,115fを投影したときの影の長さに比べて小さい。これにより、遠赤外線放射および/または吸収部115同士の間隔を詰めて遠赤外線放射および/または吸収部115の配列密度を高めた場合でも、隣接する2つの遠赤外線放射および/または吸収部115のフィン115d,115g同士が重ならないようにできる。また、これにより、隣接する2つの遠赤外線放射および/または吸収部115におけるフィン115d,115g同士の間に隙間ができ、この隙間によって遠赤外線放射および/または吸収装置110を掃除しやすくなる。この隙間の大きさは、たとえば約4〜約5cmである。複数の遠赤外線放射および/または吸収部115は、主軸117と垂直をなし、主軸117に沿って並列に配置されているので、副軸は、主軸と垂直をなし、平行に並んでいることになる。
【0059】
フィン115b〜115gの表面は、冷却面および/または加熱面として機能する。そして、フィン115b〜115gは、冷放射源および/または熱放射源として機能する。冷却面は、結露により除湿を行う除湿面として機能することもできる。
【0060】
図4に示すように、フィン115b〜115gの表面には、遠赤外線の放射率が0.9を超える数値を示す花崗岩を粉砕した粉砕物(以下、石粉という)を混ぜた白い塗料により構成された厚さ約200μmのコーティング層115iが形成されている。なお、フィンの表面にさらに別の層を設けて、表面の近傍にコーティング層が存在するようにしてもよい。コーティング層115i中の石粉の粒径は、50μm以下とされている。この石粉のコーティング層115iにおける含有率は、塗料の硬化状態(乾燥状態)で20重量%とされている。より具体的には、このコーティング層115iが冷却面および加熱面として機能する。軸部115aにもコーティング層115iを設けてもよい。軸部115aにおいても遠赤外線を放射および/または吸収することができ、冷房および/または暖房の効果を高めることができる。
【0061】
図3(a)に示すように、遠赤外線放射および/または吸収部115の上部には、給水パイプ117が設けられ、その下部には、排水パイプ118が設けられている。給水パイプ117と排水パイプ118とは、遠赤外線放射および/または吸収部115を支持する支持部材としても機能する。給水パイプ117は、各遠赤外線放射および/または吸収部115の軸部115aの上端において媒質流路115h(図4参照)の上端と接続し、排水パイプ118は、各遠赤外線放射および/または吸収部115軸部115aの下端において媒質流路115h(図4参照)の下端と接続している。また、給水パイプ117と排水パイプ118のそれぞれは、屋外に配置された冷温水発生装置111(図2参照)に接続されている。
【0062】
図2に示す冷温水発生装置111から供給された冷水または温水は、給水パイプ117から遠赤外線放射および/または吸収部115内部の媒質流路115hに供給され、遠赤外線放射および/または吸収部115内部の媒質流路115hを下方に向かって流れ、排水パイプ118を介して、冷温水発生装置111に回収される。この回収された冷水または温水は、冷温水発生装置111において、再び冷却または加熱され、給水パイプ117に供給される。この冷水または温水の循環により、遠赤外線放射および/または吸収部115のフィン115b〜115gの温度調整が行われる。
【0063】
図3(a)に示すように、遠赤外線放射および/または吸収部115を上下から支持した給水パイプ117と排水パイプ118の両側は、支柱119と120により支えられている。支柱119と120の下端は、床面113に固定され、支柱119と120の上部が壁面114に固定されている。遠赤外線放射および/または吸収部115の下方には、断面が上方に向かって凹型またはV型を有する樋121が配置されている。樋121は、結露する水滴を集める水滴収集手段の一例である。樋121は、支柱119および120によって支えられ、図の左方向に傾斜する構造とされている。樋121の左端は、屋外に延長した配水管122に接続されている。この例では、結露によりフィンに付着した水滴は、樋121に滴下し、それにより樋121に集められ、最終的に排水管122から屋外に排水される。
【0064】
図示するように、遠赤外線放射および/または吸収部115における4つのフィン115b,115c,115e,115fは主軸117の軸方向に対して15〜75°程度の範囲の角度で、好ましくは40〜65°程度の範囲の角度で、より好ましくは約60°の角度で、斜めに配置されている。これにより、部屋100内のどの場所から見ても、フィン115b,115c,115e,115fのいずれかのフィンの面を、フィンの面に対して垂直の方向に近い方向から見ることができる。言い替えると、部屋100のどの部分からの遠赤外線も、フィンの面に対して垂直の方向に近い方向からフィンの面に到達する。これにより、フィンの面に到達した遠赤外線は、フィンの表面のコーティング層に効率よく吸収される。
【0065】
一方、1枚の平板のフィンで遠赤外線放射および/または吸収部を構成した場合、フィンの面に対して斜め方向(フィンの面に対する垂直の方向とのなす角度が大きな方向)から遠赤外線がフィンの面に入射する場合もある。この場合、フィンの表面で反射する遠赤外線の割合が高くなる場合があるので、フィンにおける遠赤外線の吸収効率が低くなる場合がある。
【0066】
また、4つのフィン115b,115c,115e,115fは主軸117の軸方向に対して15〜75°程度の範囲の角度で、好ましくは40〜65°程度の範囲の角度で、より好ましくは約60°の角度で、斜めに配置されているので、フィン115b,115c,115e,115fの表面から、部屋100の壁300に遠赤外線をまんべんなく放射することができる。
【0067】
遠赤外線放射および/または吸収部115における4つのフィン115b,115c,115e,115fと、副軸115aを通り主軸117に対して垂直である面とのなすそれぞれの角度は、好ましくは約25〜約65°であり、より好ましくは約30°または約45°である。これにより、部屋100内のどの場所から見ても、フィン115b,115c,115e,115fのいずれかのフィンの面を、フィンの面に対して垂直の方向に近い方向から見ることができ、フィンの面に到達した遠赤外線は、フィンの表面のコーティング層に効率よく吸収される。
【0068】
また、遠赤外線放射および/または吸収部115は、6つのフィン115b〜115gを有することによって、フィンの総面積を大きくできる。これにより、遠赤外線放射および/または吸収部115における遠赤外線の吸収量または放射量は大きくなり、遠赤外線放射および/または吸収部115における冷却および除湿の効率も高くなる。
【0069】
図2に示す部屋100の床200は、一般的な材料を用いた板張り(いわゆるフローリング)である。図5〜7は、本実施形態で用いた建材の構造を示す概念図である。図5には、部屋100の床200の断面構造が概念的に示されている。図5に示すように部屋100の床200は、建物の躯体201の上にアルミ箔203による、遠赤外線を反射する反射面を備えた断熱パネル202、および板材204を積層した断面構造を有している。
【0070】
板材204の表面は、2層のニス層205と206が表面保護層として形成されている。板材204に接したニス層205は、上述したフィン115b〜115g(図4参照)の表面に付着させたのと同じ石粉を0.5μm以下にさらに粉砕したものを乾燥状態において10重量%含んでいる。このニス層205は、ニスの原料に石粉を混ぜ、よく攪拌し、それを通常のニスと同様に塗布し、乾燥させることで得ている。ニス層206は、最表面の保護層であり、ニス層205と同じニスの原料に石粉を混ぜていないものを用いて形成されている。
【0071】
図2に示す部屋100の壁300は、厚さ約3mmの漆喰の壁面を備えている。この漆喰の壁面には、漆喰の原料に上述した石粉(粒径5μm以下)を硬化状態で5重量%となるように混ぜている。図6にこの壁300の断面構造を示す。図6には、壁300の基礎となる躯体301が示されている。躯体301には、アルミ箔302を躯体301側に備えた石膏ボード303が貼られている。石膏ボード303の室内側には、上述した石粉入りの漆喰が塗られ、厚さ約3mmの漆喰の壁面304が形成されている。
【0072】
部屋100の天井400の面も壁300と同じ構造の漆喰の面とされている。部屋100の天井部分の断面構造を示す図7には、天井400の基礎となる躯体401が示されている。躯体401の室内側には、躯体401側にアルミ箔402を備えた石膏ボード403が貼られ、石膏ボード403の室内側に、上述した石粉入りの漆喰が塗られ、厚さ約3mmの漆喰の天井面404が形成されている。
【0073】
次に、実施形態における冷房の原理について説明する。本発明の一実施形態における室内環境調整システムは、室内にいる人間の体に放射熱を吸収させて人間に涼しさを感じさせる技術であるので、ここでは、冷房という語を、室内にいる人間が涼しさを感じるようにする作用という意味で用いる。図8は、本実施形態における冷房効果の原理を説明する概念図である。図8(a)は部屋100の平面図であり、図8(b)は図8(a)のC−C’断面図である。冷温水発生装置111において、冷水を生成し、それを遠赤外線放射および/または吸収装置110に供給することで、冷房が行われる。
【0074】
遠赤外線放射および/または吸収装置110のフィン115b〜115g(図3、4参照)が冷水により冷却されると、フィン表面のコーティング層に含まれる石粉の温度が下がる。この結果、遠赤外線放射および/または吸収装置110のフィンからの遠赤外線の放射エネルギー密度(放射エネルギー量)は、同一組成の石粉を含んだ部屋100の床200、壁300、および天井400からの放射エネルギー密度に比較して低くなる(具体的にいうと、熱放射量計の測定値が小さくなる)。この差に起因して、部屋100の床200、壁300、および天井400から、遠赤外線放射および/または吸収装置110のフィンに向かって相対的な熱放射が生じる。この時、両方に同じ遠赤外線放射物質(石粉)が含まれているので、部屋100の床200、壁300、および天井400(以下、これらをまとめて内面と表現する)と、遠赤外線放射および/または吸収装置110のフィンとの間で行われる遠赤外線を介した熱エネルギーの移動は、高い効率で行われる。図8(a),(b)には、この際の熱放射(遠赤外線)が矢印41により概念的に示されている。
【0075】
この際、同一分子種間における熱放射エネルギーの交換効率が高い原理が作用するので、両者の間で行われる放射エネルギー密度は、同一分子としない場合に比較して大きい。こうして、部屋100の石粉を含んだ内面部分は、遠赤外線放射および/または吸収装置110に遠赤外線を吸収された分、室内空間に向かって放出する熱放射量が低下した状態となる。この結果、人体43が発する熱放射量との差が大きくなり、人体43から放射された遠赤外線が部屋100の石粉を含んだ内面部分に吸収されやすい状態となる。もちろん、部屋100内にいる人間の人体43から、遠赤外線放射および/または吸収装置110に直接吸収される熱放射もある。こうして冷房効果が得られる。
【0076】
図9は、冷房作用を説明する概念図である。図9(a)は部屋100の平面図であり、図9(b)は図9(a)のD−D’断面図である。上述したように、部屋100の内面が、部屋100内にいる人間の人体43からの熱放射を吸収しやすい状態とされることで、図9(a),(b)の波線の矢印42で示されるように、人体43から周囲への熱放射が、壁300や天井400、さらに床200に吸い取られる。これにより、人体43から熱放射の形で熱が奪われ、涼しいと感じる冷房効果が得られる。
【0077】
この冷房効果は、部屋の内面全体から熱放射の形で人体43から熱が吸収される形となる。このため、壁等における単位面積当たりの熱吸収能力が、遠赤外線放射および/または吸収装置110より小さくても、当該部屋内面の面積および人体43を囲む角度範囲で効いてくる。人間は、周囲にまんべんなく熱放射を行うので、部屋内面の全体で熱を熱放射の形で吸収するようにすることで、人体43から効率よく熱が吸収され、高い冷房効果(低い体感温度)が得られる。また、この効果は、室温を1〜2℃程度下げるだけであるが、人体から直接放射熱というかたちで、熱量が床面200、壁面300および天井面400に奪われるので、室温の低下以上に人間43は涼しさを感じることができる。
【0078】
このように、人体が発生する放射熱の吸収作用を利用することで、室温の温度低下が僅かであっても有意な冷房効果を得ることができる。この際、冷気の流れを利用しないので、冷気が肌に当たることによる弊害の発生を抑えることができる。また、空気中の遠赤外線吸収成分からの放射熱の吸収は、室内において偏りなく行われるので、室内の垂直方向における温度分布の偏りを小さくでき、エネルギーの利用効率を高くすることができる。また、室温の低下が僅かであるので、所謂冷房病の症状の発生を抑えることができる。
【0079】
また、本発明の一実施形態による人体からの放射熱を吸収させる方式の冷房は、冷房効果の立ち上がりが速く、いわゆる冷房の利きの即効性が高い。このことも、高い快適性と無駄なエネルギーの消費を下げる上で有用となる。とくに、人体43からの放射熱が床面200、壁面300および天井面400の3面に吸収されるので、人体の冷却効果が高い。
【0080】
また、冷房に必要な電力は、通常の冷房に比較して少なくて済むので、省エネルギーを達成することができる。とくに太陽電池を利用して冷房効果を得る場合、商用電力を利用せずに効果的に冷房効果を得ることができる。
【0081】
次に、本発明の一実施形態における暖房の原理について説明する。本発明の一実施形態における室内環境調整システムは、室内にいる人間の体に放射熱を吸収させて人間に温かさを感じさせる技術であるので、ここでは、暖房という語を、室内にいる人間が温かさを感じるようにする作用という意味で用いる。図10は、本実施形態における暖房効果の原理を説明する概念図である。図10(a)は部屋100の平面図であり、図10(b)は図10(a)のE−E’断面図である。冷温水発生装置111において、温水を生成し、それを遠赤外線放射および/または吸収装置110に供給することで、暖房が行われる。
【0082】
遠赤外線放射および/または吸収装置110のフィン115b〜115g(図3、4参照)が温水により加熱されると、フィン表面のコーティング層に含まれる石粉の温度が上がる。この結果、遠赤外線放射および/または吸収装置110のフィン115b〜115gから遠赤外線が室内空間101に放射される。図10には、遠赤外線放射および/または吸収装置110から放射される遠赤外線が符号44で示す矢印により概念的に示されている。
【0083】
遠赤外線放射および/または吸収装置110から放射された遠赤外線は、一部が人間43および室内空間101内の空気中の遠赤外線吸収成分に吸収され、他は床200、壁300および天井400に吸収される。この際、(1)床200、壁300および天井400は加熱されておらず(つまり、遠赤外線放射および/または吸収装置110よりも温度が低く)、さらに(2)床200、壁300および天井400は、遠赤外線放射および/または吸収装置110からの遠赤外線の発生源となるフィンの表面のコーティング層に含まれる石粉と同一の石粉が含まれているので、遠赤外線放射および/または吸収装置110が放射した遠赤外線は効率よく床200、壁300および天井400に吸収される。
【0084】
図11は、本発明の一実施形態による暖房作用を説明する概念図である。図11(a)は部屋100の平面図であり、図11(b)は図11(a)のF−F’断面図である。遠赤外線放射および/または吸収装置110からの遠赤外線を吸収した床200、壁300および天井400は、遠赤外線を再放射する。図11に、再放射された遠赤外線が符号45の破線の矢印により概念的に示されている。この再放射された遠赤外線45は、一部が人間43および室内空間101の空気中の遠赤外線吸収成分に吸収され、その他は、再度床200,壁300および天井400に再吸収される。この遠赤外線の再放射の際、床200、壁300および天井400のアルミ箔により、室内側に遠赤外線が反射されるので、遠赤外線放射および/または吸収装置110から放射された遠赤外線の熱エネルギーの散逸が抑えられる。これにより、エネルギーの有効利用を図ることができる。
【0085】
図10→図11→図10の現象が繰り返されることで、室内にいる人間43は、遠赤外線(放射熱)を周囲から受けて暖かさを感じ、また室内の空気中の遠赤外線吸収成分が遠赤外線を吸収して昇温する。こうして暖房効果が得られる。
【0086】
上述した本発明の一実施形態による暖房作用によれば、対流や熱伝導による暖房でなく、室内全体に行き渡る放射による暖房が行われるので、室内のとくに垂直方向における温度分布の偏差が抑えられる。また、直接加熱されるのは、遠赤外線放射および/または吸収装置110だけであり、その遠赤外線放射および/または吸収装置110から放射される遠赤外線を介して、熱を暖房に利用するので、エネルギーの有効利用を図ることができる。このため、エネルギーの無駄が抑えられる。また、室温の上昇のみではなく、放射熱により人体が暖かさを感じるので、この点においても投入エネルギーの有効利用を図ることができる。さらに、気流の流れを利用しないので、温風が肌に当たることによる不快感や健康への悪影響が発生しない。暖房の熱源として太陽熱を利用した温水や太陽電池による自家発電力を利用した場合、ゼロエミッションを実現することができる。
【0087】
幅125cm、高さ180cmm、奥行き18cmmの遠赤外線放射および/または吸収装置110の場合、所定の室内環境を調整するために必要な、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置110に循環させる冷水および/または温水の量は5リットルであった。一方、赤外線放射および/または吸収部を1枚の平板のフィンで構成した場合、本発明の一実施形態の遠赤外線放射および/または吸収装置110と同等の冷房および/または暖房の能力を有する遠赤外線放射および/または吸収装置のサイズは、幅136cm、高さ180cmm、奥行き22cmmであった。また、上記の室内環境を調整するために必要な、遠赤外線放射および/または吸収装置に循環させる冷水および/または温水の量は30リットルであった。
【0088】
これより、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置110によれば、遠赤外線放射および/または吸収装置の幅および奥行きを小さくすることができることがわかる。また、遠赤外線放射および/または吸収装置に循環させる冷水および/または温水の量も非常に少なく(6分の1)にすることができ、冷温水発生装置により冷却および/または加熱される水の量を少なくすることができるので、冷温水発生装置により水を冷却および/または加熱させるためのエネルギーを非常に小さくできる。また、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置110は、赤外線放射および/または吸収部を1枚の平板のフィンで構成した場合の遠赤外線放射および/または吸収装置に比べて、遠赤外線放射および/または吸収装置110の駆動を開始してから短い時間で涼しさや暖かさを人に感じさせることができる。本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置110により、いわゆる冷房および/または暖房の利きの即効性がさらに高くなる。
【0089】
以上の一実施形態による遠赤外線放射および/または吸収装置または室内環境調整システムは、次のような作用効果を奏する。
(1)以上の一実施形態による遠赤外線放射および/または吸収装置では、主軸(給水パイプ117の軸)と、主軸に対して垂直をなし、平行に並ぶ複数の副軸(軸部115aの軸)とを有し、遠赤外線を放射および/または吸収し、副軸の軸方向に延在する6つのフィン115b〜115gを含む遠赤外線放射および/または吸収部115を複数有し、6つの遠赤外線放射および/または吸収部115は、主軸に沿って並列に配置され、6つの放射および/または吸収部材のうちの4つのフィン115b,115c,115e,115fは、主軸の軸方向に対して15〜75°程度の範囲の角度で、好ましくは40〜65°程度の範囲の角度で、より好ましくは約60°の角度で、斜めに配置され、6つのフィン115b〜115gは、少なくともその表面またはその表面の近傍に遠赤外線を放射および/または吸収し遠赤外線の放射率が0.6以上である遠赤外線放射物質を含む材料を有するようにした。これにより、遠赤外線放射および/または吸収装置110の遠赤外線を吸収する効率を高めることができ、また遠赤外線放射および/または吸収装置110からまんべんなく遠赤外線を放射することができるので、高いエネルギー効率で室内環境の調整を行える。
【0090】
(2)以上の一実施形態による遠赤外線放射および/または吸収装置では、隣接するフィン同士115b〜115gのなす角度は約60°であるようにした。これにより、遠赤外線放射および/または吸収装置110の遠赤外線を吸収する効率をさらに高めることができ、また遠赤外線放射および/または吸収装置110からさらにまんべんなく遠赤外線を放射することができるので、さらに高いエネルギー効率で室内環境の調整を行える。
【0091】
(3)以上の一実施形態による遠赤外線放射および/または吸収装置では、6つのフィン115b〜115gは、主軸の軸方向に延在する2つのフィン115d,115gを含み、このフィン115d,115gの主軸の軸方向の長さは、主軸と副軸とからなる面にフィン115b,115c,115e,115fを投影したときの影の主軸の軸方向の長さよりも小さく、隣接する遠赤外線放射および/または吸収部115におけるフィン115d,115gの間には隙間があるようにした。これにより、これにより、フィン115b〜115gが結露した場合などに、遠赤外線放射および/または吸収装置110を掃除しやすくなる。
【0092】
(4)以上の一実施形態による遠赤外線放射および/または吸収装置では、遠赤外線放射および/または吸収部115は、副軸に沿って軸部115aを含み、軸部115aの中には、軸部115aを冷却および/または加熱する媒質が通る媒質流路115hが設けられているようにした。これにより、媒質流路115hを通る媒質を冷却することによって、フィン115b〜115gの表面を冷却面として機能させることができ、媒質流路115hを通る媒質を加熱することによって、フィン115b〜115gの表面を加熱面として機能させることができる。したがって、遠赤外線放射および/または吸収装置110を冷房装置としても暖房装置としても機能させることができるので便利である。
【0093】
(5)以上の一実施形態による室内環境調整システムは、環境調整すべき室内空間101に遠赤外線放射および/または吸収装置110を配置して構成されるようにした。これにより、高いエネルギー効率で室内環境の調整を行える。
【0094】
(6)以上の一実施形態による室内環境調整システムでは室内空間101の室内面を構成する床200、壁300および天井400は、フィン115b〜115gの遠赤外線放射物質と遠赤外線共鳴する同一の遠赤外線放射物質を含む材料を有し、軸部115aがフィン115b〜115gを冷却すると、その冷却の間、フィン115b〜115gが1次的な冷放射源となり、フィン115b〜115gの遠赤外線放射物質が、床200、壁300および天井400の遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を共鳴吸収することで、床200、壁300および天井400を室内101および/または人体43に対する2次的な冷放射源とし、および/または、軸部115aがフィン115b〜115gを加熱すると、その加熱の間、フィン115b〜115gが1次的な熱放射源となり、フィン115b〜115gの遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を床200、壁300および天井400の遠赤外線放射物質が共鳴吸収することで、床200、壁300および天井400を室内101および/または人体43に対する2次的な熱放射源とするようにした。これにより、高いエネルギー効率で室内環境の調整を行える。
【0095】
本発明の一実施形態における室内環境調整システムは、以下のように変形することができる。
(1)以上の本発明の一実施形態における室内環境調整システムでは、室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質は、フィンに含まれる遠赤外線放射物質と同一であった。しかし、フィンに含まれる遠赤外線放射物質と遠赤外線共鳴する遠赤外線放射物質であれば、室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質は、フィンに含まれる遠赤外線放射物質と同一である遠赤外線放射物質に限定されない。すなわち、室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質は、フィンに含まれる遠赤外線放射物質と遠赤外線共鳴する遠赤外線放射物質であれば、フィンに含まれる遠赤外線放射物質と異なる遠赤外線放射物質であってもよい。以下、室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質を例示する。
【0096】
(i)フィンに含まれる遠赤外線放射物質および室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質の4.5〜20μmの波長範囲内での積分放射率はともに0.6以上、好ましくは0.70以上となり、かつ、フィンに含まれる遠赤外線放射物質と室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質とにおいて、室内環境調整システムの作動温度域における波長4.5〜20μmの分光放射スペクトル上での重複領域が黒体放射の60%以上となるような室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質。
(ii)フィンに含まれる遠赤外線放射物質および室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質において、さらに、室内環境調整システムの作動温度域における波長7〜12μmの分光放射スペクトル上での重複領域が黒体放射の60%以上となるような室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質。
(iii)フィンに含まれる遠赤外線放射物質と室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質とにおいて、さらに、室内環境調整システムの作動温度域における波長7〜12μmの分光放射スペクトル上での重複領域が黒体放射の70%以上となるような室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質。
【0097】
フィンに含まれる遠赤外線放射物質が、室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質と異なると、エネルギー伝達の効率は低くなる。しかし、上述の室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質を使用した場合、遠赤外線共鳴により、フィンに含まれる遠赤外線放射物質から放射された遠赤外線は、室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質に少ないロスで吸収され、室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質から放射された遠赤外線は、フィンに含まれる遠赤外線放射物質に少ないロスで吸収される。したがって、フィンに含まれる遠赤外線放射物質が室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質と異なっている場合であっても、エネルギー効率を高くした室内環境の調整を可能にする室内環境調整システムを提供できる。
【0098】
4.5〜20μmの波長範囲内での積分放射率は、次のようにして求めることができる。常温域における遠赤外線の放射エネルギーの測定は一般的にFT−IR(フーリエ変換赤外分光分析)法による分光放射率測定によって行われる。測定試料を疑似黒体壁に囲まれた試料室内にセットし、試料から放射される遠赤外線を微小な孔を通して分光器に導き、同時に試料とほぼ同一温度に保持された標準黒体炉から引き出された遠赤外線とともに検出器に導き、所定の振動数区間もしくは波長区間ごとのエネルギー強度(輝度)を測定する。この所定波長区間ごとの放射エネルギー強度(輝度)を所定の波長区間にわたって黒体放射と同時に表示したものを「分光放射輝度曲線」という。また、所定の波長区間ごとに試料からの放射輝度と黒体からの輝度との比率(0〜1.0)を波長ごとに全波長区間にわたって表示したものを「分光放射率曲線」もしくは「分光放射スペクトル」という。ここで「分光放射率」とは、ある特定の波長における試料物質に放射エネルギー強度(輝度)と同一温度、同一波長における黒体からの放射エネルギー強度(理論計算が可能)との比であり、「全放射率」とは、特定の温度における試料物質からの全放射エネルギーと同一温度における黒体からの全放射エネルギー(理論計算が可能)との比である。また、特定温度、特定の波長区間における試料物質からの放射エネルギー強度(輝度)と同一温度、同一波長区間における黒体放射のエネルギー強度(輝度)との比を「積分放射率」という。
【0099】
(2)以上の一実施形態では、遠赤外線放射および/または吸収部115は、軸部115aから放射状に延びる6つのフィン115b〜115gを有するが、遠赤外線放射および/または吸収部が有するフィンの数は6に限定されない。たとえば、図12(a)に示す遠赤外線放射および/または吸収部115Aのように、副軸の軸方向と垂直をなす面による断面形状が略V字型になるように配置され、副軸を通り主軸に対して垂直である面114aの一方側と他方側とにそれぞれ配置された2つのフィン115Ab,115Acを冷熱放射部遠赤外線放射および/または吸収部115Aは有するようにしてもよい。
【0100】
この場合も、フィンの面に到達した遠赤外線は、フィンの表面のコーティング層に効率よく吸収され、フィンの表面から、部屋の壁に遠赤外線をまんべんなく放射することができ、遠赤外線放射および/または吸収装置における遠赤外線の吸収量または放射量を大きくし、遠赤外線放射および/または吸収装置における冷却の効率を高くすることができる。2つのフィン115Ab,115Acと、副軸を通り主軸に対して垂直である面114aとのなすそれぞれの角度は、好ましくは約10〜約80°、より好ましくは約25〜約65°、さらにより好ましくは約25〜約50°であり、または約30°もしくは約45°である。
【0101】
また、図12(b)に示すように、遠赤外線放射および/または吸収部115Bは、上述の2つのフィン115Ab,115Ac以外に6つのフィン115Bb〜115Bgを有するようにしてもよい。すなわち、少なくとも上述の2つのフィン115Ab,115Acを遠赤外線放射および/または吸収部115は有していれば、遠赤外線放射および/または吸収部115が有するフィンの数は6に限定されない。
【0102】
図12(a),(b)は、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置に設けられた遠赤外線放射および/または吸収部における軸部の軸方向と垂直をなす面による変形例の断面を示す図である。なお、図12において、フィンの表面に設けられているコーティング層は省略されている。
【0103】
(3)以上の一実施形態では、フィン115b〜115gの主面は平滑であった。しかし、フィン115b〜115gの主面は凹凸を有するようにしてもよい。なお、遠赤外線放射および/または吸収装置の複数の遠赤外線放射および/または吸収部のうち、すべての遠赤外線放射および/または吸収部のすべてフィンの主面に凹凸があってもよいし、一部の遠赤外線放射および/または吸収部の一部のフィンの主面に凹凸があってもよい。ここで、「主面」とは、フィンの表面を構成する5つの面の中でもっとも大きな2つの面である。
【0104】
たとえば、複数のフィンのうちの少なくとも1つのフィンは、副軸の軸方向に延在し、フィンにおける副軸の軸方向と垂直をなす面による断面の長さ方向に並ぶ複数の突条部を、フィンの2つの主面にそれぞれ有するようにしてもよい。これにより、フィンの表面から、部屋の壁に遠赤外線をさらにまんべんなく放射することができる。また、フィンの総面積がさらに大きくなるので、遠赤外線放射および/または吸収部における遠赤外線の吸収量または放射量をさらに大きくし、遠赤外線放射および/または吸収部における冷却の効率をさらに高くすることができる。
【0105】
たとえば、図13に示す遠赤外線放射および/または吸収部115Cのように、軸部115Caの軸方向と垂直をなす面による突条部116Cの断面形状が、長さ方向115Ckの辺116Ckを底辺とする三角形であるようにしてもよい。これにより、フィンの表面から、部屋の壁に遠赤外線をよりまんべんなく放射することができる。また、部屋の床、壁および天井から放射された遠赤外線がフィンの表面で反射された場合でも、隣接するフィンの間で反射を繰り返すことになるので、フィンにおける遠赤外線の吸収率が高くなる。
【0106】
軸部の軸方向と垂直をなす面による突条部の断面の形状の三角形において、突条部の断面の形状の三角形の底辺と底辺以外の2つの辺との間のなす角度は、好ましくは約30〜約120°である。これにより、フィンの表面から、部屋の壁に遠赤外線をよりまんべんなく放射することができる。たとえば、図13に示す遠赤外線放射および/または吸収部115Cのように、軸部115Caの軸方向と垂直をなす面による突条部116Cの断面の形状の三角形において、突条部116Cの断面の形状の三角形の底辺116Ckと底辺以外の2つの辺116Ca,116Cbとの間のなす角度を60°にしてもよい。この場合、突条部116Cの断面の形状は正三角形になる。
【0107】
また、図14に示す遠赤外線放射および/または吸収部115Dのように、軸部115Daの軸方向と垂直をなす面による突条部116Dの断面の形状の三角形において、底辺116Dkと底辺以外の2辺116Da,116Dbとの間のなす角度をそれぞれ45°および90°にしてもよい。この場合、突条部116Dの断面の形状は直角二等辺三角形になる。突状部の高さは、たとえば1mmであり、隣接する突状部の頂点間の距離は、たとえば2mmである。
【0108】
なお、遠赤外線放射および/または吸収部における遠赤外線の吸収量または放射量を大きくし、遠赤外線放射および/または吸収部における冷却の効率を高くすることができれば、フィンに設ける突条部は、軸部の軸方向と垂直をなす面による突条部の断面の形状が三角形である突条部に限定されない。たとえば、軸部の軸方向と垂直をなす面による突条部の断面の形状が台形および半円形状などの形状である突条部をフィンに設けてもよい。
【0109】
図13(a)は、本発明に一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置に設けられた遠赤外線放射および/または吸収部の変形例の一部を切り出した部分の斜視図であり、図13(b)は、変形例における軸部の軸方向と垂直をなす面による断面を示す図であり、図13(c)は、図13(b)の変形例の断面図においてフィンの部分を拡大して示す図である。図14(a)は、本発明に一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置に設けられた遠赤外線放射および/または吸収部の変形例における軸部の軸方向と垂直をなす面による断面を示す図であり、図14(b)は、図14(a)の変形例の断面図においてフィンの部分を拡大して示す図である。なお、図13および図14において、フィンの表面に設けられているコーティング層は省略されている。
【0110】
フィンの一方の主面に設けられた突条部の位置と、フィンの他方の主面に設けられた突条部の位置とは、副軸から延出する長さ方向の面に対して非対称であってもよい。たとえば、図15に示す遠赤外線放射および/または吸収部115Eのように、フィン115Ebの一方の主面に設けられた突条部116E1の位置がフィン115Ebの他方の主面に設けられた突条部116E2の位置に対して、長さ方向115Ekにずれていてもよい。これにより、押し出し法などの成型方法で、アルミニウムなどの金属を使用した軸部115aとフィン115b〜115gとを一体成形する場合、フィンの厚みを薄くしてフィンの厚さ方向における突状部の高さを高くすることができ、フィンを軽量化することができる。一方、フィンの一方の主面に設けられた突条部の位置と他方に設けられた突条部の位置とがフィンの延びる方向の面に対して対称である場合、突状部の高さが大きくなると、そのままフィンの厚みが厚くなるので、フィンは重くなる場合がある。
【0111】
また、押し出し法などの成型方法で材料を一体成形する場合、所定の厚さ、たとえば1mmの厚さよりも薄い成形体に成形できない場合がある。フィンの一方の主面に設けられた突条部の位置と他方に設けられた突条部の位置とがフィンの延びる方向の面に対して対称である場合、フィンの最大厚さと最小厚さとの差が大きいので、フィンの最大厚さを小さくしようとすると、フィンの最小厚みが1mm未満となり、一体成形できない場合がある。一方、フィンの一方の主面に設けられた突条部の位置と、フィンの他方の主面に設けられた突条部の位置とが、フィンの延出する方向の面に対して非対称である場合、フィンの最大厚みと最小厚さとの差を小さくできるので、フィンの最大厚さを小さくしようとしても、フィンの最小厚みを1mm以上にすることができ、一体成形することができる場合がある。なお、押し出し法などの成型方法で、アルミニウムなどの金属を使用した軸部115aとフィン115b〜115gとを一体成形すると、遠赤外線放射および/または吸収部を効率よく作製することができる。
【0112】
図15では、軸部の軸方向と垂直をなす面による突条部116E1,116E2の断面の形状のフィンの延びる方向115Ekの長さの半分の長さだけ、フィン115Ebの一方の主面に設けられた突条部116E1の位置がフィン115Ebの他方の主面に設けられた突条部116E2の位置に対して、フィンの延びる方向115Ekにずれている。図15(a)は、本発明に一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置に設けられた遠赤外線放射および/または吸収部の変形例における軸部の軸方向と垂直をなす面による断面を示す図であり、図15(b)は、図15(a)の変形例の断面図においてフィンの部分を拡大して示す図である。なお、図15において、フィンの表面に設けられているコーティング層は省略されている。また、符号115Eaが軸部である。
【0113】
また、図14に示すように、フィンの主面は、隣接する突条部116D間に平坦部116Dcを有するようにしてもよい。これにより、コーティング層をフィンの表面に均一に形成することができる。フィンの主面において、隣接する突条部間に平坦部が存在しない場合、遠赤外線放射物質を含有する塗料をフィンに塗布したとき、隣接する突条部間に塗料が多く溜まる場合がある。しかし、隣接する突条部間に平坦部を設けることによって、隣接する突条部間に塗料が多く溜まることを抑制することができ、コーティング層をフィンの表面に均一に形成することができる。また、突条部が隣接する突条部の陰になることが少ないので、遠赤外線が隣接するフィンの間に閉じ込められることを少なくし、室内環境を調節する効率を高めることができる。
【0114】
また、図16に示すように、複数の突状部116Fにおいて、断面形状の三角形の底辺116Fkと、底辺以外の2つの辺のうちの副軸側の反対側の辺116Fa〜116Ffとのなす角度は、すべて同じであるということではないようにしてもよい。たとえば、図16に示す遠赤外線放射および/または吸収部115Fのように、軸部の軸方向と垂直をなす面による突条部116Fの断面形状の三角形の底辺116Fkと底辺以外の2つの辺のうちの軸部115Fa側の反対側の辺116Fa〜116Ffとの間のなす角度は、軸部115Fa側にある突状部116Fである程大きくなるようにしてもよい。これにより、フィンと室内面構成部材との間の熱放射のやり取りが増加してエネルギー効率をさらに高くした室内環境の調整を可能にする。
【0115】
図16(a)は、本発明に一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置に設けられた遠赤外線放射および/または吸収部の変形例における軸部の軸方向と垂直をなす面による断面を示す図であり、図16(b)は、図16(a)の変形例の断面図においてフィンの部分を拡大して示す図である。断面形状の三角形の辺116Fa〜116Ffは、辺116Faから辺116Ffへ進むにしたがって底辺116Fkと辺116Fa〜116Ffとのなす角度は大きくなっている。
【0116】
たとえば、底辺116Fkと辺116Faとのなす角度は30°であり、底辺116Fkと辺116Fbとのなす角度は約35°であり、底辺116Fkと辺116Fcとのなす角度は約40°である。また、底辺116Fkと辺116Fdとのなす角度は約45°であり、底辺116Fkと辺116Feとのなす角度は約50°であり、底辺116Fkと辺116Ffとのなす角度は約55°である。なお、図16において、フィンの表面に設けられているコーティング層は省略されている。
【0117】
なお、複数の突状部において、断面形状の三角形の底辺と、底辺以外の2つの辺のうちの副軸側の辺とのなす角度は、すべて同じであるということではないようにしてもよいし、複数の突状部において、断面形状の三角形の底辺と、底辺以外の2つの辺のうちの副軸側の辺とのなす角度、および断面形状の三角形の底辺と、底辺以外の2つの辺のうちの副軸側の反対側の辺とのなす角度は、すべて同じであるということではないようにしてもよい。
【0118】
(4)以上の一実施形態では、遠赤外線放射および/または吸収装置は、部屋の壁に沿って配置されていたが、遠赤外線放射および/または吸収装置の配置される位置は壁に沿った位置に限定されない。たとえば、部屋の中央に遠赤外線放射および/または吸収装置を配置してもよい。
【0119】
(5)以上の一実施形態では、遠赤外線放射および/または吸収部が上下方向に延在するように遠赤外線放射および/または吸収部は配置されたが、遠赤外線放射および/または吸収部の配置は、遠赤外線放射および/または吸収部装置を設置する室内の形状や大きさ等によって適宜変更できる。たとえば、遠赤外線放射および/または吸収部が左右方向に延在するように遠赤外線放射および/または吸収部を配置してもよい。
【0120】
(6)上述の一実施形態では、床、壁および天井の全てに石材又は石粉(遠赤外線放射物質)が含まれる構成としたが、遠赤外線放射物質を含む室内面構成部材は、床と壁、壁と天井、天井と床の3種の組み合わせのいずれかであってもよい。この際、一方の面から放射された遠赤外線が他方の面に到達しやすいようにすることが重要である。
【0121】
遠赤外線放射物質を含む室内面構成部材の組み合わせを、床と壁、壁と天井、天井と床の3種の組み合わせのいずれかとした場合、各室内面構成部材の全面に遠赤外線放射物質を含ませなくてもよいが、遠赤外線放射物質を含まない面積が増大する程、遠赤外線放射物質を含まない部分における放射熱の放射と吸収時における損失が増大する。このため、本発明の一実施形態における放射を利用した暖房効果および冷房効果は、低下する。よって、上記の組み合わせにおいて、各室内面構成部材の面の50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上の面積に遠赤外線放射物質を含ませる必要がある。また加熱面および/または冷却面は、複数の場所に分かれて配置されていてもよい。
【0122】
(7)上述の一実施形態では、遠赤外線放射物質の粉砕物(石粉)を漆喰またはニスに含有させる例を説明したが、当該粉砕物を混ぜることができる建材であれば、上記の例に限定されない。たとえば、壁紙等の内装部材に遠赤外線放射物質の粉砕物を含ませ、それを用いることで、本発明の効果を得ることもできる。また粉砕物を建材などの室内面構成部材の材料に混ぜるのではなく、セラミックスコーティング技術を利用して、遠赤外線放射物質を室内面構成部材の表面にコーティングしてもよい。
【0123】
(8)以上の一実施形態の室内環境調整システムを適用した部屋の床を、石粉の原料となる花崗岩をパネル状に成形した石材パネルにより構成した石床としてもよい。また、石床に床暖房装置を組み込み、暖房時に床暖房を利用してもよい。この場合、石床から放射される遠赤外線が石床と同一材料の石粉を含む壁や天井から2次的に再放射され、部屋全体から遠赤外線が放射される暖房効果を得ることができる。また床に加えて(あるいは床はフローリング等の通常の床で)、壁や天井を石材パネルで構成してもよい。もちろん、石材は花崗岩に限定されない。
【0124】
(9)以上の一実施形態においては、天然石である花崗岩を遠赤外線放射物質として用いる場合を説明したが、遠赤外線放射物質は、他の天然石(たとえば玄武岩等)やセラミックス材料(たとえば、炭化珪素、窒化珪素、ガラス等)であってもよい。また、遠赤外線放射物質は、複数種類混ぜて用いてもよい。この場合、床、壁および天井から選ばれた少なくとも室内面構成部材に含まれる遠赤外線放射物質の配合割合と、フィンの表面層に含まれる遠赤外線放射物質の配合割合とを同一としてもよい。
【0125】
(10)以上の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収部内部の媒質流路に流れる媒質として水を用いているが、水以外の媒質を用いることもできる。たとえば、冷房専用であれば、媒質としてアンモニア等の公知の冷媒を用いることができる。また暖房専用であれば、オイルや蒸気を媒質として用いることができる。
【0126】
(11)以上の一実施形態では、軸部115aの媒質流路115hに媒質を流すことによって軸部115を冷却したり加熱したりした。しかし、軸部115を冷却および/または加熱できれば、軸部115を冷却および/または加熱する方法は、媒質流路115hに媒質を流す方法に限定されない。たとえば軸部の中に発熱体(たとえば電熱線)を設けて軸部を加熱してもよい。
【0127】
また、軸部を冷却および/または加熱するのではなく図3(a)に示す給水パイプ117および/または排水パイプ118の部分にフィンを冷却および/または加熱する冷却および/または加熱部を設け、その冷却および/または加熱部がフィンを加熱および/または冷却するようにしてもよい。フィンの熱伝導性が良好である場合、またはフィンの長手方向の長さが短い場合、フィンの一部(たとえば端の部分のみ)を冷却および/または加熱するだけでフィン全体を冷却および/または加熱することができる。この場合、遠赤外線放射および/または吸収部は、フィンを冷却および/または加熱する軸部を有さなくてもよい。また、隣接する遠赤外線放射および/または吸収部の媒質流路115hの端部同士をパイプでつなぎ、遠赤外線放射および/または吸収部の媒質流路115hから排出された媒質が、隣接する遠赤外線放射および/または吸収部の媒質流路115hの中を流通するようにしてもよい。
【0128】
(12)以上の一実施形態では、遠赤外線について述べたが、テラヘルツ帯電磁波であれば、遠赤外線に限定されない。ここで、テラヘルツ帯電磁波とは、周波数100GHz〜100THz(波長3μm〜3mm)の電磁波である。たとえば、フィンは、少なくともその表面またはその表面の近傍にサブミリ波を放射および/または吸収しサブミリ波の放射率が0.6以上であるサブミリ波放射物質を含む材料を有してもよい。また、この場合、室内空間の室内面を構成する室内面構成部材は、フィンのサブミリ波放射物質とサブミリ波共鳴する同一のまたは異なるサブミリ波放射物質を含む材料を有し、フィンを冷却すると、その冷却の間、フィンが1次的な冷放射源となり、フィンのサブミリ波放射物質が、室内面構成部材のサブミリ波放射物質が放射するサブミリ波を共鳴吸収することで、室内面構成部材を室内および/または人体に対する2次的な冷放射源とし、および/または、フィンを加熱すると、その加熱の間、フィンが1次的な熱放射源となり、フィンのサブミリ波放射物質が放射するサブミリ波を室内面構成部材のサブミリ波放射物質が共鳴吸収することで、室内面構成部材を室内および/または人体に対する2次的な熱放射源とする。
【0129】
(13)本発明の一実施形態を部屋に適用した例を説明したが、教室、オフィス、スポーツ施設、図書館、店舗、その他人間が活動や生活をする部屋全般に本発明は利用することができる。上述の実施形態は例示であり、物件や施工現場に合わせて、各種建材や工法を適宜選択できることはいうまでもない。
【0130】
以上の実施形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることも可能である。また、変形例同士をどのように組み合わせることも可能である。
【0131】
以上の説明はあくまで一例であり、発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0132】
41,42,44,45 遠赤外線
43 人体
100 部屋
101 室内空間
110 遠赤外線放射および/または吸収装置
111 冷温水発生装置
115,115A〜115E 遠赤外線放射および/または吸収部
115a 軸部(副軸)
115b〜115g,115Ab,115Ac フィン
115h 媒質流路
115i コーティング層
116C,116D,116E1,116E2 突条部
117 給水パイプ(主軸)
200 床
205 ニス層
300 壁
304 漆喰の壁面
400 天井
404 漆喰の天井面
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠赤外線を室内に放射し、室内の遠赤外線を吸収することによって快適な環境に室内を調整する遠赤外線放射および/または吸収装置およびその遠赤外線放射および/または吸収装置を備えた室内環境調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
遠赤外線放射物質である石粉を含んだ漆喰が天井面および壁に塗布され、同じ石粉を含んだニスが塗布された床面を有するリビングに遠赤外線放射および/または吸収装置が配置された室内環境調整システムが従来技術として知られている(たとえば、特許文献1)。この遠赤外線放射および/または吸収装置は、冷水および温水を発生できる冷温水発生装置と接続している。また、この遠赤外線放射および/または吸収装置は、細長いアルミニウム板と、アルミニウム板の表面に設けられたコーティング層とを含むフィンを有する。このコーティング層は、天井面および壁に塗布された漆喰および床面に塗布されたニスに含まれる石粉と同じ石粉を含む。フィンの中には、媒質流路が設けられており、その媒質流路の中を冷温水発生装置によって発生した冷水または温水が通過する。これにより、遠赤外線放射および/または吸収装置のフィンは、冷却されたり加熱されたりされ、リビング内に放射されている遠赤外線を吸収したり、リビング内に遠赤外線を放射したりすることができる。また、フィンのコーティング層に含まれる石粉と、天井面および壁に塗布された漆喰および床面に塗布されたニスに含まれる石粉とは同じであるので、熱放射を介した熱交換が高い効率で行われる。これにより、エネルギー効率がよく、しかも室内の垂直方向における温度分布の差が小さく、気流が肌に当たることによる問題が発生しない室内環境調整システムを実現することができる。
【0003】
また、この遠赤外線放射および/または吸収装置のフィンは、壁面に対して斜めに配置されている。これにより、遠赤外線放射および/または吸収装置のフィンは、床面、壁面および天井面から放射される遠赤外線をまんべんなく吸収したり、床面、壁面および天井面へ遠赤外線をまんべんなく放射したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−96485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、室内に放射されている遠赤外線をさらに効率よく吸収し、室内にさらに効率よく遠赤外線を放射することができる遠赤外線放射および/または吸収装置およびその遠赤外線放射および/または吸収装置を備えた室内環境調整システムが望まれている。
【0006】
本発明は、エネルギー効率をさらに高くした室内環境の調整を可能にする遠赤外線放射および/または吸収装置およびその遠赤外線放射および/または吸収装置を備えた室内環境調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の遠赤外線放射および/または吸収装置は、主軸と、該主軸に対して垂直をなし、平行に並ぶ複数の副軸とを有し、遠赤外線を放射および/または吸収し、副軸の軸方向に延在する複数の放射および/または吸収部材を含む遠赤外線放射および/または吸収部を複数有し、複数の遠赤外線放射および/または吸収部は、主軸に沿って並列に配置され、複数の放射および/または吸収部材のうちの2つの放射および/または吸収部材は、副軸の軸方向と垂直をなす面による断面形状が略V字型になるように配置され、 2つの放射および/または吸収部材は、副軸を通り主軸に対して垂直である面の一方側と他方側とにそれぞれ配置され、複数の放射および/または吸収部材は、少なくともその表面またはその表面の近傍に遠赤外線を放射および/または吸収し遠赤外線の放射率が0.6以上である遠赤外線放射物質を含む材料を有する。
また、本発明の室内環境調整システムは、環境調整すべき室内空間に上記の遠赤外線放射および/または吸収装置を配置して構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高いエネルギー効率で室内環境の調整を行える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ZrO2+CaO皮膜とAl2O3+TiO2皮膜とで、放射率の特性が異なることを示す図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態における室内環境調整システムを備えた部屋の概要を示す概念図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態における室内環境調整システムを備えた部屋の壁に配置された遠赤外線放射および/または吸収装置を示すである。
【図4】図4は、軸部の軸方向と垂直をなす面による遠赤外線放射および/または吸収部の断面形状を示す概念図である。
【図5】図5は、部屋の床の断面構造を示す概念図である。
【図6】図6は、部屋の壁の断面構造を示す概念図である。
【図7】図7は、部屋の天井の断面構造を示す概念図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態における冷房効果の原理を説明する概念図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態における冷房作用を説明する概念図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態における暖房効果の原理を説明する概念図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態における暖房作用を説明する概念図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収部とフィンの数が異なる本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収部の変形例を説明するため図である。
【図13】図13は、フィンが突条部を有する、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収部の変形例を説明するため図である。
【図14】図14は、フィンが突条部を有する、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収部の変形例を説明するため図である。
【図15】図15は、フィンが突条部を有する、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収部の変形例を説明するため図である。
【図16】図16は、フィンが突条部を有する、本発明の一実施形態における冷熱放射部遠赤外線放射および/または吸収部の変形例を説明するため図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態における室内環境調整システムは、遠赤外線を放射および/または吸収し遠赤外線の放射率が0.6以上である遠赤外線放射物質を含む材料で構成された室内面構成部材と、室内面構成部材の遠赤外線放射物質と同一の遠赤外線放射物質を含む材料で構成された冷却および/または加熱面を有する冷却および/または加熱源とを具備し、冷却源が冷却されると、その冷却面の遠赤外線放射物質が室内面構成部材の遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を吸収し、および/または、加熱源が加熱されると、その加熱面の遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を室内面構成部材の遠赤外線放射物質が吸収する。
【0011】
室内面構成部材は、遠赤外線放射物質(下記で詳述する)からなる石材で構成されるか、遠赤外線放射物質を混入した材料で構成されるか、または遠赤外線放射物質からなる皮膜を有する。冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面は、遠赤外線放射物質からなる石材で構成されるか、遠赤外線放射物質を混入した材料で構成されるか、または遠赤外線放射物質からなる皮膜で構成される。
【0012】
本発明の一実施形態において、「室内面構成部材」とは、環境調整の対称となる密閉空間に露出した面を構成している部材を指す。密閉空間は、その内部と外部との連絡を可能にするドアや窓などのような開閉手段を備えることができる。密閉空間の代表例は、人間が生活・活動する建物の部屋や廊下などであり、このほかに、物品を保管あるいは陳列する空間(たとえば倉庫内の部屋や、商品のショーケース又は美術品などの展示ケース)、家畜を含めた動物の飼育用の部屋、人間や貨物の輸送用の移動体(自動車、鉄道車両、船舶、航空機など)が備える部屋、などを挙げることができる。人間が居住する住宅を例に挙げれば、室内面構成部材の典型例は、壁、天井、および床を構成している部材(建材)である。壁の一部に取り付けられて部屋の内部と外部とを仕切るために設けられる開閉可能な建具(戸、障子、襖など)も、室内面構成部材に含められる。部屋に付属して設置された収納のための扉や襖なども、室内面構成部材に含められる。環境調整の対象となる部屋に付属する収納のための区画が、扉や襖などで部屋から完全に仕切られない構造の場合、収納区画の部屋に露出した面を構成している部材も、室内面構成部材に含められる。
【0013】
室内面構成部材の少なくとも一部は、本発明の一実施形態において室内環境の調整に必要な遠赤外線を放射および/または吸収する遠赤外線放射物質で構成されるか、遠赤外線放射物質を混入した材料で構成されるか、または遠赤外線放射物質からなる皮膜を有する。遠赤外線の放射および吸収を効率よく行うため、室内面構成部材に混入される遠赤外線放射物質は、室内空間に露出していることが好ましい。とはいえ、室内面構成部材中の遠赤外線放射物質は、室内空間に直接露出されずに、遠赤外線放射物質の遠赤外線の放射および/または吸収を有意に妨げない程度の保護層(たとえば、1mm程度以下の厚さの塗装膜、ニス層、壁紙等)などで覆われていてもよい。
【0014】
「遠赤外線放射物質」は遠赤外線を放射および/または吸収する物質をいうが、本発明の実施形態において遠赤外線放射物質は、遠赤外線の放射率が0.6以上、好ましくは0.8以上の遠赤外線放射物質である。このような遠赤外線放射物質は、通常、いわゆる無機材料であり、天然および人工の鉱物、金属および半金属の酸化物、窒化物、炭化物、硫化物、水酸化物等、炭酸塩などの塩やそれらの複合物(複塩)、炭などのほか、貝殻などの天然素材なども含まれる。また、本発明の実施形態における遠赤外線放射物質の殆どは広義のセラミックス材料(金属以外の無機材料をいう。)であるが、有機物や有機物由来の物質であっても上記放射率の条件を満たすならば用いることができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、遠赤外線放射物質を含む部材中における遠赤外線放射物質の形態は、遠赤外線放射物質を含む部材が遠赤外線を放射および/または吸収できれば格別に制約はなく、代表的には、遠赤外線放射物質からなる一体物(石材)、遠赤外線放射物質の粒子、粉末、骨材等(これらをもまとめて粒子ともいう。)を含む部材、遠赤外線放射物質の皮膜を有する部材などの形態であることができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、「遠赤外線放射物質からなる石材」とは、天然または人工の無機材料からなる固体一体物のことであって、通常はパネルまたはタイル状の建材等として用いられる。天然の石材の例としては、花崗岩、玄武岩、などを挙げることができる。人工的に製造した石材でもよいことはいうまでもない。人造パネル等の建材やその他の一体物部材は、石材と考えることができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、「遠赤外線放射物質を混入した材料」とは、構成成分の一部として遠赤外線放射物質を含む材料をいう。この場合の遠赤外線放射物質は、典型的には天然または人工の無機材料の粒子として、室内面構成部材の製造材料や冷却源および/または加熱源の冷却および/または加熱面の製造材料中に混入される。
【0018】
本発明の一実施形態において、「遠赤外線放射物質からなる皮膜」とは、室内面構成部材や冷却および/または加熱源の表面に形成した遠赤外線放射物質の皮膜をいう。この皮膜は、適当な皮膜形成技術、たとえば熔射、蒸着などのPVD技術、あるいはCVD技術により、遠赤外線放射物質を対象表面にコーティングして形成することができる。
【0019】
本発明の一実施形態では、室内面構成部材の遠赤外線放射物質と、冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面の遠赤外線放射物質とは、同一である。後に詳しく説明するように、本発明の室内環境調整システムは、同一分子種間における熱放射を介した熱移動が、同一分子種間でない場合に比較して高い効率で行われる現象を利用して、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面との間で熱放射を介し熱移動を高い効率で行わせることにより、室内環境の調整を実現するものである。よって、本発明のシステムが所期の機能を発揮するためには、それらの間で熱放射を介した熱移動が行われる室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面とに、同一分子種の物質が存在する必要がある。
【0020】
本発明の一実施形態では、同一分子種で構成されている、室内面構成部材の遠赤外線放射物質と冷却および/または加熱源の遠赤外線放射物質のことを、同一物質であると称する。ここで「同一分子種」とは、遠赤外線を放射および/または吸収する性質を示し、遠赤外線の放射率が0.6以上、好ましくは0.8以上である一方の物質(たとえば、室内面構成部材において使用する遠赤外線放射物質)と、遠赤外線を放射および/または吸収する性質を示し、遠赤外線の放射率が0.6以上、好ましくは0.8以上であるもう一方の物質(冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面で使用する遠赤外線放射物質)とが、分子レベルで同一であることをいう。ここでの「分子」とは、化学結合により結合された原子の集団を意味する。したがって、ここでいう「分子」には、たとえば天然石材を構成する鉱物の結晶なども含まれる。類似元素が置換あるいは固溶した同一鉱物は同一分子種の物質と看做されている。
【0021】
天然の鉱物の場合、複数の化合物で構成されるのが普通であり、しかも巨視的レベルでは鉱物中の部位によりそれらの化合物の結晶構造に違いが見られることもある。とはいえ、この場合は、同じ原産地から切り出した鉱物は、実質的に同じ分子種の物質の実質的に同じ組成の集合体であり、全体として「同一分子種の物質」と同様に考えてよい。
【0022】
室内面構成部材、あるいは冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面において、上述の「遠赤外線放射物質」として無機材料粒子を使用する場合、そこには、「遠赤外線放射物質」としての無機材料粒子以外の物質が共存するのが普通である。たとえば、遠赤外線放射物質としての無機材料粒子を含む漆喰により室内面構成部材を形成した場合や、遠赤外線放射物質としての無機材料粒子を含む塗料を冷却および/または加熱源の表面に塗布した場合、上述の「遠赤外線放射物質」としての無機材料粒子は、漆喰中の骨材あるいは塗料中のバインダー成分などと共存する。
【0023】
このような場合、上述の「遠赤外線放射物質」としての無機材料粒子以外の物質も、遠赤外線を多かれ少なかれ放射および/または吸収する性質を持つ。しかし、本発明の一実施形態では、同一分子種間における熱放射を介した熱移動が同一分子種間でない場合に比較して顕著に高い効率で行われる現象を利用しているので、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面の両者に共通に存在しない物質が本発明において果たす役割は少ない場合がある。
【0024】
したがって、以下における本発明の一時実施形態のシステムの説明において「遠赤外線放射物質」に言及する場合、それは室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面の両者に共通に存在する、遠赤外線放射率0.6以上、好ましくは0.8以上の同一の物質(下記で説明する、電磁波を介した同一分子間における分子振動の共鳴現象を引き起こす物質)を指す。ただし、遠赤外線を放射および/または吸収する物質に言及していて、上述の「遠赤外線放射物質」以外の物質を指すことを明示している場合や、文脈上からそれ以外の物質を指すことが明らかな場合は、この限りでない。
【0025】
室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面とで遠赤外線放射物質としてともに無機材料粒子を使用する場合には、双方の粒子の粒径や形状は同一でも異なっていてもよい。室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面の双方に含まれる無機材料粒子の配合量も、同じである必要はない。また、たとえば、室内面構成部材が壁面と天井面を形成していて、遠赤外線放射物質として無機材料粒子を使用する場合、壁面と天井面の遠赤外線放射物質の粒子の粒径や形状は、同一でも異なっていてもよい。この場合、無機材料粒子は、室内面構成部材(ここでの例では、壁面及び天井面を形成する建材)中に、本発明による同一分子種間での熱放射を介した所期の熱移動を可能にする含有量で配合される。このとき、壁面を形成する建材と天井面を形成する建材とで、無機材料粒子の配合量は同一でも異なっていてもよい。これらは、2以上の壁面のそれぞれにおける遠赤外線放射物質の無機材料粒子についてもいえる。
【0026】
室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面において、遠赤外線放射物質は複数種を用いてもよい。遠赤外線放射物質が石材の場合は、室内面構成部材あるいは冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面のために、2種以上の石材を組み合わせて用いることができる。遠赤外線放射物質が無機材料粒子の場合は、2種以上の無機材料粒子の混合物を用いることができる。どちらの場合も、室内面構成部材における無機材料粒子の組み合わせと冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面における無機材料粒子の組み合わせが同じであれば(同じ組み合わせが含まれていれば)、それらは「同一物質」であるとみなされる。
【0027】
室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面に含まれる遠赤外線放射物質としての無機材料粒子は、同一分子種間での熱放射を介した所期の熱移動を可能にする量でそれらに存在する。通常、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面は、異なる業者により、建設現場以外で製作して建設現場に搬入されるか又は建設現場において施工されることが多いと考えられる。したがって、室内面構成部材と冷却および/または加熱面には、遠赤外線放射物質としての共通の無機材料粒子が、それぞれの製造業者又は施工業者により混入されることが多いと考えられる。
【0028】
このような場合、遠赤外線放射物質としての無機材料粒子の含有量は、それぞれの業者により室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面の各製造材料に含められる共通の無機材料粒子の量をいう。室内面構成部材中および冷却および/または加熱面形成材料中の無機材料粒子含有量は、本発明の一実施形態において熱放射を介した熱移動を実効あるものにする量として決定することができる。その量は、所期の冷房および/または加熱のために必要とされる熱移動量、熱放射を介した熱移動に利用可能な室内面構成部材と冷却および/または加熱面の面積、使用する遠赤外線放射物質の熱放射特性などに依存する。
【0029】
遠赤外線放射物質としての無機材料粒子は、室内面構成部材材料中、あるいは冷却および/または加熱面を形成している材料中に1重量%以上存在する場合に、有効な効果が認められ、3重量%以上存在する場合により好ましい効果が得られる。一方、遠赤外線放射物質として無機材料粒子を用いる場合のその含有量の上限は、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面を形成する材料中に実際上含ませることができる無機材料粒子の最大量によって決まり、とくに制約はない(理論的には、たとえば90重量%でもよい)。しかし、実用上のその最大量は、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面を形成する材料の取り扱い性や、室内面構成部材と冷却および/または加熱面の製造方法などによって決めればよい。
【0030】
本発明の一実施形態では、遠赤外線放射物質の無機材料粒子として、複数種の物質を使用(上述の「分子レベルで同一」である物質を複数種使用)してもよい。この場合には、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面とで同じ無機材料粒子の混合物を用いることができる。この場合の室内面構成部材材料と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面を形成している材料における無機材料粒子の含有量は、混合物中の複数種の同じ物質の合計量でもって表される。
【0031】
特殊な例として、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面とで、同じ無機材料粒子を1種以上含むならば、異なる混合物を使用してもよい。たとえば、第1の壁面(室内面構成部材)では第1の種類の無機材料粒子のみを使用し、第2の壁面(室内面構成部材)では第2の種類の無機材料粒子のみを使用する一方で、冷却および/または加熱面で2種類の無機材料粒子の混合物を使用することも可能である。
【0032】
遠赤外線の放射および吸収を効率よく行うためには、遠赤外線放射物質は極力、環境調整する室内空間に露出していることが好ましい。とはいえ、遠赤外線放射物質が室内空間に直接露出していなくても、1mm程度以下の保護層(たとえば塗装の層、ニスの層、壁紙等)で覆われているのであれば、大きな問題はない。
【0033】
室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面における遠赤外線放射物質は、それらの表面に露出しているもの、またはその近くのものが主に、本発明の一実施形態による同一分子種間における熱放射を介した熱移動に寄与する。したがって、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面が遠赤外線放射物質を混入した材料で構成される場合、室内面構成部材と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面における遠赤外線放射物質の必要含有量は、本発明の一実施形態における熱移動に寄与する、それらの表面またはそれらの表面の近傍(上述のとおり、室内空間に直接露出していないが表面から1mm程度までの深さに存在する遠赤外線放射物質も、本発明による同一分子種間の熱放射を介した熱移動に寄与することができる)に存在する遠赤外線放射物質の量で表すことが適切である。言い換えれば、本発明における遠赤外線放射物質の含有量は、室内面構成部材の表面と冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱用の表面、およびそれらから1mmまでの深さに存在する遠赤外線放射物質の含有量として表すのが適切である。
【0034】
とはいえ、室内面構成部材(上述のとおり、環境調整の対象となる部屋や廊下などの空間(室内空間)に露出した面を構成している部材として定義される)が、紙(たとえば壁紙)や塗装した塗膜などの薄いフィルムまたはシート状材料で構成されようと、漆喰などから形成した有意の厚さの層状材料で構成されようと、あるいはコンクリートなどから成形された、構造部材を兼ねる一体物の材料で構成されようと、それらの材料が均一混合物である限り、それらの表面とその近傍(たとえば1mmの深さまで)における遠赤外線放射物質の含有量(ここでは、室内面構成部材材料中に占める遠赤外線放射物質の重量割合として表される)は、室内面構成部材材料の全体に占める遠赤外線放射物質の重量割合として表される含有量と同じであると見なすことができる。
【0035】
よって、本発明の一実施形態において室内面構成部材における遠赤外線放射物質の含有量は、室内面構成部材が均一混合物(構成成分の分布が部材の全体にわたり一定である混合物)からなるとみなせる場合、その材料の全体に占める遠赤外線放射物質の重量割合として表される含有量でもって表すこととする。室内面構成部材が均一混合物からなるとみなせない場合(たとえば、部材の厚さ方向において構成成分の分布に偏り(濃度分布)がある場合)には、室内面構成部材における遠赤外線放射物質の含有量は、室内空間に露出した面から1mmまでの深さに存在する遠赤外線放射物質の平均の含有量(重量割合として表される)で表される。これらは、遠赤外線放射物質を混入した材料で構成された冷却および/または加熱源の冷却および/または加熱面についても当てはまる。
【0036】
本発明の一実施形態で使用する遠赤外線放射物質の遠赤外線の放射率は、0.6以上であり、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上である。遠赤外線は、波長が3〜1000μmの電磁波のことをいう。材料の放射率は、同一条件における理想的な黒体の遠赤外線の放射エネルギーをW0とし、当該材料の遠赤外線の放射エネルギーをWとした場合に、W/W0によって定義される。放射率の値は、本発明の一実施形態のシステムの実際の使用温度に近い室温(たとえば25℃)におけるものが好ましく、たとえば、人体に対する熱的な作用の大きい10μm付近における値を採用する。
【0037】
本発明の一実施形態において、「冷却および/または加熱面」とは、室内面構成部材との間の熱放射を介した熱移動によって室内面構成部材の冷却および/または加熱を行う冷却および/または加熱源の、当該熱移動に関与する「面」を指す。言い換えれば、「冷却および/または加熱面」とは、冷却および/または加熱源のうちの、室内面構成部材の遠赤外線放射物質と同じ遠赤外線放射物質が存在する部分の表面を指す。上述のとおり、遠赤外線放射物質は、この表面に露出していることが好ましいとはいえ、1mm程度以下の保護層で覆われていても差し支えない。冷却源の冷却面が冷却されると、その冷却面の遠赤外線放射物質が室内面構成部材の遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を吸収し、加熱源の加熱面が加熱されると、その加熱面の遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を室内面構成部材の遠赤外線放射物質が吸収する。
【0038】
本発明は、同一分子種間における熱放射を介した伝熱(熱移動)が、同一分子種間でない場合に比較して高い効率で行われる現象を利用したもので、フィンを冷却し、1次的な冷放射源とすることで、部屋の内面(たとえば壁面)を人体からの遠赤外線の吸収部材(2次的な冷放射源)として機能させ、人体を冷やす冷房効果を得る点を基本的な発明思想としている。また、この原理と逆の原理として、上記フィンを逆に加熱し、熱の供給源(1次的な熱放射源)とすることで、部屋の内面を遠赤外線の放射部材(2次的な熱放射源)とし、部屋の内面が、人体から吸収する遠赤外線の量を減らし、それにより人間が寒いと感じる感覚を和らげる暖房効果を得る点を基本的な発明思想としている。
【0039】
たとえば、部屋の内面の全体を冷水による冷却面または温水による加熱面とするのは、コストやインテリア性の点から困難である。しかしながら、部屋の内面の一部を冷放射源または熱放射源として利用することで、冷房時には、人体を囲む多方向への人体からの熱放射を周囲に吸収させ、暖房時には、人体を囲む多方向への人体からの熱放射を減少させることができる。そのため、冷却面または加熱面の面積が制限され、またその設置場所が制限されていても、部屋内面全体を使った熱放射を利用した冷房または暖房を行える。
【0040】
以下、同一分子種間における熱放射を介した熱交換が高い効率で行われる原理について説明する。同一分子種間における熱放射を介した熱交換が高い効率で行われるのは、同一分子種の物質(同一組成および同一分子構造を持った物質)であれば、電磁波を介した同一分子間における分子振動の共鳴現象が起こるからである。遠赤外線を介して行われる熱交換の場合、以下、この共鳴現象を遠赤外共鳴と呼ぶ。これは、同じ固有振動周波数の音叉間における音波エネルギーの伝搬現象、あるいは同じ同調周波数の同調回路間における電気信号の伝達や電磁波の伝搬現象において、エネルギーの伝達が高い効率で行われるのと類似な現象として理解できる。
【0041】
以下、データに基づいて、この原理について説明する。図1(a)と図1(b)は、遠赤外放射材料の電磁波の波長に対する放射率のデータとして、それぞれZrO2+CaOとAl2O3+TiO2の熔射皮膜(厚さ400μm)を600℃に加熱した場合における放射特性を示している。なお、ZrO2とCaOの成分比、およびAl2O3とTiO2の成分比はそれぞれ1:1(重量比)である。
【0042】
図1(a)と図1(b)には、ZrO2+CaO皮膜とAl2O3+TiO2皮膜とで、波長に対する放射率の特性が異なることが示されている。これは、遠赤外線放射物質の組成が異なれば(つまり分子種が異なれば)、波長に対する放射率の特性が異なることを示している。
【0043】
ここで、両皮膜間に温度差を与え、ZrO2+CaO皮膜を相対的に高温、Al2O3+TiO2皮膜を相対的に低温とし、ZrO2+CaO皮膜から放射される遠赤外線をAl2O3+TiO2皮膜に吸収させる場合を考える。キルヒホッフの法則より、放射率は、その材料の吸収率と同じあるから、理想的な条件を考えた場合、放射率が一致する波長において、ZrO2+CaO皮膜から放射され、Al2O3+TiO2皮膜に向かう遠赤外線は、Al2O3+TiO2皮膜に100%吸収される。つまり、両皮膜間において遠赤外線共鳴が起こり、エネルギーの輸送効率という観点で見ると、損失がない放射エネルギーのやり取りが行われる。このように、遠赤外線共鳴が起こることによって、少ない損失で遠赤外線が吸収されることを以下、共鳴吸収と呼ぶ。
【0044】
一方、ZrO2+CaO皮膜の放射率がAl2O3+TiO2皮膜の放射率よりも大きな値となる波長では、この放射率(吸収率)の差に起因して、ZrO2+CaO皮膜から放射された遠赤外線の一部は、Al2O3+TiO2皮膜に吸収されない。これは、放射率=吸収率であるから、その波長において(物質Aの放射率>物質Bの放射率=物質Bの吸収率)であれば、物質Aから放射された放射エネルギーの一部が物質Bに吸収されないからである。たとえば、ある波長において、物質Aの放射率が0.9であり、物質Bの放射率が0.1である場合、両皮膜間において遠赤外線共鳴は少ししか起こらず、物質Aから放射された当該波長の遠赤外線は、物質Bで僅かしか吸収されず、そのほとんどは反射される。これは、エネルギーの輸送効率という観点で見ると、損失を伴う放射エネルギーのやり取りであるといえる。
【0045】
また、温度差の関係を逆とし、ZrO2+CaO皮膜に、Al2O3+TiO2皮膜から放射される遠赤外線を吸収させる場合を考えると、同様な理屈により、放射率が一致する波長において、遠赤外線共鳴が起こり、ZrO2+CaO皮膜に向かって、Al2O3+TiO2皮膜から放射される遠赤外線は、ZrO2+CaOに100%吸収される(理想的な条件の場合)。しかしながら、ZrO2+CaOの放射率がAl2O3+TiO2の放射率よりも小さい波長では、両皮膜間において遠赤外線共鳴はあまり起こらず、Al2O3+TiO2から放射された当該波長の遠赤外線の一部は、ZrO2+CaOに吸収されず、損失が発生する。
【0046】
つまり、波長に対する放射率の特性の異なる材料間(すなわち、異なる分子種間)では、理想的な場合であっても、熱放射のやり取りにおいて損失が発生する。一方、波長に対する放射率の特性の同じ材料間(すなわち、同一の分子種間)では、理想的な状況において、遠赤外線共鳴により、熱放射のやり取りにおいて損失が発生しない。本発明の一実施形態は、同一分子種間における熱放射を介した熱交換が高い効率で行われる上述の遠赤外線共鳴の原理に基づく室内環境調整システムを提供するものである。
【0047】
図面を参照して本発明の一実施形態の室内環境調整システムをより具体的に説明する。本発明の一実施形態におけるシステムでは、同一分子種間における熱放射を介した伝熱が高い効率で行われる現象を利用して、室内面構成部材と冷却源の冷却面との間で熱放射を介した伝熱を高い効率で行わせることにより、冷房効果を得ている。
【0048】
このシステムにおいて、冷却面での除湿は、副次的な効果に過ぎない。冷却面は、冷媒などにより冷却されることで、冷房効果を発揮する。その際に、冷やされた冷却面の温度が室内環境中に存在する湿分の露点以下に低下した場合に、冷却面で結露が生じ、その結果実質的に除湿がなされることになる。空気中の湿分は遠赤外線の吸収物質であるので、壁面などの室内面構成材料の遠赤外線吸収機能や、人体から室内面構成部材への遠赤外線吸収を阻害する傾向を有する。したがって、冷却面での結露の結果として室内環境の除湿がなされると、本発明の一実施形態におけるシステムによる放射を利用した冷房効果の効率を高めることができる。さらに、除湿の結果、不快指数が下げられるので、この点でも冷房効果を高めることができる。
【0049】
このように、本発明の一実施形態におけるシステムにおいて、除湿は有利ではあるが、不可欠なわけではなく、除湿が行われるかどうかは、本発明の一実施形態におけるシステムを適用した室内環境の湿度と、冷媒などで冷やされた冷却面の温度とに依存する。
【0050】
図2は、本発明の一実施形態における室内環境調整システムを備えた部屋の概要を示す概念図である。図2(a)は部屋の平面図であり、図2(b)は図2(a)のA−A’断面図である。図2には、部屋100が示されている。ここで部屋100は、一戸建てや集合住宅等の住居用の部屋である。部屋100は、6面体形状の室内空間101を備えている。部屋は、床200、壁300および天井400により構成されている。ここで、床200、壁300および天井400に含まれる材料が室内面構成材料に対応する。また、部屋100には、遠赤外線放射および/または吸収装置110が配置されている。遠赤外線放射および/または吸収装置110の詳細については後述する。
【0051】
図2に示す遠赤外線放射および/または吸収装置110は、冷放射と熱放射を切り換えて行うことができる装置である。冷放射というのは、冷却されることで、周囲からの熱放射を吸収する作用のことをいい、熱放射というのは、加熱されることで、周囲に向かって熱放射を行う作用のことをいう。
【0052】
図2に示すように遠赤外線放射および/または吸収装置110は、室外機である冷温水発生装置111に接続されている。冷温水発生装置111は、ヒートポンプ機能を備え、冷水または温水を発生する。このヒートポンプ機能は、通常のエアコン等に用いられているものと同じ原理により動作する。なお、冷房効果だけを得るのであれば、冷水の発生機能だけでよい。また、暖房効果だけを得るのであれば、温水の発生機能だけでよい。
【0053】
遠赤外線放射および/または吸収装置110に、冷温水発生装置111から冷水が供給されると、後述するフィンが冷やされ、結露による除湿が行われる。また冷却されることで、フィンの表面は、冷放射を行う冷却面として機能する。すなわち、上述の冷却源はフィンに対応し、冷却面はフィンの表面に対応する。また、遠赤外線放射および/または吸収装置110に、冷温水発生装置111から温水が供給されると、上記フィンが温められ、このフィンの表面が加熱面(熱放射面)として機能する。すなわち、上述の加熱源はフィンに対応し、加熱面はフィンの表面に対応する。なお、冷水というのは、冷温水発生装置111の冷却機能によって冷却された水のことであり、温水というのは、冷温水発生装置111の加熱機能によって加熱された水のことをいう。なお、上記フィンに結露した水滴は、樋に滴下させて集められ、屋外に排水される。
【0054】
図3は、本発明の一実施形態における室内環境調整システムを備えた部屋の壁に配置された遠赤外線放射および/または吸収装置を示すである。図3(a)は遠赤外線放射および/または吸収装置110の正面図であり、図3(b)は、図3(a)のB−B’断面図である。遠赤外線放射および/または吸収装置110は、部屋100(図2参照)の床面113と壁面114に固定されている。遠赤外線放射および/または吸収装置110は、アルミニウムにより構成され、上下方向に延在する複数の遠赤外線放射および/または吸収部115を備えている。遠赤外線放射および/または吸収装置110は、熱伝導の良好な他の金属または合金材料、たとえばアルミニウム、鉄および銅など、またはそれらの合金など、で製作することもできる。
【0055】
遠赤外線放射および/または吸収装置110は、複数の遠赤外線放射および/または吸収部115、給水パイプ117、排水パイプ118、支柱119,120、樋121および排水管122を含む。ここで、遠赤外線放射および/または吸収装置110の構成要素の配置を明確に説明できるようにするために、便宜上、吸水パイプ117の軸を主軸とし、その主軸を基準に遠赤外線放射および/または吸収装置110の構成要素を説明する。
【0056】
図3および図4を参照して、遠赤外線放射および/または吸収装置110に設けられた遠赤外線放射および/または吸収部115を詳細に説明する。図3に示す遠赤外線放射および/または吸収装置110では、複数の遠赤外線放射および/または吸収部115は、主軸117と垂直をなし、主軸117に沿って並列に配置されている。また、遠赤外線放射および/または吸収部115は、壁面114と平行に並んでいる。遠赤外線放射および/または吸収部115の内部は、たとえばアルミニウムから作製される。図4は、後述の軸部の軸方向と垂直をなす面による遠赤外線放射および/または吸収部115の断面を示す概念図である。遠赤外線放射および/または吸収部115は、軸方向に延びる媒質流路115hが中に設けられている軸部115aと、軸部115aから放射状に延出し、軸部115aの軸方向に延在する6つのフィン115b〜115gとを有する。また、隣接するフィン115b〜115g同士のなす角度は40〜65°程度である。水などの媒質が媒質流路115hを通過する。
【0057】
6つのフィン115b〜115gのうち、2つのフィン115d,115gは、主軸117の軸方向に延在している。4つのフィン115b,115c,115e,115fは主軸117の軸方向に対して15〜75°程度の範囲の角度で、好ましくは約40〜約65°程度の範囲の角度で、より好ましくは約60°の角度で、斜めに配置されている。
【0058】
主軸117の軸方向に延在しているフィン115d,115gの主軸117の軸方向の長さは、主軸117と軸部115aの軸(以下、副軸と呼ぶ)とからなる面に他のフィン115b,115c,115e,115fを投影したときの影の長さに比べて小さい。これにより、遠赤外線放射および/または吸収部115同士の間隔を詰めて遠赤外線放射および/または吸収部115の配列密度を高めた場合でも、隣接する2つの遠赤外線放射および/または吸収部115のフィン115d,115g同士が重ならないようにできる。また、これにより、隣接する2つの遠赤外線放射および/または吸収部115におけるフィン115d,115g同士の間に隙間ができ、この隙間によって遠赤外線放射および/または吸収装置110を掃除しやすくなる。この隙間の大きさは、たとえば約4〜約5cmである。複数の遠赤外線放射および/または吸収部115は、主軸117と垂直をなし、主軸117に沿って並列に配置されているので、副軸は、主軸と垂直をなし、平行に並んでいることになる。
【0059】
フィン115b〜115gの表面は、冷却面および/または加熱面として機能する。そして、フィン115b〜115gは、冷放射源および/または熱放射源として機能する。冷却面は、結露により除湿を行う除湿面として機能することもできる。
【0060】
図4に示すように、フィン115b〜115gの表面には、遠赤外線の放射率が0.9を超える数値を示す花崗岩を粉砕した粉砕物(以下、石粉という)を混ぜた白い塗料により構成された厚さ約200μmのコーティング層115iが形成されている。なお、フィンの表面にさらに別の層を設けて、表面の近傍にコーティング層が存在するようにしてもよい。コーティング層115i中の石粉の粒径は、50μm以下とされている。この石粉のコーティング層115iにおける含有率は、塗料の硬化状態(乾燥状態)で20重量%とされている。より具体的には、このコーティング層115iが冷却面および加熱面として機能する。軸部115aにもコーティング層115iを設けてもよい。軸部115aにおいても遠赤外線を放射および/または吸収することができ、冷房および/または暖房の効果を高めることができる。
【0061】
図3(a)に示すように、遠赤外線放射および/または吸収部115の上部には、給水パイプ117が設けられ、その下部には、排水パイプ118が設けられている。給水パイプ117と排水パイプ118とは、遠赤外線放射および/または吸収部115を支持する支持部材としても機能する。給水パイプ117は、各遠赤外線放射および/または吸収部115の軸部115aの上端において媒質流路115h(図4参照)の上端と接続し、排水パイプ118は、各遠赤外線放射および/または吸収部115軸部115aの下端において媒質流路115h(図4参照)の下端と接続している。また、給水パイプ117と排水パイプ118のそれぞれは、屋外に配置された冷温水発生装置111(図2参照)に接続されている。
【0062】
図2に示す冷温水発生装置111から供給された冷水または温水は、給水パイプ117から遠赤外線放射および/または吸収部115内部の媒質流路115hに供給され、遠赤外線放射および/または吸収部115内部の媒質流路115hを下方に向かって流れ、排水パイプ118を介して、冷温水発生装置111に回収される。この回収された冷水または温水は、冷温水発生装置111において、再び冷却または加熱され、給水パイプ117に供給される。この冷水または温水の循環により、遠赤外線放射および/または吸収部115のフィン115b〜115gの温度調整が行われる。
【0063】
図3(a)に示すように、遠赤外線放射および/または吸収部115を上下から支持した給水パイプ117と排水パイプ118の両側は、支柱119と120により支えられている。支柱119と120の下端は、床面113に固定され、支柱119と120の上部が壁面114に固定されている。遠赤外線放射および/または吸収部115の下方には、断面が上方に向かって凹型またはV型を有する樋121が配置されている。樋121は、結露する水滴を集める水滴収集手段の一例である。樋121は、支柱119および120によって支えられ、図の左方向に傾斜する構造とされている。樋121の左端は、屋外に延長した配水管122に接続されている。この例では、結露によりフィンに付着した水滴は、樋121に滴下し、それにより樋121に集められ、最終的に排水管122から屋外に排水される。
【0064】
図示するように、遠赤外線放射および/または吸収部115における4つのフィン115b,115c,115e,115fは主軸117の軸方向に対して15〜75°程度の範囲の角度で、好ましくは40〜65°程度の範囲の角度で、より好ましくは約60°の角度で、斜めに配置されている。これにより、部屋100内のどの場所から見ても、フィン115b,115c,115e,115fのいずれかのフィンの面を、フィンの面に対して垂直の方向に近い方向から見ることができる。言い替えると、部屋100のどの部分からの遠赤外線も、フィンの面に対して垂直の方向に近い方向からフィンの面に到達する。これにより、フィンの面に到達した遠赤外線は、フィンの表面のコーティング層に効率よく吸収される。
【0065】
一方、1枚の平板のフィンで遠赤外線放射および/または吸収部を構成した場合、フィンの面に対して斜め方向(フィンの面に対する垂直の方向とのなす角度が大きな方向)から遠赤外線がフィンの面に入射する場合もある。この場合、フィンの表面で反射する遠赤外線の割合が高くなる場合があるので、フィンにおける遠赤外線の吸収効率が低くなる場合がある。
【0066】
また、4つのフィン115b,115c,115e,115fは主軸117の軸方向に対して15〜75°程度の範囲の角度で、好ましくは40〜65°程度の範囲の角度で、より好ましくは約60°の角度で、斜めに配置されているので、フィン115b,115c,115e,115fの表面から、部屋100の壁300に遠赤外線をまんべんなく放射することができる。
【0067】
遠赤外線放射および/または吸収部115における4つのフィン115b,115c,115e,115fと、副軸115aを通り主軸117に対して垂直である面とのなすそれぞれの角度は、好ましくは約25〜約65°であり、より好ましくは約30°または約45°である。これにより、部屋100内のどの場所から見ても、フィン115b,115c,115e,115fのいずれかのフィンの面を、フィンの面に対して垂直の方向に近い方向から見ることができ、フィンの面に到達した遠赤外線は、フィンの表面のコーティング層に効率よく吸収される。
【0068】
また、遠赤外線放射および/または吸収部115は、6つのフィン115b〜115gを有することによって、フィンの総面積を大きくできる。これにより、遠赤外線放射および/または吸収部115における遠赤外線の吸収量または放射量は大きくなり、遠赤外線放射および/または吸収部115における冷却および除湿の効率も高くなる。
【0069】
図2に示す部屋100の床200は、一般的な材料を用いた板張り(いわゆるフローリング)である。図5〜7は、本実施形態で用いた建材の構造を示す概念図である。図5には、部屋100の床200の断面構造が概念的に示されている。図5に示すように部屋100の床200は、建物の躯体201の上にアルミ箔203による、遠赤外線を反射する反射面を備えた断熱パネル202、および板材204を積層した断面構造を有している。
【0070】
板材204の表面は、2層のニス層205と206が表面保護層として形成されている。板材204に接したニス層205は、上述したフィン115b〜115g(図4参照)の表面に付着させたのと同じ石粉を0.5μm以下にさらに粉砕したものを乾燥状態において10重量%含んでいる。このニス層205は、ニスの原料に石粉を混ぜ、よく攪拌し、それを通常のニスと同様に塗布し、乾燥させることで得ている。ニス層206は、最表面の保護層であり、ニス層205と同じニスの原料に石粉を混ぜていないものを用いて形成されている。
【0071】
図2に示す部屋100の壁300は、厚さ約3mmの漆喰の壁面を備えている。この漆喰の壁面には、漆喰の原料に上述した石粉(粒径5μm以下)を硬化状態で5重量%となるように混ぜている。図6にこの壁300の断面構造を示す。図6には、壁300の基礎となる躯体301が示されている。躯体301には、アルミ箔302を躯体301側に備えた石膏ボード303が貼られている。石膏ボード303の室内側には、上述した石粉入りの漆喰が塗られ、厚さ約3mmの漆喰の壁面304が形成されている。
【0072】
部屋100の天井400の面も壁300と同じ構造の漆喰の面とされている。部屋100の天井部分の断面構造を示す図7には、天井400の基礎となる躯体401が示されている。躯体401の室内側には、躯体401側にアルミ箔402を備えた石膏ボード403が貼られ、石膏ボード403の室内側に、上述した石粉入りの漆喰が塗られ、厚さ約3mmの漆喰の天井面404が形成されている。
【0073】
次に、実施形態における冷房の原理について説明する。本発明の一実施形態における室内環境調整システムは、室内にいる人間の体に放射熱を吸収させて人間に涼しさを感じさせる技術であるので、ここでは、冷房という語を、室内にいる人間が涼しさを感じるようにする作用という意味で用いる。図8は、本実施形態における冷房効果の原理を説明する概念図である。図8(a)は部屋100の平面図であり、図8(b)は図8(a)のC−C’断面図である。冷温水発生装置111において、冷水を生成し、それを遠赤外線放射および/または吸収装置110に供給することで、冷房が行われる。
【0074】
遠赤外線放射および/または吸収装置110のフィン115b〜115g(図3、4参照)が冷水により冷却されると、フィン表面のコーティング層に含まれる石粉の温度が下がる。この結果、遠赤外線放射および/または吸収装置110のフィンからの遠赤外線の放射エネルギー密度(放射エネルギー量)は、同一組成の石粉を含んだ部屋100の床200、壁300、および天井400からの放射エネルギー密度に比較して低くなる(具体的にいうと、熱放射量計の測定値が小さくなる)。この差に起因して、部屋100の床200、壁300、および天井400から、遠赤外線放射および/または吸収装置110のフィンに向かって相対的な熱放射が生じる。この時、両方に同じ遠赤外線放射物質(石粉)が含まれているので、部屋100の床200、壁300、および天井400(以下、これらをまとめて内面と表現する)と、遠赤外線放射および/または吸収装置110のフィンとの間で行われる遠赤外線を介した熱エネルギーの移動は、高い効率で行われる。図8(a),(b)には、この際の熱放射(遠赤外線)が矢印41により概念的に示されている。
【0075】
この際、同一分子種間における熱放射エネルギーの交換効率が高い原理が作用するので、両者の間で行われる放射エネルギー密度は、同一分子としない場合に比較して大きい。こうして、部屋100の石粉を含んだ内面部分は、遠赤外線放射および/または吸収装置110に遠赤外線を吸収された分、室内空間に向かって放出する熱放射量が低下した状態となる。この結果、人体43が発する熱放射量との差が大きくなり、人体43から放射された遠赤外線が部屋100の石粉を含んだ内面部分に吸収されやすい状態となる。もちろん、部屋100内にいる人間の人体43から、遠赤外線放射および/または吸収装置110に直接吸収される熱放射もある。こうして冷房効果が得られる。
【0076】
図9は、冷房作用を説明する概念図である。図9(a)は部屋100の平面図であり、図9(b)は図9(a)のD−D’断面図である。上述したように、部屋100の内面が、部屋100内にいる人間の人体43からの熱放射を吸収しやすい状態とされることで、図9(a),(b)の波線の矢印42で示されるように、人体43から周囲への熱放射が、壁300や天井400、さらに床200に吸い取られる。これにより、人体43から熱放射の形で熱が奪われ、涼しいと感じる冷房効果が得られる。
【0077】
この冷房効果は、部屋の内面全体から熱放射の形で人体43から熱が吸収される形となる。このため、壁等における単位面積当たりの熱吸収能力が、遠赤外線放射および/または吸収装置110より小さくても、当該部屋内面の面積および人体43を囲む角度範囲で効いてくる。人間は、周囲にまんべんなく熱放射を行うので、部屋内面の全体で熱を熱放射の形で吸収するようにすることで、人体43から効率よく熱が吸収され、高い冷房効果(低い体感温度)が得られる。また、この効果は、室温を1〜2℃程度下げるだけであるが、人体から直接放射熱というかたちで、熱量が床面200、壁面300および天井面400に奪われるので、室温の低下以上に人間43は涼しさを感じることができる。
【0078】
このように、人体が発生する放射熱の吸収作用を利用することで、室温の温度低下が僅かであっても有意な冷房効果を得ることができる。この際、冷気の流れを利用しないので、冷気が肌に当たることによる弊害の発生を抑えることができる。また、空気中の遠赤外線吸収成分からの放射熱の吸収は、室内において偏りなく行われるので、室内の垂直方向における温度分布の偏りを小さくでき、エネルギーの利用効率を高くすることができる。また、室温の低下が僅かであるので、所謂冷房病の症状の発生を抑えることができる。
【0079】
また、本発明の一実施形態による人体からの放射熱を吸収させる方式の冷房は、冷房効果の立ち上がりが速く、いわゆる冷房の利きの即効性が高い。このことも、高い快適性と無駄なエネルギーの消費を下げる上で有用となる。とくに、人体43からの放射熱が床面200、壁面300および天井面400の3面に吸収されるので、人体の冷却効果が高い。
【0080】
また、冷房に必要な電力は、通常の冷房に比較して少なくて済むので、省エネルギーを達成することができる。とくに太陽電池を利用して冷房効果を得る場合、商用電力を利用せずに効果的に冷房効果を得ることができる。
【0081】
次に、本発明の一実施形態における暖房の原理について説明する。本発明の一実施形態における室内環境調整システムは、室内にいる人間の体に放射熱を吸収させて人間に温かさを感じさせる技術であるので、ここでは、暖房という語を、室内にいる人間が温かさを感じるようにする作用という意味で用いる。図10は、本実施形態における暖房効果の原理を説明する概念図である。図10(a)は部屋100の平面図であり、図10(b)は図10(a)のE−E’断面図である。冷温水発生装置111において、温水を生成し、それを遠赤外線放射および/または吸収装置110に供給することで、暖房が行われる。
【0082】
遠赤外線放射および/または吸収装置110のフィン115b〜115g(図3、4参照)が温水により加熱されると、フィン表面のコーティング層に含まれる石粉の温度が上がる。この結果、遠赤外線放射および/または吸収装置110のフィン115b〜115gから遠赤外線が室内空間101に放射される。図10には、遠赤外線放射および/または吸収装置110から放射される遠赤外線が符号44で示す矢印により概念的に示されている。
【0083】
遠赤外線放射および/または吸収装置110から放射された遠赤外線は、一部が人間43および室内空間101内の空気中の遠赤外線吸収成分に吸収され、他は床200、壁300および天井400に吸収される。この際、(1)床200、壁300および天井400は加熱されておらず(つまり、遠赤外線放射および/または吸収装置110よりも温度が低く)、さらに(2)床200、壁300および天井400は、遠赤外線放射および/または吸収装置110からの遠赤外線の発生源となるフィンの表面のコーティング層に含まれる石粉と同一の石粉が含まれているので、遠赤外線放射および/または吸収装置110が放射した遠赤外線は効率よく床200、壁300および天井400に吸収される。
【0084】
図11は、本発明の一実施形態による暖房作用を説明する概念図である。図11(a)は部屋100の平面図であり、図11(b)は図11(a)のF−F’断面図である。遠赤外線放射および/または吸収装置110からの遠赤外線を吸収した床200、壁300および天井400は、遠赤外線を再放射する。図11に、再放射された遠赤外線が符号45の破線の矢印により概念的に示されている。この再放射された遠赤外線45は、一部が人間43および室内空間101の空気中の遠赤外線吸収成分に吸収され、その他は、再度床200,壁300および天井400に再吸収される。この遠赤外線の再放射の際、床200、壁300および天井400のアルミ箔により、室内側に遠赤外線が反射されるので、遠赤外線放射および/または吸収装置110から放射された遠赤外線の熱エネルギーの散逸が抑えられる。これにより、エネルギーの有効利用を図ることができる。
【0085】
図10→図11→図10の現象が繰り返されることで、室内にいる人間43は、遠赤外線(放射熱)を周囲から受けて暖かさを感じ、また室内の空気中の遠赤外線吸収成分が遠赤外線を吸収して昇温する。こうして暖房効果が得られる。
【0086】
上述した本発明の一実施形態による暖房作用によれば、対流や熱伝導による暖房でなく、室内全体に行き渡る放射による暖房が行われるので、室内のとくに垂直方向における温度分布の偏差が抑えられる。また、直接加熱されるのは、遠赤外線放射および/または吸収装置110だけであり、その遠赤外線放射および/または吸収装置110から放射される遠赤外線を介して、熱を暖房に利用するので、エネルギーの有効利用を図ることができる。このため、エネルギーの無駄が抑えられる。また、室温の上昇のみではなく、放射熱により人体が暖かさを感じるので、この点においても投入エネルギーの有効利用を図ることができる。さらに、気流の流れを利用しないので、温風が肌に当たることによる不快感や健康への悪影響が発生しない。暖房の熱源として太陽熱を利用した温水や太陽電池による自家発電力を利用した場合、ゼロエミッションを実現することができる。
【0087】
幅125cm、高さ180cmm、奥行き18cmmの遠赤外線放射および/または吸収装置110の場合、所定の室内環境を調整するために必要な、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置110に循環させる冷水および/または温水の量は5リットルであった。一方、赤外線放射および/または吸収部を1枚の平板のフィンで構成した場合、本発明の一実施形態の遠赤外線放射および/または吸収装置110と同等の冷房および/または暖房の能力を有する遠赤外線放射および/または吸収装置のサイズは、幅136cm、高さ180cmm、奥行き22cmmであった。また、上記の室内環境を調整するために必要な、遠赤外線放射および/または吸収装置に循環させる冷水および/または温水の量は30リットルであった。
【0088】
これより、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置110によれば、遠赤外線放射および/または吸収装置の幅および奥行きを小さくすることができることがわかる。また、遠赤外線放射および/または吸収装置に循環させる冷水および/または温水の量も非常に少なく(6分の1)にすることができ、冷温水発生装置により冷却および/または加熱される水の量を少なくすることができるので、冷温水発生装置により水を冷却および/または加熱させるためのエネルギーを非常に小さくできる。また、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置110は、赤外線放射および/または吸収部を1枚の平板のフィンで構成した場合の遠赤外線放射および/または吸収装置に比べて、遠赤外線放射および/または吸収装置110の駆動を開始してから短い時間で涼しさや暖かさを人に感じさせることができる。本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置110により、いわゆる冷房および/または暖房の利きの即効性がさらに高くなる。
【0089】
以上の一実施形態による遠赤外線放射および/または吸収装置または室内環境調整システムは、次のような作用効果を奏する。
(1)以上の一実施形態による遠赤外線放射および/または吸収装置では、主軸(給水パイプ117の軸)と、主軸に対して垂直をなし、平行に並ぶ複数の副軸(軸部115aの軸)とを有し、遠赤外線を放射および/または吸収し、副軸の軸方向に延在する6つのフィン115b〜115gを含む遠赤外線放射および/または吸収部115を複数有し、6つの遠赤外線放射および/または吸収部115は、主軸に沿って並列に配置され、6つの放射および/または吸収部材のうちの4つのフィン115b,115c,115e,115fは、主軸の軸方向に対して15〜75°程度の範囲の角度で、好ましくは40〜65°程度の範囲の角度で、より好ましくは約60°の角度で、斜めに配置され、6つのフィン115b〜115gは、少なくともその表面またはその表面の近傍に遠赤外線を放射および/または吸収し遠赤外線の放射率が0.6以上である遠赤外線放射物質を含む材料を有するようにした。これにより、遠赤外線放射および/または吸収装置110の遠赤外線を吸収する効率を高めることができ、また遠赤外線放射および/または吸収装置110からまんべんなく遠赤外線を放射することができるので、高いエネルギー効率で室内環境の調整を行える。
【0090】
(2)以上の一実施形態による遠赤外線放射および/または吸収装置では、隣接するフィン同士115b〜115gのなす角度は約60°であるようにした。これにより、遠赤外線放射および/または吸収装置110の遠赤外線を吸収する効率をさらに高めることができ、また遠赤外線放射および/または吸収装置110からさらにまんべんなく遠赤外線を放射することができるので、さらに高いエネルギー効率で室内環境の調整を行える。
【0091】
(3)以上の一実施形態による遠赤外線放射および/または吸収装置では、6つのフィン115b〜115gは、主軸の軸方向に延在する2つのフィン115d,115gを含み、このフィン115d,115gの主軸の軸方向の長さは、主軸と副軸とからなる面にフィン115b,115c,115e,115fを投影したときの影の主軸の軸方向の長さよりも小さく、隣接する遠赤外線放射および/または吸収部115におけるフィン115d,115gの間には隙間があるようにした。これにより、これにより、フィン115b〜115gが結露した場合などに、遠赤外線放射および/または吸収装置110を掃除しやすくなる。
【0092】
(4)以上の一実施形態による遠赤外線放射および/または吸収装置では、遠赤外線放射および/または吸収部115は、副軸に沿って軸部115aを含み、軸部115aの中には、軸部115aを冷却および/または加熱する媒質が通る媒質流路115hが設けられているようにした。これにより、媒質流路115hを通る媒質を冷却することによって、フィン115b〜115gの表面を冷却面として機能させることができ、媒質流路115hを通る媒質を加熱することによって、フィン115b〜115gの表面を加熱面として機能させることができる。したがって、遠赤外線放射および/または吸収装置110を冷房装置としても暖房装置としても機能させることができるので便利である。
【0093】
(5)以上の一実施形態による室内環境調整システムは、環境調整すべき室内空間101に遠赤外線放射および/または吸収装置110を配置して構成されるようにした。これにより、高いエネルギー効率で室内環境の調整を行える。
【0094】
(6)以上の一実施形態による室内環境調整システムでは室内空間101の室内面を構成する床200、壁300および天井400は、フィン115b〜115gの遠赤外線放射物質と遠赤外線共鳴する同一の遠赤外線放射物質を含む材料を有し、軸部115aがフィン115b〜115gを冷却すると、その冷却の間、フィン115b〜115gが1次的な冷放射源となり、フィン115b〜115gの遠赤外線放射物質が、床200、壁300および天井400の遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を共鳴吸収することで、床200、壁300および天井400を室内101および/または人体43に対する2次的な冷放射源とし、および/または、軸部115aがフィン115b〜115gを加熱すると、その加熱の間、フィン115b〜115gが1次的な熱放射源となり、フィン115b〜115gの遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を床200、壁300および天井400の遠赤外線放射物質が共鳴吸収することで、床200、壁300および天井400を室内101および/または人体43に対する2次的な熱放射源とするようにした。これにより、高いエネルギー効率で室内環境の調整を行える。
【0095】
本発明の一実施形態における室内環境調整システムは、以下のように変形することができる。
(1)以上の本発明の一実施形態における室内環境調整システムでは、室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質は、フィンに含まれる遠赤外線放射物質と同一であった。しかし、フィンに含まれる遠赤外線放射物質と遠赤外線共鳴する遠赤外線放射物質であれば、室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質は、フィンに含まれる遠赤外線放射物質と同一である遠赤外線放射物質に限定されない。すなわち、室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質は、フィンに含まれる遠赤外線放射物質と遠赤外線共鳴する遠赤外線放射物質であれば、フィンに含まれる遠赤外線放射物質と異なる遠赤外線放射物質であってもよい。以下、室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質を例示する。
【0096】
(i)フィンに含まれる遠赤外線放射物質および室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質の4.5〜20μmの波長範囲内での積分放射率はともに0.6以上、好ましくは0.70以上となり、かつ、フィンに含まれる遠赤外線放射物質と室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質とにおいて、室内環境調整システムの作動温度域における波長4.5〜20μmの分光放射スペクトル上での重複領域が黒体放射の60%以上となるような室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質。
(ii)フィンに含まれる遠赤外線放射物質および室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質において、さらに、室内環境調整システムの作動温度域における波長7〜12μmの分光放射スペクトル上での重複領域が黒体放射の60%以上となるような室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質。
(iii)フィンに含まれる遠赤外線放射物質と室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質とにおいて、さらに、室内環境調整システムの作動温度域における波長7〜12μmの分光放射スペクトル上での重複領域が黒体放射の70%以上となるような室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質。
【0097】
フィンに含まれる遠赤外線放射物質が、室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質と異なると、エネルギー伝達の効率は低くなる。しかし、上述の室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質を使用した場合、遠赤外線共鳴により、フィンに含まれる遠赤外線放射物質から放射された遠赤外線は、室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質に少ないロスで吸収され、室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質から放射された遠赤外線は、フィンに含まれる遠赤外線放射物質に少ないロスで吸収される。したがって、フィンに含まれる遠赤外線放射物質が室内面構成部材を構成する材料に含まれる遠赤外線放射物質と異なっている場合であっても、エネルギー効率を高くした室内環境の調整を可能にする室内環境調整システムを提供できる。
【0098】
4.5〜20μmの波長範囲内での積分放射率は、次のようにして求めることができる。常温域における遠赤外線の放射エネルギーの測定は一般的にFT−IR(フーリエ変換赤外分光分析)法による分光放射率測定によって行われる。測定試料を疑似黒体壁に囲まれた試料室内にセットし、試料から放射される遠赤外線を微小な孔を通して分光器に導き、同時に試料とほぼ同一温度に保持された標準黒体炉から引き出された遠赤外線とともに検出器に導き、所定の振動数区間もしくは波長区間ごとのエネルギー強度(輝度)を測定する。この所定波長区間ごとの放射エネルギー強度(輝度)を所定の波長区間にわたって黒体放射と同時に表示したものを「分光放射輝度曲線」という。また、所定の波長区間ごとに試料からの放射輝度と黒体からの輝度との比率(0〜1.0)を波長ごとに全波長区間にわたって表示したものを「分光放射率曲線」もしくは「分光放射スペクトル」という。ここで「分光放射率」とは、ある特定の波長における試料物質に放射エネルギー強度(輝度)と同一温度、同一波長における黒体からの放射エネルギー強度(理論計算が可能)との比であり、「全放射率」とは、特定の温度における試料物質からの全放射エネルギーと同一温度における黒体からの全放射エネルギー(理論計算が可能)との比である。また、特定温度、特定の波長区間における試料物質からの放射エネルギー強度(輝度)と同一温度、同一波長区間における黒体放射のエネルギー強度(輝度)との比を「積分放射率」という。
【0099】
(2)以上の一実施形態では、遠赤外線放射および/または吸収部115は、軸部115aから放射状に延びる6つのフィン115b〜115gを有するが、遠赤外線放射および/または吸収部が有するフィンの数は6に限定されない。たとえば、図12(a)に示す遠赤外線放射および/または吸収部115Aのように、副軸の軸方向と垂直をなす面による断面形状が略V字型になるように配置され、副軸を通り主軸に対して垂直である面114aの一方側と他方側とにそれぞれ配置された2つのフィン115Ab,115Acを冷熱放射部遠赤外線放射および/または吸収部115Aは有するようにしてもよい。
【0100】
この場合も、フィンの面に到達した遠赤外線は、フィンの表面のコーティング層に効率よく吸収され、フィンの表面から、部屋の壁に遠赤外線をまんべんなく放射することができ、遠赤外線放射および/または吸収装置における遠赤外線の吸収量または放射量を大きくし、遠赤外線放射および/または吸収装置における冷却の効率を高くすることができる。2つのフィン115Ab,115Acと、副軸を通り主軸に対して垂直である面114aとのなすそれぞれの角度は、好ましくは約10〜約80°、より好ましくは約25〜約65°、さらにより好ましくは約25〜約50°であり、または約30°もしくは約45°である。
【0101】
また、図12(b)に示すように、遠赤外線放射および/または吸収部115Bは、上述の2つのフィン115Ab,115Ac以外に6つのフィン115Bb〜115Bgを有するようにしてもよい。すなわち、少なくとも上述の2つのフィン115Ab,115Acを遠赤外線放射および/または吸収部115は有していれば、遠赤外線放射および/または吸収部115が有するフィンの数は6に限定されない。
【0102】
図12(a),(b)は、本発明の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置に設けられた遠赤外線放射および/または吸収部における軸部の軸方向と垂直をなす面による変形例の断面を示す図である。なお、図12において、フィンの表面に設けられているコーティング層は省略されている。
【0103】
(3)以上の一実施形態では、フィン115b〜115gの主面は平滑であった。しかし、フィン115b〜115gの主面は凹凸を有するようにしてもよい。なお、遠赤外線放射および/または吸収装置の複数の遠赤外線放射および/または吸収部のうち、すべての遠赤外線放射および/または吸収部のすべてフィンの主面に凹凸があってもよいし、一部の遠赤外線放射および/または吸収部の一部のフィンの主面に凹凸があってもよい。ここで、「主面」とは、フィンの表面を構成する5つの面の中でもっとも大きな2つの面である。
【0104】
たとえば、複数のフィンのうちの少なくとも1つのフィンは、副軸の軸方向に延在し、フィンにおける副軸の軸方向と垂直をなす面による断面の長さ方向に並ぶ複数の突条部を、フィンの2つの主面にそれぞれ有するようにしてもよい。これにより、フィンの表面から、部屋の壁に遠赤外線をさらにまんべんなく放射することができる。また、フィンの総面積がさらに大きくなるので、遠赤外線放射および/または吸収部における遠赤外線の吸収量または放射量をさらに大きくし、遠赤外線放射および/または吸収部における冷却の効率をさらに高くすることができる。
【0105】
たとえば、図13に示す遠赤外線放射および/または吸収部115Cのように、軸部115Caの軸方向と垂直をなす面による突条部116Cの断面形状が、長さ方向115Ckの辺116Ckを底辺とする三角形であるようにしてもよい。これにより、フィンの表面から、部屋の壁に遠赤外線をよりまんべんなく放射することができる。また、部屋の床、壁および天井から放射された遠赤外線がフィンの表面で反射された場合でも、隣接するフィンの間で反射を繰り返すことになるので、フィンにおける遠赤外線の吸収率が高くなる。
【0106】
軸部の軸方向と垂直をなす面による突条部の断面の形状の三角形において、突条部の断面の形状の三角形の底辺と底辺以外の2つの辺との間のなす角度は、好ましくは約30〜約120°である。これにより、フィンの表面から、部屋の壁に遠赤外線をよりまんべんなく放射することができる。たとえば、図13に示す遠赤外線放射および/または吸収部115Cのように、軸部115Caの軸方向と垂直をなす面による突条部116Cの断面の形状の三角形において、突条部116Cの断面の形状の三角形の底辺116Ckと底辺以外の2つの辺116Ca,116Cbとの間のなす角度を60°にしてもよい。この場合、突条部116Cの断面の形状は正三角形になる。
【0107】
また、図14に示す遠赤外線放射および/または吸収部115Dのように、軸部115Daの軸方向と垂直をなす面による突条部116Dの断面の形状の三角形において、底辺116Dkと底辺以外の2辺116Da,116Dbとの間のなす角度をそれぞれ45°および90°にしてもよい。この場合、突条部116Dの断面の形状は直角二等辺三角形になる。突状部の高さは、たとえば1mmであり、隣接する突状部の頂点間の距離は、たとえば2mmである。
【0108】
なお、遠赤外線放射および/または吸収部における遠赤外線の吸収量または放射量を大きくし、遠赤外線放射および/または吸収部における冷却の効率を高くすることができれば、フィンに設ける突条部は、軸部の軸方向と垂直をなす面による突条部の断面の形状が三角形である突条部に限定されない。たとえば、軸部の軸方向と垂直をなす面による突条部の断面の形状が台形および半円形状などの形状である突条部をフィンに設けてもよい。
【0109】
図13(a)は、本発明に一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置に設けられた遠赤外線放射および/または吸収部の変形例の一部を切り出した部分の斜視図であり、図13(b)は、変形例における軸部の軸方向と垂直をなす面による断面を示す図であり、図13(c)は、図13(b)の変形例の断面図においてフィンの部分を拡大して示す図である。図14(a)は、本発明に一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置に設けられた遠赤外線放射および/または吸収部の変形例における軸部の軸方向と垂直をなす面による断面を示す図であり、図14(b)は、図14(a)の変形例の断面図においてフィンの部分を拡大して示す図である。なお、図13および図14において、フィンの表面に設けられているコーティング層は省略されている。
【0110】
フィンの一方の主面に設けられた突条部の位置と、フィンの他方の主面に設けられた突条部の位置とは、副軸から延出する長さ方向の面に対して非対称であってもよい。たとえば、図15に示す遠赤外線放射および/または吸収部115Eのように、フィン115Ebの一方の主面に設けられた突条部116E1の位置がフィン115Ebの他方の主面に設けられた突条部116E2の位置に対して、長さ方向115Ekにずれていてもよい。これにより、押し出し法などの成型方法で、アルミニウムなどの金属を使用した軸部115aとフィン115b〜115gとを一体成形する場合、フィンの厚みを薄くしてフィンの厚さ方向における突状部の高さを高くすることができ、フィンを軽量化することができる。一方、フィンの一方の主面に設けられた突条部の位置と他方に設けられた突条部の位置とがフィンの延びる方向の面に対して対称である場合、突状部の高さが大きくなると、そのままフィンの厚みが厚くなるので、フィンは重くなる場合がある。
【0111】
また、押し出し法などの成型方法で材料を一体成形する場合、所定の厚さ、たとえば1mmの厚さよりも薄い成形体に成形できない場合がある。フィンの一方の主面に設けられた突条部の位置と他方に設けられた突条部の位置とがフィンの延びる方向の面に対して対称である場合、フィンの最大厚さと最小厚さとの差が大きいので、フィンの最大厚さを小さくしようとすると、フィンの最小厚みが1mm未満となり、一体成形できない場合がある。一方、フィンの一方の主面に設けられた突条部の位置と、フィンの他方の主面に設けられた突条部の位置とが、フィンの延出する方向の面に対して非対称である場合、フィンの最大厚みと最小厚さとの差を小さくできるので、フィンの最大厚さを小さくしようとしても、フィンの最小厚みを1mm以上にすることができ、一体成形することができる場合がある。なお、押し出し法などの成型方法で、アルミニウムなどの金属を使用した軸部115aとフィン115b〜115gとを一体成形すると、遠赤外線放射および/または吸収部を効率よく作製することができる。
【0112】
図15では、軸部の軸方向と垂直をなす面による突条部116E1,116E2の断面の形状のフィンの延びる方向115Ekの長さの半分の長さだけ、フィン115Ebの一方の主面に設けられた突条部116E1の位置がフィン115Ebの他方の主面に設けられた突条部116E2の位置に対して、フィンの延びる方向115Ekにずれている。図15(a)は、本発明に一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置に設けられた遠赤外線放射および/または吸収部の変形例における軸部の軸方向と垂直をなす面による断面を示す図であり、図15(b)は、図15(a)の変形例の断面図においてフィンの部分を拡大して示す図である。なお、図15において、フィンの表面に設けられているコーティング層は省略されている。また、符号115Eaが軸部である。
【0113】
また、図14に示すように、フィンの主面は、隣接する突条部116D間に平坦部116Dcを有するようにしてもよい。これにより、コーティング層をフィンの表面に均一に形成することができる。フィンの主面において、隣接する突条部間に平坦部が存在しない場合、遠赤外線放射物質を含有する塗料をフィンに塗布したとき、隣接する突条部間に塗料が多く溜まる場合がある。しかし、隣接する突条部間に平坦部を設けることによって、隣接する突条部間に塗料が多く溜まることを抑制することができ、コーティング層をフィンの表面に均一に形成することができる。また、突条部が隣接する突条部の陰になることが少ないので、遠赤外線が隣接するフィンの間に閉じ込められることを少なくし、室内環境を調節する効率を高めることができる。
【0114】
また、図16に示すように、複数の突状部116Fにおいて、断面形状の三角形の底辺116Fkと、底辺以外の2つの辺のうちの副軸側の反対側の辺116Fa〜116Ffとのなす角度は、すべて同じであるということではないようにしてもよい。たとえば、図16に示す遠赤外線放射および/または吸収部115Fのように、軸部の軸方向と垂直をなす面による突条部116Fの断面形状の三角形の底辺116Fkと底辺以外の2つの辺のうちの軸部115Fa側の反対側の辺116Fa〜116Ffとの間のなす角度は、軸部115Fa側にある突状部116Fである程大きくなるようにしてもよい。これにより、フィンと室内面構成部材との間の熱放射のやり取りが増加してエネルギー効率をさらに高くした室内環境の調整を可能にする。
【0115】
図16(a)は、本発明に一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収装置に設けられた遠赤外線放射および/または吸収部の変形例における軸部の軸方向と垂直をなす面による断面を示す図であり、図16(b)は、図16(a)の変形例の断面図においてフィンの部分を拡大して示す図である。断面形状の三角形の辺116Fa〜116Ffは、辺116Faから辺116Ffへ進むにしたがって底辺116Fkと辺116Fa〜116Ffとのなす角度は大きくなっている。
【0116】
たとえば、底辺116Fkと辺116Faとのなす角度は30°であり、底辺116Fkと辺116Fbとのなす角度は約35°であり、底辺116Fkと辺116Fcとのなす角度は約40°である。また、底辺116Fkと辺116Fdとのなす角度は約45°であり、底辺116Fkと辺116Feとのなす角度は約50°であり、底辺116Fkと辺116Ffとのなす角度は約55°である。なお、図16において、フィンの表面に設けられているコーティング層は省略されている。
【0117】
なお、複数の突状部において、断面形状の三角形の底辺と、底辺以外の2つの辺のうちの副軸側の辺とのなす角度は、すべて同じであるということではないようにしてもよいし、複数の突状部において、断面形状の三角形の底辺と、底辺以外の2つの辺のうちの副軸側の辺とのなす角度、および断面形状の三角形の底辺と、底辺以外の2つの辺のうちの副軸側の反対側の辺とのなす角度は、すべて同じであるということではないようにしてもよい。
【0118】
(4)以上の一実施形態では、遠赤外線放射および/または吸収装置は、部屋の壁に沿って配置されていたが、遠赤外線放射および/または吸収装置の配置される位置は壁に沿った位置に限定されない。たとえば、部屋の中央に遠赤外線放射および/または吸収装置を配置してもよい。
【0119】
(5)以上の一実施形態では、遠赤外線放射および/または吸収部が上下方向に延在するように遠赤外線放射および/または吸収部は配置されたが、遠赤外線放射および/または吸収部の配置は、遠赤外線放射および/または吸収部装置を設置する室内の形状や大きさ等によって適宜変更できる。たとえば、遠赤外線放射および/または吸収部が左右方向に延在するように遠赤外線放射および/または吸収部を配置してもよい。
【0120】
(6)上述の一実施形態では、床、壁および天井の全てに石材又は石粉(遠赤外線放射物質)が含まれる構成としたが、遠赤外線放射物質を含む室内面構成部材は、床と壁、壁と天井、天井と床の3種の組み合わせのいずれかであってもよい。この際、一方の面から放射された遠赤外線が他方の面に到達しやすいようにすることが重要である。
【0121】
遠赤外線放射物質を含む室内面構成部材の組み合わせを、床と壁、壁と天井、天井と床の3種の組み合わせのいずれかとした場合、各室内面構成部材の全面に遠赤外線放射物質を含ませなくてもよいが、遠赤外線放射物質を含まない面積が増大する程、遠赤外線放射物質を含まない部分における放射熱の放射と吸収時における損失が増大する。このため、本発明の一実施形態における放射を利用した暖房効果および冷房効果は、低下する。よって、上記の組み合わせにおいて、各室内面構成部材の面の50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上の面積に遠赤外線放射物質を含ませる必要がある。また加熱面および/または冷却面は、複数の場所に分かれて配置されていてもよい。
【0122】
(7)上述の一実施形態では、遠赤外線放射物質の粉砕物(石粉)を漆喰またはニスに含有させる例を説明したが、当該粉砕物を混ぜることができる建材であれば、上記の例に限定されない。たとえば、壁紙等の内装部材に遠赤外線放射物質の粉砕物を含ませ、それを用いることで、本発明の効果を得ることもできる。また粉砕物を建材などの室内面構成部材の材料に混ぜるのではなく、セラミックスコーティング技術を利用して、遠赤外線放射物質を室内面構成部材の表面にコーティングしてもよい。
【0123】
(8)以上の一実施形態の室内環境調整システムを適用した部屋の床を、石粉の原料となる花崗岩をパネル状に成形した石材パネルにより構成した石床としてもよい。また、石床に床暖房装置を組み込み、暖房時に床暖房を利用してもよい。この場合、石床から放射される遠赤外線が石床と同一材料の石粉を含む壁や天井から2次的に再放射され、部屋全体から遠赤外線が放射される暖房効果を得ることができる。また床に加えて(あるいは床はフローリング等の通常の床で)、壁や天井を石材パネルで構成してもよい。もちろん、石材は花崗岩に限定されない。
【0124】
(9)以上の一実施形態においては、天然石である花崗岩を遠赤外線放射物質として用いる場合を説明したが、遠赤外線放射物質は、他の天然石(たとえば玄武岩等)やセラミックス材料(たとえば、炭化珪素、窒化珪素、ガラス等)であってもよい。また、遠赤外線放射物質は、複数種類混ぜて用いてもよい。この場合、床、壁および天井から選ばれた少なくとも室内面構成部材に含まれる遠赤外線放射物質の配合割合と、フィンの表面層に含まれる遠赤外線放射物質の配合割合とを同一としてもよい。
【0125】
(10)以上の一実施形態における遠赤外線放射および/または吸収部内部の媒質流路に流れる媒質として水を用いているが、水以外の媒質を用いることもできる。たとえば、冷房専用であれば、媒質としてアンモニア等の公知の冷媒を用いることができる。また暖房専用であれば、オイルや蒸気を媒質として用いることができる。
【0126】
(11)以上の一実施形態では、軸部115aの媒質流路115hに媒質を流すことによって軸部115を冷却したり加熱したりした。しかし、軸部115を冷却および/または加熱できれば、軸部115を冷却および/または加熱する方法は、媒質流路115hに媒質を流す方法に限定されない。たとえば軸部の中に発熱体(たとえば電熱線)を設けて軸部を加熱してもよい。
【0127】
また、軸部を冷却および/または加熱するのではなく図3(a)に示す給水パイプ117および/または排水パイプ118の部分にフィンを冷却および/または加熱する冷却および/または加熱部を設け、その冷却および/または加熱部がフィンを加熱および/または冷却するようにしてもよい。フィンの熱伝導性が良好である場合、またはフィンの長手方向の長さが短い場合、フィンの一部(たとえば端の部分のみ)を冷却および/または加熱するだけでフィン全体を冷却および/または加熱することができる。この場合、遠赤外線放射および/または吸収部は、フィンを冷却および/または加熱する軸部を有さなくてもよい。また、隣接する遠赤外線放射および/または吸収部の媒質流路115hの端部同士をパイプでつなぎ、遠赤外線放射および/または吸収部の媒質流路115hから排出された媒質が、隣接する遠赤外線放射および/または吸収部の媒質流路115hの中を流通するようにしてもよい。
【0128】
(12)以上の一実施形態では、遠赤外線について述べたが、テラヘルツ帯電磁波であれば、遠赤外線に限定されない。ここで、テラヘルツ帯電磁波とは、周波数100GHz〜100THz(波長3μm〜3mm)の電磁波である。たとえば、フィンは、少なくともその表面またはその表面の近傍にサブミリ波を放射および/または吸収しサブミリ波の放射率が0.6以上であるサブミリ波放射物質を含む材料を有してもよい。また、この場合、室内空間の室内面を構成する室内面構成部材は、フィンのサブミリ波放射物質とサブミリ波共鳴する同一のまたは異なるサブミリ波放射物質を含む材料を有し、フィンを冷却すると、その冷却の間、フィンが1次的な冷放射源となり、フィンのサブミリ波放射物質が、室内面構成部材のサブミリ波放射物質が放射するサブミリ波を共鳴吸収することで、室内面構成部材を室内および/または人体に対する2次的な冷放射源とし、および/または、フィンを加熱すると、その加熱の間、フィンが1次的な熱放射源となり、フィンのサブミリ波放射物質が放射するサブミリ波を室内面構成部材のサブミリ波放射物質が共鳴吸収することで、室内面構成部材を室内および/または人体に対する2次的な熱放射源とする。
【0129】
(13)本発明の一実施形態を部屋に適用した例を説明したが、教室、オフィス、スポーツ施設、図書館、店舗、その他人間が活動や生活をする部屋全般に本発明は利用することができる。上述の実施形態は例示であり、物件や施工現場に合わせて、各種建材や工法を適宜選択できることはいうまでもない。
【0130】
以上の実施形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることも可能である。また、変形例同士をどのように組み合わせることも可能である。
【0131】
以上の説明はあくまで一例であり、発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0132】
41,42,44,45 遠赤外線
43 人体
100 部屋
101 室内空間
110 遠赤外線放射および/または吸収装置
111 冷温水発生装置
115,115A〜115E 遠赤外線放射および/または吸収部
115a 軸部(副軸)
115b〜115g,115Ab,115Ac フィン
115h 媒質流路
115i コーティング層
116C,116D,116E1,116E2 突条部
117 給水パイプ(主軸)
200 床
205 ニス層
300 壁
304 漆喰の壁面
400 天井
404 漆喰の天井面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸と、該主軸に対して垂直をなし、平行に並ぶ複数の副軸とを有し、
遠赤外線を放射および/または吸収し、前記副軸の軸方向に延在する複数の放射および/または吸収部材を含む遠赤外線放射および/または吸収部を複数有し、
前記複数の遠赤外線放射および/または吸収部は、前記主軸に沿って並列に配置され、
前記複数の放射および/または吸収部材のうちの2つの放射および/または吸収部材は、前記副軸の軸方向と垂直をなす面による断面形状が略V字型になるように配置され、
前記2つの放射および/または吸収部材は、前記副軸を通り前記主軸に対して垂直である面の一方側と他方側とにそれぞれ配置され、
前記複数の放射および/または吸収部材は、少なくともその表面またはその表面の近傍に遠赤外線を放射および/または吸収し遠赤外線の放射率が0.6以上である遠赤外線放射物質を含む材料を有する遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項2】
前記2つの放射および/または吸収部材と、前記副軸を通り前記主軸に対して垂直である面とのなすそれぞれの角度が25〜65°である請求項1に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項3】
前記複数の放射および/または吸収部材は、前記2つの放射および/または吸収部材の他に、前記主軸の軸方向に延在する2つの主軸方向放射および/または吸収部材を含み、
前記主軸方向放射および/または吸収部材の前記主軸の軸方向の長さは、前記主軸と前記副軸とからなる面に前記2つの放射および/または吸収部材を投影したときの影の前記主軸の軸方向の長さよりも小さく、
隣接する前記遠赤外線放射および/または吸収部における前記主軸方向放射および/または吸収部材の間には隙間がある請求項1または2に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項4】
前記放射および/または吸収部材のうちの少なくとも1つの放射および/または吸収部材の主面は、凹凸を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項5】
前記放射および/または吸収部材のうちの少なくとも1つの放射および/または吸収部材は、前記副軸の軸方向に延在し、前記放射および/または吸収部材における前記副軸の軸方向と垂直をなす面による断面の長さ方向に並ぶ複数の突条部を、前記放射および/または吸収部材の2つの主面にそれぞれ有する遠赤外線放射および/または吸収部を有する、請求項4に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項6】
前記副軸の軸方向と垂直をなす面による前記突条部の断面形状が、前記長さ方向の辺を底辺とする三角形である請求項5に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項7】
前記複数の突状部において、前記断面形状の三角形の前記底辺と、前記底辺以外の2つの辺のうちの前記副軸側の辺とのなす角度および/または前記断面形状の三角形の前記底辺と、前記底辺以外の2つの辺のうちの前記副軸側の反対側の辺とのなす角度は、すべて同じであるということではない請求項6に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項8】
前記放射および/または吸収部材の主面は、隣接する前記突条部の間に平坦部を有する請求項5〜7のいずれか1項に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項9】
前記放射および/または吸収部材の一方の主面に設けられた突条部の位置と、前記放射および/または吸収部材の他方の主面に設けられた突条部の位置とは、前記副軸から延出する前記長さ方向の面に対して非対称である請求項5〜8のいずれか1項に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項10】
前記遠赤外線放射および/または吸収部は、前記副軸に沿って軸部を含み、
前記軸部の中には、前記軸部を冷却および/または加熱する媒質が通る媒質流路が設けられている請求項1〜9のいずれか1項に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項11】
環境調整すべき室内空間に請求項1〜10のいずれか1項に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置を配置して構成される室内環境調整システム。
【請求項12】
前記室内空間の室内面を構成する室内面構成部材は、前記放射および/または吸収部材の前記遠赤外線放射物質と遠赤外線共鳴する同一のまたは異なる遠赤外線放射物質を含む材料を有し、
前記放射および/または吸収部材を冷却すると、その冷却の間、前記放射および/または吸収部材が1次的な冷放射源となり、前記放射および/または吸収部材の前記遠赤外線放射物質が、前記室内面構成部材の前記遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を共鳴吸収することで、前記室内面構成部材を室内および/または人体に対する2次的な冷放射源とし、および/または、
放射および/または吸収部材を加熱すると、その加熱の間、前記放射および/または吸収部材が1次的な熱放射源となり、前記放射および/または吸収部材の前記遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を前記室内面構成部材の前記遠赤外線放射物質が共鳴吸収することで、前記室内面構成部材を室内および/または人体に対する2次的な熱放射源とする請求項11に記載の室内環境調整システム。
【請求項1】
主軸と、該主軸に対して垂直をなし、平行に並ぶ複数の副軸とを有し、
遠赤外線を放射および/または吸収し、前記副軸の軸方向に延在する複数の放射および/または吸収部材を含む遠赤外線放射および/または吸収部を複数有し、
前記複数の遠赤外線放射および/または吸収部は、前記主軸に沿って並列に配置され、
前記複数の放射および/または吸収部材のうちの2つの放射および/または吸収部材は、前記副軸の軸方向と垂直をなす面による断面形状が略V字型になるように配置され、
前記2つの放射および/または吸収部材は、前記副軸を通り前記主軸に対して垂直である面の一方側と他方側とにそれぞれ配置され、
前記複数の放射および/または吸収部材は、少なくともその表面またはその表面の近傍に遠赤外線を放射および/または吸収し遠赤外線の放射率が0.6以上である遠赤外線放射物質を含む材料を有する遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項2】
前記2つの放射および/または吸収部材と、前記副軸を通り前記主軸に対して垂直である面とのなすそれぞれの角度が25〜65°である請求項1に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項3】
前記複数の放射および/または吸収部材は、前記2つの放射および/または吸収部材の他に、前記主軸の軸方向に延在する2つの主軸方向放射および/または吸収部材を含み、
前記主軸方向放射および/または吸収部材の前記主軸の軸方向の長さは、前記主軸と前記副軸とからなる面に前記2つの放射および/または吸収部材を投影したときの影の前記主軸の軸方向の長さよりも小さく、
隣接する前記遠赤外線放射および/または吸収部における前記主軸方向放射および/または吸収部材の間には隙間がある請求項1または2に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項4】
前記放射および/または吸収部材のうちの少なくとも1つの放射および/または吸収部材の主面は、凹凸を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項5】
前記放射および/または吸収部材のうちの少なくとも1つの放射および/または吸収部材は、前記副軸の軸方向に延在し、前記放射および/または吸収部材における前記副軸の軸方向と垂直をなす面による断面の長さ方向に並ぶ複数の突条部を、前記放射および/または吸収部材の2つの主面にそれぞれ有する遠赤外線放射および/または吸収部を有する、請求項4に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項6】
前記副軸の軸方向と垂直をなす面による前記突条部の断面形状が、前記長さ方向の辺を底辺とする三角形である請求項5に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項7】
前記複数の突状部において、前記断面形状の三角形の前記底辺と、前記底辺以外の2つの辺のうちの前記副軸側の辺とのなす角度および/または前記断面形状の三角形の前記底辺と、前記底辺以外の2つの辺のうちの前記副軸側の反対側の辺とのなす角度は、すべて同じであるということではない請求項6に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項8】
前記放射および/または吸収部材の主面は、隣接する前記突条部の間に平坦部を有する請求項5〜7のいずれか1項に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項9】
前記放射および/または吸収部材の一方の主面に設けられた突条部の位置と、前記放射および/または吸収部材の他方の主面に設けられた突条部の位置とは、前記副軸から延出する前記長さ方向の面に対して非対称である請求項5〜8のいずれか1項に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項10】
前記遠赤外線放射および/または吸収部は、前記副軸に沿って軸部を含み、
前記軸部の中には、前記軸部を冷却および/または加熱する媒質が通る媒質流路が設けられている請求項1〜9のいずれか1項に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置。
【請求項11】
環境調整すべき室内空間に請求項1〜10のいずれか1項に記載の遠赤外線放射および/または吸収装置を配置して構成される室内環境調整システム。
【請求項12】
前記室内空間の室内面を構成する室内面構成部材は、前記放射および/または吸収部材の前記遠赤外線放射物質と遠赤外線共鳴する同一のまたは異なる遠赤外線放射物質を含む材料を有し、
前記放射および/または吸収部材を冷却すると、その冷却の間、前記放射および/または吸収部材が1次的な冷放射源となり、前記放射および/または吸収部材の前記遠赤外線放射物質が、前記室内面構成部材の前記遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を共鳴吸収することで、前記室内面構成部材を室内および/または人体に対する2次的な冷放射源とし、および/または、
放射および/または吸収部材を加熱すると、その加熱の間、前記放射および/または吸収部材が1次的な熱放射源となり、前記放射および/または吸収部材の前記遠赤外線放射物質が放射する遠赤外線を前記室内面構成部材の前記遠赤外線放射物質が共鳴吸収することで、前記室内面構成部材を室内および/または人体に対する2次的な熱放射源とする請求項11に記載の室内環境調整システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−104615(P2013−104615A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248973(P2011−248973)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(504250897)石の癒株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(504250897)石の癒株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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