説明

遠隔操作式作業機への燃料供給システム

【課題】離れた位置にある遠隔操作式作業機械に対して確実に燃料を供給できる燃料供給システムを提供すること。
【解決手段】吊り上げ装置4を操作して給油タンク6を作業機2の車体上面2aの所定位置に吊り降ろして、作業機2の燃料タンク24に燃料を供給する燃料供給システムであって、燃料タンク24は、作業機2に備え付けられているとともに、給油タンク6の吊り降ろし位置を作業機2の車体上面2aの所定位置へと案内するガイド手段Aと、給油タンク6が作業機2の車体上面2aの所定位置に吊り降ろされた時に供給口6aを開放し、給油タンク6に収容されている燃料を燃料タンク24へと供給可能にする供給口開閉手段Bと、給油タンク6が作業機2の車体上面2aの所定位置に吊り降ろされていることを報知する報知手段Cと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠隔操作で稼働する遠隔操作式作業機への燃料供給システムに関し、詳しくは、作業員の立ち入りが困難な場所で使用される遠隔操作式作業機に、作業員が近づくことなく燃料を供給することができる燃料供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、落石や斜面崩壊の危険性が高い場所や、有毒ガス、高い放射線量が発生している場所など、人が立ち入ることができない危険な場所において工事を行う場合には、エンジンを動力源とし、遠隔操作によって稼働する遠隔操作式作業機が用いられている。このような遠隔操作式作業機によって工事を行う場合は、人が立ち入ることができない危険な場所で稼働している作業機に対して、軽油やガソリン等の燃料をどのような方法で効率的かつ迅速に供給するかが問題となる。
【0003】
特許文献1には、着脱自在に構成された外付けの可搬式燃料タンクを備えた作業機と、クレーン等の吊り上げ装置とからなる燃料供給システムが開示されている。この特許文献1の燃料供給システムによれば、燃料が収容された可搬式燃料タンクを吊り上げ装置によって作業機まで搬送し、この可搬式燃料タンクを作業機の車体上面に吊り降ろして作業機に装着することで、吊り上げ装置から離れた位置にある作業機に対して、作業員が作業機に近づくことなく、迅速に燃料の供給をすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2943646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の燃料供給システムは、着脱自在に構成された外付けの可搬式燃料タンクを用いたシステムであり、作業機は、その車体上面に可搬式燃料タンクが装着された状態のまま稼働することとなる。可搬式燃料タンクが車体上面に装着された状態では、車体の重心位置が高く安定性が悪くなり、作業機が本来備えている作業能力をフルに発揮することができなくなる。また、可搬式燃料タンクが作業機の車体上面に露出した状態で装着されるため、車体内部に燃料タンクを備えている作業機と比べて、燃料タンクの損傷による燃料漏れの危険性が高いとの問題がある。
【0006】
また、特許文献1の燃料供給システムでは、作業機に作業員が近づけない環境下で作業機に燃料タンクを吊り降ろす場合に、燃料タンクが所定の位置に吊り降ろされたことを確認することができないとの問題がある。
【0007】
本発明はこのような従来の課題に鑑みなされた発明であって、離れた位置にある遠隔操作式作業機に対して燃料を供給する燃料供給システムにおいて、作業機の車体の安定性を損なうことなく、また燃料タンクの損傷による燃料漏れの危険性が低く、さらには作業機に作業員が近づかなくても作業機に燃料が供給されていることを確認することができる遠隔操作式作業機への燃料供給システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、
本発明の遠隔操作式作業機への燃料供給システムは、
遠隔操作によって稼働する遠隔操作式作業機と、燃料が収容された給油タンクを吊り上げて搬送するクレーン等の吊り上げ装置とを備え、前記吊り上げ装置を操作して前記給油タンクを前記作業機の車体上面に吊り降ろすことで、前記給油タンクの供給口と前記作業機の給油口とが通油可能に接続され、前記給油タンクに収容されている燃料が前記作業機の燃料タンクへと供給される遠隔操作式作業機への燃料供給システムであって、
前記燃料タンクは、前記作業機に備え付けられているとともに、
前記作業機の車体上面に配置され、前記給油タンクの吊り降ろし位置を前記作業機の車体上面の所定位置へと案内するガイド手段と、
常時は前記給油タンクの供給口を閉止し、前記給油タンクが前記作業機の車体上面の所定位置に吊り降ろされた時には前記供給口を開放して、前記給油タンクに収容されている燃料を前記燃料タンクへと供給可能にする供給口開閉手段と、
前記給油タンクが前記作業機の車体上面の所定位置に吊り降ろされていることを報知する報知手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このように本発明は、給油タンクに収容されている燃料を作業機に備え付けられている燃料タンクに供給するシステムであり、燃料供給が完了した後の給油タンクは、吊り上げ装置によって吊り上げられて作業機から取り外される。よって、給油タンクを取り外した状態で作業機を稼働させることができるため、従来の燃料供給システムのように車体の安定性が悪くなることがなく、燃料タンクの損傷による燃料漏れの危険性も低減することができる。
【0010】
また本発明によれば、給油タンクが作業機の車体上面の所定位置に吊り降ろされていることを報知する報知手段を備えていることから、作業機に作業員が近づけない環境下であっても、給油タンクが所定の位置に吊り降ろされていることを確認することができる。
【0011】
上記発明において、前記報知手段は、前記給油タンクが前記所定位置に着地したことを検知して指令信号を送信する第1のセンサーと、該第1のセンサーから送信された指令信号を受信して点灯または消灯する第1の警告灯とを備えていることが望ましい。
これにより、簡単な構成で、給油タンクが所定位置に吊り降ろされていることを吊り上げ装置の作業者に知らせることができる。
【0012】
この際、前記報知手段は、前記給油タンクが前記ガイド手段によって案内されていることを検知して指令信号を送信する第2のセンサーと、該第2のセンサーから送信された指令信号を受信して点灯または消灯する第2の警告灯とを備えていることが望ましい。
これにより、給油タンクが作業機の上面に近い位置にあることを吊り上げ装置の作業者に知らせて、作業者に注意を喚起することができる。
【0013】
またこの際、前記作業機の燃料タンク内の燃料が所定量を下回った場合にそのことを検知して指令信号を送信する第3のセンサーと、該第3のセンサーから送信された指令信号を受信して点灯または消灯する第3の警告灯とを備えることが望ましい。
これにより、吊り上げ装置の作業者に、作業機内の燃料が所定量を下回ったことを知らせることができる。
【0014】
またこの際、前記第1の警告灯、第2の警告灯、および第3の警告灯が、それぞれ異なる色を発光するように構成されていることが望ましい。
これにより、吊り上げ装置の作業者が警告灯から発せられる信号を誤認することを防ぐことができる。
【0015】
またこの際、前記第1の警告灯、第2の警告灯、および第3の警告灯を撮影する撮影手段を備え、該撮影手段によって撮影した映像を前記吊り上げ装置の作業者が視認することができるように構成されていることが望ましい。
これにより、吊り上げ装置の作業者が警告灯から発せられる信号を確認しながら、吊り上げ装置を操作することができる。
【0016】
またこの際、前記給油タンクの供給口には、前記給油タンクから前記燃料タンクへと供給される燃料の供給量を調整する供給量調整手段が設けられており、
前記供給量調整手段は、前記給油タンクが満タンで、且つ前記燃料タンク内の燃料が前記第3の警告灯が点灯または消灯する所定量の状態において、前記給油タンクから前記燃料タンクへの燃料の供給が開始された場合に、燃料の供給開始から所定時間経過すると、前記燃料タンク内の燃料が満タンの80%〜100%になるようにその供給量が調整されていることが望ましい。
このように構成されていれば、給油タンクを作業機に吊り降ろし、所定時間経過した後に吊り上げることで、作業機の燃料タンク内の燃料を満タンの80%〜100%とすることができる。したがって、単純に吊り降ろし時間を管理するだけで、燃料タンクから燃料が溢れないように燃料を供給することができる。
【0017】
上記発明において、
前記供給口開閉手段が、前記給油タンクの供給口に接続された容器側バルブと、前記作業機の給油口に接続された作業機側バルブとからなり、
前記容器側バルブはバネ部材によって閉弁方向に付勢された弁体を備え、前記作業機側バルブは突起部を備えており、
前記給油タンクが前記作業機の車体上面の所定位置に吊り降ろされた際に、前記作業機側バルブの突起部が前記容器側バルブの弁体と当接し、前記バネ部材の付勢力に抗して前記弁体を開弁方向に押し上げることで、前記給油タンクに収容されている燃料が前記作業機内部の燃料タンクへと供給可能になることが望ましい。
このような供給口開閉手段とすれば、吊り降ろす給油タンクの重力を利用することで、特別な動力を用いることなく供給口を開閉することができる。
【0018】
この際、前記作業機側バルブの上方を覆う蓋部材と、該蓋部材をスライド移動可能に支持するスライド機構とを備える開閉装置を備え、
前記スライド機構は、常時は前記蓋部材が前記作業機側バルブの上方に位置するように支持するとともに、前記給油タンクが前記作業機の車体上面の所定位置に吊り降ろされる時には、前記蓋部材をスライド移動させるように構成されていることが望ましい。
このような開閉装置を備えていれば、常時は蓋部材によって作業機側バルブを覆って燃料タンクにゴミや塵などが混入するのを防ぐことができる。
【0019】
またこの際、前記開閉装置のスライド機構は第2のバネ部材を備え、該第2のバネ部材によって前記蓋部材が前記作業機側バルブの上方に位置するように付勢されているとともに、前記給油タンクが前記作業機の車体上面の所定位置に吊り降ろされる時には、前記給油タンクが前記スライド機構の一部と当接して、前記第2のバネ部材の付勢力に抗して前記蓋部材をスライド移動させるように構成されていることが望ましい。
このような開閉装置とすれば、吊り降ろす給油タンクの重力を利用することで、特別な動力を用いることなく蓋部材をスライド移動させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、離れた位置にある遠隔操作式作業機に対して燃料を供給する燃料供給システムにおいて、作業機の車体の安定性を損なうことなく、また燃料タンクの損傷による燃料漏れの危険性が低く、さらには作業機に作業員が近づかなくても作業機に燃料が供給されていることを確認することができる遠隔操作式作業機への燃料供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の燃料供給システムの概略の構成を示した説明図である。
【図2】図2は、本発明の遠隔操作式作業機を示した側面図である。
【図3】図3は、本発明の容器側バルブの詳細を示した断面図であり、図3の(a)は閉弁状態、図3の(b)は開弁状態を示した図である。
【図4】図4は、図3の(a)におけるA−A方向の断面図である
【図5】図5は、給油タンクの供給口とバックホウ(作業機)の給油口とが通油可能に接続された状態を示した断面図である。
【図6】図6は、本発明の開閉装置を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいてより詳細に説明する。
ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限り、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0023】
図1は、本発明の燃料供給システムの概略の構成を示した説明図である。
本発明は、作業員が立ち入ることができない危険な場所での工事において、特に好適に適用されるシステムである。以下、放射線量が高く、作業員が近づくことが困難な場所、例えば原子炉建屋を解体撤去する工事において、本発明の燃料供給システムを適用した場合を例に説明する。
【0024】
図1に示したように、本発明の燃料供給システムは、遠隔操作によって稼働するバックホウ2(遠隔操作式作業機)と、搭乗した作業員が直接操作することで稼働するクローラークレーン4(吊り上げ装置)を備えている。これら遠隔操作式のバックホウ2、およびクローラークレーン4は、基本的には従来公知の構造のものであるが、バックホウ2には、後述するガイド手段A、供給口開閉手段B、および確認信号発信手段Cなどが備えられている。そして、クローラークレーン4によって給油タンク6を吊り上げ、工事建屋1の周囲に仮設された足場3で稼働するバックホウ2の上方まで搬送し、バックホウ2の車体上面2aに吊り降ろすことで、給油タンク6とバックホウ2内部の燃料タンク24とが送油可能に接続され、給油タンク6に収容されているガソリン等の燃料が燃料タンク24へと供給されるようになっている。
【0025】
また図1に示したように、クローラークレーン4のクレーン先端にはカメラ8aが設置されている。また、足場3にもカメラ8bが設置されている。これらカメラ8a,8bは、本発明の撮影手段を構成するものであり、バックホウ2および後述する第1の警告灯14l、第2の警告灯16l、および第3の警告灯18lなどを撮影する。これらカメラ8a、8bで撮影された映像は、リアルタイムでクローラークレーン4を操作する作業員が見ることができるようになっており、作業員は、これらカメラ8a,8bから送られてくる映像を見ながらクローラークレーン4を操作する。
【0026】
図2は、本発明の遠隔操作式作業機を示した側面図である。
上述したガイド手段Aは、クローラークレーン4によって吊り降ろされる給油タンク6の吊り降ろし位置を車体上面2aの所定位置へと案内するためのものである。車体上面2aの所定位置に吊り降ろされた給油タンク6は、後述するように、燃料タンク24と通油可能に接続されるようになっている。
【0027】
また図2に示したように、ガイド手段Aは、給油タンク6が挿入可能に構成された円筒状のガイド部材10を備えている。本実施形態のガイド部材10は、上方開口が最も大径に形成された漏斗状に構成されている。なお、このガイド部材10の形状は、上方から吊り降ろされる給油タンク6がガイド部材10の内側に挿入され易く、かつガイド部材10の内側を通過する給油タンク6が車体上面2aの所定位置に案内されるような形状であればよく、上述した漏斗状には限定されない。例えば、上方開口が最も大径に形成された截頭円錐状に形成されていても良いものである。また本実施形態のガイド部材10は、複数のパイプ部材を加工、溶接して形成されており、外側からガイド部材10の内側を視認できるようになっている。
【0028】
また本実施形態では、ガイド手段Aとして、上述したガイド部材10の他に、ガイド部材10と一体的に形成された台座部材11、およびバックホウ2の車体に固定されるとともにこれらガイド部材10および台座部材11を支持固定する架台12を備えている。
【0029】
また図2に示したように、給油タンク6の下方は凹陥状に形成されており、その凹陥面7には、燃料が収容されている燃料室6bと連通する供給口6aが形成されている。またこの供給口6aには容器側バルブ26が取り付けられている。一方、バックホウ2の車体内部には燃料タンク24が形成されており、その車体上面2aには、燃料タンク24と連通する給油口24aが形成されている。この給油口24aには、ストレーナー31aを介して可撓ホース31の一端が接続されるとともに、可撓ホース31の他端は台座部材11の上に固定されている作業機側バルブ28と接続している。そして本実施形態の供給口開閉手段Bは、これら容器側バルブ26と作業機側バルブ28とから構成されている。
【0030】
図3は、容器側バルブ26の詳細を示した断面図であり、図3の(a)は閉弁状態、図3の(b)は開弁状態を示した図である。この図3に示したように、容器側バルブ26は、供給口6aの内側(燃料室6b側)に配置されているハウジング26aと、供給口6aの外側に配置されている弁座部材26bと、ハウジング26a内に上下動自在に収容されている弁体26cとを備えている。ハウジング26aと弁座部材26bとはボルト27aによって締結されている。また、弁座部材26bは、給油タンク6の凹陥面7の外側に溶接されている固定部材7aとボルト27bによって締結されており、これにより、容器側バルブ26が給油バルブ6の凹陥面7に取り付けられている。
【0031】
また、ハウジング26aの内部は、弁体26cの本体部26caによって、弁室29aとバネ部材収容室29bとに上下に2つに画成されている。そして、上側のバネ部材収容室29bにはバネ部材26dが配置されており、弁体26cを閉弁方向(弁座部材26b方向)へと付勢している。また、ハウジング26aには給油孔26eが形成されており、燃料室6bと弁室29aとを連通している。さらに、ハウジング26aには均圧孔26fが形成されており、燃焼室6bとバネ部材収容室29bとを連通している。
【0032】
このように構成される容器側バルブ26は、図3の(a)に示したように、常時は弁体26cが弁座部材26bの方向に付勢力F1で付勢され、弁体26cが弁座部材26bのシート面26baに押し付けられて、弁ポート26gを閉止した閉弁状態となっている。このため、燃料室6bに収容されている燃料は、供給口6aから流出しないようになっている。一方、図3の(b)に示したように、弁体26cに上向きの力F2が作用すると、バネ部材26dの付勢力F1に抗して弁体26cが上向きに押し上げられ、弁ポート26gが開放された開弁状態となる。そして、弁体26cが弁座部材26bのシート面26baから離れ、燃料室6bに収容されている燃料が、給油孔26eを通って弁体26cと弁座部材26bとの隙間へと流れ、供給口6aから流出する。
【0033】
上述した給油孔26eは、特に限定されないが、ハウジング26aの周方向に複数形成されているのが好ましい。図4は、図3の(a)におけるA−A方向の断面図であるが、本実施形態では図4の(a)に示したように、周方向に等間隔で合計12個の給油孔26eが形成されている。このように給油孔26eが複数形成されていれば、図4の(b)に示したように、例えばネジ41などの閉塞手段によっていくつかの給油孔26eを閉塞することで、給油タンク6から流出する燃料の供給量を調整することが可能となる。すなわち本実施形態では、複数の給油孔26eとネジ41などの閉塞手段によって、本発明の供給量調整手段を構成している。
【0034】
このように給油タンク6から供給される燃料の供給量が調整可能に構成されていれば、後述するように、燃料タンク24への燃料の供給作業が容易に行えるため好ましい。なお、本発明の供給量調整手段としては上述した構成に限定されず、例えば流量調整機能を有する弁を供給口6の適当な箇所に配置して供給量を調整可能に構成してもよい。
【0035】
また図5に示したように、作業機側バルブ28には、上向き突設する突起部28aと、この突起部28aの周囲から同じく上向きに突設する周壁28bとが形成されている。そして、突起部28aと周壁28bとの間の底面28dには、給油孔28cが周方向に複数形成されている。そして、作業機側バルブ28は、台座部材11の上面11aにボルト27cによって締結されている。
【0036】
また、図5に示したように、突起部28aと周壁28bとの間には、給油タンク6から流出した燃料が、底面28dに衝突して周壁28bを飛び越えて飛散しないように、飛散防止手段としてチェーン43が巻き付けられている。
【0037】
そして、給油タンク6がバックホウ2の車体上面2aの所定位置に吊り降ろされると、図5に示したように、容器側バルブ26の弁体26cの当接部26cbが、作業機側バルブ28の突起部28aと当接する。そして、バネ部材26dの付勢力に抗して弁体26cを開弁方向(燃料室6b方向)に押し上げ、燃料室6bに収容されている燃料が図中の矢印に示す如く流れて、作業機側バルブ28の給油孔28cへと流入する。そして、可撓ホース31を介して給油口24aから燃料タンク24へと流入する。また、燃料タンク24への燃料の供給が完了し、給油タンク6を吊り上げると、給油タンク6の自重によって押し上げられていた弁体26cが、バネ部材26dの付勢力によって閉弁方向(弁座部材26b方向)に押し下げられて再び閉弁状態へと戻るようになっている。
【0038】
このように、本発明の供給口開閉手段Bは、給油タンク6がバックホウ2の車体上面2aの所定位置に吊り降ろされると、常時は閉止されている供給口6aを開放し、給油タンク6とバックホウ2とを通油可能に接続するように構成されている。この際、本実施形態のように、供給口開閉手段Bが、上述した容器側バルブ26と作業機側バルブ28とから構成されていれば、吊り降ろす給油タンク6の重力を利用して給油タンク6の供給口6aを開閉することができるため、特別な動力なしに供給口6aを開閉することができる。
【0039】
次に本発明の報知手段Cについて説明する。
本発明の報知手段Cは、給油タンク6がバックホウ2の車体上面2aの所定位置に吊り降ろされていることを、離れた位置にいる作業者などに報知する手段である。本実施形態の報知手段Cは、図2に示したように、ガイド部材10の外側に配置されている第1のセンサー14sと、この第1のセンサー14sと不図示の配線によって接続されている第1の警告灯14lとから構成されている。
【0040】
第1のセンサー14sは、ガイド部材10の内側に吊り降ろされる給油タンク6が、容器側バルブ26の弁体26cの先端が作業機側バルブ28の突起部28aと当接する高さまで吊り降ろされた場合に、給油タンク6が所定位置に着地したものとして、そのことを検知して指令信号を送信するように構成されている。そして、第1のセンサー14sからの指令信号を受信した第1の警告灯14lは、そのことを離れた位置にいる作業者に報知すべく、例えば緑色に点灯するようになっている。離れた位置にいる作業者は、第1の警告灯14lが点灯していることを、前述したカメラ8a、カメラ8bによって視認することができる。
【0041】
このような報知手段Cを備えていれば、バックホウ2に作業員が近づけない環境下であっても、給油タンク6がバックホウ2の車体上面2aの所定位置に吊り降ろされたことを確認することができる。また、警告灯の点灯を確認信号として用いることで、簡単な構成で報知手段Cを構築することができる。
【0042】
また本実施形態の報知手段Cは、第2のセンサー16sと、この第2のセンサー16sと不図示の配線によって接続されている第2の警告灯16lとを備えている。図2に示したように、第2のセンサー16sは、上述した第1のセンサー14sの上方で、ガイド部材10の外側に配置されている。この第2のセンサー16sは、ガイド部材10の内側に吊り降ろされる給油タンク6が、ガイド部材10の内側の所定の高さまで吊り降ろされた場合に、そのことを検知して指令信号を送信するように構成されている。そして、第2のセンサー16sからの指令信号を受信した第2の警告灯16lは、そのことを作業者に報知すべく、例えば黄色に点灯する。離れた位置にいる作業者は、第2の警告灯16lが点灯していることを、前述したカメラ8a、カメラ8bによって視認し、これにより、給油タンク6がバックホウ2の車体上面2aに近い位置にあることを認知することができる。
【0043】
また本実施形態の燃料供給システムは、第3のセンサー18sと、この第3のセンサー18sと不図示の配線によって接続されている第3の警告灯18lとを備えている。図2に示したように、第3のセンサー18sは、バックホウ2の燃料タンク24の中に配置されている。この第3のセンサー18sは、例えばフロート式の液位センサーであって、燃料タンク24内の燃料が所定量(所定液位)を下回った場合に、そのことを検知して指令信号を送信するように構成されている。そして、第3のセンサー18sからの指令信号を受信した第3の警告灯18lは、そのことを作業者に報知すべく、例えば赤色に点灯する。離れた位置にいる作業者は、第3の警告灯18lが点灯していることを、前述したカメラ8a、カメラ8bによって視認し、これにより、給油タンク6内の燃料が所定量を下回ったことを認知することができる。
【0044】
また、本実施形態の燃料供給システムでは、給油タンク6の燃料の供給量は、上述した供給量調整手段によって、次の通りに調整されている。すなわち、給油タンク6が満タンで、且つ燃料タンク24内の燃料が第3の警告灯18lが点灯する所定量の状態において、給油タンク6から燃料タンク24への燃料の供給が開始された場合に、燃料の供給開始から所定時間経過すると、燃料タンク24内の燃料が満タンの80%〜100%になるように、その供給量が調整されている。
【0045】
給油タンク6からの供給量がこのように調整されていれば、給油タンク6をバックホウ2に吊り降ろし、所定時間経過した後に吊り上げることで、バックホウ2の燃料タンク24内の燃料を満タンの80%〜100%とすることができる。したがって、単純に吊り降ろし時間を管理するだけで、燃料タンク24から燃料が溢れないように燃料を供給することができる。
【0046】
また、上述した警告灯14l、16l、18lは、それぞれ異なる色を発光するように構成されている方が、作業者の誤認を防止できるため好ましい。
なお、上述した警告灯14l、16l、18lは、センサーからの指令信号を受信すると点灯するように構成されていたが、本発明はこれに限定されず、例えば、これまで点灯していたものが消灯することによって信号を発信してもよく、また点灯と消灯を繰り返すことで信号を発信してもよい。
【0047】
また、図2に示したように、台座部材11の上面11aの上には開閉装置30が配置されている。この開閉装置30は、図6に示したように、作業機側バルブ28の上方を覆う位置にある蓋部材32と、この蓋部材32を支持固定するスライダ部材34と、基端が台座部材11の上面に回動自在に固定された第1のリンク部材36と、この第1のリンク部材36と一端が回動自在に接続され、他端がスライダ部材34と回動自在に接続された第2のリンク部材38とを備えている。また、スライダ部材34は、スライダ部材34のスライド方向を案内するガイドレール35の上に配置されている。本実施形態では、これらスライダ部材34、ガイドレール35、第1のリンク部材36、および第2のリンク部材38とで、蓋部材32をスライド移動可能に支持するスライド機構を構成している。
【0048】
また、第1のリンク部材36の第2のリンク部材38との接続部よりも基端側には、第3のリンク部材40の一端が回動自在に接続されている。また、この第3のリンク部材40にはコイルスプリング40a(第2のバネ部材)が装着されており、このコイルスプリング40aの付勢力F3によって、図6の(a)に示したように、蓋部材32が付勢されて作業機側バルブ28の上方に位置するようになっている。
【0049】
また、給油タンク6が吊り降ろされると、給油タンク6の下面が第1のリンク部材36の先端部36aと当接することで、コイルスプリング40aの付勢力F3に抗して第1のリンク部材36が傾倒し、これに伴い第2のリンク部材38も傾倒するとともに、スライダ部材34がガイドレール35に沿ってスライド移動する。そして、図6の(b)に示したように、スライダ部材34に支持固定されている蓋部材32がスライド移動し、作業機側バルブ28の上方が開放されるようになっている。また、給油タンク6を吊り上げると、コイルスプリング40aの付勢力によって、蓋部材32が元の位置へと戻るようになっている。
【0050】
このような開閉装置30を備えていれば、常時は蓋部材32によって作業機側バルブ28を覆って燃料タンク24にゴミや塵などが混入するのを防ぐことができる。また、吊り降ろす給油タンク6の重力を利用して蓋部材32をスライド移動させるため、特別な動力を用いることなく蓋部材32をスライド移動させることができる。
【0051】
なお、本発明の開閉装置30は上述した構成には限定されない。本発明の開閉装置30としては、常時は蓋部材32が作業機側バルブ28の上方に位置するように支持し、給油タンク6がバックホウ2の車体上面2aの所定位置に吊り降ろされる時には、蓋部材32をスライド移動させるようなスライド機構を備えていればよいものである。したがって、例えば、給油タンク6の位置を検知するセンサーと、該センサーからの信号によって駆動し、蓋部材32をスライド移動させるアクチュエータを備えたスライド機構によって本発明の開閉装置を構成することも可能である。
【0052】
このように構成される本発明の燃料供給システムは、給油タンク6をバックホウ2の車体上面2aに吊り降ろす際に、上述したガイド手段Aによって、簡単に所定位置へと吊り降ろすことができるようになっている。また、車体上面2aの所定位置に吊り降ろされた給油タンク6は、上述した供給口開閉手段Bによって、その供給口6aと燃料タンク24の給油口24aとが自動的に給油可能に接続されるようになっている。また、給油タンク6が車体上面2aの所定位置に吊り降ろされていることは、上述した報知手段Cによって、離れた位置にいる作業者にも報知されるようになっている。よって、本実施形態のようにバックホウ2に作業員が近づけない環境下であっても、給油タンク6が所定の位置に吊り降ろされていることを確認することができるようになっている。
【0053】
また、本発明の燃料供給システムは、給油タンク6に収容されている燃料をバックホウ2の車体に備え付けられている燃料タンク24に供給するシステムであり、燃料供給が完了した後の給油タンク6は、クローラークレーン2によって吊り上げられてバックホウ4から取り外される。よって、給油タンク6を取り外した状態でバックホウ2を稼働させることができるため、従来の燃料供給システムのように車体の安定性が悪くなることがなく、燃料タンク24の損傷による燃料漏れの危険性も低減することができる。
【0054】
以上、本発明の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、離れた位置にある遠隔操作式作業機に、作業員が近づかなくても確実に燃料を供給することができるため、人が立ち入ることができない危険な場所における工事現場などに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 工事建屋
2 バックホウ(遠隔操作式作業機)
2a 車体上面
3 足場
4 クローラークレーン(吊り上げ装置)
6 給油タンク
6a 供給口
6b 燃焼室
7 凹陥面
8a,8b カメラ
10 ガイド部材
11 台座部材
12 架台
14l 第1の警告灯
14s 第1のセンサー
16l 第2の警告灯
16s 第2のセンサー
18l 第3の警告灯
18s 第3のセンサー
24 燃料タンク
24a 給油口
26 容器側バルブ
26a ハウジング
26b 弁座部材
26ba シート面
26c 弁体
26ca 本体部
26cb 当接部
26d バネ部材
26e 給油孔
26f 均圧孔
26g 弁ポート
27a、27b ボルト
28 作業機側バルブ
28a 突起部
28b 周壁
28c 給油孔
29a 弁室
29b バネ収容室
30 開閉装置
31 可撓ホース
31a ストレーナー
32 蓋部材
33 ガイドレール
34 スライダ部材
35 ガイドレール
36 第1のリンク部材
38 第2のリンク部材
40 第3のリンク部材
40a コイルスプリング
41 ネジ
43 チェーン
A ガイド手段
B 供給口開閉手段
C 報知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作によって稼働する遠隔操作式作業機と、燃料が収容された給油タンクを吊り上げて搬送するクレーン等の吊り上げ装置とを備え、前記吊り上げ装置を操作して前記給油タンクを前記作業機の車体上面に吊り降ろすことで、前記給油タンクの供給口と前記作業機の給油口とが通油可能に接続され、前記給油タンクに収容されている燃料が前記作業機の燃料タンクへと供給される遠隔操作式作業機への燃料供給システムであって、
前記燃料タンクは、前記作業機に備え付けられているとともに、
前記作業機の車体上面に配置され、前記給油タンクの吊り降ろし位置を前記作業機の車体上面の所定位置へと案内するガイド手段と、
常時は前記給油タンクの供給口を閉止し、前記給油タンクが前記作業機の車体上面の所定位置に吊り降ろされた時には前記供給口を開放して、前記給油タンクに収容されている燃料を前記燃料タンクへと供給可能にする供給口開閉手段と、
前記給油タンクが前記作業機の車体上面の所定位置に吊り降ろされていることを報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする遠隔操作式作業機への燃料供給システム。
【請求項2】
前記報知手段は、前記給油タンクが前記所定位置に着地したことを検知して指令信号を送信する第1のセンサーと、該第1のセンサーから送信された指令信号を受信して点灯または消灯する第1の警告灯とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作式作業機への燃料供給システム。
【請求項3】
前記報知手段は、前記給油タンクが前記ガイド手段によって案内されていることを検知して指令信号を送信する第2のセンサーと、該第2のセンサーから送信された指令信号を受信して点灯または消灯する第2の警告灯とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の遠隔操作式作業機への燃料供給システム。
【請求項4】
前記作業機の燃料タンク内の燃料が所定量を下回った場合にそのことを検知して指令信号を送信する第3のセンサーと、該第3のセンサーから送信された指令信号を受信して点灯または消灯する第3の警告灯とを備えることを特徴とする請求項3に記載の遠隔操作式作業機への燃料供給システム。
【請求項5】
前記第1の警告灯、第2の警告灯、および第3の警告灯が、それぞれ異なる色を発光するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の遠隔操作式作業機への燃料供給システム。
【請求項6】
前記第1の警告灯、第2の警告灯、および第3の警告灯を撮影する撮影手段を備え、該撮影手段によって撮影した映像を前記吊り上げ装置の作業者が視認することができるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の遠隔操作式作業機への燃料供給システム。
【請求項7】
前記給油タンクの供給口には、前記給油タンクから前記燃料タンクへと供給される燃料の供給量を調整する供給量調整手段が設けられており、
前記供給量調整手段は、前記給油タンクが満タンで、且つ前記燃料タンク内の燃料が前記第3の警告灯が点灯または消灯する所定量の状態において、前記給油タンクから前記燃料タンクへの燃料の供給が開始された場合に、燃料の供給開始から所定時間経過すると、前記燃料タンク内の燃料が満タンの80%〜100%になるように、その供給量が調整されていることを特徴とする請求項4に記載の遠隔操作式作業機への燃料供給システム。
【請求項8】
前記供給口開閉手段が、前記給油タンクの供給口に接続された容器側バルブと、前記作業機の給油口に接続された作業機側バルブとからなり、
前記容器側バルブはバネ部材によって閉弁方向に付勢された弁体を備え、前記作業機側バルブは突起部を備えており、
前記給油タンクが前記作業機の車体上面の所定位置に吊り降ろされた際に、前記作業機側バルブの突起部が前記容器側バルブの弁体と当接し、前記バネ部材の付勢力に抗して前記弁体を開弁方向に押し上げることで、前記給油タンクに収容されている燃料が前記作業機内部の燃料タンクへと供給可能になることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の遠隔操作式作業機への燃料供給システム。
【請求項9】
前記作業機側バルブの上方を覆う蓋部材と、該蓋部材をスライド移動可能に支持するスライド機構とを備える開閉装置を備え、
前記スライド機構は、常時は前記蓋部材が前記作業機側バルブの上方に位置するように支持するとともに、前記給油タンクが前記作業機の車体上面の所定位置に吊り降ろされる時には、前記蓋部材をスライド移動させるように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の遠隔操作式作業機への燃料供給システム。
【請求項10】
前記開閉装置のスライド機構は第2のバネ部材を備え、該第2のバネ部材によって前記蓋部材が前記作業機側バルブの上方に位置するように付勢されているとともに、前記給油タンクが前記作業機の車体上面の所定位置に吊り降ろされる時には、前記給油タンクが前記スライド機構の一部と当接して、前記第2のバネ部材の付勢力に抗して前記蓋部材をスライド移動させるように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の遠隔操作式作業機への燃料供給システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−103754(P2013−103754A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250159(P2011−250159)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000103035)エム・エイチ・アイさがみハイテック株式会社 (3)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】