説明

遮光性フィルム、積層体及び容器

【課題】 耐衝撃性が高く、加熱処理後のヒートシール強度の低下が防止され、しかも酸素吸収層を設けた場合でも、酸素吸収時の変色を隠蔽できる遮光性フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の遮光性フィルム10は、ポリプロピレン成分ならびにエラストマー成分からなるポリプロピレンブロック共重合体および遮光剤を主成分として含有し、筋状のエラストマー粒子が分散している中間層11と、中間層11の両面に形成され、ポリプロピレンブロック共重合体を主成分として含有し、筋状のエラストマー粒子が分散している表面層12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の透過を遮る遮光性フィルムに関する。また、酸素吸収層を設けた積層体及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
米飯容器、おかゆ容器などの食品用容器としては、紙やプラスチックからなる容器本体と、容器本体の開口部を封じる蓋材とを有する容器、四方シールの平袋、スタンディングパウチ等の袋状容器が用いられている。容器の蓋材としては、例えば、容器成形時にヒートシールするためのシーラント層と、容器内部に酸素が入り込まないように遮蔽するガスバリア層とを有する積層体が広く利用されている。そのシーラント層としては、易ヒートシール性や耐薬品性などの点から、主として、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂からなる層が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
食品包装において、特に容器内部の酸素濃度を低下させる場合には、ガスバリア層の容器内側に鉄系酸素吸収剤を含有する酸素吸収層を設ける。この酸素吸収層では、容器内部の酸素が鉄系酸素吸収剤と反応して酸化鉄を生成することにより、酸素の容器内部の濃度が低下する。これらの作用により、食品の酸化が抑制され食品の保存性が向上する。
【特許文献1】特開2003−103729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、鉄系酸素吸収剤を含有する酸素吸収層は、酸化鉄が生成した際に赤褐色に変色する。そのため、従来の積層体を使用した食品用容器においては、酸素吸収層の変色が容器内部のシーラント層側から見えることがあった。
特に、蓋材と容器本体からなる容器では、蓋材を容器本体から剥離した際に、蓋材裏面のシーラント層を通した酸素吸収層の変色は、袋状容器に比較して容易に見て取ることができる。
また、食品用容器は床等に落下した際の衝撃に耐えうる耐衝撃性が求められる。特に内容物が食品の場合には、腐敗防止のために冷蔵あるいは冷凍されるから、低温の耐衝撃性が求められる。
また、食品が充填された食品容器はレトルト処理され、滅菌されたものが市場で販売されている。食品容器にはレトルト処理時の加熱に耐えられるだけの耐熱性が求められ、具体的にはレトルト後のヒートシール強度が低下せず、レトルト前後でヒートシール強度の変化が少ないものが求められる。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、耐衝撃性が高く、加熱処理後のヒートシール強度の低下が防止され、しかも酸素吸収層を設けた場合でも、酸素吸収時の変色を隠蔽できる遮光性フィルムを提供することを目的とする。さらには、耐衝撃性が高く、加熱処理後のヒートシール強度の低下が防止され、酸素吸収層の変色を隠蔽できる積層体および容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、
(1)ポリプロピレン成分ならびにエラストマー成分からなるポリプロピレンブロック共重合体および遮光剤を主成分として含有し、筋状のエラストマー粒子が分散している中間層と、
該中間層の両面に形成され、ポリプロピレンブロック共重合体を主成分として含有し、筋状のエラストマー粒子が分散している表面層とを有する遮光性フィルムである。
(2)前記ポリプロピレンブロック共重合体におけるエラストマー成分中のプロピレン含有量が50〜80質量%、エラストマー成分の極限粘度値がポリプロピレン成分の極限粘度値に0.5加えた値以下である(1)に記載の遮光性フィルムである。
(3)(1)または(2)に記載の遮光性フィルムと、酸素吸収層と、ガスバリア層とを有する積層体である。
(4)(3)に記載の積層体を有し、積層体の遮光性フィルムが最内側に配置されている容器である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の遮光性フィルムは、耐衝撃性が高く、加熱処理後のヒートシール強度の低下が防止され、しかも酸素吸収層を設けた場合でも、酸素吸収時の変色を隠蔽できる。
本発明の積層体及び容器は、耐衝撃性が高く、加熱処理後のヒートシール強度の低下が防止され、酸素吸収層の変色を隠蔽できる。したがって、容器本体から積層体を剥離した際に、酸素吸収層の変色が見えにくくなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(遮光性フィルム)
本発明の遮光性フィルムついて説明する。
本発明の遮光性フィルム10は、図1に示すように、中間層11と、中間層11の両面に形成された表面層12,12とを有するものである。
【0007】
[中間層]
中間層11は、ポリプロピレンブロック共重合体および遮光剤11aを主成分として含有し、筋状のエラストマー粒子11bが分散している層である。
ポリプロピレンブロック共重合体とは、ポリプロピレン成分とエラストマー成分とからなるものである。
ここで、ポリプロピレンブロック共重合体のポリプロピレン成分は、ホモポリプロピレン、又は、エチレン単位の含有量が5質量%未満のプロピレン−エチレン共重合体である。また、エラストマー成分は、ポリプロピレン成分より柔軟な成分であり、プロピレン単位とエチレン単位及び/又は炭素数4〜12のα−オレフィン単位とからなり、エチレン単位及びα−オレフィン単位の含有量が5質量%以上の共重合体である。
エラストマー成分におけるα−オレフィンとしては、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは1種類でもよく2種類以上を混合して使用することもできる。
エラストマー成分において、プロピレン単位と共重合する好ましい単位はエチレン単位である。
【0008】
なお、ポリプロピレン成分とエラストマー成分は次の方法により分離することができる。オルトキシレン250mlにサンプル2.5gを入れ、加熱しながら攪拌して沸騰温度まで昇温し、30分以上かけて完全溶解させる。完全溶解を確認した後、攪拌を行いながら100℃以下になるまで放冷し、さらに25℃に保った恒温槽にて2時間保持する。その後析出した成分をろ紙によりろ別したキシレン不溶分がポリプロピレン成分である。また、ろ液を加熱しながら窒素気流下でキシレンを留去、乾燥して得たキシレン可溶分がエラストマー成分である。
【0009】
本発明に用いられるポリプロピレンブロック共重合体は、JIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(以下「MFR」という。)が通常0.1〜20g/10分であり、0.2〜15g/10分であることが好ましく、0.5〜10g/10分であることがより好ましい。
【0010】
[中間層]
中間層11には、筋状のエラストマー粒子11aが分散している。
筋状のエラストマー粒子11aを形成させるためには、エラストマー成分のポリプロピレン成分に対する相溶性を高くし、また、エラストマー成分とポリプロピレン成分の極限粘度を特定の関係にすればよい。エラストマー成分のポリプロピレン成分に対する相溶性を高くするためには、エラストマー成分中のプロピレン含有量を多くすればよい。また、極限粘度については、エラストマー成分の極限粘度をポリプロピレン成分の極限粘度と同程度かそれ以下にすればよい。すなわち、エラストマー成分中のプロピレン含有量を多くすること、エラストマー成分の極限粘度の値をポリプロピレン成分の極限粘度に0.5を加えた値以下にすることにより、中間層11成形時に筋状のエラストマー粒子11aを形成させることができる。
なお、本発明において筋状のエラストマー粒子が分散しているとは、後述する形態観察において観察される形態が筋状であることをいう。フィルム中のエラストマー粒子はフィルム表面と平行に層状に分散していることが好ましい。すなわち、フィルム製造時の引き取り方向に細長く、図1の上下方向の幅に比べて、図1の奥行き方向の幅がより広くなっていることが好ましい。
【0011】
具体的には、ポリプロピレンブロック共重合体におけるエラストマー成分中のプロピレン含有量は50〜80質量%であることが好ましく、55〜70質量%であることがより好ましい。エラストマー成分中のプロピレン含有量が50質量%未満であるとエラストマー成分がポリプロピレン成分に相溶しにくいため、エラストマー成分が筋状になりにくく、耐衝撃性が低くなる傾向にある。また、エラストマー成分がエチレン−プロピレン共重合体の場合には、加熱収縮しやすいポリエチレン部分が多くなるためヒートシール強度が低下する傾向にある。一方、80質量%を超える場合にも、エラストマー成分の柔軟性が低下するため、耐衝撃性が低下する傾向にある。
ポリプロピレンブロック共重合体のエラストマー成分の極限粘度[η]は3.1〜3.8dl/gであることが好ましい。エラストマー成分の極限粘度[η]が3.1dl/g未満であると、エラストマー成分の分子量が小さくなるため、耐衝撃性が低くなる傾向にある。一方、3.8dl/gを超える場合にも、エラストマー成分が筋状になりにくく、耐衝撃性が低下する傾向にある。ここで、極限粘度はエラストマー成分の分子量が反映された値である。すなわち、エラストマー成分の分子量が大きくなる程、極限粘度は大きくなり、エラストマー成分の分子量が小さくなる程、極限粘度は小さくなる。
本発明における極限粘度[η]は、デカリン中、135℃において測定した値である。
【0012】
中間層11におけるポリプロピレンブロック共重合体中のエラストマー成分含有量は20〜50質量%であることが好ましく、25〜35質量%であることがより好ましい。ポリプロピレンブロック共重合体中のエラストマー成分含有量が20質量%未満であると、耐衝撃性が低くなる傾向にある。一方、50質量%を超えると、耐熱性が低下しレトルト処理後のヒートシール強度が低下することがある。
【0013】
さらに、中間層11中の全エラストマー成分のうち、幅1μm以下のエラストマー粒子が50%以上であることが好ましい。幅1μm以下のエラストマー粒子が50%以上であれば、耐衝撃性をより高めることができる。
ここで、中間層11中のエラストマー粒子における幅とは、筋状のエラストマー粒子の幅(長さ方向に対する2つの直交方向の長さのうち、フィルムの厚み方向の長さ)のことであり、図1の上下方向のことである。
なお、エラストマー粒子の形態観察を行うには、まず、本発明のポリプロピレン系多層フィルムを液体窒素中でフィルム製造時のフィルム引き取り方向に平行に切断して試料を作製する。そして、その試料を、キシレン中に浸漬し超音波洗浄機中で50〜60℃に加熱することで破断面からエラストマー粒子を主とする成分をエッチングして溶解させ、それにより抜け落ちた跡を、走査型電子顕微鏡で観察すればよい。この方法によれば、本発明のポリプロピレン系多層フィルムが、例えば図1に示すように観察される。
また、走査型電子顕微鏡により得られた写真を画像解析装置により画像解析することで、エラストマー粒子の形態を解析することができる。画像解析装置としてはTOSPIX−U型高精度モニター粒子解析パッケージ(株式会社東芝製)、IMAGE−PRO PLUS装置(MEDIA CYBERNETICS社製)等の市販品が挙げられる。
【0014】
中間層11に含まれる遮光剤11aとしては、例えば、酸化チタン、酸化ニッケル及び炭酸カルシウム等の各種の無機系顔料や、フタロシアニン等の有機系顔料などが挙げられる。これらの中でも、遮光性に特に優れ、酸素吸収剤の変色をより隠蔽できることから、酸化チタンが好ましい。
中間層11中の遮光剤11aの含有量としては、3〜15質量%であることが好ましい。中間層11中の遮光剤11aの含有量が3質量%未満であると酸素吸収層の変色を遮蔽できないことがある。また、遮光剤の分散ムラが生じ外観を損ねることがある。15質量%を超えると耐衝撃性が低くなる傾向にある。
【0015】
中間層11の厚さは20〜80μmであることが好ましい。中間層11が20μm以上であれば酸素吸収剤の変色をより隠蔽できる。ただし、80μmを超えると厚さに応じて隠蔽性が高くならないので不経済である。
【0016】
[表面層]
表面層12は、ポリプロピレンブロック共重合体を主成分として含有し、筋状のエラストマー粒子12aが分散している層である。
表面層12におけるポリプロピレンブロック共重合体としては、中間層11と同様のものを使用できる。表面層12には、ヒートシール強度が低下する傾向にあるため通常、遮光剤が含まれないが、遮光剤が含まれていても構わない。
【0017】
また、この遮光性フィルム10の中間層11及び/又は表面層12には、耐衝撃性がより高くなり、レトルト後のゆず肌の発生が抑えられることから、ポリプロピレンブロック共重合体を構成するエラストマー成分に由来するエラストマー成分に加えて、他のエラストマー成分を含有することも好ましい。
他のエラストマー成分としては、ポリプロピレンブロック共重合体を構成するエラストマー成分と同じ重合体であってもよいし異なる重合体であってもよい。具体的には、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン−プロピレン三元共重合体等のエチレン系エラストマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEPS)等のスチレン系エラストマーなどが挙げられる。また、他のエラストマー成分は、JIS K 7210に準拠し、温度190℃、荷重21.18Nで測定したMFRが1〜15g/10分であることが好ましく、2〜8g/10分であることがより好ましい。
中間層11及び表面層12中の他のエラストマー成分の含有量は、5〜20質量%であることが好ましい。他のエラストマー成分の含有量が5質量%未満であると耐衝撃性の向上が小さく、20質量%を超えると加熱処理後のヒートシール強度が低下するおそれがある。
【0018】
また、この遮光性フィルム10の中間層11及び表面層12には、必要に応じて、他の樹脂や添加剤が配合されていても構わない。添加剤としては、酸化防止剤、耐候性安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、染料、顔料、オイル、ワックス等が例示される。
【0019】
遮光性フィルム10の厚みは、通常30〜100μmであり、好ましくは40〜90μmであり、特に好ましくは50〜80μmである。厚みが30μm未満ではヒートシール強度が低くなる傾向にあり、100μmを超えると耐衝撃性が低くなる傾向にある。
【0020】
[フィルムの製造方法]
上記遮光性フィルム10は、少なくとも3台の押出機を用いた公知のインフレーション成形法、Tダイ押出成形法等を用いて、各層を積層することで得られる。通常、Tダイ成形法ではダイス温度が220〜280℃である。また、冷却温度は、通常、30〜90℃であり、50〜85℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。冷却温度が30℃未満では、レトルト後にゆず肌を生じることがあり、90℃を超えると耐衝撃性が低下する傾向にある。
また、中間層11及び/又は表面層12のエラストマー成分がより筋状になり易いことから、押出機とダイの間にポリマーフィルターを設けたフィルム成形装置を用いて上記遮光性フィルム10を製造することが好ましい。
【0021】
以上説明した遮光性フィルム10は、中間層11及び表面層12がポリプロピレンブロック共重合体を主成分として含有し、筋状のエラストマー粒子が分散している層であるため、耐衝撃性、特に低温の耐衝撃性に優れる。また、筋状のエラストマー粒子はポリプロピレン部分が多く、加熱収縮しにくいものであるから、加熱処理後のボイド発生を抑制できる。したがって、加熱処理後のヒートシール強度の低下を防止できる。また、中間層11が遮光剤を含有するため、酸素吸収層を設けた場合でも、酸素吸収剤の変色を隠蔽できる。
【0022】
(積層体)
次に、本発明の積層体について説明する。
図2に、本発明の積層体の一例を示す。この積層体1は、上述した遮光性フィルム10と、酸素吸収層20と、ガスバリア層30と、支持体40を有するものであり、各層は接着剤50を介して積層されている。
【0023】
[酸素吸収層]
酸素吸収層20は、鉄系酸素吸収剤および熱可塑性樹脂を主成分として含有する層である。酸素吸収層20を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、高圧法や中圧法、低圧法により製造されるポリエチレン、メタロセン触媒を用いて製造されるポリエチレン等の各種ポリエチレン類、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等の各種エチレン共重合体、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、メタロセン触媒により製造されるポリプロピレン等の各種ポリプロピレン類、エチレン−αオレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、アイオノマー、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートやその変性物、熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらを単独又は組み合わせて使用することができる。これらのうち、ポリエチレン類、ポリプロピレン類が好ましい。
【0024】
また、酸素吸収層20を構成する鉄系酸素吸収剤としては、酸素吸収反応を生起するものであって、熱可塑性樹脂中に分散させることが可能なものであれば特に制限はない。好ましくは、被酸化性の主剤と助剤との組み合わせからなる酸素吸収剤が用いられる。
主剤の鉄粉としては、酸素吸収反応を起こしうるものであれば純度等には特に制限はなく、例えば、表面の一部が既に酸化していてもよく、他の金属を少量含有するものであってもよい。また、鉄粉は粒状のものが好ましく、例えば、還元鉄粉、噴霧鉄粉、電解鉄粉等の鉄粉、鋳鉄、鋼材等の各種鉄の粉砕物や研削品等が挙げられる。鉄粉の平均粒径は、取り扱い易さや酸素吸収効率から1〜100μmであることが好ましく、1〜80μmであることがより好ましい。
【0025】
酸素吸収剤の助剤としては、主剤の酸素吸収反応を促進する物質、例えば、ハロゲン化金属やアルカリ剤が挙げられる。ハロゲン化金属は主剤の酸素吸収反応に触媒的に作用するものである。ハロゲン化金属としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物、臭化物又はヨウ化物が用いられ、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム又はバリウムの塩化物、臭化物又はヨウ化物が好ましい。
ハロゲン化金属は、主剤の鉄粉と共に使用されるが、鉄粉に付着して容易に分離しないように、予め鉄粉と混合して組成物とすることが好ましい。例えば、ボールミル、スピードミル等を用いてハロゲン化金属と鉄粉を混合する方法、鉄粉表面の凹凸部にハロゲン化金属を埋め込む方法、バインダーを用いてハロゲン化金属を鉄粉表面に付着させる方法、ハロゲン化金属水溶液と鉄粉を混合した後乾燥して鉄粉表面にハロゲン化金属を直接付着させる方法等を採ることができる。
ハロゲン化金属の配合量は、鉄粉100質量部当たり0.1〜20質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
【0026】
酸素吸収層20中の酸素吸収剤の配合量は10〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましい。酸素吸収剤の配合量が10質量%より少ないと酸素吸収能力が不十分であり、70質量%より多いと酸素吸収層20を形成することが困難になったり、酸素吸収層20とガスバリア層30との接着強度が小さくなったりする傾向にある。
また、酸素吸収層20には、必要に応じて、酸化チタン等の着色顔料、酸化防止剤、スリップ剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、安定剤等の各種添加剤、クレー、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ等の充填剤、消臭剤、活性炭やゼオライト等の吸着剤が添加されていてもよい。
酸素吸収層の厚みは好ましくは85〜200μm、より好ましくは90〜170μmであればよい。また市販の酸素吸収フィルムである三菱ガス化学株式会社製「エージレス・オーマック」を用いることも好ましい。
【0027】
[ガスバリア層]
ガスバリア層30としては、例えば、メタキシリレンアジパミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体のけん化物(EVOH)などからなるフィルム、アルミニウム箔、酸化アルミニウム蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルムなどが挙げられる。
【0028】
[支持体]
支持体40としては、例えば、2軸延伸又は無延伸ポリアミドフィルム、2軸延伸又は無延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムもしくはポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルムなどが挙げられる。
【0029】
積層体1を製造する方法としては特に制限されず、例えば、水冷式又は空冷式共押出多層インフレーション法、共押出多層Tダイ法のように溶融成形で複数の層を同時に成形し、これらを積層する方法、ドライラミネート法のようにそれぞれ単層のフィルムあるいはシートを成形しておいて接着剤等を用いて積層する方法、押出ラミネート法のような一方のフィルムやシートを予め成形しておいて他方をその上に溶融積層する方法などが挙げられる。
【0030】
上記積層体1にあっては、ガスバリア層30を有するものであるから、この積層体1を容器本体の蓋材に使用した際に酸素の侵入を防ぐことができる。
また、遮光性フィルム10を有するから、酸素吸収層20が変色した場合でも、その変色を隠蔽できる。
さらに、上記遮光性フィルム10を有するため、耐衝撃性、加熱処理後のヒートシール強度の低下が防止されている。
なお、本発明の積層体は上記積層体1に限定されず、支持体40が設けられていなくても構わない。
【0031】
(容器)
本発明の容器について説明する。
図3に、本発明の容器の一例を示す。この容器2は、いわゆるスタンディングパウチと称されるものであり、上述した積層体1の端部を、底部が形成される形状にヒートシールしたものである。この容器2には、開封しやすくするために、容器2の上部のヒートシールした部分に切欠を形成しておくことが好ましい。
また、図4に、本発明の容器の他の例を示す。この容器3は、上述した積層体1が容器本体3aの蓋材として設けられたものである。積層体1においては、遮光性フィルムが最内側に配置されている。容器本体3aとしては、紙あるいはプラスチックとガスバリア性材料からなる成形品が挙げられる。
この容器1において、積層体1と容器本体3aとを一体化する方法としては、例えば、容器本体3aの開口部を積層体1で覆い、その後、積層体1と容器本体3aとが接触する部分を熱融着、高周波融着、超音波融着により融着させる方法が挙げられる。また、この容器1においては、融着条件を適宜設定する方法や容器内層にイージーピール性の材料を使用する、本発明の遮光性フィルムの層より内側にイージーピール性の材料からなる層を積層するなどして開封を容易としている。
【0032】
容器2は積層体1から構成され、また、容器3は容器本体3aの蓋材として上記積層体1が用いられているから、酸素の侵入を防ぐことができる。また、積層体1は遮光性フィルムを有するから、酸素吸収層が変色した場合でも、その変色を隠蔽できる。したがって、容器本体から積層体を剥離した際に、酸素吸収層の変色が見えにくくなっている。さらに、上記遮光性フィルムにより、耐衝撃性が高く、加熱処理後のヒートシール強度の低下が防止されている。
このような本発明の容器は、具体的には、豆容器、米飯容器等の食品容器、医療用容器などとして好適に用いることができる。容器の形状も特に制限されず、具体的には二方シール袋、三方シール袋、四方シール袋、ピロー包装袋、ガゼット袋などいずれでも構わない。
【実施例】
【0033】
(実施例1〜7、比較例1〜4)
下記の樹脂を用いて遮光性フィルムを得た。
BPP1;温度230℃、荷重21.18NのMFRが1.0g/10分、エチレン−プロピレンエラストマー成分の割合が28質量%、ポリプロピレン成分の極限粘度が3.4dl/g、エチレン−プロピレンエラストマー中のプロピレン含有量が68質量%、エラストマー成分の極限粘度が3.6dl/gであるサンアロマー株式会社製ポリプロピレンブロック共重合体
BPP2:温度230℃、荷重21.18NのMFRが1.5g/10分、エチレン−プロピレンエラストマー成分の割合が19質量%、エチレン−プロピレンエラストマー中のプロピレン含有量が55質量%、ポリプロピレン成分の極限粘度が2.5dl/g、エラストマー成分の極限粘度が3.8dl/gであるサンアロマー株式会社製ポリプロピレンブロック共重合体
【0034】
[フィルム成形]
口径45mmφおよび口径65mmφの押し出し機を有する東芝機械(株)製多層成形機を用い温度230℃で中間層(B層)の厚み及びその両外側の表面層(A層)の厚みを表1に示すように変更し、A/B/A型の2種3層フィルムを成形した。なお、遮光剤としては酸化チタン濃度が60質量%のマスターバッチである東洋インキ株式会社製「商品名:PEX6800ホワイトA」を用い、中間層への配合割合を表1に示すように変更した。
【0035】
【表1】

【0036】
得られたフィルムを下記のようにして、評価した。結果を表1に示す。
[光線透過率の評価]
JIS 7361−1に準拠し、日本分光(株)製V−550型紫外・可視分光光度計を用い、可視光線領域(360〜830nm)について光線透過率を測定した。
【0037】
[衝撃強度]
フィルムを10cm×10cmの大きさにサンプリングし、−5℃の恒温室に2時間放置した。その後、この恒温室内で株式会社東洋精機製作所製のフィルムインパクトテスターに半径1/2インチの撃芯を取り付け、円形開口部直径50mmの2枚の板状サンプルホルダーに挟み込み10回試験を行い、衝撃エネルギーを測定した。これら衝撃エネルギーの値をフィルムの厚みで除して、その10点の平均値をフィルムインパクトとし耐衝撃性の尺度とした。
【0038】
[ヒートシール強度]
厚み12μmのPETフィルム/接着性樹脂/上記フィルムをこの順番で積層し、次いで上記フィルムが内側になるように2組重ね、テスター産業社製のヒ−トシール機を用いてヒートシールした(ヒートシールバーの幅5mm、シール温度160℃、0.2MPaで1秒加圧、成形時の樹脂の流動方向(MD)に対して直角方向)。
室温で48時間状態調節を行った後、ヒートシールされたフィルムを幅15mmにサンプリングし、引張速度300mm/分の速度にてヒートシール部を180°に開く方向でヒートシール部が破断するまでの引張荷重を加え、その間の平均強度を求めた。その平均強度7点の平均値をヒートシール強度とした。また、120℃、30分でレトルト処理した後、ヒートシール強度を測定した。
【0039】
[粒子形態観察]
得られたフィルムを液体窒素中でフィルム製造時のフィルム引き取り方向に平行に切断して試料を作製した。そして、その試料を、温度40〜90℃のキシレン中に浸漬して超音波洗浄機に入れ、エラストマー成分をエッチングした後、写真撮影した。写真をTOSPIX−U型高精度モニター粒子解析パッケージ(株式会社東芝製)により解析し、エラストマー粒子の幅を測定した。
この観察により、BPP1を用いて得たフィルムには筋状のエラストマー分散粒子が形成され、そのうち、幅1μm以下の筋状のエラストマー分散粒子の割合は72%であることがわかった。また、BPP2を用いて得たフィルムには球状のエラストマー分散粒子が形成され、そのうち、幅1μmを超える球状のエラストマー分散粒子の割合は85%であることがわかった。
【0040】
筋状のエラストマー粒子が形成された中間層及び表面層を有し、中間層が遮光剤を含有する実施例1〜7のフィルムは、耐衝撃性が高く、加熱処理後のヒートシール強度の低下が防止され、しかも酸素吸収層を設けた場合でも、酸素吸収時の変色を隠蔽できる。
これに対し、球状のエラストマー粒子が形成された中間層及び表面層を有する比較例1,2,4のフィルムは、耐衝撃性が低く、加熱処理後にヒートシール強度が低下した。また、遮光剤を含まない比較例3のフィルムは、光線透過率が高いため、酸素吸収層の変色を隠蔽できない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の遮光性フィルムの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の容器の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の容器の他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1 積層体
2,3 容器
10 遮光性フィルム
11 中間層
12 表面層
20 酸素吸収層
30 ガスバリア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン成分ならびにエラストマー成分からなるポリプロピレンブロック共重合体および遮光剤を主成分として含有し、筋状のエラストマー粒子が分散している中間層と、
該中間層の両面に形成され、ポリプロピレンブロック共重合体を主成分として含有し、筋状のエラストマー粒子が分散している表面層とを有することを特徴とする遮光性フィルム。
【請求項2】
前記ポリプロピレンブロック共重合体におけるエラストマー成分中のプロピレン含有量が50〜80質量%、エラストマー成分の極限粘度値がポリプロピレン成分の極限粘度値に0.5加えた値以下であることを特徴とする請求項1に記載の遮光性フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遮光性フィルムと、酸素吸収層と、ガスバリア層とを有することを特徴とする積層体。
【請求項4】
請求項3に記載の積層体を有し、積層体の遮光性フィルムが最内側に配置されていることを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−212785(P2006−212785A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24888(P2005−24888)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】