説明

部品詰まり解除機能付部品搬送装置

【課題】できるだけ簡易な構造で製造コストも低く、小さい部品であってもより部品詰まりをより確実に除去することができる機能を有する部品詰まり解除機能付部品搬送装置の提供。
【解決手段】部品を搬送するための搬送振動が印加される直線状の搬送台と、前記搬送台に設けられ、前記搬送台上における部品詰まりを解除するための解除振動を前記搬送台に印加する、単一の加振装置と、前記解除振動の振動波の周波数を変化させる周波数変動装置と、を具備すること、を特徴とする部品詰まり解除機能付部品搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送中の部品が詰まった場合にその部品詰まりを解除する機能を有する部品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動によって部品を搬送する装置として、直線状又は曲線状の搬送用トラックに沿って所定の方向に搬送する部品搬送装置(パーツフィーダー)が広く知られている。
【0003】
このような部品搬送装置においては、静電気による付着や部品の重なり等によって搬送台上において部品が詰まることがあり、このような詰まりが起こると下流側に部品を搬送することができない。
【0004】
この部品詰まりを解除するため、例えば、搬送装置を停止させてピンセット等を用いて手作業で部品詰まりを解除する方法や、空気噴出手段で空気を噴射して部品の詰まりを解除する方法等が行われていたが、いずれも部品の詰まりを確実には解除できず、後者にあっては装置の加工が面倒という問題があった。
【0005】
これに対して、例えば特許文献1(特開平2−305707号公報)においては、製造コストを低くして確実に部品の詰まりを除去することができる振動部搬送機における部品詰まり除去方法が提案されている。
【0006】
具体的には、「振動により部品を搬送用トラックに沿って所定の方向に搬送するようにし、部品詰り検知手段を設け、該手段の検知出力により部品の詰りを除去するようにした振動部品搬送機における部品詰り除去方法において、前記部品詰り検知手段が部品の詰りを検知したときには、この検知出力により前記所定の方向とは逆方向に部品を搬送することにように振動させるようにしたことを特徴とする振動部品搬送機における部品詰り除去方法。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−305707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1において提案されている部品詰まり除去方法であっても、搬送される部品が小さい場合、これら部品が静電気等によって搬送台の表面に固く付着してしまうことから、部品詰まりを確実には解除できないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、できるだけ簡易な構造で製造コストも低く、小さい部品であってもより部品詰まりをより確実に除去することができる機能を有する部品詰まり解除機能付部品搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決すべく、本発明は、
搬送振動の印加によって部品を搬送するための直線状の搬送台と、
前記搬送台上における部品詰まりを解除するための解除振動を前記搬送台(の長さ方向、幅方向又は高さ方向)に印加する単一の圧電素子を含む加振装置と、
前記解除振動の振動波の周波数を変化させる周波数変動装置と、
を具備すること、
を特徴とする部品搬送装置を提供する。
【0011】
ここで、本発明における「加振装置」とは、部品を搬送するための直線状の搬送台に印加される搬送振動とは別に、前記搬送台上において、静電気による付着や部品の重なり等によって生じた部品詰まりを解除するための解除振動を印加する装置である。
【0012】
この加振装置によって印加される解除振動は、例えば圧電効果や電磁力によって印加されるものであればよく、直線状の搬送台において、当該搬送台の長さ方向、幅方向又は高さ方向の少なくともいずれかの方向に振動する解除振動を印加するものであればよい。
【0013】
この単一の加振装置は、上記のような作用効果を奏し、部品の搬送を妨げない態様であれば、搬送台のどの部分に設けてもよい。また、この単一の加振装置は、搬送台の長さ方向の全体に設けられていてもよい。例えば、搬送台の上面(溝の内部若しくは外部)、側面、下面に接着したり、埋め込んだりしてもよく、また、搬送台の内部に埋め込んでもよい。
【0014】
このような構成を有する本発明の部品詰まり解除機能付部品搬送装置によれば、直線状の搬送台において搬送振動により搬送されている部品が部品詰まりを起こしたとしても、解除振動が作用して部品詰まりが効果的に解除される。
【0015】
特に、本発明の部品詰まり解除機能付部品搬送装置では、単一の加振装置から搬送台に印加される解除振動の振動波の周波数が、周波数変動装置によって変化するため、一定の周波数の解除振動によっては部品詰まりが解除されない場合に、異なる周波数の解除振動を付与することにより部品詰まりを解除することができ、好ましい。
【0016】
また、例えば、ある周波数の振動波の解除振動で部品詰まりが一旦解除された後に再度の部品詰まりが起こった場合に、この再度の部品詰まりをも解除することができ、より確実に部品詰まりを解除することができる。
【0017】
上記本発明の部品詰まり解除機能付部品搬送装置においては、前記加振装置が圧電素子で構成されていることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、安価にコンパクトで確実に本発明の効果が得られる加振装置を実現することができ、好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、できるだけ簡易な構造で製造コストも低く、小さい部品であってもより部品詰まりをより確実に除去することができる機能を有する部品詰まり解除機能付部品搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の部品搬送装置の一実施形態の概略側面図である。
【図2】図1に示される部品搬送装置10の搬送台12の部分を矢印A方向からみた図である。
【図3】図1に示される部品搬送装置10において、搬送台12の振動に対する固有振動数の考え方を説明するための模式図である。
【図4】加振装置14を構成する圧電素子の搬送方向における中心Cの位置と腹Pの位置の距離Yと、圧電素子の長さAと、の関係を説明するための図である。
【図5】本発明の部品搬送装置の一実施形態において、搬送台12の固有振動数fの振動波の1/2波長WAに対する、圧電素子の長さLの割合と、圧電素子の変位量と、の関係を説明するための模式図である。
【図6】本発明の部品搬送装置の一実施形態において、搬送台12の固有振動数fの振動波の1/2波長WAに対する、圧電素子の長さLの割合と、圧電素子の変位量と、の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の部品搬送装置の別の実施形態の概略側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の部品詰まり解除機能付部品搬送装置の一実施形態について説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。また、各図面における各部材の形状や寸法は、実際に本発明の作用効果を奏するための形状や寸法を必ずしも高精度では表していない場合もある。
【0022】
図1は、本発明の部品詰まり解除機能付部品搬送装置10の一実施形態の概略側面図であり、図2は、図1に示される部品搬送装置10の搬送台12の部分を矢印A方向からみた図である。
【0023】
これらの図に示すように、本実施形態の部品詰まり解除機能付部品搬送装置10は、リニアフィーダ8と、搬送振動の印加によって部品を矢印Xの搬送方向に搬送するための直線状の搬送台12と、搬送台12上における部品詰まりを解除するための解除振動を搬送台12に印加するための加振装置14と、発振器16と、増幅器18と、を有する。そして、発振器16と増幅器18との間に、加振装置14から搬送台12に印加される解除振動の振動波の周波数を変化させるための周波数変動装置20が設けられている。
【0024】
搬送台12は、略直線状であり、図2に示すように上側において長さ方向に延びる搬送用の溝12aを有している。この搬送台12には、図示しないが、リニアフィーダ8から搬送振動が印加され、この搬送振動によって部品が矢印Xの搬送方向に搬送される。
【0025】
搬送台12上における部品詰まりを解除するための解除振動を搬送台12に印加するための加振装置14は、圧電素子で構成されており、この圧電素子は、搬送台12の長さ方向に振動する解除振動を搬送台12に印加するように、搬送台12の下面に設けられている。
【0026】
周波数変動装置20による周波数の変動方法としては、周波数が一定の周波数に固定されていなければ特に制限はなく、種々の態様が考えられる。例えば連続的又は非連続的に周波数を変化させてもよいし、例えば、幾つかの周波数(モード)を複数設定しておき、これらのモード間で切替えを行うことにより変化させてもよい。
【0027】
より具体的には、例えば、最少周波数fminと最大周波数fmaxの一定の周波数範囲内において、fminからfmax、fmaxからfmin、・・・、と、連続的に周波数を変化させてもよい。また、例えば、周波数f1、fn(nは2以上の整数)、・・・、と、複数の周波数を設定し、周波数fをこれら複数の周波数に段階的(非連続的)に変化させてもよい。
【0028】
このような周波数変動装置20としては、例えば、あらかじめ用意した発振周波数の異なる複数の発信器と切換装置とを備え、所定時間ごとに発振周波数を順次切替え可能に構成することができる。また、周波数変動装置20は、リニアフィーダ8に連動してON又はOFFされてもよいが、リニアフィーダ8とは独立して、ON又はOFFされる構成としてもよい。
【0029】
このように、周波数変動装置20を具備すれば、周波数を変化させて解除振動の状態を種々変化させることができるため、ある波長の解除振動では部品詰まりを解除できないような場合に、別の波長の解除振動に変化させることができ、より確実に当該部品詰まりを解除することができる。
【0030】
このような周波数変動装置20から出力された正弦波電圧は、増幅器18に入力され、増幅器18は、正弦波電圧が入力されると、それを増幅して増幅正弦波電圧を加振装置14に出力する。
【0031】
加振装置14は、電圧が入力されると、入力電圧に応じて長さ方向の力を搬送台12に与える。本実施形態の場合、入力電圧が正弦波であるので、加振装置14は、搬送台12を連続して長さ方向(即ち、図1における左右方向)に振動させる。
【0032】
この振動の周波数は、20kHz以上の超音波領域の周波数であるのが、人間の耳では聞こえず低騒音であるという観点から、好ましい。圧電素子の大きさや貼り付け場所等に応じて適宜選択すればよいが、周波数が高くなるほど変位が小さくなるという観点から、より好ましくは、20kHz〜100kHzの範囲である。したがって、上述した周波数変動装置20により変動される発振器16からの正弦波電圧の周波数は、上記の範囲で変動させるのが好ましい。
【0033】
また、本実施形態における加振装置14は、圧電素子を利用したものである。圧電素子とは、水晶・ロッシェル塩・チタン酸バリウムの結晶等の素子のことである。これらの圧電素子に力を加えると、応力に比例して電気分極が生じて電圧が発生し(圧電効果)、これらの結晶に電圧を加えると、ひずみを生じて変形する(逆圧電効果)。加振装置14は、圧電素子のこのような性質を利用して電力を運動エネルギーに変換するようになっている。
【0034】
更に、本実施形態においては、図示しないが、加振装置14が、搬送台12の長さ方向において、搬送台12が固有振動数fで振動する場合の振動波の腹となる位置を含む部分に、搬送台12の下面において接着剤により貼付されて設けられている。
【0035】
ここで、搬送台12の振動に対する固有振動数の考え方を説明するための模式図(図3)を参照すると、固有振動数で振動する場合の振動波Wの腹はPn(nは次数)で示される位置にあり、隣接する腹の中間、例えばQで示される位置に振動波Wの節がある。
【0036】
また、搬送台12の振動に対する固有振動数fは、関係式(1):
f=π(2n+1)2/8l2×(EI/ρA)1/2 ・・・(1)
(式中、fは長さ、Eはヤング率、ρは密度、nは次数、Aは断面積、Iは断面二次モーメントである。)から求めることができる。
【0037】
このとき、加振装置14は、これを構成する圧電素子の搬送方向における中心と、腹Pnの位置との、距離が、当該圧電素子の長さの1/2以下であるのが好ましい。即ち、図4に示すように、加振装置14を構成する圧電素子の搬送方向における中心Cの位置と、腹P6の位置と、の距離Yが、圧電素子の長さAの1/2以下で、関係式(2):
Y≦1/2A ・・・(2)
を満たすことが好ましい。この範囲であれば、効率よく搬送台12を変位(変形)させることができるという効果が得られる。
【0038】
次に、本実施形態においては、加振装置14を構成する圧電素子の、搬送台12の長さ方向における長さLは、上記固有振動数fの振動波の1/2波長WAの40〜70%である。後述するが、この範囲であれば、十分な解除振動を搬送台12に印加できるという効果が得られる。
【0039】
図5は、搬送台12の固有振動数fの振動波の1/2波長WAに対する、圧電素子の長さLの割合と、圧電素子の変位量と、の関係を説明するための模式図であり、図6は、搬送台12の固有振動数fの振動波の1/2波長WAに対する、圧電素子の長さLの割合と、圧電素子の変位量と、の関係を示すグラフである。
【0040】
図6において、横軸には、搬送台12の固有振動数fの振動波の1/2波長WAに対する、圧電素子の長さLの割合(圧電素子の長さの割合)(%)がプロットされ、縦軸には、圧電素子の変位量がプロットされている。
【0041】
この図6のグラフからわかるように、圧電素子の長さの割合が40〜70%であれば、圧電素子の変位量を確保でき、充分な解除振動を搬送台12に印加することができる。より確実に解除振動を搬送台12に印加することができるという観点からは、圧電素子の長さの割合が50〜60%であるのが好ましく、更には約55%であるのが最も好ましい。
【0042】
また、図示しないが、本実施形態の部品詰まり解除機能付部品搬送装置10には、部品詰まりを検出する検出装置を具備している。かかる検出装置としては、例えば赤外線センサ等を用いることができる。
【0043】
次に、以上の構成を有する本実施形態の部品詰まり解除機能付部品搬送装置10の動作について簡単に説明する。まず、リニアフィーダ8において、搬送台12に搬送振動を印加して部品を矢印Xの搬送方向に搬送させる。
【0044】
このとき、搬送台12の溝12aにおいて部品詰まりが発生したことを赤外線センサ(図示せず。)が検出すると、発振器16は、正弦波電圧を周波数変動装置20に出力し、ここで正弦波電圧の周波数が変動し、変動正弦波電圧が増幅器18に入力され、増幅器18は、変動正弦波電圧が入力されると、それを増幅して増幅変動正弦波電圧とし、加振装置14に出力する。
【0045】
そして、加振装置14は、増幅変動正弦波電圧が入力されると、搬送台12における固有振動波の腹の位置を含む部分において解除振動を、その振動波の周波数が変動している状態で、印加する。加振装置14は固有振動波の腹の位置を含む部分に設置されているため、共振によって解除振動は大きくなり、部品詰まりをより確実に解除することができる。
【0046】
以上、本発明の部品詰まり解除機能付部品搬送装置の代表的な実施形態について、図面を参照しながらその構成及び動作方法について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において種々の設計変更が可能である。
【0047】
たとえば、実施形態では、周波数変動装置20の発振周波数を所定時間ごとに順次切り替えると説明したが、部品の詰まりを検出した場合に発振周波数を切替えるようにしても良い。すなわち、図7に示すように、CCDカメラやCMOSカメラといった撮像手段30と、撮像した画像を処理し、部品が詰まり状態であると判断して詰まり信号を出力する詰まり判断手段40とをさらに備えていても良い。
【0048】
この場合、詰まり判断手段40は、撮像手段30が所定時間ごとに撮像した画像を2値化処理し、搬送路と部品との境目の数を検出する。そして、時間の経過とともに境目の数が増加すれば詰まりが発生していると判断し、周波数変動装置20に詰まり信号を出力する。周波数変動装置20は、詰まり信号が入力されるたびに、解除振動の振動波の周波数を変化させる。このように構成することにより、より確実に部品の詰まりを解消することが可能となる。
【0049】
あるいは、搬送台の終端部またはその近傍に設けられた反射式あるいは透過式の光センサ等からなる通過検知手段30と、通過検知手段が所定時間内に部品の通過を検知しない場合には部品が詰まり状態であると判断して詰まり信号を出力する詰まり判断手段40とを備えていても良い。この場合も同様に、周波数変動装置20は、詰まり信号が入力されるたびに、解除振動の振動波の周波数を変化させる。このように構成することにより、より確実に部品の詰まりを解消することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
8・・・リニアフィーダ、
10・・・部品詰まり解除機能付部品搬送装置、
12・・・搬送台、
12a・・・溝、
14a・・・第一の加振装置、
14b・・・第二の加振装置、
16・・・発振器、
18・・・増幅器、
20・・・周波数変動装置、
30・・・撮像手段、
40・・・詰まり判断手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送振動の印加によって部品を搬送するための直線状の搬送台と、
前記搬送台上における部品詰まりを解除するための解除振動を前記搬送台に印加する単一の圧電素子を含む加振装置と、
前記解除振動の振動波の周波数を変化させる周波数変動装置と、
を具備すること、
を特徴とする部品搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107742(P2013−107742A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254224(P2011−254224)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】