説明

部材取付構造

【課題】 振動部材から伝達される振動による騒音を抑制する部材取付構造を提供すること。
【解決手段】 部材取付構造は、振動部材を、1又は複数の第1防振部材、及び、1又は複数の第2防振部材を介して固定部材に取り付けるための支持部材を備え、支持部材が第1防振部材を介して固定部材に取り付けられ、振動部材が第2防振部材を介して支持部材に取り付けられており、支持部材が、固定部材に第1防振部材を介して取り付けられる底板部と、振動部材が第2防振部材を介して取り付けられる設置部とを含み、設置部が、底板部から外側かつ振動部材方向に向かって断面略L字状になるように延設されることにより、底板部から振動部材までの間隔が、設置部から振動部材までの間隔よりも大きく形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパソコン等の電子機器の放熱構造、及び、部材取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパソコン等の電子機器には、その内部にCPU、チップ部品、HDD、及びDVDドライブ等といった電子部品や装置等が配置されている。これらの電子部品や装置等は、電源電圧が供給されると内部に熱が蓄積し時間の経過につれて発熱するようになる。このような発熱部材から熱が放出されると、電子機器筐体内は、極めて高温になる。電子機器筐体内が高温になると、電子部品や装置等が誤動作してしまう原因にもなるため、通常、電子機器では、種々の発熱対策が実施されている。一般的には、発熱部材の近傍にファンを配置して、ファンによって空気の流路を形成することによって、発熱部材に冷たい空気を供給し、発熱部材を放熱させる。
【0003】
しかしながら、従来の電子機器では、発熱部材の数に応じて、多数のファンを使用しているので、コストが高くなるという問題点がある。また、電子機器としてのパソコンが音楽等の視聴を重視した構成とされる場合、上記従来のパソコンでは、多数のファンが駆動されることになるため、静音性が阻害されることになる。
【0004】
また、HDDが駆動することによってHDDが振動するが、その振動が、HDDが取り付けられている筐体等にも伝達され、筐体等が振動することによって、不要な騒音が発生するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−174474号公報
【特許文献2】特開2002−352575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、振動部材から伝達される振動による騒音を抑制する部材取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい実施形態による部材取付構造は、振動部材を固定部材に取り付ける部材取付構造であって、前記振動部材を、1又は複数の第1防振部材、及び、1又は複数の第2防振部材を介して前記固定部材に取り付けるための支持部材を備え、前記支持部材が前記第1防振部材を介して前記固定部材に取り付けられ、前記振動部材が前記第2防振部材を介して前記支持部材に取り付けられており、前記支持部材が、前記固定部材に前記第1防振部材を介して取り付けられる底板部と、前記振動部材が前記第2防振部材を介して取り付けられる設置部とを含み、前記設置部が、前記底板部から外側かつ前記振動部材方向に向かって断面略L字状になるように延設されることにより、前記底板部から前記振動部材までの間隔が、前記設置部から前記振動部材までの間隔よりも大きく形成されている。
【0008】
本発明の好ましい実施形態による部材取付構造は、振動部材を固定部材に取り付ける部材取付構造であって、前記振動部材を、1又は複数の第1防振部材、及び、1又は複数の第2防振部材を介して前記固定部材に取り付けるための支持部材を備え、前記支持部材が前記第1防振部材を介して前記固定部材に取り付けられ、前記振動部材が前記第2防振部材を介して前記支持部材に取り付けられており、前記支持部材が平面視略長方形状に形成されており、その短辺が前記第1防振部材を介して前記固定部材に取り付けられ、その長辺に前記第2防振部材を介して前記振動部材が取り付けられる。
【0009】
好ましい実施形態においては、前記振動部材の振動中心から前記第1防振部材までの距離が、前記振動部材の振動中心から前記第2防振部材までの距離よりも大きく、前記第1防振部材が前記第2防振部材よりも弾性変形しやすい材料で形成されている。
【0010】
好ましい実施形態においては、前記振動部材の振動中心から前記第1防振部材までの距離が、前記振動部材の振動中心から前記第2防振部材までの距離よりも大きく、前記第1防振部材が前記第2防振部材よりも厚みが厚く形成されている。
【発明の効果】
【0011】
振動部材から伝達される振動による騒音を抑制する部材取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるパソコン100を示す断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態によるパソコン100を示す断面図である。
【図3】ケース部材6及びファン8によって形成される流路A,Bを説明する図である。
【図4】下部シャーシ12上に取り付けられた部品を説明する平面図である。
【図5】パソコン100の一部を分解した分解斜視図である。
【図6】パソコン100の一部を分解した分解斜視図である。
【図7】パソコン100の一部を分解した分解斜視図である。
【図8】ケース部材6を斜め後方から見た斜視図であり、左はHDD5及びファン8が収納された状態を、右はHDD5及びファン8を取り外した状態を示す。
【図9】ケース部材6を左側から見た断面図である。
【図10】ケース部材6を前方から見た正面図である。
【図11】ケース部材6を斜め前方から見た斜視図である。
【図12】HDDブラケット18を説明する図である。
【図13】ケース部材6と側面シャーシ15との位置決めを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図1〜図3は、本発明の好ましい実施形態による電子機器の放熱構造が適用されるパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという。)100の斜視断面図であり、図1は左側から見た場合の断面図、図2は右側から見た場合の断面図であり、図3は空気の流路を示す断面図である。図4は、パソコン100内部から下部シャーシ12を見た場合の平面図である。図5〜図7は、筐体1からカバー部材7及びケース部材6を取り外す動作を説明する斜視図である。図8〜図13は、ケース部材6を説明するための図である。なお、本例では、前面パネル11側を前面側といい、後面パネル13側を後面側といい、前面パネル11を正面視して右側、左側ということにする。
【0014】
図1〜図3に示すように、パソコン100は、略直方体形状に形成された筐体1と、アンプ部(第2発熱部材)2と、電源トランス3(第2発熱部材)と、マザーボード4と、ハードディスクドライブ(以下、HDDという。)(第1発熱部材または振動部材)5と、HDD5及びファン8を収納するためのケース部材(固定部材)6と、ケース部材6を覆うためのカバー部材7と、ファン8とを備えている。また、必要に応じて、パソコン100は、排気用ファン9と、ダクト部材10とを備えている。
【0015】
筐体1は、前面パネル11と、下部シャーシ12と、後面パネル13と、前面ブラケット14と、側面シャーシ15と、前面シャーシ24と、図示しない天板とを有し、これらが組み合わされて筐体1が形成される。前面パネル11は、例えばアルミニウムからなる。筐体1の内部であって前面パネル11の裏側には、前面ブラケット14や前面シャーシ24が取り付けられている。
【0016】
図1〜図4に示すように、下部シャーシ12には、アンプ部2、電源トランス3、および、マザーボード4等が取り付けられている。
【0017】
アンプ部2は、発熱部材の1つであって、HDD5に記録されている音楽ファイルに基づいて再生された音楽信号、または、後面パネル13に設けられた音声入力端子から入力された音声信号を増幅するものである。アンプ部2によって増幅された音声信号は、後面パネル13に設けられたスピーカー端子に接続される図示しないスピーカーに供給され、音声として出力される。アンプ部2は、図4に示すように、下部シャーシ12の上面であって、前方左側の位置に取り付けられている。
【0018】
電源トランス3は、発熱部材の1つであって、供給される交流電源電圧を1次巻線と二次巻線の巻数比に応じて変圧するものである。電源トランス3は、図4に示すように、下部シャーシ12の上面であって、前方右側の位置に取り付けられている。
【0019】
マザーボード4は、略矩形平板状に形成されたプリント基板によって構成されている。マザーボード4は、発熱部材の1つであるCPU、チップ部品、ヒートシンク、サウンドカード、及び、電源回路部品(コンデンサや抵抗等)等を搭載するものである。マザーボード4は、下部シャーシ12の上面であって、後方側の位置に取り付けられている。
【0020】
マザーボード4の上方には、図2に示すように、略L字状に折り曲げられたダクト部材10が設けられている。ダクト部材10のマザーボード4に対向する開口には排気用ファン9が下部シャーシ12に対して水平になるように取り付けられている。また、後面パネル13には、ダクト部材10の他方の開口に対向する位置に複数の排気口17が形成されている。排気用ファン9およびダクト部材10によって、筐体1内の暖められた空気は、排気口17を介して筐体1の外部に放出される。
【0021】
なお、排気用ダクト9が直接、後面パネル13の排気口17の位置に取り付けられる場合には、ダクト部材10は不要である。
【0022】
図1のように、HDD5およびファン8は、ケース部材6の中に収納されており、ケース部材6は、側面シャーシ15および前面シャーシ24の上面に配された後に、カバー部材7によって上部の開口が覆われて、カバー部材7と共に側面シャーシ15にネジによって結合される(詳細後述、図5〜図7参照)。
【0023】
図1〜図4のように、下部シャーシ12には、前方端部に左右方向に広がるようにして複数の吸入口16が形成されている。吸入口16は、ファン8の吸引力に基づいて、外部の空気を筐体1内に吸入するためのものである。吸入口16の形状および数は外部から吸入する空気の量に応じて任意の適切な形状及び数が採用され得るが、本例では長円形状の吸入口16が9つ形成されている。また、限定されないが、下部シャーシ12の裏面には図示しない脚部(又は、その他の、下部シャーシ12をパソコン100の設置面から浮かす手段)が取り付けられており、吸入口16が塞がれないようになっている。また、アンプ部2や電源トランス3は、吸入口16を塞がないように、吸入口16よりもやや後方に取り付けられている。
【0024】
ケース部材6は、HDD5を交換可能にするために、HDD5を着脱可能に収納し、筐体1の側面シャーシ15に着脱可能に取り付けられるものである。さらに、ケース部材6は、図3のように、HDD5を放熱するための第1流路A、および、アンプ部2および電源トランス3を放熱するための第2流路Bを形成するものである。ケース部材6は、図8〜図13に示すように、その外形が、HDD5やファン8を挿入可能なように上面に開口が形成された略直方体の箱状に形成されている。ケース部材6は、HDD5が収納される略直方体の箱状のHDD収納部6aと、HDD収納部6aの後方に連通、延設され、ファン8が収納されるファン収納部6bとを有する。また、ケース部材6は、ファン収納部6bの前方に連通、延設された筒状部6cを有する。なお、図8の左側はケース部材6にHDD5及びファン8が取り付けられた状態を、右側は取り付けられていない状態を示す。
【0025】
HDD収納部6aの前面の例えば下側部分には、HDD収納部6a内に吸入口16からの空気を取り込むための、長方形状の開口6dが形成されている。また、筒状部6cの前面側には、吸入口16からの空気を、HDD収納部6aを介さずに、アンプ部2や電源トランス3が配された領域を介して、ファン収納部6b内に取り込むための開口6eが形成されている。ファン収納部6bの後面側には、HDD収納部6aからファン収納部6bに移動される空気と、筒状部6cからファン収納部6bに移動される空気とを、ケース部材6の後方に放出するための開口(ケース部材における排気口)6fが形成されている。なお、HDD5およびファン8が取り付けられた後に、ケース部材6の上面にカバー部材7が結合されることによって、ケース部材6の上面開口はカバー部材7によって塞がれる。従って、HDD収納部6aを移動する空気が上面開口からほぼ漏れることはない。
【0026】
ファン8がファン収納部6bに収納されることにより、図10に示すように、ファン8の一部(上側部分、例えば、上半分)は、HDD収納部6a(HDD5や開口6d)に対向し、ファン8の他の一部(下側部分、例えば、下半分)は筒状部6c(開口6e)に対向することになる。すなわち、ファン8の上半分は、HDD収納部6a内の空気を開口6fを介して外部に放出するように機能し、ファン8の下半分は、開口6eからの空気を開口6fを介して外部に放出するように機能する。その結果、ファン8を駆動させることによって、図3のように、以下の2つの空気の流路A、Bが形成されることになる。
【0027】
流路Aは、下部シャーシ12の吸入口16から筐体1内に取り込まれた空気が、(アンプ部2や電源トランス3の位置を介さずに)開口6dを介してHDD収納部6内に吸入され、ファン収納部6bを介して、開口6fからケース部材6の後方に放出される流路である。流路Aを流れる空気によってHDD5が放熱される。流路Bは、下部シャーシ12の吸入口16から筐体1内に取り込まれた空気が、(HDD収納部6aを介さずに)アンプ部2や電源トランス3の位置を介して、開口6eから筒状部6c内に吸入され、ファン収納部6bを介して、開口6fからケース部材6の後方に放出される流路である。流路Bを流れる空気によって、流路B上に配されているアンプ部2や電源トランス3が放熱される。このようなケース部材6の構造を採用することによって、互いに分離された2つの流路A、Bを形成することが本発明の特徴の1つである。
【0028】
なお、筒状部6cが設けられることにより、開口部6fから放出された空気が、前方側に回り込んで、再び開口部6eからケース部材6内部に吸入されることを防止することができる。すなわち、筒状部6cを設けることで、開口部6fから放出された空気は、後方に設けられたダクト部材10内に取り込まれるようになる。
【0029】
好ましくは、HDD5は、図8〜図13のように、HDDブラケット18を介してHDD収納部6a内に取り付けられる。HDDブラケット18は、HDD収納部6a内でHDD5を支持するものであり、後述する第1防振部材19および第2防振部材20を介してHDD5をケース部材6に取り付けるものである。HDDブラケット18は、図12のように(左側はHDDブラケット18にHDD5が取り付けられた状態を、右側は取り付けられて以内状態を示す)、HDD5の底面の形状に対応する略長方形状の底板部18aと、底板部18aの長辺部分からHDD5の方向かつ短辺方向外側に向かって断面略L字状に折り曲げられて延設されたHDD設置部18bとを含む。つまり、HDDブラケット18は、平面視した場合に略長方形状に形成されている。底板部18aは、ケース部材6のHDD収納部6aの底面に結合される部分である。HDD設置部18bは、HDD5が設置される部分である。底板部18aからHDD5までの間隔が、HDD設置部18bからHDD5までの間隔よりも大きくなっている。HDDブラケット18がこのような形状を有することにより、HDD5はHDD収納部6aの底面から所定の高さだけ持ち上げられた状態で、HDD収納部6aに収納される。その結果、HDD収納部6a内で空気の流路がHDD5自身によって塞がれることなく、HDD5の下側部分に十分な空気の流路を形成することができる。なお、これに限定されず、底板部18aとHDD設置部18bとが同一平面上に設けられても良い。
【0030】
好ましくは、図12のように、HDDブラケット18は、1又は複数の(本例では4つの)第1防振部材19を介してケース部材6のHDD収納部6aに取り付けられる。第1防振部材19は、弾性を有しており、任意の適切な樹脂またはゴム等によって形成されている。第1防振部材19は、径方向にやや肉厚の略円筒形状に形成され、その外周部において高さ方向の略中間位置に切り込み(図示せず)が形成されており、底板部18aの4隅に形成された円形の切り込み(図示せず)に挿入されて、底板部18aの4隅に取り付けられている。すなわち、第1防振部材19が底板部18aを両側から挟み込むようにして、取り付けられている。第1防振部材19の中空部内にケース部材6のHDD収納部6aの底面から上方向に突出しているネジ止めボス6g(図8参照)が挿入された後、ネジを上方向から螺合させることによって、HDDブラケット18がケース部材6のHDD収納部6の底面に結合される。
【0031】
HDDブラケット18は、1又は複数の(本例では4つの)第2防振部材20を介してHDD5が取り付けられる。第2防振部材20は、弾性を有しており、任意の適切な樹脂またはゴム等によって形成されている。第2防振部材20は、図12のように、円筒形状(リング形状)に形成され、その外周部における高さ方向の略中間位置に切り込み(図示せず)が形成されており、HDD設置部18bの所定位置(HDD5底面のネジ孔に対応する位置)に形成された円形の切り込み(図示せず)に挿入されて、HDD設置部18bの所定位置に取り付けられている。すなわち、第2防振部材20がHDD設置部18bを両側から挟み込むようにして、取り付けられている。HDDブラケット18がケース部材6に結合されるとき、第2防振部材20は、HDD収納部6aの底面から上方向に突出している略円筒のボス6h(図8参照)の上に配されている。そして、HDD5底面のネジ孔(図示せず)が第2防振部材20の中空部上に位置するように、HDD5が第2防振部材20上に設置される。そして、ケース部材6のボス6hの下方向からネジを螺合させることによって、HDDブラケット18にHDD5が結合される。
【0032】
好ましくは、第1防振部材19は第2防振部材20よりも柔らかい(弾性変形しやすい、弾性率が小さい)材料によって形成されている。HDD5の長辺方向で見ると、第1防振部材19は、第2防振部材20よりもHDD5の中心(すなわち内部に存在する磁気ディスクの回転中心であって、HDD5の振動中心)から遠い位置に配されている。すなわち、HDD5の振動中心から第1防振部材19までの距離は、HDD5の振動中心から第2防振部材までの距離よりも大きくなっている。詳細には、HDDブラケット18の短辺が第1防振部材19を介してケース部材6に取り付けられ、HDDブラケット18の長辺に第2防振部材20を介してHDD5が取り付けられている。従って、振動中心から遠くなるほど振動の周波数が低くなる(振幅が大きくなる)ので、第1防振部材19にはHDD5の振動のうち、特に低周波成分(振幅が大きい振動)が伝達されるが、第1防振部材19に弾性変形しやすい柔らかい材料を用いることで、低周波数の振動を良好に減衰できる。弾性変形しやすいことにより、低周波数の振幅の大きい振動に応答して第1防振部材19が十分に変形することができるからである。一方、第2防振部材20にはHDD5の振動のうち、特に高周波成分(振幅が小さい振動)が伝達されるが、第2防振部材20に弾性変形しにくい固い材料を用いることで、高周波数の振動を良好に減衰できる。弾性変形しにくいが、高周波数の振幅の小さい振動に応答して第2防振部材20が十分に変形することができるからである。
【0033】
また、第1防振部材19は第2防振部材20よりも厚みが厚く(厚みが厚いと弾性変形しやすい)形成されている。HDD5の長辺方向で見ると、第1防振部材19は、第2防振部材20よりもHDD5の中心から遠い位置に配されている。従って、第1防振部材19にはHDD5の振動のうち、特に低周波成分(振幅が大きい振動)が伝達されるが、第1防振部材19に弾性変形しやすい厚いものを用いることで、振動を良好に減衰できる。一方、第2防振部材20にはHDD5の振動のうち、特に高周波成分(振幅が小さい振動)が伝達されるが、第2防振部材20に弾性変形しにくい薄いものを用いることで、振動を良好に減衰できる。
【0034】
HDD5が第2防振部材20を介してHDDブラケット18に結合されるので、HDD5で発生する振動はHDDブラケット18に伝達される際にその大半が第2防振部材20によって吸収され減衰される。従って、HDDブラケット18がHDD5から伝達される振動によって振動し、雑音を発生することを抑制できる。さらに、HDDブラケット18が第1防振部材19を介してケース部材6に結合されるので、HDDブラケット18からケース部材6に伝達される振動の大半は、第1防振部材によって吸収され減衰される。従って、ケース部材6がHDDブラケット18から伝達される振動によって振動し、雑音を発生することを抑制できる。また、HDDブラケット18が第1防振部材19を介してケース部材6に結合されるので、HDDブラケット18は、HDD収納部6aの底面から若干持ち上げられた(底面から所定の間隔が空けられた)状態で取り付けられる。なお、第1防振部材19および第2防振部材20が円筒形状(リング形状)に形成されているので、各第1防振部材19および第2防振部材20の全周に亘って略均一に振動を吸収することができる。
【0035】
好ましくは、図12のように、HDDブラケット18の底板部18aには、1又は複数の開口18cが形成されている。開口18cの形状は、任意の適切な形状が採用され得るが、本例の場合、8つの円形の開口18cが形成されている。円形以外では、長円径や楕円形など頂点を有しない形状が採用される。開口18cが形成されることによって、HDDブラケット18の下側を流れる空気は、開口18cを介してHDD18の上側に流入するので、HDD5の放熱効果を高くすることができる。すなわち、HDD5近傍の暖められた空気と、HDDブラケット18下側の比較的冷たい空気とが開口18cを介して相互に流入し合うことによって、HDD5に冷たい空気を供給することができる。なお、開口18cを形成する代わりに、HDDブラケット18を左右2つに分割した形状にし、HDDブラケット18上下で空気が移動できるようにしてもよい。
【0036】
また、開口18cが形成されることによって、同一の厚みを有するHDDブラケット18を採用した場合に、HDDブラケット18の重量を小さくすることができる。第1防振部材19および第2防振部材20には、HDD5を支持すると共にHDD5の振動を正常に吸収するために、HDD5とHDDブラケット18の総重量には制限が設けられている。HDD5の重量を変更できない場合、HDDブラケット18の重量を小さくする必要があるが、HDDブラケット18を薄くして重量を小さくすると、HDDブラケット18の強度が弱くなりHDDブラケット18から騒音が発生する可能性がある。しかし、本例では、開口18cを形成することによってHDDブラケット18の重量を小さくしているので、このような問題が発生しない。また、開口18cが円形であることにより例えば四角形の場合に比べてHDDブラケット18の強度を高くできる。
【0037】
ファン8は、図8のように、ファン収納部6bに収納された後、図示しない防振部材を取り付けて、ネジによってファン収納部6bに結合される。ファン8によって発生する振動も、上記同様に、第2防振部材20、第1防振部材19によって吸収され減衰される。
【0038】
カバー部材7は、ケース部材6にHDD5およびファン8が結合された後、ケース部材6の上面開口を覆うと共に、ケース部材6と共に筐体1の側面シャーシ15にネジによって結合されるものである。カバー部材7は、ケース部材6の上面開口よりもやや大きい、略矩形上の薄い板状である。カバー部材7によって、ケース部材6の上面開口を完全に塞がれるので、HDD5収納部6a内を流れる空気がケース部材6の上面方向に漏れることを防止できる。また、カバー部材7によって、HDD5から発生する駆動音等の騒音が筐体1外部に漏れることを抑制することができる。
【0039】
ケース部材6に形成されたネジ挿入孔6i(図7、図8、図13参照)が側面シャーシ15に形成されたネジ孔15a(図7、図13参照)の位置に対応するように、ケース部材6は、筐体1内に収納され、側面シャーシ15および前面シャーシ24上に設置される。なお、図13に示すように、ケース部材6のネジ挿入孔6iの周囲には位置決めリブ6jが形成されているので、ネジ挿入孔6iとネジ孔15aとを容易に位置決めすることができる。その後、カバー部材7に形成されたネジ挿入孔7a(図5参照)が側面シャーシ15に形成されたネジ孔15aの位置に対応するように、カバー部材7をケース部材6の上部に配置し、ネジ止めすることによって、カバー部材7およびケース部材6が、側面シャーシ15に結合される。
【0040】
以上の構成を有するパソコン100の放熱構造の作用について、図3を参照して、説明する。
【0041】
ファン8が駆動されると、ファン8の吸引力によって、ケース部材6のHDD収納部6a内部のHDD5によって暖められた空気は、矢印Aに示すように、HDD収納部6a内を後方に移動し、ファン収納部6bおよび開口6fを介してケース部材6の外部に放出される。そして、矢印Aに示すように、下部シャーシ12の吸入口16から筐体1外部の冷たい空気が筐体1内部に吸入されて、その冷たい空気が開口6dを介してHDD収納部6a内に取り込まれる。このように、HDD収納部6a内では、HDD5によって暖められた空気がケース部材6の外部に放出され、外部から吸入された冷たい空気が取り込まれることにより、HDD収納部6aに収納されたHDD5を放熱することができる。
【0042】
また、ファン8が駆動されると、ファン8の吸引力によって、吸入口16と開口16eとを結ぶ略直線上の領域(流路B上)に配されているアンプ部2や電源トランス3周囲の暖められた空気は、矢印Bに示すように、開口6eを介して筒状部6c内に取り込まれ、ファン収納部6bおよび開口6fを介してケース部材6の外部に放出される。そして、矢印Bに示すように、下部シャーシ12の吸入口16から筐体1外部の冷たい空気が筐体1内部に吸入されて、その冷たい空気がアンプ部2や電源トランス3の周囲に取り込まれる。このように、ケース部材6の下側では、アンプ部2および電源トランス3によって暖められた空気がケース部材6の筒状部6cを通ってケース部材6の後方に放出され、外部から吸入された冷たい空気が取り込まれることにより、ケース部材6の下方に配置されたアンプ部2や電源トランス3を放熱することができる。
【0043】
また、排気用ファン9が駆動されることによって、ファン8によってケース部材6の後面から放出された暖かい空気は、排気用ファン9の吸引力によって、ダクト部材10内に吸入される。ダクト部材10の後部開口には後面パネル13の排気口17が位置しているので、ダクト部材10に取り込まれた暖かい空気はダクト部材10内を移動し、排気口17を介して筐体1の外部に放出される。
【0044】
このように1つのファン8のみによって、筐体1の上方に配されるHDD5と、筐体1の下方に配されるアンプ部2、電源トランス3とを効果的に放熱することができる。したがって、従来のパソコンと比べ、ファンの数を削減することができ、コストの低減化を図ることができる。また、パソコンの静音化に寄与することができる。
【0045】
また、上記のようなケース部材6の構造によって、吸入口16から吸入された空気がHDD収納部6aを移動してケース部材6の後方に放出される流路Aと、吸入口16から吸入された空気がアンプ部2や電源トランス3の位置を介してケース部材6の後方に放出される流路Bとが分離されている(すなわち、流路A上にはアンプ部2や電源トランス3が配されず、流路B上にはHDD5が配されない)ので、1つのファン8のみでHDD5、アンプ部2、電源トランス3を放熱しているにも関わらず、アンプ部2や電源トランス3で熱せられた空気がHDD5に移動して、HDD5の放熱を妨げることを防止でき、逆にHDD5で熱せられた空気がアンプ部2や電源トランス3に移動して、アンプ部2や電源トランス3の放熱を妨げることを防止できる。
【0046】
次に、パソコン100における、HDD5の交換方法について説明する。
まず、図示しない天板を筐体1から取り外した後、図5に示すように、カバー部材7に螺合されているネジを取り外し、カバー部材7とケース部材6と側面シャーシ15との結合を解除する。次に、図6に示すように、カバー部材7をケース部材6の上面から取り外す。次に、図7に示すように、(ファン8の図示しないケーブルを取り外した後)ケース部材6を持ち上げて、ケース部材6を筐体1内部から取り出す。続いて、ケース部材6の底面から第2防振部材20を介してHDD5に螺合されているネジを取り外すことによって、HDD5とHDDブラケット18との結合を解除する。HDD5をケース部材6の中から取りだして、別のHDD5をケース部材6の中に収納し、ケース部材6の底面から第2防振部材20を介してHDD5に螺合することによって、HDDブラケット18にHDD5を結合する。以降は、カバー部材7やケース部材6を側面シャーシ15から取り外した時とは逆の手順で、ケース部材6およびカバー部材7を側面シャーシ15に結合することによって、HDD5の交換が終了する。
【0047】
以上のように、パソコン100においては、HDD5がケース部材6内に着脱可能に結合されて、ケース部材6が筐体1に着脱可能に結合されているので、ケース部材6を筐体1から取り出すことによって、きわめて容易にHDD5を交換することができる。ケース部材6が筐体1の上方に配置されていることによって、HDD5の交換がされに容易になる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。例えば、ケース部材6、アンプ部2、電源トランス3等を設置する位置は、上記の実施形態に限定されない。ケース部材6の後面(つまり、ファン8)を後面パネル13の排気口17の近傍に設置する場合には、排気用ファン9やダクト部材10は不要である。カバー部材7を設ける代わりに、天板や側面シャーシなどでケース部材6の上面開口を覆うようにしてもよい。ケース部材6に形成される各開口や、吸入口16の位置も上記の実施形態には限定されない。例えば、開口6d、6eはファン8に対向していなくてもよく、下向きに形成されていてもよい。また、ケース部材6にHDD5以外の他の発熱部材(アンプ部2、CPU、DVDドライブ等)が収納されてもよく、流路B上にアンプ部2や電源トランス3以外の発熱部材(HDD5、CPU、DVDドライブ等)が配置されてもよい。また、本発明は、HDDレコーダ等のパソコン以外の電子機器に適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、デスクトップPCとして特に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0050】
100 パソコン
1 筐体
2 アンプ部(第2発熱部材)
3 電源トランス(第2発熱部材)
4 マザーボード
5 HDD(第1発熱部材)
6 ケース部材
6a HDD収納部
6b ファン収納部
6c 筒状部
6d 開口
6e 開口
6f 開口
7 カバー部材
8 ファン
9 排気用ファン
10 ダクト部材
11 前面パネル
12 下部シャーシ
13 後面パネル
14 前面ブラケット
15 側面シャーシ
16 吸入口
17 排気口
18 HDDブラケット(支持部材)
19 第1防振部材
20 第2防振部材
24 前面シャーシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部材を固定部材に取り付ける部材取付構造であって、
前記振動部材を、1又は複数の第1防振部材、及び、1又は複数の第2防振部材を介して前記固定部材に取り付けるための支持部材を備え、
前記支持部材が前記第1防振部材を介して前記固定部材に取り付けられ、前記振動部材が前記第2防振部材を介して前記支持部材に取り付けられており、
前記支持部材が、前記固定部材に前記第1防振部材を介して取り付けられる底板部と、前記振動部材が前記第2防振部材を介して取り付けられる設置部とを含み、
前記設置部が、前記底板部から外側かつ前記振動部材方向に向かって断面略L字状になるように延設されることにより、前記底板部から前記振動部材までの間隔が、前記設置部から前記振動部材までの間隔よりも大きく形成されている、部材取付構造。
【請求項2】
振動部材を固定部材に取り付ける部材取付構造であって、
前記振動部材を、1又は複数の第1防振部材、及び、1又は複数の第2防振部材を介して前記固定部材に取り付けるための支持部材を備え、
前記支持部材が前記第1防振部材を介して前記固定部材に取り付けられ、前記振動部材が前記第2防振部材を介して前記支持部材に取り付けられており、
前記支持部材が平面視略長方形状に形成されており、その短辺が前記第1防振部材を介して前記固定部材に取り付けられ、その長辺に前記第2防振部材を介して前記振動部材が取り付けられる、部材取付構造。
【請求項3】
前記振動部材の振動中心から前記第1防振部材までの距離が、前記振動部材の振動中心から前記第2防振部材までの距離よりも大きく、前記第1防振部材が前記第2防振部材よりも弾性変形しやすい材料で形成されている、請求項1または2に記載の部材取付構造。
【請求項4】
前記振動部材の振動中心から前記第1防振部材までの距離が、前記振動部材の振動中心から前記第2防振部材までの距離よりも大きく、前記第1防振部材が前記第2防振部材よりも厚みが厚く形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の部材取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−108509(P2010−108509A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270551(P2009−270551)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【分割の表示】特願2009−530094(P2009−530094)の分割
【原出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】