部材回転スライド支持装置
【課題】動作規制機構に手指や衣服を挟んでしまうという不具合の発生を招くことなく、第2の部材を第1の部材に対して回転動作及びスライド動作可能にしたいという要望を解決できる部材回転支持装置を提供する。
【解決手段】第1の部材と、この第1の部材に回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材と、この第2の部材又は前記第1の部材により隠された部位に配設され前記回転動作及びスライド動作の範囲を規定する動作規定機構9とを具備してなる。
【解決手段】第1の部材と、この第1の部材に回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材と、この第2の部材又は前記第1の部材により隠された部位に配設され前記回転動作及びスライド動作の範囲を規定する動作規定機構9とを具備してなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の部材に回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材の回転動作及びスライド動作の範囲を規定する動作部材回転スライド支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、第1の部材として例えば椅子本体と、この椅子本体に少なくとも回転動作可能に支持された第2の部材であるメモ台本体と、前記回転動作の範囲を規定する動作規定機構とを具備してなるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。この椅子は、メモ台本体の少なくとも回転動作を利用して当該メモ台本体を水平な使用姿勢と起立した格納姿勢との間で作動させ得るように構成されている。
【0003】
このような椅子においては、使用者の体格等に応じて使用姿勢にあるメモ台本体を前後方向にスライド移動させたいという要望がある。ところが、メモ台本体の回転動作に加えてスライド動作も行うことができるようにすると、椅子本体とメモ台本体との間に複雑な構造をなす動作規制機構を備えることが必要となる。そのため、この椅子本体とメモ台本体が配される場所によっては、動作規制機構に手指や衣服を挟んでしまうという不具合の発生が予想される。
【0004】
このような不具合の発生は、椅子本体とメモ台本体とを備えた椅子の場合には限られず、第1の部材に対して回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材を備えたものであれば、同様に生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−184737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した不具合の発生を招くことなく、第2の部材を第1の部材に対して回転動作及びスライド動作可能にしたいという要望を解決できる部材回転支持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するために、次のような構成を採用したものである。すなわち、本発明に係る部材回転スライド支持装置は、第1の部材と、この第1の部材に回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材と、この第2の部材又は前記第1の部材により隠された部位に配設され前記回転動作及びスライド動作の範囲を規定する動作規定機構とを具備してなることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、動作規定機構がどのような構造のものであろうと、該動作規定機構が第1の部材または第2の部材によって隠されているので、動作規制機構に手指や衣服を挟んでしまうという不具合の発生を招くことなく、第1の部材に対して第2の部材を回転動作可能かつスライド動作可能に支持させることができる。
【0009】
具体的な一例としては、第1の部材が筒状をなす部材本体とこの部材本体に嵌着され軸孔を有したブッシュとを備えたものであり、第2の部材が部材本体とこの部材本体に設けられ前記ブッシュの軸孔にスライド動作可能かつ回転動作可能に装着される軸部とを備えたものであり、前記動作規定機構が、前記ブッシュの軸孔に臨むスライド動作用のスリット及び回転動作用のスリットと、このブッシュのスリットに頭部を位置させた状態で前記第2の部材の軸部に突設された突起とを備えたものであり、この動作規定機構が前記第1の部材により隠されているものが挙げられる。
【0010】
さらに具体的には、前記第2の部材が有底円筒体状をなす部材本体と、この部材本体の底壁に固設した軸部とを備えたものであり、前記第2の部材の部材本体が第1の部材の部材本体の外周に嵌合させてあるものが好ましい。
【0011】
好適な一態様としては、前記スライド動作用のスリットが、両端が開放されていない状態で前記ブッシュの中間領域に形成されたものであり、前記突起が、前記ブッシュに挿入された軸部に前記スリットを通して取り付けられるものが挙げられる。
【0012】
また、好適な他の態様としては、前記スライド動作用のスリットが、少なくとも一端が外方に開放された状態で前記ブッシュに形成されたものであり、前記突起が、前記軸部に取り付けられた状態で前記ブッシュのスライド動作用スリットに挿入されるものが挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上のような構成であるから、上述した不具合の発生を招くことなく、第2の部材を第1の部材に対して回転動作及びスライド動作可能にしたいという要望を解決できる部材回転支持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態の椅子の斜視図。
【図2】同実施形態にかかる椅子の正面図。
【図3】同実施形態にかかるメモ台本体を使用姿勢にした椅子の側面図。
【図4】同実施形態にかかる椅子の平面図。
【図5】同実施形態にかかるメモ台本体を起立姿勢にした椅子の側面図。
【図6】同実施形態にかかるメモ台本体を格納姿勢にした椅子の側面図。
【図7】同実施形態にかかる椅子の要部を一部省略して示す図。
【図8】同実施形態にかかる椅子の要部を一部省略して示す図。
【図9】図8におけるX−X線断面で示す作用説明図。
【図10】図8におけるX−X線断面で示す作用説明図。
【図11】同実施形態にかかる椅子の要部を示す分解斜視図。
【図12】同実施形態にかかる椅子のスタッキング方法を示す図。
【図13】本発明の変形例を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図1〜図12を参照して説明する。
【0016】
この実施形態は、メモ台3を備えてなる椅子1に本発明にかかる部材回転スライド支持装置10を適用した場合のものである。すなわち、本発明にかかる部材回転スライド装置10は、図1〜図12に示すように、第1の部材である椅子本体2と、この椅子本体2に回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材であるメモ台3と、前記椅子本体2により隠された部位に配設され前記回転動作及びスライド動作の範囲を規定する動作規定機構9とを具備してなる。
【0017】
この実施形態は、図12に示すように、本発明を前後方向にスタッキング可能な椅子1、換言すれば水平方向にネスティング可能な椅子1に適用したものであり、椅子本体2と、この椅子本体2に保持機構7を介してメモ台本体8を支持させてなるメモ台3とを具備してなる。本実施形態に係る椅子1は、収納時などに、座板5を座跳ね上げ位置(J)に保持するとともに、前記メモ台本体8を格納姿勢(C)に収容することによって同一構造をなす他の椅子1’と前後方向に近接させて少ないスペースで多くの椅子1を収納し得るように構成されているものである。
【0018】
椅子本体2は、図1〜図12に示すように、フレーム構造体4に座板5及び背板6を支持させてなるものであり、より詳しくは、座板5を支持する座支持フレーム46を有したフレーム構造体4を具備してなるものであり、この座支持フレーム46の軸461を介して座板5を座使用位置(U)と座跳ね上げ位置(J)との間で回動させ得るようにしたものである。また、この椅子本体2は、メモ台支持フレーム48を備えており、このメモ台支持フレーム48に保持機構7を介してメモ台本体8を支持させている。
【0019】
フレーム構造体4は、図1〜図6、図11及び図12に示すように、金属パイプ材を主体に構成されたものである。フレーム構造体4は、下端にキャスタ411を有した左右の前脚41と、下端にキャスタ421を有した左右の後脚42と、これら後脚42の上端と前脚41の上端とをそれぞれ繋ぐ左右の側フレーム43と、これら左右の側フレーム43の前端近傍部間に架設され両側フレーム43同士を結合する前フレーム44と、左右の側フレーム43の後端近傍部間に架設され両側フレーム43同士を結合する後フレーム45と、この後フレーム45に回転可能に支持させた座支持フレーム46と、前記後脚42の上端から上方に延出する左右の背フレーム47とを備えてなる。前記メモ台支持フレーム48は、基端部480を片側の後脚42及び側フレーム43に支持させて設けられている。メモ台支持フレーム48の先端部481側は、前記ネスティングを妨げないように斜め上方に向けて片持ち的に延出させている。本実施形態においては、図1〜図12に示すように、本発明の第1の部材である椅子本体2のメモ台支持フレーム48は、筒状をなすフレーム本体482とこのフレーム本体482に嵌着され軸孔491を有したブッシュ49とを備えたものである。ブッシュ49は、筒状をなす合成樹脂製のもので、拡径させた先端部492をフレーム本体482の先端部481に一致させて、フレーム本体482に対して回転不能に取り付けられている。このブッシュ49には、当該ブッシュ49の軸孔491に臨むスライド動作用のスリット493及び回転動作用のスリット494が形成されている。
【0020】
左右の前脚41間の距離すなわち幅寸法は、左右の後脚42間の距離よりも小さく設定されているため、座板5を跳ね上げた状態で同一の構造をなす他の椅子1’とネスティング可能になっている。すなわち、椅子1と、この椅子1の後にある他の椅子1’とを相互に相寄る方向に移動させることにより、まずは、椅子1における左右の後脚42の内側に他の椅子1’の左右の前脚41を通過させ、その後更に移動させることにより椅子1における前脚41の後部と椅子1における前脚41の前部とが近接した状態で向かい合うように位置させることで、椅子1と他の椅子1’とのネスティングを可能にしている。そして、前記メモ台本体8は、格納姿勢(C)において前端81側が後端82側よりも内側に位置するように支持されているので、ネスティング状態においては、メモ台本体8の外側に他の椅子1’のメモ台本体8の一部が重なり合うようになっている。なお、他の椅子1’の各部分については、椅子1と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0021】
以上のような椅子本体2のメモ台支持フレーム48に、前記メモ台3が取り付けられている。
【0022】
メモ台3は、図1〜図12に示すように、前記メモ台支持フレーム48に保持機構7を介してメモ台本体8を支持させたものである。
【0023】
保持機構7は、図1〜図12に示すように、メモ台本体8の回転動作及びスライド動作を利用して当該メモ台本体8を使用姿勢(A)と格納姿勢(C)との間で作動させ得るように構成されたものであり、椅子本体2に回転動作可能かつスライド動作可能に支持されたメモ台本体8の回転動作及びスライド動作の範囲を規定する動作規制機構9を備えている。詳述すれば、前記保持機構7は、前記メモ台支持フレーム48の外周483に該メモ台支持フレーム48の軸心484回りに回転可能に、かつ、軸心484方向にスライド可能に外装された第1の構造体71と、この第1の構造体71に対して前記軸心484と直交する第2の軸心721回りに回転可能に取り付けられた第2の構造体72とを備えており、この第2の構造体72に前記メモ台本体8が取り付けられている。なお、図7は、メモ台本体8及び第2の構造体72を省略して示している。また、図9は、使用姿勢(A)のメモ台本体8を使用者側から一番遠ざけた状態で、後述する突起91及び回転動作用のスリット494を含むX−X線で切断した断面を示した図であり、図10は、図9の状態からメモ台本体8を起立姿勢(B)に跳ね上げた状態を示した図である。
【0024】
第1の構造体71は、図1〜図12に示すように、板金製のベース711と、このベース711を前記メモ台支持フレーム48に回転可能かつスライド可能に支持させるためのメモ台保持部材710と、このメモ台保持部材710に一体的に取り付けられた板金製のブラケット712と、このブラケット712の内側に配設され前記ベース711と前記メモ台保持部材710との間の隙間を埋める金属製のスペーサ713とを具備してなる。ベース711は、平板状をなすもので、複数箇所に雌ねじ穴を備えている。本発明の第2の部材であるメモ台3のメモ台保持部材710は、保持部材本体74と、この保持部材本体74に設けられ前記ブッシュ49の軸孔491にスライド動作可能かつ回転動作可能に装着される軸部75とを備えたものである。より具体的には、メモ台保持部材710は、有底円筒体状をなす保持部材本体74と、この保持部材本体74の底壁76に固設し先端部77が保持部材本体74の開口部よりも突出した軸部75とを備えたものであり、前記メモ台保持部材710の保持部材本体74がメモ台支持フレーム48のフレーム本体482の外周483に嵌合させてある。本実施形態においては、保持部材本体74は、合成樹脂製のものであり、前記軸部75は、金属製のものである。軸部75の先端部77には、後述する突起91を取り付けるためのナット78が設けられている。ブラケット712は、前記メモ台保持部材710の外周を包持するブラケット本体716と、このブラケット本体716を前記ベース711に取り付けるための取付部717とを備えている。ブラケット本体716と取付部717とは、板金素材を成形することにより一体に作られたもので、前記取付部717に貫通させたボルト714を前記ベース711の雌ねじ穴に螺着することにより、ブラケット712をベース711に固定している。
【0025】
第2の構造体72は、図2、図3、図5、図6及び図8〜図12に示すように、前記第1の構造体71に軸着された平板状のもので、この第2の構造体72の外面にメモ台本体8をビス722を用いて取り付けている。メモ台本体8は、使用姿勢(A)から起立姿勢(B)を経て格納姿勢(C)に移動させることができるようになっている。すなわち、メモ台本体8の使用姿勢(A)から起立姿勢(B)への跳ね上げ動作は、メモ台支持フレーム48に対して第1の構造体71がメモ台支持フレーム48の軸心484まわりに回動することにより実現される。メモ台本体8の起立姿勢(B)から格納姿勢(C)への収納動作は、メモ台本体8を支持する第2の構造体72が第1の構造体71に対して第2の軸心721まわりに回動することにより実現される。
【0026】
保持機構7の動作規定機構9は、図4及び図7〜図11に示すように、前記ブッシュ49の軸孔491に臨むスライド動作用のスリット493及び回転動作用のスリット494と、このブッシュ49のスリット493、494に頭部92を位置させた状態で前記メモ台保持部材710の軸部75に突設された突起91とを備えたものである。この動作規定機構9は、前記メモ台支持フレーム48のフレーム本体482により隠されている。本実施形態においては、前記スライド動作用のスリット493及び回転動作用のスリット494は、両端が開放されていない状態で前記ブッシュ49の中間領域495に形成されたものである。詳述すれば、スライド動作用のスリット493は、前記メモ台支持フレーム48の軸心484方向に沿って延びるものである。回転動作用のスリット494は、前記スライド動作用のスリット493の一端に連続し、ブッシュ49の外周方向に沿って延びるものである。突起91は、前記ブッシュ49に挿入された軸部75に前記スリット493、494を通して取り付けられるものである。本実施形態では、この突起91は、軸部75に着脱可能な雄ねじであり、一端側を前記軸部75のナット78に取り付けるとともに、他端側である頭部92をブッシュ49の外面側に臨ませている。
【0027】
次いでこの椅子1の作動を説明する。
【0028】
まず、メモ台本体8を使用姿勢(A)に位置させた場合には、動作規定機構9の突起91がスライド動作用のスリット493の下面に係り合い、メモ台本体8のそれ以上の下方への回動が禁止される。すなわち、メモ台本体8は水平な使用姿勢(A)に維持される。この使用姿勢(A)において前記メモ台本体8を最も奥側の位置までスライドさせると、図3の実線及び図9に示すように、動作規定機構9の突起91が、回転動作用のスリット494の一端496に位置することになる。そのため、この状態においては、メモ台本体8を持ち上げることよりメモ台本体8を起立姿勢(B)まで跳ね上げることができる。図5及び図10に示すように、メモ台本体8を起立姿勢(B)まで跳ね上げると、動作規定機構9の突起91が回転動作用のスリット494の他端497に係り合い、メモ台本体8のそれ以上の回動が禁止される。この起立姿勢(B)からメモ台本体8を後方に付勢すると、このメモ台本体8が第2の軸心721まわりに略180度回転し、図6に示すように、格納姿勢(C)に至る。この格納姿勢(C)においては、前述したネスティングが可能になる。また、このメモ台本体8を以上の動作と逆の動作をさせることにより、格納姿勢(C)から起立姿勢(B)を経て使用姿勢(A)に戻すことができる。
【0029】
なお、この使用姿勢(A)において、メモ台本体8を後方にスライド移動させると、前記突起91がスライド動作用のスリット493に沿って移動する。そのため、この状態でメモ台本体8に操作力を加えて跳ね上げようとすると、前記突起91がスライド動作用のスリット493の上面側に当接し、その跳ね上げ動作が禁止される。
【0030】
以上に述べたように、本実施形態にかかる部材回転スライド支持装置10は、第1の部材であるメモ台支持フレーム48と、このメモ台支持フレーム48に回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材であるメモ台保持部材710と、前記メモ台支持フレーム48により隠された部位に配設され前記回転動作及びスライド動作の範囲を規定する動作規定機構9とを具備してなるので、動作規制機構9に手指や衣服を挟んでしまうという不具合の発生を招くことなく、メモ台支持フレーム48に対してメモ台保持部材710をスライド動作させることができる。そのため、使用者の好みや体型に合わせて、メモ台本体8をスライド移動させることができる。
【0031】
特に、本実施形態においては、この部材回転スライド支持装置10を使用者によって頻繁に回転動作及びスライド動作が行われるメモ台3の保持部分に適用したので、使用者が上述した不具合を感じることなく、また、動作規定機構9がメモ台支持フレーム48によって隠されているので、家具としての美観も良好にすることができる。
【0032】
メモ台支持フレーム48が筒状をなすフレーム本体482とこのフレーム本体482に嵌着され軸孔491を有したブッシュ49とを備えたものであり、メモ台保持部材710が保持部材本体74と、この保持部材本体74に設けられ前記ブッシュ49の軸孔491にスライド動作可能かつ回転動作可能に装着される軸部75とを備えたものであり、前記動作規定機構9が、前記ブッシュ49の軸孔491に臨むスライド動作用のスリット493及び回転動作用のスリット494と、このブッシュ49のスリット493、494に頭部92を位置させた状態で前記メモ台保持部材710の軸部75に突設された突起91とを備えたものであり、この動作規定機構9が前記メモ台支持フレーム48のフレーム本体482により隠されているので、L字型をなすスリット493、494に手指や衣服を挟んでしまうという不具合の発生を招くことなく、スライド動作及び回転動作をスムーズに行うことができる。また、フレーム本体482によって、上面側、下面側、側面側から突起91及びスリット493、494の全体を隠すことができる。
【0033】
前記メモ台保持部材710が有底円筒体状をなす保持部材本体74と、この保持部材本体74の底壁76に固設した軸部75とを備えたものであり、前記メモ台保持部材710の保持部材本体74がメモ台支持フレーム48のフレーム本体482の外周483に嵌合させてあるので、保持部材本体74にメモ台本体8を取り付けることによって、メモ台本体8を該保持部材本体74の動きに合わせてスライド動作及び回転動作させることができる。また、底壁76によって、椅子1の正面側からも動作規定機構9を隠すことができる。
【0034】
特に、本実施形態においては、メモ台保持部材710とメモ台支持フレーム48との重なりが一番大きくなった状態、すなわち、使用姿勢(A)で使用者側に一番近づけた際に、メモ台保持部材710が外側からメモ台支持フレーム48の先端部481を覆うことになるため、メモ台支持フレーム48の先端部481側の突出量を小さくすることができる。すなわち、使用姿勢(A)で使用者側に一番近づけた際には、保持機構7を椅子本体2側に近づけて椅子1全体をコンパクトにすることができる。
【0035】
前記スライド動作用のスリット493は、両端が開放されていない状態で前記ブッシュ49の中間領域495に形成されたものであり、前記突起91は、前記ブッシュ49に挿入された軸部75に前記スリット493、494を通して取り付けられるものであるので、スライド動作用のスリット493の前後端で前後のスライド距離を規定することができる。本実施形態では、突起91の頭部92の直径と、スリット493、494の内法寸法を略同一にしているので、がたつきなくメモ台本体8をスライド移動させたり、回転移動させたりできる。特に、本実施形態のような突起91であれば、ブッシュ49に対する軸部75の抜け止めも防止することができる。
【0036】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
【0037】
本発明の部材回転スライド装置は、椅子に適用されるものに限られず、第1の部材と、この第1の部材に回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材とを備えたものであればどのようなものであってもよい。具体的な一例としては、収納庫の扉の支持装置に適用することが考えられる。また、椅子の場合であっても、メモ台以外の部分に適用してもよいし、メモ台に適用される場合であっても、前記格納姿勢でメモ台本体が収容される2つの軸心まわりでの回転動作を行うものに限られず、起立姿勢でメモ台本体が収容される単一の軸心まわりのみの回転動作を行うものであってもよい。
【0038】
本発明の変形例としては、図13に示すものが挙げられる。以下、本実施形態と同様の部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。この椅子1に適用される部材回転スライド支持装置10は、前記スライド動作用のスリット493が、少なくとも一端が外方に開放された状態で前記ブッシュ49に形成されたものであり、前記突起91が、前記軸部75に取り付けられた状態で前記ブッシュ49のスライド動作用スリット493に挿入されるものである。より具体的には、スライド動作用のスリット493の一端が、ブッシュ49の先端部に開放されているとともに、その他端が回転動作用のスリット494に連続している。突起91は、金属製のピンであり、前記軸部75に溶着等により固設されている。軸部75は、ブッシュ49に挿入された後に、先端部77に抜け止め用の鍔部93及びボルト94が装着され、ブッシュ49に対する軸部75の抜け止めを防止することができる。このように、突起は、上述した雄ねじには限られず種々変更可能である。また、突起は、スリットの外周面に貫通していなくてもよい。
【0039】
また、本発明の動作規定機構は、突起とスリットとを備えたものに限られないのはもちろんである。
【0040】
さらに、スライド動作用のスリット及び回転動作用のスリットの数や形状は、種々変更可能であり、例えば、スライド動作用のスリットの途中に回転動作用のスリットが設けられたものであってもよい。また、螺旋状に設けられたスリットを設けたものであれば、突起がスリットを動くことによってスライド動作及び回転動作を行うことができる。
【0041】
スライド移動の方向は、前後方向に限られず、左右方向や斜め方向に移動するものであってもよい。また、回転移動も90度回転のものには限られない。
【0042】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0043】
10…部材回転スライド支持装置
9…動作規定機構
483…外周
49…ブッシュ
491…軸孔
493…スライド動作用のスリット
494…回転動作用のスリット
75…軸部
76…底壁
91…突起
92…頭部
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の部材に回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材の回転動作及びスライド動作の範囲を規定する動作部材回転スライド支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、第1の部材として例えば椅子本体と、この椅子本体に少なくとも回転動作可能に支持された第2の部材であるメモ台本体と、前記回転動作の範囲を規定する動作規定機構とを具備してなるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。この椅子は、メモ台本体の少なくとも回転動作を利用して当該メモ台本体を水平な使用姿勢と起立した格納姿勢との間で作動させ得るように構成されている。
【0003】
このような椅子においては、使用者の体格等に応じて使用姿勢にあるメモ台本体を前後方向にスライド移動させたいという要望がある。ところが、メモ台本体の回転動作に加えてスライド動作も行うことができるようにすると、椅子本体とメモ台本体との間に複雑な構造をなす動作規制機構を備えることが必要となる。そのため、この椅子本体とメモ台本体が配される場所によっては、動作規制機構に手指や衣服を挟んでしまうという不具合の発生が予想される。
【0004】
このような不具合の発生は、椅子本体とメモ台本体とを備えた椅子の場合には限られず、第1の部材に対して回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材を備えたものであれば、同様に生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−184737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した不具合の発生を招くことなく、第2の部材を第1の部材に対して回転動作及びスライド動作可能にしたいという要望を解決できる部材回転支持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するために、次のような構成を採用したものである。すなわち、本発明に係る部材回転スライド支持装置は、第1の部材と、この第1の部材に回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材と、この第2の部材又は前記第1の部材により隠された部位に配設され前記回転動作及びスライド動作の範囲を規定する動作規定機構とを具備してなることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、動作規定機構がどのような構造のものであろうと、該動作規定機構が第1の部材または第2の部材によって隠されているので、動作規制機構に手指や衣服を挟んでしまうという不具合の発生を招くことなく、第1の部材に対して第2の部材を回転動作可能かつスライド動作可能に支持させることができる。
【0009】
具体的な一例としては、第1の部材が筒状をなす部材本体とこの部材本体に嵌着され軸孔を有したブッシュとを備えたものであり、第2の部材が部材本体とこの部材本体に設けられ前記ブッシュの軸孔にスライド動作可能かつ回転動作可能に装着される軸部とを備えたものであり、前記動作規定機構が、前記ブッシュの軸孔に臨むスライド動作用のスリット及び回転動作用のスリットと、このブッシュのスリットに頭部を位置させた状態で前記第2の部材の軸部に突設された突起とを備えたものであり、この動作規定機構が前記第1の部材により隠されているものが挙げられる。
【0010】
さらに具体的には、前記第2の部材が有底円筒体状をなす部材本体と、この部材本体の底壁に固設した軸部とを備えたものであり、前記第2の部材の部材本体が第1の部材の部材本体の外周に嵌合させてあるものが好ましい。
【0011】
好適な一態様としては、前記スライド動作用のスリットが、両端が開放されていない状態で前記ブッシュの中間領域に形成されたものであり、前記突起が、前記ブッシュに挿入された軸部に前記スリットを通して取り付けられるものが挙げられる。
【0012】
また、好適な他の態様としては、前記スライド動作用のスリットが、少なくとも一端が外方に開放された状態で前記ブッシュに形成されたものであり、前記突起が、前記軸部に取り付けられた状態で前記ブッシュのスライド動作用スリットに挿入されるものが挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上のような構成であるから、上述した不具合の発生を招くことなく、第2の部材を第1の部材に対して回転動作及びスライド動作可能にしたいという要望を解決できる部材回転支持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態の椅子の斜視図。
【図2】同実施形態にかかる椅子の正面図。
【図3】同実施形態にかかるメモ台本体を使用姿勢にした椅子の側面図。
【図4】同実施形態にかかる椅子の平面図。
【図5】同実施形態にかかるメモ台本体を起立姿勢にした椅子の側面図。
【図6】同実施形態にかかるメモ台本体を格納姿勢にした椅子の側面図。
【図7】同実施形態にかかる椅子の要部を一部省略して示す図。
【図8】同実施形態にかかる椅子の要部を一部省略して示す図。
【図9】図8におけるX−X線断面で示す作用説明図。
【図10】図8におけるX−X線断面で示す作用説明図。
【図11】同実施形態にかかる椅子の要部を示す分解斜視図。
【図12】同実施形態にかかる椅子のスタッキング方法を示す図。
【図13】本発明の変形例を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図1〜図12を参照して説明する。
【0016】
この実施形態は、メモ台3を備えてなる椅子1に本発明にかかる部材回転スライド支持装置10を適用した場合のものである。すなわち、本発明にかかる部材回転スライド装置10は、図1〜図12に示すように、第1の部材である椅子本体2と、この椅子本体2に回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材であるメモ台3と、前記椅子本体2により隠された部位に配設され前記回転動作及びスライド動作の範囲を規定する動作規定機構9とを具備してなる。
【0017】
この実施形態は、図12に示すように、本発明を前後方向にスタッキング可能な椅子1、換言すれば水平方向にネスティング可能な椅子1に適用したものであり、椅子本体2と、この椅子本体2に保持機構7を介してメモ台本体8を支持させてなるメモ台3とを具備してなる。本実施形態に係る椅子1は、収納時などに、座板5を座跳ね上げ位置(J)に保持するとともに、前記メモ台本体8を格納姿勢(C)に収容することによって同一構造をなす他の椅子1’と前後方向に近接させて少ないスペースで多くの椅子1を収納し得るように構成されているものである。
【0018】
椅子本体2は、図1〜図12に示すように、フレーム構造体4に座板5及び背板6を支持させてなるものであり、より詳しくは、座板5を支持する座支持フレーム46を有したフレーム構造体4を具備してなるものであり、この座支持フレーム46の軸461を介して座板5を座使用位置(U)と座跳ね上げ位置(J)との間で回動させ得るようにしたものである。また、この椅子本体2は、メモ台支持フレーム48を備えており、このメモ台支持フレーム48に保持機構7を介してメモ台本体8を支持させている。
【0019】
フレーム構造体4は、図1〜図6、図11及び図12に示すように、金属パイプ材を主体に構成されたものである。フレーム構造体4は、下端にキャスタ411を有した左右の前脚41と、下端にキャスタ421を有した左右の後脚42と、これら後脚42の上端と前脚41の上端とをそれぞれ繋ぐ左右の側フレーム43と、これら左右の側フレーム43の前端近傍部間に架設され両側フレーム43同士を結合する前フレーム44と、左右の側フレーム43の後端近傍部間に架設され両側フレーム43同士を結合する後フレーム45と、この後フレーム45に回転可能に支持させた座支持フレーム46と、前記後脚42の上端から上方に延出する左右の背フレーム47とを備えてなる。前記メモ台支持フレーム48は、基端部480を片側の後脚42及び側フレーム43に支持させて設けられている。メモ台支持フレーム48の先端部481側は、前記ネスティングを妨げないように斜め上方に向けて片持ち的に延出させている。本実施形態においては、図1〜図12に示すように、本発明の第1の部材である椅子本体2のメモ台支持フレーム48は、筒状をなすフレーム本体482とこのフレーム本体482に嵌着され軸孔491を有したブッシュ49とを備えたものである。ブッシュ49は、筒状をなす合成樹脂製のもので、拡径させた先端部492をフレーム本体482の先端部481に一致させて、フレーム本体482に対して回転不能に取り付けられている。このブッシュ49には、当該ブッシュ49の軸孔491に臨むスライド動作用のスリット493及び回転動作用のスリット494が形成されている。
【0020】
左右の前脚41間の距離すなわち幅寸法は、左右の後脚42間の距離よりも小さく設定されているため、座板5を跳ね上げた状態で同一の構造をなす他の椅子1’とネスティング可能になっている。すなわち、椅子1と、この椅子1の後にある他の椅子1’とを相互に相寄る方向に移動させることにより、まずは、椅子1における左右の後脚42の内側に他の椅子1’の左右の前脚41を通過させ、その後更に移動させることにより椅子1における前脚41の後部と椅子1における前脚41の前部とが近接した状態で向かい合うように位置させることで、椅子1と他の椅子1’とのネスティングを可能にしている。そして、前記メモ台本体8は、格納姿勢(C)において前端81側が後端82側よりも内側に位置するように支持されているので、ネスティング状態においては、メモ台本体8の外側に他の椅子1’のメモ台本体8の一部が重なり合うようになっている。なお、他の椅子1’の各部分については、椅子1と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0021】
以上のような椅子本体2のメモ台支持フレーム48に、前記メモ台3が取り付けられている。
【0022】
メモ台3は、図1〜図12に示すように、前記メモ台支持フレーム48に保持機構7を介してメモ台本体8を支持させたものである。
【0023】
保持機構7は、図1〜図12に示すように、メモ台本体8の回転動作及びスライド動作を利用して当該メモ台本体8を使用姿勢(A)と格納姿勢(C)との間で作動させ得るように構成されたものであり、椅子本体2に回転動作可能かつスライド動作可能に支持されたメモ台本体8の回転動作及びスライド動作の範囲を規定する動作規制機構9を備えている。詳述すれば、前記保持機構7は、前記メモ台支持フレーム48の外周483に該メモ台支持フレーム48の軸心484回りに回転可能に、かつ、軸心484方向にスライド可能に外装された第1の構造体71と、この第1の構造体71に対して前記軸心484と直交する第2の軸心721回りに回転可能に取り付けられた第2の構造体72とを備えており、この第2の構造体72に前記メモ台本体8が取り付けられている。なお、図7は、メモ台本体8及び第2の構造体72を省略して示している。また、図9は、使用姿勢(A)のメモ台本体8を使用者側から一番遠ざけた状態で、後述する突起91及び回転動作用のスリット494を含むX−X線で切断した断面を示した図であり、図10は、図9の状態からメモ台本体8を起立姿勢(B)に跳ね上げた状態を示した図である。
【0024】
第1の構造体71は、図1〜図12に示すように、板金製のベース711と、このベース711を前記メモ台支持フレーム48に回転可能かつスライド可能に支持させるためのメモ台保持部材710と、このメモ台保持部材710に一体的に取り付けられた板金製のブラケット712と、このブラケット712の内側に配設され前記ベース711と前記メモ台保持部材710との間の隙間を埋める金属製のスペーサ713とを具備してなる。ベース711は、平板状をなすもので、複数箇所に雌ねじ穴を備えている。本発明の第2の部材であるメモ台3のメモ台保持部材710は、保持部材本体74と、この保持部材本体74に設けられ前記ブッシュ49の軸孔491にスライド動作可能かつ回転動作可能に装着される軸部75とを備えたものである。より具体的には、メモ台保持部材710は、有底円筒体状をなす保持部材本体74と、この保持部材本体74の底壁76に固設し先端部77が保持部材本体74の開口部よりも突出した軸部75とを備えたものであり、前記メモ台保持部材710の保持部材本体74がメモ台支持フレーム48のフレーム本体482の外周483に嵌合させてある。本実施形態においては、保持部材本体74は、合成樹脂製のものであり、前記軸部75は、金属製のものである。軸部75の先端部77には、後述する突起91を取り付けるためのナット78が設けられている。ブラケット712は、前記メモ台保持部材710の外周を包持するブラケット本体716と、このブラケット本体716を前記ベース711に取り付けるための取付部717とを備えている。ブラケット本体716と取付部717とは、板金素材を成形することにより一体に作られたもので、前記取付部717に貫通させたボルト714を前記ベース711の雌ねじ穴に螺着することにより、ブラケット712をベース711に固定している。
【0025】
第2の構造体72は、図2、図3、図5、図6及び図8〜図12に示すように、前記第1の構造体71に軸着された平板状のもので、この第2の構造体72の外面にメモ台本体8をビス722を用いて取り付けている。メモ台本体8は、使用姿勢(A)から起立姿勢(B)を経て格納姿勢(C)に移動させることができるようになっている。すなわち、メモ台本体8の使用姿勢(A)から起立姿勢(B)への跳ね上げ動作は、メモ台支持フレーム48に対して第1の構造体71がメモ台支持フレーム48の軸心484まわりに回動することにより実現される。メモ台本体8の起立姿勢(B)から格納姿勢(C)への収納動作は、メモ台本体8を支持する第2の構造体72が第1の構造体71に対して第2の軸心721まわりに回動することにより実現される。
【0026】
保持機構7の動作規定機構9は、図4及び図7〜図11に示すように、前記ブッシュ49の軸孔491に臨むスライド動作用のスリット493及び回転動作用のスリット494と、このブッシュ49のスリット493、494に頭部92を位置させた状態で前記メモ台保持部材710の軸部75に突設された突起91とを備えたものである。この動作規定機構9は、前記メモ台支持フレーム48のフレーム本体482により隠されている。本実施形態においては、前記スライド動作用のスリット493及び回転動作用のスリット494は、両端が開放されていない状態で前記ブッシュ49の中間領域495に形成されたものである。詳述すれば、スライド動作用のスリット493は、前記メモ台支持フレーム48の軸心484方向に沿って延びるものである。回転動作用のスリット494は、前記スライド動作用のスリット493の一端に連続し、ブッシュ49の外周方向に沿って延びるものである。突起91は、前記ブッシュ49に挿入された軸部75に前記スリット493、494を通して取り付けられるものである。本実施形態では、この突起91は、軸部75に着脱可能な雄ねじであり、一端側を前記軸部75のナット78に取り付けるとともに、他端側である頭部92をブッシュ49の外面側に臨ませている。
【0027】
次いでこの椅子1の作動を説明する。
【0028】
まず、メモ台本体8を使用姿勢(A)に位置させた場合には、動作規定機構9の突起91がスライド動作用のスリット493の下面に係り合い、メモ台本体8のそれ以上の下方への回動が禁止される。すなわち、メモ台本体8は水平な使用姿勢(A)に維持される。この使用姿勢(A)において前記メモ台本体8を最も奥側の位置までスライドさせると、図3の実線及び図9に示すように、動作規定機構9の突起91が、回転動作用のスリット494の一端496に位置することになる。そのため、この状態においては、メモ台本体8を持ち上げることよりメモ台本体8を起立姿勢(B)まで跳ね上げることができる。図5及び図10に示すように、メモ台本体8を起立姿勢(B)まで跳ね上げると、動作規定機構9の突起91が回転動作用のスリット494の他端497に係り合い、メモ台本体8のそれ以上の回動が禁止される。この起立姿勢(B)からメモ台本体8を後方に付勢すると、このメモ台本体8が第2の軸心721まわりに略180度回転し、図6に示すように、格納姿勢(C)に至る。この格納姿勢(C)においては、前述したネスティングが可能になる。また、このメモ台本体8を以上の動作と逆の動作をさせることにより、格納姿勢(C)から起立姿勢(B)を経て使用姿勢(A)に戻すことができる。
【0029】
なお、この使用姿勢(A)において、メモ台本体8を後方にスライド移動させると、前記突起91がスライド動作用のスリット493に沿って移動する。そのため、この状態でメモ台本体8に操作力を加えて跳ね上げようとすると、前記突起91がスライド動作用のスリット493の上面側に当接し、その跳ね上げ動作が禁止される。
【0030】
以上に述べたように、本実施形態にかかる部材回転スライド支持装置10は、第1の部材であるメモ台支持フレーム48と、このメモ台支持フレーム48に回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材であるメモ台保持部材710と、前記メモ台支持フレーム48により隠された部位に配設され前記回転動作及びスライド動作の範囲を規定する動作規定機構9とを具備してなるので、動作規制機構9に手指や衣服を挟んでしまうという不具合の発生を招くことなく、メモ台支持フレーム48に対してメモ台保持部材710をスライド動作させることができる。そのため、使用者の好みや体型に合わせて、メモ台本体8をスライド移動させることができる。
【0031】
特に、本実施形態においては、この部材回転スライド支持装置10を使用者によって頻繁に回転動作及びスライド動作が行われるメモ台3の保持部分に適用したので、使用者が上述した不具合を感じることなく、また、動作規定機構9がメモ台支持フレーム48によって隠されているので、家具としての美観も良好にすることができる。
【0032】
メモ台支持フレーム48が筒状をなすフレーム本体482とこのフレーム本体482に嵌着され軸孔491を有したブッシュ49とを備えたものであり、メモ台保持部材710が保持部材本体74と、この保持部材本体74に設けられ前記ブッシュ49の軸孔491にスライド動作可能かつ回転動作可能に装着される軸部75とを備えたものであり、前記動作規定機構9が、前記ブッシュ49の軸孔491に臨むスライド動作用のスリット493及び回転動作用のスリット494と、このブッシュ49のスリット493、494に頭部92を位置させた状態で前記メモ台保持部材710の軸部75に突設された突起91とを備えたものであり、この動作規定機構9が前記メモ台支持フレーム48のフレーム本体482により隠されているので、L字型をなすスリット493、494に手指や衣服を挟んでしまうという不具合の発生を招くことなく、スライド動作及び回転動作をスムーズに行うことができる。また、フレーム本体482によって、上面側、下面側、側面側から突起91及びスリット493、494の全体を隠すことができる。
【0033】
前記メモ台保持部材710が有底円筒体状をなす保持部材本体74と、この保持部材本体74の底壁76に固設した軸部75とを備えたものであり、前記メモ台保持部材710の保持部材本体74がメモ台支持フレーム48のフレーム本体482の外周483に嵌合させてあるので、保持部材本体74にメモ台本体8を取り付けることによって、メモ台本体8を該保持部材本体74の動きに合わせてスライド動作及び回転動作させることができる。また、底壁76によって、椅子1の正面側からも動作規定機構9を隠すことができる。
【0034】
特に、本実施形態においては、メモ台保持部材710とメモ台支持フレーム48との重なりが一番大きくなった状態、すなわち、使用姿勢(A)で使用者側に一番近づけた際に、メモ台保持部材710が外側からメモ台支持フレーム48の先端部481を覆うことになるため、メモ台支持フレーム48の先端部481側の突出量を小さくすることができる。すなわち、使用姿勢(A)で使用者側に一番近づけた際には、保持機構7を椅子本体2側に近づけて椅子1全体をコンパクトにすることができる。
【0035】
前記スライド動作用のスリット493は、両端が開放されていない状態で前記ブッシュ49の中間領域495に形成されたものであり、前記突起91は、前記ブッシュ49に挿入された軸部75に前記スリット493、494を通して取り付けられるものであるので、スライド動作用のスリット493の前後端で前後のスライド距離を規定することができる。本実施形態では、突起91の頭部92の直径と、スリット493、494の内法寸法を略同一にしているので、がたつきなくメモ台本体8をスライド移動させたり、回転移動させたりできる。特に、本実施形態のような突起91であれば、ブッシュ49に対する軸部75の抜け止めも防止することができる。
【0036】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
【0037】
本発明の部材回転スライド装置は、椅子に適用されるものに限られず、第1の部材と、この第1の部材に回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材とを備えたものであればどのようなものであってもよい。具体的な一例としては、収納庫の扉の支持装置に適用することが考えられる。また、椅子の場合であっても、メモ台以外の部分に適用してもよいし、メモ台に適用される場合であっても、前記格納姿勢でメモ台本体が収容される2つの軸心まわりでの回転動作を行うものに限られず、起立姿勢でメモ台本体が収容される単一の軸心まわりのみの回転動作を行うものであってもよい。
【0038】
本発明の変形例としては、図13に示すものが挙げられる。以下、本実施形態と同様の部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。この椅子1に適用される部材回転スライド支持装置10は、前記スライド動作用のスリット493が、少なくとも一端が外方に開放された状態で前記ブッシュ49に形成されたものであり、前記突起91が、前記軸部75に取り付けられた状態で前記ブッシュ49のスライド動作用スリット493に挿入されるものである。より具体的には、スライド動作用のスリット493の一端が、ブッシュ49の先端部に開放されているとともに、その他端が回転動作用のスリット494に連続している。突起91は、金属製のピンであり、前記軸部75に溶着等により固設されている。軸部75は、ブッシュ49に挿入された後に、先端部77に抜け止め用の鍔部93及びボルト94が装着され、ブッシュ49に対する軸部75の抜け止めを防止することができる。このように、突起は、上述した雄ねじには限られず種々変更可能である。また、突起は、スリットの外周面に貫通していなくてもよい。
【0039】
また、本発明の動作規定機構は、突起とスリットとを備えたものに限られないのはもちろんである。
【0040】
さらに、スライド動作用のスリット及び回転動作用のスリットの数や形状は、種々変更可能であり、例えば、スライド動作用のスリットの途中に回転動作用のスリットが設けられたものであってもよい。また、螺旋状に設けられたスリットを設けたものであれば、突起がスリットを動くことによってスライド動作及び回転動作を行うことができる。
【0041】
スライド移動の方向は、前後方向に限られず、左右方向や斜め方向に移動するものであってもよい。また、回転移動も90度回転のものには限られない。
【0042】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0043】
10…部材回転スライド支持装置
9…動作規定機構
483…外周
49…ブッシュ
491…軸孔
493…スライド動作用のスリット
494…回転動作用のスリット
75…軸部
76…底壁
91…突起
92…頭部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と、この第1の部材に回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材と、この第2の部材又は前記第1の部材により隠された部位に配設され前記回転動作及びスライド動作の範囲を規定する動作規定機構とを具備してなることを特徴とする部材回転スライド支持装置。
【請求項2】
第1の部材が筒状をなす部材本体とこの部材本体に嵌着され軸孔を有したブッシュとを備えたものであり、第2の部材が部材本体とこの部材本体に設けられ前記ブッシュの軸孔にスライド動作可能かつ回転動作可能に装着される軸部とを備えたものであり、前記動作規定機構が、前記ブッシュの軸孔に臨むスライド動作用のスリット及び回転動作用のスリットと、このブッシュのスリットに頭部を位置させた状態で前記第2の部材の軸部に突設された突起とを備えたものであり、この動作規定機構が前記第1の部材により隠されている請求項1記載の部材回転スライド支持装置。
【請求項3】
前記第2の部材が有底円筒体状をなす部材本体と、この部材本体の底壁に固設した軸部とを備えたものであり、前記第2の部材の部材本体が第1の部材の部材本体の外周に嵌合させてある請求項2記載の部材回転スライド支持装置。
【請求項4】
前記スライド動作用のスリットが、両端が開放されていない状態で前記ブッシュの中間領域に形成されたものであり、前記突起が、前記ブッシュに挿入された軸部に前記スリットを通して取り付けられるものである請求項2または3記載の部材回転スライド支持装置。
【請求項5】
前記スライド動作用のスリットが、少なくとも一端が外方に開放された状態で前記ブッシュに形成されたものであり、前記突起が、前記軸部に取り付けられた状態で前記ブッシュのスライド動作用スリットに挿入されるものである請求項2または3記載の部材回転スライド支持装置。
【請求項1】
第1の部材と、この第1の部材に回転動作可能かつスライド動作可能に支持された第2の部材と、この第2の部材又は前記第1の部材により隠された部位に配設され前記回転動作及びスライド動作の範囲を規定する動作規定機構とを具備してなることを特徴とする部材回転スライド支持装置。
【請求項2】
第1の部材が筒状をなす部材本体とこの部材本体に嵌着され軸孔を有したブッシュとを備えたものであり、第2の部材が部材本体とこの部材本体に設けられ前記ブッシュの軸孔にスライド動作可能かつ回転動作可能に装着される軸部とを備えたものであり、前記動作規定機構が、前記ブッシュの軸孔に臨むスライド動作用のスリット及び回転動作用のスリットと、このブッシュのスリットに頭部を位置させた状態で前記第2の部材の軸部に突設された突起とを備えたものであり、この動作規定機構が前記第1の部材により隠されている請求項1記載の部材回転スライド支持装置。
【請求項3】
前記第2の部材が有底円筒体状をなす部材本体と、この部材本体の底壁に固設した軸部とを備えたものであり、前記第2の部材の部材本体が第1の部材の部材本体の外周に嵌合させてある請求項2記載の部材回転スライド支持装置。
【請求項4】
前記スライド動作用のスリットが、両端が開放されていない状態で前記ブッシュの中間領域に形成されたものであり、前記突起が、前記ブッシュに挿入された軸部に前記スリットを通して取り付けられるものである請求項2または3記載の部材回転スライド支持装置。
【請求項5】
前記スライド動作用のスリットが、少なくとも一端が外方に開放された状態で前記ブッシュに形成されたものであり、前記突起が、前記軸部に取り付けられた状態で前記ブッシュのスライド動作用スリットに挿入されるものである請求項2または3記載の部材回転スライド支持装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−102795(P2013−102795A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246325(P2011−246325)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
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