説明

配列特異的ヌクレアーゼのナノ粒子媒介送達

配列特異的ヌクレアーゼを、細胞壁を含む植物細胞に導入するための方法が提供される。植物を遺伝子改変するか、又は、他の方法で改変するための方法、及び、細胞壁を含む植物細胞において病気を処置又は防止するための方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は米国仮特許出願第61/167,389号(2009年4月7日出願)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子の独特な性質を、DNAを細胞内に送達するために利用することができる。研究されたナノ粒子(例えば、タングステン、アルミニウム、ニッケルなど)の中で、金ナノ粒子(GNP)は、DNAを送達するための優れた候補である傾向を有する。低い細胞毒性、及び、生物学的に重要な様々なリガンドによる官能化が容易であることにより、金ナノ粒子が形質転換のために優先的に選ばれる。金ナノ粒子はサイズが1.2nmから600nmにまで及び得る。GNPの一般に使用される合成では、負に帯電する(例えば、シトラート被覆された)表面が20nm〜400nmの粒子についてはもたらされ、これに対して、より小さい1nm〜10nmの範囲のGNPは正に帯電する。プラスミドDNAは、その塩基を部分的に解くために十分に柔軟であるので、プラスミドDNAを金ナノ粒子にさらすことができる。シトラート官能化GNPの場合、プラスミドDNAは部分的に解けることができる。DNA骨格上の負電荷は十分に離れており、その結果、塩基と、金ナノ粒子との間のファンデルワールス引力により、プラスミドDNAが結合し、金粒子の表面を覆うことが生じる。これに対して、正に帯電したGNPの場合には、静電力及びファンデルワールス力がDNAの被覆又は結合に寄与し得る。
【0003】
金属ナノ粒子に加えて、サイズ範囲が3nm〜5nmである半導体ナノ粒子(例えば、量子ドット)(「QD」)もまた、様々な分子を細胞内に送達するためのキャリアとして使用されている。DNA及びタンパク質を、リガンドにより多官能化されるQD表面に被覆又は連結することができる(例えば、Patolsky,F.ら、J. Am. Chem. Soc.,125,13918(2003)を参照のこと)。カルボン酸又はアミンにより多官能化されたQDを、チオール基を含有する分子に架橋することができ(例えば、Dubertret B.ら、Science, 298,1759(2002); Akerman,M.E., W.C.W.Chan, P.Laakkonen, S.N.Bhatia, E.Ruoslahti, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 99, 12617(2002); Mitchell,G.P., C.A.Mirkin, R.L.Letsinger, J. Am. Chem. Soc., 121,8122(1999)を参照のこと)、又は、標準的なバイオコンジュゲート化プロトコルを使用することによって、N−ヒドロキシスクシンイミル(NHS)エステル基を含有する分子に架橋することができる(例えば、Pinaud,F., D.King, H.-P.Moore, S.Weiss, J. Am. Chem. Soc.,126,6115(2004); Bruchez,M., M.Moronne, P.Gin, S.Weiss, A.P.Alivisatos, Science, 281, 2013(1998)を参照のこと)。代替法が、QDをストレプトアビジンとのコンジュゲート化により多官能化することである。ストレプトアビジンは、ビオチン化されたタンパク質、オリゴ又は抗体とのコンジュゲートを形成する(例えば、Dahan,M.ら、Science, 302, 442(2003); Pinaud,F., D.King, H.-P.Moore, S.Weiss, J. Am. Chem. Soc.,126,6115(2004);Dahan,M.ら、Science, 302, 442(2003); Wu.X.Y.ら、Nature Biotechnol., 21,41(2003); Jaiswal,J.K., H.Mattoussi, J.M.Mauro, S.M.Simon, Nature Biotechnol., 21,47(2003);及び、Mansson,A.ら、Biochem. Biophys. Res. Commun., 314,529(2004)を参照のこと)。
【0004】
ナノ粒子が、プラスミドDNAを様々な動物細胞に送達するために使用されている。DNA被覆されたナノ粒子が、細胞壁を有しない細胞とインキュベーションされるとき、細胞はDNA被覆ナノ粒子を取り込み、DNAにコードされる何らかの遺伝子を発現し始めることが見出されている。細胞壁を通常の場合には有する細胞へのナノ粒子送達が所望される場合、細胞壁が、粒子がプロトプラストに加えられる前に除かれる(Torney, F.ら、Nature Nanotechnol.2,(2007)を参照のこと)。植物細胞では、細胞壁は、外部から加えられた分子の送達に対するバリアとして作用する。遺伝子銃(バイオリスティック法)、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション及びアグロバクテリウムのような多くの浸襲的方法が、細胞壁で囲まれたこれらの植物細胞の中への遺伝子及び小分子の送達を達成するために用いられている。小分子及びタンパク質を、細胞壁を横断して植物細胞の中に送達することが、無傷な植物の細胞、組織及び器官のインビトロ操作及びインビボ操作のための技術を可能することの開発のために有利であると考えられる。
【0005】
細菌細胞、酵母細胞、動物細胞及びコケでは十分に確立されているが、遺伝子付加、すなわち、所定のゲノム位置への外来DNAの導入は、高等植物では依然として重要な課題である。導入DNAが、宿主DNAに対して相同的な配列の大きい区域を含有するときでさえ、部位特異的な導入遺伝子組み込みが、ランダムな組み込みと比較して、植物細胞では非常に低い頻度で生じる(Halfterら、1992; Leeら、1990; Mia及びLam(1995))。例えば、非常に効率的なアグロバクテリウムに基づくトランスフェクションシステム及び除草剤選択では、最大で5×10−4の遺伝子標的化頻度がイネでもたらされた。植物における遺伝子標的化効率を高めるための試みにはこれまで、負の選択マーカーの使用、及び、より大きい標的化頻度を示すために遺伝子操作される植物の使用が含まれている。これらの努力にもかかわらず、非相同的プロセスによるランダムなDNA組み込みが、植物における遺伝子標的化に対する大きな障害であり続けている。農業バイオテクノロジー及び工業バイオテクノロジーのための作物の改変における標的化された遺伝子付加のために想定される一般的有用性を考えると、この問題に対する解決策が非常に求められている。
【0006】
これに関連して、幅広い様々な植物モデルシステム及び動物モデルシステムでの遺伝子標的化の頻度における実質的な増大が、宿主細胞における特定のゲノム位置でのDNA二本鎖切断(DSB)(これは、生来的な細胞プロセス、すなわち、相同性指向のDSB修復を刺激する)の誘導の後で観測されている。その認識部位が植物ゲノムにおいて希である天然に存在する部位特異的エンドヌクレアーゼが、ランダムな組み込みにより植物ゲノムの中に以前に移入された標的配列の中への導入遺伝子の組み込みを行わせるためにこの様式で使用されている。これらの研究では、植物細胞における遺伝子標的化を刺激するための標的化されたDSB導入の可能性が強調されているが、DSBを生来的な遺伝子座に導入するという課題が依然として残っている。
【0007】
動物細胞では、標的化されたゲノム調整/操作に対する解決策が、様々なヌクレオチド配列特異的結合タンパク質、例えば、ロイシンジッパー、ジンクフィンガータンパク質などにより達成される。これらのタンパク質は転写因子として遺伝子調節に関わっており、及び/又は、DSBを生来的なゲノム位置に誘導するために使用することができる。DSBが、いくつかの異なるクラスの配列特異的ヌクレアーゼ(例えば、メガヌクレアーゼなど)、ロイシンジッパー、ジンクフィンガータンパク質などによって、また、より近年にはこれらのタンパク質の新規なキメラ体の開発によってもたらされ得る。最も良く記載されるヌクレオチド特異的な結合タンパク質の1つがジンクフィンガータンパク質(ZFP)である。C2H2ジンクフィンガーが両生類の転写因子TFIIIAにおいて発見され、その後、後生動物のすべての種における最も一般的なDNA認識モチーフであることが見出されている。C2H2型ZFPのZif268のX線結晶構造により、それぞれのジンクフィンガーがタンデム配置の状況において3bp又は4bpのサブ部位を規定する、タンパク質−DNA認識の著しく分節的な様式が明らかにされ、また、このペプチドモチーフを、これまでにない特異性を有するDNA結合ドメインのための足場として使用するという可能性が示唆された。それ以降、新規な配列と結合するために操作される非常に多数のZFPが、人工転写因子及び他の機能的なキメラタンパク質に関連して、多くの異なる研究室で首尾良く使用されている。C2H2ジンクフィンガータンパク質ドメインが、配列特異的なDNA結合のための足場として使用されており(Pavelitch及びPabo,1991)、また、様々なZFNが、ジンクフィンガータンパク質ドメインをIIS型制限エンドヌクレアーゼFokIに由来する配列非依存的なヌクレアーゼドメインと融合することによって産生されている(Kimら、1996)。操作されたZFNが、内因性のゲノム遺伝子座への高効率の標的化を形質転換されたヒト細胞(Moehleら、2007)及び初代ヒト細胞(Lombardoら、2007)において行わせるために使用されている。
【0008】
ZFNを植物において使用することを目指した初期の試みは今も有望である(Lloydら、2005;Wrightら、2005;Maederら、2008)。ZFN遺伝子をその対応する認識配列と一緒に誘導性プロモーターの制御下に保持する構築物がアラビドプシス(Arabidopsis)に安定的に組み込まれ、この構築物は、認識部位で接合する非相同的末端から生じる標的化された変異を、誘導された子孫実生の中で平均して7.9%の頻度で導入することが示された(Lloydら、2005)。同様に、SuRA遺伝子座で切断するために設計されるZFNにより形質転換されたプロトプラストから再生される66個のタバコ植物の中で、3つが、非相同的末端接合修復から生じる標的部位での一塩基対の欠失を示した(Maederら、2008)。ジンクフィンガー認識配列に直に隣接する600bpを失っている事前に組み込まれた非機能的なレポーター遺伝子を含有するタバコ細胞が、対応するZFN遺伝子と、失っている600bpを含む事前に組み込まれた配列に対して相同的なドナーDNAとを含有する構築物により共形質転換されたとき、レポーター遺伝子の相同性指向修復の証拠を示した(Wrightら、2005)。ごく近年には、酵母に基づくアッセイが、植物のエンドキチナーゼ遺伝子を切断することができるZFNを同定するために使用された(Caiら、2009)。そのようなZFNと、エンドキチナーゼ遺伝子座に対する相同性を有する短い区域が隣接するpat除草剤耐性遺伝子カセットを含むドナーDNA構築物との両方を有するTiプラスミドのアグロバクテリウム送達は、正確にZFN切断部位の中への最大で10%の標的化された相同性指向の導入遺伝子の組み込みをもたらした。C3H1設計に基づく他のジンクフィンガー設計が植物において実証されていることに留意することは重要である(Shuklaら、2009;Caiら、2009)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Patolsky,F.ら、J. Am. Chem. Soc.,125,13918(2003)
【非特許文献2】Dubertret B.ら、Science,298,1759(2002)
【非特許文献3】Akerman,M.E.,W.C.W.Chan,P.Laakkonen,S.N.Bhatia,E.Ruoslahti,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,99,12617(2002)
【非特許文献4】Mitchell,G.P.,C.A.Mirkin,R.L.Letsinger,J. Am. Chem. Soc.,121,8122(1999)
【非特許文献5】Pinaud,F.,D.King,H.-P.Moore,S.Weiss,J. Am. Chem. Soc.,126,6115(2004)
【非特許文献6】Bruchez,M.,M.Moronne,P.Gin,S.Weiss,A.P.Alivisatos,Science,281,2013(1998)
【非特許文献7】Dahan,M.ら、Science,302,442(2003)
【非特許文献8】Wu,X.Y.ら、Nature Biotechnol.,21,41(2003)
【非特許文献9】Jaiswal,J.K.,H.Mattoussi,J.M.Mauro,S.M.Simon,Nature Biotechnol.,21,47(2003)
【非特許文献10】Mansson,A.ら、Biochem. Biophys. Res. Commun.,314,529(2004)
【非特許文献11】Torney,F.ら、Nature Nanotechnol.,2,(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ナノ粒子を使用して、配列特異的ヌクレアーゼを、細胞壁を有する植物細胞の中に非浸襲的に送達する方法に関する。
【0011】
下記の実施形態が、範囲において限定的ではなく、典型的及び例示的であることが意図されるシステム、ツール及び方法と併せて記載される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、配列特異的ヌクレアーゼを植物細胞に導入する方法であって、細胞壁を有する植物細胞を提供すること、ナノ粒子を少なくとも配列特異的ヌクレアーゼにより被覆すること、細胞壁を有する植物細胞と、配列特異的ヌクレアーゼ被覆されたナノ粒子とを互いに接触状態に置くこと、及び、細胞壁を含む植物細胞の中への配列特異的ヌクレアーゼ被覆されたナノ粒子の取り込みを可能にすることを含む方法が提供される。
【0013】
上記で記載される典型的な態様及び実施形態に加えて、さらなる態様及び実施形態が、下記の記載を考慮して明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ヒスチジンタグ化ZFN−IL1 Fok1の大腸菌発現(1)を示す。
【図2】ヒスチジン非タグ化ZFN−IL1 Fok1の大腸菌発現(2)を示す。
【図3】IL−1ジンクフィンガー−Fok1融合タンパク質によって刺激される染色体間の相同的組換えを示す。Aは標的ベクターを表し、Bは、再構成されたGFP遺伝子を有する組換え体を表す。
【図4】プラスミドpDAB1585の概略図を示す。
【図5】細胞をインキュベーションした2時間後におけるGNP媒介のYFP内在化を示すBY2−E単一細胞株を示す;パネルA(FITC)、パネルB(ローダミン)、パネルC(DIC)、パネルD(A+B)、パネルE(A+B+C)、パネルF(反転された反射率像):蛍光顕微鏡観察により観察されるようなYFP内在化。
【図6】メガヌクレアーゼI−SceIタンパク質によって刺激される染色体間の相同的組換えを示す;Aは標的ベクターを表し、Bは、再構成されたGFP遺伝子を有する組み換体を表す。
【図7】プラスミドpDAB100375の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
下記の記載及び表において、多数の用語が使用される。そのような用語に与えられるべき範囲を含めて、明細書及び請求項の明瞭かつ一貫した理解を提供するために、下記の定義が提供される:
【0016】
戻し交配。戻し交配は、育種家が雑種子孫をその親の1つに対して繰り返し交配するプロセス(例えば、第1世代雑種FをF雑種の親の遺伝子型の1つと交配するプロセス)であり得る。
【0017】
胚。胚は、成熟した種子の内部に含有される小さい植物体であり得る。
【0018】
ナノ粒子。通常的には100nm未満である少なくとも1つのナノスケールの大きさを有する微細粒子。本発明における使用のために好適なナノ粒子は1nm〜0.4umのサイズを有することができる。量子ドットは1nm〜10nmのメジアン直径を有することができ、好ましくは2nm〜4nmのメジアン直径を有することができる。本出願において使用されるようなナノ粒子には、金ナノ粒子、タングステンナノ粒子、金被覆ナノ粒子、多孔性ナノ粒子、メソポーラス(mesoporous)ナノ粒子、シリカナノ粒子、ポリマーナノ粒子、ゼラチンナノ粒子、ナノシェル、ナノコア(nanocore)、ナノスフェア(nanosphere)、ナノロッド(nanorod)、磁性ナノ粒子、半導体ナノ粒子、量子ドット、ナノマトリックス、デンドリマーナノマトリックス及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
量子ドット。量子ドットは、伝導帯電子、価電子帯正孔又は励起子(伝導帯電子と、価電子帯正孔との束縛された対)の運動を3つすべての空間方向で制限する半導体ナノ粒子である。この制限は、静電ポテンシャル(これは、外部電極、ドーピング、ひずみ、不純物によって生じる)、異なる半導体物質の間における境界面の存在(例えば、コア−シェルのナノ結晶系において)、半導体表面の存在(例えば、半導体ナノ結晶)又はこれらの組み合わせに起因し得る。量子ドットは不連続な量子化されたエネルギースペクトルを有することができる。対応する波動関数が量子ドットの内部に空間的に局在化するが、結晶格子の多くの周期を越えて広がる。量子ドットは、(1〜100の程度の)小さい有限な数の伝導帯電子、価電子帯正孔又は励起子(すなわち、有限な数の素電荷)を含有する。
【0020】
ナノマトリックスには、デンドリマーが含まれるが、これに限定されない。デンドリマーは、その内部空隙空間に包まれるか、又は、表面に結合する分子を保持するために操作される回転楕円体状又は球状のナノ粒子である。分子は、繰り返し枝分かれした分子である;枝分かれは、表面と、積み荷(bulk)物質との間での多価相互作用を可能にする。デンドリマーの一例が球形のカチオン性ポリアミドアミン(PAMAM)カスケードポリマーである。これらのポリマーは、表面における第一級アミンと、内部における第三級アミンとからなる。このタイプのデンドリマーは、加溶媒分解性溶媒における熱処理によって一部が分解し、それにより、より小さい立体的制約及びより大きい柔軟性をもたらす。デンドリマーの大きい正電荷はDNAとの静電相互作用を容易にし、また、その柔軟な構造は、デンドリマーが、DNAに結合したときには密に詰まることを可能にし、また、DNAから遊離したときには膨らむことを可能にする。トランスフェクション効率又は形質転換効率が、デンドリマーの正電荷及び柔軟な構造特性の結果として増大する。様々なデンドリマーをQiagen(Qiagen、Germantown、MD)から得ることができ、そのようなデンドリマーがSuperfect(商標)トランスフェクション試薬(カタログ番号301305)として上市される。
【0021】
多官能化(された)。別途指定されない限り、用語「多官能化(された)」は、モノ官能化ナノ粒子又は多官能化ナノ粒子のいずれかを記載するために使用される。モノ官能化ナノ粒子は、ただ1つだけのタイプの官能基が化学的に結合している官能化されたナノ粒子、又は、ただ1つだけのタイプの官能基が化学的に結合しているナノ粒子の凝集物をいうものとする。多官能化粒子は、少なくとも2つの異なるタイプの官能基、おそらくは3つ以上の異なるタイプの官能基が化学的に結合しているナノ粒子またはナノ粒子の凝集物をいうものとする。
【0022】
除草剤に抵抗性(である)。ある投与量の除草剤に対する抵抗性とは、成長を阻害し、および/またはその結果非抵抗性の植物が生存することを阻害すると考えられる有効成分のその投与量で生存する(すなわち、植物が死滅され得ない)植物の能力のことをいう。場合により、耐性植物は一時的に黄色になるか、又は、そうでない場合には、多少の除草剤誘導傷害(例えば、過度な分げつ及び/又は成長阻害)を示すことがあり得るが、回復する。
【0023】
安定化された。安定化されたとは、同じ品種の同系交配植物の1つの世代からその次の世代に再現可能に伝えられる植物の特徴をいう。
【0024】
取り込み。取り込みは、粒子又はマトリックス(例えば、ナノ粒子など、例えば、金、デンドリマー又は量子ドット)が細胞壁又は細胞膜を横断して転位置することを示し、この場合、転位置は、粒子が取り込まれつつある細胞とは別の何かによって粒子に与えられる運動量の結果としてのみ生じるわけではない。粒子に与えられる運動量の結果としてのみ細胞壁又は細胞膜を横断する粒子の転位置を生じさせるデバイス又は方法の限定されない例として、バイオリスティック技術、遺伝子銃技術、マイクロインジェクション技術及び/又はインパルフェクション(impalefection)技術が挙げられる。
【0025】
核酸。用語「核酸」、用語「ポリヌクレオチド」及び用語「オリゴヌクレオチド」は互換的に使用され、線状又は環状の立体配座であり、また、一本鎖形態又は二本鎖形態のいずれかであるデオキシリボヌクレオチドポリマー、リボヌクレオチドポリマー、或いは、他のヌクレオチドポリマー又はヌクレオシドポリマーを示す。本開示の目的のために、これらの用語は、ポリマーの長さに関して限定であるとして解釈してはならない。これらの用語は、天然ヌクレオチドの公知アナログ、同様にまた、塩基成分、糖成分及び/又はリン酸成分において修飾されるヌクレオチド(例えば、ホスホロチオアート骨格)を包含し得る。一般に、個々のヌクレオチドのアナログは、同じ塩基対形成特異性を有する;すなわち、AのアナログはTと塩基対形成する。
【0026】
染色体。染色体は、細胞のゲノムの全体又は一部を構成するクロマチン複合体である。細胞のゲノムは多くの場合、細胞のゲノムを構成するすべての染色体の集まりであるその核型によって特徴づけられる。細胞のゲノムは1つ又はそれ以上の染色体を含み得る。「エピソーム」は、細胞の染色体核型の一部でない核酸を含む複製する核酸、核タンパク質複合体又は他の構造体である。エピソームの例には、プラスミド及びある種のウイルスゲノムが含まれる。「アクセス可能領域」は、核酸に存在する標的部位が、その標的部位を認識する外因性分子によって拘束され得る細胞クロマチンにおける部位である。何らかの特定の理論によってとらわれることを望まないが、アクセス可能領域は、ヌクレオソーム構造に詰め込まれない領域であると考えられる。アクセス可能領域の明確な構造が多くの場合、化学的プローブ及び酵素プローブ(例えば、ヌクレアーゼ)に対するその感受性によって検出され得る。「標的部位」又は「標的配列」は、結合のための十分な条件が存在するならば、結合性分子が結合する、核酸の一部分を規定する核酸配列である。例えば、5”−GAATTC−3’の配列は、EcoRI制限エンドヌクレアーゼに対する標的部位である。
【0027】
遺伝子。遺伝子は、本開示の目的のために、遺伝子産物をコードするDNA領域、並びに、当該調節配列がコード配列及び/又は転写配列に隣接するか否かによらず、遺伝子産物の産生を調節するすべてのDNA領域を含む。従って、遺伝子は、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列(例えば、リボゾーム結合部位及び内部リボゾーム進入部位など)、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位及び遺伝子座制御領域を含むが、必ずしもこれらに限定されない。
【0028】
発現。発現又は遺伝子発現という用語は互換的(interchangeably)に使用され、遺伝子に含有される情報の遺伝子産物への変換を示す。遺伝子産物は、遺伝子の直接の転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA又は任意の他のタイプのRNA)、又は、mRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であり得る。遺伝子産物にはまた、例えば、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化及び編集などのプロセスによって修飾されるRNA、並びに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリスチル化及びグリコシル化によって修飾されるタンパク質が含まれる。遺伝子発現の「調整」は、遺伝子の活性における変化を示す。発現の調整には、遺伝子活性化及び遺伝子抑制が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0029】
タンパク質。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを示すために互換的に使用される。この用語はまた、1つ又はそれ以上のアミノ酸が、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的アナログ又は修飾された誘導体であるアミノ酸ポリマーにも当てはまる。
【0030】
配列。用語「配列」は任意の長さのヌクレオチド配列を示し、これはDNA又はRNAであってもよく、また、線状、環状又は枝分かれであってもよく、また、一本鎖又は二本鎖のどちらであってもよい。用語「ドナー配列」は、ゲノムに挿入されるヌクレオチド配列を示す。ドナー配列は任意の長さであり得る:例えば、長さにおいて2個〜25,000個の間のヌクレオチド(又は、その間の任意の整数値若しくはそれを超える任意の整数値)、好ましくは、長さにおいて約100個〜5,000個の間のヌクレオチド(又はその間の任意の整数)、より好ましくは、長さにおいて約200個〜2,500個の間のヌクレオチド。
【0031】
相同的配列。相同的配列は、第2の配列とのある程度の配列同一性を共に有する第1の配列で、その配列が第2の配列の配列と同一であってもよい第1の配列を示す。「相同的な非同一配列」は、第2の配列とのある程度の配列同一性を共に有する第1の配列であるが、その配列が第2の配列の配列と同一でない第1の配列を示す。例えば、変異型遺伝子の野生型配列を含むポリヌクレオチドは変異型遺伝子の配列と相同的かつ非同一である。ある特定の実施形態において、2つの配列の間における相同性の程度は、正常な細胞機構を利用して、それらの間における相同的組換えを可能にするために十分である。2つの相同的な非同一配列は任意の長さであってもよく、それらの非相同性の程度は、(例えば、ゲノムの点変異を標的化された相同的組換えによって正すために)ただ1個だけのヌクレオチドと同じくらい小さくてもよく、又は、(例えば、遺伝子を染色体における所定の部位において挿入するために)10キロベース以上もの大きさであってもよい。相同的な非同一配列を含む2つのポリヌクレオチドは、同じ長さである必要はない。例えば、20個〜10,000個のヌクレオチド又はヌクレオチド対の外因性ポリヌクレオチド(すなわち、ドナーポリヌクレオチド)を使用することができる。
【0032】
組換え。組換えは、2つのポリヌクレオチドの間における遺伝子情報の交換のプロセスを示す。本開示の目的のために、「相同的組換え(HR)」は、例えば、細胞における二本鎖切断の修復の期間中に起こるそのような交換の特殊化された形態を示す。このプロセスでは、ヌクレオチド配列相同性が必要とされ、また、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を受けた分子)の鋳型修復に対する「ドナー」分子が使用され、そのため、このプロセスは、ドナーから標的への遺伝子情報の移動を引き起こすので、「非交差(non-crossover)遺伝子変換」又は「ショートトラクト(short tract)遺伝子変換」として様々に知られている。何らかの特定の理論によってとらわれることを望まないが、そのような移動は、切断された標的と、ドナーとの間で生じるヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ訂正、及び/又は、ドナーが、標的の一部になる遺伝子情報を再合成するために使用される「合成依存的な鎖アニーリング」(SDSA)、及び/又は、関連したプロセスを伴い得る。そのような特殊化されたHRは多くの場合、標的分子の配列の変化を、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部又はすべてが標的ポリヌクレオチドに組み込まれるように生じさせる。
【0033】
切断。「cleavage」(切断)、「inducing a double strand break」(二本鎖切断を誘導する)及び「cut」(切断)は互換的に使用され、DNA分子の共有結合骨格が破断されることを示す。切断を、ホスホジエステル結合の酵素的加水分解又は化学的加水分解(これらに限定されない)を含めて、様々な方法によって開始させることができる。一本鎖切断及び二本鎖切断の両方が可能であり、二本鎖切断が2つの別個の一本鎖切断事象の結果として生じ得る。DNAの切断は平滑末端又は付着末端のいずれかの産生をもたらし得る。ある特定の実施形態において、融合ポリペプチドが、標的化された二本鎖DNA切断のために使用される。「切断ドメイン」は、DNA切断のための触媒活性を有する1つ又はそれ以上のポリペプチド配列を含む。切断ドメインは一本のポリペプチド鎖に含有されてもよく、又は、切断活性が2本(又はそれ以上)のポリペプチドの会合から生じてもよい。「切断ハーフドメイン」は、第2のポリペプチド(同一であるか、又は、異なるかのいずれか)との共同で、切断活性(好ましくは二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。二本鎖破断(double strand break)及び二本鎖切断(double stranded cleavage)は互換的に使用される。
【0034】
クロマチン。クロマチンは、細胞のゲノムを構成する核タンパク質構造体である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNAと、タンパク質(ヒストン及びヒストン以外の染色体タンパク質を含む)とを含む。真核生物の細胞クロマチンの大部分がヌクレオソームの形態で存在し、この場合、ヌクレオソームのコアが、ヒストンH2A、H2B、H3及びH4をそれぞれ2つずつを含む8量体と会合するおよそ150塩基対のDNAを含み、リンカーDNA(生物に依存して、様々な長さである)がヌクレオソームのコアの間に広がる。ヒストンHZの分子が一般に、リンカーDNAと会合する。本開示の目的のために、用語「クロマチン」は、すべてのタイプの細胞核タンパク質、すなわち、原核生物及び真核生物の両方の細胞核タンパク質を包含することが意図される。細胞クロマチンには、染色体クロマチン及びエピソームクロマチンの両方が含まれる。
【0035】
結合。結合は、高分子間(例えば、タンパク質と、核酸との間)における配列特異的な非共有結合性相互作用を示す。全体としての相互作用が配列特異的である限り、結合相互作用の必ずしもすべての成分が配列特異的である(例えば、DNA骨格におけるリン酸残基と接触する)必要はない。そのような相互作用は一般に、10−6−1以下の解離定数(K)によって特徴づけられる。「親和性」は結合の強さを示す:増大した結合親和性が、より低いKと相関する。
【0036】
作動可能な連結。用語「作動可能な連結」及び用語「作動可能に連結される」(又は用語「作動可能に連結される」)は、2つ以上の成分(例えば、配列エレメントなど)の並置(juxtaposition)に関して互換的に使用され、この場合、2つ以上の成分の並置において、これらの成分は、両方の成分が正常に機能し、かつ、成分の少なくとも1つが、他方の成分の少なくとも1つに及ぼされる機能を媒介し得るという可能性を許容するように配置される。例示として、転写調節配列がコード配列の転写のレベルを1つ又はそれ以上の転写調節因子の存在又は非存在に応答して制御するならば、転写調節配列(例えば、プロモーターなど)がコード配列に作動可能に連結される。転写調節配列は、一般にはコード配列に関して作動可能に連結されるが、コード配列に直接に隣接する必要はない。例えば、エンハンサー及びコード配列がたとえ連続していないとしても、エンハンサーは、コード配列に作動可能に連結される転写調節配列である。融合ポリペプチドに関して、用語「作動可能に連結される」は、成分のそれぞれが、成分のそれぞれがそのように連結されなかったならば発揮するであろう同じ機能を他の成分への連結において発揮するという事実を示し得る。例えば、ZFP DNA結合ドメインが切断ドメインに融合される融合ポリペプチドに関しては、融合ポリペプチドにおいて、ZFP DNA結合ドメインタンパク質がその標的部位及び/又はその結合部位と結合することができ、一方で、切断ドメインが標的部位の近傍でDNAを切断することができるならば、ZFP DNA結合ドメイン及び切断ドメインは作動可能な連結の状態にある。
【0037】
配列特異的ヌクレアーゼ(SSN)−これには、特異的かつ特有のヌクレオチド配列(生来的な認識部位又はカスタマイズされた認識部位)を認識することができる二機能性タンパク質のいくつかのクラス、例えば、メガヌクレアーゼ、ロイシンジッパー及びジンクフィンガータンパク質などが含まれるが、これらに限定されない。メガヌクレアーゼは、二本鎖DNAを二価金属イオン(Ca、Mn、Mg)の存在下で高特異性で切断することができる一群の酵素を表す。しかしながら、メガヌクレアーゼはその認識特性及び構造において制限エンドヌクレアーゼと異なる(Belfort,M.,Roberts RJ,Homing endonucleases: keeping the house in order,Nucleic Acid Research,1997,25:3379〜3388)。具体的には、制限酵素は短い核酸配列(3bp〜8bp)を認識するのに対して、メガヌクレアーゼはより長い配列(12bp〜40bp)を認識し、このことにより、DSBの標的化に対する改善された特異性がもたらされる(Mueller,JE,Bryk,M.,Loizos,N.,Belfort M.,Homing endonuleases,Nucleases(第2版),Linn,SM,Lloyd,RS,Roberts,RJ(編),Cold Spring Harbor Laboratory Press:1993,111〜143)。ロイシンジッパーは、遺伝子発現に関連する重要な転写因子である多くの真核生物調節タンパク質においてタンパク質−タンパク質相互作用に関与する一群のタンパク質である。ロイシンジッパーは、動物、植物、酵母などを含むいくつかの生物界にわたってこれらの転写因子において共に有される共通する構造モチーフを示す。ロイシンジッパーが、ロイシン残基がα−ヘリックスを介して等間隔に配置され、その結果、2つのポリペプチドのロイシン残基がヘリックスの同じ面にあるようにされる様式で、特定のDNA配列に結合する2つのポリペプチド(ホモダイマー又はヘテロダイマー)によって形成される。
【0038】
ジンクフィンガーDNA結合タンパク質。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質、すなわち、ZFP(又は結合ドメイン)は、その構造が亜鉛イオンの配位により安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である1つ又はそれ以上のジンクフィンガーを介して配列特異的な様式でDNAと結合するタンパク質、或いは、より大きいタンパク質の内部におけるそのようなドメインである。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質という用語は多くの場合、ジンクフィンガータンパク質又はZFPと略記される。ジンクフィンガー結合ドメインは、所定のヌクレオチド配列に結合するように「操作」することができる。ジンクフィンガータンパク質を操作するための方法の限定されない例が、設計及び選択である。設計されたジンクフィンガータンパク質は、その設計/組成が主に合理的基準から生じる、自然界に存在しないタンパク質である。設計のための合理的基準には、置換則の適用、並びに、既存のZFP設計及び結合データの情報を保存するデータベースにおいて情報を処理するためのコンピューター処理アルゴリズムの適用が含まれる。例えば、米国特許第6,140,081号、同第6,453,242号、同第6,534,261号及び同第6,785,613号を参照のこと。同様に、国際公開第98153058号、同第98153059号、同第98153060号、同第021016536号及び同第031016496号、並びに、米国特許第6,746,838号、同第6,866,997号及び同第7,030,215号もまた参照のこと。
【0039】
ゲノム配列。ゲノム配列には、染色体に存在するゲノム配列、エピソーム、オルガネラゲノム(例えば、ミトコンドリア、葉緑体)、人工染色体、及び、細胞に存在する任意の他のタイプの核酸(例えば、増幅配列の二重微小染色体(amplified sequences double minute chromosomes)、並びに、内因性又は感染している細菌及びウイルスのゲノムなど)が含まれる。ゲノム配列は正常型(すなわち、野生型)又は変異型であり得る;変異型配列は、例えば、挿入、欠失、転座、再編成及び/又は点変異を含み得る。ゲノム配列はまた、多数の異なる対立遺伝子の1つを含み得る。
【0040】
植物細胞。植物細胞には、単子葉類植物(単子葉植物)若しくは双子葉類植物(双子葉植物)又は藻類又はコケの細胞が含まれるが、これらに限定されない。単子葉植物の限定されない例には、穀物植物、例えば、トウモロコシ、イネ、オオムギ、エンバク、コムギ、モロコシ、ライムギ、サトウキビ(sugarmaye)、パイナップル、タマネギ、バナナ及びココヤシが含まれる。双子葉植物の限定されない例には、タバコ、トマト、ヒマワリ、ワタ、サトウダイコン、ジャガイモ、レタス、メロン、ダイズ、カノーラ(mayola)(ナタネ)及びアルファルファが含まれる。植物細胞は、植物の任意の部分に、及び/又は、植物発達の任意の段階に由来することができる。
【0041】
目的とする領域。目的とする領域は、外因性分子と結合することが望ましい核酸ポリマーの任意の領域(例えば、遺伝子、或いは、遺伝子内の非コード配列、又は、遺伝子に隣接する非コード配列など)である。結合は、標的化されたDNA切断及び/又は標的化された組換えのためのものであり得る。目的とする領域が、例えば、染色体、エピソーム、オルガネラゲノム(例えば、ミトコンドリア、葉緑体)、プラスミド、感染ウイルスゲノム又は任意の他のヌクレオチド配列などに存在し得る。目的とする領域が、遺伝子のコード領域の内部、転写された非コード領域(例えば、リーダー配列、トレーラー配列又はイントロンなど)の内部、或いは、コード領域の上流側又は下流側のいずれかでの非転写領域の内部に存在し得る。目的とする領域は、長さがただ1つだけのヌクレオチド対と同じくらい小さくてもよく、又は、最大で25,000ヌクレオチド対にまで至ってもよく、すなわち、任意の整数値のヌクレオチド対であり得る。
【0042】
本発明の実施形態によれば、配列特異的ヌクレアーゼを、細胞壁を含む植物細胞に導入する方法であって、配列特異的ヌクレアーゼ被覆されたナノ粒子を植物細胞との接触状態に置くこと、及び、植物細胞壁を横断する取り込みを可能にすることを含む方法が提供され得る。本発明の具体的な態様において、ナノ粒子はどのようなナノ粒子であってもよく、ナノ粒子はジンクフィンガーヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼを可逆的又は不可逆的に含有することができるか、ジンクフィンガーヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼにより被覆することができるか、又は他の場合には、ジンクフィンガーヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼに結合することができ、並びに/或いは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼを保持することができる。ある特定の実施形態において、ジンクフィンガーヌクレアーゼを、細胞壁を有する植物細胞との接触の前にナノ粒子に導入することができ、又は、細胞壁を有する植物細胞へのナノ粒子の導入と同時にナノ粒子に導入することができる。本発明の実施形態において使用することができるナノ粒子の例には、金、量子ドット、金被覆ナノ粒子、多孔性ナノ粒子、メソポーラスナノ粒子、シリカナノ粒子、ポリマーナノ粒子、タングステンナノ粒子、ゼラチンナノ粒子、ナノシェル、ナノコア、ナノスフェア、ナノロッド、磁性ナノ粒子、半導体ナノ粒子、量子ドット、ナノマトリックス、デンドリマー及び/又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明の実施形態によれば、細胞壁を有する植物細胞は、無傷かつ完全な細胞壁を含む植物細胞であれば、どのような植物細胞であってもよい。本発明の実施形態は、胚、分裂組織細胞、カルス、花粉、葉、葯、根、根端、花、種子、さや、茎、懸濁培養物及び組織培養物を含むがこれらに限定されない、任意の組織またはそれらが見出される任意の場所由来の、細胞壁を含む細胞を含み得る。
【0044】
本発明の特定の実施形態において、SSNは、植物細胞に本発明に従って送達することができるZFNであれば、どのようなZFNであってもよい。例えば、ZFNは、切断ドメイン(又は切断ハーフドメイン)及びジンクフィンガー結合ドメインを含む融合タンパク質、これらのタンパク質をコードするポリヌクレオチド、並びに、ポリペプチドと、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの組み合わせを含み得る。ジンクフィンガー結合ドメインは1つ又はそれ以上のジンクフィンガー(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又はそれ以上のジンクフィンガー)を含むことができ、また、目的とする任意の領域に結合するように操作することができる。従って、切断又は組換えが所望される目的とする標的領域を同定することによって、本明細書中に開示される方法に従って、目的とする前記領域における標的配列を認識するように操作される切断ドメイン(又は切断ハーフドメイン)及びジンクフィンガードメインを含む1つ又はそれ以上の融合タンパク質を構築することができる。細胞におけるそのような融合タンパク質(又はタンパク質)の存在は、その結合部位への融合タンパク質の結合、及び、目的とする前記領域の内部又はその近くでの切断を生じさせる。その上、目的とする領域に対して相同的な外因性ポリヌクレオチドもまたそのような細胞に存在するならば、相同的組換えが、二本鎖切断ヌクレオチド配列と、外因性ポリヌクレオチドとの間において大きい割合で生じる。
【0045】
特定の実施形態において、少なくとも1つのSSNを細胞に提供することは、1コピー又はそれ以上のSSNタンパク質をナノ粒子によって細胞に直接に提供することを含み得る。他の実施形態において、少なくとも1つのSSNを細胞に提供することは、細胞に、SSNをコードする核酸を含むナノ粒子を提供すること、及び、細胞が、SSNをコードする核酸からSSNを産生することを可能にすることを含み得る。
【0046】
他の実施形態において、細胞に提供される1つ又はそれ以上のSSNは、目的とする1つ又はそれ以上の領域において、またはその近くで、個々にまたは他のSSNとの連携で切断を行うことができる。特定の実施形態において、目的とする1つ又はそれ以上の領域を、高発現のタンパク質、より高発現のタンパク質、非常に高発現のタンパク質、又は、最も高発現のタンパク質のコード配列の内部に存在させることができる。いくつかの実施形態において、目的とする1つ又はそれ以上の領域を、高発現のタンパク質、より高発現のタンパク質、非常に高発現のタンパク質、又は、最も高発現のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子座の近く及び/又は内部に存在させることができる。他の実施形態において、ヌクレオチド配列は、目的とするただ1つだけの領域における二本鎖切断であり得る。さらなる実施形態において、ヌクレオチド配列は、目的とする2つ以上の領域における二本鎖切断であり得る。特定の実施形態において、1つ又はそれ以上の二本鎖切断を、高発現のタンパク質、より高発現のタンパク質、非常に高発現のタンパク質、又は、最も高発現のタンパク質のコード配列中に配置することができる。他の実施形態において、1つ又はそれ以上の二本鎖切断を、高発現のタンパク質、より高発現のタンパク質、非常に高発現のタンパク質、又は、最も高発現のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子座の近く及び/又は内部に存在させることができる。
【0047】
少なくとも2つの二本鎖切断が行われる特定の実施形態において、二本鎖切断を修復することは、二本鎖切断の間の物質を取り除き、ヌクレオチド配列の両端を再結合し、その結果、二本鎖切断の間の配列を切り出すことを含み得る。実施形態において、切り出された配列は、限定されることなく高発現のタンパク質、より高発現のタンパク質、非常に高発現のタンパク質、又は、最も高発現のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の全体又は一部をコードする配列を含み得る。さらなる実施形態において、切り出された配列は、限定されることなく高発現のタンパク質、より高発現のタンパク質、非常に高発現のタンパク質、又は、最も高発現のタンパク質の発現を達成する調節配列を含み得る。そのような実施形態において、高発現のタンパク質、より高発現のタンパク質、非常に高発現のタンパク質、又は、最も高発現のタンパク質の発現が、切断前の発現のレベルと比較して低下する。
【0048】
少なくとも2つの二本鎖切断が行われる代替的な実施形態において、二本鎖切断を修復することは、二本鎖切断の間の物質を取り除き、それをドナー配列で置き換え、その結果、二本鎖切断の間の配列をドナー配列で置換することを含み得る。他の実施形態において、除かれた配列は、限定されないが、高発現のタンパク質、より高発現のタンパク質、非常に高発現のタンパク質、又は、最も高発現のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の全体又は一部をコードする配列を含み得る。さらなる実施形態において、除かれた配列は、限定されないが、高発現のタンパク質、より高発現のタンパク質、非常に高発現のタンパク質、又は、最も高発現のタンパク質の発現を達成する調節配列を含み得る。そのような実施形態において、高発現のタンパク質、より高発現のタンパク質、非常に高発現のタンパク質、又は、最も高発現のタンパク質の発現が、切断前の発現のレベルと比較して低下する。
【0049】
1つの二本鎖切断が行われる代替的な実施形態において、二本鎖切断を修復することは、ドナー配列を二本鎖切断の中に、又は二本鎖切断の全体に(across the double strand break)挿入することを含み得る。特定の実施形態において、ドナー配列を、高発現のタンパク質、より高発現のタンパク質、非常に高発現のタンパク質、又は、最も高発現のタンパク質のコード配列の中に挿入することができる。実施形態において、そのような配列の挿入は、限定されない例として、読み枠が一致した(in-frame)停止コドンの存在により、高発現のタンパク質、より高発現のタンパク質、非常に高発現のタンパク質、又は、最も高発現のタンパク質のコード配列の転写を中断させることができる。さらなる実施形態において、ドナーは、限定されないが、高発現のタンパク質、より高発現のタンパク質、非常に高発現のタンパク質、又は、最も高発現のタンパク質の発現を達成する調節配列の機能を妨害することができる。様々な実施形態において、高発現のタンパク質、より高発現のタンパク質、非常に高発現のタンパク質、又は、最も高発現のタンパク質の発現が、切断前の発現のレベルと比較して低下する。
【0050】
さらに他の実施形態において、ドナー配列は、目的とするタンパク質をコードすることができる。さらなる実施形態において、ドナー配列からの目的とするタンパク質の発現を、ドナー配列に存在する調節配列、及び/又は、ドナー配列が挿入された配列に存在する調節配列によって制御することができ、或いは、そのような調節配列によって調節することができ、或いは、そのような調節配列に作動可能に連結することができる。さらなる実施形態において、目的とするタンパク質をコードする核酸配列を、ドナー配列と別個に、又は、ドナー配列と併せて細胞に提供することができる。いくつかの実施形態において、ドナー配列を、目的とするタンパク質をコードする配列と同じ核酸分子に含有することができる。
【0051】
他の実施形態において、高発現のタンパク質、より高発現のタンパク質、非常に高発現のタンパク質、又は、最も高発現のタンパク質をコードする、高発現のタンパク質のヌクレオチド配列、より高発現のタンパク質のヌクレオチド配列、非常に高発現のタンパク質のヌクレオチド配列、又は、最も高発現のタンパク質のヌクレオチド配列をコードするヌクレオチド配列を、限定されない例として、ゲノム、プラスミド、コスミド、人工染色体、エピソーム、又は、細胞における他のヌクレオチド構造体中に配置することができる。
【0052】
上記方法の実施、同様にまた、本明細書中に開示される組成物の調製及び使用では、別途示されない限り、当分野の技能の範囲内であるような、分子生物学、生化学、クロマチン構造及びクロマチン分析、計算機化学、細胞培養、組換えDNA及び関連分野における従来技術が用いられる。これらの技術が文献において十分に説明される。例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989、及び、第3版,2001;Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley&Sons,New York,1987、及び、定期改訂版;METHODS IN ENZYMOLOGYのシリーズ、Academic Press,San Diego;Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,第3版,Academic Press,San Diego,1998;METHODS IN ENZYMOLOGY,第304巻,「Chromatin」(P.M.Wassarman及びA.P.Wolffe編),Academic Press,San Diego,1999;及び、METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,第119巻,「Chromatin Protocols」(P.B.Becker編),Humana Press,Totowa,1999を参照のこと。
【0053】
植物細胞への核酸送達
上記で記されるように、DNA構築物を、様々な従来技術によって、所望される植物宿主(例えば、そのゲノム)に導入することができる。そのような技術の総説については、例えば、Weissbach&Weissbach,Methods for Plant Molecular Biology(1988,Academic Press,N.Y.)、セクションVIII,421頁〜463頁,及び、Grierson&Corey,Plant Molecular Biology(1988,第2版),Blackie,London,第7章〜第9章を参照のこと。
【0054】
例えば、DNA構築物を、様々な技術を使用して、例えば、植物細胞プロトプラストへのエレクトロポレーション及びマイクロインジェクションなどを使用して植物細胞のゲノムDNAに直接に導入することができ、又は、DNA構築物を、バイオリスティック法を使用して、例えば、DNA粒子衝撃などを使用して植物組織に直接に導入することができる(例えば、Kleinら(1987)、Nature、327:70〜73を参照のこと)。あるいは、DNA構築物を好適なT−DNA隣接領域と組み合わせ、従来のアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)宿主ベクターに導入することができる。アグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介によるトランスフェクション技術が、バイナリーベクターの無害化(disarming)及び使用を含めて、科学文献に詳しく記載される。例えば、Horschら(1984),Science,233:496〜498、及び、Fraleyら(1983),Proc. Nat. Acad. Sci. USA,80:4803を参照のこと。
【0055】
加えて、遺伝子移入を、非アグロバクテリウム細菌又はウイルスを使用して達成することができ、例えば、リゾビウム・エスピー(Rhizobium sp.)NGR234、シノリゾボイウム・メリロチ(Sinorhizoboium meliloti)、メソリゾビウム・ロチ(Mesorhizobium loti)、ジャガイモXウイルス、カリフラワーモザイクウイルス及びキャッサバ葉脈モザイクウイルス及び/又はタバコモザイクウイルスなどを使用して達成することができる。例えば、Chungら(2006),Trends Plant Sci.,11(1):1〜4を参照のこと。
【0056】
さらに、ナノ粒子又は配列特異的ヌクレアーゼに融合される細胞浸透ペプチドを、ヌクレオチド配列又はタンパク質配列を植物細胞の中に送達するために使用することができる。細胞浸透ペプチドを発現させ、単離し、植物細胞内における送達のために、ナノ粒子、ヌクレオチド配列又はタンパク質により官能化することができる。様々な分子を植物細胞の中に機能的に送達することができる細胞浸透ペプチドが当分野では公知であり、これらには、TAT(Chughら(2008),FEBS,275:2403〜2414)、R9(Changら(2005),Plant Cell Physiol,46(3):482〜488、及び、Chenら(2007),FEBS Lett,581(9):1891〜1897)、MPG(Zieglerら(2008),Adv Drug Deliver Rev,6:580〜597、及び、Morrisら(1997),Nucleic Acids Res.,25:2730〜2736)、PEP1(Henriquesら(2005),Biochemistry-US,44(3):10189〜10198)及び植物由来の細胞浸透ペプチドが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0057】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス宿主のビルレンス機能は、細胞が、バイナリーT−DNAベクター(Bevan(1984),Nuc. Acid Res.,12:8711〜8721)又は共培養手法(Horschら(1985),Science,227:1229〜1231)を使用してこの細菌によって感染させられるとき、構築物及び隣接マーカーが植物細胞のDNAに挿入されることを導く。一般には、アグロバクテリウムによるトランスフェクションシステムが、双子葉植物を操作するために使用される(Bevanら(1982),Ann. Rev. Genet,16:357〜384;Rogersら(1986),Methods Enzymol.,118:627〜641)。アグロバクテリウムによるトランスフェクションシステムはまた、単子葉の植物及び植物細胞を形質転換するために、同様にまた、DNAを単子葉の植物及び植物細胞に導入するために使用することができる。米国特許第5,591,616号;Hemalsteenら(1984),EMBO J,3:3039〜3041;Hooykass-Van Slogterenら(1984),Nature,311:763〜764;Grimsleyら(1987),Nature,325:1677〜179;Boultonら(1989),Plant Mol. Biol.,12:31〜40;及び、Gouldら(1991),Plant Physiol.,95:426〜434を参照のこと。
【0058】
代替的な遺伝子移入方法及びトランスフェクション方法には、ネイクドDNAのカルシウム媒介取り込み、ポリエチレングリコール(PEG)媒介取り込み又はエレクトロポレーション媒介取り込みによるプロトプラストのトランスフェクション(Paszkowskiら(1984),EMBO J,3:2717〜2722;Potrykusら(1985),Molec. Gen. Genet.,199:169〜177;Fromら(1985),Proc. Nat. Acad. Sci. USA,82:5824〜5828;及び、Shimamoto(1989),Nature,338:274〜276を参照のこと)、及び、植物組織のエレクトロポレーション(D’Halluinら(1992),Plant Cell,4:1495〜1505)が含まれるが、これらに限定されない。植物細胞のトランスフェクションのためのさらなる方法には、マイクロインジェクション、炭化ケイ素媒介DNA取り込み(Kaepplerら(1990),Plant Cell Reporter,9:415〜418)、及び、微粒子銃(microprojectile bombardment)(Kleinら(1988),Proc. Nat. Acad. Sci. USA,85:4305〜4309;及び、Gordon-Kimら(1990),Plant Cell,2:603〜618を参照のこと)が含まれる。
【0059】
開示された方法及び組成物は、外因性配列を植物細胞ゲノムにおける所定の位置に挿入するために使用することができる。植物ゲノム内へ導入された導入遺伝子の発現はその組み込み部位に非常に依存するので、これは有用である。従って、例えば、栄養素、抗生物質又は治療用分子をコードする遺伝子を、標的化された組換えによって、その発現にとって有利な植物ゲノムの領域に挿入することができる。
【0060】
上記トランスフェクション技術のいずれかによって作製されるトランスフェクションされた植物細胞は培養して、トランスフェクションされた遺伝子型を有し、従って、所望される表現型を有する完全な植物体を再生させることができる。そのような再生技術は、組織培養成長培地におけるいくつかの植物ホルモンの操作に依拠しており、典型的には、所望されるヌクレオチド配列と一緒に導入されている殺生物剤マーカー及び/又は除草剤マーカーに依拠する。培養されたプロトプラストからの植物再生が、Evansら、「Protoplasts Isolation and Culture」、Handbook of Plant Cell Culture(124頁〜176頁,Macmillian Publishing Company,New York,1983)、及び、Binding,Regeneration of Plants,Plant Protoplasts(21頁〜73頁,CRC Press,Boca Raton,1985)に記載される。再生はまた、植物のカルス、外植片、器官、花粉、胚又はその一部から得ることができる。そのような再生技術が、大まかにはKleeら(1987),Ann. Rev. of Plant Phys.,38:467〜486に記載される。
【0061】
植物細胞に導入される核酸は、所望される形質を本質的にはどのような植物にでも与えるために使用することができる。広範囲の様々な植物及び植物細胞システムを、本開示の核酸構築物及び上述の様々なトランスフェクション方法を使用して、本明細書中に記載される所望される生理学的特徴及び作物栽培学的特徴のために操作することができる。好ましい実施形態において、操作のための標的となる植物及び植物細胞には、そのような単子葉植物及び双子葉植物、例えば、穀物作物(例えば、コムギ、トウモロコシ、イネ、アワ、オオムギ)、果実作物(例えば、トマト、リンゴ、ナシ、イチゴ、オレンジ)、飼料作物(例えば、アルファルファ)、根菜作物(例えば、ニンジン、ジャガイモ、サトウダイコン、ヤムイモ)、葉菜作物(例えば、レタス、ホウレンソウ、キャベツ)を含む作物;顕花植物(例えば、ペチュニア、バラ、キク)、針葉樹及びマツ(例えば、マツ、モミ、トウヒ);ファイトレメディエーションで使用される植物(例えば、重金属蓄積植物);油料作物(例えば、ヒマワリ、ナタネ、タイズ、ヤシ)、及び、実験目的のために使用される植物(例えば、アラビドプシス)などが含まれるが、これらに限定されない。従って、開示された方法及び組成物は、アスパラガス属(Asparagus)、カラスムギ属(Avena)、アブラナ属(Brassica)、ミカン属(Citrus)、スイカ属(Citrullus)、トウガラシ属(Capsicum)、カボチャ属(Cucurbita)、ニンジン属(Daucus)、ダイズ属(Glycine)、ワタ属(Gossypium)、オオムギ属(Hordeum)、アキノノゲシ属(Lactuca)、トマト属(Lycopersicon)、リンゴ属(Malus)、キャッサバ属(Manihot)、タバコ属(Nicotiana)、イネ属(Oryza)、ワニナシ属(Persea)、エンドウ属(Pisum)、ナシ属(Pyrus)、サクラ属(Prunus)、ダイコン属(Raphanus)、ライムギ属(Secale)、ナス属(Solanum)、モロコシ属(Sorghum)、コムギ属(Triticum)、ブドウ属(Vitis)、ササゲ属(Vigna)及びトウモロコシ属(Zea)に由来する種(これらに限定されない)を含めて、広範囲の様々な植物にわたって使用される。
【0062】
当業者は、発現カセットがトランスジェニック植物に安定的に組み込まれ、作動可能であることが確認された後、その発現カセットが有性交配によって他の植物に導入され得ることを認識する。いくつかの標準的育種技術のどれもが、交配される種に依存して使用することができる。
【0063】
トランスフェクションのためのDNAに存在するマーカー遺伝子によってコードされる形質について操作された植物材料を選択又はスクリーニングすることによって、トランスフェクションされた植物細胞、カルス、組織又は植物を同定し、単離することができる。例えば、トランスフェクションのための遺伝子構築物が抵抗性を与える抗生物質又は除草剤の阻害量を含有する培地で操作された植物材料を成長させることよって、選択を行うことができる。さらに、トランスフェクションされた植物及び植物細胞はまた、組換え核酸構築物に存在し得る何らかの可視マーカー遺伝子(例えば、β−グルクロニダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、B遺伝子又はC1遺伝子)の活性についてスクリーニングすることによって同定することができる。そのような選択方法論及びスクリーニング方法論は当業者には周知である。
【0064】
物理的方法及び生化学的方法もまた、挿入された遺伝子構築物を含有する植物トランスフェクタント又は植物細胞トランスフェクタントを同定するために使用することができる。これらの方法には、1)組換えDNAのインサートを検出し、その構造を決定するためのサザン分析又はPCR増幅、2)遺伝子構築物のRNA転写物を検出し、調べるためのノーザンブロット、プライマー伸長PCR増幅又は逆転写酵素PCR増幅、3)酵素活性又はリボザイム活性を検出するための酵素アッセイ(そのような遺伝子産物が遺伝子構築物によってコードされる場合において)、4)タンパク質のゲル電気泳動、ウエスタンブロット技術、免疫沈降又は酵素結合免疫アッセイ(遺伝子構築物の産物がタンパク質である場合において)、5)一塩基多型検出技術、インベーダーアッセイ、ピロシーケンシング(pyrosequencing)、ソレクサ(solexa)シーケンシングが含まれるが、これらに限定されない。さらなる技術、例えば、インサイチュ(in situ)ハイブリダイゼーション、酵素染色及び免疫染色などもまた、特定の植物器官又は植物組織における組換え構築物の存在又は発現を検出するために使用することができる。すべてのこれらのアッセイを行うための方法が当業者には周知である。
【0065】
本明細書中に開示される方法を使用する遺伝子操作の影響を、例えば、目的とする組織から単離されるRNA(例えば、mRNA)のノーザンブロットによって観察することができる。典型的には、mRNAの量が増加しているならば、その対応する内因性遺伝子が以前よりも大きい割合で発現されていることが推定され得る。遺伝子活性を測定する他の方法を使用することができる。種々のタイプの酵素アッセイを、使用される基質、及び、反応の生成物又は副生成物の増減を検出する方法に依存して使用することができる。加えて、発現したタンパク質のレベルを、免疫化学的に、すなわち、当業者には周知であるELISA、RIA、EIA、及び、抗体に基づく他のアッセイによって、例えば、電気泳動的検出アッセイ(染色又はウェスタンブロッティングのいずれかを伴う)などによって測定することができる。導入遺伝子を、植物のいくつかの組織において、又は、いくつかの発達段階において選択的に発現させることができ、或いは、導入遺伝子を実質的にはその生活環全体に沿って、実質的にすべての植物組織において発現させることができる。しかしながら、どのようなコンビナトリアル発現様式もまた適用可能である。
【0066】
本開示はまた、上記で記載されるトランスジェニック植物の種子を包含し、この場合、種子が導入遺伝子又は遺伝子構築物を有する。本開示はさらに、上記で記載されるトランスジェニック植物の子孫、クローン、細胞株又は細胞を包含し、この場合、前記子孫、クローン、細胞株又は細胞が導入遺伝子又は遺伝子構築物を有する。
【0067】
適用
標的化された切断のための開示された方法及び組成物は、ゲノム配列における変異を誘導するために使用することができる。標的化された切断はまた、遺伝子ノックアウト体又は遺伝子ノックダウン体を作出するために(例えば、機能的ゲノミクス又は標的検証)、また、ゲノム内への配列の標的化された挿入(すなわち、配列ノックイン)を容易にするために使用することができる。挿入は、限定されない例として、相同的組換えを介した、又は、新しい配列(すなわち、目的とする領域に存在しない配列)が所定の標的部位に挿入される標的化された組み込みによる、染色体配列の置換によるものであり得る。特定の例において、そのような新しい配列の側面には、染色体における目的とする領域に対して相同的な配列を配置することができる。同じ方法を使用して、野生型配列を変異型配列で置き換えることもでき、また、1つの対立遺伝子を異なる対立遺伝子に変えることもできる。
【0068】
感染性植物病原体又は組み込まれた植物病原体の標的化された切断を、例えば、病原体のゲノムを、その病原性が低下又は排除されるように切断することによって、植物宿主における病原性感染を処置するために使用することができる。加えて、植物ウイルスに対する受容体をコードする遺伝子の標的化された切断を、そのような受容体の発現を阻止し、それにより、その植物におけるウイルス感染及び/又はウイルスの拡大を防止するために使用することができる。
【0069】
代表的な植物病原体には、様々な植物ウイルス、例えば、アルファルノウイルス(Alfarnovirus)、アルファクリプトウイルス(Alphacryptovirus)、バドナウイルス、ベータクリプトウイルス(Betaciyptovirus)、ビジェミニウイルス(Bigeminivirus)、ブロモウイルス、ビモウイルス(Bymovirus)、カピロウイルス、カルラウイルス、カルノウイルス(Carrnovirus)、カリモウイルス、クロステロウイルス、コモウイルス、ククモウイルス(Cucurnovirus)、サイトラブドウイルス、ダイアンソウイルス、エナモウイルス、ファバウイルス、フィジウイルス、フロウイルス(Furovirus)、ホルデイウイルス(Hordeivirus)、ヒブリジェミニウイルス(Hybrigeminivirues)、イダエオウイルス、イラウィルス(Ilawirus)、イポモウイルス(Ipomovirus)、ルテオウイルス、マクロモウイルス、マクルラウイルス(Macluravirus)、マラフィウイルス、モノジェミニウイルス(Monogeminivirues)、ナナウイルス(Nanaviruses)、ネクロウイルス、ネポウイルス、ヌクレオラブドウイルス、オリザウイルス、ウルミアウイルス(Ourmiavirus)、フィトレオウイルス(Phytoreovirus)、ポテクスウイルス(Potexvirus)、ポティウイルス、リモウイルス(Rymovirus)、サテライトWAS、サテリウイルス(satellivirus)、セキウイルス、ソベモウイルス(Sobemovirus)、テヌイウイルス、トバモウイルス、トブラウイルス、トルンブスウイルス(Tornbusvirus)、トスポウイル ス、トリコウイルス、ティモウイルス、ウンブラウイルス(Umbravirus)、バリコサウイルス(Varicosavirus)及びワイカウイルスなど;真菌病原体、例えば、黒穂病菌(例えば、クロボキン目(Ustilaginales))、さび病菌(サビキン目(Uredinales))、麦角菌(Clavicepts pupurea)及びウドンコ病菌など;カビ(卵菌綱(Oomycetes))、例えば、フィトフトラ・インフェスタム(Phytophthora infestam)(ジャガイモ凋萎病)など;細菌病原体、例えば、エルウィニア(Erwinia)属(例えば、E. herbicola)、シュードモナス(Pseudomonas)属(例えば、P. aeruginosa、P. syringae、P. fluorescense、及び、P. putida)、ラルストニア(Ralstonia)属(例えば、R. solanacearum)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属及びキサントモナス(Xanthomonas)属など;回虫(線形動物門(Nematoda));並びに、ネコブカビ類(Phytomyxea)(ポリミクサ(Polymyxa)及びプラスモジオホラ(Plasmodiophora))が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
目的とするタンパク質の標的化された組換え産生のための開示された方法は、任意のゲノム配列を非同一の配列で置き換えるために使用することができる。例えば、変異型ゲノム配列をその野生型対応体によって置き換えことができ、それにより、植物の病気を処置するための方法を提供すること、植物病原体に対する抵抗性を与えること、及び、作物の収量を増加させることなどができる。同様な様式で、遺伝子の1つの対立遺伝子を、本明細書中に開示される標的化された組換えの方法を使用して異なる対立遺伝子によって置き換えることができる。
【0071】
これらの場合の多くにおいて、目的とする領域が変異を含み、ドナーポリヌクレオチドがその対応する野生型配列を含む。同様に、野生型のゲノム配列を、そのようなことが望ましいならば、変異型の配列によって置き換えることができる。例えば、ガン遺伝子の過剰発現を、遺伝子を変異させることによるか、又は、その制御配列をより低い非病理学的レベルの発現を支持する配列で置き換えることによるかのいずれかによって取り消すこと(reversed)ができる。実際、どのような様式であれ、特定のゲノム配列に依存する病変はどれも、本明細書中に開示される方法及び組成物を使用して治すことができ、又は軽減することができる。
【0072】
標的化された切断、挿入、切り出し及び/又は組換えはまた、非コード配列(例えば、調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、イニシエーター、ターミネーター、スプライス部位など)を変化させて、遺伝子産物の発現のレベルを変化させるために使用することができる。そのような方法は、例えば、治療目的、機能的ゲノミクス及び/又は標的検証研究のために使用することができる。
【0073】
クロマチン構造の標的化された改変を、融合タンパク質が細胞クロマチンに結合することを容易にするために使用することができる。さらなる実施形態において、ジンクフィンガー結合ドメインと、リコンビナーゼ(又はその機能的フラグメント)との間における1つ又はそれ以上の融合物を、標的化された組換えを容易にするために、本明細書中に開示されるジンクフィンガー−切断ドメイン融合物に加えて、又は、その代わりに使用することができる。例えば、共有される米国特許第6,534,261号、及び、Akopianら(2003),Proc. Natl. Acad. Sci. USA,100:8688〜8691を参照のこと。さらなる実施形態において、開示された方法及び組成物は、ZFP結合ドメインの融合物に、ダイマー化(ホモダイマー化又はヘテロダイマー化のいずれか)をその活性のために要求する転写活性化ドメイン又は転写抑制ドメインを与えるために使用される。これらの場合において、融合ポリペプチドはジンクフィンガー結合ドメイン及び機能的ドメインモノマー(例えば、ダイマー状の転写活性化ドメイン又は転写抑制ドメインから得られるモノマー)を含む。2つのそのような融合ポリペプチドが、適切に置かれた標的部位に結合することにより、ダイマー化が可能になり、その結果、機能的な転写活性化ドメイン又は転写抑制ドメインが再構成されるようになる。
【0074】
さらに、上記で開示されるように、本明細書中に示される方法及び組成物は、細胞のゲノムにおける目的とする領域への外因性配列の標的化された組み込みのために使用することができ、この場合、例えば、切断により、相同性依存的機構による挿入(例えば、所定のゲノム配列(すなわち、標的部位)と同一であるか、又は、相同的ではあるが、非同一であるかのいずれかである1つ又はそれ以上の配列と一緒に外因性配列を含むドナー配列の挿入)が強化される。
【0075】
ドナー配列は、ゲノム配列における二本鎖切断の相同性指向修復を支持し、それにより、外因性配列をゲノム標的部位で挿入するために、外因性配列に隣接する領域において、十分な相同性を含有することができる。従って、ドナー核酸は、相同性依存的修復機構(例えば、相同的組換え)による外因性配列の組み込みを支持するために十分な任意のサイズであり得る。何らかの特定の理論によってとらわれることを望まないが、外因性配列の両側に位置する相同性の領域は、切断された染色体末端に、二本鎖切断の部位における遺伝子情報の再合成のためのテンプレートを提供することが考えられる。特定の実施形態では、同一配列の2つ、又は、相同的ではあるが同一でない配列の2つ(或いは、それぞれの1つずつ)が外因性配列に隣接して存在する。外因性配列(或いは外因性核酸又は外因性ポリヌクレオチド)は、目的とする領域において通常の場合には存在しないヌクレオチド配列を含有するものである。
【0076】
代表的な外因性配列には、cDNA、プロモーター配列、エンハンサー配列、エピトープタグ、マーカー遺伝子、切断酵素認識部位及び様々なタイプの発現構築物が含まれるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第6,833,252号を参照のこと。さらなる代表的なホーミング(homing)エンドヌクレアーゼには、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、ICreI、I−TevI、I−TevII及びI−TaiIIIが含まれる。それらの認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号;Belfortら(1997),Nucleic Acids Res.,25:3379〜3388;Dujonら(1989),Gene,82:115〜118;Perlerら(1994),Nucleic Acids Res.,22,1125〜1127;Jasin(1996),Trends Genet.,12:224〜228;Gimbleら(1996),J. Mol. Biol.,263:163〜180;Argastら(1998),J. Mol. Biol.,280:345〜353、及び、New EnglandBiolabsのカタログもまた参照のこと。
【0077】
マーカー遺伝子には、抗生物質抵抗性(例えば、アンピシリン抵抗性、ネオマイシン抵抗性、G418抵抗性、ピューロマイシン抵抗性)を媒介するタンパク質をコードする配列、有色タンパク質又は蛍光タンパク質又は発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、強化型緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、並びに、強化された細胞増殖及び/又は遺伝子増幅を媒介するタンパク質(例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ)をコードする配列が含まれるが、これらに限定されない。従って、代表的なマーカー遺伝子には、β−グルクロニダーゼ(GUS)、ホスフィノトリシンN−アセチルトランスフェラーゼ(PAT、BAR)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、p−ラクタマーゼ、カテコールジオキシゲナーゼ、a−アミラーゼ、チロシナーゼ、P−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、エクオリン、EPSPシンターゼ、ニトリラーゼ、アセト乳酸シンターゼ(ALS)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ダラポンデハロゲナーゼ及びアントラニル酸シンターゼが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、標的化された組み込みが、RNA発現構築物、例えば、マイクロRNA又はsiRNAの調節された発現に関わる配列を挿入するために使用される。上記で記載されるように、プロモーター、エンハンサー及びさらなる転写調節配列もまた、RNA発現構築物に取り込むことができる。
【0078】
従来の形質転換では、外来DNAのランダム組み込みが、いくつかの国外市場では厳しい制限を受ける、選び抜かれた形質を有する改変されたトランスジェニック作物植物を作製するために使用される。加えて、望ましくない結果もまた、DNA導入の方法から、又は、ゲノムの傷つきやすい領域への導入遺伝子のランダム挿入(多くの場合には、ゲノムあたり多数回)から生じる。特に、不正確な挿入の影響が初期の世代では現れないことがある。これは、種々のDNAエラー阻止機構が、成長、繁殖、胚形成及び発達の期間中に作動させられるからである。これらの結果は、農業バイオテクノロジーにおけるどのようなトランスジェニックプログラムであれ、その時間及び費用に影響を及ぼす。しかしながら、最近のDow AgroSciencesの発明(国際公開第/2008/021207号)において、導入遺伝子の正確な挿入のための方法が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)媒介の相同的組換えにより記載される。逆に言えば、ZFNタンパク質を発現させ、標的生物の体外で精製し、その後、標的植物細胞に送達することができる場合、外科的に特異的な変異/遺伝子ノックアウトが非相同的末端接合(NHEJ)により誘導され得る。従って、本発明は、トランスジェニック作物に関する制限を回避するであろう非トランスジェニック遺伝子改変植物を作製することができ、また、標的化された遺伝子編集のプロセスが、トランスジェニック的アプローチを要求することなく可能である。
【0079】
配列特異的ヌクレアーゼタンパク質(例えば、ZFNタンパク質など)の異種発現のための様々な方法が当分野では公知である。適用可能な発現システムには、インビトロシステムの使用、例えば、コムギ胚芽無細胞システム(例えば、米国特許第7,235,382号、これは参照によって本明細書中に組み込まれる)など;シュードモナス・フルオレセンス発現システム(Madduriら(2007),Protein Expres Purif,55(2):352〜360);及び、ピキア(Pichia)タンパク質発現システム(米国特許第4,683,293号、同第4,808,537号、同第4,812,405号、同第4,818,700号、同第4,837,148号、同第4,855,231号、同第4,857,467号、同第4,879,231号、同第4,882,279号、同第4,885,242号、同第4,895,800号、同第4,929,555号、同第5,002,876号、同第5,004,688号、同第5,032,516号、同第5,122,465号、同第5,135,868号、同第5,166,329号を参照のこと。これらは参照によって本明細書中に組み込まれる)などの使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
本発明の特定の実施形態は、二本鎖切断、及び、NHEJによる破壊遺伝子の機能性の回復を誘導するために、ナノ粒子(NP)にコンジュゲートされ、NP媒介の巧妙なステルス的(stealthy)送達方法により無傷の植物細胞に送達される外因的に発現させた機能的ZFNを含む。他の実施形態において、NPにコンジュゲートされる機能的ZFNが、NP媒介の巧妙なステルス的送達方法によりDNAのドナーフラグメントとともに送達される。その場合、ZFNがゲノム内の特定の配列を切断し、ドナーDNAが相同的組換えによりこの遺伝子座の中に組み込まれる。タンパク質をNPに連結するための方策では、4つの主要なアプローチが取られている:(1)静電的吸着、(2)NP表面におけるリガンドへのコンジュゲート化、(3)タンパク質が認識及び結合することができる小さいコファクター分子へのコンジュゲート化、及び、(4)NP表面への直接的なコンジュゲート化(Aubin-Tam及びHamad-Schifferli,2008)。他の方策がMedintzらの総説に記載される。これらの標識化方策に関与する問題には、立体性(sterics)、又は、タンパク質がリガンドを「越えて」、NP表面又は適切な連結基に達し得るか否かが含まれる。特異的な連結をもたらし(すなわち、過度な架橋を生じさせず)、かつ、所望される目的のために安定である化学的性質の選定もまた、必要な検討事項である。ZFNペプチドは、高いDDT濃度のもと、及び、亜鉛イオンの存在下で官能化される必要がある。コンジュゲートの安定性を保つために、官能化が、Ohら(2010)に記載されるコンジュゲート化手順に従って行われる。
【0081】
本発明が、下記の例示的な実施例によりさらに記載される。
【実施例】
【0082】
実施例1:インビトロ翻訳又は細菌発現による配列特異的ヌクレアーゼ(SSN)の産生
【0083】
SSN(IL1−LO/Fok1、IL1−43/Fok1、IL1−8/Fok1及びI−SceI)を操作し、SSNを含有するプラスミドからPCR増幅し、これにより、制限酵素部位及び6×ヒスチジンタグを付け加える。PCR生成物をクローニング及び配列決定のためにTOPOベクターpCR2.1に挿入する。SSNコード配列を含有する遺伝子フラグメントを制限消化によりプラスミドから取り出し、発現ベクターpET15bの適合し得る制限部位に連結する。これらのサンプルをpDAB4883と一緒にBL21発現コンピテント大腸菌細胞に形質転換する。効果的な発現のために、SSNタンパク質の損傷を、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)によって同様に誘導されるプロモーターの下流側にリガーゼ遺伝子を含有するpCOT4発現プラスミドからなるプラスミドpDAB4883によりBL21を形質転換することによってBL21大腸菌DNAにおいて低下させる。このことは、過剰発現期間中にBL21細胞のゲノムにSSNによってもたらされる何らかの損傷を修復することを助ける。
【0084】
リガーゼ遺伝子−pCOT4構築物及びSSN−pET15b構築物を同じBL21発現細胞に共形質転換する。トランスジェニックBL21の培養物を、クロラムフェニコール、カルベニシリン及びZnClを含む50mLのLB培地で成長させ、OD600nmが0.5に達するまで37℃でインキュベーションする。発現を様々な濃度のIPTG(0.1mM〜0.7mM)により誘導し、インキュベーションを様々な温度(16℃〜28℃)で行い、分析を、SSNタンパク質の存在を検出するためにSDS−PAGE及びウエスタンブロットにより行う。このように、IL1−LO/Fok1、IL1−43/Fok1、IL1−8/Fok1及びI−SceIを大腸菌細胞で発現させ、Ni−NTA精製する。精製後、SSNの機能が、特定のフラグメントを発現プラスミドから放出する能力に基づいて実証される。
【0085】
あるいは、配列特異的ヌクレアーゼをインビトロ翻訳により発現させる。Promegaから得られる市販キットのTNT(登録商標)は、タンパク質を発現させるための効率的かつ便利なプロセスを提供する。T7 RNAポリメラーゼプロモーター又はSP6 RNAポリメラーゼプロモーターのいずれかの下流側にクローン化される配列特異的ヌクレアーゼ遺伝子を含有する環状プラスミドを、キットとともに供給されるタンパク質発現酵素によってインビトロで発現させる。合成されたタンパク質が、製造者のプロトコルに従って60分〜90分のうちに50μLの反応液において産生される。さらなる市販キットをタンパク質のインビトロ翻訳のために利用することができ、使用することができるさらなるキットには、他の商業的に入手可能なキットに加えて、Ambionから得られるActivePro(商標)、Ambionから得られるPROTEINscript(商標)II、New England Biolabsから得られるPURExpress(商標)が含まれる。
【0086】
図1及び図2は、ヒスチジンタグ化SSN(ZFN−IL1Fok1)の大腸菌発現(1)及びヒスチジン非タグ化SSN(ZFN−IL1Fok1)の大腸菌発現(2)を示す。インビトロ発現されたZFN−IL1Fok1は、十分に規定されたZFN結合部位側面フラグメントをプラスミドから放出する。従って、大腸菌発現SSN及びインビトロ発現SSNはともに、標的DNA分子の効率的かつ特異的な消化のために有用であり、それらが本研究を通じて交互に使用される。
【0087】
クローン化されたSSN遺伝子から発現されるタンパク質は、機能的であること(すなわち、ドナーDNAを切断することにおいて機能的であること)が示される。例えば、(図4に示される)プラスミドpDAB1585がZFN−IL1Fok1により処理される。消化されたプラスミドDNAは線状化される。その後、ZFN−IL1Fok1消化されたプラスミドに由来する線状化フラグメントをゲルから精製し、一晩のインビトロ連結手法を使用して自己連結する。連結生成物を化学的コンピテントなDH5α大腸菌細胞に移す。数個の組換えコロニーが回収され、制限パターン分析及びDNA配列決定の両方によって分析され、これにより、pDAB1585が予想通りに消化することが明らかにされる。
【0088】
実施例2−GFPレポーター遺伝子フラグメントが側面に位置する(flanked)SSN結合部位を有する標的細胞培養物の作製
【0089】
標的配列が、β−グルクロニダーゼ(uidA)発現カセットの隣に位置する2つの緑色蛍光タンパク質(gfp)遺伝子フラグメント(Evrogen Joint Stock Company、Moscow、Russia)からなる。1つの標的構築物において、ジンクフィンガー−Fok1融合タンパク質がホモダイマーとして結合することができる逆方向反復からなる認識配列を有するZFN結合部位(図3)が標的構築物に組み込まれる。結合部位はIL1−Fok1融合タンパク質の認識配列の4つのタンデム反復を含有し、その結果、それぞれの結合部位は、認識配列が複雑なクロマチン環境でジンクフィンガー−Fok1融合タンパク質に接近可能であることを保証するために、サイズが約200bpである。第2の構築物において、I−SceI結合部位が標的構築物に組み込まれる(図6)。それぞれの標的構築物において、結合部位がN端でuidAコード配列と融合される。5’側及び3’側のgfp遺伝子フラグメントは540bpが重なる。これらの重複配列は標的配列の内部における相同性を提供し、かつ、停止コドンが、標的配列からの機能的gfpの転写が行われないことを保証するために5’側gfpフラグメントの3’末端に挿入される。
【0090】
標的配列が、アグロバクテリウム形質転換を使用してBY2タバコ細胞懸濁培養物に安定的に組み込まれる。BY2培養物(これは日本たばこ(磐田、静岡、日本)のウエキジュンから得られた)を、6.0のpHで、LS基本培地(PhytoTechnology Labs、Shawnee Mission、KS、#L689)、170mg/LのKHPO、30g/Lのスクロース、0.2mg/Lの2,4−D及び0.6mg/Lのチアミン−HCLを含有する培地で維持する。BY2細胞を、0.25mLのPCVを50mLのLS系培地に加えることによって7日毎に継代培養し、回旋式振とう機で、25℃及び125RPMで250mLのフラスコにおいて維持する。組み込まれた標的配列を有するトランスジェニックBY2細胞培養物を作製するために、継代培養後4日目の懸濁物のフラスコを10個〜12個の4mLのアリコートに分割し、これらのアリコートを、約1.5のOD600にまで一晩成長させたpZFN−TARGET pDAB1585(図4)又はpI−SceI−TARGET pDAB100375(図7)のいずれかを保有するアグロバクテリウムLBA4404株の100μLとともに100×25mmペトリディッシュで共培養する。デッシュをNescofilm(登録商標)(Azwell Inc.、大阪、日本)で包み、振とうすることなく3日間、25℃でインキュベーションし、その後、過剰な液体を除き、500mg/Lのカルベニシリンを含有する11mLのLS培地により取り換える。タバコ細胞の再懸濁の後、1mLの懸濁物を、8g/LのTC寒天(PhytoTechnology、Shawnee Mission、KS)により固化された、500mg/Lのカルベニシリン及び200mg/Lのハイグロマイシンを含有するLS培地の100×25mm平板に分注する。平板を、包むことなく、暗所において28℃でインキュベーションする。これにより、120個〜144個の選択平板が1回の処理についてもたらされる。個々のハイグロマイシン抵抗性単離体が置床後10日〜14日で現れ、これらを個々の60×20mm平板(1つの平板につき1つの単離体)に移す。平板において、単離体が、分析及びその後での再度の形質転換実験のために必要とされるまで14日の継代培養スケジュールでカルスとして選択下で維持される。
【0091】
全長が組み込まれた1コピーの標的配列を含有するハイグロマイシン抵抗性のトランスジェニック細胞培養物を、上記で記載されるように、約250mg〜500mgのカルス組織を、100mg/Lのハイグロマイシンを含有する40mL〜50mLのLS基本培地に入れ、7日毎に継代培養することによって選択し、懸濁培養を再開始するために使用する。
【0092】
細胞クラスター及び単細胞(これらは、DASによる単細胞特許出願(国際公開第/2008/083233号)に記載されるように作製される)の両方が実験で使用される。実験の3日前〜4日前に、1週間経った懸濁培養物を、2mLのBY2懸濁凝集塊を、(特許第/2008/083233号に記載されるように)4−クロロ−1,5−ジフェニル−1H−ピラゾル−3−イルオキシ)酢酸エチルエステルのストック濃度、1%〜3%のグリセロール及び0.05%〜0.1%(v/v)のDMSOを250mLのフラスコに含有する40mLのLSBY2培地に移すことによって新鮮な培地に継代培養する。単細胞を、単細胞を誘導するための処理の3.5日後又は7日後のいずれかで集める。BY2単細胞を、細胞の生存性を求めるためにフローサイトメーターに通して処理し、細胞の安定性を共焦点顕微鏡観察により評価するためにもまた処理する。安定性が、バックグラウンド蛍光が存在するならば、バックグラウンド蛍光のレベルを観察することによって検出される。小さい割合の細胞が、死細胞に対応するバックグラウンド蛍光を示し、このことは、バックグラウンド蛍光が、壊死を受けた細胞からであることを示している。単細胞及び通常の懸濁凝集塊の両方を、バックグラウンド蛍光についての試験の後、実験で使用する。
【0093】
実施例3−ナノ粒子(NP)を植物細胞内へ送達するためのSSNによる被覆
直径150nmのサイズの金コロイド(BBI International、GC150)、5−((2−(及び−3)−S(アセチルメルカプト)スクシノイル)アミノ)フルオレセイン(SAMSAフルオレセイン:Invitrogen、A−685)、サイズが80nm及び90nmであるカルボン酸多官能化金コロイドのナノ粒子(TedPella、32019)、スルホ−NHS(N−ヒドロキシスルホスクシンイミド)、EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)(Pierce Biotechnology、24510、22980)、MES(2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸)(Fisher Scientific、AC32776−1000)、リン酸塩緩衝化生理的食塩水緩衝剤小包(Sigma、P5368−10PAK)、ヒスチジンタグ化GFP(Evrogen、励起最大−482nm、放射最大−502nm、FP611)、ターボYFP(Evrogen、励起最大−525nm、放射最大−538nm、FP611)、プロピジウムヨウ化物(Sigma、P4864)、フルオレセインジアセタート(Sigma、F7378)は、SSNにより被覆され、標的細胞培養物の中への送達のために使用される様々なタイプの多官能化NPである。
【0094】
(i)ナノ粒子コンジュゲートの調製
(a)コントロール処理のための、SSNを伴わない金−フルオレセインコンジュゲートの合成:金−フルオレセインコンジュゲートを、SSNを有しないBY2クラスター又はBY2単細胞において粒子を送達し、追跡するために、以前に記載される方法(Cannoneら、2006)によって調製する。1mgのSAMSAフルオレセインを100μlの0.1M NaOHに溶解し、15分間ボルテックス撹拌して、チオールを保護するアセチル基を除く。次いで、この活性化SAMSAを100μlの150nmの金コロイドと混合する(約109個/mLの粒子)。次いで、この溶液を1時間インキュベーションして、反応の完了を確実にする。次いで、50μLの1M HClを加えて、溶液を中和する。溶液を3000RPMで30分間遠心分離し、上清を除く。得られた黄色ペレットを200μLの0.1M PBSに再懸濁し、これにより、オレンジ色の溶液を得る。この精製工程を2回繰り返して、遊離SAMSAフルオレセインの除去を確実にする。SAMSAが金に結合する様式は、主としてチオール結合によるものである。著しい静電反発のために(SAMSAは、7を超えるpHでジアニオン性である)、SAMSAは、金コロイド表面に垂直に位置すると考えられる(Cannoneら、2006)。そのようなNPは、所与の条件における細胞従順性の目安の尺度として、細胞の中に入るそのような蛍光放射粒子の数の進入を追跡するために使用される。
【0095】
(b)SSNにより被覆される金ナノ粒子(GNP)の合成:GNP−SSNコンジュゲートを、Grabarek及びGergely(1990)によって記載されるわずかに改変されたプロトコルを使用して合成する。20nm〜150nmのカルボン酸多官能化金コロイドの溶液(約109個/mLの粒子)の0.25mLを3000RPMで10分間遠心分離する。上清を捨てた後、赤色ペレットを1mLの活性化緩衝液(0.1M MES、0.5M NaCl、pH6.0)に懸濁する。次いで、0.4mgのEDC及び1.1mgのスルホ−NHSをこの溶液に加え、室温で15分間ボルテックス撹拌する。次いで、9μLのZFN−IL1Fok1を加え、得られた溶液を、タンパク質及び金が完全に反応するために室温において暗所で最大で2時間までインキュベーションする。この反応で使用された金コロイド及びタンパク質の比率が、金コロイドの表面に存在するカルボン酸の数を見出すことによって決定される。最初に、1個の金コロイドの表面に存在するカルボキシル基の数を、1個の金粒子の表面積(球体の仮定)を、1つのカルボキシル基が占める表面(0.20nm(Kimuraら、2002))により除することによって計算する。次いで、この結果に、存在する金コロイドの総数を乗じて、金コロイド溶液全体に存在するカルボキシル基の総数を得る。これは、所与量のタンパク質に存在するアミノ基の数と同等と見なされる。この金コロイドは、金コロイドの表面に存在するカルボン酸と、タンパク質の表面に存在するアミノ基との間におけるアミド結合の形成によりタンパク質に結合する(Grabarek及びGergely、1990)。大雑把には127,285個のタンパク質分子が1個の金ナノ粒子に結び付けられる。
【0096】
(ii)細胞処理:
【0097】
a)金取り込み及び細胞生存性の経時変化:下記のサンプルを24ウエルの滅菌プレートにおいて調製する:(i)500μLの標的懸濁クラスター又は標的単細胞(コントロール)、(ii)500μLのBY2懸濁物クラスター又はBY2単細胞+20μLのGNP+25μLのフルオレセインジアセタート(FDA)+25μLのプロピジウムヨウ化物、及び、(iii)他の処理は、細胞及び細胞生存性染料とともに、40μL、60μL又は80μLのGNPを単独及びZFN−IL1Fok1の組み合わせで含む。処理されたサンプルを、細胞の生存性を確認するために、5分、20分、120分で、そして、最後に24時間〜48時間の後で蛍光顕微鏡で調べる。
【0098】
b)金−SAMSAフルオレセイン処理:下記のサンプルを実験前に24ウエルの滅菌プレートにおいて調製する:(i)500μLの標的懸濁クラスター又は標的単細胞(コントロール)、(ii)500μLの標的懸濁クラスター又は標的単細胞+20μLのSAMSA−フルオレセイン(コントロール)、及び、(iii)標的懸濁クラスター又は標的単細胞+20μLのGNP−SAMSA−フルオレセインを処理し、懸濁物を、粒子の進入を確認するために室温において暗所で20分間インキュベーションする。
【0099】
c)GNP被覆(例えば、タグ化)ZFN−IL1Fok1処理−下記のサンプルを細胞処理又は懸濁クラスター処理の前に24ウエルの滅菌プレートにおいて調製する:(i)500μLの標的懸濁クラスター又は標的単細胞(コントロール)、(ii)500μLの標的懸濁クラスター又は標的単細胞+9μL〜20μLのZFN(コントロール)、及び、iii)500μLの単細胞+10μL〜40μLのGNP被覆(例えば、タグ化)ZFN−IL1Fok1。処理された細胞及びクラスターを実験前に室温において暗所で最大で2時間までインキュベーションする。
【0100】
GFP/YFPが結合するGNPを使用するコントロール処理が、非浸襲的浸透、及び、実験における指針として使用される最適な進入の時期(図5を参照のこと)を保証するためにすべての実験に含められる。加えて、融合細胞浸透ペプチド(CPP)が、標的懸濁クラスター及び標的単細胞の中への粒子のリアルタイム進入を追跡するためにNPに融合される(例えば、多官能化される)。
【0101】
実施例4:量子ドット(QD)タグ化SSNコンジュゲートの合成
ルミネセンス性半導体ナノ結晶のQDは、多くの実証された生物学的応用を有する強力な原型例を提供する(Thermes Vら、2002;Windbichlerら、2007;Fajardo-Sanchezら、2008;Amould Sら、2006)。それらの有用性が、特有の光物理的特徴と、大きいタンパク質のサイズに匹敵するサイズとの組み合わせに由来する。親水性CdSe−ZnS QDの流体力学的半径が、約5nm(分子リガンドと交換されるナノ結晶キャップについて)から、約20nm(ブロックコポリマー内に包まれるナノ結晶について)にまで及ぶ(Smith Jら、2006)。1個のQDが、高まったアビディティーを被覆されたQDバイオコンジュゲートに与えるためにいくつかの生体分子(例えば、抗体、ペプチド、DNAなど)とコンジュゲート化される。
【0102】
親水性QDにコンジュゲート化された(例えば、被覆された)ZFN−IL1Fok1を、それらの細胞内取り込み及び適切な標的DNA部位への細胞内送達を容易にするための代替方策として使用することが本実施例において記載される。この方法は一般には、DASによる特許出願65502に記載されるような、生細胞内へのQD−タンパク質カーゴの内在化のための手順に従う。
【0103】
(i)QD合成:放射最大の中心が510nm及び540nmにあるCdSe−ZnSのコア−シェルQDを、高温の配位性溶媒混合物における有機金属前駆体の段階的反応を記載された手順(Luら、2007;Doyonら、2006;Collinsら、2003;Lanioら、2000)に従って使用して合成する。ナノ結晶を、トリオクチルホスフィン及びトリオクチルホスフィンオキシド(TOP/TOPO)から主に構成される元々のキャップ化用シェルを、以前に記載されたように(Lieら、2002;Mamiら、2005;Desjarlais及びBerg,1993)、二官能性リガンドと交換することによって多官能化し、親水性にする。2組の親水性QDが使用される:(1)ジヒドロリポ酸のみによりキャップ化されるナノ結晶、及び、(2)ポリ(エチレングリコール)付加ジヒドロリポ酸(PEGのMw≒600、DHLA−PEG)及びビオチン末端DHLA−ポリ(エチレングリコール)(PEGのMw≒400、DHLA−PEG−ビオチン)の混合物によりキャップ化される、リガンドのモル比が9:1であるナノ結晶。これらはDHLA−QD及びDHLA−PEG−ビオチン−QDとしてそれぞれ示される。
【0104】
(ii)量子ドットバイオコンジュゲートの自己集合:QD−ZFN−IL1Fok1コンジュゲートを所望される結合価で自己集合させるために、適切なモル比でのHis−ZFNを、10mMのTris−Cl(pH8)緩衝液における0.3μMの、510nmを放射するDHLAキャップ化QDに加え、室温で30分間インキュベーションする。同様に、b−PE−ストレプトアビジンを、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(137mM NaCl、10mMリン酸塩、2.7mM KCl、pH7.4、PBS)における0.3μMの、540nmを放射するQD(これはDHLA−PEG:DHLA−PEG−ビオチンの9:1のモル比でキャップ化される)に加え、4℃で一晩インキュベーションする;この場合のコンジュゲート形成がストレプトアビジン−ビオチンの相互作用によってもたらされる。コンジュゲートを、ゲル電気泳動を使用して特徴づける。ゲル電気泳動では、His付加ZFN又はストレプトアビジン標識b−PEのいずれかとともに集合したQDの電気泳動易動度における変化がモニターされる。サンプルを1×TBE緩衝液(0.09M Tris、0.002M Na2−EDTA、0.09Mホウ酸、pH8.3)に希釈し、QD−b−PEコンジュゲート及びYFPコンジュゲートについて1%又は2%のアガロースゲルでそれぞれ泳動する。特に、ZFN−IL1Fok1分子が追跡のために蛍光タンパク質に融合されるならば、QDバイオコンジュゲートあたりのZFN−IL1Fok1分子の数を変化させることの影響がモニターされる。ゲルの画像を、QD及び/又はタンパク質を励起させ、ゲル内の分離されたバンドの蛍光画像を捕らえることによって集める。コンジュゲート形成が、自己集合したときの、QDと、蛍光タンパク質との間でのエネルギー移動における変化をモニターすることによって確認される。蛍光スペクトルを、325nmの励起を使用して、Tecan Safire Dual Monochromator多機能マイクロタイター・プレート・リーダー(Tecan、Research Triangle Park、NC)で集める。細胞内送達実験及び画像化実験のために、QDを通常のZFN:QDのモル比でZFN−IL1Fok1の混合物とともに自己集合させる。
【0105】
(iii)量子ドット−蛍光タンパク質コンジュゲートの細胞内取り込み:細胞での内在化実験を、以前に記載されたように、無菌条件において行う。QDバイオコンジュゲートを完全培養培地に希釈し、細胞培養物に加え、40μg/mL〜150μg/mLで37℃で1時間インキュベーションする。QDあたり50個のCPPでのCPPと一緒に、1:1〜1:2.5の集合結合価を有する1:5又は1:10のQD/ZFN及びQD/b−PEのいずれかからなる混合表面QD被覆コンジュゲートを、種々のQDFコンジュゲート濃度で細胞培養物とインキュベーションする。過剰な結合していないQDコンジュゲートを、培養物をPBS又は細胞培養培地で少なくとも3回洗浄することによって除く。次いで、細胞を、室温で10分間、3.7%パラホルムアルデヒドにおいて固定処理し、PBSで2回洗浄し、核染色のためにDAPI色素(Invitrogen)を含有するProLong Antifade固定媒体において固定する。落射蛍光像の収集を、Leica顕微鏡を使用して行う。スライド毎の分離した蛍光像を集め、565nmの二色フィルターを備えるDualViewシステムを使用して定量化する。510nm放射QD−YFP/ZFNの細胞画像化のために、サンプルを488nmで励起し、放射を565nmの二色フィルターで集め/分離し、デコンボルーション処理する。QDの蛍光を565nm未満のλで集め、YFPの蛍光テールを、565nmを超えるλで集める。QD領域内へのYFP漏れをデコンボルーション処理の一部として差し引く。540nm放射のQD及びb−PEを488nmで励起し、それらのそれぞれの放射を565nmの二色フィルターで分離し、デコンボルーション処理する。DAPIの蛍光を、Xeランプを使用して励起し、放射を、DAPIキューブ(励起のためのD350/50×、二色400DCLP、検出のためのD460/50m)を使用して集める。AF647−TFを、Xeランプを使用して励起し、蛍光を、Cy5キューブ(励起HQ620/50×、二色Q660LP、放射HQ700/75m)を使用して検出する。励起キューブ/検出キューブの両方が、Chroma Technologyによって提供される。微分干渉コントラスト(DIC)画像を、明るい光源を使用して集める。
【0106】
(iv)ZFN−IL1Fok1被覆QDの確認:His相互作用が、ナノ結晶のZnリッチな無機表面で直接に生じる。小さいスペーサーによって隔てられる2つの(His)6配列を有するN端と、N端の(His)8配列を有するCPPとを有するZFN−IL1Fok1を操作することにより、強固なQD−タンパク質/ペプチド複合体の形成が可能になる。ビオチン−アビジン結合は、その強い相互作用(約10−15MのKD)のために、当分野では公知である、いたるところで使用されるバイオコンジュゲート化方策である。ヒドロキシル末端PEG及びビオチン末端PEGの混合物でキャップ化されるQD表面(DHLA−PEG−ビオチン−QD)を使用することにより、市販されているb−PE−ストレプトアビジンに対する容易なコンジュゲート化(例えば、被覆)が可能になる。
【0107】
(v)QD−ZFN−IL1Fok1コンジュゲートの細胞内送達:YFP/ZFN−IL1Fok1カーゴにより被覆される多官能化(例えば、表面官能化)されたQDの取り込みがナノ結晶表面におけるCPPの存在によって媒介されることを確認するために、標的のBY2細胞株を3つのタイプのコンジュゲートと別々にインキュベーションする:QD−CPPコンジュゲート(QDあたり10個〜100個のCPP)、QD−ZFN−IL1Fok1/CPP、並びに、ZFN−IL1Fok1及びCPPの混合物とともに組み立てられるQD(コンジュゲートあたり約10個のZFN−IL1Fok1及び約50個のCPPを有するQD−ZFN−IL1Fok1/CPP)。細胞を、510nmを放射するQDコンジュゲートの溶液と(約75nMの濃度で)インキュベーションし、何らかの非結合物を除くためにすすぎ洗浄し、続いて、落射蛍光顕微鏡観察を使用して画像化する。細胞はまた、核及びエンドソームの可視化をそれぞれ可能にするためにDAPIにより対比染色される。さらなるCPPがQD表面に存在するとき(混合表面QD−ZFN−IL1Fok1−CPPコンジュゲート)、コンジュゲートの実質的な細胞内取り込みが、両組の細胞について測定される顕著な蛍光強度によって示されるように起こる。さらに、両方の培養物について集められた画像は、ほぼ完全な重なりがQD及びZFN−IL1Fok1/YFPの蛍光パターンの間に存在することを示す。染色パターン及び共局在化パターンの評価は、核周囲の分布、及び、エンドソーム区画内に主に限定されることを示している。CPPの存在下における細胞株によるQDコンジュゲートの効率的な内在化は、CPPが、ZFN−IL1Fok1−蛍光融合タンパク質カーゴにより多官能化(例えば、表面官能化)されるQDの細胞内取り込みを容易にすることを明らかにする。
【0108】
単細胞及び凝集塊クラスターをナノ粒子の節で記載されるNP処理と同様に処理し、選択することなく置き、実験後2週〜4週でGFP発現コロニーについてモニターする。
【0109】
実施例5−GNP及びQDによるタバコ細胞内へのSSN送達の後における相同性指向修復
上記で記載されるように、粒子に結合するZFN−IL1Fok1又はI−SceIで処理される、組み込まれたZFN結合部位又はI−SceI結合部位を有する標的細胞株を、ペトリディッシュにおける培地に置床する。細胞を、処理後、非選択培地に置床する。緑色蛍光の中心が7日後に認められる。観測された蛍光が機能的gfp遺伝子の再構成から生じることを確認するために、蛍光を発する組織セグメントの一団を単離し、数回の選択的継代培養によって手作業により濃縮する。ゲノムDNAをこれらの蛍光発生組織から単離し、いずれかのgfp遺伝子フラグメントに結合するプローブを用いたPCRによって分析する。SSN処理された蛍光発生組織から濃縮されたサンプルは、増幅されたとき、予測された0.6kbのPCR生成物をもたらし、このPCR生成物は、予期された組換えにより、機能的なgfp遺伝子がこれらの組織において再構成されていることを示している。さらなる4.1kbのPCR生成物もまた、濃縮されたサンプルにおいて認められ、このことは、細胞集団における非組み換えレポーター遺伝子の存在を示している。このことは、gfp陽性細胞の濃縮を達成するために使用される蛍光発生組織の肉眼選択の方法を考えた場合、予想されないことではない。
【0110】
数多くの典型的な態様及び実施形態が上記で議論されているが、当業者は、それらのいくつかの改変、並び替え、付加及び部分的組み合わせを認識する。従って、下記の添付された請求項、及び、今後導入される請求項は、それらの真の精神及び範囲に含まれるようなすべてのそのような改変、並び替え、付加及び部分的組み合わせを包含するように解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列特異的ヌクレアーゼ(SSN)を植物細胞に導入する方法であって、
細胞壁を有する前記植物細胞を提供する工程;
ナノ粒子をSSNにより被覆する工程;
細胞壁を有する前記細胞と、前記被覆されたナノ粒子とを互いに接触状態に置く工程;及び
細胞壁を含む前記植物細胞の中への前記ナノ粒子及び前記SSNの取り込みを可能にする工程、を含む方法。
【請求項2】
ナノ粒子をSSNにより被覆する工程が、前記SSNを前記ナノ粒子の表面に非共有結合性吸収により固定化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SSNを前記ナノ粒子の中に吸収する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
細胞壁を含む前記植物細胞の区画の中へ前記ナノ粒子を取り込ませる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ粒子を細胞浸透ペプチド及び/又は細胞内区画標的化タンパク質により被覆する工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記区画が、細胞質ゾル、核、トノプラスト、プラスチド、エチオプラスト、クロモプラスト、白色体、エライオプラスト、プロテイノプラスト、アミロプラスト、葉緑体、及び、二重膜の内腔からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
細胞壁を含む前記植物細胞が、タバコ、ニンジン、トウモロコシ、カノーラ、ナタネ、綿、ヤシ、ピーナッツ、ダイズ、イネ属種(Oryza sp.)、アラビドプシス属種(Arabidopsis sp.)、トウゴマ属種(Ricinus sp.)及びサトウキビの細胞からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記植物細胞が、胚、分裂組織、カルス、花粉、葉、葯、根、根端、花、種子、さや及び茎からなる群より選択される組織に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノ粒子が、金ナノ粒子、金被覆ナノ粒子、多孔性ナノ粒子、メソポーラス(mesoporous)ナノ粒子、シリカナノ粒子、ポリマーナノ粒子、タングステンナノ粒子、ゼラチンナノ粒子、ナノシェル、ナノコア(nanocore)、ナノスフェア(nanosphere)、ナノロッド(nanorod)、磁性ナノ粒子、半導体ナノ粒子、量子ドット、ナノマトリックス、デンドリマーナノマトリックス及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ粒子の表面を誘導体化することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記SSNが、配列非依存的ヌクレアーゼドメインを有するジンクフィンガータンパク質から構成されるジンクフィンガーヌクレアーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記配列非依存的ヌクレアーゼドメインがIIS型制限エンドヌクレアーゼFokIに由来する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ZFNを安定的に組み込んでいる細胞を選択する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記選択された細胞が再生可能な細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
植物を前記再生可能な細胞から再生する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノ粒子が多官能化ナノ粒子である、請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−523234(P2012−523234A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504794(P2012−504794)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/030155
【国際公開番号】WO2010/118077
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】