配向されたコラーゲンゲル
コラーゲン繊維のアセンブリに影響を与えるために、流体力学を利用して流れによって配向させたコラーゲンゲルを作製する技術を提供する。高濃度のコラーゲンモノマー溶液は、繊維形成を誘導すべく基材上に高pH緩衝液下で供給されたときに、せん断及び延伸流を受ける。作製されるゲルは、繊維形成時に、流れによる誘導によって分子コラーゲンが配向される。前記堆積すなわち繊維形成誘導は、前記高濃度のコラーゲンに対して磁界を加えることなく行われる。このような高度に配向された3Dスキャフォールドは、接触案内や哺乳類細胞の成長を誘導することができる。コラーゲン繊維は、D周期性を特徴とするインビボ繊維の構成を模倣し、この構成に対して線維芽細胞のインテグリン受容体が応答する。3次元コラーゲンゲルの生体材料としての工業的用途は、薬物送達からやけどの修復すなわち組織再生システムまでの広範囲に渡る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配向されたコラーゲンゲル及びその使用方法に関する。特に、本発明は、細胞成長、薬物送達または組織再生のための配向されたコラーゲンゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンゲル構造は、薬物送達システムや組織再生システムとして様々な利点を有している。コラーゲンゲル構造は粘弾性を有しており応力を受けたときに流動することができるので、形成外科において注入可能なインプラントとして長年使用されてきた。しかしながら、コラーゲンゲルは気孔径が大きいため(数十ナノメートル)、分子をコラーゲンに結合させることなしでは制御放出が困難であるという欠点があった。また、ランダムに配向されたゲルは、引張荷重に耐えるにはあるいは外科的処置には非常に弱い。加えて、コラーゲンゲルの物理的性質は共有結合や非共有架橋結合(熱、化学薬品またはUV照射)によって変化するおそれがあるため、強度を増すために他の複合材料と組み合わされる。このような技術の影響は複雑であり、コラーゲンの劣化や、細胞成長に対して有害な細胞毒性が生じるおそれがある。
【0003】
約50年間に渡って、細胞培養基材として、配向されていないコラーゲンゲルが作製されてきた。配向されていないコラーゲンゲルは、コラーゲンの中和された溶液を生理的温度まで温めることにより作製することができる。配向されたコラーゲンゲルを作製する1つの方法は、高強度の磁界を利用して、繊維形成中にコラーゲン繊維の配向を誘導することである。この方法は、ゲルの寸法に応じて0.5〜5テスラの強力な磁界を必要とするため、商業生産には実用的でない。配向されたコラーゲンゲルは、マイクロ流体チャネルを利用して作製することもできる。この方法では、幅が10〜400ミクロンのPDMSチャネルにおいて、アルカリ性のコラーゲン溶液をポリマー化する。前記コラーゲン溶液は、固定された堆積装置によって、前記チャネルに5〜10mm/秒の流速で供給される。この例の流量は、前記コラーゲン分子の配向を操作するには十分ではない。本発明は、配向されたコラーゲンゲルを作製するための新しい技術を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、コラーゲン繊維のアセンブリに影響を与えるために、流体力学を利用して流れによって配向させたコラーゲンゲルを作製する技術を提供する。コラーゲンの高濃度モノマー溶液は、繊維形成を誘導すべく基材上に高pH緩衝液下で供給されたときに、せん断及び延伸流を受ける。作製されるゲルは、繊維形成時に、流れによる誘導によって分子コラーゲンが配向される。前記堆積すなわち繊維形成誘導は、前記高濃度のコラーゲンに対して磁場を加えることなく行われる。
【0005】
このような高度に配向された3Dスキャフォールドは、接触案内(contact guidance)や哺乳類の細胞の成長を誘導することができる。コラーゲン繊維は、D周期性を特徴とするインビボ繊維の構成を模倣し、この構成に対して線維芽細胞のインテグリン受容体が応答する。3次元コラーゲンゲルの生体材料としての工業的用途は、薬物送達からやけどの修復すなわち組織再生システムまでの広範囲に渡る。
【0006】
一実施形態では、配向されたコラーゲンゲルの作製方法が提供される。繊維形成を誘導すべく、少なくともpH5または少なくともpH7の緩衝液下及び生理的温度下で、堆積装置によって或る濃度のコラーゲンを基材上に堆積させる。一実施例では、前記堆積ステップの前に、前記基材上にコラーゲンのコーティングを形成する。前記コラーゲンの濃度は、少なくとも3mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも20mg/ml、または少なくとも40mg/mlであり得る。前記コラーゲンの濃度を変更することにより、例えば、コラーゲンゲルの気孔率(porosity)を制御することができる。
【0007】
前記堆積装置は前記堆積中に或る堆積速度(例えば、少なくとも100mm/秒の)を有し、前記或る濃度のコラーゲンは堆積されるときに或る供給速度(例えば、少なくとも0.3mL/分の)を有する。堆積速度(depositing speed)及び供給速度(travelling speed)は、両方ともゼロよりは大きく、かつ、移動方向が互いに逆方向である。このことは、堆積中に前記或る濃度のコラーゲンに対してせん断及び延伸力成分を加えるために重要である。一態様では、前記或る濃度のコラーゲンの堆積は、堆積速度と供給速度との延伸比(draw ratio)によって定義される。前記延伸比は、0より大きい値であるべきであり、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4であり得る。コラーゲン繊維の長さは、約1マイクロメートル以上、約10マイクロメートル以上、または約100マイクロメートル以上であり得、67nmまたは約67nmのD周期性を有する。配向されたコラーゲンゲルを引っ張るかまたは伸張させることにより、コラーゲンゲル繊維の配向をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態による、緩衝液下で浸漬によって配向されたコラーゲンゲルを作製する方法を示す。ステップ1:ガラス基板上への高濃度コラーゲン溶液のロボット堆積。ステップ2:基板を高pH緩衝液へ移動させて、コラーゲン溶液の繊維形成を誘導。
【図2】本発明の一実施形態による、高pH環境下でのロボット堆積の概要を示す。移動方向が互いに反対である流体速度及び注射器先端速度によって、流体が基板上に押し出される。
【図3】本発明の一実施形態による、高濃度コラーゲン溶液をガラス上に堆積させた後に、10倍PBS緩衝液に浸漬させたときの様子を示す。直交偏光板間のサンプルを光学顕微鏡で倍率4倍で見たときの様子が示されている。
【図4】本発明の一実施形態による、乾燥させたコラーゲンゲルのAFM高さモード画像を示す。長い繊維が、流れ堆積方向(矢印)に配向された状態が示されている。ガラス上にロボット堆積させた直後に、暖かい10倍のPBS中に浸漬することによりゲルが形成される。10μm×10μmの画像、150nmの高さスケール。
【図5】本発明の一実施形態による、ヒト成人線維芽細胞を有する直交偏光板間で画像化したコラーゲンゲルの例を示す。線維芽細胞は、コラーゲンの堆積方向に対して平行に配向されており、細胞の偏向は複屈折領域において生じている。ゲルの外側領域は複屈折性を有していないため暗い。暗い領域では、細胞成長は配向されていない。
【図6】本発明の一実施形態による、浸漬技術によって作製した配向コラーゲンゲル上で成長させたヒト成人線維芽細胞を示す。等方性細胞成長が観察されたが、ゲル境界域のゲル上では、線維芽細胞の接触案内が細胞成長を堆積方向(上側から下側)へ偏向させている。ゲル領域内の細胞成長の概略図は、各細胞の方向を直線で示している。
【図7】本発明の一実施形態による、直交偏光板間で観察された配向コラーゲンゲルを示す(A)。(B)及び(C)は、1/4波長板を光学トレイン内に偏光板に対して45°の角度で挿入した場合を示す。偏光板、分析器及び波長板のサンプルに対する向きが示されている。1/4波長板の方向に対して回転させたときに、ゲルの色は変化する。(倍率は2倍)
【図8】本発明の一実施形態による、配向されたコラーゲンゲルの振幅モードでの原子間力顕微鏡写真を示す。矢印は流れ堆積の方向を示す。14μm×14μmの画像、0.6Vスケール。
【図9】本発明の一実施形態による、AFM振幅モード画像を示す。配向されたゲルの縁部からのコラーゲン繊維が示されている。コラーゲン繊維のD周期性を明確に視認できる。繊維の背景はガラス基板である。10μm×10μmの画像、0.9ボルトスケール。
【図10】本発明の一実施形態による、10倍のPBS緩衝液下で高濃度コラーゲン溶液を堆積させることによって作製したコラーゲンゲル上で成長させたヒト成人線維芽細胞の位相コントラスト画像を示す。矢印はコラーゲンの堆積方向を示している。線維芽細胞は堆積方向に偏向されており、細胞延伸はこの軸に沿ってはみ出している。(10倍の倍率)
【図11】本発明の一実施形態による、線維芽細胞のアクチン繊維ネットワークの蛍光画像を示す。ヒト成人線維芽細胞は、37℃で10倍のPBS内で10mg/mlのコラーゲン溶液を用いて作製した配向されたコラーゲンゲル上で成長する。細胞本体は堆積方向に高度に偏向されている。倍率10倍(A)、倍率40倍(B)。
【図12】本発明の一実施形態による、配向されたコラーゲンゲルの全幅の画像を示す。ゲルは28ゲージの注射器針を使用して作製した。線維芽細胞のアクチン繊維が配向されているのを図に見ることができる。(倍率10倍)
【図13】本発明の一実施形態による、スライドガラス上へのロボット堆積の概要を示す。注射器の先端は、ガラスの表面に対して平行となるように湾曲している。流体は、或る速度で、オリフィスから注射器の移動方向とは逆方向に排出される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、コラーゲン繊維アセンブリに対して影響を与えるために流体力学を利用して流れによって配向させたコラーゲンゲルの作製について説明する。高濃度のコラーゲン(モノマー)溶液を基材上に堆積させた後、高pHの緩衝液下で繊維形成を誘導する。堆積中、基材上に供給されたコラーゲン溶液は、せん断及び延伸流を受ける。作製されるゲルは、繊維形成時に、流れによる誘導によって分子コラーゲンが配向される。配向されたコラーゲン繊維を、光学的複屈折測定及びヒト成人線維芽細胞を用いて観察した。配向されたゲル上のヒト成人線維芽細胞の成長及び偏光を調べた。
【0010】
材料
【0011】
ネズミ尾由来のI型コラーゲン(生命化学DB)を、0.2Nの酢酸(pH〜3.5)内の3.6mg/mL及び10mg/mLの貯蔵濃度で購入した。その後、10mg/mLの前記溶液を、約20mg/mLの最終濃度に達するまで、ポリエチレングリコール(Fluka)で4℃で20分間透析した。
【0012】
シリカガラスを、プラズマクリーナ−(Gala Instrumente, Prep 5)を用いて50%出力で5分間、プラズマ処理によって清浄した。いくつかの実験は、基材上にコラーゲンゲルを接着させるための助けとして、ガラス上に乾燥させたコラーゲンの薄いコーティング(濃度は<0.1mg/mL)に対して行った。
【0013】
コラーゲン分子の繊維形成の誘導に用いた緩衝液は、10倍のリン酸緩衝生理食塩水すなわちPBS(Gibco, Invitrogen Corporation)であった。前記緩衝液は、0.1のモル濃度と、7.2のpHを有する。10倍濃縮PBSの成分は、2100mg/Lのリン酸二水素カリウム(KH2PO4)、90000mg/Lの塩化ナトリウム(NaCl)、及び7260mg/Lのリン酸ナトリウム二塩基性(Na2HPO4−7H2O)である。前記PBSは、使用前に37℃まで加熱する。
【0014】
方法
【0015】
コラーゲンゲルは、原子間力顕微鏡法によって画像化するために、PBS緩衝液を脱イオン水(Milli-Q)と交換することによって作製した。前記交換は、塩残留物を除去するために、最低3回行った。前記膜は、真空乾燥機内で一晩乾燥させた。コラーゲン膜に対する原子間力顕微鏡法を、Veeco Multimode AFMを使用して、Tap300Alチップ(Budget Sensors Tap300Al)を用いたタッピングモードで、40nM/mの公称力定数及び300kHzの共振周波数で行った。
【0016】
0.1%FBS、0.01%の100倍のペニシリン/ストレプトアビジン、0.01%の100倍のグルタミン、0.01%のMEN非必須アミノ酸、及び、0.01%の100倍のピルビン酸ナトリウムが添加されたDMEM培地の基材上でヒト線維芽細胞(ATCC CRL-209)を培養した。線維芽細胞を約10,000個/mlの密度で撒き、37℃、5%CO2下で12〜48時間培養した。線維芽細胞を、1倍のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)内の10%のホルムアルデヒド溶液内に10分間固定した。Nikon TE300顕微鏡を使用し、10倍の位相コントラスト対物レンズを使用して画像を取得した。
【0017】
線維芽細胞のアクチン繊維の蛍光画像化のために、線維芽細胞をAlex Fluor 488ファロイジン(Invitrogen)で染色した。染色の手順は次の通りである。培養基を吸引し、プレートをPBSで1回洗浄し、PBS内で3%ホルムアルデヒドで10分間固定する。前記プレートをその後、PBS内で0.1%のトリトン溶液で2回洗浄する。その後、前記プレートに、1倍のPBS内の5%のウマ血清及び0.1%のトリトンからなる阻害緩衝液を20分間加える。前記蛍光染料を前記阻害緩衝液内に分散させた後、前記プレート上に1時間セットする。前記プレートを、PBS溶液内の0.1%トリトン内で3回洗浄し、Vectashield(Vector Laboratories)及びスライドガラスに載置し、使用するまで暗闇で〜20℃で貯蔵する。蛍光染料を水銀ランプによってNikon Microphot及びPentamax cooled CCDカメラ上に励起し、Metamorph Softwareによって画像を記録する。蛍光画像の疑似着色をAdobe Photoshopを使用して行う。
【0018】
高pHでのコラーゲン浸漬
【0019】
これらの実験用の基材を、次の2ステップ法によって作製した。第1のステップでは、ガラス基板上へのコラーゲンの細片(ストライプ)の堆積を、後記する付録の項において概説する手順に従って行う。コラーゲンの堆積が完了した直後に、前記ガラス基板を、37℃の10倍PBSの槽に浸漬させる(ステップ2)。この手順の概要を図1に示す。
【0020】
高濃度コラーゲンの溶液は、前記緩衝液に入れる際は、流体状態である。ステップ1におけるロボット堆積のタイムフレームは約1分間であり、ステップ2におけるゲル化時間はそれよりも1桁大きい。コラーゲン溶液の繊維形成は、前記緩衝液中に入れられた直後に開始されることが観察された。これは、半透明のコラーゲン膜が不透明のコラーゲンゲルになることによって、視覚的に観察された。前記基材を、前記緩衝液内に少なくとも1時間浸漬させた後に取り出した。
【0021】
高pH下での堆積
【0022】
この実験では、コラーゲン溶液を、流動下で、酸可溶化状態から高pH環境へ堆積させた。前記コラーゲンモノマーを、注射針から押し出した強力な流体力学的流動によって配向させた。前記注射針から流体を排出すると同時に前記注射器を逆方向に移動させることによって、コラーゲン分子のさらなる配向が実現される(図2)。
【0023】
前記酸性溶液は、緩衝液に入れれた直後にゲル状構造への凝固を開始する。これは、高弾性係数を有する不透明なゲルが形成されることによって視覚的に確認される。この手順は、流れによって誘導される分子の配向を最大化するために、手動で高速で行われる。コラーゲン溶液は、1mLの注射器及び針から、シリカガラス基板の表面に直接的に堆積されるか、プラスチック製の組織培養皿の表面に堆積されるか、あるいは、前記緩衝液に自由に浮遊させられる。前記溶液が開始地点から引き離されたときに前記流れに対して延伸成分を提供するための前記コラーゲンゲルの前記基板への接着を調べるために様々な種類の基板を使用する。前記サンプルは、取り出す前に、10倍PBS内で1時間硬化させる。基板を使用しないで作製したコラーゲンゲルを緩衝剤から取り出し、ピンセットを使用してスライドガラス上に載せる。20〜26ゲージの注射針を選択することにより、様々なサイズのコラーゲンゲルの作製が可能となる。3.7mg/mL、8.6mg/mL及び24mg/mLの3種類の濃度のコラーゲンが使用される。
【0024】
PBS浸漬を利用した配列されたゲルの作製
【0025】
後記する付録の欄で説明するのと同じ方法を用いるが、コラーゲン膜の大気乾燥を、高pH溶液内での急速な繊維形成に置き換えた。コラーゲン繊維の形成は、堆積中に流体力学的流動によって形成された分子配向を安定化させる。
【0026】
繊維形成は定量的に測定されるのではなく、堆積したコラーゲン溶液の濁度が増加し、半透明材料から不透明ゲルへ変化することを視認することによって推測される。この急速な相変化は、1分間未満で起こる。スライドガラス上に堆積した材料の量は、各堆積のパラメーター(流量、ロボット速度)によって異なる。ロボット速度が100mm/sで、流量が0.3mL/分の一般的な堆積では、コラーゲン細片あたりの材料堆積量は、数マイクロリットルである。高濃度コラーゲンの薄い細片は、空気中で乾燥させると、コレストロールの液晶膜を形成する。一方、前記溶液を、乾燥させる前に高pH緩衝液に入れると、配向されたコラーゲンゲルが形成される。図3は、直交偏光板間の3つのゲルを示している。前記ゲルは、高い複屈折性を有し、ロボットにより堆積されたパターン形状を保っている。前記ゲルの頂部の円形は、ロボットによる堆積が開始された地点である。ロボットのアームが前記開始地点から移動すると、コラーゲンの細い帯状部分が形成される。前記複屈折性は、ゲルの長さにおいて均一であり、サンプルを45°回転させると信号が減衰する。このことは、堆積後の前記溶液の浸漬は前記流体の緩和よりも素早いこと、及び、前記流体は堆積したときに配向されることを示唆する。
【0027】
前記コラーゲンゲル構造体は、十分に水和される。前記ゲルの物理的性質は弱いため、軽い圧力で容易に裂ける。このような性質は、前記基板から前記ゲルを取り外し、AFMまたはSEMによって正確に画像化することを困難にする。ゲルを画像化するために水を除去すると、ゲルの構造崩壊が起こる。我々は、水の除去が繊維の長さまたは直径の変化を誘導し、コラーゲンの構成の分析を可能にすることは予期していなかった(ゲルネットワークの密度または気孔率の分析はできない)。原子間力顕微鏡により取得したコラーゲンゲルの画像を図4に示す。図4から、前記ゲルが長いコラーゲン繊維から構成されていることが分かる。前記コラーゲン繊維は、長さが数十ミクロンであり、幅は〜100nmの範囲である。前記コラーゲン繊維は、高pH条件下で形成された繊維の67nmD周期性の性質を有する。
【0028】
配向されたコラーゲンゲル上のヒト成人線維芽細胞の成長
【0029】
この実験に使用されるヒト成人線維芽細胞は、接触案内(contact guidance)に不可欠な、コラーゲン繊維に対して特異的なインテグリン受容体を有することが知られている。前記線維芽細胞のコラーゲンマトリクス上での挙動、偏光、細胞本体の延伸は、その下側のコラーゲン繊維の配向の画像を提供する。ヒト成人線維芽細胞の培養に使用される成長培地は、中性pHを有し、ゲルはAFM画像化に必要とされる脱水ステップのときと同じような体積損失は生じない。
【0030】
コラーゲンゲル上で成長したヒト成人線維芽細胞が、流れ堆積方向に配向されることが観察された。この線維芽細胞サンプルの偏向を図5に示す。図5は、コラーゲンゲル及び細胞を、直交偏光板間で画像化したものである。線維芽細胞は、ゲルの長軸に対して平行に、すなわち、流れ堆積の方向に延びている。このことは、コラーゲン繊維の配列方向に配向するという線維芽細胞の能力と、複屈折性によって観察される繊維形成前の流体力学的流動によるコラーゲン分子の配向との両方を裏付ける。
【0031】
堆積ステップ中におけるコラーゲン溶液とガラスとの接触時間が短いことは、この方法論の問題となり得る。緩衝溶液中に浸漬させて形成したコラーゲンゲルが、その後、基板から離れて浮遊することが観察されることがある。この技術におけるコラーゲンをガラス基板上に付着させることが困難であるという問題は、前記基板を化学的に処理して接着性を高めることによって解決することができる。接着性を高める1つの方法は、配向ゲルを形成するための堆積ステップの前に、シリカガラス上をコラーゲンで薄く被覆することである。コラーゲンの薄いコーティングは、マイクログラムの単位であり、ランダムに配向されており、前記細胞の偏光に影響を与えない。図6は、コラーゲンの薄い等方性層で被覆したシリカガラス基板上に垂直に配向させたコラーゲンゲルの図である。所定の長さのゲルにおける細胞の配向を、右側に概略的に示す。この境界領域内では、区別可能な各細胞に沿って引かれた線は、偏光の方向に従っている。作製されたゲルは、線維芽細胞がゲル内に移動することができないような非常に薄いものであり、細胞成長のために効果的な二次元配向基板となる。
【0032】
PBS緩衝液下での堆積
【0033】
この節では、コラーゲン繊維の形成に影響を与えるために、流体力学的流動を利用して、中性pH緩衝液に入れる前にモノマーを配向させることについて説明する。前記流体を注射針のオリフィスから排出してアリカリ環境下で堆積させて、繊維形成を誘導する。堆積過程中は、前記流体は、前記注射器から排出された流体のせん断流と、前記基板と接触した前記流体を逆方向に引っ張る延伸流との2つのプロファイルを受ける。
【0034】
前記ゲルは、直交偏光板間で光学顕微鏡で見たときに、高い複屈折性を有する。図7(A)〜(C)は、直交偏光板間の前記ゲルの一部を示す。図7(B)及び図7(C)は1/4波長板を有する場合であり、図7(A)は1/4波長板を有さない場合である。前記ゲルは、22ゲージのニードルによってシリカガラス上に堆積させた8.37mg/mLのコラーゲン溶液を用いて作製する。前記ゲルの均一な複屈折性が、偏光板及び分析装置が光学トレインにおいて存在する図7(A)において観察された。1/4波長板を追加し、その後にサンプルを回転させた場合が、図7(B)及び図7(C)に示されている。1/4波長板によって分子配向が平面内でなされた場合は前記ゲルは青色に見え、90°回転させた場合は黄色に見える。1/4波長板に関してのゲルの色は、前記分子が前記ゲルの長軸に沿って堆積方向に配向されたことを裏付ける。前記ゲルの前記複屈折性が、示した図の視野を越えて、その長さに沿って持続することが観察された。
【0035】
前記ゲル内のコラーゲン繊維の構成は、脱水によって測定され、原子間力顕微鏡によって観察される。サンプルは、前記画像を横切る幅数百ナノメートルの非常に長いコラーゲン繊維についての前回の観察と一致する。図8は、前記ゲルの14μmの部分の拡大画像を示す。矢印は堆積方向を示し、多数の繊維がこの方向に延びていることが観察された。
【0036】
コラーゲン繊維の拡大図が図9に示されている。この図は、ガラス基板の表面上のゲルの端部からのコラーゲン繊維を示している。コラーゲン繊維の67nmのD周期性が明確であり、図を左から右へ横切っている。これらの繊維の直径範囲は、ゲルの中心から取得した画像よりもはるかに大きい。ゲルの内側部分にどれくらいのコラーゲン繊維が存在するかは不明確であり、例えば凍結割断SEMなどのなどのより高度な画像技術を用いる必要がある。
【0037】
ヒト成人線維芽細胞の成長
【0038】
ゲル上のヒト成人線維芽細胞の成長は、その下側のコラーゲン繊維の配向をはっきりと示す。線維芽細胞の細胞骨格内のインテグリン受容体は、コラーゲン分子内の特定のアミノ酸配列を認識する。この認識は、接着斑の形成を開始させる細胞応答を生成する。この接着班、すなわちインテグリン群は、線維芽細胞のアクチン繊維とコラーゲン繊維との間の結合ポイントである。コラーゲン繊維の表面を認識すると、線維芽細胞はコラーゲン繊維の方向に偏向する。線維芽細胞のこのアクチン繊維ネットワークがコラーゲン繊維に対して平行に延在することにより、コラーゲン繊維の配向を線維芽細胞の成長方向によって決定することが可能となる。
【0039】
図10には、配向されたコラーゲンゲル上で成長したヒト成人線維芽細胞の位相コントラスト画像が示されている。前記線維芽細胞は、矢印で示す堆積方向に伸びている。コラーゲンゲルの三次元構造もまた、内部で移動するための大きな気孔率(porosity)を細胞に提供する。このことは特別に測定されないが、画像内の複数の焦点面上の細胞の存在により示唆される。
【0040】
配向されたコラーゲンゲル上の線維芽細胞は、糸状仮足によって高度に偏向されており、前記ゲルの長さに沿った両方向に到達する。前記細胞を72時間成長させた後、アクチン繊維ネットワークを浮かび上がらせるためにファロイジンで蛍光染色する。図11には、流れによって配向されたゲルが線維芽細胞を接触案内する能力を示す2つの画像が示されている。偏向させられた高密度の線維芽細胞は、細胞成長を案内する均一なコラーゲン構造を示す。
【0041】
ここに説明した方法は、様々なサイズの配向されたコラーゲンゲルの作製が可能である。ここでは、厚さが数百ミクロンで長さが数十ミリメートルのゲルの作製について説明する。なお、配向されたゲルは、大きな直径の注射針及び小さな直径の注射針のどちらを使用しても作成することができる。図11では20ゲージの注射針を使用してゲルを作製している。図12は、28ゲージの注射針を使用して作製した幅500ミクロン以下の小さなゲルを示している。いずれの場合も、前記ゲル内の線維芽細胞は高度に配向されており、各細胞のアクチン繊維は、同一の方向、すなわち流れ方向に伸びている。
【0042】
次に、3.6mg/mL〜20mg/mLの範囲のコラーゲン溶液を堆積させることによって、高度な複屈折性を有するゲルを作製する能力について説明する。残念なことに、手動の堆積技術では、前記流体の延伸比を正確に測定することができない。異なる濃度で作製したゲルの特性を具体的に比較することはしない。流れによって配向される能力について関心がある。様々な分子濃度を用いてコラーゲンゲルを作製することより、様々なゲル気孔率と物理的強度を得ることができる。
【0043】
基板を使用せずに作製したコラーゲンゲルを緩衝液相中に直接入れると、空気界面で自由に浮遊することが観察された。堆積後、流体相から取り出した基板上に前記ゲルをピン止めすることによって、前記ゲルをガラス基板に取り付けた。基板を用いずに作製したゲルのいくつかは、均一な複屈折性を示さなかった。このことは、流れ堆積過程における延伸の不足に関係すると考えられる。前記溶液の堆積中に前記溶液に加えられた延伸流れ成分が、コラーゲン繊維を配向させるの大きく寄与することをここに示す。基板に制約されることなく、注射器のノズルから排出された流体のせん断流のみが用いられる。このような初期の未配向ゲルは、堆積後に、前記ゲルの長軸を物理的に延伸させることにより配向させることができるという有望な観察結果が得られた。ゲルの延伸は、コラーゲン繊維を配向させるために重要であり、緩んで未配向状態に戻ることはない。堆積後に延伸させて作製したゲルは、1/4波長板の挿入により測定して、均一な方向の高い複屈折率信号を示した(結果は図示しない)。
【0044】
付録
【0045】
材料
【0046】
ネズミ尾由来のI型コラーゲン(生命化学DB)を、0.2Nの酢酸(pH〜3.5)内の3.6mg/mL及び10mg/mLの貯蔵濃度で購入した。その後、10mg/mLの前記溶液を、約20mg/mLの最終濃度に達するまで、ポリエチレングリコール(Fluka)で4℃で20分間透析した。
【0047】
基板として使用するシリカガラスを、1.5%のDeconex 12-PA洗浄溶液内で60℃で超音波処理によって洗浄した後、大量の脱イオン水(Millipore Direct-Q 5)で洗い流し、清潔な環境で貯蔵した。前記シリカガラスを、プラズマクリーナ−(Gala Instrumente, Prep 5)を用いて50%出力で5分間、プラズマ処理によって清浄した。
【0048】
基剤と硬化剤とを10:1の比率で混合することによって、ポリジメチルシロキサン、すなわちPDMS(Dow Corning Sylgard 184)を調製した。シリカガラス基板上に薄いコーティングを塗布し、室温で一晩硬化させるか、あるいは、オーブン内で75℃で硬化させた。
【0049】
制御されたロボット堆積
【0050】
3軸ロボットアーム(I&J Fisnar 500LN)及び注射器ポンプ(Harvard Apparatus, Milliliter OEM Pump)を備えた特注の堆積システムを使用してコラーゲン膜を形成した。前記装置の設計は、ロボットのアームが基板表面の経路をたどるようにプログラムすることによって、コラーゲン溶液を様々な基板上に提供することが可能となる。ロボットのアームは、溶液をディスペンスする外部の注射器ポンプに接続された使い捨て式の注射器針を支持する。注射器針の先端は湾曲しており、排出された流体は目標の表面に対して平行に放出される(図13)。流体とロボットが互いに反対方向に移動することによって、注射器から排出された流体において延伸流成分が形成される。前記延伸流は、圧力駆動流と相まって、堆積中に、コラーゲン分子を配向させるための大きなせん断力を提供する。
【0051】
前記流れ及び堆積は、特注のLabView(National Instruments)プログラムによって制御される。流体堆積は、基板速度(substrate velocity)の、注射器のノズルから排出された流体速度(fluid velocity)に対する比率である延伸比(D=vr/vf)によって制御される。流体の平均速度は、針オリフィス半径がRとして与えられた場合の、注射器ポンプの既知の体積流量Qから計算される。流体の平均速度は次の式から計算することができる。
【0052】
【数1】
【0053】
前記ロボットの堆積速度Vrは、20mm/s〜100mm/sに調節される。注射器針のオリフィスサイズは、様々な針サイズ、すなわち18〜27ゲージ(0.84〜0.19mmの内径)を使用することによって調節することができる。用いられるコラーゲンの流量は、0.05〜0.5ml/分の範囲である。最も多くの場合、22ゲージの針を使用して、高濃度コラーゲン溶液の粘度に最も一致する膜を形成する。22ゲージの針を使用した0.3ml/分の流量(flow rate)と、100mm/秒のロボット速度(robot speed)とによって、2.4の延伸比(draw ratio)が得られる。
【0054】
注射器針からの流れを計算するための方法の例は、次の通りである。22ゲージの注射器針の内径を、0.394mm(半径0.197mm)と仮定する。
平均速度=流量/面積=(0.3mL/分)/(π×(0.197mm)2)
流量=0.3mL/分×(1分/60秒)×(1L/1000mL)×(1m3/1000L)=0.000000005m3/秒
面積=3.14159×(0.000197メートル)2
平均速度=0.041m/秒(41mm/秒)
ロボット速度=100mm/秒
延伸比=(100mm/秒)/(41mm/秒)=2.438
ロボット速度が100mm/秒で一定の場合
流量(fluid flow)が0.5mL/分であれば、延伸比は1.46であり、
流量が0.05mL/分であれば、延伸比は14.6である。
【0055】
使用前に、コラーゲンの凝集体の数を減少させるために、コラーゲン溶液のアリコートを4℃で超音波処理する。この手法は、コラーゲン分子の三重らせん構造を破壊しないことが分かっている。超音波処理は、10分間隔で行われる2回の10分間の超音波パルスによって行う。コラーゲン溶液を、制御された流動条件下でガラス基板上に堆積させた後、大気条件下で乾燥させる。原線維及び繊維の形成を防止するために、全ての処理を通じて、前記溶液内は酸性条件を維持する。
【0056】
前記溶液を乾燥させると、接触面積が同一に維持されたままで、前記溶液の濃度が上昇する。この急速な溶液減少は、15分未満で行われる。細胞培養を無菌に維持するために、器具全体は層流フード内に入れられる。乾燥させた後、光学顕微鏡(Nikon TE300)上の直交偏光板間で、前記サンプルを検査する。
【0057】
細胞培養
【0058】
ヒト線維芽細胞(ATCC CRL-2091)をDMEM培地内の基材上で培養する。前記培地には、0.1%FBS、0.01%の100倍のペニシリン/ストレプトアビジン、0.01%の100倍のグルタミン、0.01%のMEN非必須アミノ酸、及び、0.01%の100倍のピルビン酸ナトリウムが添加されている。線維芽細胞を約10,000個/mlの密度で撒き、37℃、5%CO2下で12〜48時間培養した。線維芽細胞を、1倍のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)内の10%のホルムアルデヒド溶液内に10分間固定した。Nikon TE300顕微鏡を使用し、10倍の位相コントラスト対物レンズを使用して画像を取得した。
【0059】
顕微鏡法
【0060】
コラーゲン膜に対する原子間力顕微鏡法は、Veeco Multimode AFMを使用して、ナノセンサーチップ(PPP-BSI)を用いたタッピングモードで0.1N/mの公称力定数及び28kHzの共振周波数で行うか、あるいは、Tap300Alチップ(Budget Sensors Tap300Al)を用いたタッピングモードで40nM/mの公称力定数及び300kHzの共振周波数で行った。走査は、0.5〜2Hzで行った。
【0061】
線維芽細胞のアクチン繊維の蛍光画像化のために、線維芽細胞をAlex Fluor 488ファロイジン(Invitrogen)で染色した。染色の手順は次の通りである。培養基を吸引し、プレートをPBSで1回洗浄し、PBS内で3%ホルムアルデヒドで10分間固定する。線維芽細胞を、PBS内で1%のトリトン溶液で10分間透過処理した後、PBS内で0.1%のトリトン溶液で2回洗浄する。その後、前記プレートに、1倍のPBS内の5%のウマ血清及び0.1%のトリトンからなる阻害緩衝液を20分間加える。前記蛍光染料を前記阻害緩衝液内に分散させた後、前記プレート上に1時間セットする。前記プレートを、PBS溶液内の0.1%トリトン内で3回洗浄し、Vectashield(Vector Laboratories)及びスライドガラスに載置し、使用するまで暗闇で〜20℃で貯蔵する。蛍光染料を水銀ランプによってNikon Microphot及びPentamax cooled CCDカメラ上に励起し、Metamorph Softwareによって画像を記録する。蛍光画像の疑似着色をAdobe Photoshopを使用して行う。
【技術分野】
【0001】
本発明は、配向されたコラーゲンゲル及びその使用方法に関する。特に、本発明は、細胞成長、薬物送達または組織再生のための配向されたコラーゲンゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンゲル構造は、薬物送達システムや組織再生システムとして様々な利点を有している。コラーゲンゲル構造は粘弾性を有しており応力を受けたときに流動することができるので、形成外科において注入可能なインプラントとして長年使用されてきた。しかしながら、コラーゲンゲルは気孔径が大きいため(数十ナノメートル)、分子をコラーゲンに結合させることなしでは制御放出が困難であるという欠点があった。また、ランダムに配向されたゲルは、引張荷重に耐えるにはあるいは外科的処置には非常に弱い。加えて、コラーゲンゲルの物理的性質は共有結合や非共有架橋結合(熱、化学薬品またはUV照射)によって変化するおそれがあるため、強度を増すために他の複合材料と組み合わされる。このような技術の影響は複雑であり、コラーゲンの劣化や、細胞成長に対して有害な細胞毒性が生じるおそれがある。
【0003】
約50年間に渡って、細胞培養基材として、配向されていないコラーゲンゲルが作製されてきた。配向されていないコラーゲンゲルは、コラーゲンの中和された溶液を生理的温度まで温めることにより作製することができる。配向されたコラーゲンゲルを作製する1つの方法は、高強度の磁界を利用して、繊維形成中にコラーゲン繊維の配向を誘導することである。この方法は、ゲルの寸法に応じて0.5〜5テスラの強力な磁界を必要とするため、商業生産には実用的でない。配向されたコラーゲンゲルは、マイクロ流体チャネルを利用して作製することもできる。この方法では、幅が10〜400ミクロンのPDMSチャネルにおいて、アルカリ性のコラーゲン溶液をポリマー化する。前記コラーゲン溶液は、固定された堆積装置によって、前記チャネルに5〜10mm/秒の流速で供給される。この例の流量は、前記コラーゲン分子の配向を操作するには十分ではない。本発明は、配向されたコラーゲンゲルを作製するための新しい技術を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、コラーゲン繊維のアセンブリに影響を与えるために、流体力学を利用して流れによって配向させたコラーゲンゲルを作製する技術を提供する。コラーゲンの高濃度モノマー溶液は、繊維形成を誘導すべく基材上に高pH緩衝液下で供給されたときに、せん断及び延伸流を受ける。作製されるゲルは、繊維形成時に、流れによる誘導によって分子コラーゲンが配向される。前記堆積すなわち繊維形成誘導は、前記高濃度のコラーゲンに対して磁場を加えることなく行われる。
【0005】
このような高度に配向された3Dスキャフォールドは、接触案内(contact guidance)や哺乳類の細胞の成長を誘導することができる。コラーゲン繊維は、D周期性を特徴とするインビボ繊維の構成を模倣し、この構成に対して線維芽細胞のインテグリン受容体が応答する。3次元コラーゲンゲルの生体材料としての工業的用途は、薬物送達からやけどの修復すなわち組織再生システムまでの広範囲に渡る。
【0006】
一実施形態では、配向されたコラーゲンゲルの作製方法が提供される。繊維形成を誘導すべく、少なくともpH5または少なくともpH7の緩衝液下及び生理的温度下で、堆積装置によって或る濃度のコラーゲンを基材上に堆積させる。一実施例では、前記堆積ステップの前に、前記基材上にコラーゲンのコーティングを形成する。前記コラーゲンの濃度は、少なくとも3mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも20mg/ml、または少なくとも40mg/mlであり得る。前記コラーゲンの濃度を変更することにより、例えば、コラーゲンゲルの気孔率(porosity)を制御することができる。
【0007】
前記堆積装置は前記堆積中に或る堆積速度(例えば、少なくとも100mm/秒の)を有し、前記或る濃度のコラーゲンは堆積されるときに或る供給速度(例えば、少なくとも0.3mL/分の)を有する。堆積速度(depositing speed)及び供給速度(travelling speed)は、両方ともゼロよりは大きく、かつ、移動方向が互いに逆方向である。このことは、堆積中に前記或る濃度のコラーゲンに対してせん断及び延伸力成分を加えるために重要である。一態様では、前記或る濃度のコラーゲンの堆積は、堆積速度と供給速度との延伸比(draw ratio)によって定義される。前記延伸比は、0より大きい値であるべきであり、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4であり得る。コラーゲン繊維の長さは、約1マイクロメートル以上、約10マイクロメートル以上、または約100マイクロメートル以上であり得、67nmまたは約67nmのD周期性を有する。配向されたコラーゲンゲルを引っ張るかまたは伸張させることにより、コラーゲンゲル繊維の配向をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態による、緩衝液下で浸漬によって配向されたコラーゲンゲルを作製する方法を示す。ステップ1:ガラス基板上への高濃度コラーゲン溶液のロボット堆積。ステップ2:基板を高pH緩衝液へ移動させて、コラーゲン溶液の繊維形成を誘導。
【図2】本発明の一実施形態による、高pH環境下でのロボット堆積の概要を示す。移動方向が互いに反対である流体速度及び注射器先端速度によって、流体が基板上に押し出される。
【図3】本発明の一実施形態による、高濃度コラーゲン溶液をガラス上に堆積させた後に、10倍PBS緩衝液に浸漬させたときの様子を示す。直交偏光板間のサンプルを光学顕微鏡で倍率4倍で見たときの様子が示されている。
【図4】本発明の一実施形態による、乾燥させたコラーゲンゲルのAFM高さモード画像を示す。長い繊維が、流れ堆積方向(矢印)に配向された状態が示されている。ガラス上にロボット堆積させた直後に、暖かい10倍のPBS中に浸漬することによりゲルが形成される。10μm×10μmの画像、150nmの高さスケール。
【図5】本発明の一実施形態による、ヒト成人線維芽細胞を有する直交偏光板間で画像化したコラーゲンゲルの例を示す。線維芽細胞は、コラーゲンの堆積方向に対して平行に配向されており、細胞の偏向は複屈折領域において生じている。ゲルの外側領域は複屈折性を有していないため暗い。暗い領域では、細胞成長は配向されていない。
【図6】本発明の一実施形態による、浸漬技術によって作製した配向コラーゲンゲル上で成長させたヒト成人線維芽細胞を示す。等方性細胞成長が観察されたが、ゲル境界域のゲル上では、線維芽細胞の接触案内が細胞成長を堆積方向(上側から下側)へ偏向させている。ゲル領域内の細胞成長の概略図は、各細胞の方向を直線で示している。
【図7】本発明の一実施形態による、直交偏光板間で観察された配向コラーゲンゲルを示す(A)。(B)及び(C)は、1/4波長板を光学トレイン内に偏光板に対して45°の角度で挿入した場合を示す。偏光板、分析器及び波長板のサンプルに対する向きが示されている。1/4波長板の方向に対して回転させたときに、ゲルの色は変化する。(倍率は2倍)
【図8】本発明の一実施形態による、配向されたコラーゲンゲルの振幅モードでの原子間力顕微鏡写真を示す。矢印は流れ堆積の方向を示す。14μm×14μmの画像、0.6Vスケール。
【図9】本発明の一実施形態による、AFM振幅モード画像を示す。配向されたゲルの縁部からのコラーゲン繊維が示されている。コラーゲン繊維のD周期性を明確に視認できる。繊維の背景はガラス基板である。10μm×10μmの画像、0.9ボルトスケール。
【図10】本発明の一実施形態による、10倍のPBS緩衝液下で高濃度コラーゲン溶液を堆積させることによって作製したコラーゲンゲル上で成長させたヒト成人線維芽細胞の位相コントラスト画像を示す。矢印はコラーゲンの堆積方向を示している。線維芽細胞は堆積方向に偏向されており、細胞延伸はこの軸に沿ってはみ出している。(10倍の倍率)
【図11】本発明の一実施形態による、線維芽細胞のアクチン繊維ネットワークの蛍光画像を示す。ヒト成人線維芽細胞は、37℃で10倍のPBS内で10mg/mlのコラーゲン溶液を用いて作製した配向されたコラーゲンゲル上で成長する。細胞本体は堆積方向に高度に偏向されている。倍率10倍(A)、倍率40倍(B)。
【図12】本発明の一実施形態による、配向されたコラーゲンゲルの全幅の画像を示す。ゲルは28ゲージの注射器針を使用して作製した。線維芽細胞のアクチン繊維が配向されているのを図に見ることができる。(倍率10倍)
【図13】本発明の一実施形態による、スライドガラス上へのロボット堆積の概要を示す。注射器の先端は、ガラスの表面に対して平行となるように湾曲している。流体は、或る速度で、オリフィスから注射器の移動方向とは逆方向に排出される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、コラーゲン繊維アセンブリに対して影響を与えるために流体力学を利用して流れによって配向させたコラーゲンゲルの作製について説明する。高濃度のコラーゲン(モノマー)溶液を基材上に堆積させた後、高pHの緩衝液下で繊維形成を誘導する。堆積中、基材上に供給されたコラーゲン溶液は、せん断及び延伸流を受ける。作製されるゲルは、繊維形成時に、流れによる誘導によって分子コラーゲンが配向される。配向されたコラーゲン繊維を、光学的複屈折測定及びヒト成人線維芽細胞を用いて観察した。配向されたゲル上のヒト成人線維芽細胞の成長及び偏光を調べた。
【0010】
材料
【0011】
ネズミ尾由来のI型コラーゲン(生命化学DB)を、0.2Nの酢酸(pH〜3.5)内の3.6mg/mL及び10mg/mLの貯蔵濃度で購入した。その後、10mg/mLの前記溶液を、約20mg/mLの最終濃度に達するまで、ポリエチレングリコール(Fluka)で4℃で20分間透析した。
【0012】
シリカガラスを、プラズマクリーナ−(Gala Instrumente, Prep 5)を用いて50%出力で5分間、プラズマ処理によって清浄した。いくつかの実験は、基材上にコラーゲンゲルを接着させるための助けとして、ガラス上に乾燥させたコラーゲンの薄いコーティング(濃度は<0.1mg/mL)に対して行った。
【0013】
コラーゲン分子の繊維形成の誘導に用いた緩衝液は、10倍のリン酸緩衝生理食塩水すなわちPBS(Gibco, Invitrogen Corporation)であった。前記緩衝液は、0.1のモル濃度と、7.2のpHを有する。10倍濃縮PBSの成分は、2100mg/Lのリン酸二水素カリウム(KH2PO4)、90000mg/Lの塩化ナトリウム(NaCl)、及び7260mg/Lのリン酸ナトリウム二塩基性(Na2HPO4−7H2O)である。前記PBSは、使用前に37℃まで加熱する。
【0014】
方法
【0015】
コラーゲンゲルは、原子間力顕微鏡法によって画像化するために、PBS緩衝液を脱イオン水(Milli-Q)と交換することによって作製した。前記交換は、塩残留物を除去するために、最低3回行った。前記膜は、真空乾燥機内で一晩乾燥させた。コラーゲン膜に対する原子間力顕微鏡法を、Veeco Multimode AFMを使用して、Tap300Alチップ(Budget Sensors Tap300Al)を用いたタッピングモードで、40nM/mの公称力定数及び300kHzの共振周波数で行った。
【0016】
0.1%FBS、0.01%の100倍のペニシリン/ストレプトアビジン、0.01%の100倍のグルタミン、0.01%のMEN非必須アミノ酸、及び、0.01%の100倍のピルビン酸ナトリウムが添加されたDMEM培地の基材上でヒト線維芽細胞(ATCC CRL-209)を培養した。線維芽細胞を約10,000個/mlの密度で撒き、37℃、5%CO2下で12〜48時間培養した。線維芽細胞を、1倍のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)内の10%のホルムアルデヒド溶液内に10分間固定した。Nikon TE300顕微鏡を使用し、10倍の位相コントラスト対物レンズを使用して画像を取得した。
【0017】
線維芽細胞のアクチン繊維の蛍光画像化のために、線維芽細胞をAlex Fluor 488ファロイジン(Invitrogen)で染色した。染色の手順は次の通りである。培養基を吸引し、プレートをPBSで1回洗浄し、PBS内で3%ホルムアルデヒドで10分間固定する。前記プレートをその後、PBS内で0.1%のトリトン溶液で2回洗浄する。その後、前記プレートに、1倍のPBS内の5%のウマ血清及び0.1%のトリトンからなる阻害緩衝液を20分間加える。前記蛍光染料を前記阻害緩衝液内に分散させた後、前記プレート上に1時間セットする。前記プレートを、PBS溶液内の0.1%トリトン内で3回洗浄し、Vectashield(Vector Laboratories)及びスライドガラスに載置し、使用するまで暗闇で〜20℃で貯蔵する。蛍光染料を水銀ランプによってNikon Microphot及びPentamax cooled CCDカメラ上に励起し、Metamorph Softwareによって画像を記録する。蛍光画像の疑似着色をAdobe Photoshopを使用して行う。
【0018】
高pHでのコラーゲン浸漬
【0019】
これらの実験用の基材を、次の2ステップ法によって作製した。第1のステップでは、ガラス基板上へのコラーゲンの細片(ストライプ)の堆積を、後記する付録の項において概説する手順に従って行う。コラーゲンの堆積が完了した直後に、前記ガラス基板を、37℃の10倍PBSの槽に浸漬させる(ステップ2)。この手順の概要を図1に示す。
【0020】
高濃度コラーゲンの溶液は、前記緩衝液に入れる際は、流体状態である。ステップ1におけるロボット堆積のタイムフレームは約1分間であり、ステップ2におけるゲル化時間はそれよりも1桁大きい。コラーゲン溶液の繊維形成は、前記緩衝液中に入れられた直後に開始されることが観察された。これは、半透明のコラーゲン膜が不透明のコラーゲンゲルになることによって、視覚的に観察された。前記基材を、前記緩衝液内に少なくとも1時間浸漬させた後に取り出した。
【0021】
高pH下での堆積
【0022】
この実験では、コラーゲン溶液を、流動下で、酸可溶化状態から高pH環境へ堆積させた。前記コラーゲンモノマーを、注射針から押し出した強力な流体力学的流動によって配向させた。前記注射針から流体を排出すると同時に前記注射器を逆方向に移動させることによって、コラーゲン分子のさらなる配向が実現される(図2)。
【0023】
前記酸性溶液は、緩衝液に入れれた直後にゲル状構造への凝固を開始する。これは、高弾性係数を有する不透明なゲルが形成されることによって視覚的に確認される。この手順は、流れによって誘導される分子の配向を最大化するために、手動で高速で行われる。コラーゲン溶液は、1mLの注射器及び針から、シリカガラス基板の表面に直接的に堆積されるか、プラスチック製の組織培養皿の表面に堆積されるか、あるいは、前記緩衝液に自由に浮遊させられる。前記溶液が開始地点から引き離されたときに前記流れに対して延伸成分を提供するための前記コラーゲンゲルの前記基板への接着を調べるために様々な種類の基板を使用する。前記サンプルは、取り出す前に、10倍PBS内で1時間硬化させる。基板を使用しないで作製したコラーゲンゲルを緩衝剤から取り出し、ピンセットを使用してスライドガラス上に載せる。20〜26ゲージの注射針を選択することにより、様々なサイズのコラーゲンゲルの作製が可能となる。3.7mg/mL、8.6mg/mL及び24mg/mLの3種類の濃度のコラーゲンが使用される。
【0024】
PBS浸漬を利用した配列されたゲルの作製
【0025】
後記する付録の欄で説明するのと同じ方法を用いるが、コラーゲン膜の大気乾燥を、高pH溶液内での急速な繊維形成に置き換えた。コラーゲン繊維の形成は、堆積中に流体力学的流動によって形成された分子配向を安定化させる。
【0026】
繊維形成は定量的に測定されるのではなく、堆積したコラーゲン溶液の濁度が増加し、半透明材料から不透明ゲルへ変化することを視認することによって推測される。この急速な相変化は、1分間未満で起こる。スライドガラス上に堆積した材料の量は、各堆積のパラメーター(流量、ロボット速度)によって異なる。ロボット速度が100mm/sで、流量が0.3mL/分の一般的な堆積では、コラーゲン細片あたりの材料堆積量は、数マイクロリットルである。高濃度コラーゲンの薄い細片は、空気中で乾燥させると、コレストロールの液晶膜を形成する。一方、前記溶液を、乾燥させる前に高pH緩衝液に入れると、配向されたコラーゲンゲルが形成される。図3は、直交偏光板間の3つのゲルを示している。前記ゲルは、高い複屈折性を有し、ロボットにより堆積されたパターン形状を保っている。前記ゲルの頂部の円形は、ロボットによる堆積が開始された地点である。ロボットのアームが前記開始地点から移動すると、コラーゲンの細い帯状部分が形成される。前記複屈折性は、ゲルの長さにおいて均一であり、サンプルを45°回転させると信号が減衰する。このことは、堆積後の前記溶液の浸漬は前記流体の緩和よりも素早いこと、及び、前記流体は堆積したときに配向されることを示唆する。
【0027】
前記コラーゲンゲル構造体は、十分に水和される。前記ゲルの物理的性質は弱いため、軽い圧力で容易に裂ける。このような性質は、前記基板から前記ゲルを取り外し、AFMまたはSEMによって正確に画像化することを困難にする。ゲルを画像化するために水を除去すると、ゲルの構造崩壊が起こる。我々は、水の除去が繊維の長さまたは直径の変化を誘導し、コラーゲンの構成の分析を可能にすることは予期していなかった(ゲルネットワークの密度または気孔率の分析はできない)。原子間力顕微鏡により取得したコラーゲンゲルの画像を図4に示す。図4から、前記ゲルが長いコラーゲン繊維から構成されていることが分かる。前記コラーゲン繊維は、長さが数十ミクロンであり、幅は〜100nmの範囲である。前記コラーゲン繊維は、高pH条件下で形成された繊維の67nmD周期性の性質を有する。
【0028】
配向されたコラーゲンゲル上のヒト成人線維芽細胞の成長
【0029】
この実験に使用されるヒト成人線維芽細胞は、接触案内(contact guidance)に不可欠な、コラーゲン繊維に対して特異的なインテグリン受容体を有することが知られている。前記線維芽細胞のコラーゲンマトリクス上での挙動、偏光、細胞本体の延伸は、その下側のコラーゲン繊維の配向の画像を提供する。ヒト成人線維芽細胞の培養に使用される成長培地は、中性pHを有し、ゲルはAFM画像化に必要とされる脱水ステップのときと同じような体積損失は生じない。
【0030】
コラーゲンゲル上で成長したヒト成人線維芽細胞が、流れ堆積方向に配向されることが観察された。この線維芽細胞サンプルの偏向を図5に示す。図5は、コラーゲンゲル及び細胞を、直交偏光板間で画像化したものである。線維芽細胞は、ゲルの長軸に対して平行に、すなわち、流れ堆積の方向に延びている。このことは、コラーゲン繊維の配列方向に配向するという線維芽細胞の能力と、複屈折性によって観察される繊維形成前の流体力学的流動によるコラーゲン分子の配向との両方を裏付ける。
【0031】
堆積ステップ中におけるコラーゲン溶液とガラスとの接触時間が短いことは、この方法論の問題となり得る。緩衝溶液中に浸漬させて形成したコラーゲンゲルが、その後、基板から離れて浮遊することが観察されることがある。この技術におけるコラーゲンをガラス基板上に付着させることが困難であるという問題は、前記基板を化学的に処理して接着性を高めることによって解決することができる。接着性を高める1つの方法は、配向ゲルを形成するための堆積ステップの前に、シリカガラス上をコラーゲンで薄く被覆することである。コラーゲンの薄いコーティングは、マイクログラムの単位であり、ランダムに配向されており、前記細胞の偏光に影響を与えない。図6は、コラーゲンの薄い等方性層で被覆したシリカガラス基板上に垂直に配向させたコラーゲンゲルの図である。所定の長さのゲルにおける細胞の配向を、右側に概略的に示す。この境界領域内では、区別可能な各細胞に沿って引かれた線は、偏光の方向に従っている。作製されたゲルは、線維芽細胞がゲル内に移動することができないような非常に薄いものであり、細胞成長のために効果的な二次元配向基板となる。
【0032】
PBS緩衝液下での堆積
【0033】
この節では、コラーゲン繊維の形成に影響を与えるために、流体力学的流動を利用して、中性pH緩衝液に入れる前にモノマーを配向させることについて説明する。前記流体を注射針のオリフィスから排出してアリカリ環境下で堆積させて、繊維形成を誘導する。堆積過程中は、前記流体は、前記注射器から排出された流体のせん断流と、前記基板と接触した前記流体を逆方向に引っ張る延伸流との2つのプロファイルを受ける。
【0034】
前記ゲルは、直交偏光板間で光学顕微鏡で見たときに、高い複屈折性を有する。図7(A)〜(C)は、直交偏光板間の前記ゲルの一部を示す。図7(B)及び図7(C)は1/4波長板を有する場合であり、図7(A)は1/4波長板を有さない場合である。前記ゲルは、22ゲージのニードルによってシリカガラス上に堆積させた8.37mg/mLのコラーゲン溶液を用いて作製する。前記ゲルの均一な複屈折性が、偏光板及び分析装置が光学トレインにおいて存在する図7(A)において観察された。1/4波長板を追加し、その後にサンプルを回転させた場合が、図7(B)及び図7(C)に示されている。1/4波長板によって分子配向が平面内でなされた場合は前記ゲルは青色に見え、90°回転させた場合は黄色に見える。1/4波長板に関してのゲルの色は、前記分子が前記ゲルの長軸に沿って堆積方向に配向されたことを裏付ける。前記ゲルの前記複屈折性が、示した図の視野を越えて、その長さに沿って持続することが観察された。
【0035】
前記ゲル内のコラーゲン繊維の構成は、脱水によって測定され、原子間力顕微鏡によって観察される。サンプルは、前記画像を横切る幅数百ナノメートルの非常に長いコラーゲン繊維についての前回の観察と一致する。図8は、前記ゲルの14μmの部分の拡大画像を示す。矢印は堆積方向を示し、多数の繊維がこの方向に延びていることが観察された。
【0036】
コラーゲン繊維の拡大図が図9に示されている。この図は、ガラス基板の表面上のゲルの端部からのコラーゲン繊維を示している。コラーゲン繊維の67nmのD周期性が明確であり、図を左から右へ横切っている。これらの繊維の直径範囲は、ゲルの中心から取得した画像よりもはるかに大きい。ゲルの内側部分にどれくらいのコラーゲン繊維が存在するかは不明確であり、例えば凍結割断SEMなどのなどのより高度な画像技術を用いる必要がある。
【0037】
ヒト成人線維芽細胞の成長
【0038】
ゲル上のヒト成人線維芽細胞の成長は、その下側のコラーゲン繊維の配向をはっきりと示す。線維芽細胞の細胞骨格内のインテグリン受容体は、コラーゲン分子内の特定のアミノ酸配列を認識する。この認識は、接着斑の形成を開始させる細胞応答を生成する。この接着班、すなわちインテグリン群は、線維芽細胞のアクチン繊維とコラーゲン繊維との間の結合ポイントである。コラーゲン繊維の表面を認識すると、線維芽細胞はコラーゲン繊維の方向に偏向する。線維芽細胞のこのアクチン繊維ネットワークがコラーゲン繊維に対して平行に延在することにより、コラーゲン繊維の配向を線維芽細胞の成長方向によって決定することが可能となる。
【0039】
図10には、配向されたコラーゲンゲル上で成長したヒト成人線維芽細胞の位相コントラスト画像が示されている。前記線維芽細胞は、矢印で示す堆積方向に伸びている。コラーゲンゲルの三次元構造もまた、内部で移動するための大きな気孔率(porosity)を細胞に提供する。このことは特別に測定されないが、画像内の複数の焦点面上の細胞の存在により示唆される。
【0040】
配向されたコラーゲンゲル上の線維芽細胞は、糸状仮足によって高度に偏向されており、前記ゲルの長さに沿った両方向に到達する。前記細胞を72時間成長させた後、アクチン繊維ネットワークを浮かび上がらせるためにファロイジンで蛍光染色する。図11には、流れによって配向されたゲルが線維芽細胞を接触案内する能力を示す2つの画像が示されている。偏向させられた高密度の線維芽細胞は、細胞成長を案内する均一なコラーゲン構造を示す。
【0041】
ここに説明した方法は、様々なサイズの配向されたコラーゲンゲルの作製が可能である。ここでは、厚さが数百ミクロンで長さが数十ミリメートルのゲルの作製について説明する。なお、配向されたゲルは、大きな直径の注射針及び小さな直径の注射針のどちらを使用しても作成することができる。図11では20ゲージの注射針を使用してゲルを作製している。図12は、28ゲージの注射針を使用して作製した幅500ミクロン以下の小さなゲルを示している。いずれの場合も、前記ゲル内の線維芽細胞は高度に配向されており、各細胞のアクチン繊維は、同一の方向、すなわち流れ方向に伸びている。
【0042】
次に、3.6mg/mL〜20mg/mLの範囲のコラーゲン溶液を堆積させることによって、高度な複屈折性を有するゲルを作製する能力について説明する。残念なことに、手動の堆積技術では、前記流体の延伸比を正確に測定することができない。異なる濃度で作製したゲルの特性を具体的に比較することはしない。流れによって配向される能力について関心がある。様々な分子濃度を用いてコラーゲンゲルを作製することより、様々なゲル気孔率と物理的強度を得ることができる。
【0043】
基板を使用せずに作製したコラーゲンゲルを緩衝液相中に直接入れると、空気界面で自由に浮遊することが観察された。堆積後、流体相から取り出した基板上に前記ゲルをピン止めすることによって、前記ゲルをガラス基板に取り付けた。基板を用いずに作製したゲルのいくつかは、均一な複屈折性を示さなかった。このことは、流れ堆積過程における延伸の不足に関係すると考えられる。前記溶液の堆積中に前記溶液に加えられた延伸流れ成分が、コラーゲン繊維を配向させるの大きく寄与することをここに示す。基板に制約されることなく、注射器のノズルから排出された流体のせん断流のみが用いられる。このような初期の未配向ゲルは、堆積後に、前記ゲルの長軸を物理的に延伸させることにより配向させることができるという有望な観察結果が得られた。ゲルの延伸は、コラーゲン繊維を配向させるために重要であり、緩んで未配向状態に戻ることはない。堆積後に延伸させて作製したゲルは、1/4波長板の挿入により測定して、均一な方向の高い複屈折率信号を示した(結果は図示しない)。
【0044】
付録
【0045】
材料
【0046】
ネズミ尾由来のI型コラーゲン(生命化学DB)を、0.2Nの酢酸(pH〜3.5)内の3.6mg/mL及び10mg/mLの貯蔵濃度で購入した。その後、10mg/mLの前記溶液を、約20mg/mLの最終濃度に達するまで、ポリエチレングリコール(Fluka)で4℃で20分間透析した。
【0047】
基板として使用するシリカガラスを、1.5%のDeconex 12-PA洗浄溶液内で60℃で超音波処理によって洗浄した後、大量の脱イオン水(Millipore Direct-Q 5)で洗い流し、清潔な環境で貯蔵した。前記シリカガラスを、プラズマクリーナ−(Gala Instrumente, Prep 5)を用いて50%出力で5分間、プラズマ処理によって清浄した。
【0048】
基剤と硬化剤とを10:1の比率で混合することによって、ポリジメチルシロキサン、すなわちPDMS(Dow Corning Sylgard 184)を調製した。シリカガラス基板上に薄いコーティングを塗布し、室温で一晩硬化させるか、あるいは、オーブン内で75℃で硬化させた。
【0049】
制御されたロボット堆積
【0050】
3軸ロボットアーム(I&J Fisnar 500LN)及び注射器ポンプ(Harvard Apparatus, Milliliter OEM Pump)を備えた特注の堆積システムを使用してコラーゲン膜を形成した。前記装置の設計は、ロボットのアームが基板表面の経路をたどるようにプログラムすることによって、コラーゲン溶液を様々な基板上に提供することが可能となる。ロボットのアームは、溶液をディスペンスする外部の注射器ポンプに接続された使い捨て式の注射器針を支持する。注射器針の先端は湾曲しており、排出された流体は目標の表面に対して平行に放出される(図13)。流体とロボットが互いに反対方向に移動することによって、注射器から排出された流体において延伸流成分が形成される。前記延伸流は、圧力駆動流と相まって、堆積中に、コラーゲン分子を配向させるための大きなせん断力を提供する。
【0051】
前記流れ及び堆積は、特注のLabView(National Instruments)プログラムによって制御される。流体堆積は、基板速度(substrate velocity)の、注射器のノズルから排出された流体速度(fluid velocity)に対する比率である延伸比(D=vr/vf)によって制御される。流体の平均速度は、針オリフィス半径がRとして与えられた場合の、注射器ポンプの既知の体積流量Qから計算される。流体の平均速度は次の式から計算することができる。
【0052】
【数1】
【0053】
前記ロボットの堆積速度Vrは、20mm/s〜100mm/sに調節される。注射器針のオリフィスサイズは、様々な針サイズ、すなわち18〜27ゲージ(0.84〜0.19mmの内径)を使用することによって調節することができる。用いられるコラーゲンの流量は、0.05〜0.5ml/分の範囲である。最も多くの場合、22ゲージの針を使用して、高濃度コラーゲン溶液の粘度に最も一致する膜を形成する。22ゲージの針を使用した0.3ml/分の流量(flow rate)と、100mm/秒のロボット速度(robot speed)とによって、2.4の延伸比(draw ratio)が得られる。
【0054】
注射器針からの流れを計算するための方法の例は、次の通りである。22ゲージの注射器針の内径を、0.394mm(半径0.197mm)と仮定する。
平均速度=流量/面積=(0.3mL/分)/(π×(0.197mm)2)
流量=0.3mL/分×(1分/60秒)×(1L/1000mL)×(1m3/1000L)=0.000000005m3/秒
面積=3.14159×(0.000197メートル)2
平均速度=0.041m/秒(41mm/秒)
ロボット速度=100mm/秒
延伸比=(100mm/秒)/(41mm/秒)=2.438
ロボット速度が100mm/秒で一定の場合
流量(fluid flow)が0.5mL/分であれば、延伸比は1.46であり、
流量が0.05mL/分であれば、延伸比は14.6である。
【0055】
使用前に、コラーゲンの凝集体の数を減少させるために、コラーゲン溶液のアリコートを4℃で超音波処理する。この手法は、コラーゲン分子の三重らせん構造を破壊しないことが分かっている。超音波処理は、10分間隔で行われる2回の10分間の超音波パルスによって行う。コラーゲン溶液を、制御された流動条件下でガラス基板上に堆積させた後、大気条件下で乾燥させる。原線維及び繊維の形成を防止するために、全ての処理を通じて、前記溶液内は酸性条件を維持する。
【0056】
前記溶液を乾燥させると、接触面積が同一に維持されたままで、前記溶液の濃度が上昇する。この急速な溶液減少は、15分未満で行われる。細胞培養を無菌に維持するために、器具全体は層流フード内に入れられる。乾燥させた後、光学顕微鏡(Nikon TE300)上の直交偏光板間で、前記サンプルを検査する。
【0057】
細胞培養
【0058】
ヒト線維芽細胞(ATCC CRL-2091)をDMEM培地内の基材上で培養する。前記培地には、0.1%FBS、0.01%の100倍のペニシリン/ストレプトアビジン、0.01%の100倍のグルタミン、0.01%のMEN非必須アミノ酸、及び、0.01%の100倍のピルビン酸ナトリウムが添加されている。線維芽細胞を約10,000個/mlの密度で撒き、37℃、5%CO2下で12〜48時間培養した。線維芽細胞を、1倍のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)内の10%のホルムアルデヒド溶液内に10分間固定した。Nikon TE300顕微鏡を使用し、10倍の位相コントラスト対物レンズを使用して画像を取得した。
【0059】
顕微鏡法
【0060】
コラーゲン膜に対する原子間力顕微鏡法は、Veeco Multimode AFMを使用して、ナノセンサーチップ(PPP-BSI)を用いたタッピングモードで0.1N/mの公称力定数及び28kHzの共振周波数で行うか、あるいは、Tap300Alチップ(Budget Sensors Tap300Al)を用いたタッピングモードで40nM/mの公称力定数及び300kHzの共振周波数で行った。走査は、0.5〜2Hzで行った。
【0061】
線維芽細胞のアクチン繊維の蛍光画像化のために、線維芽細胞をAlex Fluor 488ファロイジン(Invitrogen)で染色した。染色の手順は次の通りである。培養基を吸引し、プレートをPBSで1回洗浄し、PBS内で3%ホルムアルデヒドで10分間固定する。線維芽細胞を、PBS内で1%のトリトン溶液で10分間透過処理した後、PBS内で0.1%のトリトン溶液で2回洗浄する。その後、前記プレートに、1倍のPBS内の5%のウマ血清及び0.1%のトリトンからなる阻害緩衝液を20分間加える。前記蛍光染料を前記阻害緩衝液内に分散させた後、前記プレート上に1時間セットする。前記プレートを、PBS溶液内の0.1%トリトン内で3回洗浄し、Vectashield(Vector Laboratories)及びスライドガラスに載置し、使用するまで暗闇で〜20℃で貯蔵する。蛍光染料を水銀ランプによってNikon Microphot及びPentamax cooled CCDカメラ上に励起し、Metamorph Softwareによって画像を記録する。蛍光画像の疑似着色をAdobe Photoshopを使用して行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配向されたコラーゲンゲルを作製する方法であって、
繊維形成を誘導すべく、堆積装置によって或る濃度のコラーゲンを基材上に堆積させる堆積ステップを含み、
前記堆積ステップ中は、前記堆積装置によって或る堆積速度をもって堆積させると共に、前記或る濃度のコラーゲンを或る供給速度をもって供給し、
前記堆積速度及び供給速度は、両方とも0より大きく、かつ、移動方向が互いに逆方向であり、
前記堆積ステップが少なくともpH5の緩衝液下で行われ、
前記堆積ステップによって前記繊維形成中に前記或る濃度のコラーゲンに対してせん断力及び延伸力の両方を加えるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記堆積速度が少なくとも100mm/秒であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記供給速度が少なくとも0.3mL/分であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記堆積速度の前記供給速度に対する比が、0より大きい値であり、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4である延伸比と定義されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記コラーゲンの濃度が、少なくとも3mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも20mg/ml、または少なくとも40mg/mlであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記堆積ステップが、少なくともpH7の緩衝液下で行われることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記配向されたコラーゲンゲルの前記コラーゲン繊維が、67nmまたは約67nmのD周期性を有することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記堆積ステップすなわち繊維形成誘導が、前記或る濃度のコラーゲンに対して磁界を加えることなく行われることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記堆積ステップが生理的温度下で行われることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記堆積ステップの前に、前記基材上にコラーゲンのコーティングを形成するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
前記配向されたコラーゲンゲルが、薬物送達装置または組織再生システムとして使用されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、
前記配向されたコラーゲンゲルを引っ張るかまたは伸張させるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
配向されたコラーゲンゲルを作製する方法であって、
繊維形成を誘導すべく、堆積装置によって或る濃度のコラーゲンを基材上に堆積させる堆積ステップを含み、
前記堆積ステップ中は、前記堆積装置によって或る堆積速度をもって堆積させると共に、前記或る濃度のコラーゲンを或る供給速度をもって供給し、
前記堆積速度及び供給速度は、両方とも0より大きく、かつ、移動方向が互いに逆方向であり、
前記堆積ステップが少なくともpH5の緩衝液下で行われ、
前記堆積ステップによって前記繊維形成中に前記或る濃度のコラーゲンに対してせん断力及び延伸力の両方を加えるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記堆積速度が少なくとも100mm/秒であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記供給速度が少なくとも0.3mL/分であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記堆積速度の前記供給速度に対する比が、0より大きい値であり、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4である延伸比と定義されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記コラーゲンの濃度が、少なくとも3mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも20mg/ml、または少なくとも40mg/mlであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記堆積ステップが、少なくともpH7の緩衝液下で行われることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記配向されたコラーゲンゲルの前記コラーゲン繊維が、67nmまたは約67nmのD周期性を有することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記堆積ステップすなわち繊維形成誘導が、前記或る濃度のコラーゲンに対して磁界を加えることなく行われることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記堆積ステップが生理的温度下で行われることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記堆積ステップの前に、前記基材上にコラーゲンのコーティングを形成するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
前記配向されたコラーゲンゲルが、薬物送達装置または組織再生システムとして使用されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、
前記配向されたコラーゲンゲルを引っ張るかまたは伸張させるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−519537(P2012−519537A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552942(P2011−552942)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/000653
【国際公開番号】WO2010/101639
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(503115205)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (69)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/000653
【国際公開番号】WO2010/101639
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(503115205)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (69)
【Fターム(参考)】
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