説明

配管の接続構造および配管の接続方法

【課題】 軽量で設置作業性に優れ、高圧流体を輸送した場合においても継手部に十分な耐圧性を確保し、配管外周に傷がつく等の問題も生じることがない配管の接続構造等を提供する。
【解決手段】 接続部固定短管9の配管5との接続部とは反対側の端部には、樹脂短管13が接合される。樹脂短管13の接続部固定短管9との接合部とは反対側の端部は、電気融着ソケット11に挿入される。接続部固定短管9の外周に設けられた一対の山部21の間には、固定治具8としてフランジ部15が設けられる。電気融着ソケット9を挟むように形成された一対のフランジ部15には、互いを連結する連結棒17が設けられる。連結棒17は、フランジ部15同士を連結し、フランジ部15同士が所定距離以上離れることがない。すなわち、フランジ部15は、配管5の軸方向に対しての変位が規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は上下水道配管、トンネル消火配管、消火配管、工場配管、融雪用配管等に用いられる送配水用の配管の接続構造および接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、送配水を行う配管には、樹脂製の配管が使用される。樹脂製の配管は、例えば鋼管等と比較して軽量であるとともに、長尺のものが使用できるため、接続部を減らすことができる。
【0003】
樹脂配管同士の接続方法としては、両樹脂管端部をヒーターで暖め、圧力を加えることにより接続するバット融着がある。バット融着は、継手を使用しないため、コスト面では優れるものの、バット融着用の機器類が大掛かりとなり、作業スペースの制限等が生じる場合がある。
【0004】
また、他の簡易な樹脂配管の接続方法として、電気融着ソケット(継手)を用いる方法がある。樹脂配管の端部を両側方から電気融着ソケットに挿入し、電気融着ソケットに電流を流すことで、熟練等を要せず、確実に樹脂配管を接続することができる。
【0005】
一方、樹脂配管内部に高圧流体を流す場合には、樹脂配管のみではなく接続部の耐圧性が要求される。特に、電気融着ソケットを用いた場合には、電気融着ソケットの径方向および軸方向に応力が生じる。このため、内部の高圧流体による圧力に耐えうる接続構造が要求される。
【0006】
このような樹脂配管の接続構造としては、電気融着を用いた接続構造であって、継手管の両端部外側にロックリングを嵌合させ、ロックリングの外周に継手管から離れるにつれて外径が小さくなるテーパ面を形成し、ロックリングの外周に環状のフランジが内周のテーパ面を当接するように嵌合させた継手構造がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−40443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような継手構造は、配管が継手の軸方向に伸びようとする力が生じた際に、ロックリングが配管外周に狭圧するため、ロックリングによって配管外周を傷つける恐れがある。このため、長期にわたる配管の使用において、信頼性に問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、軽量で設置作業性に優れ、高圧流体を輸送した場合においても継手部に十分な耐圧性を確保し、配管外周に傷がつく等の問題も生じることがない配管の接続構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達するために第1の発明は、配管の接続構造であって、樹脂配管と、前記樹脂配管の端部に設けられる接続部固定短管と、前記接続部固定短管の端部が挿入される電気融着ソケットと、を具備し、前記樹脂配管と前記接続部固定短管、および、前記接続部固定短管と前記電気融着ソケットはそれぞれ融着接合されており、少なくとも前記樹脂配管および前記電気融着ソケットの外周部には接続部の径方向への膨張を抑える補強層が設けられ、前記接続部固定短管に設けられる固定治具によって、前記電気融着ソケットに対して前記接続部固定短管が軸方向に固定されていることを特徴とする配管の接続構造である。
【0011】
ここで、前記接続部固定短管の端部が挿入される電気融着ソケットとは、接続部固定短管自体の端部のみではなく、接続部固定短管に接合されて一体化された管体の端部も含むものである。
【0012】
一対の樹脂配管が対向し、対向するそれぞれの前記樹脂配管の端部に前記接続部固定短管が設けられ、対向する前記接続部固定短管の端部同士が前記電気融着ソケットに挿入されて融着され、固定治具によって、前記電気融着ソケットをまたいで、前記接続部固定短管同士が連結されてもよい。
【0013】
前記接続部固定短管の外周部には、径方向に突出する少なくとも一つ以上の山部が設けられ、前記固定治具は、前記山部によって前記接続部固定短管の軸方向の動きが規制されるフランジ部と、前記融着ソケットをまたいで対向するそれぞれの前記フランジ部同士を連結する連結棒と、を有してもよい。ここで、山部は軸方向に一対並列して設け、フランジ部を山部で挟み込んで設けるのが良い。
【0014】
前記接続部固定短管の外周部には、径方向に突出する少なくとも一対の山部が設けられ、前記フランジ部は、前記一対の山部の間に設けられて前記接続部固定短管の軸方向の動きが規制されてもよい。
【0015】
前記接続部固定短管の樹脂配管と接合される側と反対側の端部には、さらに樹脂短管が接続され、前記接続部固定短管の端部に接合された前記樹脂短管の端部が前記電気融着ソケットに挿入され、前記接続部固定短管と前記電気融着ソッケトを融着する代わりに、前記樹脂短管と前記電気融着ソケットとが融着接合されてもよい。
【0016】
前記樹脂配管はポリエチレン製であり、前記接続部固定短管はISO TR 9080に規定する外挿方法及びISO 12162に規定する分類表でPE100に分類される高密度ポリエチレンであり、前記補強層はポリアリレート繊維で形成されてもよいが、前記樹脂配管は、ポリエチレンと同等の強度を有するものであれば、他の材料を用いても良い。また、ポリアリレート繊維の代わりにアラミド繊維を用いることができる。
【0017】
第1の発明によれば、樹脂配管の端部に接続部固定短管が設けられ、接続部固定短管に設けられる固定治具によって、接続部固定短管の軸方向への変位を規制することにより、接続部における内圧に伴う軸方向への伸長を抑えることができる。また、径方向に対しては、少なくとも樹脂配管および電気融着ソケットの外周部に補強層を設けることで、接続部の径方向への膨張を抑えることができる。
【0018】
また、電気融着ソケットの両端部に配置された接続部固定短管同士を、固定治具によって連結することで、それぞれの接続部固定短管同士の距離が一定に保たれ、軸方向への移動を規制することができる。
【0019】
また、接続部固定短管の外周部に径方向に突出する山部を形成し、山部によってフランジ部の軸方向の動作を規制し、電気融着ソケット両側部のそれぞれのフランジ部同士を連結することで、接続部固定短管の軸方向への移動を規制することができる。山部を軸方向に一対並列して設け、フランジ部を山部で挟み込むことで、接続部固定短管の軸方向に対して、確実にフランジ部の動作を規制することができる。
【0020】
また、接続部固定短管の端部にさらに樹脂短管を接続することで、電気融着ソケットとの接合部を樹脂短管とすることができるため、接続固定短管を小さくすることができる。
【0021】
また、樹脂配管をポリエチレン製とし、接続部固定短管としてISO TR 9080に規定する外挿方法及びISO 12162に規定する分類表でPE100に分類される高密度ポリエチレンを用いれば、接続部固定短管自体の強度を十分に確保でき、また、補強層としてポリアリレート繊維製の補強テープを用いれば、樹脂配管および電気融着ソケットの径方向の強度を十分に確保することができる。
【0022】
第2の発明は、外周に補強層を有する樹脂配管の端部に接続部固定短管をバット融着接合により接合し、前記樹脂配管を敷設後、端部に前記接続部固定短管が設けられた前記樹脂配管同士を対向させ、対向する前記接続部固定短管の端部を外周に補強層を有する電気融着ソケットに挿入し、対向する前記接続部固定短管同士を前記電気融着ソケットにより接合し、それぞれの前記接続部固定短管に固定治具を設け、前記固定治具によって、前記電気融着ソケットをまたいで、前記接続部固定短管同士を連結することを特徴とする配管の接続方法である。
この接続方法を用いることにより、配管接続部に働く、軸方向および径方向の応力を制御して、配管の軸方向の伸びや収縮などの変位を抑え、さらに電気融着ソケットの外周部に設けた補強層により、接続部の径方向の変形をも抑えることができる。
【0023】
第2の発明によれば、配管の敷設作業が容易であり、高圧流体にも耐えうる強度を具備する接続構造を容易に構築することができる。このため、作業スペースが十分な場所でバット融着により、各樹脂配管を形成し、それぞれの樹脂配管を敷設位置に敷設後、電気融着ソケットを用いて確実に配管を接続することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、軽量で設置作業性に優れ、高圧流体を輸送した場合においても継手部に十分な耐圧性を確保し、配管外周に傷がつく等の問題も生じることがない配管の接続構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】配管構造1を示す図。
【図2】図1のA部拡大図であり、(a)は接続部7を示す拡大図、(b)は(a)の軸方向の断面図。
【図3】図2(a)のB−B線断面図。
【図4】図2(a)のC−C線断面図。
【図5】図2(a)のD−D線断面図。
【図6】配管敷設工程を示す図。
【図7】配管の接続工程を示す図。
【図8】配管の接続工程を示す図。
【図9】他の実施形態の接続構造を示す図。
【図10】他の実施形態の接続構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、配管構造1の一例を示す立面図である。配管構造1は、送配水用に用いられる複数の樹脂製の配管5が所定部位で接続されて敷設されたものである。
【0027】
図1に示す例では、配管構造1は、橋梁3に沿って敷設される送水配管である。配管5は、工場であらかじめ所定長さで製造されており、敷設する際には、接続部7によって複数の配管5が接続されて使用される。なお、本発明の配管構造としては、橋梁3に用いられる送水配管に限られず、道路下や線路脇等に配置される上下水道配管や消火配管、トンネルに配置されるトンネル消火配管や、工場配管等のように、内部に水などの液体や気体を含む流体が流れる配管であれば、各種態様に適用できることは言うまでもない。なお、以下の説明では、配管構造を橋梁3に敷設する場合について説明する。
【0028】
図2は、図1のA部を示す図であり、図2(a)は接続部7の拡大図、図2(b)は接続部7の軸方向の断面図である。図2(a)に示すように、接続部7は、主に、接続部固定短管9、樹脂短管13、電気融着ソケット11、固定治具8等から構成される。
【0029】
配管5は、例えばポリエチレン製である。対向して設けられた一対の配管5のそれぞれの端部には、接続部固定短管9が接続される。配管5と接続部固定短管9とは、例えばバット融着によって接続される。接続部固定短管9は、ISO TR 9080に規定する外挿方法及びISO 12162に規定する分類表でPE100に分類される高密度ポリエチレンであることが望ましい。
【0030】
接続部固定短管9は、射出成型や樹脂ブロックからの削り出し等により形成される。接続部固定短管9は、配管5の内径に応じた内径を有する管体であり、外周部に径方向に突出する山部21を有する。山部21は、接続部固定短管9の軸方向(配管5の軸方向)に一対並列して形成される。
【0031】
接続部固定短管9の配管5との接続部とは反対側の端部には、樹脂短管13が接合される。接続部固定短管9と樹脂短管13との間の接合は、例えばバット融着で接続される。樹脂短管13は、例えば配管5と同一断面のポリエチレン管であり、後述する電気融着ソケットへの挿入代よりもやや長い長さの短管である。なお、接続部固定短管9の端部を延長して形成し、接続部固定短管9の端部の形状を樹脂短管13と一体化した形状とすれば、樹脂短管13は必ずしも必要ではない。
【0032】
樹脂短管13の接続部固定短管9との接合部とは反対側の端部は、電気融着ソケット11に挿入される。すなわち、電気融着ソケット11の両側より、樹脂短管13の端部が挿入される。なお、樹脂短管13を用いずに、一体で接続部固定短管9を形成する場合には、接続部固定短管9の配管5との接続部とは反対側の端部が電気融着ソケット11に直接挿入される。以下の説明においては、樹脂短管13を用いる場合について説明する。
【0033】
電気融着ソケット11は、いわゆるEF継手(Electro Fusion継手)であり、電気継手に埋め込まれた電熱線に通電することにより発熱させ、電気融着ソケット11と挿入された樹脂短管13の界面を溶かし、一体化させて接合するものである。すなわち、樹脂短管13の端部と電気融着ソケット11は、電気融着によって接続される。なお、電気融着ソケット11のターミナル、配線および電源等は図示を省略する。
【0034】
接続部固定短管9の外周に設けられた一対の山部21の間には、固定治具8としてフランジ部15が設けられる。図2(b)に示すように、フランジ部15は、中心部に切り欠き(孔)が形成され、接続部固定短管9の外周であって、一対の山部21によって挟まれるように形成される。すなわち、電気融着ソケット11を挟んで両側方に設けられたそれぞれの接続部固定短管9には、フランジ部15が対向するように形成される。なお、フランジ部15は山部21よりも外径が大きい。
【0035】
電気融着ソケット9を挟むように形成された一対のフランジ部15には、互いを連結する連結棒17が設けられる。固定治具8の一部である連結棒17は、フランジ部15同士を連結し、フランジ部15同士が所定距離以上離れることがない。すなわち、フランジ部15は、配管5の軸方向に対しての変位が規制される。
【0036】
図3は、図2(a)のB−B線断面図である。図3に示すように、フランジ部15は、一対の半割り形状の部材より構成される。半割り部材の一部には、前述したように接続部固定短管9の外周(山部21の間の外周部)に嵌るように半円状の切り欠きが形成される。半円状の半割り部材を両端の接合部23により、例えばボルト等で接合され、リング状のフランジ部15が構成される。
なお、別体で形成した半割り部材を、接続部固定短管に固定する構成としたが、フランジを接続部固定短管に一体成形することもできる。この場合、フランジは一対の凸部間に、それぞれリング状に一体成形されることはもちろんである。
【0037】
連結棒17は、フランジ部15の対向する位置に一対形成される。連結棒17の両端部は雄ねじ形状であり、フランジ部15と例えばナット等で固定される。なお、連結棒17の配置および本数や、接合部23の構造、連結棒17とフランジ部15との接合方法等は、図示した例には限られない。たとえば、連結棒17は、周方向に等間隔に3本以上形成してもよく、また、それぞれの接合には溶接等を適用することもできる。
【0038】
図4は、図2(a)のC−C線断面図である。図4に示すように、配管5の外周には、補強層19が設けられる。補強層19は、たとえばポリアリレート繊維のテープが巻きつけられる。補強層19としては、たとえば、スーパ繊維製のテープであるクラレ社製のベクトラン(登録商標)を使用することができる。なお、ポリアリレート繊維製テープの巻き付けは、例えば、テープ幅方向の端部同士をラップさせるように巻きつけてもよく、または、多少のギャップを設けて巻きつけてもよい。また、ポリアリレート繊維製テープを正逆2重に巻きつけるなど、複数回巻きつけて補強層19を形成してもよい。なお、ポリアリレート繊維製テープの巻き付け方法は、ポリアリレート繊維製テープの強度や必要とされる耐内圧に応じて適宜決定される。
【0039】
図5は、図2(a)のD−D線断面図である。図5に示すように、電気融着ソケット11の外周にも補強層19が設けられる。また、図2(a)に示すように、樹脂短管13の電気融着ソケット11内へ挿入されず露出した部位にも、同様に補強層19が形成される。なお、樹脂短管13の電気融着ソケット11内へ挿入される部位には、補強層19は設けられない。
【0040】
補強層19は、配管内に高圧の流体を流した際に、配管等の径方向への変形や破損を防止するため、耐内圧性を向上するためのものである。補強層19を設けることで、配管5、樹脂短管13、電気融着ソケット11の耐内圧特性を向上することができ、高圧流体にも適用することができる。なお、図示を省略するが、補強層19の外周に、さらに防水テープや保護テープ等を巻きつけてもよい。また、接続部固定短管9は十分な強度を有していれば、補強層19を設ける必要はないが、接続部固定短管9の外周にも補強層19を形成してもよい。
【0041】
次に、配管構造の敷設方法(配管の接続方法)について説明する。図6は、橋梁3に対して配管5を敷設する工程を示す図である。配管5を長距離に敷設する場合には、配管5を接続しながら敷設する必要がある。しかしながら、前述したように、バット融着による方法は、使用機器が大型であり、移動しながら狭い部位において配管同士を接続することは困難である。また、所定の作業エリアにおいてバット融着によって配管を接続しながら配管を敷設するのは、配管重量が重くなり、配管自体の移動が困難となる。
【0042】
したがって、本発明においては、図6における作業エリアEにおいて、バット融着機を配置し、作業エリアEにおいては管移動が可能なように、配管同士数本から数十本の接続を行い、配管5の端部に接続部固定短管9および樹脂短管13を融着させるか、もしくは配管同士の接続は行わず、配管5の端部に接続部固定短管9および樹脂短管13のみを融着させる。まず、前方(図中左側)の端部に接続部固定短管9および樹脂短管13が接続された配管5を、敷設方向に向けて移動させる(図中矢印F方向)。この際、配管5が移動できる重量となるような本数とする。
【0043】
なお、前方側に移動された配管5の後端部にも同様に接続部固定短管9および樹脂短管13のみを融着させる。以上を繰り返して、先後端に接続部固定短管9および樹脂短管13がそれぞれ接合された配管5が、それぞれの敷設位置まで移動して配置される。なお、配管5にはあらかじめ補強層19が設けられる。
【0044】
次に、所定位置に配置されたそれぞれの配管5同士を接続する。まず、図7(a)に示すように、対向する一対の樹脂短管13の端部を電気融着ソケット11に挿入する(図中矢印G方向)。電気融着ソケット11の両側方から樹脂短管13が挿入された状態で(図7(b))、電気融着ソケット11に通電し、電気融着ソケット11と樹脂短管13とを融着する。なお、この際、電気融着ソケット11内部で、樹脂短管13の端部同士が完全に当接する必要はない。
【0045】
次に、図8(a)に示すように、外部に露出した樹脂短管13および電気融着ソケット11の外周に補強層19を形成し、接続部固定短管9にフランジ部15を固定する。フランジ部15は、前述の通り、半割り状態の部材を接続部固定短管9の両側より挟みこみ(図中矢印H方向)、接合部23により一体化される。山部21の間隔に対して、フランジ部15の厚さは略同一か、またはやや薄い。このため、フランジ部15は、接続部固定短管9に対して軸方向の移動が規制される。
【0046】
次に、図8(b)に示すように、連結棒17によって、一対のフランジ部15が連結される。連結棒17によって、フランジ部15同士の距離変化が規制される。すなわち、フランジ部15同士の距離を広げようとする力(または縮めようとする力)に対抗して、フランジ部15同士の距離を略一定に保つことができる。このため、電気融着ソケット11における軸方向の変形および破損を防止することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の接続部7等によれば、敷設作業性に優れ、高圧流体への適用も可能な配管構造を得ることができる。特に、長距離にわたる配管の敷設や、狭隘な場所での作業において、バット融着による配管接続を行うことがないため、接続作業性に優れる。
【0048】
接続部においては、樹脂短管13および電気融着ソケット11の外周に補強層19を形成するため、高圧流体の利用に対しても、径方向への変形や破損の発生を防止することができる。なお、接続部固定短管9はPE100などの高強度部材を用い、径方向に対しても補強するため、樹脂配管13と同様、アリレート繊維などの補強層を設けてもよい。
【0049】
また、接続部固定短管9に設けられた、固定治具であるフランジ部15同士を、電気融着ソケット11をまたぐように連結棒17で連結するため、フランジ部15同士の距離が一定に保たれる。また、フランジ部15と接続部固定短管9とが軸方向に対して変位が規制されているため、連結棒17によって、電気融着ソケット11の軸方向への変形および破損を防止することができる。
【0050】
すなわち、内部に高圧流体が存在する場合においても、接続部7は、径方向および軸方向に対して耐内圧特性に優れ、このため、接続部の破損や漏れ等を防止することができる。また、接続作業が簡易であるとともに、バット融着のように特殊な機器を用いる必要がない。さらに、接続部において配管等に傷をつけることがないため信頼性に優れた配管構造を提供することができる。
【0051】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0052】
たとえば、図9に示すように、配管構造の端部においては、既設の配管等と敷設した樹脂製の配管5とが接続される。この場合、既設のフランジ付き配管29は、構造体その他に固定されており、軸方向に移動することがない。特に道路の散水融雪設備用の配管にポリエチレン管を用いた場合、管が長手方向に伸縮すると散水ノズルの角度が変化してしまう恐れがあることから、散水融雪設備用配管としてポリエチレン管を用いる場合にはこのような軸方向移動を固定することが望ましい。このような例では、固定時効具としての連結棒17を用いずに、固定治具であるフランジ部15(またはこれと同一機能を有する部材)を接続部固定短管9に接合し、フランジ部15を固定部25(構造体や地面等)に固定すればよい。図9では、フランジ部15の片側を固定しているが、フランジ部15の両側を固定する方が望ましい。図9では、フランジ部15を電気融着ソケットの片側に設けたが、両側に設けても良い。
【0053】
また、既設配管側は、フランジ付き樹脂短管27を電気融着ソケット11に挿入して接合し、フランジ付き樹脂短管27とフランジ付き配管29とをフランジで接合する。この際、必要に応じて、フランジ付き樹脂短管27の外周等に補強層19を設ける。
【0054】
以上により、電気融着ソケット11の一方の側が、フランジ部15(接続部固定短管9)と固定部25との固定により接続部固定短管9の軸方向への移動が規制される。また、他方の側は、他の手段により固定された既設配管(フランジ付き配管29)の位置が固定されているため、電気融着ソケット11の軸方向への変形や破損等を防止することができる。
【0055】
また、図10に示すように、接続部固定短管9の山部21を一か所として、接続された状態で山部21の両外方(電気融着ソケット11側とは反対方向)に山部21の外面側と接触するようにフランジ部15を形成してもよい。図示しないが、接続部固定短管9の山部21を一か所として、接続された状態で山部21の両内方(山部に対して電気融着ソケット11側の方向)に山部21の内面側と接触するようにフランジ部15を形成してもよい。ここで、フランジ部15を山部の外方に設けるか、内方に設けるかは、配管接続部の設定場所の使用環境に合わせて、適宜選択すればよいが、電気融着ソケット11が配管から張力を受ける場合は、フランジ部15を山部の両外方に設け、電気融着ソケット11が配管から圧縮力を受ける場合は、両内方に設ければよい。このように、すれば、樹脂配管の収縮や伸びによる継ぎ手部の変形を抑えることができる。
【符号の説明】
【0056】
1………配管構造
3………橋梁
5………配管
7………接続部
8………固定治具
9………接続部固定短管
11………電気融着ソケット
13………樹脂短管
15………フランジ部
17………連結棒
19………補強層
21………山部
23………接合部
25………固定部
27………フランジ付き樹脂短管
29………フランジ付き配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の接続構造であって、
樹脂配管と、
前記樹脂配管の端部に設けられる接続部固定短管と、
前記接続部固定短管の端部が挿入される電気融着ソケットと、
を具備し、
前記樹脂配管と前記接続部固定短管、および、前記接続部固定短管と前記電気融着ソケットはそれぞれ融着接合されており、
少なくとも前記樹脂配管および前記電気融着ソケットの外周部には接続部の径方向への膨張を抑える補強層が設けられ、
前記接続部固定短管に設けられる固定治具によって、前記電気融着ソケットに対して前記接続部固定短管が軸方向に固定されていることを特徴とする配管の接続構造。
【請求項2】
一対の樹脂配管が対向し、対向するそれぞれの前記樹脂配管の端部に前記接続部固定短管が設けられ、対向する前記接続部固定短管の端部同士が前記電気融着ソケットに挿入されて融着され、
固定治具によって、前記電気融着ソケットをまたいで、前記接続部固定短管同士が連結されていることを特徴とする請求項1記載の配管の接続構造。
【請求項3】
前記接続部固定短管の外周部には、径方向に突出する少なくとも一つ以上の山部が設けられ、
前記固定治具は、前記山部によって前記接続部固定短管の軸方向の動きが規制されるフランジ部と、
前記融着ソケットをまたいで対向するそれぞれの前記フランジ部同士を連結する連結棒と、を有することを特徴とする請求項2記載の配管の接続構造。
【請求項4】
前記接続部固定短管の外周部には、径方向に突出する少なくとも一対の山部が設けられ、
前記フランジ部は、前記一対の山部の間に設けられて前記接続部固定短管の軸方向の動きが規制されることを特徴とする請求項3記載の配管の接続構造。
【請求項5】
前記接続部固定短管の樹脂配管と接合される側と反対側の端部には、さらに樹脂短管が接続され、前記接続部固定短管の端部に接合された前記樹脂短管の端部が前記電気融着ソケットに挿入され、前記接続部固定短管と前記電気融着ソッケトを融着する代わりに、前記樹脂短管と前記電気融着ソケットとが融着接合されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の配管の接続構造。
【請求項6】
前記樹脂配管はポリエチレン製であり、前記接続部固定短管はISO TR 9080に規定する外挿方法及びISO 12162に規定する分類表でPE100に分類される高密度ポリエチレンであり、前記補強層はポリアリレート繊維で形成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の配管の接続構造。
【請求項7】
外周に補強層を有する樹脂配管の端部に接続部固定短管をバット融着接合により接合し、
前記樹脂配管を敷設後、端部に前記接続部固定短管が設けられた前記樹脂配管同士を対向させ、対向する前記接続部固定短管の端部を外周に補強層を有する電気融着ソケットに挿入し、対向する前記接続部固定短管同士を前記電気融着ソケットにより接合し、
それぞれの前記接続部固定短管に固定治具を設け、
前記固定治具によって、前記電気融着ソケットをまたいで、前記接続部固定短管同士を連結することを特徴とする配管の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−163524(P2011−163524A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29917(P2010−29917)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】