説明

酵素混合物

【課題】穀類を主原料とする飼料、および、例えば、特にオオムギとコムギの含量が高い飼料の特徴は、飼料成分(澱粉、脂肪、タンパク質/アミノ酸)の消化が悪いことである。
【解決手段】本発明者らは、ペニシリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum)という分類に属する新規の微生物で、主には、穀類を主原料とする飼料の消化性をうまく向上させるために利用できるような、新規の酵素及び酵素活性の混合物を含む微生物を発見開発した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の微生物、新規の酵素、および新規の酵素混合物に関する。さらに、本発明は、酵素混合物の組成物、その調製物、ならびに飼料、食品、およびその他、製紙産業および繊維産業などを含むが、これらに限定されない産業におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素は、長い間、さまざまな産業に応用するために用いられてきた。実例は、製パン業や、酒造業および果汁産業(ペクチンやβ−グルカンを破壊するために酵素が用いられる)、繊維産業(柔らかで滑らかなセルロース繊維を得るためにセルロースを用いる)において知られているが、動物の飼料にも少なからず利用されている。この場合、酵素は、植物性の原料の消化性を向上させる。
【0003】
この後者の使用法によって、家畜は、飼料をより有効に消化することができるようになる。飼料の有効性は、動物の体重増加に対する飼料消費量の栄養比である、FCR(飼料転換比率)によって測定することができる。ある飼料についてFCRが減少したとすると、所定の飼料量について、動物がより多くの体重を比例して得たことを示している。すなわち、動物は、より有効に飼料を利用できることを示している。
【0004】
飼料成分(澱粉、脂肪、タンパク質/アミノ酸)の消化性が悪いことが、穀類を主原料とする飼料、および、例えば、特に、オオムギとコムギの含量が高い飼料の顕著な特徴である。これらの場合、別の材料から高レベルのエネルギーや、アミノ酸などの別の栄養補助食品を含むように飼料を処方する必要があろう。これらの酵素は、飼料に取り込まれた穀類の見かけの代謝可能なエネルギー利用値を増加させる。
【0005】
この問題を解決するためのもう1つの方法は、セルラーゼ、エンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ(β−グルカナーゼ)、エンド−1,4−β−キシラナーゼ(キシラナーゼ)など、または、酵素活性の混合物などの酵素補給剤を、これらの穀類主原料とする飼料に加えることである。酵素補給剤は、穀類(典型的にはオオムギとコムギ)に見られるβ−グルカンまたはアラビノキシランを加水分解するときに特異的に使用することができる。酵素を加えることには、さまざまな目的がある。飼料酵素補給剤の効能を明らかに証明する利点の1つは、適当な酵素補給剤を含む、穀類を主原料とする飼料を食べた動物の腸の中で材料の粘度が低下することである。粘度が高くなるのは、部分的には、オオムギとコムギに見られるβ−グルカンおよびアラビノキシランが原因である。酵素作用の結果、粘度が低下すると、動物の腸の中で栄養成分を吸収するのが容易になる。この他の利点は、穀類の細胞壁に捉えられている栄養分を放出させることによって、他の高価な飼料補助食品に対する必要性が減少することである。全体として、結果的に、FCRで測定したときに同じような、または優れた効果をもつ飼料にかかる費用をかなり低減させることになる。
【0006】
さまざまな範囲の微生物に由来する酵素調製物が、飼料の消化性を向上させたことが記載されている。
【0007】
動物飼料における酵素使用に関する先行技術については、シュワニノマイセス・オクシデンタリス(Schwanninomyces occidentalis)に由来するフィターゼの使用について記載のある欧州特許第0,699,762号を挙げることができる。このフィターゼは、本発明では回避するつもりのクローニングされた遺伝子を入れて得られた、遺伝子改変生物から得られたフィターゼである。
【0008】
国際公開公報第95/26398号特許出願によれば、宿主細胞に外来DNA配列を封入して、以下の微生物リストから選ばれた原菌株の性質を改変して、改変セルロースが再び得られる。バシルス(Bacillus)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、アスペルギルス(Aspergillus)属である。本発明において、発明者らの主な目的は、酵素の生産をする微生物に外来遺伝子を組み込むことを避けることであった。
【0009】
国際公開公報第96/05739号特許出願では、さまざまな微生物から酵素混合物(キシラナーゼ、プロテアーゼ、および、選択的にはβ−グルカナーゼ)が得られている。この著者らは、キシラナーゼ活性がβ−グルカナーゼ活性に対して1:5という位数の比率をもつ酵素混合物を実施例として挙げている(5頁)。穀類を主原料とする飼料が、最適な用量レベル、またはそれに近いレベルでキシラナーゼを含んでいるときに、β−グルカナーゼ活性をもつ酵素が共存すると、飼料のFCR値が上昇して、当然ながら不利益なことになる。その結果、著者らは、β−グルカナーゼの存在について注意を促し、キシラナーゼ活性のβ−グルカナーゼ活性に対する最大比率が1:0−0.25になるように勧めている。
【0010】
場合によっては、飼料への応用に関連する酵素活性のすべてが確実に表れるようにするために、1種類以上の微生物からの調製物から製剤を作製する。多くの場合、組換えDNA技術を用いて遺伝子改変を行なった微生物から酵素調製物を得ている。
【0011】
本発明者らは、ペニシリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum)という分類に属する新規の微生物で、主には、穀類を主原料とする飼料の消化性をうまく向上させるために利用できるような、新規の酵素および酵素活性の混合物を含む微生物を発見開発した。
【発明の開示】
【0012】
したがって、本発明は、Penicillium funiculosumに由来する新規の微生物、および、この微生物を培養し、この微生物によって産生される酵素を回収するための方法に関するものである。
【0013】
さらに、本発明によって、この微生物から生み出される新規の酵素、その塩基配列、およびこれらの酵素を含む新規の組成物が提供される。
【0014】
さらに、本発明によって、アミノ酸、穀類を主原料とする飼料およびアミノ酸の消化性を向上させる方法が提供される。
【0015】
本発明のもう1つの目的は、動物を飼育しているケージからのリンおよびアンモニアの排出を減少させることである。
【0016】
(詳細な説明)
A.Penicillium funiculosumの新菌株
菌類であるPenicillium funiculosumの新菌株は、ブタペスト条約(1977)で国際寄託機関として認められている、英国、TW20 9TY、サリー州エグハム、イングルフィールドグリーン、ベイクハムレーンにある国際菌類学研究所(IMI)(the International Mycological Institute (IMI), Bakerham Lane, Englefield Green, Egham, Surrey, TW20 9TY, UK)に、寄託番号IMI 378536として寄託されている。
系統関係
Penicillium funiculosum IMI 134756の胞子を連続的にUVおよびβ線で照射処理して、選択培地でスクリーニングしたところ、新菌株が得られた。外来DNAまたはRNAの組込みを利用する組換えDNA技術による遺伝子改変は行なわれていない。
【0017】
同定と分類
Penicillium funiculosum IMI 378536は、ツザペク−ドックス寒天培地上、25℃で増殖するという特徴をもっている。コロニーの特徴と微小構造は、典型的なPenicillium funiculosumである。この微生物をPenicillium funiculosumであると同定したことは、英国、TW20 9TY、サリー州エグハム、イングルフィールドグリーン、ベイクハムレーンにある国際菌類学研究所で確認されている。増殖は、基底部が固いフェルトのようで、空中では、菌糸がロープか管束のようになって(フニクロース(funiclose))増殖し、菌糸は白く、その下の培地が赤く着色して、縁は逆に青白いが、中心に向かって赤く着色していて、次第に深紅になってゆく。このペニシリウム属は典型的なもので、そのほとんどが、索状で双輪性で針状の分生子産生細胞から生じる短い分生子柄を示し、分生子は楕円形で滑らかである。
【0018】
本発明の酵素調製物を製造するために使用する微生物は、セルロース、トウモロコシの浸出液、炭酸カルシウム、および硫酸アンモニウムを含む培地の中で好気条件下で増殖させる。
【0019】
B.醗酵方法
この新規の菌は、まず、寄託されている菌株を、好ましくは、以下の組成(重量で)からなる植菌用培地上で醗酵させて製造する:
トウモロコシ浸出液 1%から4%
消泡剤 発泡を避けるのに必要なだけ
水 100%まで
水酸化ナトリウム(NaOH) 培地を滅菌する前のpHが約3.0から6.0になるように調整するのに十分な量
インキュベーション温度 27℃から36℃
製造用培地は、好ましくは、以下の組成(重量で)からなる:
トウモロコシ浸出液 0から4.0%
1回分にまとめた養分となるセルロース 0.8から14%
カルシウム塩 0から0.8%
硫酸アンモニウム 0から1.0%
消泡剤 発泡を避けるのに必要なだけ
水 100%にするのに十分な量
水酸化ナトリウム(NaOH) 培地を滅菌する前のpHが約3.0から6.0になるように調整するのに十分な量;
硫酸 HSO pHを約3.0から6.0に維持するのに十分な量;
気体または液体のアンモニア pHを約3.0から6.0に維持するのに十分な量;
インキュベーション温度 27℃から36℃
【0020】
醗酵を行なうためには、醗酵器の中に十分な量の水を入れ、適当に振とうさせている容器の水の中に成分を加え、成分が溶解するまで撹拌する。醗酵器を密封し、一般的には、121℃に温度を上昇させて滅菌する。植菌用醗酵器から醗酵用容器に植菌をする。
【0021】
醗酵過程で加える主要な炭素源はセルロースである。中でも、我々が好んで用いたセルロース源は、さまざまな等級のARBOCEL、SOLKAFLOC、CLAROCEL、ALPHACEL、FIBRACELである。
【0022】
醗酵中のpHは、硫酸または別の酸、または気体状または液状のアンモニアまたは塩基を加えて調整するのが好ましい。
【0023】
発行時間が終わったら、濾過または遠心分離などの固体−液体分離法によって固体を取り除き、液相を集めてから、例えば、有機質または無機質の膜上で限外濾過を行なうなどして濃縮する。
【0024】
これらの酵素は、組換えDNA技術という方法によって、組換えた同種または異種の生物種に産生させて製造することもできる。酵素をコードする遺伝子を導入させるための宿主は、菌類、バクテリア細胞、または植物細胞から選択することができる。プラスミド(組込み型、またはそれ以外の)、ファージベクター、およびウイルスベクターなど、いずれかの従来の技術を用いて、目的とする酵素をコードする遺伝子を宿主細胞に挿入にすることができる。組み込まれた異種由来の遺伝子、または相同な遺伝子の挿入、欠失または改変によって、相同な遺伝子をもつゲノムを改変したものを含むPenicillium funiculosumも本発明の一部をなす。
【0025】
本発明によれば、酵素は、単離精製された酵素調製物として、または、Penicillium funiculosumを増殖させた培養培地などの粗調製物として提供することができる。
【0026】
また、その組成物の目的とする用途に応じた種類のさらに別の酵素を含む組成物の中に、このような酵素を含ませることも可能であろう。添加する酵素は、例えば、カルボヒドラーゼ、リパーゼ、およびプロテアーゼから選択することができる。
【0027】
C.(酵素活性混合物)の組成
1.液体組成物
液体組成物については、抗菌剤を加えた後に、酵素濃度の測定と製品の強度になるよう正確な希釈が行われる。
【0028】
液体溶液の、重量による好ましい組成は以下のとおりである:
全有機固形物としての菌体生産物 4から10%
抗菌剤 0.005から0.35%
好ましくは 0.01から0.25%
ソルビトール 20から50%
最終的な不凍剤 0から40%
より好ましくは 15から40%
濃縮濾過した醗酵培地 0.3から76%
pH 3から5になるよう緩衝調整する。
【0029】
抗菌剤は、ソルビン酸とその塩、安息香酸とその塩、メチル4−ヒドロキシ安息香酸とn−プロピル4−ヒドロキシ安息香酸、フマル酸、塩類およびエステルなどの製品から選択される。塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの塩類を用いることもできよう。
【0030】
もっとも好ましい不凍剤は、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール、グリセロールである。
【0031】
2.粉末組成物
粉末組成物については、得られた濃縮溶液を、担体存在下で最終的に乾燥させる。担体を入れないで濃縮溶液を乾燥させた後に得られた粉末を、さらに、適当な担体と混合することもできる。
【0032】
好ましい粉末状の組成物は以下の通りである:
全有機固形物としての菌体生産物 16%から40%
担体 59%から83%
その他の乾燥した醗酵培地成分 1%
好ましい担体は、小麦粉、澱粉、石膏、マルトデキストリン、トウモロコシ固形物、また、トウモロコシの挽割粉、小麦シャープス、小麦ふすま、ライムギのくず殻、無機物の混合物など、穀物処理から得られる副生産物から選択する。
【0033】
【数1】

【0034】
D.酵素の特徴
発明者らは、Penicillium funiculosumによって産生される新規の酵素混合物を得た。この酵素混合物には、セルラーゼ、β−グルカナーゼ、キシラナーゼ、および、アラビノフラノシダーゼおよびフェルロイルエステラーゼなどのキシラナーゼ補助酵素などの新規の酵素などが含まれている。
【0035】
1.方法
酵素調製物の特徴は、セルラーゼ、セロビオヒドロラーゼ、β−グルコシダーゼ、エンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ、ラミナリナーゼ、エンド−1,4−β−キシラナーゼ(異なった培地を用いる)、β−キシロシダーゼ、アラビノフラノシダーゼおよびフェルロイルエステラーゼ(異なった培地を用いる)の活性に関するアッセイ法を含むアッセイ法である。
【0036】
1.1.DNS CMC法によるセルラーゼ
セルラーゼ活性に関するアッセイ法は、β−1,4グルカンであるカルボキシメチルセルロース(CMC)の中のグリコシド結合の加水分解に基づいている。この反応生産物であるβ−1,4グルカンオリゴサッカライドを、反応の結果起こる還元値の増加(グルコースとしての)によって測定する。
【0037】
1%(w/v)CMC溶液を含む1 mlの0.1 M 酢酸ナトリウム緩衝液、pH 5.0(または、異なったpH値);適当に希釈した酵素溶液1 mlを含む溶液を50℃で10分間インキュベートした。酵素反応は、2 mlのDNS溶液(蒸留水中、1%(w/v)の3,5−ジニトロサリチル酸、1.6%(w/v)の水酸化ナトリウム、および30%(w/v)のカリウムナトリウム(+)−酒石酸)を加えて停止させる。溶液を混合して、最低でも95℃の沸騰水中に5分間置いてから25℃に冷却する。この溶液に10 mlの蒸留水を加え、2 cmの透過距離をもつガラス製のセルを用いて、400 nmでの吸光度を測定する。
【0038】
この結果を、DNS溶液で同じように処理した0.00から0.04%(w/v)のグルコース溶液2 mlに関する標準曲線と比較して、μモル単位の還元糖(グルコースとして)に換算する。
【0039】
酵素溶液を加える前の混合液にDNS溶液を加えて反応を行なうことによって、非特異的な吸光に対して酵素反応の吸光度の観察値を補正する。1単位のセルラーゼ活性とは、アッセイ条件下(50℃で、pH 5.0またはその他のpH)で、1分間当りに1μモル当量のグルコースを産生する酵素量であると定義されている。
【0040】
1.2.p−ニトロフェニルβ−D−セロビオピラノシド法によるセロビオヒドロラーゼ
セロビオヒドロラーゼのアッセイ法は、p−ニトロフェニルβ−D−セロビオピラノシドの酵素的加水分解に基づく。この反応生産物であるp−ニトロフェノールを、比色定量法によって測定する。
【0041】
1 mlの蒸留水中0.1%(w/v)のp−ニトロフェニルβ−D−セロビオピラノシド;1 mlの0.2 M酢酸ナトリウム緩衝液、pH 5.0;および、適当に希釈した酵素溶液1 mlをを含む溶液を50℃で30分間インキュベートした。この酵素反応は、4 mlの0.4 Mグリシン溶液を加えて停止させる。溶液を混合して、20℃に冷却する。1 cmの透過距離をもつガラス製のセルを用いて、400 nmでの吸光度を測定する。
【0042】
この結果を、同じ条件でのp−ニトロフェノールのモル吸光係数と比較して、μモル単位のp−ニトロフェノールに換算する。
【0043】
酵素溶液を加える前の混合液にグリシン溶液を加えて反応を行なうことによって、非特異的な吸光に対して酵素反応の吸光度の観察値を補正する。1単位のセロビオヒドロラーゼ活性とは、アッセイ条件下(50℃でpH 5.0)で、1分間当りに、p−ニトロフェニルβ−D−セロビオピラノシドから1μモル当量のp−ニトロフェノールを産生する酵素量であると定義されている。
【0044】
1.3.p−ニトロフェニルβ−Dグルコピラノシド法によるβ−グルコシダーゼ
β−グルコシダーゼのアッセイ法は、p−ニトロフェニルβ−D−グルコピラノシドの酵素的加水分解に基づく。この反応生産物であるp−ニトロフェノールを、比色定量法によって測定する。
【0045】
1 mlの蒸留水中0.1%(w/v)のp−ニトロフェニルβ−D−グルコピラノシド;1 mlの蒸留水;1 mlの0.2 M酢酸ナトリウム緩衝液、pH 5.0;および、適当に希釈した酵素溶液1 mlを含む溶液を50℃で30分間インキュベートした。この酵素反応を、4 mlの0.4 Mグリシン溶液を加えて停止させる。溶液を混合して、20℃に冷却する。1 cmの透過距離をもつガラス製のセルを用いて、400 nmでの吸光度を測定する。
【0046】
この結果を、同じ条件でのp−ニトロフェノールのモル吸光係数と比較して、μモル単位のp−ニトロフェノールに換算する。
【0047】
酵素溶液を加える前の混合液にグリシン溶液を加えて反応を行なうことによって、非特異的な吸光に対して酵素反応の吸光度の観察値を補正する。1単位のβ−グルコシダーゼ活性とは、アッセイ条件下(50℃でpH 5.0)で、1分間当りに、p−ニトロフェニルβ−D−グルコピラノシドから1μモル当量のp−ニトロフェノールを産生する酵素量であると定義されている。
1.4.DNSオオムギβ−グルカン法によるエンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ
エンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ活性のアッセイ法は、β−1,3(4)−グルカンであるオオムギβ−グルカンのグリコシド結合グリコシド結合の酵素的加水分解に基づく。この反応生産物であるβ−1,3(4)−グルカンオリゴサッカライドを、反応の結果起こる還元値(グルコースとして)の増加によって測定する。
【0048】
1 mlの0.1 M 酢酸ナトリウム緩衝液、pH 5.0(または、異なったpH値)に1%(w/v)のオオムギβ−グルカン溶液を含むもの;および適当に希釈した酵素溶液1 mlを含む溶液を50℃で10分間インキュベートした。酵素反応は、2 mlのDNS溶液(蒸留水中、1%(w/v)の3,5−ジニトロサリチル酸、1.6%(w/v)の水酸化ナトリウム、および30%(w/v)のカリウムナトリウム(+)−酒石酸)を加えて停止させる。溶液を混合して、最低でも95℃の沸騰水中に5分間置いてから25℃に冷却する。この溶液に10 mlの蒸留水を加え、2 cmの透過距離をもつガラス製のセルを用いて、540 nmでの吸光度を測定する。
【0049】
この結果を、DNS溶液で同じように処理した0.00から0.04%(w/v)のグルコース溶液2 mlに関する標準曲線と比較して、μモル単位の還元糖(グルコースとして)に換算する。
【0050】
酵素溶液を加える前の混合液にDNS溶液を加えて反応を行なうことによって、非特異的な吸光に対して酵素反応の吸光度の観察値を補正する。1単位のエンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ活性とは、アッセイ条件下(50℃で、pH 5.0またはその他のpH)で、1分間当りに1μモル当量のグルコースを産生する酵素量であると定義されている。
【0051】
1.5.アゾオオムギβ−グルカン法によるエンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ
エンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ活性のアッセイ法は、結合発色団をもつオオムギβ−グルカン(アゾオオムギβ−グルカン)の加水分解に基づく。この反応生産物であるエタノール沈殿後の可溶性オリゴマーを、その結果生じる590 nmでの吸光度の増加によって測定する。
【0052】
0.5 mlのアゾオオムギβ−グルカン基質(すぐに使用できる形になったもの)を含む溶液と、0.2 mlの酵素希釈液(0.01 Mの酢酸ナトリウム緩衝液、pH 4.6の中に1 ml当り0.15から0.60単位を含む)を含む溶液を30℃で正確に20分間インキュベートした。酵素反応は、2.5 mlの沈殿溶液(蒸留水中、18.1 gの酢酸ナトリウムと3.0 gの亜鉛を、ガラス容器の中の300 mlの蒸留水と混合し、塩酸でpH 5.0に調整し、1 lの計量用フラスコに移して、96% v/vエタノールで容量を合わせたもの)を加えて停止させる。溶液を混合して、10分間室温放置する。この溶液を遠心管に移して、卓上遠心機中1000 gで10分間遠心分離する。1 cmの透過距離をもつガラス製のセルを用いて、590 nmでの上清の吸光度を測定する。
【0053】
酵素溶液を加える前の混合液に沈殿溶液を加えて反応を行なうことによって、非特異的な吸光に対して酵素反応の吸光度の観察値を補正する。1単位のエンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ活性とは、アッセイ条件下(30℃でpH 4.6)で標準的な基質を用いたときに、590 nmで0.820単位の吸光度となる加水分解をもたらす酵素量であると定義されている。
【0054】
1.6.DNSラミナリン法によるラミナリナーゼ(エンド−1,3−β−グルカナーゼ)
ラミナリナーゼ(エンド−1,3−β−グルカナーゼ)活性のアッセイ法は、β−1,3−グルカンであるラミナリンのグリコシド結合の酵素的加水分解に基づく。この反応生産物であるβ−1,3−グルカンオリゴサッカライドを、反応の結果起こる還元値(グルコースとして)の増加によって測定する。
【0055】
1 mlの0.1 M 酢酸ナトリウム緩衝液、pH 5.0(または、異なったpH値)に1%(w/v)のラミナリン溶液を含むもの;および適当に希釈した酵素溶液1 mlを50℃で10分間インキュベートした。酵素反応は、2 mlのDNS溶液(蒸留水中、1%(w/v)の3,5−ジニトロサリチル酸、1.6%(w/v)の水酸化ナトリウム、および30%(w/v)のカリウムナトリウム(+)−酒石酸)を加えて停止させる。溶液を混合して、最低でも95℃の沸騰水中に5分間置いてから25℃に冷却する。この溶液に10 mlの蒸留水を加え、2 cmの透過距離をもつガラス製のセルを用いて、540 nmでの吸光度を測定する。
【0056】
この結果を、DNS溶液で同じように処理した0.00から0.04%(w/v)のグルコース溶液2 mlに関する標準曲線と比較して、μモル単位の還元糖(グルコースとして)に換算する。
【0057】
酵素溶液を加える前の混合液にDNS溶液を加えて反応を行なうことによって、非特異的な吸光に対して酵素反応の吸光度の観察値を補正する。1単位のラミナリナーゼ活性とは、アッセイ条件下(50℃でpH 5.0)で、1分間当りに1μモル当量のグルコースを産生する酵素量であると定義されている。
【0058】
1.7.DNSカバノキ(birchwood)キシラン法によるエンド−1,4−β−キシラナーゼ
エンド−1,4−β−キシラナーゼ活性のアッセイ法は、β−1,4−キシランであるカバノキキシランのキシロシド結合の酵素的加水分解に基づく。この反応生産物であるβ−1,4−キシランオリゴサッカライドを、反応の結果起こる還元値(キシロースとして)の増加によって測定する。
【0059】
1 mlの0.1 M 酢酸ナトリウム緩衝液、pH 5.0(または、異なったpH値)に1%(w/v)のカバノキキシラン溶液を含むもの;および適当に希釈した酵素溶液1 mlを含む溶液を50℃で10分間インキュベートした。酵素反応は、2 mlのDNS溶液(蒸留水中、1%(w/v)の3,5−ジニトロサリチル酸、1.6%(w/v)の水酸化ナトリウム、および30%(w/v)のカリウムナトリウム(+)−酒石酸)を加えて停止させる。溶液を混合して、最低でも95℃の沸騰水中に5分間置いてから25℃に冷却する。この溶液に10 mlの蒸留水を加え、2 cmの透過距離をもつガラス製のセルを用いて、540 nmでの吸光度を測定する。
【0060】
この結果を、DNS溶液で同じように処理した0.00から0.03%(w/v)のグルコース溶液2 mlに関する標準曲線と比較して、μモル単位の還元糖(キシロースとして)に換算する。
【0061】
酵素溶液を加える前の混合液にDNS溶液を加えて反応を行なうことによって、非特異的な吸光に対して酵素反応の吸光度の観察値を補正する。1単位のエンド−1,4−β−キシラナーゼ活性とは、アッセイ条件下(50℃で、pH 5.0またはその他のpH)で、1分間当りに1μモル当量のグルコースを産生する酵素量であると定義されている。
【0062】
1.8.DNSコムギアラビノキシラン法によるエンド−1,4−β−キシラナーゼ
エンド−1,4−β−キシラナーゼ活性のアッセイ法は、アラビノース置換β−1,4−キシランであるコムギキシランのキシロシド結合の酵素的加水分解に基づく。この反応生産物であるアラビノβ−1,4−キシランオリゴサッカライドを、反応の結果起こる還元値(キシロースとして)の増加によって測定する。
【0063】
1 mlの0.1 M 酢酸ナトリウム緩衝液、pH 5.0(または、異なったpH値)に1%(w/v)のコムギアラビノキシラン溶液を含むもの;および適当に希釈した酵素溶液1 mlを含む溶液を50℃で10分間インキュベートした。酵素反応は、2 mlのDNS溶液(蒸留水中、1%(w/v)の3,5−ジニトロサリチル酸、1.6%(w/v)の水酸化ナトリウム、および30%(w/v)のカリウムナトリウム(+)−酒石酸)を加えて停止させる。溶液を混合して、最低でも95℃の沸騰水中に5分間置いてから25℃に冷却する。この溶液に10 mlの蒸留水を加え、2 cmの透過距離をもつガラス製のセルを用いて、540 nmでの吸光度を測定する。
【0064】
この結果を、DNS溶液で同じように処理した0.00から0.03%(w/v)のグルコース溶液2 mlに関する標準曲線と比較して、μモル単位の還元糖(キシロースとして)に換算する。
【0065】
酵素溶液を加える前の混合液にDNS溶液を加えて反応を行なうことによって、非特異的な吸光に対して酵素反応の吸光度の観察値を補正する。1単位のエンド−1,4−β−キシラナーゼ活性とは、アッセイ条件下(50℃で、pH 5.0またはその他のpH)で、1分間当りに1μモル当量のグルコースを産生する酵素量であると定義されている。
【0066】
1.9.粘度測定コムギアラビノキシラン法によるエンド−1,4−β−キシラナーゼ
エンド−1,4−β−キシラナーゼ活性のアッセイ法は、標準的なコムギアラビノキシラン溶液の酵素的加水分解に基づくが、この活性は、時間に対する相対的な粘性の低下によって判定される。
【0067】
1 mlの0.1 M 酢酸ナトリウム緩衝液、pH 5.5(または、異なったpH値)に1%(w/v)のコムギアラビノキシラン溶液を含むもの;3 mlの蒸留水、および適当に希釈した酵素溶液1 mlを含む溶液を、ハーク(Haake)微量粘度計(0.1−2.0 mPa.sの口径に揃えた金粒を用いる)の中へ注入し、30℃で15−20分間にわたり30秒毎に落下時間T(試験)を測定する。金粒の落下平均時間を水(5 mlの蒸留水)と基質(0.1 M 酢酸ナトリウム緩衝液、pH 5.5中に1%(w/v)のコムギアラビノキシラン溶液を含む1 mlの溶液および4 mlの蒸留水)を、それぞれT(水)およびT(基質)として測定する。対照も同じようにして測定する。T(試験)の各数値について、相対的な流動性(F)をつぎのように計算する:
【0068】
【数2】

【0069】
時間(T(試験)の測定を行なった各経過時間)に対するFのプロットの傾きを、1分当りの相対的な流動性の変化(△Fr.min−1)として計算すると、酵素濃度に比例する。1単位のエンド−1,4−β−キシラナーゼ活性とは、アッセイ条件下(30℃で、pH 5.5またはその他のpH)で、基質を加水分解し、溶液の粘度を低下させ、1分間当りの相対的流動性変化を1(無寸法(dimensionless)単位)にする酵素量と定義されている。
【0070】
1.10.p−ニトロフェニルβ−D−キシロピラノシド法によるβ−キシロシダーゼ
β−キシロシダーゼのアッセイ法は、p−ニトロフェニルβ−D−キシロピラノシドの酵素的加水分解に基づく。反応生産物であるp−ニトロフェノールを、比色定量法によって測定する。
【0071】
蒸留水中0.1%(w/v)のp−ニトロフェニルβ−D−グルコピラノシド、1 ml;蒸留水1 ml;1 mlの0.2 M酢酸ナトリウム緩衝液、pH 5.0;および、適当に希釈した酵素溶液1 mlを含む溶液を50℃で30分間インキュベートした。酵素反応は、4 mlの0.4 Mグリシン溶液を加えて停止させる。溶液を混合して、20℃に冷却する。1 cmの透過距離をもつガラス製のセルを用いて、400 nmでの吸光度を測定する。
【0072】
この結果を、同じ条件でのp−ニトロフェノールのモル吸光係数と比較して、μモル単位のp−ニトロフェノール量に換算する。
【0073】
酵素溶液を加える前の混合液にグリシン溶液を加えて反応を行なうことによって、非特異的な吸光に対して酵素反応の吸光度の観察値を補正する。1単位のβ−キシロシダーゼ活性とは、アッセイ条件下(50℃でpH 5.0)で、1分間当りに、p−ニトロフェニルβ−D−キシロピラノシドから1μモルのp−ニトロフェノールを産生する酵素量であると定義されている。
【0074】
1.11.p−ニトロフェニルα−L−アラビノフラノシド法によるα−N−アラビノフラノシダーゼ
α−N−アラビノフラノシダーゼ(アラビノフラノシダーゼ)のアッセイ法は、p−ニトロフェニルα−L−アラビノフラノシドの酵素的加水分解に基づく。反応生産物であるp−ニトロフェノールを、比色定量法によって測定する。
【0075】
蒸留水中0.1%(w/v)のp−ニトロフェニルα−L−アラビノフラノシド1 ml;蒸留水1 ml;1 mlの0.2 M酢酸ナトリウム緩衝液、pH 5.0;および、適当に希釈した酵素溶液1 mlを含む溶液を50℃で30分間インキュベートした。酵素反応は、4 mlの0.4 Mグリシン溶液を加えて停止させる。溶液を混合して、20℃に冷却する。1 cmの透過距離をもつガラス製のセルを用いて、400 nmでの吸光度を測定する。
【0076】
この結果を、同じ条件でのp−ニトロフェノールのモル吸光係数と比較して、μモル単位のp−ニトロフェノール量に換算する。
【0077】
酵素溶液を加える前の混合液にグリシン溶液を加えて反応を行なうことによって、非特異的な吸光に対して酵素反応の吸光度の観察値を補正する。1単位のアラビノフラノシダーゼ活性とは、アッセイ条件下(50℃でpH 5.0)で、1分間当りに、p−ニトロフェニルα−L−アラビノフラノシド1から1μモルのp−ニトロフェノールを産生する酵素量であると定義されている。
【0078】
1.12.FAXX法によるフェルロイルエステラーゼ
フェルロイルエステラーゼ(フェルラ酸エステラーゼ)のアッセイ法は、O−[5−O−(トランス−フェルロイル)−α−L−アラビノフラノシル]−(1−>3)−O−β−D−キシロピラノシル−(1−>4)−D−キシロピラノース(FAXX)の酵素的加水分解に基づく。FAXXは、酵素加水分解した小麦ふすまから調製し、精製してからNMRで特徴を調べる。FAXX加水分解は、分光光度測定法によって測定する。
【0079】
酵素反応は、1 cmの透過距離をもつガラス製のセルを用いて、37℃でpH 6.0の0.1 M MOPS緩衝液中に0.050 mMのFAXXを含む溶液を325 nmで調査する。
【0080】
1単位のフェルロイルエステラーゼ活性とは、アッセイ条件下(37℃でpH 6.0)で、1分間当りに1μモルの基質を生産物に転化させる酵素量であると定義されている。
【0081】
1.13.AraF法によるフェルロイルエステラーゼ
フェルロイルエステラーゼ(フェルラ酸エステラーゼ)のアッセイ法は、AraF(1,2位がアラビノースに結合しているフェルラ酸)の酵素的加水分解に基づく。AraFは、酵素加水分解したサトウダイコンのパルプから調製し、精製してからNMRで特徴を調べる。AraF加水分解は、分光光度測定法によって測定する。
【0082】
酵素反応は、1 cmの透過距離をもつガラス製のセルを用いて、37℃でpH 6.0の0.1 M MOPS緩衝液中に0.050 mMのAraFを含む溶液を325 nmで調査する。
【0083】
AraFについて1単位のフェルロイルエステラーゼ活性とは、アッセイ条件(37℃でpH 6.0)下で、1分間当りに1μモルの基質を生産物に転化させる酵素量であると定義されている。
【0084】
1.14.メチルエステルの加水分解、すなわち、メチルフェルラ酸(MFA)法、メチルカフェイン酸(MCA)法、メチルシナピン酸(MSA)法、およびメチルp−クマリン酸(MpCA)法によるフェルロイルエステラーゼ
フェルロイルエステラーゼ(フェルラ酸エステラーゼ)のアッセイ法は、メチルフェルラ酸(MFA)、メチルカフェイン酸(MCA)、メチルシナピン酸(MSA)、およびメチルp−クマリン酸(MpCA)のメチルエステルの酵素的加水分解に基づく。メチルエステルの酵素的加水分解は、37℃でpH 6.0の0.1 M MOPS緩衝液中で測定する。アッセイは、2種類の異なった技術に基づく。
【0085】
分光光度測定法においては、メチルエステルの基質濃度は0.10 mMであり、エステルの加水分解は、1 cmの透過距離をもつガラス製のセルを用いて、325 nmで調査する。この方法では、最初の基質濃度が限定されている。
【0086】
HPLC法においては、メチルエステルの基質濃度は0.10 mMであり、エステルの加水分解は、10〜30分間隔で、HPLCによる遊離酸の解離を測定して調べられる。この方法では、基質濃度に対する制限はなく、測定される活性は、分光光度測定法よりもかなり高くなる。
【0087】
1単位のフェルロイルエステラーゼ活性とは、アッセイ条件(37℃でpH 6.0)下で、1分間当りに1μモルの基質を生産物に転化する酵素量であると定義されている。
【0088】
1.15.修正ブラッドフォードクーマシーブルー結合タンパク質アッセイ法によるタンパク質濃度
タンパク質濃度のアッセイ法は、ブリリアントブルーG(クーマシーブルー)を用い、1 cmの透過距離をもつガラス製キュベットを用いて、595 nmで分光光度を測定する修正ブラッドフォードクーマシーブルー結合タンパク質アッセイに基づく。この方法(シグマ社(Sigma)製B 6916)は、ウシ血清アルブミン(シグマ社製P 0914)を用いて標準化する。
【0089】
1.16.等電点電気泳動法による等電点
タンパク質の等電点を、ノベックス社(NOVEX)製 XCell II(登録商標)ミニセルにおいてpH 3−10(pI実効範囲3.5−8.5)またはpH 3−7(pI実効範囲3.0−6.5)のNOVEXゲルなど、既製の垂直5%ポリアクリルアミドゲルを用いた、標準的な方法によって測定する。NOVEXの陰極と陽極、および、pH 3−10とpH 3−7のためのIEFサンプル緩衝液を用いる。等電点、固定、クーマシーR−250ブルー染色液による染色、および脱色のためのNOVEX標準プロトコールを用いる。
【0090】
1.17.SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)
タンパク質の解析用分離、および分子量測定を、標準的なSDS−PAGE法によって行なう。既製のNOVEX NuPAGE(登録商標)ゲル(NOVEXが推奨する泳動緩衝液による、NuPAGE(登録商標)ビス−トリスゲルまたはNuPAGE(登録商標)トリス−酢酸ゲル)を、NOVEX XCell II(登録商標)ミニセルで用いる。NOVEXサンプル調製物と泳動用緩衝液、および分子量標準を用いる。SDS−PAGE、固定、クーマシーR−250ブルー染色液による染色、および脱色のためのNOVEX標準プロトコールを用いる。
【0091】
2.酵素混合物についての結果
2.1.最適なpH
2.1.1.エンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ活性
DNSオオムギβ−グルカン法を用い、標準条件下、50℃でPenicillium funiculosum由来のエンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ活性のアッセイを行なった。pH 3.0とpH 7.0の間で酵素活性を測定した。酵素活性についての最適なpHはpH 4.0−5.0である。
【0092】
【表1】

【0093】
2.1.2.エンド−1,4−β−キシラナーゼ活性
DNSカバノキキシラナーゼ法を用い、標準条件下、50℃でPenicillium funiculosum由来のエンド−1,4−β−キシラナーゼ活性のアッセイを行なった。
【0094】
【表2】

【0095】
2.2.最適な温度
2.2.1.エンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ活性
DNSオオムギβ−グルカン法を用い、pH 5.0(この酵素にとって最適なpH)での標準条件下で、Penicillium funiculosum由来のエンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ活性のアッセイを行なった。酵素活性を30℃と70℃の間で測定した。最適な温度は50℃と60℃の間に存在し、最大の活性は60℃で測定された。詳しい結果を、温度に対する表の形で示す。
【0096】
【表3】

【0097】
2.2.2.エンド−1,4−β−キシラナーゼ活性
DNSカバノキキシラナーゼ法を用い、pH 5.5とpH 3.5の標準的条件下で、Penicillium funiculosum由来のエンド−1,4−β−キシラナーゼ活性のアッセイを行なった。酵素活性を30℃と70℃の間で測定した。最適な温度は50℃と60℃の間に存在し、最大の活性を、pH 5.5については50℃で、pH 3.5については60℃で測定された。詳しい結果を、温度に対する表の形で示す。
【0098】
【表4】

【0099】
Penicillium funiculosumによって産生される酵素は、高レベルのセルラーゼ、エンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ、およびその他のグルカン分解活性をもつ。さらに、高レベルのエンド−1,4−β−キシラナーゼ、およびキシラナーゼ補助酵素活性をもつという特徴がある。ヘミセルロース分解酵素の範囲が広いのが、この微生物からの酵素調製物の特徴である。
【0100】
測定された各活性は、その調製物についての主要活性に対する比率として報告することができる。得られた結果の実例を表Aに示す。これらの比率は、異なった醗酵バッチからの調製物では変化するかもしれない。
【0101】
【表5】

【0102】
3.酵素混合物における成分の性質
3.1.精製法
疎水性相互作用クロマトグラフィー
濾過、および112.6 mg/mlタンパク質濃度まで醗酵培地を濃縮して得られた調製物を、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)緩衝液(50 mMリン酸緩衝液、pH 7.0/1.7 M (NHSO/0.04%アジ化ナトリウム)で1/1に希釈して、HIC緩衝液に交換した(PD−10カラム;ファルマシア社(Pharmacia)社製)。この一部(10 ml)をフェニルセファロース(PhenylSepharose)高速HICゲル(Pharmacia)カラム(直径10×5 cm, 200 ml)に入れて、硫酸アンモニウム((NHSO)濃縮液の濃度が10 ml/分で減少してゆく勾配(1.7−0.0 M)を用いて分離した。画分(10 ml)を集めてキシラナーゼ活性を測定した。
【0103】
HICによって、キシラナーゼ活性の主要なピークが2つ示された。Aと名づけた第1のピークは、(NHSO濃度が約0.6 Mに減少したときにカラムから溶出し、Bと名づけた第2のピークは、約0.25 Mの(NHSO濃度で溶出した。各注入液のピークAおよびBを含む画分を別々にまとめた。Aの全画分は全キシラナーゼ活性の2.8%であったのに対して、画分Bは、全キシラナーゼ活性の 97.2%に相当した。収率は77%であった。
【0104】
イオン交換クロマトグラフィー
HICのピークAおよびBについてまとめた画分を、(NHSOの濃度を100%に飽和するまで増加して沈殿させた後に遠心分離した(10000×gで30分間)。20 mMトリス塩酸緩衝液、pH 8.0/0.04% アジ化ナトリウムに沈殿を溶解させてから、PD−10カラムを用いて、カラムと同じになるまで脱塩した。サンプル(5 ml)を、予め、20 mMトリス塩酸緩衝液、pH 8.0/0.04% アジ化ナトリウムで平衡化したモノ(Mono)Q(登録商標)HR 10/10陰イオン交換カラム(ファルマシア社)にかけて、同一の緩衝液の中で塩化ナトリウムの濃度を増加して(NaCl 0−1 M)、2 ml/分で溶出した。画分(2 ml)を集めて、キシラナーゼ活性を測定した。
【0105】
ピークA:
陰イオン交換クロマトグラフィーによるピークAの分離では、0.3 M NaClのところで溶出した単一のキシラナーゼ活性ピークが得られた。もっとも活性の強い画分を集めて、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)によって解析した。これでは、分子量約48 kDaの一本の主要バンドが示された。IEF(等電点電気泳動)の後でキシラナーゼ活性が回収されたことから、この主要なクーマシー染色バンドがキシラナーゼであることが確認された。
【0106】
ピークB:
陰イオン交換クロマトグラフィーによるピークBの分離では、主なキシラナーゼ活性ピークが2つ得られ、1つはボイド(非結合物質;ピークB−I)に溶出し、残りは、0.1 M NaCl(ピークB−II)のところで溶出した。また、0.13 M と0.19 M NaClのところに溶出する2つの小さなピークがあった。各ピークに対応する活性画分を集めてSDS−PAGEによって解析したが、どのサンプルも純粋なものではなかった。
【0107】
ゲル濾過クロマトグラフィー
B−IおよびB−IIを含むプール画分を凍結乾燥させ、水に溶解して、(PD−10カラムを用いて)脱塩した。サンプル(0.2 ml)をスーパーデックス(Superdex)(登録商標)75 HRカラム(ファルマシア社)に入れて、20 mMビス−トリス緩衝液、pH 6.0/0.2 M NaCl/0.04%アジ化ナトリウムによって0.4 ml/分で溶出した。画分(0.4 ml)を集めて、キシラナーゼ活性を測定した。
【0108】
3.2.キシラナーゼの性質
3.2.1.等電点電気泳動による等電点
タンパク質の等電点を、NOVEXのpH 3−10およびpH 3−7の既製の垂直5%ポリアクリルアミドゲルなど、既製の垂直5%ポリアクリルアミドゲルを用いた、標準的な方法によって測定する。NOVEXの陰極と陽極、およびIEFサンプル緩衝液、等電点、固定、クーマシーR−250ブルー染色液による染色、および脱色のための標準プロトコールを用いる。
【0109】
キシラナーゼAについては、MonoQ後のサンプルを用いた。キシラナーゼB−IおよびB−IIについては、HIC後のサンプルのキシラナーゼBを用いた。AおよびBのそれぞれについて、少量のサンプル(10μl)を1つのウエルに入れ、大量のサンプル(50μl)を3倍のウエルの中に入れた。サンプルを等電点電気泳動した後、片方が2種類の少量のサンプル(A+B)と分子量マーカーを含み(この部分をクーマシーで染色した)、もう片方が2種類の大量サンプルを含むようにゲルを半分に切った。大量サンプルを含む側のゲルを切って、2本のサンプルのレーンに分けてから、各レーンを2 mm断片に分画した。2 mm断片のそれぞれを別々に、100 mM MOPS緩衝液、pH 6.0/0.04% アジ化ナトリウムの中に一晩浸漬した。
【0110】
キシラナーゼサンプルAでは、染色したIEFゲルに、pI 3.55マーカーのところに一本の主要バンドと、いくつかの薄い混入バンドが現れた。キシラナーゼ活性は、このバンドに相当する画分にだけ見られ、キシラナーゼの主要バンドであることが確認された。
【0111】
キシラナーゼサンプルBでは、染色したIEFゲルに、広い範囲のpI値にわたっていくつかのバンドが示された。キシラナーゼ活性が、pI 4.2と4.8のタンパク質に対応する、染色していないゲルの2つの別々の画分に存在した。
【0112】
3.2.2.SDS−PAGEによる分子量
HICのピークBにおけるキシラナーゼの分子量を確認するために、キシラナーゼ活性をもつ画分をIEFゲルから溶出し、脱塩、凍結乾燥し、SDS−PAGEによって分離した。還元剤としてサンプル緩衝液の中に含まれたジチオスレイトール(DTT 50 mM)とともに、10%トリス−グリシンゲル(NOVEX)を用いて、変性PAGEを行なった。
【0113】
ゲル染色によって、どちらのキシラナーゼも純粋で、キシラナーゼB−IおよびB−IIのそれぞれについて、36 kDaと15 kDaという分子量をもっていた。
【0114】
精製された3つのキシラナーゼすべて、すなわち、陰イオン交換クロマトグラフィー後のキシラナーゼA、ゲル濾過クロマトグラフィー後のキシラナーゼB−IおよびB−IIにSDS−PAGE解析を行なった。キシラナーゼAは、分子量48 kDaの単一のバンドを生じた。キシラナーゼB−Iは、クーマシー染色後一本の主要バンドと4本の弱いバンドを示した。この主要バンドは分子量36 kDaであったため、主要なバンドはキシラナーゼであると確認された。精製度は90%であると評価されている。キシラナーゼB−IIは、15 kDaの主要バンドと2−3本の弱いバンドを生じた。このキシラナーゼの精製度は約95%である。
【0115】
【表6】

【0116】
3.2.3.酵素活性
酵素活性を測定するための試験については以前に説明した。
【0117】
3.2.3.1 キシラナーゼAの解析
[タンパク質] 0.4(mg/ml)
【0118】
【表7】

【0119】
【表8】

【0120】
3.2.3.2 キシラナーゼB−Iの解析
[タンパク質]0.096(mg/ml)
【0121】
【表9】

【0122】
【表10】

【0123】
3.2.3.3 キシラナーゼB−IIの解析
[タンパク質]0.165(mg/ml)
【0124】
【表11】

【0125】
【表12】

【0126】
3.2.4 配列
本発明の1つの実施形態は、上記のタンパク質またはそれらの変異体のアミノ酸配列および塩基配列に関する。
【0127】
このために、精製したタンパク質(キシラナーゼA、キシラナーゼB−IおよびB−II)のアミノ酸配列、および、既知の菌類のキシラナーゼのアミノ酸配列および塩基配列を比較して、キシラナーゼの配列を同定した。
【0128】
本発明に関して、変異体とは、天然のタンパク質またはポリペプチドのポリペプチドまたはタンパク質の類似体、タンパク質断片、派生タンパク質、または突然変異したタンパク質で、該天然タンパク質またはポリペプチドと同一の生物学的機能をもつものを意味するものと理解されている。天然の状態でさまざまな変異体が存在する。これらの変異体は、例えば、該タンパク質をコードする遺伝子の配列の違う点に特徴のある対立遺伝子変異や、異なったスプライシング、または転写後修飾からできることがある。変異体は、1個以上のアミノ酸の置換、欠失、付加および/または修飾によって得ることができる。すべての修飾についてはよく知られており、当業者に既知の方法によって行なうことができる。
【0129】
変異体は、例えば、基質に対してより高い親和性を持っていたり、新しい生物学的性質を持っている。
【0130】
また、本発明のもう1つの目的は、単細胞生物または多細胞生物の宿主細胞で、開示されたタンパク質またはポリペプチドを発現させるために、この配列を使用することである。この目的のために、ベクターのゲノムの中に該配列を含ませることができる。該ベクターは、プラスミド、ファージまたはウイルスであろう。したがって、本発明のもう1つの実施形態は、上述のベクターによって形質転換された、単細胞生物または多細胞生物から単離された宿主細胞である。好ましい実施形態において、宿主細胞はバクテリアである。
【0131】
開示されているタンパク質の塩基配列を含む該ベクターを、宿主細胞の中で該タンパク質の発現のために使用することが、本発明のもう1つの実施形態である。
【0132】
3.2.4.1 キシラナーゼCの配列
既知の菌類キシラナーゼのアミノ酸および塩基の配列との比較に基づいてプローブを作製した。保存領域を同定し、それを用いてPenicillium funiculosumのゲノミックライブラリーのスクリーニングに用いるPCRプライマーを設計した。
【0133】
2組の縮重プライマーを作製した。第1の組は、B型(または2型)キシラナーゼ遺伝子からの200 塩基対(pb)(およそ)の生産物を増幅するために設計した。第2の組は、A型(または1型)キシラナーゼ遺伝子からの250 bpの生産物を増幅するために設計した。
【0134】
プライマー3と4によって、258 bpのバンドができた。pGEMTにクローニングした後、これを配列決定したところ、菌類のA/1型キシラナーゼに対して有意な配列類似性をもつことが分かった。クローニングした生産物を含むプラスミドには、pPFXYLAという名前が付いている。
【0135】
キシラナーゼCの全長配列を図1および配列番号:1に示す。
【0136】
3.2.4.2 キシラナーゼBIの配列
他の菌類セロビオヒドロラーゼとの配列アラインメントとともに、内部のアミノ酸配列を用いて、縮重PCRプライマー(配列番号:2および3)を設計した。290 bpの生産物(配列番号:4)を増幅し、pGEMT(プロメガ社(Promega))にクローニングして、pGEMTCB2を作製して配列決定した。図2に示されているように、プライマーの配列に下線が付されている。このPCR生産物が現在のところ、Penicillium funiculosum IMI134756のゲノミックライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして用いられている。
【0137】
3.2.4.3 キシラナーゼBIIの配列
キシラナーゼBII遺伝子の配列はすべて、1.3 kbの5’非翻訳上流領域、0.85 kbの3’非翻訳領域、54 bpのイントロン、および223アミノ酸のタンパク質をコードする、669 bpの塩基配列とを含んでいる。
【0138】
逆転写PCR(RT−PCR)を用いて、54 bpのイントロンが存在することが証明された。1%(w/v)オートスペルトキシラン上で4日間増殖させてから回収したPenicillium funiculosum IMI134756培養菌の菌糸から全RNAを単離した。プライマーを設計して、メッセンジャーRNAから195 bp(ゲノムDNAでは249 bp)と433 bp(ゲノムDNAでは487 bp)の断片を増幅した。
【0139】
プラスミド(pPFXYNC2)の3’末端側の3 kbの配列決定によって、2つの推定イントロンを含み、約570アミノ酸のポリペプチドをコードする遺伝子(per Aと命名した)の存在が明らかになった。このポリペプチドは、菌類のパーミアーゼアミノ酸に対して有意な配列類似性を示した。
【0140】
3.2.4.4 キシラナーゼAの配列
キシラナーゼAの内部配列を得られたが、次のアミノ酸配列によって代表される:
AEAINYNQDY
3.3 フェルロイルエステラーゼの性質
3.3.1 精製
キシラナーゼと同じ方法にしたがって行なった。
【0141】
酵素混合物には、少なくとも2つの異なるフェルロイルエステラーゼが含まれている。このうちの1つ(FaeB)は、質量分析によると、38,945−41,051 Daの分子量をもっている(アミノ酸の一次構造からは35,450 Da、また、SDS−PAGEでは37 kDa)。FaeBは、pIが4.2で、B型フェルロイルエステラーゼであり、MpCAとAraF基質に対して特異性がある(MpCA、MCA、MFAおよびAraFに対する活性;しかし、MSAとFAXXに対する活性はない)。
【0142】
もう1つのフェルロイルエステラーゼ(FaeA)は、29 kDaの分子量をもつ(SDS−PAGEによる)。FaeBは、pIが4.65で、A型フェルロイルエステラーゼであり、FAXXとMSA基質に対して特異性がある(MSA、MCA、MFAおよびFAXXに対して活性、しかし、MpCAとAra対する活性はない)。
【0143】
3.3.2.等電点電気泳動による等電点
常法によって、タンパク質の等電点を測定する。酵素混合物を幅広のストリップ(約20 mm)としてIEFゲルに充填して、低温(5℃)で電気泳動した。等電点電気泳動してバンドをはっきりとさせた後、サンプルレーンの真ん中でゲルを切った。サンプルレーンの片方の半分とIEF分子量標準を固定し、標準的な方法によって染色および脱染色を行なった。残りの半分のレーンを2 mm幅の切片に切断して、それぞれの切片を1 mlの100 mM MOPS緩衝液、pH 6.0の中に一晩浸漬した。MFA、MpCAおよびMSAを基質に用いて、各ゲル切片についてフェルロイルエステラーゼの活性を測定した。
【0144】
染色したIEFゲルは、高い酸性(pI 2.4)からpI 7の範囲のpIをもつセルラーゼには、非常にたくさんのタンパク質が存在することを示している。ほとんどのタンパク質は酸性である(pI範囲2.4−5)。ゲルから切り出された画分の中に、フェルロイルエステラーゼ活性の2つのピークを検出した。1つはFaeBに相当するが、pIが4.2で、MFAとMpCAにだけ活性を示す(MSAには示さない)。もう1つは、FaeAに対応するが、pIが4.65で、3つの基質すべてに活性をもっていた。
【0145】
3.3.3.SDS−PAGEによる分子量
10%トリス−グリシンゲルを用いて、SDS−PAGEによって分子量を解析した。SDS−PAGEゲルを泳動して、固定し、クーマシーブルー染色し、標準的なプロトコールを用いて脱染した。
【0146】
この酵素混合物は、少なくとも2つの異なるフェルロイルエステラーゼを含んでいる。FaeB(pI 4.2)に対応する方は、分子量が37 kDaである。もう1つは、FaeA(pI 4.65)に対応するが、分子量が29 kDaである。
【0147】
FaeBの分子量は、アミノ酸の一次配列からは34,450 Daと見積もられており、質量分析によれば38,945−41,051 Daである。
【0148】
3.3.4 フェルロイルエステラーゼの活性
質量分析法を用いて、酵素混合物についてのフェルロイルエステラーゼ活性の測定を行なった。
【0149】
【表13】

【0150】
酵素混合物には、試験したすべての基質に対する活性が含まれている。メチルエステルについては、MpCAに対する活性がもっとも高く、MSAに対する活性が最も低い。AraFとFAXXに対する活性が、その他のメチルエステラーゼに対する活性よりも高いが、このことは、このエステラーゼ活性が真のフェルロイルエステラーゼによるものであって、一般的なエステラーゼや、細胞壁を分解する他のエステラーゼ(例えば、アセチルキシランエステラーゼ、ペクチンエステラーゼ)の副作用によらないことを示している。
【0151】
3.3.5 配列
3.3.5.1 FEA−Aの配列
精製タンパク質のトリプシン分解によって得られた内部アミノ酸配列は以下に示すとおりであった:
配列1
QYTLTLPSNYNPNK
配列2
AVAVMSGANL
配列3
TEYSG(C/A)DSEHPVWWIAFDGP
配列4
DTFVKDDHCTPTNPPAPAAGSGTHIKYV
【0152】
精製タンパク質から得られたアミノ酸配列から、縮重PCRプライマーを設計した。多くの生産物をpGEMT(プロメガ社(Promega))にクローニングした。
【0153】
pGEMTD19と名付けたプラスミド(180 bp)(図3)が、上記のペプチド配列4として認識されうる配列を含むことがPCRによって判明した。図3に示すように、プライマーの配列を二重下線で、以前から既知の配列を下線で示した。
【0154】
FEA−Aの塩基配列とアミノ酸配列を配列番号:5に開示する。
【0155】
3.3.5.2 FEA−Bの配列
FEA−Bのペプチド配列から設計したプライマーを用いてプローブを増幅し、Penicillium funiculosumのゲノミックライブラリーをスクリーニングするのに用いた。2291 bpのクローンを単離して配列を決定した(配列番号:6)。304アミノ酸のポリペプチドをコードする遺伝子には、イントロンが1つある。推定されるアミノ酸配列を図4に示し、成熟タンパク質(成熟タンパク質の長さ=338)を太字で示す。このタンパク質は、高度にグリコシル化されたリンカーによって隔てられている2つの異なるドメインを含んでいる。図4では、触媒ドメインを太字で示し、結合ドメインを太字の二重下線で、また、リンカーを太字の点線で表している。
【0156】
このタンパク質は、次の推定触媒3残基をもつ、図4の下線で示された推定活性部位のモチーフ(セリン=求核基)によっても特徴づけられる。
【0157】
(1)S136/D174/H216
(2)S136/D220/H276
FEA−Bタンパク質は、分泌配列(353)と10個のシステインを含む。
【0158】
3.4 グルカナーゼの性質
酵素混合物の2Dゲル電気泳動を行なった。ノベックス社(NOVEX)製 XCell II(登録商標)ミニセルにおいて、ノベックス社(NOVEX)から購入したpH 3−7(pI実効範囲3.0−6.5)の既製の垂直5%ポリアクリルアミドゲルを用いてIEFを行なった。NOVEXの陰極と陽極、および、pH 3−7のためのIEFサンプル緩衝液を用い、等電点電気泳動用のノベックス社(NOVEX)の標準的なプロトコールを用いる。1レーン切り出し、10%レムリ(Laemmli)SDS−PAGEゲルを用いて2次元で電気泳動を行なった。2番目のレーンをゲルから切り出して、35個の画分に分けて、ゲル切片を緩衝液に浸漬し、各画分の酵素活性を測定した。3番目のレーンはゲルに残しておき、固定して、クーマシーR−250ブルー染色液によって染色し、NOVEX標準プロトコールを用いて脱染した。
【0159】
pI 4.2、M.W. 36 kDaおよびpI 5.4、M.W. 27 kDaをもつタンパク質に対応する画分において、エンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ(DNSオオムギβ−グルカン法)およびセルラーゼ(DNS CMC法)の有意な活性が見られた。画分の1つに存在するキシラナーゼB−Iを除去するために、DNSカバノキキシラン法を用いて画分の活性を調べた。β−グルカナーゼまたはセルラーゼの活性に相当する画分で、キシラナーゼ活性が検出された。
【0160】
E.動物を飼育するための酵素混合物の使用
実施例1:Penicillium funiculosumによって産生される酵素調製物の、ブロイラーの小麦−大麦混合飼料のエネルギー値(AME)に対する有効性の評価
この目的は、50%の小麦および22%の大麦を含む飼料の窒素出納(AME)についての補正を行なった、見かけの代謝可能エネルギーに対する酵素の有効性(β−グルカナーゼの活性:100 U.kg−1、およびキシラナーゼの活性:1100 U.kg−1)を明らかにすることである。随意の給餌を行ない、18日齢と21日齢の間に排泄物を集める欧州標準法(Bourdillonら、1990)を用いて、対照と酵素調製物(β−グルカナーゼの活性:100 U.kg−1、およびキシラナーゼの活性:1100 U.kg−1)についての実験を行なった。
【0161】
a.材料と方法
鳥:交配と交配条件
1日目のオスのロス(Ross)ブロイラーを、12日齢になるまで集合バタリーケージの中で飼育する。標準的なスターター飼料で飼育する。12日目に、鳥の重さを量り、処理毎にそれぞれのケージ10個の中に同じ数になるように分配し、馴化期間(最低5日間)の間は実験用飼料を与えた。
【0162】
標準的な温度および湿度プログラムを適用する。照明プログラムは、実験が終わるまで23時間一定の照明を行い、1時間暗黒とするものである。
【0163】
餌:鳥には、1日齢から12日齢までスターター飼料を与えてから、実験用飼料を与えた。
【0164】
実験用飼料
飼料には、50%の小麦および22%の大麦が含まれていた(表1.1)。20 kgのクランブルに酵素調製物をスプレーした。
【0165】
飼料中の酵素回収量を粘度測定法(SabatierとFish、1996)によって測定する。
【0166】
代謝可能エネルギーの測定
次の手順にしたがって、18日目に出納を開始した。
【0167】
17日目、鳥を一晩絶食させた;
18日目、鳥の体重を測り、清潔な採集用トレイの上に置く;
19日目、糞便を集めて凍らせる;
20日目、糞便を集めて凍らせ、一晩絶食させる;
21日目、糞便を集めて凍らせる。鳥の体重を測り、再飼育する。
【0168】
そして、糞便を凍結乾燥させてから餌のように磨砕する(1 mm、レッチ(Retsch)グラインダー)。飼料と排泄物のエネルギー総量を、IKA 5000断熱性カロリー計で測定する。タンパク質(N6.25、ケルダール(Kjeldahl)Z130法)と脂肪(Z160法)含量も測定する。得られた体重の18%のタンパク質を用いて、窒素出納に対する補正を行なった。
【0169】
b.結果および考察
窒素出納(AME)について補正した見かけの代謝可能エネルギー
畜産学的な結果と代謝可能エネルギーを表1.2に示す。処理間における畜産学的な結果に差異はなかった。
【0170】
成長中のブロイラーでは、酵素調製物によって、50%の小麦および22%の大麦を主原料とする飼料のAMEが6.2%(+204 kcal/kg DM(乾燥物))向上した。さらに、エネルギー消化性の変化が80から62 kcal.kg DMまで減少した。
【0171】
この大きな改善によって、Penicillium funiculosumが、小麦と大麦のデンプン以外の可溶性多糖類を加水分解するために産生する2つの活性(キシラナーゼとβ−グルカナーゼ)の長所が明らかになる。
【0172】
【表14】

【0173】
【表15】

【0174】
実施例2:小麦で飼育したブロイラーに対する、Penicillium funiculosumによって産生される酵素調製物の効果
Penicillium funiculosumによって産生される酵素調製物(β−グルカナーゼの活性:100 U.kg−1、およびキシラナーゼの活性:1100 U.kg−1)の、54%の小麦を含む飼料で飼育したブロイラーにおけるタンパク質と脂質の消化性である見かけの代謝可能エネルギー(AME)に対する効果を測定するために実験を行なった。磨砕との相関も調査した。
【0175】
欧州標準法(Bourdillonら、1990)(随意の給餌を行ない、18日齢から21日齢の間に排泄物を集める)にしたがった
(1)対照1(54%挽いた小麦粉)
(2)対照1+酵素調製物(β−グルカナーゼの活性:100 U.kg−1、およびキシラナーゼの活性:1100 U.kg−1
(3)対照2(30%全粒粉、24%挽いた小麦粉)
(4)対照2+酵素調製物(β−グルカナーゼの活性:100 U.kg−1、およびキシラナーゼの活性:1100 U.kg−1)。
【0176】
a.材料と方法
鳥:交配と交配条件
1日目のオスのロス(Ross)ニワトリを、12日齢になるまで集合バタリーケージの中で飼育する。そして、消化出納をとるために各バテリーケージに移す。
【0177】
標準的な温度および湿度プログラムを使用する。照明プログラムは、8日齢になるまで23時間照明を行ない、1時間暗黒とするものである。それから、同じ建物の中で覆いを重ねることを繰り返すことによって、15時間30分間照明、8時間30分間暗黒にした。
【0178】
餌:鳥には、1日齢から12日齢までスターター飼料を与えてから、実験用飼料を与えた。
【0179】
実験用飼料
飼料には、54%の小麦が含まれていた。特徴を表2.1に示す。飼料の組成を表2.2に示す。
【0180】
見かけの代謝可能エネルギーの測定
次の日程にしたがって、17日目に出納を開始した。
【0181】
17日目、鳥を一晩絶食させた;
18日目、鳥の体重を測り、清潔な採集用トレイの上に置く;
19日目、糞便を集めて凍らせる;
20日目、糞便を集めて凍らせ、一晩絶食させる;
21日目、糞便を集めて凍らせる。鳥の体重を測り、再飼育する。
【0182】
そして、糞便を凍結乾燥させてから餌のように磨砕する(1 mm、レッチ(Retsch)グラインダー)。飼料と排泄物のエネルギー総量を、IKA 5000断熱性カロリー計で測定する。タンパク質(飼料についてはN6.25、ケルダール(Kjeldahl)Z130法、糞便についてはZ135法)と脂質(Z160法)の含量も測定する。
【0183】
HPLC(飼料についてはZ100法、糞便についてはZ080法)によってアミノ酸プロファイルも調べた。AFNOR法(NFV18−106)を用いて、飼料と排泄物のリン含量を測定した。
【0184】
b.結果および考察
見かけの代謝可能エネルギー(AME)
成長結果と代謝可能エネルギーのデータを表2.3に示す。3日間にわたって測定したが、各処理の間で結果(体重増加、飼料摂取量)は異ならなかった。54%の挽いた小麦を含む対照飼料のAMEは3173 kcal/kgであった。同一の小麦全量を含むが、30%が全粒である飼料の代謝可能エネルギーは、理論値と比べて100 kcal/kg増加している。さらに、測定された異なる基準の標準偏差によって評価された変異も、全粒小麦では減少している。
【0185】
Penicillium funiculosumによって産生される酵素(β−グルカナーゼの活性:100 U.kg−1、およびキシラナーゼの活性:1100 U.kg−1)は、54%の小麦を主原料とする飼料で、小麦のすべてを挽いてある場合には代謝可能エネルギー値が+3.4%(122 kcal/kg DM)上昇し、30%の小麦が全粒で含まれている場合には+2.7%(101 kcal/kg DM)上昇する。
【0186】
栄養分の見かけの消化性(脂質、タンパク質およびアミノ酸)
小麦のすべてを挽くと、Penicillium funiculosumの酵素調製物による脂質とタンパク質の見かけの消化性が、それぞれ7%と2.7%増加する。小麦の一部を全粒にすると、全体的な栄養の消化性が上昇するために、それぞれ+3と+0.6%と増加分が少なくなる。ところで、全粒小麦を含む対照飼料での栄養分の消化性は、挽いた小麦しか含まないが酵素調製物を添加した実験用飼料の消化性と同じであった。
【0187】
見かけのアミノ酸消化性に対する酵素調製物の効果を表2.4に示す。酵素調製物による改善効果は、すべてを挽いた小麦粉では、平均して+2.9%、全粒では+1.1%改善し、見かけのタンパク質消化性に対する効果が確認された。
【0188】
見かけのリン保持とリン排出
見かけのリン保持に対する酵素調製物の効果を表2.5に示す。酵素調製物を添加することによって、見かけのリン保持は+8.0%と有意に増加する。
【0189】
この増加は、他の栄養分に見られる増加(基準によって+2.9から+3.5%:AME、タンパク質、脂質、アミノ酸)よりも大きい。したがって、このような増加は、栄養分の消化性が向上したため(キシラナーゼとβ−グルカナーゼの直接の効果)に生じた結果でもあろうが、小麦フィターゼの作用が向上した結果でもあろう。デンプン以外の多糖類を加水分解して、キシラナーゼとβ−グルカナーゼは、小麦の内生フィターゼがフィチン酸に結合しやすくなるようにする。
【0190】
このように、リンを消化利用が向上すると、リンの排出が減少する。すなわち、体重増加kgあたりのリンgで表すと、−8%であった。
【0191】
【表16】

【0192】
【表17】

【0193】
【表18】

【0194】
【表19】

【0195】
【表20】

【0196】
実施例3:成長中の七面鳥における、小麦を主原料とする飼料のAMEに対する酵素調製物の効果。
【0197】
このアッセイ法の目的は、次の実験デザインにしたがって、小麦を主原料とする飼料の見かけの代謝可能エネルギー(AME)に対する、Penicillium funiculosumからの酵素調製物(β−グルカナーゼの活性:100 U.kg−1、およびキシラナーゼの活性:1100 U.kg−1)の有効性を明らかにすることである。
【0198】
(1)対照;
(2)EP 1:酵素調製物(β−グルカナーゼの活性:100 U.kg−1、およびキシラナーゼの活性:1100 U.kg−1);
(3)EP 2:酵素調製物(β−グルカナーゼの活性:150 U.kg−1、およびキシラナーゼの活性:1650 U.kg−1);
随意の給餌を行ない、33日齢と37日齢の間の排泄物を集める欧州標準法(Bourdillonら、1990)を用いる。
【0199】
a.材料と方法
鳥:交配と交配条件
1日目のオスのBUT9七面鳥を20日齢になるまで集合バテリーケージの中で飼育した。その後、少なくとも7日間の馴化期間の後、消化出納をとるために各バテリーケージに移した。
【0200】
標準的な温度および湿度プログラムを使用した。照明プログラムは、最初の2週間は23時間一定の照明を行ない、1時間暗黒とするものである。その後実験が終わるまで、照明時間を15時間に減らし、暗黒を8時間にした。
【0201】
飼料:鳥には、1日齢から21日齢までスターター飼料を与えてから、実験用飼料を与えた。
【0202】
実験用飼料
飼料には、47%の小麦と33%大豆粗びき粉が含まれていた(表3.1)。対照飼料の20 kgのペレットに酵素をスプレーした。
【0203】
代謝可能エネルギーの測定
21日目に鳥の体重を測り、各処理あたり、それぞれ10個のケージに同じ数になるように分配してから、実験用飼料で飼育した。
【0204】
次の方法にしたがって、33日目に出納を開始した。
【0205】
32日目、鳥を一晩絶食させた;
33日目、鳥の体重を測り、清潔な採集用トレイの上に置いた[?];
34および35日目、糞便を集めて凍らせた;
36日目、糞便を集めて凍らせ、一晩絶食させる;
37日目、糞便を集めて凍らせる。鳥の体重を測り、再飼育する。
【0206】
次に、糞便を凍結乾燥させてから餌のように磨砕する(1 mm、レッチ(Retsch)グラインダー)。飼料と排泄物のエネルギー総量をIKA 5000断熱性カロリー計で測定する。体重増加(g)とその窒素含量(21%粗タンパク質)を考慮して、窒素出納についてAMEを補正する。
【0207】
そして、糞便を凍結乾燥させてから餌のように磨砕する(1 mm、レッチ(Retsch)グラインダー)。飼料と排泄物のエネルギー総量を、IKA 5000断熱性カロリー計で測定する。タンパク質(飼料についてはN6.25、ケルダール(Kjeldahl)Z130法、糞便についてはZ135法)の含量も測定し、HPLC(飼料についてはZ100法、糞便についてはZ080法)を行なってアミノ酸プロファイルを調べた。
【0208】
b.結果および考察
畜産学的な結果と代謝可能エネルギーを表3.2に示す。出納を行なっている間、各処理間における成長効果に有意な差異はなかった。
【0209】
成長中の七面鳥では、酵素調製物によって、小麦を主原料とする飼料のAMEが、EP 1とEP 2のそれぞれについて2.2%と5.4%向上した。
【0210】
このように大きな改善が観察されたことは、デンプン以外の小麦の多糖類を加水分解して、成長中の七面鳥における小麦のエネルギー値を向上させるための2つの活性(キシラナーゼとβ−グルカナーゼ)で、酵素調製物に含まれている活性に利点があることを示している。
【0211】
【表21】

【0212】
【表22】

【0213】
実施例4:成長中のブタにおける、Penicillium funiculosumによって産生される酵素調製物の、小麦を主原料とする完全飼料の有効性の評価
目的は、成長中のブタの小腸におけるエネルギー消化に対する、小麦を主原料とする飼料への酵素添加の効果を評価することである。酵素調製物の通常の活性レベルは、キシラナーゼでは1100 U.kg−1、β−グルカナーゼでは100 U.kg−1である。
【0214】
a.材料と方法
動物
3種類の飼料と3種類の期間、および各飼育期間当たり2頭のブタについて、ラテン方格法によって処理を試験した。試験期間を通して、ブタの体重にしたがって一定のレベルで飼料を与えた。
【0215】
実験飼料
品質の劣る小麦を主原料とし、その他の典型的な飼料成分によってバランスをとった飼料で、6頭の成長中のブタを飼育した(表4.1. を参照)。飼料は次のいずれかで飼育した:
1.添加なし(基本飼料);
2.1×レベル(β−グルカナーゼの活性:100 U.kg−1、およびキシラナーゼの活性:1100 U.kg−1)の酵素調製物を添加したもの(1);
3.2×レベル(β−グルカナーゼの活性:200 U.kg−1、およびキシラナーゼの活性:2200 U.kg−1)の酵素調製物を添加したもの(2)。
【0216】
酵素調製物をコーンスターチで希釈してプレミックスを作製して、それを飼料に適量加えることによって正確な量の飼料を投与した。
【0217】
サンプル収集
RPNA研究所の標準的な方法にしたがって、各週48時間回腸液を集めた。回腸液のサンプルと試験用飼料のサンプルのエネルギーを、Sandersによる爆灼熱量測定法によって解析して消化可能なエネルギーを測定した。必要な場合には、さらに解析を行なうためにサンプルの等量液を保存しておいた。
【0218】
統計解析
回腸液、飼料、および飼料摂取量の爆灼熱量測定の結果から、粗エネルギーの消化性を計算した。消化性の計算結果について分散分析を行なった。
【0219】
【表23】

【0220】
b.結果と考察
ブタの飼料にキシラナーゼを添加することによって、エネルギー消化性が少なくとも6%増加した。このことは、この酵素が原料(特に、小麦)の細胞壁の分解と、小腸における付加的なエネルギーの放出を促進することを示している。
【0221】
【表24】

【0222】
実施例5:反芻動物における、藁、トウモロコシのサイレージ、干し草および草のサイレージ飼料の効率に対する、Penicillium funiculosumによって産生される酵素調製物の効果。
【0223】
HFT試験(Hohenheimer Futterwertesten, Menkeら、1979、1988)は、緩衝したルーメン液の中の飼料材料の発酵によって産生される気体容量によって原料の分解を測定できるインビトロのインキュベーション試験法である。
【0224】
a.材料と方法
200 mgの乾燥して磨砕した基質を、10 mlのルーメン液に20 mlの緩衝液を加えたものをシリンジに入れて、温度調節したインキュベーター(39℃)の中でローターでゆっくり撹拌しながらインキュベートした。産生された気体の容量を24時間後に記録した。ブランク(基質なし)、標準的な干し草対照、および標準的な濃度対照(気体産生の正味容量の既知の値をもつ)を用いて結果を補正し、24時間で産生された気体の正味容量を計算する。24時間で産生された気体容量、およびMenkeら(1988)によって提唱された予測式を用いて、基質のエネルギー値とOMD(有機物の消化率)を計算する。
【0225】
ルーメンにカニューレを挿入し、午前8時と午後7時に、6 kgの干し草と2 kgの濃縮液からなる(比率75/25)配合飼料を与えた2頭の痰を吐かない牛からルーメン液を採集する。ルーメン液の採集は、午前の給餌の直前に行なう。ルーメン液を濾過して、食物の粒子が通過しないようにして、厳密に嫌気的な条件を維持する。
【0226】
この実験の目的は、HFTインキュベーションの15時間前に酵素調製物を飼い葉に施用することの効果を調べることであった。
【0227】
酵素調製物による前処理:床の上の藁、トウモロコシのサイレージ、干し草および草のサイレージなどの飼い葉に酵素溶液をスプレーする。スプレーは、1 mlの酵素調製物を2 kgの飼い葉乾燥物の上に行なう。サンプルの均一性を向上させるために、縁(約10 cm)にある飼い葉を除く。処理後、飼い葉を手で混ぜて、スプレーしてから15時間室温で放置する。1回のシリーズを通して酵素調製物に接触させた15時間後にHFTインキュベーションを行ない、各処理ごとに6回反復する。
【0228】
b.結果と考察
藁、トウモロコシのサイレージ、干し草および草のサイレージについて、24時間後の正味気体容量を表5.1に示す。
【0229】
前処理によって、藁にセルラーゼを施用すると、対照に対して、気体の正味容量が18%増加する。この増加量は、トウモロコシのサイレージでは8%、干し草のサイレージでは9.5%、また、草のサイレージで9%である。
【0230】
前処理前後のさまざまな飼い葉についてのOMDを表5.2に示す。対照と比べると、藁、トウモロコシのサイレージ、干し草および草のサイレージでのOM消化率の向上率はそれぞれ、藁、8.5%、トウモロコシのサイレージ、5%、干し草のサイレージ、5.4%、および草のサイレージ5%である。
【0231】
飼い葉(藁、トウモロコシのサイレージ、干し草および草のサイレージ)を酵素調製物で15時間前処理すると、ルーメン基質のインキュベーション強度と基質のOM消化率とが向上する。
【0232】
【表25】

【0233】
【表26】

【0234】
実施例6:Penicillium funiculosumによって産生される酵素調製物の、小麦または大麦で飼育した産卵鶏の生産性に対する効果
本実験の目的は、小麦または大麦を主原料にした飼料で飼育した産卵鶏の生産性パラメータに対する酵素調製物添加の効果を評価することであった。
【0235】
a.材料と方法
実験設計:4種類の処理×8回反復×5個のケージ×3羽のニワトリ
処理:1.対照1:60%小麦
2.対照1+酵素調製物
3.対照2:60%大麦
4.対照2+酵素調製物
動物、収容、管理
480羽のHy−Line系統の茶色のニワトリに対して実験を行なった。各反復区は、同じ給餌器がついた5個の囲いで構成されていた。すなわち、それぞれ15羽からなる全部で32の反復区で構成されていた。2つの同じような部屋に分配して、反復区にプログラムされた照明と換気を行なった。17週齢のメンドリが到着した日から、1日14時間の照明プログラムを開始し、2週間おきに30分ずつ時間を延長し、最大1日17時間の照明にまでもって行った。実験開始時にはメンドリは22週齢で、産卵期間の最初の5ヶ月間生存させた。
【0236】
飼料と飼育
60%小麦(飼料1)、および60%大麦(飼料2)と、10%のヒマワリ粗びき粉を主原料とする2種類の実験用飼料があった。これらの組成を表6.1に示す。穀類の特性を表6.2に示す。
【0237】
対照
化学分析:
・飼料サンプル
乾物、粗タンパク質、粗脂質、および灰分を分析して、実験用飼料の品質管理を行なった。キシラナーゼ活性(T−1、T−2)とβ−グルカナーゼ活性(T−3、T−4)は、すりつぶした飼料で測定した。
【0238】
・測定
飼料消費と飼料効率を4週間ごとに記録した。実験の最初と最後にメンドリの体重を測定した。それぞれ4週間からなる5つの期間中、産卵数、卵の重さ、および汚れた卵や欠陥のある卵を毎日記録した。死亡数を調べて、死亡原因とともに毎日記録した。
【0239】
b.結果と考察
生産性試験
試験期間中に得られた生産性パラメータを表6.3から6.5に示す。最初の2期間(22週から30週)と、実験の全期間で、統計的に、汚れた卵の割合は処理による影響を受けていた(P>0.005)。酵素なしの小麦で飼育した動物は、より多くの汚れた卵を産卵した。処理区間の統計的な有意差は、第2期から実験が終わるまで、産卵率(P>0.005)と卵の重さ(P>0.005)で見られた。大麦で飼育された動物は、小麦で飼育された動物よりも産卵率が高く、また、重い卵を産んだ。酵素調製物は、これらのパラメータを増加させるように見えるが、統計的に確率の0.05レベルではなかった。
【0240】
実験期間のすべてにおいて、両飼料のエネルギー量の違いによって(大麦飼料は、2600 kcal/kgのエネルギー量になるよう調製されたが、小麦飼料は2800 kcal/kgを含んでいた)、処理区T−3およびT−4(大麦飼料)の動物の飼料摂取量は、小麦飼料で飼育した動物の飼料消費量よりも高かった。全期間における2つのタイプの飼料のエネルギー値の違いと、動物による飼料消費量を考え合わせると、すべての動物の1日当たりのエネルギー消費量は同じであることが分かる。
【0241】
最初の期間における産卵率は低いために、この期間における実験用飼料の飼料効率(飼料のg数/卵のg数)は非常に高かった。最初の2つの期間で、小麦処理に関する飼料効率は、大麦処理で得られた飼料効率よりも良好であったが、第3期になって、最も高い産卵率が記録されるようになると、どちらのタイプの飼料でも同様の効率が示された。34週目から実験が終わるまで、大麦飼料は、小麦で処理したものよりも高い飼料効率を示した。酵素は、飼料効率を向上させる傾向にある(P>0.005)。全期間にわたって、β−グルカナーゼは、大麦飼料の飼料効率を向上させた(P=0.066で)。
【0242】
表6.4は、酵素調製物を添加した小麦飼料で飼育した産卵鶏は、添加なしで飼育したものよりも高い産卵率(+1.5絶対値)、平均卵重(+0.37 g)、および低い飼料転換率(−2.7%)を示す傾向にあることが分かる。
【0243】
表6.5は、酵素調製物を大麦に添加することによって、対照大麦飼料で飼育したものに比べ、産卵率(+4%)、平均卵重(+0.7%)、および飼料転換率(−5.7%)が向上していることが分かる。
【0244】
【表27】

【0245】
【表28】

【0246】
【表29】

【0247】
【表30】

【0248】
【表31】

【0249】
文献
Bourdillon A.,Carre B.,Conan L.,Duperray J.,Franscesch M.,Fuentes M., Huyghebaert G.,Jansen W.M.M.A.,Leclercq B.,Lessire M.,McNab J.,Rigoni M., Wiseman J., 1990.若いオンドリの代謝可能エネルギーをインビボで測定するための欧州標準法:生殖能力、加齢効果、予測値との比較。British Poultry Science 31,567−576.
Sabatier A.M.,Fish N.M. 1996.飼料酵素の解析法:方法論的問題?Journal of Applied Poultry Research 5,408−413.
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Svihus B.,Herstad O.,Newman C.W.,Newman R.K.1997.British Poultry Science 38,524−529.
【図面の簡単な説明】
【0250】
【図1−1】Penicillium funiculosumキシラナーゼCタンパク質のアミノ酸配列。
【図1−2】Penicillium funiculosumキシラナーゼCタンパク質のアミノ酸配列。
【図2】キシラナーゼBI(XnyBI)PCR生産物の塩基配列とアミノ酸配列。
【図3】フェルロイルエステラーゼA(faeA)PCR生産物の塩基配列とアミノ酸配列。
【図4】Penicillium funiculosumフェルロイルエステラーゼB(faeB)タンパク質(FAE−VまたはFAE−I)のアミノ酸配列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブダペスト条約IMI番号378536として寄託された新規のペニシリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum)。
【請求項2】
ブダペスト条約の下、国際菌類学研究所寄託番号:IMI 378536として寄託されたPenicillium funiculosumから得ることのできる新規の酵素混合物。
【請求項3】
Penicillium funiculosum IMI 378536から得ることのできる新規の酵素混合物で、pH 3.0と5.0の間に含まれる至適pHで、少なくともキシラナーゼ活性をもつ酵素混合物。
【請求項4】
Penicillium funiculosum IMI 378536から得ることのできる新規のβ−グルカナーゼ。
【請求項5】
Penicillium funiculosum IMI 378536から得ることのできる新規のフェルロイルエステラーゼ。
【請求項6】
少なくとも、キシラナーゼ、β−グルカナーゼセルラーゼ、およびフェルロイルエステラーゼを含む、Penicillium funiculosum IMI 378536から得ることのできる新規の酵素混合物。
【請求項7】
DNS小麦アラビノキシラン法、pH 3.5によって規定されるキシラナーゼ、および、DNS CMC法、pH 5.0によって規定されるβ−グルカナーゼ/セルラーゼの比率が10/1から1/4である、請求項6記載の新規の酵素混合物。
【請求項8】
全有機固形分としての微生物生産物 4%から10%
抗菌剤 0.005%から0.35%
ソルビトール 20%から50%
不凍剤 0から40%
濃縮濾過した醗酵培地 0.3から76%
pH 3から5になるよう緩衝調整したもの
を含む、Penicillium funiculosum IMI 378536から得ることのできる新規の液体組成物。
【請求項9】
抗菌剤および/または抗細菌剤が、ソルビン酸とその塩、安息香酸とその塩、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル、フマル酸、塩類およびエステル、塩化ナトリウム、または塩化カリウムから選択される、請求項9記載の新規の液体組成物。
【請求項10】
不凍剤が、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール、グリセロールから選択される、請求項8または9記載の新規の液体組成物。
【請求項11】
以下の組成をもち、Penicillium funiculosum IMI 378536から得ることのできる新規の粉末組成物:
全有機固形物としての菌体生産物 16%から40%
担体 59%から83%
その他の乾燥した醗酵培地成分 1%。
【請求項12】
担体が、小麦粉、澱粉、石膏、マルトデキストリン、トウモロコシ固形物、また、トウモロコシの挽割粉、小麦シャープス、小麦ふすま、ライムギのくず殻のように穀物処理から得られる副生産物から選択される、請求項11記載の新規の粉末組成物。
【請求項13】
家禽、ブタ、反芻動物などの家畜動物を飼育するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の生産物の新規な使用。
【請求項14】
小麦、大麦、ライ麦、ライ小麦、オート麦、イネなどの穀物;大豆、ヒマワリ、ナタネなどの油糧種子;および小麦ふすまなどの穀物の副生産物の消化性を高めるための、請求項13記載の生産物の新規な使用。
【請求項15】
リンの排泄を減少させるための、請求項6から12のいずれか一項に記載の生産物の新規な使用。
【請求項16】
リンの消化による利用性を高めるための、請求項6から12のいずれか一項に記載の生産物の新規な使用。
【請求項17】
アミノ酸の消化性を高めるための、請求項1記載の生産物の新規な使用。
【請求項18】
バテリーの空気中のアンモニアを減少させるための、請求項のいずれかに記載の生産物の新規な使用。
【請求項19】
異種由来の遺伝子挿入物を含むPenicillium funiculosum。
【請求項20】
相同遺伝子の挿入、欠失、または改変によって、該遺伝子によるゲノムの改変を含むPenicillium funiculosum。
【請求項21】
配列番号:1および図1に示したアミノ酸配列をもつ新規のポリペプチド。
【請求項22】
配列番号:1に示した塩基配列をもつ新規のポリペプチド、またはその変異体。
【請求項23】
配列番号:4および図2に示したアミノ酸配列をもつ新規のポリペプチド。
【請求項24】
配列番号:4に示した塩基配列をもつ新規のポリペプチド、またはその変異体。
【請求項25】
配列番号:5および図3に示したアミノ酸配列をもつ新規のポリペプチド。
【請求項26】
配列番号:5に示した塩基配列をもつ新規のポリペプチド、またはその変異体。
【請求項27】
配列番号:6および図4に示したアミノ酸配列をもつ新規のポリペプチド。
【請求項28】
配列番号:6に示した塩基配列をもつ新規のポリペプチド、またはその変異体。
【請求項29】
次の内部アミノ酸配列をもつ新規のポリペプチド:AEAINYNQDY。
【請求項30】
キシラナーゼCのポリペプチドまたはその変異体をコードする塩基配列。
【請求項31】
キシラナーゼBIのポリペプチドまたはその変異体をコードする塩基配列。
【請求項32】
フェルロイルエステラーゼAのポリペプチド、またはその変異体をコードする塩基配列。
【請求項33】
フェルロイルエステラーゼBのポリペプチド、またはその変異体をコードする塩基配列。
【請求項34】
請求項22、24、26もしくは28、または請求項30から33のいずれか一項に記載の塩基配列を含むベクター。
【請求項35】
プラスミド、ファージ、またはウイルスである、請求項34記載のベクター。
【請求項36】
請求項21から29のいずれか一項に記載の新規のポリペプチドを宿主細胞の中で発現させるための、請求項34記載のベクターの使用。
【請求項37】
請求項34記載のベクターによって形質転換された宿主細胞。
【請求項38】
単細胞生物または多細胞生物から単離される、請求項37記載の宿主細胞。
【請求項39】
請求項21から29のいずれか一項に記載の新規のポリペプチド、または請求項2、6もしくは7記載の酵素混合物を産生するための、請求項37記載の宿主細胞の使用。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−61105(P2007−61105A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−311005(P2006−311005)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【分割の表示】特願2000−547276(P2000−547276)の分割
【原出願日】平成11年5月6日(1999.5.6)
【出願人】(503008620)アジツソ・フランス・エス・アー・エス (1)
【Fターム(参考)】