説明

酸化スズと酸素欠損スズ化合物を含む複合物及びその製造方法

【課題】酸化スズとその酸素欠損スズ化合物を含む複合物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】尿素等の窒素含有化合物の存在下において、酸化スズを400〜700℃の温度に加熱し、酸化スズの一部を還元して、酸化スズと金属スズ微結晶等の酸素欠損スズ化合物を含む複合物を製造する。この複合物は、酸化スズの性能と酸素欠損スズ化合物の性能を持ち、例えば、金属スズ微結晶等の酸素欠損スズ化合物による優れた導電性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化スズと酸素欠損スズ化合物を含む複合物及びその製造方法に関する。また、前記の複合物を含む粒子及びその製造方法に関する。更に、前記の複合物又は複合物を含む粒子を含有する分散体、塗料組成物、樹脂組成物、塗膜、成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化スズは、半導性、可視光透過性、導電性、近赤外線遮蔽性、熱伝導性等に優れた無機酸化物材料であり、化学的、熱的にも安定な材料である。具体的には、二酸化スズ自体は半導性を有するものであり、半導体や光触媒として用いられている。微粒子状の二酸化スズは可視光透過性を有し、透明フィラーとして用いられている。また、二酸化スズの粒子内部にアンチモン、リン、フッ素、ニオブ、タングステン等の異原子をドープすると、導電性、近赤外線遮蔽性等を持ち、導電性フィラーとして用いられている。また、二酸化スズSnOの化学量論比から僅かに酸素欠損が生じたSnO2−zの化合物、更には一酸化スズSnOも知られている。
更に、酸化スズは、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、雲母等の基体粒子の表面に被覆して、酸化スズの性能と基体粒子の性能を併せ持つ複合フィラーとしても使用されている。例えば、アンチモン、リン、フッ素、ニオブ、タングステン等の異原子をドープした二酸化スズを被覆した二酸化チタン粒子は白色導電性フィラーとして用いられている。
【0003】
このような酸化スズは、例えば導電性等を付与するためにフィラーとしてプラスチックやゴム等に混入したり、シート、板等の基材上に形成する塗膜に配合したりして用いられる。具体的には、アンチモン、リン、フッ素、ニオブ、タングステン等の異原子をドープした二酸化スズ微粒子は、極めて低抵抗、低ヘーズであり、しかも基体との密着性や膜強度が高い透明導電膜が作製できるため、OA機器等のディスプレイの帯電防止、電磁界シールドに用いられ、また、タッチパネルや液晶ディスプレイ等のディスプレイ装置の透明電極にも利用されている。
【0004】
二酸化スズは、4価のスズ塩水溶液とアルカリ溶液とを反応させた沈殿物を焼成して製造する。例えば、特許文献1には、4価のスズ塩水溶液とアルカリ溶液の反応をpHが0.5〜4の範囲で行い、スズ含有沈殿を生成させ、次いで、400〜1200℃の温度範囲で焼成することを記載している。また、アンチモンをドープした二酸化スズは、4価のスズ塩水溶液とアルカリ水溶液とを水中に並行的に添加し、中和反応液のpHを3以上に保持しながら中和して酸化スズの水和物を生成させ、次いで該生成物の水中に塩化アンチモンの溶液とアルカリ水溶液とを並行的に添加し、中和反応液のpHを3以上に保持しながら中和して該生成物の表面に酸化アンチモンの水和物を生成させ、しかる後焼成する方法が知られている(特許文献2を参照)。また、酸素欠損が生じたSnO2−zは、二酸化スズを水素還元して製造することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−029744号公報
【特許文献2】特許第3647929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のとおり、種々の組成を有する酸化スズが知られているが、それらが持つ性能のより一層の改善が求められている。例えば、導電性フィラーとして、アンチモンをドープした二酸化スズは、毒性の懸念からアンチモンをドープしていない酸化スズが求められている。また、リンをドープした二酸化スズは、導電性が不安定となり易い。酸素欠損が生じたSnO2−zは、水素還元のため反応の制御が難しく、酸素欠損の程度も安定しないため、導電性が不安定となり易い等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは、酸化スズの性能を改善するために、窒素含有化合物の存在下に酸化スズを加熱すると、酸化スズの一部が還元されて金属スズ微結晶等のスズの更なる酸素欠損化合物が生成し、酸化スズと酸素欠損スズ化合物を含む複合物が得られること、このものは、優れた導電性を有し、その安定性にも優れたものであることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)SnO2−xで示される酸化スズ(式中、xは0≦x<2を満たす実数である。)とSnO2−x−yで示される酸素欠損スズ化合物(式中、xは前記のとおりであり、yは0<y≦2−xを満たす実数である。)とを含む複合物、
(2)前記の複合物を含む粒子、
(3)窒素含有化合物の存在下、SnO2−xで示される酸化スズ(式中、xは0≦x<2を満たす実数である。)を加熱する、SnO2−xで示される酸化スズ(式中、xは0≦x<2を満たす実数である。)とSnO2−x−yで示される酸素欠損スズ化合物(式中、xは前記のとおりであり、yは0<y≦2−xを満たす実数である。)とを含む複合物の製造方法、
(4)前記(1)の複合物又は(2)の粒子を含有する分散体、塗料組成物、樹脂組成物、成形物、
(5)前記の分散体、塗料組成物を塗布し、形成された塗膜、などである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の複合物は、SnO2−xで示される酸化スズ(式中、xは0≦x<2を満たす実数である。)とSnO2−x−yで示される酸素欠損スズ化合物(式中、xは前記のとおりであり、yは0<y≦2−xを満たす実数である。)とを含有することから、酸化スズの性能と酸素欠損スズ化合物の性能とを併せ持ち、しかも化学的、熱的にも安定な材料である。例えば、金属スズ微結晶等の酸素欠損スズ化合物による優れた導電性を有し、その安定性も高い。また、近赤外線遮蔽性能、熱伝導性能等の改善が期待される。
また、前記の複合物を含む粒子として用いることができ、また、前記の複合物を基体粒子の表面に被覆して用いることもできる。
本発明の複合物の製造方法は、尿素化合物等の窒素含有化合物の存在下に酸化スズを還元する方法であり、大掛かりな装置を要せず、また、比較的安価な原材料を用いているので、工業的に有利に、しかも、水素やアンモニア、一酸化炭素のような爆発性や自己燃焼性を持った気体を用いずに製造することができる。
更に、本発明は、前記の複合体又は複合体を含む粒子を含有する分散体、塗料組成物、樹脂組成物、成形物、塗膜などであり、酸化スズの性能と酸素欠損スズ化合物の性能とを付与するために用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の複合物は、SnO2−xで示される酸化スズ(式中、xは0≦x<2を満たす実数である。)とSnO2−x−yで示される酸素欠損スズ化合物(式中、xは前記のとおりであり、yは0<y≦2−xを満たす実数である。)とを含む。複合物に含まれる酸化スズは、SnO2−xで示され、式中、xは0≦x<2を満たす実数であり、二酸化スズ、一酸化スズ、酸素欠損が生じた酸化スズ化合物や、それらにアンチモン、リン、フッ素、ニオブ、タングステン等の異原子をドープした化合物を含む。特に化学的、熱的に安定な二酸化スズ自体が好ましく、それはアンチモンをドープしていない二酸化スズがよい。また、複合物に含まれる酸素欠損スズ化合物は、SnO2−x−yで示され、式中、xは前記のとおりであり、yは0<y≦2−xを満たす実数であり、前記のSnO2−xで示される酸化スズよりも更に酸素欠損が生じた化合物で、金属スズ(0価の状態)にまで還元されてもよく、アンチモン、リン、ニオブ、タングステン等の異原子をドープしたものであってもよい。前記の酸化スズ、酸素欠損スズ化合物はX線回折法により確認でき、両者が含まれているものを複合物という。複合物の形態は、酸化スズと酸素欠損スズ化合物の何れかがコア粒子となり、他方の粒子が表面に被覆されてなるものや、酸化スズの粒子と酸素欠損スズ化合物の粒子の何れかが層状となっているもの等が挙げられる。これらの粒子の形状は、球状、塊状等の等方性形状、針状、棒状、板状、薄片状等の異方性形状等、どのようなものであってもよい。また、酸化スズと酸素欠損スズ化合物とはなんらの結合状態が確認できなくてもよく、酸化スズと酸素欠損スズ化合物との混合物でもよい。酸化スズ粒子の表面及び/又は内部に酸素欠損スズ化合物を含有させるのが好ましく、酸化スズ粒子の表面近傍に存在させるのがより好ましく、酸化スズ粒子の表面近傍に金属スズ微結晶を存在させるのが更に好ましい。このような状態とすることによって、酸素欠損スズ化合物の性能をより一層活用することができる。
また、酸化スズを尿素化合物等の窒素含有化合物の存在下に加熱することにより得られた複合物が更に好ましく、このようにして得られた複合物には窒素元素が含まれることがある。
【0011】
酸素欠損スズ化合物の含有量は用途に応じて適宜設定することができ、酸化スズの重量に対して0.1〜1000重量%程度が好ましく、1〜500重量%がより好ましい。導電性フィラーとしては、酸化スズの重量に対して5〜200重量%程度が好ましく、10〜100重量%がより好ましい。複合物の大きさは、用途に応じて適宜設定することができるが、透明性を確保するには、微粒子が好ましく、0.005〜10μm程度がより好ましく、0.01〜1μmが更に好ましい。また、複合物の粒子表面には、溶媒への分散性、樹脂の親和性等の観点から、従来の界面活性剤、カップリング剤、カルボン酸、ポリオール、アミン、シロキサン等の有機化合物やアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、チタン等の酸化物や含水酸化物の無機化合物を被覆してもよい。それらの被覆量は適宜設定することができるが、複合物に対して概ね1〜100重量%程度が好ましい。
【0012】
本発明の粒子は、酸化スズと酸素欠損スズ化合物とを含む複合物を含有する。好ましい形態は、前述のとおり酸素欠損スズ化合物を表面及び/又は内部に含有した酸化スズ粒子である。また、別の好ましい形態は、前記の複合物を基体粒子の表面に被覆したものであり、より好ましい形態は、酸素欠損スズ化合物を表面及び/又は内部に含有した酸化スズ粒子を基体粒子の表面に被覆したものである。基体粒子としては複合物を被覆できるものであればいずれのものでも使用することができ、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、雲母等を用いることができる。複合物の被覆量は用途に応じて適宜設定することができ、基体粒子の重量に対して0.1〜500重量%程度が好ましく、1〜250重量%がより好ましい。導電性フィラーとしては、基体粒子の重量に対して1〜500重量%程度が好ましく、10〜100重量%がより好ましい。基体粒子の大きさは、用途に応じて適宜設定することができるが、フィラーとして用いるには0.005〜10μm程度がより好ましく、0.01〜1μmが更に好ましい。得られた基体粒子には、後述の窒素含有化合物の存在下に加熱処理すると窒素元素が含まれることがある。また、本発明の基体粒子の表面には、溶媒への分散性、樹脂の親和性等の観点から、従来の界面活性剤、カップリング剤、カルボン酸、ポリオール、アミン、シロキサン等の有機化合物やアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、チタン等の酸化物や含水酸化物の無機化合物を被覆してもよい。それらの被覆量は適宜設定することができるが、基体粒子に対して概ね1〜100重量%程度が好ましい。
【0013】
本発明の複合物の製造方法は、窒素含有化合物の存在下、SnO2−xで示される酸化スズ(式中、xは0≦x<2を満たす実数である。)を加熱する。窒素含有化合物としては、加熱により分解し酸化スズの一部を酸素欠損スズ化合物に還元できる、窒素を分子内に含む有機化合物であればいずれのものも用いることができる。例えば、炭酸アンモニウム、水酸化アンモニウム等のアンモニア化合物、アルキルアミン、尿素化合物等のアミン化合物、酸アミド等のアミド化合物等を用いることができ、還元力が強い尿素化合物がより好ましい。
【0014】
本発明に用いられる尿素化合物としては、下記構造式(化1)で表されるものか、下記構造式(化1)に含まれる尿素が加熱時に分解して生じる化合物、例えばトリアジン環を有する化合物であるシアヌル酸やメラミン等、あるいはメラミンを加熱して生成するメレムやメロン等を用いることができる。また、本発明に用いられる尿素化合物としては、下記構造式(化1)に記載された炭素と二重結合する酸素の代わりに硫黄が結合したもの(例えばチオ尿素等)も用いることができる。
【0015】
【化1】

【0016】
構造式(1)において、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子;アルキル基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル等;アルケニル基、好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基、例えばビニル、アリルなど;アリール基、好ましくは炭素数6〜10のアリール基、例えばフェニルなど;一級アミノ基;アルキルアミノ基、好ましくは炭素数1〜6のアルキルアミノ基、例えばメチルアミノ、エチルアミノなど;またはジアルキルアミノ基、好ましくは炭素数2〜6のジアルキルアミノ基、例えばジメチルアミノ、ジエチルアミノなど;を表す。R1 、R2 、R3 及びR4 は、それぞれが連結して5〜6員環を形成してもよい。これらの基はさらに置換基を有してもよい。
【0017】
置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
【0018】
これらのうち、尿素(融点:133℃)、チオ尿素(融点:182℃)、ビウレット(融点:186〜189℃)、シアヌル酸(融点:320〜360℃)が、取り扱い易さの点で好ましく、その中でも、尿素やチオ尿素は安価かつ安定して入手できる点で、更に好ましい。これらのうち、チオ尿素を用いる場合は、尿素と比べて導電性の付与効果が高い点で好ましい。一方、尿素を用いる場合は、チオ尿素と比べて得られる酸化スズ粒子の白色度を高く保つことができる点で好ましい。
【0019】
一方、導電性を付与する観点では、シアヌル酸やメラミン(融点:354℃)のように、構造内にトリアジン環を有する化合物が好ましく、その中でも、メラミンが好ましい。上記のトリアジン環を構造内に有するものは融点が300℃以上と高く、融液となる温度が、後述の加熱する工程における温度領域に近い。このため、上記のトリアジン環を有する化合物は、融液の状態で酸化スズ粒子の表面を覆いながら分解が進み易く、酸化スズの還元反応が起こり易いと考えられる。
【0020】
このため、尿素化合物としては、融点が100℃以上のものが好ましく、150℃以上であるものがより好ましく、200℃以上であるものが更に好ましく、300℃以上であるものが特に好ましい。
【0021】
本発明で使用する酸化スズは、SnO2−xで示され、式中、xは0≦x<2を満たす実数であり、二酸化スズ、一酸化スズ、酸素欠損が生じた酸化スズ化合物や、それらにアンチモン、リン、フッ素、ニオブ、タングステン等の異原子をドープした化合物を用いることができる。特に化学的、熱的に安定な二酸化スズ自体が好ましく、それはアンチモンをドープしていない二酸化スズがよい。例えば、スズ(IV又はII)化合物とアルカリと必要に応じてドーパントとを混合し50℃以上に加熱し、スズ化合物を加水分解して得られたものは微粒子であるため好ましいものである。スズ化合物としては、水溶性のスズ化合物が好ましく、塩化スズがより好ましい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ、炭酸ナトリウム等の炭酸アルカリ、炭酸アンモニウム等のアンモニウム化合物、アンモニアなどを用いることができ、そのうち水酸化アルカリ、特に水酸化ナトリウムが好ましい。加水分解して得られた酸化スズを予め焼成しておいてもよく、焼成温度としては適宜設定することができ、具体的には400〜700℃の温度が好ましく、550℃〜700℃がより好ましく、600℃〜700℃が更に好ましい。
【0022】
酸化スズを前記の窒素含有化合物の存在下に加熱すると、窒素含有化合物により酸化スズの一部が還元され、酸化スズと酸素欠損スズ化合物とを含む複合物が製造できる。酸化スズは、前記のとおり、SnO2−xで示され、式中、xは0≦x<2を満たす実数であり、二酸化スズ、一酸化スズ、酸素欠損が生じた酸化スズ化合物や、それらにアンチモン、リン、フッ素、ニオブ、タングステン等の異原子をドープした化合物であってもよい。また、酸素欠損スズ化合物は、SnO2−x−yで示され、式中、xは前記のとおりであり、yは0<y≦2−xを満たす実数であり、前記のSnO2−xで示される酸化スズよりも更に酸素欠損が生じた化合物で、金属スズ(0価の状態)にまで還元されてもよく、アンチモン、リン、ニオブ、タングステン等の異原子をドープしたものであってもよい。具体的な方法としては、酸化スズと窒素含有化合物とを混合して加熱したり、酸化スズを加熱する際に窒素含有化合物の固体、液体又は気体を添加したりすることができ、前者の酸化スズと窒素含有化合物とを混合して加熱する方法が簡便で好ましい。酸化スズと窒素含有化合物とを混合するには任意の方法を用いることができ、具体的には、粉体の状態で混合する乾式混合、スラリーの状態で混合する湿式混合のいずれでもよく、撹拌混合機等の従来の混合機を用いて行うことができる。また、各種の粉砕機、噴霧乾燥機、造粒機、成形機等を用いて、酸化スズの粉砕、乾燥、造粒又は成形を行う際に、窒素含有化合物を混合することもできる。また、窒素含有化合物を適当な溶媒に溶解してから酸化スズと混合してもよい。窒素含有化合物の混合割合は適宜設定することができるが、酸化スズに対して0.1〜1000重量%程度が好ましく、1〜500重量%がより好ましい。一方、窒素含有化合物を酸化スズの加熱の際に添加するには、加熱炉中に尿素化合物等の窒素含有化合物を固体又は液体又は気体の状態で適宜添加するのが好ましい。例えば、尿素化合物は固体又は液体の状態で添加することができる。
【0023】
酸化スズの加熱は、混合あるいは添加した窒素含有化合物が分解し、酸化スズの一部が酸素欠損スズ化合物に還元される条件で行う。加熱雰囲気としては、大気中でもあるいは、水素ガス、アンモニアガス、ヒドラジンガスなど従来公知の還元性ガス雰囲気でもよいが、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気が好ましい。加熱温度は、還元反応が進む温度であれば適宜設定することができ、具体的には400〜700℃の温度が好ましく、550〜700℃がより好ましく、600〜700℃が更に好ましい。加熱時間も適宜設定することができるが、窒素含有化合物を十分に分解するために1時間以上であることが好ましく、3時間以上がより好ましく、5時間以上が更に好ましい。加熱には、流動炉、静置炉、ロータリーキルン、トンネルキルン等の公知の加熱炉を用いることができる。加熱後、不純物を除去したり、粗粒を分級するために水ひ操作を行ってもよく、焼結の程度に応じ、ハンマーミル、ピンミル等の衝撃粉砕機、ローラーミル、パルペライザー、解砕機等の摩砕粉砕機、ロールクラッシャー、ジョークラッシャー等の圧縮粉砕機、ジェットミル等の気流粉砕機等を用いて乾式粉砕を行ってもよい。また、得られた複合物粒子には表面処理を施してもよく、従来の界面活性剤、カップリング剤、カルボン酸、ポリオール、アミン、シロキサン等の有機化合物やアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、チタン等の酸化物や含水酸化物の無機化合物を公知の方法により被覆してもよい。
【0024】
また、本発明の複合物を含む粒子は、前述のとおり窒素含有化合物の存在下、酸化スズを加熱して、製造することができる。また、前記の複合物を基体粒子の表面に被覆した粒子は、窒素含有化合物の存在下、酸化スズを含む被覆を有する基体粒子を加熱して製造することができる。別の方法として、予め製造した複合物を通常の方法により基体粒子に被覆することもできる。
【0025】
本発明の複合物を基体粒子の表面に被覆した粒子を製造するには、まず、基体粒子に酸化スズを含む被覆を施す。これには、基体粒子のスラリー中で酸化スズを析出して被覆する方法等の公知の方法を用いることができる。具体的には、基体粒子のスラリーに、スズ(IV又はII)化合物とアルカリと必要に応じてドーパントとを混合し50℃以上に加熱し、スズ化合物を加水分解して得られたものは微粒子であるため好ましいものである。スズ化合物としては、水溶性のスズ化合物が好ましく、塩化スズがより好ましい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ、炭酸ナトリウム等の炭酸アルカリ、炭酸アンモニウム等のアンモニウム化合物、アンモニアなどを用いることができ、そのうち水酸化アルカリ、特に水酸化ナトリウムが好ましい。加水分解して得られた酸化スズを被覆した基体粒子をあらかじめ焼成しておいてもよく、焼成温度としては適宜設定することができ、具体的には400〜700℃の温度が好ましく、550〜700℃がより好ましく、600℃〜700℃が更に好ましい。このようにして基体粒子の表面に二酸化スズ、アンチモン、リン、フッ素、ニオブ、タングステン等の異原子をドープした二酸化スズ、一酸化スズ、酸素欠損が生じた酸化スズ化合物等であり、SnO2−xで示され、式中、xは0≦x<2を満たす実数である酸化スズを含む被覆を形成することができる。
【0026】
次に、酸化スズを含む被覆を有する基体粒子を窒素含有化合物の存在下に加熱するが、その際に用いる窒素含有化合物としては、前記の加熱により分解し酸化スズの一部を酸素欠損スズ化合物に還元できる、窒素を分子内に含む有機化合物であればいずれのものも用いることができる。例えば、炭酸アンモニウム、水酸化アンモニウム等のアンモニア化合物、アンモニアガス、アルキルアミン、尿素化合物等のアミン化合物、酸アミド等のアミド化合物等を用いることができ、還元力が強い前記の尿素化合物がより好ましい。加熱の具体的な方法としては、前記の複合物の製造方法に準じて行うことができる。このようにして、基体粒子の表面に酸化スズと酸素欠損スズ化合物とを含む複合物を被覆した粒子を製造することができる。
【0027】
本発明の複合物又は複合物を含む粒子を溶媒に分散させて、分散体とすることができる。溶媒としては、水又はアルコール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ケトン等の有機溶媒、あるいはそれらの混合物を用いることができ、工業的には水を主体とする水性溶媒、あるいはジメチルホルムアミド(DMF)、ケトンを用いるのが好ましい。ケトンとしてはアセトン、2−ブタノン、メチルエチルケトン等を例示することができる。分散体中の複合物又は複合物を含む粒子の濃度は適宜設定することができるが、例えば0.1〜10g/リットル程度が好ましい。また、分散性の改良のため、適時遠心分離機などを用いてもよい。分散体には、複合物又は複合物を含む粒子、溶媒以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲で、樹脂バインダー、分散剤、pH調整剤、消泡剤、乳化剤、着色剤、増量剤、防カビ剤、硬化助剤、増粘剤等の各種添加剤、充填剤等が第三成分として含まれていてもよい。具体的には、樹脂バインダーとしては、(1)無機系バインダー((a)重合性ケイ素化合物(加水分解性シラン又はその加水分解生成物又はその部分縮合物、水ガラス、コロイダルシリカ、オルガノポリシロキサン等)、(b)金属アルコキシド類等)、(2)有機系バインダー(アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、変性シリコーン系樹脂)等が挙げられる。分散剤としては、(1)界面活性剤((a)アニオン系(カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等)、(b)カチオン系(アルキルアミン塩、アルキルアミンの4級アンモニウム塩、芳香族4級アンモニウム塩、複素環4級アンモニウム塩等)、(c)両性(ベタイン型、アミノ酸型、アルキルアミンオキシド、含窒素複素環型等)、(d)ノニオン系(エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型等)等、(2)シリコーン系分散剤(アルキル変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサン等)、(3)リン酸塩系分散剤(リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、オルトリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等)、(4)アルカノールアミン類(アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール等)等が挙げられる。このような分散体は、本発明の複合物又は複合物を含む粒子と必要に応じて第三成分とを溶媒に分散させる。分散機としては通常の撹拌機、コロイドミル、ボールミル、ビーズミル、超音波分散機等を用いることができ、その際に、上記の第三成分を添加することができる。また、濃度を高めるために、適宜遠心分離機などを用いてもよい。
【0028】
このような分散体は、長期保存安定性に優れており、この分散体を基材に塗布し、乾燥あるいは焼成することにより酸化スズと酸素欠損スズ化合物を含む複合膜を得ることができる。基材に塗布する方法としては、スピンコート、スプレー塗装、ローラーコート、ディップコート、フローコート、ナイフコート、静電塗装、バーコート、ダイコート、ハケ塗り、液滴を滴下する方法等、一般的な方法を制限なく用いることができる。膜厚をより厚くするのであれば、重ね塗りを行ってもよい。塗布したものから溶媒を除去すれば複合膜が成膜するが、成膜は室温〜800℃の範囲の温度で行うのが好ましい。より好ましい温度は、溶媒の沸点によるが、例えば、水性溶媒であれば室温〜150℃の範囲が好ましく、更に好ましくは100〜150℃の範囲である。
【0029】
また、本発明の複合物又は複合物を含む粒子を樹脂と混合して塗料組成物とすることができる。また、本発明の複合物又は複合物を含む粒子を樹脂中に混合してプラスチック成形体、シート、フィルム等の樹脂組成物とすることもできる。このような樹脂としては前記の樹脂バインダーや生分解性樹脂、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を適宜用いることができ、複合物又は複合物を含む粒子の配合量、その他の添加剤の配合量等は適宜設定することができる。塗料組成物、樹脂組成物の調製方法は、前記の分散体の調製方法を用いることができる。更に、塗料組成物を基材上に塗布して塗膜とすることができる。塗布方法は前記の分散体の塗布方法を用いることができる。また、本発明の複合物又は複合物を含む粒子を成形して成形物とすることができる。成形物には、樹脂バインダー等の有機化合物を適宜添加してもよく、適当な温度で焼成して焼結させてもよい。
【0030】
本発明の複合物又は複合物を含む粒子は種々の機能性材料用途に用いることができる。例えば、導電性フィラーのほかに、可視光透過フィラー、近赤外線遮蔽フィラー、熱伝導フィラー、半導体等に用いられ、更に、触媒、光触媒、赤外線遮蔽剤、セラミックス・金属の添加剤、研磨材等にも用いられる。
また、酸化スズと酸素欠損スズ化合物を含む複合膜は種々の機能性材料用途に用いることができる。例えば、透明性材料、導電膜、電気抵抗体、熱伝導体、電極、ガスセンサーのほかに、ガラス基板上に酸化スズと酸素欠損スズ化合物とを含む複合膜を形成して導電性酸化物コートガラス、熱線反射ガラス、低放射ガラス、電熱ガラスなどに使用される。また、光触媒性材料、反射防止材料、ガスバリヤー性材料等にも用いることができる。これらの用途への使用は従来から用いられている形態、担持状態、配合割合に応じて複合物又は複合物を含む粒子を適用すればよく、例えば光触媒として、酸化スズのバンドギャップ以上のエネルギーを有する波長の光を照射して、有害物質、悪臭物質、汚れ等を除去したり、超親水性効果による防汚、防曇作用等を活用することができる。
【0031】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はそれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
実施例1
二酸化スズ(試料a:高純度化学社製:純度99.99%)10gと尿素3.0g(関東化学社製:特級)とをメノウ乳鉢で十分に混合した後、磁性るつぼに入れ蓋をした。
上記磁性るつぼを、窒素雰囲気下、電気炉にて600℃で5時間加熱を行った。その後冷却、水ひして、残余の尿素分解物を除去した後、乾燥して本発明の複合物(試料A)を得た。
試料AのX線回折の結果、二酸化スズのX線回折プロファイルと金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物のX線回折プロファイルが確認された。また、電子顕微鏡観察及び試料Aの表面近傍を部分的に酸で溶解したものをX線回折により測定すると、金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物のX線回折プロファイルが消失していたことから、金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物は二酸化スズ粒子の表面近傍に存在していることがわかった。
【0033】
実施例2
実施例1において、尿素の量を2.0gに変更したこと以外は同様にして、本発明の複合物(試料B)を得た。
試料BのX線回折の結果、二酸化スズのX線回折プロファイルと金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物のX線回折プロファイルが確認され、また、電子顕微鏡観察及び酸溶解試験の結果、実施例1と同様、金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物は二酸化スズ粒子の表面近傍に存在していることがわかった。
【0034】
実施例3
実施例1において、尿素の量を1.0gに変更したこと以外は同様にして、本発明の複合物(試料C)を得た。
試料CのX線回折の結果、二酸化スズのX線回折プロファイルと金属スズ微結晶、Snとを含む酸素欠損スズ化合物のX線回折プロファイルが確認され、また、電子顕微鏡観察及び酸溶解試験の結果、実施例1と同様、金属スズ微結晶、Snとを含む酸素欠損スズ化合物は二酸化スズ粒子の表面近傍に存在していることがわかった。
【0035】
実施例4
実施例1において、尿素の量を0.5gに変更したこと以外は同様にして、本発明の複合物(試料D)を得た。
試料DのX線回折の結果、二酸化スズのX線回折プロファイルと金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物のX線回折プロファイルが確認され、また、電子顕微鏡観察及び酸溶解試験の結果、実施例1と同様、金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物は二酸化スズ粒子の表面近傍に存在していることがわかった。
【0036】
実施例5
実施例1において、尿素の代わりにメラミン(和光純薬社製:純度98%)3.0gを用いたこと以外は同様にして、本発明の複合物(試料E)を得た。
試料EのX線回折の結果、二酸化スズのX線回折プロファイルと金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物のX線回折プロファイルが確認され、また、電子顕微鏡観察及び酸溶解試験の結果、実施例1と同様、金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物は二酸化スズ粒子の表面近傍に存在していることがわかった。
【0037】
実施例6
実施例5において、メラミンの量を2.0gに変更したこと以外は同様にして、本発明の複合物(試料F)を得た。
試料FのX線回折の結果、二酸化スズのX線回折プロファイルと金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物のX線回折プロファイルが確認され、また、電子顕微鏡観察及び酸溶解試験の結果、実施例1と同様、金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物は二酸化スズ粒子の表面近傍に存在していることがわかった。
【0038】
実施例7
実施例5において、メラミンの量を1.0gに変更したこと以外は同様にして、本発明の複合物(試料G)を得た。
試料GのX線回折の結果、二酸化スズのX線回折プロファイルと金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物のX線回折プロファイルが確認され、また、電子顕微鏡観察及び酸溶解試験の結果、実施例1と同様、金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物は二酸化スズ粒子の表面近傍に存在していることがわかった。
【0039】
実施例8
実施例5において、メラミンの量を0.5gに変更したこと以外は同様にして、本発明の複合物(試料H)を得た。
試料HのX線回折の結果、二酸化スズのX線回折プロファイルと金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物のX線回折プロファイルが確認され、また、電子顕微鏡観察及び酸溶解試験の結果、実施例1と同様、金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物は二酸化スズ粒子の表面近傍に存在していることがわかった。
【0040】
実施例9
実施例1において、二酸化スズに代えて一酸化スズを用いたこと以外は同様にして、本発明の複合物(試料I)を得た。
試料IのX線回折の結果、一酸化スズのX線回折プロファイルと金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物のX線回折プロファイルが確認され、また、電子顕微鏡観察及び酸溶解試験の結果、実施例1と同様、金属スズ微結晶を含む酸素欠損スズ化合物は一酸化スズ粒子の表面近傍に存在していることがわかった。
【0041】
比較例1
上述の酸化スズ粉末(試料a)を比較試料とした。
【0042】
評価1:粉体抵抗
実施例1〜8及び比較例1の各試料について、それぞれ1.0gを4MPaの圧力で円柱状(18mmφ)に成形し、直流抵抗をデジタルマルチメーター(Model 3457A型:ヒューレットパッカード社製)を用いて測定し、下式により粉体抵抗値を算出した。粉体抵抗値が小さい程、導電性が優れていることを意味する。
粉体抵抗値=測定値×円柱の断面積/円柱の厚み
【0043】
評価2:粉体色の評価
実施例1〜8及び比較例1の各試料を、外径35mmの専用のガラスセルに充填し、成形物のハンター表色系によるL値を白色度計(NW−1型:日本電色工業社製)を用いて測定した。L値が高い程白色性が優れていることを意味する。
【0044】
表1に紛体抵抗値、紛体色の測定結果を示す。本発明の試料の紛体抵抗値は比較例に比較して低く、尿素を使用した場合1.0×10Ωcm以下、メラミンを使用した場合、粉体抵抗が更に一桁低減され、1.0×10Ωcm以下となり、導電性に優れていることがわかった。一方、実施例は金属スズ微結晶等を含む酸素欠損スズ化合物の生成のため、L値は低下していることがわかった。
【0045】
【表1】

【0046】
評価3:表面部窒素の割合
(XPS測定法による粒子の表面近傍の分析)
実施例1で得られた試料を洗浄したものについて、表面近傍の窒素量をXPSで下記の条件で測定した結果、検出されなかった。
装置:Quantera SXM(PHI社製)
励起X線:monochromatic Al Ka 1、2 線(1486.6eV)
X線径:100μm
光電子脱出角度(試料表面に対する検出器の傾き):45°
試料固定:インジウム箔に圧着固定した。
【0047】
(酸素・窒素分析計による粒子全体の分析)
実施例1で得られた試料を洗浄したものを、インパルス炉加熱によるHeガス融解法にて下記条件で分析した結果、0.01%の極微量検出された。
装置:TC−600(Leco社製)
試料:3mgを黒鉛るつぼに入れて装置に導入した。
雰囲気:Heガス 450ml/min.
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の複合物又は複合物を含む粒子は、酸化スズと金属スズ微結晶等の酸素欠損スズ化合物を含んでおり、導電性フィラーのほかに、可視光透過フィラー、近赤外線遮蔽フィラー、熱伝導フィラー、半導体等に用いられ、更に、触媒、光触媒、赤外線遮蔽剤、セラミックス・金属の添加剤、研磨材、成形体等にも用いられる。
また、複合物又は複合物を含む粒子を成膜した複合膜は、透明性材料、導電膜、電気抵抗体、電極、ガスセンサーのほかに、ガラス基板上に複合膜を形成して導電性酸化物コートガラス、熱線反射ガラス、低放射ガラス、電熱ガラスなどに使用される。また、光触媒性材料、反射防止材料、ガスバリヤー性材料等の種々の用途にも用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SnO2−xで示される酸化スズ(式中、xは0≦x<2を満たす実数である。)とSnO2−x−yで示される酸素欠損スズ化合物(式中、xは前記のとおりであり、yは0<y≦2−xを満たす実数である。)とを含む複合物。
【請求項2】
酸素欠損スズ化合物を酸化スズ粒子の表面及び/又は内部に含有する請求項1に記載の複合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合物を含む粒子。
【請求項4】
窒素含有化合物の存在下、SnO2−xで示される酸化スズ(式中、xは0≦x<2を満たす実数である。)を加熱する、SnO2−xで示される酸化スズ(式中、xは0≦x<2を満たす実数である。)とSnO2−x−yで示される酸素欠損スズ化合物(式中、xは前記のとおりであり、yは0<y≦2−xを満たす実数である。)とを含む複合物の製造方法。
【請求項5】
窒素含有化合物が尿素化合物である請求項4に記載の複合物の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の複合物又は請求項3に記載の粒子を含有する分散体。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の複合物又は請求項3に記載の粒子を含有する塗料組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の複合物又は請求項3に記載の粒子を含有する樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の複合物又は請求項3に記載の粒子を含有する成形物。
【請求項10】
基材上に請求項6に記載の分散体又は請求項7に記載の塗料組成物を塗布し、形成された塗膜。

【公開番号】特開2011−190164(P2011−190164A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279985(P2010−279985)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】