説明

酸化物磁性材料

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酸化物磁性材料に関し、より詳しくは、例えばドラム型コア等に適用して好適な機械的強度の増大を図った酸化物磁性材料に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化物磁性材料の主流を占めるフェライトは、一般に機械的強度が弱く、かつ、もろいので、このようなフェライトを例えばドラム型コアとして用いた場合、ワイヤの巻線工程で損傷したり割れたりすることが多い。
【0003】かかる観点から、本願出願人は、先に特公昭48-40954号において機械的強度の向上を図った強磁性フェライトを提案している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、同公報に開示した強磁性フェライトは、フェライトにPbO0.2乃至3重量%、タルク0.2乃至3重量%を含有させたものであり、その機械的強度は7乃至12Kg/mm2 程度である。
【0005】このため、機械的強度が十分でなく、特に近年におけるドラム型コア等の小型化、薄型化に伴う機械的強度の向上の要請に対処できないという問題があった。
【0006】そこで、本発明は材料組成を改良し、従来例よりも機械的強度を大幅に改良した酸化物磁性材料を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の酸化物磁性材料は、Ni−Cu−Zn系フェライトに、PbO3.1乃至30重量%及びタルク3.1乃至30重量%を含有したものである。
【0008】請求項2記載の酸化物磁性材料は、Ni−Cu−Zn系フェライトに、PbO3.1乃至30重量%及びSiO2 0.1乃至30重量%を含有したものである。
【0009】
【作用】請求項1記載の酸化物磁性材料においては、3.1乃至30重量%のPbO及び3.1乃至30重量%のタルク中のSi成分が、Ni−Cu−Zn系フェライトの焼成段階でPbO−Si化合物として主にこのNi−Cu−Zn系フェライトの結晶粒界に存在する状態となって2相構造を形成する。
【0010】そして、この場合、Ni−Cu−Zn系フェライトの熱膨脹係数に対して、PbO−Si化合物の熱膨脹係数が小さいため、焼成後の冷却過程で粒界中のPbO−Si化合物に圧縮応力が存在する。この結果、Ni−Cu−Zn系フェライトに引張り力が作用する際の強度が大きくなる。
【0011】
【0012】
【0013】
【実施例】以下に本発明の実施例を詳細に説明する。
【0014】
例1Fe2 3 47モル%、NiO27モル%、CuO4モル%、ZnO17モル%、MnO5.0モル%の組成からなる酸化物磁性材料としてのフェライトに、PbO4乃至6.5重量(Wt)%及びタルク4乃至5.5重量%を添加し、1060℃の温度条件で焼成して酸化物磁性材料を得た。
【0015】尚、1000乃至1100℃の温度条件でも同様な酸化物磁性材料が得られてた。
【0016】この場合のタルク及びPbOの添加量と抗折強度との関係を図1に示す。
【0017】図1から明らかなように、PbOが4乃至4.5重量%で、タルクが5乃至5.5重量%のときの抗折強度は16.8乃至17.8Kg/mm2 と非常に大きくなっている。
【0018】尚、上述した抗折強度は、酸化物磁性材料を間隔40mmで支持した状態でその中間位置に20mm/min の割合で所定の荷重を加えたときの値を示すものである。
【0019】
例2Fe2 3 47モル%、NiO27モル%、CuO4モル%、ZnO17モル%、MnO5.0モル%の組成からなる酸化物磁性材料としてのフェライトに、PbO0乃至30重量%、タルク0乃至30重量%を添加し、例1と同一の条件で焼成して酸化物磁性材料を得た。
【0020】このときのJIS法に基く3点曲げ強度の添加量別の測定結果を図2に示す。
【0021】図2から明らかなように、従来例の添加範囲に対する3点曲げ強度の最大値12Kg/mm2 に比べ、PbO3.1乃至30重量%、タルク3.1乃至30重量%の範囲で本例の3点曲げ強度は向上し、特にPbO5重量%、タルク5重量%のところに19Kg/mm2 を示すピーク値が存在する。
【0022】
例3Fe2 3 47モル%、NiO27モル%、CuO4モル%、ZnO17モル%、MnO5.0モル%の組成からなる酸化物磁性原料としてのフェライトに、PbO3.1重量%以上、好ましくは4.5重量%程度、タルク3.1重量%以上、好ましくは4重量%程度添加し、上述した場合と同様な条件で酸化物磁性材料を得た。
【0023】この場合のPbO、タルクの添加量とJIS法に基く3点曲げ強度との関係を図3に示す。
【0024】図3から明らかなように、本例の酸化物磁性材料は19Kg/mm2 程度、従来例のPbO3重量%、タルク1重量%のものでは11Kg/mm2 程度の3点曲げ強度となり、本例では従来例よりも70%程度も3点曲げ強度が向上している。
【0025】
例4上述した例1の酸化物磁性材料及び従来例の酸化物磁性材料により各々10個のドラム型コアを作成し、各々の芯折れ強度を測定した。その結果を図4に示す。
【0026】本例では、芯折れ強度の最大が2.48Kgf 、最小が1.62Kgf 、平均で2.03Kgf であったのに対し、従来例では最大で1.52Kgf 、最小で0.80Kgf 、平均で1.20Kgf であった。この結果から、本例では従来例よりも70%程度芯折れ強度が向上していることが判明した。
【0027】以上詳述したように、本実施例の酸化物磁性材料は、従来例に比べ、抗折強度、3点曲げ強度が大幅に向上し、また、ドラム型コアとした場合にもその芯折れ強度が大幅に向上する。
【0028】
[比較例]Fe47モル%、NiO27モル%、CuO4モル%、ZnO17モル%、MnO5.0モル%の組成からなる酸化物磁性材料としてのフェライトに、PbO0乃至30重量%、SiO0.1乃至30重量%を添加し、例1と同一の条件で焼成して酸化物磁性材料を得た。
【0029】このときのJIS法に基く3点曲げ強度の添加量別の測定結果を図5に示す。
【0030】図5から明らかなように、従来例の添加範囲に対する3点曲げ強度の最大値12Kg/mm2 に比べ、PbO3.1乃至30重量%、SiO2 0.1乃至30重量%の範囲で本例の3点曲げ強度は向上し、特にPbO5重量%、SiO2 3重量%のところに図2に示す場合と同様19Kg/mm2 を示すピーク値が存在する。
【0031】このような組成の酸化物磁性材料によっても、従来例に比べ、3点曲げ強度が大幅に向上し、また、ドラム型コアとした場合にもその芯折れ強度が大幅に向上する。
【0032】本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0033】
【発明の効果】以上説明した本発明によれば、以下の効果を奏する。
【0034】請求項1記載の発明によれば、酸化物磁性原料にPbO、タルクを既述した範囲となるように含有する構成で、従来例に比べ機械的強度を大幅に向上させることが可能な酸化物磁性材料を提供することができる。
【0035】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における例1のPbO、タルク含有量と抗折強度との関係を示すグラフ
【図2】本発明の実施例における例2のPbO、タルク含有量と3点曲げ強度との関係を示すグラフ
【図3】本発明の実施例における例3のPbO、タルク含有量と3点曲げ強度との関係を示すグラフ
【図4】本実施例、従来例の各酸化物磁性材料によりドラム型コアを作成した場合の各々の芯折れ強度を示すグラフ
【図5】本発明の比較例のPbO、SiO含有量と3点曲げ強度との関係を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 Ni−Cu−Zn系フェライトに、PbO3.1乃至30重量%及びタルク3.1乃至30重量%を含有したことを特徴とする酸化物磁性材料。

【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図2】
image rotate


【図1】
image rotate


【図5】
image rotate


【特許番号】第2898772号
【登録日】平成11年(1999)3月12日
【発行日】平成11年(1999)6月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−65625
【出願日】平成3年(1991)3月6日
【公開番号】特開平4−278502
【公開日】平成4年(1992)10月5日
【審査請求日】平成8年(1996)11月1日
【出願人】(000003067)ティーディーケイ株式会社 (7,238)
【参考文献】
【文献】特開 平3−93667(JP,A)