説明

酸素含有ガス製造装置

【課題】酸素含有ガス(キャリアガスに所定濃度の酸素ガスを含有させたガス)を製造するに際して、キャリアガスのパージの完了時点及び品質を確認することが容易で、キャリアガスの品質が低い場合であっても、酸素ガス除去手段の寿命を短縮化させることがなく、得られる酸素含有ガスの酸素ガス濃度を所定濃度に精密に制御することが可能な酸素含有ガス製造装置を提供する。
【解決手段】キャリアガス主流路F1と、切り替え可能に分岐したキャリアガス分岐流路F2と、キャリアガス主流路F1のキャリアガス分岐流路F2との分流部よりも下流に配設された酸素ガス除去手段1と、キャリアガス主流路F1の酸素ガス除去手段1の配設箇所よりも下流に配設された流量制御手段(マスフローコントローラ)2と、キャリアガス主流路F1のキャリアガス分岐流路F2との合流部よりも下流に配設された酸素発生手段3と、酸素発生手段3に電気的に切り替え可能に接続された電圧計4及び定電流電源5とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素含有ガス(キャリアガスに所定濃度の酸素ガスを含有させたガス)を製造するに際して、キャリアガスの品質が低い(キャリアガス中の酸素ガス濃度が高い)場合であっても、酸素ガス除去手段の寿命を短縮化させることがなく、得られる酸素含有ガスの酸素ガス濃度を所定濃度に精密に制御することが可能な酸素含有ガス製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス精製、半導体製造プロセス、鉄鋼・金属等の熱処理(無酸化炉)、特殊金属溶接、食品包装等の分野において、高純度ガス(高品質ガス)が用いられている。このような高純度ガスのうち、アルゴン(Ar)ガス、窒素(N2)ガス、ヘリウム(He)ガス等においては、酸素ガス濃度をppbのオーダーで、正確に測定することが求められている。このためには、ppbレベルの酸素ガス濃度の校正ガス(標準ガス)が必要であるが、1ppm未満の酸素ガス濃度の校正ガスは市販されていないのが現状である。ppbレベル濃度の校正ガスを調製しようとすると、マスフローコントローラを用いて、1ppm程度の既知量の酸素ガスを含む窒素ガス等に酸素を実質的に含まない窒素ガスを所定量混合するか、酸素透過性の材料、例えば、プラスチックチューブやゴムチューブに所定量の酸素を実質的に含まない窒素ガス等を流して、酸素を透過させ、チューブの長さ等を変えて所望濃度の酸素を含む校正ガスを得る方法等が知られている。しかし、マスフローコントローラでガス混合する方法や酸素透過性の材料を用いる方法は、酸素の発生濃度を的確に管理することが困難で煩雑な操作の割には、精度そのものに問題があるという不都合があった。
【0003】
このような不都合を解消するため、キャリアガス主流路と、キャリアガスバイパス流路(分岐流路)と、キャリアガス主流路の、キャリアガスバイパス流路(分岐流路)との分流箇所よりも上流(後述する酸素除去装置よりも上流)に連通して配設された、キャリアガス中の酸素ガスを除去するマスフローコントローラ(流量制御手段)と、キャリアガス主流路の、キャリアガスバイパス流路(分岐流路)との合流箇所よりも上流に連通して配設された、酸素除去装置と、キャリアガス主流路の、キャリアガスバイパス流路(分岐流路)との合流箇所よりも下流に連通して配設された、酸素発生素子(微量酸素発生手段)と、可変式定電流制御装置とを備え、マスフローコントローラを経由した後は、バルブの切り替えにより、先ず、酸素除去装置に導かれ、ここで酸素が1ppb未満の濃度となるように、酸素が除去され、次いで、予め切り替えられていた酸素発生素子の前後に設けられている2個のバルブを開けることにより、酸素発生素子を経由して、ここで所定濃度の酸素を含むように調整された酸素発生装置が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−53308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された酸素発生装置は、ppbレベルの酸素を含む校正用のガスをコンパクトな装置で、より正確に供給することができるものの、キャリアガスバイパス流路とキャリアガス主流路との切り替え時におけるキャリアガスによるパージが十分に行われたか否かについて判定していないため、十分なパージが行われているか不明である。また、キャリアガスの品質が低い場合(例えば、キャリアガス中の酸素ガス濃度が規定値よりも高い場合)、酸素除去装置を損傷し、その寿命を短縮してしまうことがあり、事前にキャリアガスの品質(キャリアガス中の酸素ガス濃度)を確認する必要があった。さらに、マスフローコントローラを酸素除去装置よりも上流に配設しているため、上述のようにキャリアガスの品質が低い場合、所定濃度の酸素ガス濃度に誤差が生じ、正確な測定ができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、酸素含有ガス(キャリアガスに所定濃度の酸素ガスを含有させたガス)を製造するに際して、キャリアガス(例えば、窒素ガス等)のパージの完了の確認及び品質(キャリアガス中の酸素ガス濃度)を確認することが容易で、キャリアガスの品質が低い(キャリアガス中の酸素ガス濃度が高い)場合であっても、酸素ガス除去手段の寿命を短縮化させることがなく、得られる酸素含有ガスの酸素ガス濃度を所定濃度に精密に制御することが可能な酸素含有ガス製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の酸素含有ガス製造装置が提供される。
【0007】
[1]キャリアガスに所定濃度の酸素ガスを含有させたガスを製造する酸素含有ガス製造装置であって、前記キャリアガスの主な流路としてのキャリアガス主流路と、前記キャリアガス主流路から前記キャリアガスの流れを切り替え可能に分岐したキャリアガス分岐流路と、前記キャリアガスの流量を制御する流量制御手段と、前記キャリアガス主流路の、前記キャリアガス分岐流路との分流箇所よりも下流に配設された、キャリアガス中の酸素ガスを除去する酸素ガス除去手段と、前記キャリアガス主流路の、前記キャリアガス分岐流路との合流箇所よりも下流に配設された、酸素を発生する酸素発生手段とを備え、前記キャリアガス分岐流路から前記キャリアガスが導入された場合は、前記酸素発生手段が酸素ガスセンサとして機能し、前記キャリアガス主流路から前記キャリアガスが導入された場合は、前記酸素発生手段が酸素ガスポンプとして機能するように構成されてなることを特徴とする酸素含有ガス製造装置。
【0008】
このように、酸素発生手段を動作初期のキャリアガス分岐流路を連通させた時は、電圧計に接続して濃淡電池型の酸素ガスセンサとして用い、パージ完了判定後のキャリアガス主流路を連通させた時は、定電流電源に接続して酸素ガスポンプとして用いるように構成した。このように構成することによって、酸素ガスセンサと酸素ガスポンプとを個別に設ける必要がなく、構成の簡素化を図ることができる。
【0009】
[2]電圧計及び定電流電源をさらに備え、前記酸素発生手段が、前記電圧計及び前記定電流電源に切り替え可能に接続され、前記キャリアガス分岐流路内に導入される前記キャリアガスの酸素ガス濃度によって発生する電圧が、前記電圧計にて所定電圧値以上であると判定した場合、前記キャリアガス分岐流路内が前記キャリアガスによってパージされたと判定し、前記キャリアガスの流れをキャリアガス分岐流路から前記キャリアガス主流路に切り替えるとともに、前記酸素発生手段の接続を前記電圧計から前記定電流電源に切り替え、その後、前記定電流電源により前記酸素発生手段から発生した酸素ガスを前記キャリアガスに混合して、所定酸素ガス濃度に制御された前記酸素含有ガスを得るように構成されてなる前記[1]に記載の酸素含有ガス製造装置。
【0010】
このように、動作初期のキャリアガス分岐流路を連通させた時には、酸素発生手段を電圧計に接続して濃淡電池型の酸素ガスセンサとして用い、その電圧計にて得られた電圧の測定値が、適宜設定される所定の値(設定電圧)以上になった時にキャリアガスの酸素ガス濃度が略ゼロであると判定するように構成した。すなわち、キャリアガス分岐流路がキャリアガスによってパージされたと判定するように構成した。このように構成することによって、キャリアガス分岐流路のパージの完了及びキャリアガスの品質(キャリアガス中の酸素ガス濃度)を容易に確認することができる。
【0011】
[3]前記流量制御手段が、前記酸素ガス除去手段の下流に配設された前記[1]又は[2]に記載の酸素含有ガス製造装置。
【0012】
このように、キャリアガスをキャリアガス主流路、酸素ガス除去手段と、その酸素ガス除去手段よりも下流に配設した流量制御手段とを通過して酸素発生手段に導入するように流路を構成した。このように構成することによって、キャリアガス内に存在する酸素を酸素ガス除去手段にて除去して酸素ガス濃度がゼロのキャリアガスを製造し、その酸素ガス濃度がゼロのキャリアガスを流量制御手段にて一定量に制御することができる。また、その酸素ガス濃度がゼロのキャリアガス内に酸素含有ガス製造装置内の酸素発生手段により酸素を供給し、酸素含有ガスを製造するように構成した。このため、酸素ガス濃度の測定精度が向上し、酸素含有ガスを所定の酸素濃度に精密に制御することができる。また、動作初期は、分流弁によってキャリアガス分岐流路を連通するように流路を構成し、パージ完了判定後は、キャリアガス主流路、酸素ガス除去手段と、流量制御手段を連通するように流路を構成した。このように構成することによって、動作初期からキャリアガスを酸素ガス除去手段に通過させないため寿命を延ばすことができる。特に、キャリアガスの品質が低い(キャリアガス中の酸素ガス濃度が高い)場合においては、酸素ガス除去手段の消耗が著しいため、このような流路の切り替えは寿命を有効に延ばすことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、酸素含有ガス(キャリアガスに所定濃度の酸素ガスを含有させたガス)を製造するに際して、キャリアガス(例えば、窒素ガス等)のパージの完了時点及び品質(キャリアガス中の酸素ガス濃度)を確認することが容易で、キャリアガスの品質が低い(キャリアガス中の酸素ガス濃度が高い)場合であっても、酸素ガス除去手段の寿命を短縮化させることがなく、得られる酸素含有ガスの酸素ガス濃度を所定濃度に精密に制御することが可能な酸素含有ガス製造装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0015】
図1は、本発明の酸素含有ガス製造装置の一の実施の形態を模式的に示す説明図である。図1に示すように、本実施の形態の酸素含有ガス製造装置は、キャリアガスG1に所定濃度の酸素ガスを含有させた酸素含有ガスG2を製造する酸素含有ガス製造装置20であって、キャリアガスG1の主な流路としてのキャリアガス主流路F1と、キャリアガス主流路F1からキャリアガスG1の流れを切り替え可能に分岐したキャリアガス分岐流路F2と、キャリアガスG1の流量を制御する流量制御手段2と、キャリアガス主流路F1の、キャリアガス分岐流路F2との分流箇所よりも下流に配設された、キャリアガスG1中の酸素ガスを除去する酸素ガス除去手段1と、キャリアガス主流路F1の、キャリアガス分岐流路F2との合流箇所よりも下流に配設された、酸素を発生する酸素発生手段3とを備え、キャリアガス分岐流路F2からキャリアガスG1が導入された場合は、酸素発生手段3が酸素ガスセンサとして機能し、キャリアガス主流路かF1らキャリアガスG1が導入された場合は、酸素発生手段3が酸素ガスポンプとして機能するように構成されてなることを特徴とするものである。本実施の形態においては、上述のように、キャリアガスG1の主な流路としてのキャリアガス主流路F1と、キャリアガス主流路F1からキャリアガスG1の流れを切り替え可能に分岐したキャリアガス分岐流路F2とから構成されている。また、キャリアガス主流路F1とキャリアガス分岐流路F2の分岐箇所には、分流弁P1を備えている。キャリアガス主流路F1の分流弁P1の下流には、キャリアガスG1中の酸素ガスを除去する酸素ガス除去手段1と、キャリアガスG1の流量を制御する流量制御手段2が配設されている。流量制御手段2の下流であるとともに、キャリアガス主流路F1とキャリアガス分岐流路F2の合流箇所には、分流弁P2を備えている。分流弁P2の下流には、酸素を発生する酸素発生手段3を備えている。酸素発生手段3には、電気的に切り替え可能に接続された、電圧計4及び定電流電源5とを備えている。
【0016】
本実施の形態に用いられるキャリアガスG1としては、例えば、窒素ガスを挙げることができる。また、窒素ガスの他にはアルゴンガス等の不活性ガスをキャリアガスとして用いることもできる。
【0017】
本実施の形態に用いられる酸素ガス除去手段1としては、例えば、図1に示すように、チューブ状容器11内に、ヒーター13によって300℃程度に保持された活性化銅12が充填されたものを挙げることができる。なお、活性化銅12は、ポーラスな粒状の金属銅であり、その金属銅を一旦空気中500℃程度で十分に酸化し、続いて水素気流中で200℃程度で還元することによって得ることができる。図1に示す酸素ガス除去手段1の場合、銅の酸化反応(Cu+O2=CuO、Cu2O)を利用してキャリアガスG1中の酸素ガスを除去することができる。
【0018】
本実施の形態に用いられる流量制御手段2としては、例えば、マスフローコントローラを挙げることができる。マスフローコントローラは、熱式質量流量センサ、流量制御バルブ、電気回路から構成されており、入口から入ったキャリアガスG1を熱式質量流量センサで質量流量に比例した温度変化をとらえ電気回路で電気信号に変換する。その電気信号をもとに流量制御バルブを作動させ、常に設定された流量にキャリアガスG1の流量を制御することができる。
【0019】
本実施の形態に用いられる酸素発生手段3としては、例えば、図1に示すように、固体電解質の材料から構成されるとともにキャリアガス主流路F1に連通した筒状体31と、筒状体31の内外表面に配設された内側電極32及び外側電極33とを有し、内側電極32及び外側電極33が、後述する電圧計4に電気的に接続された場合に、酸素ガスセンサとして機能し、後述する定電流電源5に電気的に切り替えて接続された場合に、酸素ガスポンプとして機能するものを挙げることができる。
【0020】
酸素発生手段3を構成する固体電解質の材料としては、酸素イオン伝導率が高いことが好ましく、例えば、ジルコニア(ZrO2)を好適例として挙げることができる。ジルコニア(ZrO2)の場合には、固溶させる材料の種類や量によってイオン伝導率を変化させて、適宜、目的に適した組成のものを用いることができる。具体的には、イットリア(Y23)、マグネシア(MgO)、カルシア(CaO)、セリア(CeO2)等の種々の安定化材を固溶させてなる安定化ZrO2又は部分安定化ZrO2が好適に用いられる。
【0021】
内側電極32及び外側電極33の材料としては、例えば、白金(Pt)等を挙げることができる。なお、これらの電極は、性状を多孔質として、気相と電極と固体電解質との3相が接する三重点(三相界面)を多く形成することが好ましい。従って、白金(Pt)とジルコニア(ZrO2)とからなるサーメット電極も、好適に用いることができる。
【0022】
本実施の形態における酸素含有ガス製造装置20の動作について説明する。酸素含有ガス製造装置20は、第1段階の動作初期では、分流弁P1、P2によってキャリアガス分岐流路F2を連通するように流路を構成するとともに、酸素発生手段3は電圧計4に接続する。そしてキャリアガスG1(例えば、窒素ガス(N2))をキャリアガス分岐流路F2から酸素発生手段3に導入する。このとき、電圧計4に接続された酸素発生手段3の円筒体(ジルコニア管)31は濃淡電池型の酸素ガスセンサとして機能し、内外電極32、33間の電圧を電圧計4で測定し、得られた電圧の測定値から、酸素発生手段3に導入されたキャリアガスG1の酸素ガス濃度を算出する。得られた電圧の測定値が、適宜設定される所定の値(設定電圧)以上になった時にキャリアガスG1の酸素ガス濃度が略ゼロであると判定する。換言すると、キャリアガス分岐流路F2がキャリアガスG1によってパージされたと判定する。具体的には、ネルンストの式より算出した理論値[VS.Air(21%−O2)]をまとめた表1に示すように、ジルコニアの通常の使用温度範囲である600〜900℃において、酸素ガス分圧が0.0001atm以下の電圧(mV)であれば、キャリアガス分岐流路F2がキャリアガスG1によってパージされたと判定することができる。通常の窒素ガスボンベ内には、酸素ガスが1×10-2atm以下で含まれており(太線以下)、表1に示すようにジルコニアの通常の使用温度範囲である600〜900℃において、電圧で、50mV以上になれば、キャリアガス分岐流路F2内がキャリアガスG1によってパージされたと判定することができる。しかしながら、窒素ガスボンベ内に酸素ガスが1×10-2atm以上含まれている、品質の低い窒素ガスボンベを用いた場合は、電圧が50mV以上にならないためキャリアガスG1によってパージされたと判定することができない。このような場合には、止むを得ず作業者にて設定電圧を適宜変更して、その変更した設定電圧を判定基準にして判定をする。また、キャリアガスG1に窒素ガスを用いた場合においては、ボンベを新規の窒素ガスボンベに交換するようにする。
【0023】
【表1】

【0024】
第2段階では、キャリアガスG1によってキャリアガス分岐流路F2内がパージされたと判定された後、分流弁P1、P2をキャリアガス分岐流路F2からキャリアガス主流路F1が連通するように切り替える。具体的にはキャリアガスG1をキャリアガス主流路F1、酸素ガス除去手段1と、その酸素ガス除去手段1よりも下流に配設した流量制御手段2を通過して酸素発生手段3に導入するように流路を構成する。これにより、キャリアガスG1内に存在する酸素を酸素ガス除去手段1にて除去して酸素ガス濃度がゼロのキャリアガスG1を製造し、その酸素ガス濃度がゼロのキャリアガスG1を流量制御手段2にて一定量に制御することができる。また、酸素発生手段3の接続を電圧計4から定電流電源5に切り替える。定電流電源5に切り替えられた酸素発生手段3は酸素ガスポンプとして機能し、酸素発生手段3から発生したの酸素ガスを、流量制御手段2によって一定量に制御された酸素ガス濃度がゼロのキャリアガスG1に混合する。これにより、キャリアガスG1内の酸素ガス濃度が所定濃度に精密に制御された酸素含有ガスG2を得ることが可能となる。この場合、酸素含有ガスG2の酸素ガス濃度は、表2に示すように、一定量(例えば、50mL/min)に制御されたキャリアガスG1における定電流電源5で制御された電流値で決定され、酸素ガス濃度が精密に制御された酸素含有ガスG2を得ることができる。
【0025】
【表2】

【0026】
上述の効果は、流量制御手段2が、従来の場合とは異なり、酸素ガス除去手段1よりも下流に配設されていることから発揮される。これは表3、表4に示すように、従来技術の装置構成の場合、すなわち、流量制御手段2が、酸素ガス除去手段1よりも上流に配設されている場合と、本実施例の場合、すなわち、流量制御手段2が、酸素ガス除去手段1よりも下流に配設されている場合の所定酸素ガス濃度のボンベおける酸素ガス濃度(ppm)を測定した結果である。表3は、マスフロー中のキャリアガスG1の流量を50mL/minとした際のキャリアガスG1中の酸素ガス濃度を50ppm及び100ppmに制御した場合の結果である。なお、表3中における「誤差」とは、従来技術と本実施例との差を本実施例に対する比で表す。また、表3中の「A」とは、品質(酸素ガス濃度)が0.05atmのボンベA、「B」とは、品質(酸素ガス濃度)が0.01atmのボンベB、「C」とは、品質(酸素ガス濃度)が0.005atmのボンベCをそれぞれ意味する。
この結果では、従来技術においてはボンベ毎に測定した酸素ガス濃度にバラツキが見られるが、実施例においては測定した酸素ガス濃度にバラツキがなく一定であることがわかる。したがって、用いられるキャリアガスG1のボンベ中の酸素ガス濃度(品質)にバラツキがある場合であっても、流量制御手段2を用いて脱酸素ガス後に流量調整をするため、脱酸素ガス後における全ガス量にバラツキがなくなり、酸素ガス濃度の測定精度が向上し、所定酸素濃度に精密に制御された酸素含有ガスG2を得ることが可能となる。
【0027】
【表3】

【0028】
本発明の酸素含有ガス製造装置を、例えば、エンジン、ボイラ、工業用炉等の排気管に取り付けられて排気管内の排気管内の煙道Kを流れる被測定ガスとしての排ガスに含まれる所定成分(例えば、O2ガス)を検出して分析するガス分析装置の校正に利用した実施例を具体的に説明する。
【0029】
図2は、ガス分析装置を校正するための酸素含有ガス製造装置の構成の一例を模式的に示す説明図である。図2に示すように、ガス分析装置10は、排気管内の煙道Kに取り付けられ、その煙道Kを流れる被測定ガス(排ガス)G3に含まれる検出ガスの濃度を検出する検出手段101と、検出手段1に電気的に接続された分析手段102とを備えている。検出手段1は煙道K内に挿入固定されており、分析手段2は外部に設置されている。検出手段1内には、ガスセンサ41が固定されており、そのガスセンサ41の先端部に酸素含有ガスを供給する校正ガス供給用配管71が配設されている。ガスセンサ41の内部には、酸素イオン伝導性固体電解質体により板状又は棒状に形成された高温作動型のガスセンサ素子42が配設されている。校正ガス供給用配管71の外部には、所定濃度の酸素含有ガスG2を製造する酸素含有ガス製造装置20が接続されており、酸素含有ガス製造装置20には、N2ガスボンベ81が接続されている。酸素含有ガス製造装置20では、酸素発生手段3よりN2ガスボンベ81から供給されるN2ガス内に酸素を供給する。これにより設定酸素濃度のN2−O2の酸素含有ガスG2を製造する。酸素含有ガスG2は校正ガス供給用配管71の一端から流入し、他端から流出してガスセンサ41の先端部へ供給され、酸素含有ガスG2を校正ガスとして用いられる。酸素含有ガスG2によりガスセンサ41は、設定酸素濃度をポンプ電極における限界電流値を測定し、分析手段102の内部で電流特性の酸素ガス濃度依存性(酸素ガス電流感度)を算出及び既存設定との比較をした後、その既存設定の補正を行うことによって、分析手段102を校正する。このようにガス分析装置に接続して構成すると、複数の酸素ガス濃度の異なる標準ガス(校正ガス)を準備する必要がない。また、容易に校正ガスを製造することができる。
【0030】
また、本発明の実施の形態は、次のように変更してもよい。本発明の実施形態では、図1に示すように酸素含有ガス製造装置20内においてキャリアガス主流路のキャリアガス分岐流路との分流箇所よりも下流に連通して酸素ガス除去手段を配設し、キャリアガス主流路の、酸素ガス除去手段の配設箇所よりも下流でキャリアガス分岐流路との合流箇所よりも上流に連通して流量制御手段を配設したが、キャリアガス分岐流路との合流箇所よりも下流で酸素発生手段3の上流に流量制御手段を配設してもよい。すなわち、分流弁P2と酸素発生手段3との間に配設してもよい。このようにしても、酸素ガス濃度がゼロのキャリアガスG1を流量制御手段2にて一定量に制御することができる。
【0031】
本発明の実施形態では、酸素発生手段3を筒状体31と、筒状体31の内外表面に配設された内側電極32及び外側電極33とを有した構成にしたが、この形状に限らず酸素ガスをポンピングできるものであれば使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の酸素含有ガス製造装置は、所定濃度に精密に制御された酸素含有ガスG2の酸素ガスが必要とされる、ガス精製、半導体製造プロセス、鉄鋼・金属等の熱処理(無酸化炉)、特殊金属溶接、食品包装等の各種産業分野、及び図2に示すようなエンジン、ボイラ、工業用炉等の排気管に取り付けられて排気管内の酸素センサ等のガス分析装置を校正する場合において好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の酸素含有ガス製造装置の一の実施の形態を模式的に示す説明図である。
【図2】ガス分析装置を校正するための装置構成の一例を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1:酸素ガス除去手段
2:流量制御手段(マスフローコントローラ)
3:酸素発生手段
4:電圧計
5:定電流電源
10:ガス分析装置
11:チューブ状容器
12:活性化銅
13:ヒーター
20:酸素含有ガス製造装置
31:筒状体(ジルコニア管)
32:内側電極
33:外側電極
41:ガスセンサ
42:ガスセンサ素子
101:検出手段
102:分析手段
G1:キャリアガス(窒素ガス)
G2:酸素含有ガス
F1:キャリアガス主流路
F2:キャリアガス分岐流路
P1:分流弁
P2:分流弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアガスに所定濃度の酸素ガスを含有させたガスを製造する酸素含有ガス製造装置であって、
前記キャリアガスの主な流路としてのキャリアガス主流路と、
前記キャリアガス主流路から前記キャリアガスの流れを切り替え可能に分岐したキャリアガス分岐流路と、
前記キャリアガスの流量を制御する流量制御手段と、
前記キャリアガス主流路の、前記キャリアガス分岐流路との分流箇所よりも下流に配設された、キャリアガス中の酸素ガスを除去する酸素ガス除去手段と、
前記キャリアガス主流路の、前記キャリアガス分岐流路との合流箇所よりも下流に配設された、酸素を発生する酸素発生手段とを備え、
前記キャリアガス分岐流路から前記キャリアガスが導入された場合は、前記酸素発生手段が酸素ガスセンサとして機能し、前記キャリアガス主流路から前記キャリアガスが導入された場合は、前記酸素発生手段が酸素ガスポンプとして機能するように構成されてなることを特徴とする酸素含有ガス製造装置。
【請求項2】
電圧計及び定電流電源をさらに備え、前記酸素発生手段が、前記電圧計及び前記定電流電源に切り替え可能に接続され、前記キャリアガス分岐流路内に導入される前記キャリアガスの酸素ガス濃度によって発生する電圧が、前記電圧計にて所定電圧値以上であると判定した場合、前記キャリアガス分岐流路内が前記キャリアガスによってパージされたと判定し、前記キャリアガスの流れをキャリアガス分岐流路から前記キャリアガス主流路に切り替えるとともに、前記酸素発生手段の接続を前記電圧計から前記定電流電源に切り替え、その後、前記定電流電源により前記酸素発生手段から発生した酸素ガスを前記キャリアガスに混合して、所定酸素ガス濃度に制御された前記酸素含有ガスを得るように構成されてなる請求項1に記載の酸素含有ガス製造装置。
【請求項3】
前記流量制御手段が、前記酸素ガス除去手段の下流に配設された請求項1又は2に記載の酸素含有ガス製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−108019(P2007−108019A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299267(P2005−299267)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【Fターム(参考)】