説明

重ね板ばね用サイレンサおよび重ね板ばね

【課題】板ばねへの組み付け作業を改善でき、かつ板ばねからの落下による紛失可能性を低減できる重ね板ばね用サイレンサの構造を提供する。
【解決手段】重ね板ばね用サイレンサ1を、板ばね60bの上面67側に配置される第一のサイレンサ2と、板ばね60bの下面68側に配置される第二のサイレンサ3とを備えた2ピース構造とし、第一のサイレンサ2と第二のサイレンサ3とを連結部材4で連結する。板ばね60の上面68側に第一のサイレンサ2を配置した場合に、板ばね60bに形成された装着用孔66と嵌合して板ばね60の下面68から突き出る第一の突起部24を第一のサイレンサ2のサイレンサ本体21の上面22側に設けると共に、板ばね60bの下面68側に第二のサイレンサ3を配置した場合に、板ばね60の下面68側から突き出した第一の突起部24と嵌合する第一の嵌合用穴34を第二のサイレンサ3のサイレンサ本体31の上面32側に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の重ね板ばねに関し、特に、この種の重ね板ばねに用いられるきしみ音防止のためのサイレンサの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体と車軸とを繋ぐサスペンションとして、重ね板ばね(リーフ式サスペンション)が知られている。図4に示すように、重ね板ばね6は、複数の板ばね60a〜60c(以下、単に板ばね60とも称する)が重ねられ、両端部62a、62bにおいてクリップ63a、63bにより束ねられて構成されている。また、重ね板ばね6の中央部61は、Uボルト65により前輪あるいは後輪の車軸(アクスル)9に取り付けられる。
【0003】
複数の板ばね60のうち、最も長い板ばね60aは、親ばねと呼ばれている。親ばね60aの両端部62a、62bはカールされ、これにより軸挿入部64a、64bが形成されている。一方の軸挿入部64aには、ピボット(固定軸)71を摺動可能に保持したブッシュ72が収容され、このピボット71は、ブラケット7を介して、図示していない車体に固定される。また、他方の軸挿入部64bには、車体に連結されたシャックル8の軸81を摺動可能に保持したブッシュ82が収容される。これにより、重ね板ばね6の一方の端部62aはピボット71で車体に固定され、重ね板ばね6の他方の端部62bはシャックル8により車体に連結される。
【0004】
このような構成により、重ね板ばね6は、車軸9を路面に押さえ付けて、図示していない車輪のグリップ力を高めることにより、車両の走行を安定させるとともに、車両の走行中に路面から受ける振動(凹凸)が車軸9を介して車体に伝わるのを防止する。
【0005】
ところで、車軸9が上下に移動すると、重ね板ばね6は、中央部61が上下に移動してアーチ状に撓む。これにより、両端部62a、62bにおいて互いに隣り合う板ばね60が相対的に滑り合い、金属同士が擦れ合う際のきしみ音が発生する。このため、図4に示すように、両端部62a、62bにおいて互いに隣り合う板ばね60間に、ゴム、熱可塑性合成樹脂等で構成されたサイレンサ5を介在させて、金属同士が擦れ合う際のきしみ音を防止している。
【0006】
重ね板ばね6の組み立て作業において、板ばね60a〜60cを下側(板ばね60c)から順番にサイレンサ5を介して積み重ねる。この際に、このサイレンサ5は、板ばね60の平坦な上面67と板ばね60の平坦な下面68との間に、ただ単に、挟持された状態にて適切な位置に配置される。このため、重ね板ばね6の組立て作業中に、板ばね60からサイレンサ5が外れて落ちやすく作業性が悪い。そこで、特許文献1に記載の技術では、サイレンサを2つの分割体からなる2ピース構造とし、これらの分割体を、板ばねに設けられた装着用孔を介して、板ばねを挟み込むように互いに嵌合させて位置を固定することにより、サイレンサ5の落下や位置ずれを防止している。これにより、板ばねへのサイレンサの組み付け作業の作業性を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−185887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、板ばねの上面と下面の両側から板ばねを挟み込むように、サイレンサを構成する2つの分割体を互いに嵌合させるため、両手で作業しなければならない。
【0009】
また、重ね板ばねの組み立て作業では、サイレンサを板ばねに組み付けた後、クレーン等を利用して他の場所に板ばねを移動してから、複数の板ばねを積み重ねて位置合わせ(センタリング)を行ってクリップで束ねることがある。このような場合、板ばねの移動や位置合わせの際の衝撃により、2つの分割体からなるサイレンサの嵌合部が緩んで、板ばねの下側に位置する一方の分割体が板ばねから落下して紛失してしまうことがある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、板ばねへの組み付け作業性を改善でき、かつ板ばねからの落下による紛失の可能性を低減できる重ね板ばね用サイレンサの構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、重ね板ばね用のサイレンサを、板ばねの一方の面である第一の面側に配置される第一のサイレンサと、板ばねの他方の面である第二の面側に配置される第二のサイレンサとを備えた2ピース構造とし、第一のサイレンサと第二のサイレンサとを連結部材により連結する。そして、板ばねの第一の面側に第一のサイレンサを配置した場合に、板ばねに形成された装着用孔と嵌合して板ばねの第二の面から突き出る突起部を、第一のサイレンサの、板ばねの第一の面との対向面側に設けるとともに、板ばねの第二の面側に第二のサイレンサを配置した場合に、板ばねの第二の面側から突き出た突起部と嵌合する嵌合用穴を、第二のサイレンサの、板ばねの第二の面との対向面側に設ける。
【0012】
例えば、本発明は、重ね板ばねを構成する複数の板ばねのうち、重ね方向に隣り合う板ばね間に配置される重ね板ばね用サイレンサであって、
前記板ばねの第一の面側に配置される第一のサイレンサと、
前記板ばねの、前記第一の面の反対側の第二の面側に配置される第二のサイレンサと、
前記第一のサイレンサおよび前記第二のサイレンサを連結する連結部材と、を有し、
前記第一のサイレンサには、当該第一のサイレンサを前記板ばねの前記第一の面側に配置した場合に、前記板ばねに形成されている装着用孔と嵌合して前記板ばねの前記第二の面から突き出る第一の突起部が、当該第一の面との対向面側に形成されており、
前記第二のサイレンサには、当該第二のサイレンサを前記板ばねの前記第二の面側に配置した場合に、当該第二の面から突き出た前記第一の突起部と嵌合する嵌合用穴が、当該第二の面との対向面側に形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、板ばねの第一の面側に配置される第一のサイレンサと、この板ばねの、この第一の面の反対側の第二の面側に配置される第二のサイレンサとが、連結部材により互いに連結されているので、これらのサイレンサの板ばねへの組み付け作業を片手で容易に行うことが可能となり、作業性が改善する。また、板ばねの上面側が第一の面側となるようにして第一のサイレンサを板ばねの装着用孔に嵌合させることにより、第一、第二のサイレンサが組み付けられた板ばねに衝撃が加わった場合でも、第一のサイレンサが板ばねから外れる可能性を低減できる。また、この衝撃により第一のサイレンサと二のサイレンサとの嵌合が緩み、第二のサイレンサが板ばねから落下しても、連結部材により第二のサイレンサが第一のサイレンサに連結しているため、第二のサイレンサの紛失の可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係る重ね板ばね用サイレンサ1の斜視図である。
【図2】図2(A)は、重ね板ばね用サイレンサ1の正面図であり、図2(B)は、図2(A)のA−A断面図であり、図2(C)、(D)、(E)は、図2(B)のA部拡大図、B部拡大図、C部拡大図である。
【図3】図3(A)は、板ばね60bに重ね板ばね用サイレンサ1を組み付けた様子を説明するための図であり、図3(B)は、重ね板ばね用サイレンサ1が組み付けられた板ばね60bを使って重ね板ばね6を組み立てた様子を説明するための図である。
【図4】図4は、重ね板ばね6の概略構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る重ね板ばね用サイレンサ1の斜視図である。また、図2(A)は、重ね板ばね用サイレンサ1の正面図であり、図2(B)は、図2(A)のA−A断面図であり、図2(C)、(D)、(E)は、図2(B)のA部拡大図、B部拡大図、C部拡大図である。また、図3(A)は、板ばね60bに重ね板ばね用サイレンサ1を組み付けた様子を説明するための図であり、図3(B)は、重ね板ばね用サイレンサ1が組み付けられた板ばね60bを使って重ね板ばね6を組み立てた様子を説明するための図である。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態に係る重ね板ばね用サイレンサ1は、第一のサイレンサ2および第二のサイレンサ3を備えた2ピース構造を有しており、第一のサイレンサ2および第二のサイレンサ3は、ベルト状の連結部材4により互いに連結されている。この重ね板ばね用サイレンサ1は、上述した従来のサイレンサ5と同様、重ね板ばね6の長手方向両端部62a、62bにおいて互いに重ね方向に隣り合う板ばね60が相対的に滑り合うことによるきしみ音の発生を防止するためのものであり、第一のサイレンサ2は、板ばね60bの上面67側(板ばね60aと板ばね60bとの間)に配置され、第二のサイレンサ3は、板ばね60bの下面68側(板ばね60bと板ばね60cとの間)に配置される。
【0018】
第一のサイレンサ2は、図2(A)、(B)に示すように、板状のサイレンサ本体21と、サイレンサ本体21の上面22に形成された第一の突起部24と、を備えている。第一の突起部24の頂面25には、第二の嵌合用穴26が形成されている。
【0019】
サイレンサ本体21の上面22からの第一の突起部24の高さ寸法d2は、板ばね60bの板厚d3よりも大きいため、図3(A)に示すように、サイレンサ本体21の上面22と板ばね60bの上面67とが対向するように、第一のサイレンサ2が板ばね60bの上面67側の適切な位置に配置された場合、第一の突起部24は、板ばね60bに形成されている装着用孔66と嵌合して板ばね60bの下面68から突き出る。
【0020】
サイレンサ本体21の上面22の縁部には、図2(D)に示すように、第一のサイレンサ2と連結部材4との結合部分41に沿った領域を除き、サイレンサ本体21の側面28から張り出したフランジ27が形成されている。このフランジ27は、成型時における第一のサイレンサ2の離型性を改善し、固定型への貼り付きを防止する。
【0021】
第二のサイレンサ3は、図2(A)、(B)に示すように、板状のサイレンサ本体31と、サイレンサ本体31の上面32に形成された第一の嵌合用穴34と、第一の嵌合用穴34の底面35に形成された第二の突起部36と、を備えている。
【0022】
図3(A)に示すように、サイレンサ本体31の上面32と板ばね60bの下面68とが対向するように、第二のサイレンサ3が板ばね60bの下面68側の適切な位置に配置された場合に、第一の嵌合用穴34は、板ばね60bの下面68側から突き出した第一のサイレンサ2の第一の突起部24と嵌合する。このため、サイレンサ本体31の上面32からの第一の嵌合用穴34の深さd1は、少なくとも、サイレンサ本体21の上面22からの第一の突起部24の高さd2と、板ばね60bの厚さd3との差(d2−d3)よりも大きく設計されている。
【0023】
第二の突起部36は、図3(A)に示すように、板ばね60bを介して第一の嵌合用穴34と第一の突起部24とを嵌め合わせた場合に、第二の嵌合用穴26と嵌合する。このため、第一の嵌合用穴34の底面35からの第二の突起部36の高さd4は、少なくとも、第一の突起部24の頂面25からの第二の嵌合用穴26の深さd5より小さく設計されている。
【0024】
サイレンサ本体31の上面32の縁部には、図2(D)に示すように、第二のサイレンサ3と連結部材4との結合部分42に沿った領域を除き、サイレンサ本体31の側面38から張り出したフランジ37が形成されている。このフランジ37は、成型時における第二のサイレンサ3の離型性を改善し、固定型への貼り付きを防止する。
【0025】
連結部材4は、図2(E)に示すように、第一のサイレンサ2のサイレンサ本体21の側面28および第二のサイレンサ3のサイレンサ本体31の側面38と一体的に形成されている。この連結部材4には、第一のサイレンサ2に連結されたベルト状の第一のアーム部43と、第二のサイレンサ3に連結されたベルト状の第二のアーム部44と、第一および第二のアーム部43、44間に設けられた台形柱状の接合部45と、第一のアーム部43および接合部45を繋ぐ薄肉部46と、第二のアーム部44および接合部45を繋ぐ薄肉部47と、が含まれている。
【0026】
第一のアーム部43は、サイレンサ本体21の、サイレンサ本体31の側面38と対向する側面28の下面23側、すなわち結合部分41において、第一のサイレンサ2に連結されている。薄肉部46は、第一のアーム部43と接合部45との連結部分で連結部材4が折り曲げやすくなるように(図3(A)参照)、連結部45の一方の側面48から他方の側面49まで連結部45の幅方向に形成されている。
【0027】
第二のアーム部44は、サイレンサ本体31の、サイレンサ本体21の側面28と対向する側面38の下面33側、すなわち結合部分42において、第二のサイレンサ3に連結されている。薄肉部47は、第二のアーム部44の接合部45との連結部分で連結部材4が折り曲げやすくなるように(図3(A)参照)、連結部45の一方の側面48から他方の側面49まで連結部45の幅方向に形成されている。
【0028】
なお、図3(A)に示すように、重ね板ばね用サイレンサ1を板ばね60bに組み付けた場合に、第一のアーム部43および第二のアーム部44は、接合部45と板ばね60b(重ね板ばね用サイレンサ1を板ばね60bの側面60b2側から組み付ける場合は板ばね60bの側面60b2、端面60b1側から組み付ける場合は端面60b1)とが干渉しない長さに設計されている。
【0029】
重ね板ばね用サイレンサ1の素材には、天然ゴム、合成ゴム等のゴム素材、あるいは熱可塑性合成樹脂、熱可塑性エラストマーからなる樹脂素材が用いられる。
【0030】
さて、重ね板ばね用サイレンサ1は、図3(A)に示すように、第一のサイレンサ2および第二のサイレンサ3で板ばね60bを挟み込むように、板ばね60bに組み付けられる。このとき、第一のサイレンサ2が板ばね60bの上面67側に位置し、第二のサイレンサ3が板ばね60bの下面68側に位置する。そして、第一のサイレンサ2の第一の突起部24が、板ばね60bに形成された装着用孔66に嵌合して、板ばね60bの下面68から突き出し、第二のサイレンサ3の第一の嵌合用穴34とさらに嵌合する。また、第一の嵌合用穴34に形成された第二の突起部36が、第一の突起部24に形成された第二の嵌合用穴26と嵌合する。
【0031】
このようにすることで、第一のサイレンサ2および第二のサイレンサ3が、板ばね60bを挟んで、互いにしっかりと固定され、重ね板ばね用サイレンサ1が板ばね60bにしっかりと固定される。また、折り曲げた連結部45の復元力を利用して、接合部45を掌で保持しつつ、第一のサイレンサ2を人差し指と中指で支え、第二のサイレンサ3を親指で支えることができるため、板ばね60bへの重ね板ばね用サイレンサ1の組み付け作業を片手で行うことが可能となる。なお、接合部45を保持しやすくなるように、必要に応じて、連結部45に、薬指等をひっかけるための孔を形成してもよい。
【0032】
このようにして、重ね板ばね用サイレンサ1が組み付けられた板ばね60bは、図3(B)に示すように、板ばね60cの上に積み重ねられ、さらに、その上に板ばね60aが積み重ねられる。そして、位置合わせ(センタリング)の後、クリップ63a、63bで束ねられ、重ね板ばね6が組み立てられる。この重ね板ばね6においては、板ばね60aと板ばね60bとの間に第一のサイレンサ2が配置され、板ばね60bと板ばね60cとの間に第二のサイレンサ3が配置されているため、上述した従来のサイレンサ5と同様、重ね板ばね6の両端部62a、62bにおいて互いに重ね方向に隣り合う板ばね60が相対的に滑り合うことによるきしみ音の発生を防止することができる。
【0033】
なお、図3(B)では、3枚の板ばね60a〜60cで重ね板ばね6を構成する場合を例示しているが、5枚以上の奇数枚の板ばね60で重ね板ばね6を構成するようにしてもよい。この場合、重ね板ばね用サイレンサ1は、偶数番目に位置する板ばね60に組み付けるようにすればよい。
【0034】
以上、本発明の実施の形態を説明した。
【0035】
本実施の形態では、重ね板ばね用サイレンサ1を、板ばね60bの上面67側に配置される第一のサイレンサ2と、板ばね60bの下面68側に配置される第二のサイレンサ3とを備えた2ピース構造とし、第一のサイレンサ2と第二のサイレンサ3とを連結部材4により連結している。そして、板ばね60bの上面68側に第一のサイレンサ2を配置した場合に、板ばね60bに形成された装着用孔66と嵌合して板ばね60bの下面68から突き出る第一の突起部24を、第一のサイレンサ2の、板ばね60bの上面37との対向面(サイレンサ本体21の上面22)側に設けるとともに、板ばね60bの下面68側に第二のサイレンサ3を配置した場合に、板ばね60bの下面68側から突き出た第一の突起部24と嵌合する第一の嵌合用穴34を、第二のサイレンサ3の、板ばね60bの下面68との対向面(サイレンサ本体31の上面32)側に設けている。
【0036】
このように、本実施の形態によれば、第一のサイレンサ2と第二のサイレンサ3とが、弾性を有する連結部材4により互いに連結されているので、これらのサイレンサ2、3の板ばね60bへの組み付け作業を片手で行うことができ、作業性が改善する。また、板ばね60bの上面67側に配置される第一のサイレンサ2を、板ばね60bの装着用孔66に嵌合させるようにしているので、重ね板ばね用サイレンサ1が組み付けられた板ばね60bに衝撃が加わった場合でも、第一のサイレンサ2が板ばね60bから外れる可能性は低い。例えば、この衝撃により第一のサイレンサ2と二のサイレンサ3との嵌合が緩み、第二のサイレンサ3が板ばね60bから落下しても、連結部材4により第二のサイレンサ3が第一のサイレンサ2に連結しているので、第二のサイレンサ3の紛失の可能性を低減できる。なお、第一のサイレンサ2と板ばね60bの装着用孔66との嵌合をより強固にするため、例えば、第一のサイレンサ2の第一の突起部24の外周に、板ばね60bの装着用孔66の縁に係合する鉤状のスナップフィット部を設けてもよい。
【0037】
また、本実施の形態によれば、連結部材4を、折り曲げやすい薄肉部46、47を有するベルト状にしているので、重ね板ばね用サイレンサ1の板ばね60への組み付け作業が片手でさらにやりやすくなる。
【0038】
また、本実施の形態では、第一の突起部24の頂面26に第二の嵌合用穴26を形成し、第一の嵌合用穴34の底面35に第二の突起部36を形成している。そして、板ばね60bを介して、第一の突起部24と第一の嵌合用穴34とを互いに嵌合させた場合に、第二の突起部36と第二の嵌合用穴26も互いに嵌合するようにしている。このため、第一のサイレンサ2と第二のサイレンサ3との嵌合をより強固にすることができる。なお、第一のサイレンサ2と第二のサイレンサ3との嵌合をより強固にするため、例えば、第二のサイレンサ3の第二の突起部36の外周、および、第一のサイレンサの第二の嵌合用穴の内周面に、互いに係合する鉤状のスナップフィット部および凹部を形成してもよい。
【0039】
なお、本実施の形態では、第一、第二のサイレンサ2、3を矩形板状にしているが、円板形状、多角形板状等、その他の形の板状であってもよい。
【0040】
また、本実施の形態において、重ね板ばね用サイレンサ1は、複数の第一のサイレンサ2および複数の第二のサイレンサ3が連結部材4で交互に連結されたものを一体成型し、これを切断することで作成するようにしてもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、連結部材4をベルト状としているが、折り曲げやすい形状であるならば、紐状等、その他の形状でもよい。
【0042】
また、本実施の形態では、連結部材4を第一、第二のサイレンサ2、3と一体的に形成しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、連結部材4を第一、第二のサイレンサ2、3とは別個に成型し、接着剤等で第一、第二のサイレンサ4に取り付けるようにしてもよい。この場合、第一、第二のサイレンサ2、3を別々に成型できるので、第一、第二のサイレンサ2、3の素材に、異なる素材を用いることが可能となる。例えば、第一、第二のサイレンサ2、3の一方にゴムあるいは熱可塑性エラストマーを用い、他方にポリエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性合成樹脂を用いる。
【0043】
ゴムおよび熱可塑性エラストマーは、弾性が高く弾性変形しやすい。このため、第一、第二のサイレンサ2、3のうちのいずれか一方のサイレンサにゴムあるいは熱可塑性エラストマーを用いることにより、板ばね60と重ね板ばね用サイレンサ1との摺動自体を抑制することができる。これにより、板ばね60と重ね板ばね用サイレンサ1とが摺動する際に発生するきしみ音を抑制できる。一方、熱可塑性合成樹脂は、ゴムおよび熱可塑性エラストマーに比べて、摺動特性がよい。また、剛性が高いため、弾性変形による劣化が少ない。このため、第一、第二のサイレンサ2、3のうちの他方のサイレンサに熱可塑性合成樹脂を用いることにより、隣り合う板ばね60間の比較的大きな相対的な滑りに対しては、板ばね60と重ね板ばね用サイレンサ1とが適度に摺動するので、ゴムあるいは熱可塑性エラストマーの弾性変形による劣化を抑制し、重ね板ばね用サイレンサ1の耐久性を向上させることができる。
【0044】
また、本実施の形態において、第一の突起部24は、第一のサイレンサ2を板ばね60bの上面67側に配置した場合に、板ばね60bの装着用孔66と嵌合して板ばね60bの仮面68から突き出るように、第一のサイレンサ2のサイレンサ本体21の上面22側に形成されている。また、第一の嵌合用穴34は、第二のサイレンサ3を板ばね60bの下面68側に配置した場合に、板ばね60bの装着用孔66から突き出た第一の突起部24と嵌合するように、第二のサイレンサ3のサイレンサ本体31の上面32側に形成されている。
【0045】
しかし、本発明はこれに限定されない。第一の突起部24および第一の嵌合用穴34は、第一のサイレンサ2および第二のサイレンサ3をそれぞれ板ばね60bの上面67側および下面68側に配置した場合に、両者が互いに嵌合するように形成されていればよい。
【0046】
例えば、第一のサイレンサ2および第二のサイレンサ3各々の、連結部材4が連結している側面からこの側面と反対側の側面までの長さを、板ばね60bの幅より長くするとともに、第一のサイレンサ2および第二のサイレンサ3をそれぞれ板ばね60bの上面67側および下面68側に配置した場合に、第一のサイレンサ2のサイレンサ本体21の、板ばね60bの側面からはみ出した部分の上面22側に、第一の突起部24を形成するとともに、第二のサイレンサ3のサイレンサ本体31の、板ばね60bの側面からはみ出した部分の上面32側に、第一の嵌合用穴34を形成するようにしてもよい。
【0047】
この場合、板ばね60bに装着用孔66を設ける必要がなくなる。ただし、板ばね60bに凹部を設けて、そこに第一のサイレンサ2のサイレンサ本体21あるいは第二のサイレンサ3のサイレンサ本体31を落とし込むことにより、重ね板ばね6に対して重ね板ばね用サイレンサ1の位置決めができるようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0048】
1:重ね板ばね用サイレンサ、2:第一のサイレンサ、3:第二のサイレンサ、4:連結部材、6:重ね板ばね、7:ブラケット、8:シャックル、9:車軸、21:第一のサイレンサ2のサイレンサ本体、22:サイレンサ本体21の上面、23:サイレンサ本体21の下面、24:第一の突起部、25:第一の突起部24の頂面、26:第二の嵌合用穴、27:フランジ、28:サイレンサ本体21の側面、31:第二のサイレンサ3のサイレンサ本体、32:サイレンサ本体31の上面、33:サイレンサ本体31の下面、34:第一の嵌合用穴、35:第一の嵌合用穴34の底面、36:第二の突起部、37:フランジ、38:サイレンサ本体31の側面、43:第一のアーム部、44:第二のアーム部、45:接合部、46、47:薄肉部、60、60a〜60c:板ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね板ばねを構成する複数の板ばねのうち、重ね方向に隣り合う板ばね間に配置される重ね板ばね用サイレンサであって、
前記板ばねの第一の面側に配置される第一のサイレンサと、
前記板ばねの、前記第一の面の反対側の第二の面側に配置される第二のサイレンサと、
前記第一のサイレンサおよび前記第二のサイレンサを連結する連結部材と、を有し、
前記第一のサイレンサには、第一の突起部が形成されており、
前記第二のサイレンサには、前記第一の突起部と嵌合する第一の嵌合用穴が形成されている
ことを特徴とする重ね板ばね用サイレンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の重ね板ばね用サイレンサであって、
前記第一の突起部は、前記第一のサイレンサを前記板ばねの前記第一の面側に配置した場合に、前記板ばねに形成されている装着用孔と嵌合して前記板ばねの前記第二の面から突き出るように、当該第一のサイレンサの前記第一の面との対向面側に形成されており、
前記第二の突起部は、前記第二のサイレンサを前記板ばねの前記第二の面側に配置した場合に、前記第二の面から突き出た前記第一の突起部と嵌合するように、当該第二のサイレンサの前記第二の面との対向面側に形成されている
ことを特徴とする重ね板ばね用サイレンサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の重ね板ばね用サイレンサであって、
前記連結部材は、肉薄部を有するベルト状に形成されている
ことを特徴とする重ね板ばね用サイレンサ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の重ね板ばね用サイレンサであって、
前記第一の突起部には、第二の嵌合用穴が頂面に形成されており、
前記第一の嵌合用穴の内部には、当該第一の嵌合用穴が前記第一の突起部と嵌合する場合に、前記第二の嵌合用穴と嵌合する第二の突起部が形成されている
ことを特徴とする重ね板ばね用サイレンサ。
【請求項5】
複数の板ばねが重ねて束ねられて構成された重ね板ばねであって、
少なくとも両端部において、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の重ね板ばね用サイレンサが組み付けられた板ばねが、当該重ね板ばね用サイレンサが組み付けられていない2枚の板ばねで挟み込まれるように構成されている
ことを特徴とする重ね板ばね。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−113353(P2013−113353A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258822(P2011−258822)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】