説明

重合性組成物

【課題】室温付近で液晶相を示し、溶媒溶解性に優れる重合性組成物であって、硬化させると、均一な膜状態を維持し、配向制御及び光学特性に優れ、且つ基材への密着性に優れる重合膜が得られる重合性組成物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物(A)並びに(メタ)アクリレート基及びカルボキシル基を各々少なくとも一つ有する化合物(B)を含有する重合性組成物。下記式中、R1及びR2は、各々独立に水素原子又はメチル基を表し、環A1〜A3は、各々独立にベンゼン環、ナフタレン環等を表し、X、Y及びZは、各々独立にC1〜8アルキル基等を表し、L1〜L4は、各々独立に単結合、−COO−、−OCO等を表し、a、b及びcはそれぞれ環A1〜A3における置換基の数であって、環A1〜A3に含まれる6員環の数をvとすると、a、b及びcは各々独立に2v+2以下の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の二官能(メタ)アクリレート化合物(好ましくは側方置換基を有するもの)並びにカルボキシル基及び(メタ)アクリレート基を各々少なくとも一つ有する化合物を含有する重合性組成物に関し、詳細には、(メタ)アクリル基を光重合して硬化膜とした際に、均一な膜状態と優れた光学特性を有し、基材への密着性に優れる重合膜が得られる重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶物質はTN型やSTN型に代表されるディスプレイ表示等の液晶分子の可逆的運動を利用した表示媒体への応用以外にも、その配向性と屈折率、誘電率、磁化率等の物理的性質の異方性を利用して、位相差板、偏光板、光偏光プリズム、各種光フィルター等の光学異方体への応用が検討されている。
【0003】
上記光学異方体を得るには、例えば、重合性官能基を有する液晶化合物又は該液晶化合物を含有する重合性組成物を液晶状態で均一に配向させた後、液晶状態を保持したまま紫外線等のエネルギー線を照射することによって光重合させて、均一な配向状態を半永久的に固定化して重合膜として得る方法が採られている。
【0004】
この重合膜に用いられる上記液晶化合物又は上記液晶化合物を含有する重合性組成物において、液晶相発現温度が高い場合、エネルギー線による光重合だけでなく意図しない熱重合も誘起され、液晶分子の均一な配向状態が失われ所望する配向の固定が困難である。従って、硬化時の温度管理を容易にするために、室温付近で液晶相を示す液晶化合物又は重合性組成物が求められる。
【0005】
また、重合膜は上記液晶化合物又は上記重合性組成物を基板に塗布して重合することによって得られるが、非重合性化合物が含まれると得られる重合膜の強度が不足したり、膜内に応力歪みが残存したりする欠点がある。また非重合性化合物を溶媒等で取り除くと、膜の均質性が保てずムラが生じたりする問題がある。従って、膜厚が均一な重合膜を得るためには、溶剤を含有させた重合性組成物を塗工する方法が好ましく用いられ、液晶化合物及び重合性組成物に用いられる各種成分は溶媒溶解性が良好であることが必要とされる。
【0006】
重合膜に用いられる組成物に関しては、例えば、特許文献1にネマチック組成物を利用した光学異方体が報告されている。しかし、特許文献1に記載のネマチック組成物は、硬化直後の膜は均一ではあっても、耐熱性及び耐溶剤性に乏しく、また時間が経過すると膜が変形したり、光学特性が低下したりする等の問題があった。
【0007】
また、特許文献2〜5には、耐熱性、耐溶剤性、溶媒溶解性、高いガラス転移点及び低温で液晶相を示す等、優れた性能を示す組成物が記載されている。
【0008】
一般に、重合膜の膜厚が厚い場合、重合性組成物中の液晶分子の配向制御が困難で重合膜の透過率が低下したり、着色が現れたりする等の問題がある。一方、膜厚の薄い重合膜を作製しようとすると、薄膜化により膜の全範囲にわたって良好な配向制御が得られるものの、膜厚制御が困難で表面が不均一になったり、結晶化しやすくなったりして、従来既知の組成物では薄膜化した重合膜の物性及び光学特性において満足できるものではなかった。
【0009】
また、例えば光学フィルムに用いられる重合膜には、基材に対する密着性が優れることも求められる。従来既知の組成物による重合膜は、基材(特にPET基材)に対する密着性が不十分であった。この問題に対し、バインダー樹脂を変更したり、添加剤を加えることが検討されている(例えば特許文献6及び7参照)。しかしながら、これらの手法は、本発明のように配向を制御して重合させる組成物においては、必ずしも有効なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−119415号公報
【特許文献2】特開2008−195762号公報
【特許文献3】特開2008−248157号公報
【特許文献4】特開2008−248159号公報
【特許文献5】特開2008−250108号公報
【特許文献6】特開2008−038068号公報
【特許文献7】特開2008−056859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、室温付近で液晶相を示し、溶媒溶解性に優れる重合性組成物であって、硬化させると、均一な膜状態を維持し、配向制御及び光学特性に優れ、且つ基材への密着性に優れる重合膜が得られる重合性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の化学構造を有する化合物及び(メタ)アクリレート基並びにカルボキシル基を各々少なくとも一つ有する化合物を含有する重合性組成物により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表される化合物(A)並びに(メタ)アクリレート基及びカルボキシル基を各々少なくとも一つ有する化合物(B)を含有することを特徴とする重合性組成物を提供するものである。
【0014】
【化1】

(式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、
環A1、環A2及び環A3は、各々独立に、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ナフタレン環、デカヒドロナフタレン環、テトラヒドロナフタレン環又はフェナントレン環を表し、これらの環中の−CH=は−N=で、−CH2−は−S−又は−O−で置換されていてもよく、
X、Y及びZは、各々独立に、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアシル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、
1、L2、L3及びL4は、各々独立に、単結合、−COO−、−OCO−、−(CH2p−、−CH=CH−、−(CH2pO−、−O(CH2p−、−CH=CHCH2O−、−OCH2CH=CH−、−C≡C−、−(CH2pCOO−、−OCO(CH2p−、−(CH2pOCO−O−、−OCO−O(CH2p−、−(CH2qO(CH2rO−又は−O(CH2qO(CH2r−を表し、
a、b及びcはそれぞれ環A1、環A2及び環A3における置換基の数であって、環A1、環A2及び環A3に含まれる6員環の数をvとすると、a、b及びcは、各々独立に2v+2以下の整数を表し、
pは各々独立に1〜8の整数を表し、q及びrは各々独立に1〜3の整数を表す。)
【0015】
また、本発明は、上記重合性組成物を、該重合性組成物が液晶相を示す状態で、光重合させることにより作製された重合膜を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、上記重合膜を用いてなる光学フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の重合性組成物は、室温付近において安定な液晶相を発現し、かつ、高い光学(屈折率)異方性(Δn)を有し、薄膜でも充分な光学特性が得られる。また、該重合性組成物を光重合させることにより作製される本発明の重合膜は、配向均一性が高く、光学特性に優れ、基材への密着性に優れるため光学フィルムに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、その好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0019】
本発明の重合性組成物において、上記一般式(1)で表される化合物(A)並びに(メタ)アクリレート基及びカルボキシル基を各々少なくとも一つ有する化合物(B)は、それぞれ少なくとも一種ずつ含まれていればよい。
【0020】
<上記一般式(1)で表される化合物(A)>
上記一般式(1)中のX、Y及びZで表される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル、クロロメチル、トリフルオロメチル、シアノメチル、エチル、ジクロロエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル又は2−エチルヘキシル等が挙げられる。
上記一般式(1)中のX、Y及びZで表される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチロイル、バレロイル、ピバロイル等が挙げられる。
上記一般式(1)中のX、Y及びZで表される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メチルオキシ、クロロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、シアノメチルオキシ、エチルオキシ、ジクロロエチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ又は2−エチルヘキシルオキシ等が挙げられる。
上記一般式(1)中のX、Y及びZで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
【0021】
上記一般式(1)中の環A1、環A2及び環A3は、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環又はフェナントレン環であることが好ましい。また、環A1、環A2及び環A3において、隣接する基と結合する結合手は、ベンゼン環、シクロヘキサン環又はシクロヘキセン環の場合は環構造の1位及び4位に有することが好ましく、ナフタレン環、デカヒドロナフタレン環又はテトラヒドロナフタレン環の場合は環構造の2位及び6位に有することが好ましく、フェナントレン環である場合は環構造の2位及び7位に有することが好ましい。
【0022】
上記一般式(1)中のL1及びL4は、単結合、−(CH2pO−、−O(CH2p−、−(CH2pCOO−、−OCO(CH2p−、−(CH2pOCO−O−、−OCO−O(CH2p−、−(CH2qO(CH2rO−又は−O(CH2qO(CH2r−であることが好ましく、上記一般式(1)中のL2及びL3は、−COO−又は−OCO−であることが好ましい。
上記一般式(1)中にX、Y又はZが存在する場合(即ちa、b又はcが1以上の場合)、X、Y、Zは、炭素原子数1〜3の非置換アルキル基、炭素原子数1〜3の非置換アシル基、炭素原子数1〜3の非置換アルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基であることが好ましい。
【0023】
上記一般式(1)で表される化合物(A)の中でも、bが1以上である化合物は溶解性に優れるため好ましく、下記一般式(2)で表される化合物(A’)は重合性組成物を製膜した際に析出がより起こりにくく、NI点、配向性及びリタデーションも好ましい値を示すため更に好ましい。また、同様の観点から、上記一般式(1)においてa及びcが0であり、bが1である化合物も好ましい。
【0024】
【化2】

(式(2)中、R1、R2、L1、L4、A1、A3、X、Z、a及びcは上記一般式(1)と同じであり、Y1及びY2は、各々独立に水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアシル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、Y1又はY2の少なくともどちらか一方は、水素原子でない。)
【0025】
上記一般式(2)中のY1及びY2で表される置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアシル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基及びハロゲン原子は、上記一般式(1)におけるYと同様の基を表す。
尚、上記一般式(1)において好ましいL1、L4、A1、A3、X、Z、a及びcとして挙げたものは、上記一般式(2)においても好ましく、上記一般式(1)において好ましいYとして挙げたものは、上記一般式(2)におけるY1、Y2として好ましい。
【0026】
上記一般式(1)で表される化合物(A)の具体例としては、下記化合物No.A1〜A38が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。尚、下記化合物No.A1〜A12、A15〜A27、A29〜A34、A37及びA38は、上記一般式(2)で表される化合物(A’)である。
【0027】
【化3】

【0028】
【化4】

【0029】
【化5】

【0030】
【化6−1】

【0031】
【化6−2】

【0032】
<(メタ)アクリレート基及びカルボキシル基を各々少なくとも一つ有する化合物(B)>
(メタ)アクリレート基及びカルボキシル基を各々少なくとも一つ有する化合物(B)は、好ましくは(メタ)アクリレート基及びカルボキシル基を各々1〜3個有する化合物であり、更に好ましくは(メタ)アクリレート基及びカルボキシル基を各々1〜2個有する化合物であり、最も好ましくは(メタ)アクリレート基及びカルボキシル基を各々1つ有する化合物である。(メタ)アクリレート基及びカルボキシル基を各々少なくとも一つ有する化合物(B)は、(メタ)アクリレート基及びカルボキシル基を各々少なくとも一つ有していれば特に限定されないが、分子量が800以下であることが好ましく、分子量が600以下であることが更に好ましく、分子量が400以下であることが最も好ましい。また、分子量は150以上であることが好ましい。
【0033】
上記化合物(B)としては、溶媒への溶解性の点で、下記一般式(3)で表される化合物(B’)が好ましく、基材への密着性の点で、下記一般式(4)で表される化合物(B”)が更に好ましい。
【0034】
【化7】

(式(3)中、R3は水素原子又はメチル基を表し、
環A4はベンゼン環、シクロヘキサン環又はナフタレン環を表し、これらの環中の−CH=は−N=で置換されていてもよく、これらの環中の−CH2−は−S−又は−O−で置換されていてもよく、
Wは、各々独立に、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアシル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、
5は、単結合、−COO−、−OCO−、−(CH2s−、−CH=CH−、−(CH2sO−、−O(CH2s−、−CH=CHCH2O−、−OCH2CH=CH−、−C≡C−、−(CH2sCOO−、−OCO(CH2s−、−(CH2sOCO−O−、−OCO−O(CH2s−、−(CH2tO(CH2uO−又は−O(CH2tO(CH2u−を表し、
dは0〜10の整数を表し、e及びfは各々独立に1〜3の整数を表し、gは0〜5の整数を表し、
sは各々独立に1〜8の整数を表し、t及びuは各々独立に1〜3の整数を表す。)
【0035】
【化8】

(式(4)中、R3、L5、W、dは上記一般式(3)と同じであり、環A5はベンゼン環又はシクロヘキサン環を表し、これらの環中の−CH=は−N=で置換されていてもよく、これらの環中の−CH2−は−S−又は−O−で置換されていてもよい。)
【0036】
上記一般式(3)及び(4)中のWで表される置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアシル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子としては、それぞれ上記一般式(1)におけるYの説明で挙げたものが挙げられる。
【0037】
上記一般式(3)及び(4)中のL5は、−(CH2sO−、−(CH2sCOO−、又は単結合であることが好ましい。上記一般式(3)及び(4)中のdは0〜1であることが好ましい。上記一般式(3)中のgは0〜2であることが好ましい。
【0038】
(メタ)アクリレート基及びカルボキシル基を各々少なくとも一つ有する化合物(B)の具体例としては、下記化合物No.B1〜B32が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。尚、下記化合物No.B1〜B12、B16〜B20及びB22〜B32は、上記一般式(3)で表される化合物(B’)であり、それらの中でも、化合物No.B1、B2、B5〜9及びB31は、上記一般式(4)で表される化合物(B”)である。
【0039】
【化9】

【0040】
【化10】

【0041】
上記一般式(1)で表される化合物(A)並びに(メタ)アクリレート基及びカルボキシル基を各々少なくとも一つ有する化合物(B)の質量比率((A)/(B))は、好ましくは99/1〜81/19であり、更に好ましくは95/5〜85/15である。上記化合物(A)の質量比率が99よりも大きい場合、基材への密着力向上の効果が得られ難く、上記化合物(A)の質量比率が81よりも小さい場合、膜均質性や配向性が悪化する可能性があるためである。
【0042】
本発明の重合性組成物は、溶剤を含有させて溶液にすることができる。更に上記化合物(A)及び(B)以外に、以下に述べる他の単量体、光学活性化合物(C)、ラジカル重合開始剤(D)、界面活性剤(E)等の任意成分を含んでもよく、その場合、本発明の重合性組成物(但し、溶剤を除く)中、上記化合物(A)及び(B)の含有量の合計は、少なくとも50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
また、本発明の重合性組成物は、少なくとも室温付近、具体的には30℃以下で液晶相を示すことが好ましく、特に15℃以下で液晶相を示すことがより好ましい。
【0043】
上記溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等が挙げられる。溶剤は単一化合物であってもよいし、又は混合物であってもよい。これらの溶剤の中でも、沸点が60〜250℃のものが好ましく、60〜180℃のものが特に好ましい。60℃より低いと塗布工程で溶剤が揮発して膜の厚さにムラが生じやすく、250℃より高いと脱溶剤工程で減圧しても溶剤が残留したり、高温での処理による熱重合を誘起したりして配向性が低下する場合がある。本発明の重合性組成物中における上記溶剤の含有量は、基板への塗工性の観点から、溶剤を除いた全成分の合計が本発明の重合性組成物中で5〜70質量%となる範囲が好ましい。
【0044】
本発明の重合性組成物は、単量体である上記化合物A(二官能(メタ)アクリレート化合物)及び上記化合物B(単官能(メタ)アクリレート化合物)と共に、必要に応じて他の単量体(エチレン性不飽和結合を有する化合物)を用いることができる。
【0045】
上記他の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、第二ブチル(メタ)アクリレート、第三ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アリルオキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−フェニルエチル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、ジフェニルメチル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ペンタクロルフェニル(メタ)アクリレート、2−クロルエチル(メタ)アクリレート、メチル−α−クロル(メタ)アクリレート、フェニル−α−ブロモ(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
但し、本発明の重合性組成物を用いて作製される重合膜の耐熱性及び光学特性を確保するために、他の単量体の含有量は、上記化合物(A)及び(B)の合計100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0046】
また、本発明の重合性組成物に、さらに光学活性化合物(C)を含有させることによって、液晶骨格のらせん構造を内部に有する組成物を得ることができ、コレステリック液晶相を発現させることができる。かかる光学活性化合物を含有させる場合、その含有量は本発明の重合性組成物(但し、溶剤を除く)中、0.5〜50質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましい。かかる光学活性化合物としては、例えば下記〔化11〕〜〔化12〕の化合物を挙げることができる。
【0047】
【化11】

【0048】
【化12】

【0049】
また、本発明の重合性組成物には、更にラジカル重合開始剤(D)を含有させることもできる。ラジカル重合開始剤(D)を用いる場合、本発明の重合性組成物に含まれる全重合性化合物(化合物(A)、化合物(B)及び上記他の単量体)の合計量に対して10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下が更に好ましく、0.1〜5質量%の範囲が特に好ましい。
【0050】
上記ラジカル重合開始剤(D)としては、従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール等のベンジルケタール類;1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルシクロヘキサン、2−ヒドロキシ−2−ベンゾイルプロパン、2−ヒドロキシ−2−(4’−イソプロピル)ベンゾイルプロパン等のα−ヒドロキシアセトフェノン類;4−ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4−フェノキシベンゾイルジクロロメタン等のクロロアセトフェノン類;1−ベンジル−1−ジメチルアミノ−1−(4’−モルホリノベンゾイル)プロパン、2−モルホリル−2−(4’−メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、9−n−ブチル−3,6−ビス(2’−モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等のα−アミノアセトフェノン類;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド類;ベンジル、ベンゾイル蟻酸メチル等のα−ジカルボニル類;p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−s−トリアジン等のトリアジン類;特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特開2005−97141号公報、特表2006−516246号公報、特許第3860170号公報、特許第3798008号公報、国際公開第2006/018973号に記載の化合物等のα−アシルオキシムエステル類;過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、エチルアントラキノン、1,7−ビス(9'−アクリジニル)ヘプタン、チオキサントン、1−クロル−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルスルフィド、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、チオキサントン/アミン等が挙げられ、市販品としては、N−1414、N−1717、N−1919、PZ−408、NCI−831、NCI−930((株)ADEKA社製)、IRGACURE369、IRGACURE907、IRGACURE184、IRGACURE OXE01、IRGACURE OXE02(BASF(株)社製)等が挙げられる。
【0051】
また、上記ラジカル重合開始剤(D)と増感剤との組合せも好ましく使用することができる。かかる増感剤としては、チオキサントン、フェノチアジン、クロロチオキサントン、キサントン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ルプレン等が挙げられる。
【0052】
また、本発明の重合性組成物には、空気界面側に分布する排除体積効果を有する界面活性剤(E)をさらに含有させることが好ましい。界面活性剤は重合性組成物を支持基板等に塗布することを容易にしたり、液晶相の配向を制御したりする等の効果を得られるものが好ましい。かかる界面活性剤としては、例えば、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリエチレングリコール及びそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ペルフルオロアルキルスルホン酸塩、ペルフルオロアルキルカルボン酸塩、ペルフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、ペルフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
界面活性剤の好ましい使用割合は、界面活性剤の種類、組成物の成分比等に依存するが、本発明の重合性組成物中、100ppm〜5質量%の範囲であることが好ましく、特に0.05〜1質量%の範囲が好ましい。
【0053】
また、本発明の重合性組成物には、必要に応じて添加物をさらに添加してもよい。重合性組成物の特性を調整するための添加物としては、例えば、保存安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機物、有機物等の微粒子化物、ポリマー、赤外線吸収剤等の機能性化合物が挙げられる。
【0054】
上記保存安定剤は、重合性組成物の保存安定性を向上させる効果を付与することができる。使用できる安定剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、2−ナフチルアミン類、2−ヒドロキシナフタレン類等が挙げられる。これらを添加する場合は、その添加量は、本発明の重合性組成物中、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
【0055】
上記酸化防止剤としては、特に制限がなく公知の化合物を使用することができ、例えば、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、トリフェニルフォスファイト、トリアルキルフォスファイト等が挙げられる。
【0056】
上記紫外線吸収剤としては、特に制限がなく公知の化合物を使用することができ、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物又はニッケル錯塩系化合物等によって紫外線吸収能をもたせたものが挙げられる。
【0057】
上記微粒子化物は光学(屈折率)異方性(Δn)を調整したり、重合膜の強度を上げたりするために用いることができる。微粒子化物の材質としては無機物、有機物、金属等が挙げられ、凝集防止のため、微粒子化物の粒子径は0.001〜0.1μmが好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.05μmである。粒子径の分布はシャープであるものが好ましい。本発明の重合性組成物中、微粒子化物は、0.1〜30質量%の範囲内で好ましく利用することができる。
【0058】
上記無機物としては、例えば、セラミックス、フッ素金雲母、フッ素四ケイ素雲母、テニオライト、フッ素バーミキュライト、フッ素ヘクトライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、モンモリロナイト、バイデライト、カオリナイト、フライポンタイト、ZnO、TiO2、CeO2、Al23、Fe23、ZrO2、MgF2、SiO2、SrCO3、Ba(OH)2、Ca(OH)2、Ga(OH)3、Al(OH)3、Mg(OH)2、Zr(OH)4等が挙げられる。炭酸カルシウムの針状結晶等の微粒子は光学異方性を有する。このような微粒子によって、重合体の光学異方性を調節できる。上記有機物としては、例えばカーボンナノチューブ、フラーレン、デンドリマー、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリイミド等が挙げられる。
【0059】
上記ポリマーは、重合膜の電気特性や配向性を制御することができ、上記溶剤に可溶性の高分子化合物が好ましく使用することができる。かかる高分子化合物としては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエポキサイド、ポリエステル、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0060】
本発明の重合膜は、本発明の重合性組成物を、該重合性組成物が液晶相を示す状態で、光重合させることにより作製されたものである。本発明の重合膜は、溶剤を含有する溶液状の本発明の重合性組成物を支持基板に塗布して、該重合性組成物中の液晶分子を配向させた状態で脱溶剤し、次いでエネルギー線を照射して光重合することにより得ることができる。
【0061】
上記支持基板としては、特に限定されないが、好ましい例としてはガラス板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板、ポリイミド板、ポリアミド板、ポリメタクリル酸メチル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニル板、ポリテトラフルオロエチレン板、セルロース板、シリコン板、反射板、方解石板等が挙げられ、本発明の重合膜との密着性に優れる点からポリイミド板がより好ましい。また、これらの支持基板上にポリイミド配向膜又はポリビニルアルコール配向膜を施したものも特に好ましく使用することができる。
【0062】
本発明の重合性組成物を上記支持基板に塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法及び流延成膜法等を用いることができる。尚、本発明の重合膜の膜厚は用途等に応じて適宜選択されるが、好ましくは0.05〜10μmの範囲から選択され、所望の膜厚が得られるように、本発明の重合性組成物を支持基板に塗布する。
【0063】
本発明の重合性組成物中の液晶分子を配向させる方法としては、例えば支持基板上に事前に配向処理を施す方法が挙げられる。配向処理を施す好ましい方法としては、各種ポリイミド系配向膜又はポリビニルアルコール系配向膜からなる液晶配向層を支持基板上に設け、ラビング等の処理を行う方法が挙げられる。また、支持基板上の本発明の重合性組成物に磁場や電場等を印加する方法等も挙げられる。
【0064】
本発明の重合性組成物を重合させる方法としては、光を用いる公知の方法を適用できる。光による重合反応としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合、リビング重合等が挙げられるが、前記ラジカル重合開始剤(D)を用いて光を照射するラジカル重合が好ましい。重合性基の性質を考慮すると、配向の優れた重合膜を得るためには、光の照射によるカチオン重合も好ましい。本発明の重合性組成物が液晶相を示す条件下で重合を行なわせることが容易だからである。また磁場や電場を印加しながら架橋させることも好ましい。
支持基板上に形成した液晶(共)重合体(本発明の重合膜)は、そのまま使用しても良く、また、必要に応じて、支持基板から剥離したり、他の支持基板に転写したりして使用してもよい。本発明の重合膜は基材に対する密着性に優れるため、支持基板上に形成した重合膜をそのまま使用する用途に好適である。
尚、本発明の重合性組成物は、光以外に、熱、又は電子線、X線等の光以外の電磁波により重合させることも可能である。しかしながら、良好な配向性、重合操作の簡便性等の点から、光による重合が好ましい。
【0065】
上記光の好ましい種類は、紫外線、可視光線、赤外線等である。通常は、紫外線又は可視光線が好ましい。好ましい波長の範囲は150〜500nmである。さらに好ましい範囲は250〜450nmであり、最も好ましい範囲は300〜400nmである。光源は、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、又はショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)等が挙げられるが、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプが好ましく使用することができる。光源からの光はそのまま組成物に照射してもよく、フィルターによって選択した特定の波長(又は特定の波長領域)を組成物に照射してもよい。好ましい照射エネルギー密度は、2〜5000mJ/cm2であり、さらに好ましい範囲は10〜3000mJ/cm2であり、特に好ましい範囲は100〜2000mJ/cm2である。好ましい照度は0.1〜5000mW/cm2であり、さらに好ましい照度は1〜2000mW/cm2である。組成物が液晶相を有するように、光を照射するときの温度を設定できるが、好ましい照射温度は100℃以下である。100℃以上の温度では熱による重合が起こりうるので良好な配向が得られないときがある。
【0066】
本発明の重合膜は、光学異方性を有する成形体として利用することができる。この成形体は、例えば、位相差板(1/2波長板、1/4波長板等)、偏光素子、二色性偏光板、液晶配向膜、反射防止膜、選択反射膜、視野角補償膜等として、光学補償の用途に用いることができる。本発明の重合膜を用いてなるこれらの膜等は、光学フィルムとして特に好適である。本発明において光学フィルムとは、位相差フィルム、輝度向上フィルム、パターンリターダーフィルム等を含むディスプレイ用フィルムの他、特定光(例えば可視光線、近赤外線等)を選択的に反射させる機能を有する選択反射フィルム等を含むものである。また、本発明の重合膜は、その他にも、液晶レンズ、マイクロレンズ等の光学レンズ、PDLC型電子ペーパー、デジタルペーパー等の情報記録材料にも利用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例、比較例及び使用例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例、比較例及び使用例によって制限を受けるものではない。
【0068】
〔実施例1〜9、比較例1〜6〕
下記の手順に従い、重合性組成物を調製し、該重合性組成物から重合膜を作製した。
【0069】
下記〔表1〕に記載の重合性組成物0.3gを溶剤(シクロペンタノン)1.2gに添加して溶解した後、ラジカル重合開始剤(N−1919;株式会社ADEKA製)9mgを加えて完全に溶解した後に、0.45μmメンブランフィルターでろ過処理を実施して重合性組成物溶液を調製した。
調製した重合性組成物溶液をラビングを施したポリイミド付ガラス基板上にスピンコーターで塗工し、ホットプレートを用いて100℃で3分間乾燥後、室温下で1分間冷却し、高圧水銀灯にて400mJ/cm2で光を照射して硬化させ、重合膜を得た。
【0070】
得られた重合膜の(1)膜均質性、(2)配向性、(3)リターデーション、(4)膜厚、(5)光学(屈折率)異方性及び(6)密着性について、それぞれ以下の方法で評価した。結果を〔表1〕に示す。
【0071】
(1)膜均質性
重合膜を目視で観察し、表面が平滑で均質であれば○、荒れている又は波打っていれば×とした。
【0072】
(2)配向性
重合膜の配向の均質性について偏光顕微鏡を用いて評価した。即ち、クロスニコル下で重合膜を設置したステージを回転させることによって、重合膜の配向状態を観察し、膜の均質性について評価した。重合膜の配向が均一に得られていれば○、配向が得られても不均一であれば△、重合膜に結晶等が発生して配向が全く得られていなければ×とした。
【0073】
(3)リターデーション(R)
重合膜に対して、偏光顕微鏡を用いてセナルモン法に基づく複屈折測定法に従い、室温(25℃)で波長546nmにおけるリターデーション(R)を測定した。
【0074】
(4)膜厚(d)
触針式表面形状測定器(Dektak6M;(株)アルバック製)を用いて室温(25℃)で重合膜の膜厚(d)を測定した。
【0075】
(5)光学(屈折率)異方性(△n)
下記式に、上記(3)のリターデーション(R)及び上記(4)の膜厚(d)を代入して、重合膜の光学(屈折率)異方性(Δn)を算出した。
光学(屈折率)異方性(Δn)=リターデーション(R)/膜厚(d)
(6)密着性
得られた重合膜に対して、クロスカット法(JIS K5600−5−6)にて評価を行なった。
【0076】
【表1】

【0077】
尚、上記表1に記載の比較化合物1〜4は、下記化合物である。
【0078】
【化13】

【0079】
〔実施例10及び比較例7〕厚膜における密着性
実施例3及び比較例5で用いた重合性組成物0.6gを溶剤(シクロペンタノン)1.2gに添加して溶解した後、ラジカル重合開始剤(N−1919;株式会社ADEKA製)18mgを加えて完全に溶解した後に、0.45μmメンブランフィルターでろ過処理を実施して重合性組成物溶液を調製した。
調製した重合性組成物溶液をラビングを施したポリイミド付ガラス基板上にスピンコーターで塗工し、ホットプレートを用いて100℃で3分間乾燥後、室温下で1分間冷却し、高圧水銀灯にて400mJ/cm2で光を照射して硬化させ、重合膜を得た。
得られた重合膜の膜均質性、配向性及び密着性について、実施例1と同様にして評価した。結果を〔表2〕に示す。尚、〔表2〕には、参考のため実施例3及び比較例5の結果も併記する。
【0080】
【表2】

【0081】
〔実施例11及び比較例8〕光学活性化合物を含有する反射膜
光学活性化合物(C)として下記化合物No.C1を含有し、コレステリック液晶相を発現する下記〔表3〕に記載の重合性組成物0.6gを溶剤(シクロペンタノン)1.2gに添加して溶解した後、ラジカル重合開始剤(N−1919;株式会社ADEKA製)9mgを加えて完全に溶解した後に、0.45μmメンブランフィルターでろ過処理を実施して重合性組成物溶液を調製した。
調製した重合性組成物溶液をラビングを施したポリイミド付ガラス基板上にスピンコーターで塗工し、ホットプレートを用いて100℃で3分間乾燥後、室温下で1分間冷却し、高圧水銀灯にて400mJ/cm2で光を照射して硬化させ、重合膜を得た。
得られた重合膜の膜均質性、配向性及び密着性について、実施例1と同様にして評価した。結果を〔表3〕に示す。
【0082】
【化14】

【0083】
【表3】

【0084】
以上の実施例より、本発明の重合性組成物は、該重合性組成物を硬化して得られる重合膜が、均一な膜状態を維持し、配向制御及び光学特性に優れ、且つ基材への密着性に優れることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物(A)並びに(メタ)アクリレート基及びカルボキシル基を各々少なくとも一つ有する化合物(B)を含有することを特徴とする重合性組成物。
【化1】

(式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、
環A1、環A2及び環A3は、各々独立に、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ナフタレン環、デカヒドロナフタレン環、テトラヒドロナフタレン環又はフェナントレン環を表し、これらの環中の−CH=は−N=で、−CH2−は−S−又は−O−で置換されていてもよく、
X、Y及びZは、各々独立に、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアシル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、
1、L2、L3及びL4は、各々独立に、単結合、−COO−、−OCO−、−(CH2p−、−CH=CH−、−(CH2pO−、−O(CH2p−、−CH=CHCH2O−、−OCH2CH=CH−、−C≡C−、−(CH2pCOO−、−OCO(CH2p−、−(CH2pOCO−O−、−OCO−O(CH2p−、−(CH2qO(CH2rO−又は−O(CH2qO(CH2r−を表し、
a、b及びcはそれぞれ環A1、環A2及び環A3における置換基の数であって、環A1、環A2及び環A3に含まれる6員環の数をvとすると、a、b及びcは、各々独立に2v+2以下の整数を表し、
pは各々独立に1〜8の整数を表し、q及びrは各々独立に1〜3の整数を表す。)
【請求項2】
上記化合物(A)と上記化合物(B)との質量比率((A)/(B))が99/1〜81/19である請求項1記載の重合性組成物。
【請求項3】
上記化合物(A)が、下記一般式(2)で表される化合物(A’)である請求項1又は2記載の重合性組成物。
【化2】

(式(2)中、R1、R2、L1、L4、A1、A3、X、Z、a及びcは上記一般式(1)と同じであり、Y1及びY2は、各々独立に水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアシル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、Y1又はY2の少なくともどちらか一方は、水素原子ではない。)
【請求項4】
上記化合物(B)が、下記一般式(3)で表される化合物(B’)である請求項1〜3の何れか一項に記載の重合性組成物。
【化3】

(式(3)中、R3は水素原子又はメチル基を表し、
環A4はベンゼン環、シクロヘキサン環又はナフタレン環を表し、これらの環中の−CH=は−N=で置換されていてもよく、これらの環中の−CH2−は−S−又は−O−で置換されていてもよく、
Wは、各々独立に、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアシル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、
5は、単結合、−COO−、−OCO−、−(CH2s−、−CH=CH−、−(CH2sO−、−O(CH2s−、−CH=CHCH2O−、−OCH2CH=CH−、−C≡C−、−(CH2sCOO−、−OCO(CH2s−、−(CH2sOCO−O−、−OCO−O(CH2s−、−(CH2tO(CH2uO−又は−O(CH2tO(CH2u−を表し、
dは0〜10の整数を表し、e及びfは各々独立に1〜3の整数を表し、gは0〜5の整数を表し、
sは各々独立に1〜8の整数を表し、t及びuは各々独立に1〜3の整数を表す。)
【請求項5】
上記化合物(B)が、下記一般式(4)で表される化合物(B”)である請求項1〜3の何れか一項に記載の重合性組成物。
【化4】

(式(4)中、R3、L5、W、dは上記一般式(3)と同じであり、環A5はベンゼン環又はシクロヘキサン環を表し、これらの環中の−CH=は−N=で置換されていてもよく、これらの環中の−CH2−は−S−又は−O−で置換されていてもよい。)
【請求項6】
更に、光学活性化合物(C)を含有し、コレステリック液晶相を発現する請求項1〜5の何れか一項に記載の重合性組成物。
【請求項7】
更に、ラジカル重合開始剤(D)及び/又は界面活性剤(E)を含有する請求項1〜6の何れか一項に記載の重合性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の重合性組成物を、該重合性組成物が液晶相を示す状態で、光重合させることにより作製された重合膜。
【請求項9】
請求項8に記載の重合膜を用いてなる光学フィルム。

【公開番号】特開2013−1834(P2013−1834A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135176(P2011−135176)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】