説明

金属化フィルムコンデンサおよびそれを用いた電力変換装置

【課題】インダクタンスの低減を図った金属化フィルムコンデンサおよびそれを用いた電力変換装置を提供する。
【解決手段】コンデンサ素体の第1および第2引出電極にそれぞれ接続され、板状導体より形成された第1および第2導体部からなるバスバと、第1および第2導体部との間に挟まれた第1絶縁体とを備えた金属化フィルムコンデンサにおいて、第1導体部は、第1引出電極接続部と、第1引出電極接続部から延出した第1延出部と、第1延出部に対して略垂直に立ち上がった第1連結部と、第1延出部から離れる方向に第1連結部の先端部から延びる第1外部接続部とを有し、第2導体部は、第2引出電極接続部と、第2延出部と、前記第2延出部に対して略垂直に立ち上がった第2連結部と、第2延出部から離れる方向に第2連結部の先端部から延びる第2外部接続部とを有し、第1および第2外部接続部を介して外部機器と接続されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタンスの低減を図った金属化フィルムコンデンサおよびそれを用いた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属化フィルムコンデンサは、誘電体フィルムの少なくとも片面にアルミニウム等の金属を蒸着させて金属化フィルムを形成し、この金属化フィルムを巻回した巻回体の端面にメタリコン部を形成してコンデンサ素子を作製し、これをケースに複数個収納して各コンデンサ素子のメタリコン部をリード線または結線板等の引出電極で相互に接続した後、ケースに樹脂を充填、硬化させて作製している。
【0003】
このような金属化フィルムコンデンサのうち高周波回路に適用されるものは、低インダクタンス化が強く求められている。そこで、図13に示す特許文献1に記載された金属化フィルムコンデンサ51では、コンデンサ素子52の端面に形成した一方側メタリコン部に接続された引出電極53と、他方側メタリコン部に接続された引出電極54とを近接して平行に引き出した構成とし、インダクタンスの低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−277378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された金属化フィルムコンデンサ51では、引出電極53、54に接続された外部端子55の寸法が大きく、また端子間距離も広いため、インダクタンスが高くなってしまうという問題があった。
【0006】
また、上記の金属化フィルムコンデンサ51を電力変換装置に用いる場合、外部端子55から半導体スイッチング素子までの接続の態様によっては、さらにインダクタンスが高くなってしまうという問題があった。
【0007】
上記の問題に鑑みて、本発明はインダクタンスの低減を図った金属化フィルムコンデンサおよびそれを用いた電力変換装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る金属化フィルムコンデンサは、金属化フィルムを巻回または積層した巻回体または積層体の一の極性側の端面に第1メタリコン部を形成し、他の極性側の端面に第2メタリコン部を形成した複数のコンデンサ素子を並列に接続し、複数のコンデンサ素子の第1メタリコン部同士を第1引出電極によって接続し、第2メタリコン部同士を第2引出電極によって接続してなる少なくとも一つのコンデンサ素体と、第1および第2引出電極にそれぞれ接続され、板状導体より形成された第1および第2導体部からなるバスバと、第1導体部と第2導体部との間に挟まれた第1絶縁体とを備えた金属化フィルムコンデンサであって、第1導体部は、第1引出電極に接続される第1引出電極接続部と、第1引出電極接続部から第1引出電極接続部の電極平面と同一平面内で部分的に延出した第1延出部と、第1延出部と連結され、該第1延出部に対して略垂直に立ち上がった第1連結部と、第1引出電極接続部および第1延出部が形成する電極平面と平行かつ第1延出部から離れる方向に第1連結部の先端部から延びる第1外部接続部とを有し、第2導体部は、第2引出電極に接続されるとともに、第1絶縁体を挟んで第1引出電極接続部に重ね合わされた第2引出電極接続部と、第1絶縁体を挟んで第1延出部と重ね合わされるとともに、第2引出電極接続部から第2引出電極接続部の電極平面と同一平面内で部分的に延出した第2延出部と、第2延出部と連結され、第1連結部と絶縁されながら対向して第2延出部に対して略垂直に立ち上がった第2連結部と、第2引出電極接続部および第2延出部が形成する電極平面と平行かつ第2延出部から離れる方向に第2連結部の先端部から延びる第2外部接続部とを有し、第1および第2外部接続部を介して外部機器と接続されることを特徴とする。
【0009】
このような構成を有する発明(金属フィルムコンデンサ)によれば、第1絶縁体を挟んで互いに重ね合わされた第1導体部および第2導体部からなるバスバを備えているため、両導体部間の距離を狭くし、かつバスバ自体の高さ寸法を小さくすることが可能となり、インダクタンスの低減を図ることができる。具体的には、第1引出電極接続部と第2引出電極接続部とが第1絶縁体を挟んで重ね合わされるとともに、第1延出部と第2延出部とが第1絶縁体を挟んで重ね合わされる。しかも、第1および第2延出部に対してそれぞれ略垂直に立ち上がった第1および第2連結部とが絶縁されながら対向して配置されているので、両導体部間を確実に絶縁しながらも互いの導電部を流れる電流によって生じる磁束の打ち消し効果によって、インダクタンスを効果的に低減することができる。また、第1および第2外部接続部がそれぞれ第1および第2引出電極接続部(および第1および第2延出部)が形成する電極平面と平行かつ第1および第2延出部から離れる方向に延びるように形成されているので、低インダクタンス化を図りながらも、バスバ自体の高さ寸法を小さくすることが可能となる。
【0010】
ここで、バスバは、コンデンサ素体側から第1導体部、第1絶縁体、第2導体部の順に重ね合わされ、第1引出電極は、第1導体部に向かって引き出されて第1引出電極接続部に接続され、第2引出電極は、コンデンサ素子の側面および第1メタリコン部側にまわり込んでから第2導体部に向かって引き出されて第2引出電極接続部に接続され、第1引出電極と第2引出電極との間にバスバが挟まれるように構成することが好ましい。この構成によれば、コンデンサの低背化を図りながらも、第1および第2引出電極の引き回しに起因するインダクタンスを効果的に低減することができる。
【0011】
また、本発明に係る電力変換装置は、上記金属化フィルムコンデンサと、互いに異なる極性を有する第1および第2導板を第2絶縁体を挟んで対向させながら貼り合わせてなる外部引出電極板と、外部機器として、互いに異なる極性を有する第1および第2電極が形成された半導体素子とを備えた電力変換装置であって、第1電極は、第1導板を介して第1外部接続部に接続される一方、第2電極は、第2導板を介して第2外部接続部に接続されていることを特徴としている。
【0012】
このような構成を有する発明(電力変換装置)によれば、第2絶縁体を挟んで第1導板および第2導板を対向させながら貼り合わせてなる外部引出電極板を介して、半導体素子と金属フィルムコンデンサ(第1および第2外部接続部)とを接続している。このため、外部機器との接続を簡便にしながらも、第1導板および第2導板を流れる互いに逆向きの電流によってインダクタンスの低減を図ることができる。
【0013】
また、第1および第2外部接続部には、それぞれ貫通穴が形成され、第1および第2導板には、それぞれ径の異なる小径貫通穴および大径貫通穴が形成されており、第1導板に形成された小径貫通穴と、第2導板に形成された大径貫通穴と、第1外部接続部に形成された貫通穴とが同軸状に連通する第1連通部を形成し、該第1連通部に挿入された導電性を有する第1固定部材により、第1固定部材が前記第2導板に接触することなく第1導板と前記第1外部接続部とが接続され、第2導板に形成された小径貫通穴と、第1導板に形成された大径貫通穴と、第2外部接続部に形成された貫通穴とが同軸状に連通する第2連通部を形成し、該第2連通部に挿入された導電性を有する第2固定部材により、第2固定部材が第1導板に接触することなく第2導板と第2外部接続部とが接続されるように構成するのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第1外部接続部と第1導板との導通および第2外部接続部と第2導板との導通を互いの絶縁を良好に図りながらも、簡便に実現することができる。すなわち、第1および第2外部接続部上に外部引出電極板を配置し、第1および第2固定部材を用いて両者を接続することにより、簡便かつコンパクトに金属化フィルムコンデンサ(第1および第2導電部)と外部引出電極板を接続することができる。よって、このような金属化フィルムコンデンサと外部引出電極板の組み合わせにより、汎用性の高い低インダクタンスの装置構成が可能となる。
【0015】
さらに、第1外部接続部と第2外部接続部とを、第1または第2導板の厚みに第2絶縁体の厚みを加えた分だけ、第1および第2延出部の垂直方向における高さ位置が異なるように構成することが好ましい。この構成によれば、高さ調節のための導体(スペーサ)を追加的に用いることなく、金属化フィルムコンデンサ(第1および第2導電部)と外部引出電極板を直接接続することが可能となる。
【0016】
また、第1導板と第1外部接続部とを接続する接続部と、第2導板と第2外部接続部とを接続する接続部とを仮想的に結ぶ線の垂直二等分線に対して、第1電極と第2電極とを線対称の位置に配置したり、第1導板と第1外部接続部とを接続する接続部と、第2導板と第2外部接続部との接続部とを通る仮想線に対して、第1電極と第2電極とを線対称の位置に配置することが好ましい。この構成によれば、電力変換装置の一方の極性に対する他方極性のインピーダンス(正極側と負極側のインピーダンス)がほぼ等しくなり、磁束が均等に打ち消され、インダクタンスの低減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、インダクタンスの低減を図った金属化フィルムコンデンサおよびそれを用いた電力変換装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の金属化フィルムコンデンサの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の金属化フィルムコンデンサが備えるコンデンサ素子を示す斜視図である。
【図3】図1の金属化フィルムコンデンサが備えるコンデンサ素体を示す斜視図である。
【図4】バスバを示し、(a)は斜視図、(b)は(a)の線A−A’断面図である。
【図5】バスバと引出電極との接続構造であって、(a)は平面図、(b)は(a)の線B−B’断面図である。
【図6】図1の金属化フィルムコンデンサにラミネートバスバを接続した状態を示す図である。
【図7】図6のラミネートバスバを示す斜視図である。
【図8】バスバとラミネートバスバとの接続構造であって、(a)は部分平面図、(b)および(c)はそれぞれ、(a)の線C−C’断面図である。
【図9】本発明の電力変換装置を示す平面図である。
【図10】本発明の変形例1に係る電力変換装置を示す平面図である。
【図11】本発明の変形例2に係る電力変換装置を示す平面図である。
【図12】本発明の変形例3に係る電力変換装置を示す平面図である。
【図13】従来(比較例)の金属化フィルムコンデンサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
[金属化フィルムコンデンサ]
図1に、本発明の金属化フィルムコンデンサの一実施形態を示す。
【0021】
金属化フィルムコンデンサ1は、図1に示すように並列に接続した複数のコンデンサ素子3からなる複数のコンデンサ素体4と、バスバ5と、該バスバ5と各コンデンサ素体4とを接続する第1引出電極6(図3)および第2引出電極7とを備えている。
【0022】
コンデンサ素子3は、図2に示すように誘電体フィルムの少なくとも片面にアルミニウム等の金属を蒸着させて5μm厚の金属化フィルムを形成し、この金属化フィルムを巻回した巻回体の一の極性側の端面に第1メタリコン部2aを、他の極性側の端面に第2メタリコン部2bを形成したものである。
【0023】
コンデンサ素体4は、図3に示すように同一方向に並べた二つのコンデンサ素子3を高さ方向に複数段(本実施例では七段)積み上げ、各コンデンサ素子3を並列に接続したものである。各コンデンサ素子3の第1メタリコン部2aは同一平面上に位置し、銅等の金属板もしくは金属テープからなる第1引出電極6と接続されている。同様に、各コンデンサ素子3の第2メタリコン部2bは同一平面上に位置し、銅等の金属板もしくは金属テープからなる第2引出電極7と接続されている。
【0024】
第1引出電極6は長矩形状をしており、第1引出電極6の短手方向の一辺側の端部が、長手方向(高さ方向)に真っ直ぐ延びて第1メタリコン部2a側から引き出されている。第2引出電極7は、第2メタリコン部2b側からコンデンサ素子3の側面を通って、(コンデンサ素子3の側面、第1メタリコン部2aおよび第1引出電極6を囲むように)第1メタリコン部2a側にまわり込んで、そこから第1引出電極6と同じ方向に引き出されている。第1引出電極6と第2引出電極7との間には、第1引出電極6の一面を覆う大きさの絶縁シート8が配置されている。
【0025】
バスバ5は、図4に示すように銅等の板状導体により形成した第1導体部9と第2導体部10とを備え、これらを第1絶縁体11を挟んで重ね合わせたものである。
【0026】
第1導体部9は、第1引出電極接続部12と、第1延出部13と、第1連結部14と、第1外部接続部15とからなる。第1引出電極接続部12は、平面視矩形状をしている。第1延出部13は、第1引出電極接続部12の一辺側の端部を第1引出電極接続部12と同一平面内に部分的に延出したものである。なお、第1引出電極接続部12と第1延出部13とは、平面視略T字状をなす。第1連結部14は、第1延出部13の相対向する一辺側の端部を、第1引出電極接続部12および第1延出部13が配置された平面に対して略垂直方向に部分的に延出したものである。また、第1外部接続部15は、第1引出電極接続部12と平行になるように、第1連結部14を第1延出部13から離れる方向に折り曲げたものである。
【0027】
第2導体部10は、第2引出電極接続部16と、第2延出部17と、第2連結部18と、第2外部接続部19とからなる。第2引出電極接続部16は、第1引出電極接続部12と同形状で、第1絶縁体11を挟んで第1引出電極接続部12に重ね合わせたものである。第2延出部17は、第2引出電極接続部16の一辺側の端部を第2引出電極接続部16と同一平面内に部分的に延出したもので、第1延出部13と同形状に形成するとともに、第1絶縁体11を挟んで第1延出部13に重ね合わせたものである。なお、第2引出電極接続部16と第2延出部17とは、平面視略T字状をなす。第2連結部18は、第2延出部17を挟んで第1連結部14と略平行に対向するように第2延出部17の一辺側の端部を部分的に延出したものである。第2外部接続部19は、第2引出電極接続部16と平行になるように、第2連結部18を第2延出部17から離れる方向に折り曲げたものである。
【0028】
本実施例では、バスバ5に三つのコンデンサ素体4が接続されている。具体的には、図5に示すように第1引出電極6(6a、6b、6c)は、コンデンサ素体4側に折り曲げられた先端部分において第1引出電極接続部12の下面にはんだ接続されている。第2引出電極7(7a、7b、7c)は、同様に折り曲げられた先端部分において第2引出電極接続部16の上面にはんだ接続されている。すなわち、第1引出電極6の先端部分および第2引出電極7の先端部分によりバスバ5が挟まれている。
【0029】
また、第1外部接続部15および第2外部接続部19には、それぞれ貫通穴20、21が形成されており、該貫通穴20、21に導電性の固定部材を挿入することで、バスバ5と後述するラミネートバスバ(外部引出電極板)22とが接続される。
【0030】
図6は、図1の金属化フィルムコンデンサにラミネートバスバを接続した状態(以下、このようにラミネートバスバ22を接続した金属化フィルムコンデンサ1を「コンデンサユニット1A」という)を示す図である。コンデンサユニット1Aは、ラミネートバスバ22により図示していない半導体スイッチング素子と接続される。
【0031】
ラミネートバスバ22は、図7に示すように第2絶縁体23を挟んで重ね合わされた第1ラミネート用部材(第1導板)24および第2ラミネート用部材(第2導板)25からなる。
【0032】
第1ラミネート用部材24は、銅等の金属板により長矩形状に形成されており、一方の短辺側近傍には径の異なる一対の小径貫通穴26および大径貫通穴27が形成されている。
【0033】
第2ラミネート用部材25は、銅等の金属板により第1ラミネート用部材24と同形状に形成されており、第1ラミネート用部材24の小径貫通穴26に対応した位置に大径貫通穴29が形成され、大径貫通穴27に対応した位置に小径貫通穴28が形成されている。
【0034】
第2絶縁体23は、第1ラミネート用部材24および第2ラミネート用部材25と同形状に形成されており、第1ラミネート用部材24の小径貫通穴26に対応した位置に小径貫通穴26と大径貫通穴29との中間の径の大きさを有する中径貫通穴30が形成され、大径貫通穴27に対応した位置に中径貫通穴31が同様に形成されている。すなわち、ラミネートバスバ22には、同軸状に配置された大径貫通穴29と、中径貫通穴30と、小径貫通穴26とを連通する第1連通部32と、別の同軸状に配置された大径貫通穴27と、中径貫通穴31と、小径貫通穴28とを連通する第2連通部33とが形成されている。
【0035】
ラミネートバスバ22とバスバ5とは、図8に示すように第1連通部32が第1外部接続部15に形成された貫通穴20に連通し、第2連通部33が第2外部接続部19に形成された貫通穴21に連通するように配置され、導電性を有する固定部材34、35により接続されている。また、図8(b)に示すように、貫通穴20を含む第1連通部32に挿入された第1固定部材34は、第1ラミネート用部材24と第1外部接続部15とを接続するが、第2ラミネート用部材25とは非接触となっている。同様に、第2固定部材35は、第2ラミネート用部材25と第2外部接続部19とを接続するが、第1ラミネート用部材24とは非接触となっている。これにより、第1ラミネート用部材24と第2ラミネート用部材25とがショートするのを防いでいる。なお、第1固定部材34(第2固定部材35)には、例えばボルトとナットとが使用される。
【0036】
ラミネートバスバ22に形成された小径貫通穴26、28は、第1固定部材34および第2固定部材35が挿入できる範囲で小さくするのが好ましい。また、大径貫通穴27、29は、第1固定部材34および第2固定部材35と接触しない範囲で小さくするのが好ましい。これにより、ラミネートバスバ22を構成している第1ラミネート用部材24および第2ラミネート用部材25の面積が削減されるのを回避することができ、ラミネートバスバ22自身のインダクタンスを低減することが可能になる。
【0037】
また、第1外部接続部15と第2外部接続部19とが、第1ラミネート用部材24の厚みに第2絶縁体23の厚みを加えた分、もしくは第2ラミネート用部材25の厚みに第2絶縁体23の厚みを加えた分だけ第1および第2延出部13、17の垂直方向における高さ位置が異なる場合は、図8(c)に示すように、第1ラミネート用部材24と第1外部接続部15とを直接接続することができる。同様に、第2ラミネート用部材25と第2外部接続部19とも直接接続することができる。上記以外の場合は、例えば、図8(b)に示すように高さ調節用の導体(スペーサ)36を使用して第2ラミネート用部材25と第2外部接続部19とを接続することができる。
【0038】
表1に、実施例に係るコンデンサユニット1Aと比較例に係るコンデンサユニットについてインダクタンスを測定した結果を示す。実施例では、定格容量3300μFのコンデンサユニット1Aを5台(No.1〜No.5)作製し、それぞれについてインダクタンスの測定を行った。
【0039】
比較例に係るコンデンサユニット51は、図13に示すように5μmのアルミ蒸着金属化フィルムを巻回した巻回体の両端面にメタリコン部を形成してコンデンサ素子52とし、該コンデンサ素子を実施例と同数併設して形成したコンデンサ素体をケース56に収納するとともに、外部端子55に接続したものであり、定格容量は3300μFである。比較例では、このコンデンサユニット51を5台(No.1〜No.5)作製し、それぞれについてインダクタンスの測定を行った。
【0040】
【表1】

【0041】
表1から分かるように、比較例では、5台のコンデンサユニット51のインダクタンスの平均が60.3nHであるのに対して、実施例では、5台のコンデンサユニット1Aのインダクタンスの平均が19.9nHとなっており、比較例の3分の1以下の低インダクタンス化が達成されている。これは、比較例に係るコンデンサユニット51では外部端子55の端子間距離が広く外部端子55自体の高さ寸法も大きくなるが、実施例のコンデンサユニット1Aでは、バスバ5とラミネートバスバ22とを備え、外部端子55を排除した構成としたためだと考えられる。
【0042】
[電力変換装置]
図9は、本発明に係る電力変換装置の模式的な平面図である。電力変換装置37は、金属化フィルムコンデンサ1と、第1電極38(例えば、正極)および第2電極39(負極)を有する自己消弧形の半導体スイッチング素子40と、第2絶縁体23(不図示)を挟んで重ね合わされた第1ラミネート用部材24および第2ラミネート用部材25からなるラミネートバスバ22とを備えている。なお、図9では、構成の理解を容易にするために第1ラミネート用部材24と第2ラミネート用部材25とをずらして記載しているが、実際は、このようなずれはない。
【0043】
第1電極38は、第1ラミネート用部材24を介して、第1外部接続部15(金属化フィルムコンデンサ1の陽極)に接続され、第2電極39は、第2ラミネート用部材25を介して、第2外部接続部19(陰極)に接続されている。
【0044】
本実施例では、図9に示すように第1ラミネート用部材24と第1外部接続部15との接続部(第1連通部32)と、第2ラミネート用部材25と第2外部接続部19との接続部(第2連通部33)とを仮想的に結ぶ線の垂直二等分線L1が、第1ラミネート用部材24と第1電極38との接続部と、第2ラミネート用部材25と第2電極39との接続部とを仮想的に結ぶ線の垂直二等分線L2と一致している。このため、金属化フィルムコンデンサ1の第1外部接続部15(陽極)側と第2外部接続部19(陰極)側とのインピーダンスがほぼ等しくなり、金属化フィルムコンデンサ1の充放電電流に起因して発生する磁界を均等に打ち消すことができるため、インダクタンスをさらに低減することが可能となる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施例について説明してきたが、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。例えば、本発明に係る電力変換装置は、図10〜12に示すような構成(変形例1〜3)にしても、実施例と同様にインダクタンスの低減効果を得ることができる。
【0046】
図10は、三相のうちの各相を担う三つの半導体スイッチング素子40を備えた電力変換装置である(変形例1)。図11は、第1ラミネート用部材24と第1電極38との接続部と、第2ラミネート用部材25と第2電極39との接続部とを仮想的に結ぶ線の垂直二等分線L2を基準として偶数個(本例では2個)の金属化フィルムコンデンサ1、1’を対称に配置した電力変換装置である(変形例2)。
【0047】
図12は、第1ラミネート用部材24と第1外部接続部15との接続部(第1連通部32)と、第2ラミネート用部材25と第2外部接続部19との接続部(第2連通部33)とを通る仮想線L3が、第1ラミネート用部材24と第1電極38との接続部と、第2ラミネート用部材25と第2電極39との接続部とを仮想的に結ぶ線の垂直二等分線L2と一致するように金属化フィルムコンデンサ1を配置した電力変換装置である(変形例3)。
【0048】
また、上記実施例および上記変形例では、金属化フィルムを巻回した巻回体を用いてコンデンサ素子3を作製したが、金属化フィルムを積層した積層体を用いてコンデンサ素子を作製してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1、1A 金属化フィルムコンデンサ
2a 第1メタリコン部
2b 第2メタリコン部
3 コンデンサ素子
4 コンデンサ素体
5 バスバ
6 第1引出電極
7 第2引出電極
8 絶縁シート
9 第1導体部
10 第2導体部
11 第1絶縁体
12 第1引出電極接続部
13 第1延出部
14 第1連結部
15 第1外部接続部
16 第2引出電極接続部
17 第2延出部
18 第2連結部
19 第2外部接続部
22 ラミネートバスバ(外部引出電極板)
23 第2絶縁体
24 第1ラミネート用部材(第1導板)
25 第2ラミネート用部材(第2導板)
32 第1連通部
33 第2連通部
34 第1固定部材
35 第2固定部材
37 電力変換装置
38 第1電極
39 第2電極
40 半導体スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化フィルムを巻回または積層した巻回体または積層体の一の極性側の端面に第1メタリコン部を形成し、他の極性側の端面に第2メタリコン部を形成した複数のコンデンサ素子を並列に接続し、前記複数のコンデンサ素子の前記第1メタリコン部同士を第1引出電極によって接続し、前記第2メタリコン部同士を第2引出電極によって接続してなる少なくとも一つのコンデンサ素体と、
前記第1および第2引出電極にそれぞれ接続され、板状導体より形成された第1および第2導体部からなるバスバと、
前記第1導体部と前記第2導体部との間に挟まれた第1絶縁体とを備えた金属化フィルムコンデンサにおいて、
前記第1導体部は、
前記第1引出電極に接続される第1引出電極接続部と、
前記第1引出電極接続部から前記第1引出電極接続部の電極平面と同一平面内で部分的に延出した第1延出部と、
前記第1延出部と連結され、該第1延出部に対して略垂直に立ち上がった第1連結部と、
前記第1引出電極接続部および前記第1延出部が形成する前記電極平面と平行かつ前記第1延出部から離れる方向に前記第1連結部の先端部から延びる第1外部接続部とを有し、
前記第2導体部は、
前記第2引出電極に接続されるとともに、前記第1絶縁体を挟んで前記第1引出電極接続部に重ね合わされた第2引出電極接続部と、
前記第1絶縁体を挟んで前記第1延出部と重ね合わされるとともに、前記第2引出電極接続部から前記第2引出電極接続部の電極平面と同一平面内で部分的に延出した第2延出部と、
前記第2延出部と連結され、前記第1連結部と絶縁されながら対向して前記第2延出部に対して略垂直に立ち上がった第2連結部と、
前記第2引出電極接続部および前記第2延出部が形成する前記電極平面と平行かつ前記第2延出部から離れる方向に前記第2連結部の先端部から延びる第2外部接続部とを有し、
前記第1および第2外部接続部を介して外部機器と接続されることを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記バスバは、前記コンデンサ素体側から前記第1導体部、前記第1絶縁体、前記第2導体部の順に重ね合わされ、
前記第1引出電極は、前記第1導体部に向かって引き出されて前記第1引出電極接続部に接続され、
前記第2引出電極は、前記コンデンサ素子の側面および前記第1メタリコン部側にまわり込んでから前記第2導体部に向かって引き出されて前記第2引出電極接続部に接続され、
前記第1引出電極と前記第2引出電極との間に前記バスバが挟まれていることを特徴とする請求項1記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項3】
請求項1または2記載の金属化フィルムコンデンサと、
互いに異なる極性を有する第1および第2導板を第2絶縁体を挟んで対向させながら貼り合わせてなる外部引出電極板と、
前記外部機器として、互いに異なる極性を有する第1および第2電極が形成された半導体素子と
を備えた電力変換装置において、
前記第1電極は、前記第1導板を介して前記第1外部接続部に接続される一方、前記第2電極は、前記第2導板を介して前記第2外部接続部に接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
前記第1および第2外部接続部には、それぞれ貫通穴が形成され、
前記第1および第2導板には、それぞれ径の異なる小径貫通穴および大径貫通穴が形成されており、
前記第1導板に形成された前記小径貫通穴と、前記第2導板に形成された前記大径貫通穴と、前記第1外部接続部に形成された前記貫通穴とが同軸状に連通する第1連通部を形成し、該第1連通部に挿入された導電性を有する第1固定部材により、第1固定部材が前記第2導板に接触することなく前記第1導板と前記第1外部接続部とが接続され、
前記第2導板に形成された前記小径貫通穴と、前記第1導板に形成された前記大径貫通穴と、前記第2外部接続部に形成された前記貫通穴とが同軸状に連通する第2連通部を形成し、該第2連通部に挿入された導電性を有する第2固定部材により、第2固定部材が前記第1導板に接触することなく前記第2導板と前記第2外部接続部とが接続されることを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1外部接続部と前記第2外部接続部とは、前記第1または第2導板の厚みに前記第2絶縁体の厚みを加えた分だけ、前記第1および第2延出部の垂直方向における高さ位置が異なることを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1導板と前記第1外部接続部とを接続する接続部と、前記第2導板と前記第2外部接続部とを接続する接続部とを仮想的に結ぶ線の垂直二等分線に対して、前記第1電極と前記第2電極とが線対称の位置に配置されていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1導板と前記第1外部接続部とを接続する接続部と、前記第2導板と前記第2外部接続部との接続部とを通る仮想線に対して、前記第1電極と前記第2電極とが線対称の位置に配置されていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−142266(P2011−142266A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2986(P2010−2986)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】