説明

金属微粒子分散溶液

【課題】金属微粒子の分散性に優れ、還元性ガス雰囲気を必要とせず、比較的低温での焼成でも導電性と基板密着性に優れる焼結体を得ることが可能な微粒子分散溶液を提供する。
【解決手段】一次粒子の平均粒子径が1〜150nmである金属微粒子(P)が、アミド基を有する化合物からなる有機溶媒10〜80体積%、常圧における沸点が100℃以上で、分子中に1以上の水酸基を有するアルコール類からなる有機溶媒5〜60体積%、アルデヒド化合物又はケトン化合物からなる有機溶媒0.5〜30体積%、及び脂肪族第一アミン、脂肪族第二アミン、脂肪族第三アミン等の中から選択される1種又は2種以上のアミン化合物からなる有機溶媒0.3〜30体積%を含む混合有機溶媒(S)に分散されている金属微粒子分散溶液で、該分散溶液における金属微粒子(P)の割合が0.5〜50質量%、混合有機溶媒(S)の割合が99.5〜50質量%である、金属微粒子分散溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノサイズの金属微粒子が特定の混合有機溶媒中に分散されている、主に導電パターン形成に使用される微粒子分散溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノサイズ(粒子径が1μm以下)の金属、合金等の微粒子は、バルク材料にはない様々な特異な特性を持つことが知られている。そしてこの特性を生かした様々な工学的応用がエレクトロニクス、エネルギー等の各分野で期待されている。
【0003】
中でも、銅、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、スズ、銀等の汎用金属及びこれらの合金からなるナノサイズの金属微粒子は、導電回路、バンプ、ビア、パッド等の実装部品の形成材料、高密度磁気記憶媒体やアンテナ用の磁性素子、ガス改質フィルタや燃料電池電極用の触媒材料として、大いに期待されている。
【0004】
また、最近では、金属微粒子を含有するインクを使用して、配線パターンをインクジェットプリンタ法により形成し、焼成して配線を形成する技術が注目されている。しかし、インクジェットプリンタ法に使用するインクとして、金属微粒子を含有するインクを使用する場合、インク中において分散性が長期間保たれることが重要である。また、該インクを基材上にパターニング後、加熱焼成して導電性に優れる焼結体を得ることが可能な金属等の微粒子が分散しているインクが提案されている。
しかしながら、これらのインクを使用して焼成する際に、250℃、又は300℃以上の高温で焼成されているので、インクをパターニングする基材の材料に耐熱性が要求されて使用する材料が制約される問題点があった。また、比較的低温で焼成すると、インク中の分散溶液、添加剤等が充分に蒸発、分解されずに不純物として残存する結果、焼結体の導電性が不十分になるという問題点があった。
【0005】
特許文献1には、銅微粒子を得る方法として、核生成のためのパラジウムイオンを添加すると共に、分散剤としてポリエチレンイミンを添加してポリエチレングリコール又はエチレングリコール溶液中でパラジウムを含有する粒子径50nm以下の銅微粒子を形成し、ついでエタノールと乳酸エチルに溶媒置換後この銅微粒子分散溶液を用いて、基板上にパターン印刷を行い、H−N混合気流中において250℃で3時間の熱処理を行うことによって、微細な銅の導電膜を形成することが開示されている。
【0006】
特許文献2には、ジエチレングリコール中で酢酸銅を加熱還元して得られた一次粒子径が100nm以下である酸化第一銅微粒子を遠心分離機で回収後、ポリエチレングリコールとジエチレングリコールからなる混合溶液に再分散してインクジェット用インクとすること、及び該インクジェット法により基板上に塗布した後、窒素ガス雰囲気下、350℃で1時間の熱処理を施して、酸化第一銅の還元を行い、金属配線のパターンを得ることが開示されている。特許文献3には、金属の周りに分散剤として有機金属化合物が付着している金属ナノ粒子をスピンコート法により、基板(ガラス)上に塗布し、100℃で乾燥し、250℃での焼成により銀の薄膜を作製することが開示されている。特許文献4には、ジエチレングリコール中に懸濁された、二次粒子の平均粒子径500nmの酢酸銅を濃度が30質量%になるように濃縮し、さらに超音波処理を施して、導電性インクとした後、スライドガラス上に塗布して、還元雰囲気下350℃で1時間加熱して銅薄膜を得ることが開示されている。
また、特許文献5には、水素を含有する化合物の気体を加熱された触媒体に接触させて発生させた原子状水素で金属表面酸化膜の還元と同時に、又はその後に、加熱によりナノ銅金属粒子の緻密化を行う工程を含む銅パターン配線形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−330552号公報
【特許文献2】特開2004−277627号公報
【特許文献3】特開2005−81501号公報
【特許文献4】特開2004−323568号公報
【特許文献5】特開2006−210872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した特許文献1、2をはじめ、特許文献3及び特許文献4における従来の製造方法では、250〜300℃に近い比較的高温で熱処理をするか、又は熱処理のときに水素ガス等の還元性ガス雰囲気下で行わなければ導電性の金属を得ることができないという問題点があった。また、特許文献5に開示の方法では、原子状水素(水素ラジカル)を、外部からエネルギーを与えて発生させる必要がある。また、原子状水素雰囲気下に回路基板全体を暴露する必要があるため、銅配線部のみならず基板表面も原子状水素に晒され、基板表面に損傷を与えるおそれがある。
本発明は上記問題点を解決して、金属等の微粒子の分散性に優れ、かつ焼成の際に還元性ガス雰囲気を必ずしも必要とせず、200℃以下の比較的低温での焼成でも導電性と基板密着性に優れる焼結体を得ることが可能な微粒子分散溶液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑みて、金属等の微粒子の分散性に優れ、かつ焼結する際に必ずしも還元性ガス雰囲気を必要とせず、比較的低温での焼成でも導電性と基板密着性に優れる微粒子分散溶液を得るべく鋭意検討した結果、金属等の微粒子の分散溶液として、アミド基を有する化合物からなる有機溶媒、分子中に1又は2以上の水酸基を有するアルコール類からなる有機溶媒、及びアミン化合物からなる有機溶媒に、アルデヒド化合物及び/又はケトン化合物からなる有機溶媒をそれぞれ特定割合に配合して得られる混合有機溶媒を使用することにより、分散性と保存安定性に優れ、更に比較的低温の焼成でも導電性、基板密着性等に優れる、金属薄膜、金属細線等の焼結体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の(1)から(6)に記載する発明を要旨とする。(1)金属、合金、及び金属化合物の1種又は2種以上からなる、一次粒子の平均粒子径が1〜150nmである金属微粒子(P)が、
アミド基を有する化合物からなる有機溶媒(A)10〜80体積%、常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1又は2以上の水酸基を有するアルコール類からなる有機溶媒(B)5〜60体積%、アルデヒド基(HCO−)及び/もしくはカルボニル基(−CO−)を有するアルデヒド化合物及び/又はケトン化合物からなる有機溶媒(C)0.5〜30体積%、並びに、脂肪族第一アミン、脂肪族第二アミン、脂肪族第三アミン、脂肪族不飽和アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、及びアルカノールアミンの中から選択される1種又は2種以上のアミン化合物からなる有機溶媒(D)0.3〜30体積%を含む混合有機溶媒(S)、
に分散されている金属微粒子分散溶液で、該分散溶液における金属微粒子(P)の割合が0.5〜50質量%、混合有機溶媒(S)の割合が99.5〜50質量%(質量%の合計は100質量%)であることを特徴とする、金属微粒子分散溶液。
(2)前記有機溶媒(A)におけるアミド基を有する化合物がN−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロパンアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、及びアセトアミドの中から選択される1種又は2種以上である、前記(1)に記載の金属微粒子分散溶液。
【0011】
(3)前記有機溶媒(B)における常圧での沸点が100℃以上、かつ分子中に1又は2以上の水酸基を有するアルコール類がエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トレイトール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ヘキシトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、グリセルアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクトース、イソマルトース、グルコヘプトース、ヘプトース、マルトトリオース、ラクツロース、及びトレハロースの中から選択される1種又は2種以上である、前記(1)又は(2)に記載の金属微粒子分散溶液。
(4)前記有機溶媒(C)におけるアルデヒド化合物及び/又はケトン化合物がエタナール、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、トリデカナール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルプロピルケトン、ジプロピルケトン、ヒドロキシアセトン、2−ヒドロキシプロパナール、2−ヒドロキシプロパナール、アセチルメチルカービノール、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシブタナール、2−ヒドロキシ−2−プロパナール、4−ヒドロキシブチルアルデヒド、及び乳酸エチルの中から選択される1種又は2種以上である、前記(1)から(3)のいずれかに記載の金属微粒子分散溶液。
【0012】
(5)前記有機溶媒(D)におけるアミン化合物がメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、モノ−n−オクチルアミン、モノ−2−エチルヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリイソオクチルアミン、トリイソノニルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルココナットアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、メタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、及び2−(2−アミノエトキシ)エタノールの中から選択される1種又は2種以上である、前記(1)から(4)のいずれかに記載の金属微粒子分散溶液。
(6)前記金属微粒子(P)における金属が、金、銀、銅、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、鉄、コバルト、スズ、及びタンタルの中から選択される1種又は2種以上、合金が前記金属から選択される2種以上からなる合金、並びに前記金属化合物が前記金属及び合金の酸化物である、前記(1)から(5)のいずれかに記載の金属微粒子分散溶液。
【発明の効果】
【0013】
銅微粒子分散溶液の混合有機溶媒(S)中に、アミド基を有する化合物からなる有機溶媒(A)、多価アルコール等の有機溶媒(B)、及びアミン化合物からなる有機溶媒(D)に、更にアルデヒド化合物及び/又はケトン化合物からなる有機溶媒(C)を共存させることで、多価アルコール等の有機溶媒(B)の分解に伴う水素ラジカル形成・銅粒子表面活性化を促進させ、さらに、多価アルコール等の有機溶媒(B)の分解の際、低沸点の物質への分解を促進させる。これにより、通常の不活性雰囲気下における200℃以下の150℃程度の低温での熱処理において、粒子間の焼結が促進され、より低温で低耐熱性樹脂基板上への高導電性の導電パターンが形成可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の「金属微粒子分散溶液」は、金属、合金、及び金属化合物の1種又は2種以上からなる、一次粒子の平均粒子径が1〜150nmである金属微粒子(P)が、
アミド基を有する化合物からなる有機溶媒(A)10〜80体積%、常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1又は2以上の水酸基を有するアルコール類からなる有機溶媒(B)5〜60体積%、アルデヒド基(HCO−)及び/もしくはカルボニル基(−CO−)を有するアルデヒド化合物及び/又はケトン化合物からなる有機溶媒(C)0.5〜30体積%、並びに、脂肪族第一アミン、脂肪族第二アミン、脂肪族第三アミン、脂肪族不飽和アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、及びアルカノールアミンの中から選択される1種又は2種以上のアミン化合物からなる有機溶媒(D)0.3〜30体積%を含む混合有機溶媒(S)、
に分散されている金属微粒子分散溶液で、該分散溶液における金属微粒子(P)の割合が0.5〜50質量%、混合有機溶媒(S)の割合が99.5〜50質量%(質量%の合計は100質量%)であることを特徴とする。
以下、本発明の「金属微粒子分散溶液」について説明する。
【0015】
(1)金属微粒子(P)
金属微粒子(P)は、金属、合金、及び金属化合物の1種又は2種以上からなる、一次粒子の平均粒子径が1〜150nmの微粒子である。
金属微粒子(P)の一次粒子の平均粒子径が1nm以上であると分散溶液中での分散性を向上でき、また、150nm以下であると液滴の吐出等により基板上に微細なパターンを形成することが可能になる。ここで、一次粒子の平均粒子径とは、二次粒子を構成する個々の金属微粒子の一次粒子の直径であり、一次粒子の数平均粒子径を意味する。該一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定することができる。
平均一次粒子径が1〜150nmである金属微粒子(P)の製造方法としては、特に制限はなく、例えば湿式化学還元法、アトマイズ法、めっき法、プラズマCVD法、MOCVD法等の方法を用いることができる。具体的には、金属イオンが存在する電解水溶液から、電解還元又は無電解還元により金属微粒子(P)を製造することが可能であり、例えば、特開2008−231564号公報に開示された方法を採用することができる。上記還元で得られる金属微粒子の一次粒子の平均粒子径の制御は、使用する金属のイオン種、これらの濃度、有機分散剤、アルカリ金属イオンの種類、かく拌速度、温度、時間、pH等の調整により行うことが可能である。上記公報に開示された製造方法を採用する際に、金属イオンの還元反応終了後に還元反応水溶液にクロロホルム等の凝集剤を添加して回収することができる。
金属微粒子(P)は特に限定されるものではないが、金、銀、銅、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、鉄、コバルト、スズ、及びタンタルの中から選択される1種又は2種以上、前記合金が前記金属の2種以上からなる合金、並びに前記金属化合物が前記金属、及び合金の酸化物であることが好ましい。
【0016】
(2)混合有機溶媒(S)
混合有機溶媒(S)は、アミド基を有する化合物からなる有機溶媒(A)10〜80体積%、常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1又は2以上の水酸基を有するアルコール類からなる有機溶媒(B)5〜60体積%、アルデヒド基(HCO−)及び/もしくはカルボニル基(−CO−)を有するアルデヒド化合物及び/又はケトン化合物からなる有機溶媒(C)0.5〜30体積%、並びに、脂肪族第一アミン、脂肪族第二アミン、脂肪族第三アミン、脂肪族不飽和アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、及びアルカノールアミンの中から選択される1種又は2種以上のアミン化合物からなる有機溶媒(D)0.3〜30体積%を含む。
【0017】
(2−1)アミド基を有する化合物からなる有機溶媒(A)
アミド基を有する有機溶媒(A)とは、主にアミンとカルボン酸の脱水縮合反応で生成される[−C(=O)−N=]結合を有する化合物であり、アミド基を有する有機溶媒(A)としては、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロパンアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、及びアセトアミドの中から選択される1種又は2種以上を例示することができる。
混合有機溶媒(S)中にアミド基を有する有機溶媒(A)が含まれていると、導電性インク中で金属微粒子(P)の分散性を向上する作用の他に、焼結の際にアルコール類からなる有機溶媒(B)が熱分解して生成されるケトン化合物、アルデヒド化合物等、及び有機溶媒(C)として添加されるケトン化合物及び/又はアルデヒド化合物からなる有機溶媒(C)と、共沸し易い性質を有しているので、150〜200℃程度の比較的低温の焼結温度でも有機溶媒(A)と、ケトン化合物、及びアルデヒド化合物は容易に除去される。これにより、焼結体中の有機物残留量が少なくなるので焼結した金属微粒子(P)間の接合強度が向上すると共に電気抵抗と接触抵抗を低くすることができる。
【0018】
(2−2)アルコール類からなる有機溶媒(B)
有機溶媒(B)は、常圧における沸点が100℃以上、かつ分子中に1又は2以上の水酸基を有するアルコール類である。このような有機溶媒(B)としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トレイトール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ヘキシトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、グリセルアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクトース、イソマルトース、グルコヘプトース、ヘプトース、マルトトリオース、ラクツロース、及びトレハロースの中から選択される1種又は2種以上を例示することができる。
【0019】
混合有機溶媒(S)中に分子中に1又は2以上の水酸基を有する多価アルコールを含む、アルコール類である有機溶媒(B)が含有されていると、金属微粒子分散溶液を導電性インク等に使用するために長期間保存しても金属微粒子(P)が凝集するのを抑制して分散安定性を向上する作用を有する。また、有機溶媒(B)は、加熱して金属微粒子(P)を焼結させる際に、分解して水素ラジカルを発生し、金属微粒子(P)表面で還元作用を発揮してこれらの表面を活性化して焼結を促進し、金属微粒子(P)の焼結体が酸化を受けるのを抑制して、導電性の高い導電パターンを形成することが可能になる。
【0020】
(2−3)アルデヒド化合物及び/又はケトン化合物からなる有機溶媒(C)
アルデヒド化合物及び/又はケトン化合物からなる有機溶媒(C)は、アルデヒド基(HCO−)及び/又はカルボニル基(−CO−)を有する化合物である。
このような有機溶媒(C)としては、エタナール、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、トリデカナール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルプロピルケトン、ジプロピルケトン、ヒドロキシアセトン、2−ヒドロキシプロパナール、2−ヒドロキシプロパナール、アセチルメチルカービノール、4ヒドロキシ2ブタノン、3−ヒドロキシブタナール、2−ヒドロキシ2−プロパナール、4−ヒドロキシブチルアルデヒド、及び乳酸エチルの中から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
金属微粒子分散溶液の分散溶媒として、有機溶媒(B)にアルデヒド及び/又はケトンを共存させることで、多価アルコール等の分解に伴う水素ラジカル形成・銅粒子表面活性化を促進させ、さらに、多価アルコール等の分解の際、低沸点の物質への分解を促進させる。これにより、通常の不活性雰囲気下における200℃以下の低温での熱処理において、粒子間の焼結が促進され、より低温で低耐熱性樹脂基板上への高導電性の導電パターンが形成可能となる。
【0021】
(2−4)アミン化合物からなる有機溶媒(D)
アミン化合物からなる有機溶媒(D)は、脂肪族第一アミン、脂肪族第二アミン、脂肪族第三アミン、脂肪族不飽和アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、及びアルカノールアミンの中から選択される1種又は2種以上の有機溶媒である。このようなアミン化合物からなる有機溶媒(D)としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、モノ−n−オクチルアミン、モノ−2−エチルヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリイソオクチルアミン、トリイソノニルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルココナットアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、メタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、及び2−(2−アミノエトキシ)エタノールの中から選択される1種又は2種以上を例示することができる。
【0022】
金属微粒子分散溶液中にアミン化合物からなる有機溶媒(D)が存在することにより該金属微粒子分散溶液中の金属微粒子(P)表面は活性化されるが、さらに金属微粒子分散溶液を金属基材上に塗布(又はパターン化)することによってアミン化合物からなる有機溶媒(D)が金属基材にも配位して、該金属基材表面の吸着層が除去されて、該金属基材表面が活性化される効果が発揮される。尚、前述の通り、金属微粒子分散溶液中に含まれる有機溶媒(B)が、100〜150℃程度の温度で予備加熱されることにより、金属微粒子(P)表面及び金属基材表面で分解し、水素ラジカルを形成し、配位したアミン化合物を脱離させる。
【0023】
(2−5)混合有機溶媒(S)の組成
(i)混合有機溶媒(S)中のアミド基を有する有機溶媒(A)の含有割合は10〜80体積%、好ましくは25〜75体積%である。
該含有割合が10体積%未満では、粒子の分散性が低下するおそれがある。一方、80体積%を越えると、該有機溶媒の蒸発が充分に進行せず、200℃程度の焼成では該溶媒成分が導電膜に残存して導電性を低下するおそれがある。
(ii)混合有機溶媒(S)中の、常圧における沸点が100℃を超え、かつ分子中に1又は2以上の水酸基を有するアルコール類からなる有機溶媒(B)の含有割合は5〜60体積%、好ましくは15〜60体積%である。
該含有割合が5体積%未満では、還元溶媒による充分な還元性雰囲気が形成されないので金属微粒子表面の還元反応が充分に進行せず焼結が不十分になるおそれがある。一方、60体積%を超えると該有機溶媒の蒸発が充分に進行せず、200℃程度の焼成では該溶媒成分が導電膜に残存して導電性を低下するおそれがある。
【0024】
(iii)混合有機溶媒(S)中のアルデヒド化合物及び/又はケトン化合物からなる有機溶媒(C)の含有割合は0.1〜30体積%、好ましくは2〜25体積%である。
前記範囲では、通常の不活性雰囲気下における200℃以下の低温での熱処理において、粒子間の焼結が促進され、より低温で低耐熱性樹脂基板上への高導電性の導電パターンが形成可能となる。
前記範囲の下限未満では、分子中に1又は2以上の水酸基を有するアルコール類の分解に伴う水素ラジカル形成・銅粒子表面活性化を促進させ、さらに、アルコール類の分解の際、低沸点の物質への分解促進させる効果が不十分になる。一方、前記範囲の上限を超えると混合有機溶媒(S)の極性が著しく低下し、粒子の分散性が低下するおそれがある。
(iv)混合有機溶媒(S)中の、脂肪族第一アミン、脂肪族第二アミン、脂肪族第三アミン、脂肪族不飽和アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、及びアルカノールアミンの中から選択される1種又は2種以上のアミン化合物からなる有機溶媒(D)の含有割合は、0.3〜30体積%、好ましくは1〜20体積%である。
前記範囲の下限未満では、金属微粒子(P)表面への配位が十分でなく、粒子の分散性が低下するおそれがある。一方、前記範囲の上限を超えると混合有機溶媒(S)の極性が著しく低下し、金属微粒子(P)の分散性が低下するおそれがある。
【0025】
(3)金属微粒子分散溶液の組成
金属微粒子分散溶液で、該分散溶液における金属微粒子(P)の割合が0.5〜50質量%、混合有機溶媒(S)の割合が99.5〜50質量%(質量%の合計は100質量%)である。
金属微粒子(P)濃度が前記範囲の下限未満では、加熱による焼結の機械的強度が低くなるという不都合を生じる場合があり、また、所望の厚さの導電パターンを形成するために、金属微粒子分散溶液吐出を多数回繰り返すことが必要となる。一方、前記範囲の上限を超えると金属微粒子分散溶液の粘度が高くなりインクジェットヘッドから液滴を吐出する際にノズルに目詰まりが生じたり、金属微粒子分散溶液の保存時に金属微粒子(P)の分散性が低下するおそれがある。
【0026】
(4)分散剤
金属微粒子分散溶液には高分子分散剤等の分散剤を添加することが好ましい。該分散剤は、金属微粒子(P)の少なくとも表面の一部を覆うように存在して、金属微粒子(P)の凝集を防止して分散性を良好に維持する作用を有する。
分散剤の添加量は、金属微粒子分散溶液中の金属微粒子(P)100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜2質量部がより好ましい。分散剤の添加量が0.01質量部未満では凝集を抑制する効果が十分に得られない場合があり、一方、前記5質量部を超える場合には、分散性に不都合がなくとも、金属微粒子分散溶液をパターニング後、乾燥・焼成時に、過剰の分散剤が、金属微粒子の焼結を阻害して、焼結金属の緻密さが低下する場合があると共に、分散剤の焼成残渣が、導電膜又は導電回路中に残存して、導電性を低下させるおそれがある。
【0027】
上記分散剤は上記分散作用を奏するものであれば、特に制限されるものではない。前記分散剤としては、その化学構造にもよるが分子量が100〜100,000程度の、金属微粒子(P)を良好に分散させることが可能なもので、かつ炭素原子、水素原子、酸素原子、及び窒素原子から選択された2種以上の原子からなる化合物(高分子化合物も含む)の分散剤が好ましい。上記高分子分散剤として好ましいのは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン等のアミン系の高分子;ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等のカルボン酸基を有する炭化水素系高分子;ポリアクリルアミド等のアクリルアミド;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、更にはデンプン、及びゼラチンの中から選択される1種又は2種以上である。
上記した、表面が分散剤で覆われた金属微粒子(P)を混合有機溶媒(S)に分散させることにより、微粒子の凝集サイズが小さく、かつ、比較的凝集サイズの大きさが揃った金属微粒子分散溶液を得ることが出来る。尚、分散剤として分子中にカルボニル基を有する高分子分散剤を使用すると、更に、二次粒子の微粒子の粒子径が小さく、かつ、大きさの揃った金属微粒子分散溶液を生成することができる。
【0028】
(5)金属微粒子分散溶液の製造方法
金属微粒子分散溶液中には、一次粒子の平均粒子径1〜500nmの金属微粒子(P)が分散されているが、更に撹拌して分散性を向上するのが望ましい。金属微粒子分散溶液の撹拌方法としては、公知の撹拌方法を採用することができるが、超音波照射方法を採用するのが好ましい。上記超音波照射時間は、特に制限はなく任意に選択することが可能である。例えば、超音波照射時間を5〜60分間の間で任意に設定すると照射時間が長い方が平均二次凝集サイズは小さくなる傾向にある。更に超音波照射時間を長くすると分散性は一層向上する。
このようにして得られた金属微粒子分散溶液は、金属微粒子(P)が分散剤に覆われた状態で分散溶液中に分散していることが好ましい。このような分散剤が金属微粒子(P)を分散させるメカニズムは完全に解明されてはいないが、高分子分散剤を使用する場合には、例えば高分子に存在する官能基の非共有電子対を有する原子部分が金属微粒子(P)の表面に吸着して、分子層を形成し、互いに金属微粒子(P)同士の接近をさせない、斥力が発生していることが予想される。
【0029】
(6)金属微粒子分散溶液の利用
本発明の金属微粒子分散溶液は、基材上に塗布又はパターニング後、加熱・焼成することにより、得られる導電パターンは、高導電性・高基板密着性に優れる。従って、配線、電極、バンプ等の形成に有用である。
金属微粒子分散溶液を塗布又はパターニングする基材には、通常用いられるガラス基材や耐熱性合成樹脂からなる基材等を挙げることができ、その形状としては平板、立体物、フィルム等が挙げられる。耐熱性合成樹脂としては、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、フッ素樹脂等を用いることができる。これらの基材は、金属微粒子分散溶液のパターニングをする前に、純水や超音波等を用いて塗布面を洗浄することが好ましい。
金属微粒子分散溶液のパターニング又は塗布方法としては、スピンコート法、インクジェット法、微少液滴塗布法、スプレー塗布法、スポイト滴下、及びピペット滴下から選択された1種又は2種以上が例示できる。
【0030】
基材上に塗布又はパターニングされた金属微粒子分散溶液の厚みは、該溶液中の金属微粒子(P)の濃度、空隙率、導電膜又は導電回路の厚み等により変わるものであり、一概に決定することはできないが、焼結性、空隙率、機械的強度等を考慮すると基材上の導電性インクの厚みが、1μm〜3mmの範囲であることが望ましい。また、基材上への金属微粒子分散溶液のパターニング又は塗布量が3〜100μl/cmであることが好ましい。前記塗布量が3μl/cm未満では沸点に至る以前のより早期に還元剤が蒸発して、粒子表面の還元反応が進行しないで酸化物状態に維持されて、焼結が進行しないおそれがある。一方、前記塗布量が100μl/cmを超えると蒸発速度が抑制されて200℃程度での焼結では導電膜中に還元溶媒が残存して、導電性を阻害するおそれがある。
加熱・焼成方法は特に限定されるものではないが、非酸化性ガス雰囲気中で赤外線加熱、温風加熱等により基板を部分的に加熱することが可能である。加熱温度は赤外線センサー等を用いて行うことができる。
本発明の金属微粒子分散溶液を加熱・焼結して導電パターン等を得る際に、水素ラジカルが発生する特長があるので、有機溶媒(B)による金属微粒子表面活性化・水素ラジカル形成温度は有機溶媒(B)の沸点に近い温度で粒子の焼結を促進する必要があるが、有機溶媒(C)の添加により、150〜200℃程度の焼成温度でも高導電性の焼結体を形成することが可能になる。
【実施例】
【0031】
次に、実施例、比較例により本発明をより具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例、比較例における導電パターンの導電性の評価方法を以下に記載する。
JIS D0202−1988に準拠して、配線材料の体積抵抗率を直流四端子法(使用測定機:ケースレー社製、デジタルマルチメータDMM2000型(四端子電気抵抗測定モード))を使用して評価した。判定は以下の基準により表した。
◎:体積抵抗率が30μΩ・cm未満
○:体積抵抗率が30μΩ・cm以上、100μΩ・cm未満
△:体積抵抗率が100μΩ・cm以上、1000μΩ・cm未満
×:体積抵抗率が1000μΩ・cm以上
【0032】
[実施例1]
(1)銅微粒子分散溶液の調製
始めに水溶性高分子からなる有機物保護被膜で被覆された銅微粒子を次の手順で調製した。
先ず、銅微粒子の原料として酢酸銅((CHCOO)Cu・1HO)0.2gを蒸留水10mlに溶解させた酢酸銅水溶液10mlと、金属イオン還元剤として5.0mol/リットル(l)となるように水素化ホウ素ナトリウムと蒸留水とを混合した水素化ホウ素ナトリウム水溶液100mlを調製した。その後、該水素化ホウ素ナトリウム水溶液に、保護被膜を形成する水溶性高分子としてポリビニルピロリドン(PVP、数平均分子量約3500)0.5gを添加して、攪拌溶解させた後、窒素ガス雰囲気中で、上記酢酸銅水溶液10mlを滴下した。
滴下後、この混合液を約60分間よく攪拌しながら反応させた結果、一次粒子径5〜10nmの範囲の銅微粒子が水溶液中に分散した銅微粒子分散溶液が得られた。
【0033】
次に、上記方法で得られた銅微粒子が分散した分散溶液100mlに、凝集促進剤としてクロロホルムを5ml添加してよく攪拌した。数分間攪拌した後、銅微粒子が凝集した混合液を遠心分離機に入れ、銅微粒子を沈殿回収した。その後、得られた銅微粒子と30mlのメタノールとを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく攪拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収する、メタノール洗浄を3回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と30mlの1−ブタノールとを入れよく攪拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収する、ブタノール洗浄を3回行った。
以上の工程により回収された銅微粒子を、混合有機溶媒としてN−メチルアセトアミド63体積%、エチレングリコール23体積%、ブタナール12体積%及びトリエチルアミン2体積%からなる混合有機溶媒10mlに分散させ、超音波ホモジナイザーを用いて分散溶液中に1時間、超音波振動を与えることで銅微粒子分散溶液を調製した。
【0034】
(2)導電パターンの形成、評価
前記(1)で調製した銅微粒子分散溶液を、1kHz〜50kHzでノズル開口50μmのインクジェットヘッドから吐出し、ガラス基板上に、長さ1cm(幅:100μm)のラインパターンを形成した。このパターンが形成されたガラス基板を、更に窒素雰囲気中、180℃で1時間熱処理し、導電パターンを形成した。
得られた導電パターンの導電性を上記方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0035】
[実施例2〜6、比較例1〜3]
(1)銅微粒子分散溶液の調製
回収された銅微粒子を分散させる混合有機溶媒の組成を、表1の実施例2〜6、及び表2の比較例1〜3に示す組成とした以外は、実施例1に記載したと同様の方法により、本発明の微粒子分散溶液を調製した。
(2)導電パターンの作製
熱処理温度を、表1の実施例2〜6及び比較例1〜3に示す温度とした以外は、実施例1に記載したのと同様の方法により、導電パターンを形成した。
(3)導電パターンの評価
実施例1に記載したと同様の方法により、得られた導電パターンの導電性を評価した。
評価結果を表1、2にまとめて示す。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
表1より、アルデヒド化合物又はケトン化合物からなる有機溶媒(C)0.5〜30体積%を溶媒中に含むインクをパターン形成したものを熱処理し作製した導電パターンは、200℃以下での熱処理において、導電性が良好であることが確認された。
これに対し、表2より、比較例1では、アルデヒド化合物又はケトン化合物からなる有機溶媒(C)をインク溶媒中に含まないため、実施例1〜6の結果と対比して、導電性が低くなっていりことが確認された。また、比較例2、3では、アルデヒド化合物又はケトン化合物からなる有機溶媒(C)の溶媒中の割合が30体積%を超えているために、作製した導電パターンは、導電性に劣ることが確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属、合金、及び金属化合物の1種又は2種以上からなる、一次粒子の平均粒子径が1〜150nmである金属微粒子(P)が、
アミド基を有する化合物からなる有機溶媒(A)10〜80体積%、常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1又は2以上の水酸基を有するアルコール類からなる有機溶媒(B)5〜60体積%、アルデヒド基(HCO−)及び/もしくはカルボニル基(−CO−)を有するアルデヒド化合物及び/又はケトン化合物からなる有機溶媒(C)0.5〜30体積%、並びに、脂肪族第一アミン、脂肪族第二アミン、脂肪族第三アミン、脂肪族不飽和アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、及びアルカノールアミンの中から選択される1種又は2種以上のアミン化合物からなる有機溶媒(D)0.3〜30体積%を含む混合有機溶媒(S)、
に分散されている金属微粒子分散溶液で、該分散溶液における金属微粒子(P)の割合が0.5〜50質量%、混合有機溶媒(S)の割合が99.5〜50質量%(質量%の合計は100質量%)であることを特徴とする、金属微粒子分散溶液。
【請求項2】
前記有機溶媒(A)におけるアミド基を有する化合物がN−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロパンアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、及びアセトアミドの中から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の金属微粒子分散溶液。
【請求項3】
前記有機溶媒(B)におけるアルコール類がエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トレイトール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ヘキシトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、グリセルアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクトース、イソマルトース、グルコヘプトース、ヘプトース、マルトトリオース、ラクツロース、及びトレハロースの中から選択される1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の金属微粒子分散溶液。
【請求項4】
前記有機溶媒(C)におけるアルデヒド化合物及び/又はケトン化合物がエタナール、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、トリデカナール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルプロピルケトン、ジプロピルケトン、ヒドロキシアセトン、2−ヒドロキシプロパナール、2−ヒドロキシプロパナール、アセチルメチルカービノール、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシブタナール、2−ヒドロキシ−2−プロパナール、4−ヒドロキシブチルアルデヒド、及び乳酸エチルの中から選択される1種又は2種以上である、請求項1から3のいずれかに記載の金属微粒子分散溶液。
【請求項5】
前記有機溶媒(D)におけるアミン化合物がメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、モノ−n−オクチルアミン、モノ−2−エチルヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリイソオクチルアミン、トリイソノニルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルココナットアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、メタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、及び2−(2−アミノエトキシ)エタノールの中から選択される1種又は2種以上である、請求項1から4のいずれかに記載の金属微粒子分散溶液。
【請求項6】
前記金属微粒子(P)における金属が、金、銀、銅、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、鉄、コバルト、スズ、及びタンタルの中から選択される1種又は2種以上、合金が前記金属から選択される2種以上からなる合金、並びに前記金属化合物が前記金属及び合金の酸化物である、請求項1から5のいずれかに記載の金属微粒子分散溶液。