説明

金属製引き出し

【課題】外観上の統一感に優れ、かつ、少なくとも底板を含む収納空間側の面の傷発生を防止することができる金属製引き出しを提供する。
【解決手段】金属製引き出し6′の製作に際し、ステンレス板を折曲加工してトレー状の引き出し本体110を形成する。その場合、収納空間Sを形成する引き出し本体110における底面111、前面112、背面113、及び側面114,114の収納空間S側に、エンボス加工による微細凹凸加工が施されており、かつ、この微細凹凸加工は、折曲加工前に施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板を使用して形成された金属製引き出しに関し、キッチン家具の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、システムキッチンのキャビネットに組み込まれる引き出しに関し、例えば特許文献1には、キャビネット本体側のガイドレールに案内される枠体に、収納空間を形成するトレー状の引き出し本体が連結された構成が開示されている。
【0003】
一方、耐久性や高級感等を付与するため、前記引き出しをステンレス板のような金属板を使用して構成することがある。そして、このような金属製引き出しにおいて、収納物品による擦れ傷発生を防止するため、引き出し本体に、琺瑯コーティングを施したり、耐磨耗性シートを貼付したりすることがある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−10846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した構成の引き出しでは、琺瑯コーティングや耐磨耗性シートのような金属板とは異質の素材を使用することから、キャビネット本体から引き出したとき、外観上の統一感に欠けるという問題がある。
【0006】
また、折曲加工前の金属板に前述した傷発生防止策を施すと、折曲加工時に、琺瑯コーティングしたものでは硬質のコーティングが割れたり、耐磨耗性シートを貼付したものでは折曲箇所に皺が生じたりする問題が生じ、一方、金属板の折曲加工後に前述した傷発生防止策を施すと、折曲加工された面への施工が面倒で手間がかかるという問題が生じることから、収納物品の載置面である底面にしか傷発生防止策が施されていないのが実情である。
【0007】
そこで、本発明は、外観上の統一感に優れ、かつ、少なくとも底板を含む収納空間側の面の傷発生を防止することができる金属製引き出しを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0009】
まず、請求項1に記載の発明は、金属板の折曲加工により形成されて収納空間を有する金属製引き出しであって、前記収納空間を形成する少なくとも底面を含む収納空間側の面に、微細凹凸加工が施されていることを特徴とする。なお、微細凹凸加工には、例えばエンボスロールによるエンボス加工、ショットやサンドを使用したブラスト加工、薬品によるエッチング加工等の適宜の方法が適用される。
【0010】
そして、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の金属製引き出しにおいて、前記微細凹凸加工は、折曲加工前に施されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
まず、請求項1に記載の発明によれば、従来の琺瑯コーティングや耐磨耗性シートのような金属板とは異質の素材を使用せず、金属板を折曲加工して形成された引き出しは、引き出したとき、外観上の統一感に優れたものとなる。
【0012】
さらに、収納物品は収納空間側の面に形成された微細な凸部を介してこの面に接触するため、接触面積が少なくて済み、少なくとも底板を含む収納空間側の面の傷発生を防止することができる。
【0013】
そして、請求項2に記載の発明によれば、従来の琺瑯コーティングや耐磨耗性シートを使用せず、微細凹凸加工が施された金属板を折曲加工するので、従来問題となっていた琺瑯コーティングの割れ発生や耐磨耗性シートの皺発生を回避して、傷発生防止策が施された底面の他に背面あるいは側面等を有する引き出しを効率的に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1に示すシステムキッチン1は、本発明の第1の実施の形態に係る金属製キャビネット2を組み込んだもので、このキャビネット2の左右両側に同様の金属製キャビネット3,4が連設された構成とされている。そして、前記キャビネット2は、上方及び前方に開口するキャビネット本体2aを有し、上方には天板5が載置されると共に、内部には上下方向に3段の引き出し6,7,8が引出自在に収容されている。
【0016】
図2に示すように、3つの引き出し6〜8のうち一例として下段引き出し8は、製作に際し、一枚のステンレス板を折曲加工してなる引き出し本体10を中心に、引き出し本体10の左右両側には、この下段引き出し8をキャビネット本体2aに対して引出自在とするための図示しないガイド機構を内蔵した金属製側板20,20が、また、引き出し本体10の前側には、逆L字状の取付部材30を挟んで前板40が、それぞれ取り付けられるようになっており、物品の収納空間Sが形成されている。なお、前記前板40は、ステンレス板を折曲加工して形成されている。
【0017】
前記引き出し本体10は、物品が載置される底面11と、底面11の前端縁から略逆L字状に起立して、前記取付部材30とで足元空間としての蹴込み部Kを形成する前面12と、底面11の後端縁から起立する背面13とを有している。なお、底面11の左右端縁は下方に向けて、また、背面13の上端縁及び左右端縁は後方に向けて、それぞれ折曲されている。
【0018】
そして、前記ステンレス板の一方の面には、エンボスロールにより微細凹凸加工が施されており、このステンレス板は、符号Xで示すように微細凹凸加工が施された面が、収納空間S側を向くように折曲加工されている。この場合、底面11、前面12、及び背面13の収納空間S側に微細凹凸加工が施されていることになる。
【0019】
なお、上段引き出し6や中段引き出し7の構成も、蹴込み部Kを有さない点を除き、前述した下段引き出し8の場合と事情は略同じであるので、説明を省略する。
【0020】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0021】
図3及び図4に示すように、この場合の一例としての引き出し6′は、前記金属製キャビネット2における上段引き出し6の代わりに適用可能な構成のもので、一枚のステンレス板を折曲加工してなる引き出し本体110が、前記前板40に類似の前板140から後方に延設された枠体150に、適宜の手段を介して連結されるようになっている。なお、前記前板140や枠体150は、ステンレス板を折曲加工して形成されており、特に枠体150の左右側部には、この引き出し6′を前述したようなキャビネット本体2aに引出自在に支持するためのガイド機構が内蔵されている。
【0022】
収納空間Sを形成する前記引き出し本体110は、物品が載置される底面111と、底面111の前後端縁から起立する前面112及び背面113と、底面11の左右端縁から起立する側面114,114とを有し、トレー状とされている。なお、前面112、背面113、及び側面114,114の上端縁は、外方に向けて略V字状に折曲されており、これらの折曲部112a,113a,114a,114aを介して、引き出し本体110を単体で容易にハンドリングすることができるようになっている。
【0023】
そして、前記ステンレス板の一方の面には、エンボスロールにより微細凹凸加工が施されており、このステンレス板は、符号Xで示すように微細凹凸加工が施された面が、収納空間S側を向くように折曲加工されている。この場合、底面111、前面112、背面113、及び側面114,114の収納空間S側に微細凹凸加工が施されていることになる。
【0024】
以上のように構成したことにより、従来の琺瑯コーティングや耐磨耗性シートのような金属板とは異質の素材を使用せず、ステンレス板のような金属板を折曲加工して形成された引き出し6〜8,6′は、引き出したとき、外観上の統一感に優れたものとなる。
【0025】
さらに、収納物品は収納空間S側の面に形成された微細な凸部を介してこの面に接触するため、接触面積が少なくて済み、底面11,111、前面12,112、背面13,113、あるいは側面114,114の傷発生を防止することができる。
【0026】
そして、従来の琺瑯コーティングや耐磨耗性シートを使用せず、微細凹凸加工が施されたステンレス板のような金属板を折曲加工するので、従来問題となっていた琺瑯コーティングの割れ発生や耐磨耗性シートの皺発生を回避して、傷発生防止策が施された底面11,111、前面12,112、背面13,113、あるいは側面114,114を有する引き出し6〜8,6′を効率的に形成することができる。
【0027】
なお、本発明は、具体的に詳述した前記実施の形態に限定されることはなく、本発明の趣旨に沿うものであればよい。
【0028】
例えば、前記第1の実施の形態において、側板20,20の収納空間S側に微細凹凸加工を施してもよく、これにより、側板20,20の傷発生を防止することができる。
【0029】
また、前記第1及び第2の実施の形態では、微細凹凸加工としてエンボスロールを用いた方法が適用されたが、その他に、ショットやサンドを使用したブラスト加工、薬品によるエッチング加工等の適宜の方法が適用される。
【0030】
また、前記第1及び第2の実施の形態では、エンボス加工が施されたステンレス板を折曲加工して引き出し本体10,110を形成したが、折曲加工後の引き出し本体に、例えばブラスト加工やエッチング加工を施してもよい。その場合にも、外観上の統一感に優れた金属製引き出しが実現され、かつ、少なくとも底面を含む収納空間側の面の傷発生を防止することができる。
【0031】
そして、収納物品の脱落を防止するため必要に応じて、前記第1の実施の形態では、例えば背面13と前板40との間の左右に棒状部材を配設してもよく、一方、前記第2の実施の形態では、例えば枠体150上の後側の左右にポスト部材を立設し、このポスト部材と前板140との間に棒状部材を配設してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、外観上の統一感に優れ、かつ、少なくとも底板を含む収納空間側の面の傷発生を防止することができる金属製引き出しが実現される。すなわち、本発明は、キッチン家具の技術分野に広く好適である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る金属製キャビネットの正面図である。
【図2】同じく引き出しの構成を説明するための斜視図である。
【図3】第2の実施の形態に係る引き出しの構成を説明するための斜視図である。
【図4】同じく一部を省略した側面図である。
【符号の説明】
【0034】
6〜8,6′ 金属製引き出し
11,111 底面
12,112 前面
13,113 背面
114 側面
S 収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の折曲加工により形成されて収納空間を有する金属製引き出しであって、
前記収納空間を形成する少なくとも底面を含む収納空間側の面に、微細凹凸加工が施されていることを特徴とする金属製引き出し。
【請求項2】
前記請求項1に記載の金属製引き出しにおいて、
前記微細凹凸加工は、折曲加工前に施されていることを特徴とする金属製引き出し。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−119067(P2008−119067A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303446(P2006−303446)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】