説明

金属酸化物半導体粒子分散体組成物および半導体

【課題】 分散剤の使用量が少なく、緻密性、均一性、表面平滑性に優れた半導体膜を簡便な方法で得ることができる金属酸化物半導体粒子分散体組成物の提供。
【解決手段】
平均粒子径が1〜100nmである金属酸化物半導体粒子と、下記式(1)で示される化合物からなる分散剤と、溶媒とを含有することを特徴とする金属酸化物半導体粒子分散体組成物である。式(1)のRは、分岐鎖を有し炭素数が3〜24のアルキル基またはアルケニル基であり、AOは炭素数が1ないし4のオキシアルキレン基であり、nはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示す5〜30の範囲の数値であり、Xは炭素原子、水素原子及び/又は酸素原子からなる連結基である。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物半導体粒子分散体組成物および半導体に関し、より詳細には、金属酸化物半導体粒子の含有量が多く、しかも分散性に優れ、塗工後において緻密性、均一性、表面平滑性に優れた半導体膜を得ることができる金属酸化物半導体粒子分散体組成物、およびこれを用いた半導体に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化インジウム−酸化ガリウム−酸化亜鉛(IGZO)などの金属酸化物からなる半導体は、電極材料等として広く使用されている。従来、これらの金属酸化物からなる電極等を製造する方法として、真空蒸着やスパッタリングなどが用いられている。しかし、これらの方法は、製造に長時間を要し、また、特殊な装置を必要とするなど、生産性に関しての問題がある。
【0003】
最近、生産性を向上させる方法として、金属酸化物半導体からなるナノ粒子を分散剤を用いて分散させ、得られる分散体を塗布・乾燥することにより半導体膜を形成する方法が提案されている。例えば、特許文献1では、ステアリン酸などのアルキルカルボン酸を分散剤として用いることが記載されている。
【0004】
しかしながら、この従来技術により得られる半導体膜は、緻密性、均一性、表面平滑性等の点において十分ではなく、また、分散剤の添加量が多いため、相対的に金属酸化物半導体粒子の含有量が低くなり、半導体としての性能も低下してしまうという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−124289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の課題は、分散剤の使用量が少なく、緻密性、均一性、表面平滑性に優れた半導体膜を簡便な方法で得ることができる金属酸化物半導体粒子分散体組成物を提供することであり、また、そのような半導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金属酸化物半導体粒子分散体組成物は、平均粒子径が1〜100nmである金属酸化物半導体粒子と、下記式(1)で示される化合物からなる分散剤と、溶媒とを含有することを特徴とする。
【0008】
【化1】

【0009】
ここで、式(1)のRは、分岐鎖を有し炭素数が3〜24のアルキル基またはアルケニル基であり、AOは炭素数が1ないし4のオキシアルキレン基であり、nはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示す5〜30の範囲の数値であり、Xは炭素原子、水素原子及び/又は酸素原子からなる連結基である。
【0010】
ここで、前記分散剤における前記式(1)のXは、炭素数が1ないし15のアルキレン基であることが好ましい。
【0011】
また、前記分散剤における前記式(1)のXは、下記式(2)で示される連結基であることを特徴とする請求項1記載の金属酸化物半導体粒子分散体組成物。
【0012】
【化2】

【0013】
ただし、式(2)のYは、炭素数が1ないし15のアルキレン基、ビニレン基、フェニレン基およびカルボキシル基含有フェニレン基の中から選択されるいずれかである。
【0014】
また、上記において、前記金属酸化物半導体粒子を100重量%とした場合に、前記分散剤の配合量が1〜30重量%であることが好ましい。
【0015】
本発明の半導体は、上記の何れかの金属酸化物半導体粒子分散体組成物を塗工してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の金属酸化物半導体粒子分散体組成物を使用すれば、分散剤の使用量が少ないにもかかわらず分散性に優れ、得られる塗工膜の緻密性、均一性、表面平滑性に優れた半導体膜を簡便な方法で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の金属酸化物半導体粒子分散体組成物を用いて得られる実施例1の塗工膜の電子顕微鏡写真(100倍)である。
【図2】本発明の金属酸化物半導体粒子分散体組成物を用いて得られる実施例1の塗工膜の電子顕微鏡写真(3000倍)である。
【図3】ステアリン酸を分散剤として用いて得られる比較例1の塗工膜の電子顕微鏡写真(100倍)である。
【図4】ステアリン酸を分散剤として用いて得られる比較例1の塗工膜の電子顕微鏡写真(3000倍)である。
【図5】分岐C11〜14アルキルアルコールエチレンオキシド10モル付加物を分散剤として用いて得られる比較例2の塗工膜の電子顕微鏡写真(100倍)である。
【図6】分岐C11〜14アルキルアルコールエチレンオキシド10モル付加物を分散剤として用いて得られる比較例2の塗工膜の電子顕微鏡写真(3000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.分散質粒子
本発明の金属酸化物半導体粒子分散体組成物における金属酸化物半導体として代表的なものは、酸化インジウム−酸化ガリウム−酸化亜鉛(IGZO)、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)、酸化亜鉛−酸化スズ(ZTO)等を挙げることができる。これらの金属酸化物半導体粒子は、媒体中から安定に取り出す為に、アルカン酸類や脂肪酸類、ヒドロキシカルボン酸類、脂環族、芳香族カルボン酸類、アルケニルコハク酸無水物類、チオール類、フェノール誘導体類、アミン類、両親媒性ポリマー、高分子界面活性剤、低分子界面活性剤などの保護剤で被覆されていてもよい。
【0019】
本発明において分散剤により分散される金属酸化物半導体粒子は、平均粒子径が1〜100nmのものであり、結晶状であってもアモルファス状であってもよい。また、本発明における分散剤により分散される金属酸化物半導体粒子は等方性粒子であっても異方性粒子であってもよく、繊維状であってもよい。
【0020】
本発明で被分散質となる金属酸化物半導体粒子は、公知の方法で得たものが使用できる。微粒子の調製方法としては、粗大粒子を機械的に解砕、微細化していくトップダウン方式と、いくつかの単位粒子を生成させ、それが凝集したクラスター状態を経由して粒子が形成されるボトムアップ方式の2通りの方式があるが、いずれの方法で調製されたものであっても好適に使用できる。また、それらは湿式法、乾式法のいずれの方法によるものであってもよい。また、ボトムアップ方式には、物理的方法と化学的方法があるが、いずれの方法によるものであってもよい。本発明における分散剤は、粗大粒子を機械的に解砕、微細化していくトップダウン方式の工程中で使用してもよく、いくつかの単位粒子を生成させ、それが凝集したクラスター状態を経由して粒子が形成されるボトムアップ方式の工程中で使用してもよく、或いは、事前に前記方法で微粒子を調製後、該分散質粒子を媒体中から安定に取り出すために表面修飾剤や表面保護剤と称する公知の保護剤で被覆或いは含浸させて取り出された粒子を使用することもできる。保護剤としては前記の公知分散剤で代用することができる。
【0021】
ボトムアップ方式をより具体的に説明するために、前記分散質粒子の内、金属ナノ粒子の調製法を例示する。ボトムアップ方式の内、物理的方法の代表例としてはバルク金属を不活性ガス中で蒸発させ、ガスとの衝突により冷却凝縮させてナノ粒子を生成するガス中蒸発法がある。また、化学的方法には、液相中で保護剤の存在下で金属イオンを還元し、生成した0価の金属をナノサイズで安定化させる液相還元法や金属錯体の熱分解法などがある。液相還元法としては、化学的還元法、電気化学的還元法、光還元法、または化学的還元法と光照射法を組み合わせた方法などを利用することができる。
【0022】
また、本発明で好適に使用できる分散質粒子は、前記の如く、トップダウン方式、ボトムアップ方式のいずれも手法で得たものであってもよく、それらは水系、非水系、気相中のいずれの環境下で調製されたものであってもよい。なお、これらの分散質粒子ReturningPointReturningPointを使用する際には、各種溶媒に分散質粒子をあらかじめ分散したものを使用してもよい。
【0023】
分散質粒子の平均粒径は、5〜100nmの範囲内であることが好ましい。
【0024】
2.分散剤の疎水基(R)について
本発明における分散剤の疎水基(R)は、分岐鎖を有し炭素数が3〜24のアルキル基またはアルケニル基を含んでいる。分岐鎖を有し炭素数が3〜24のアルキル基またはアルケニル基の含有量は、Rの全体に対して70重量%以上であることが好ましい。
【0025】
Rの生成に使用し得る原料アルコールの炭素数は、単一であっても異なる炭素数のアルコールの混合物であってもよい。また、その原料アルコールは合成由来であっても天然由来であってもよく、また、その化学構造は単一組成であっても複数の異性体からなる混合物であってもよい。使用できる原料アルコールは公知のものが選択できるが、具体例としては、合成由来のブタノール、イソブタノール、ペンタノール及び/又はその異性体、ヘキサノール及び/又はその異性体、ヘプタノール及び/又はその異性体、オクタノール及び/又はその異性体、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノールの他、プロピレン或いはブテン、又はその混合物から誘導される高級オレフィンを経てオキソ法によって製造されるイソノナノール、イソデカノール、イソウンデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、シェルケミカルズ社製のネオドール23、25、45、サソール社製のSAFOL23、エクソン・モービル社製のEXXAL7、EXXAL8N、EXXAL9、EXXAL10、EXXAL11及びEXXAL13も好適に使用できる高級アルコールの一例である。更に天然由来のオクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール(1−ドデカノール)、ミリスチルアルコール(1−テトラデカノール)、セチルアルコール(1−ヘキサデカノール)、ステアリルアルコール(1−オクタデカノール)、オレイルアルコール(cis−9−オクタデセン−1−オール)なども使用できる高級アルコールの一例である。また、2−アルキル−1−アルカノール型の化学構造をもつゲルベアルコール(Guerbet Alcohol)類の単一組成、或いはその混合物なども好適に使用できる高級アルコールの一例であり、2−エチル−1−ヘキサノール、2−プロピル−1−ヘキサノール、2−ブチル−1−ヘキサノール、2−エチル−1−ヘプタノール、2−プロピル−1−ヘプタノール、2−エチル−1−オクタノール、2−ヘキシル−1−デカノール、2−ヘプチル−1−ウンデカノール、2−オクチル−1−ドデカノール、2−デシル−1−テトラデカノールの他、分岐アルコールから誘導されるイソステアリルアルコールなどがある。また、上記各種アルコールを2種以上配合して使用することも可能である。但し、本発明における分散剤では、前記の如く疎水基(R)は、炭素数3〜24の分岐型のアルキル基及び/又はアルケニル基を含むものである。
【0026】
なお、疎水基(R)が水素或いは炭素数が1〜2の炭化水素基である場合、炭素数が25を超える場合、および疎水基(R)の炭素数が3〜24の範囲にある場合でも直鎖型のアルキル基及び/又はアルケニル基の含有量が30重量%を超える場合には、分散媒中で分散質を安定に分散させることができないか、又は使用できる分散媒の選択範囲が限定されたり、分散体の調製工程において異種の分散媒への置換や混合が生じることがある。その結果、分散体の安定性が著しく低下して直ちに沈降物を生じたり、経時安定性が著しく低下して最終製品の付加価値低下、生産性低下、加工特性低下および品質劣化などの問題を生じる。これらの問題を回避し、更に本発明において分散剤の作用を特に効果的なものにするためには、疎水基(R)は炭素数8〜18の分岐型のアルキル基であることがより好ましい。
【0027】
3.分散剤のオキシアルキレン基(AO)n
本発明において分散剤に好適に選択されるアルキレンオキシド種について、式(1)におけるAOは炭素数1ないし4のオキシアルキレン基を示すものであり、具体的には炭素数2のアルキレンオキシドはエチレンオキシドである。炭素数3のアルキレンオキシドはプロピレンオキシドである。炭素数4のアルキレンオキシドは、テトラヒドロフラン或いはブチレンオキシドであるが、好ましくは、1,2−ブチレンオキシドまたは2,3−ブチレンオキシドである。分散剤におけるオキシアルキレン鎖(−(AO)n−)は分散剤の分散媒親和性を調整する目的を果たし、アルキレンオキシドは単独重合鎖であっても、2種以上のアルキレンオキサイドのランダム重合鎖でもブロック重合鎖でもよく、また、その組み合わせであってもよい。式(1)のアルキレンオキシドの平均付加モル数を示すnは1ないし30の範囲であるが、3ないし20の範囲にあることが好ましい。
【0028】
4.分散剤の連結基(X)
連結基(X)は炭素原子、水素原子、酸素原子からなる公知の構造から選択可能であるが、好ましくは飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、エーテル基、カルボニル基、エステル基からなり、脂環構造、芳香環構造を有していてもよく、また、繰り返し単位を有していてもよい。連結基Xに窒素原子及び/又は硫黄原子及び/又はリン原子などを含む場合は、カルボキシル基の分散質への親和効果を弱める作用があるために本発明における分散剤の構造因子としては適さない。
【0029】
また、式(1)のXは炭素数が1ないし15のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が1ないし8のアルキレン基であることがより好ましい。
【0030】
また、式(1)のXは、前述の式(2)で示される物質であることが好ましい。ただし、式(2)におけるYは、炭素数が1ないし15のアルキレン基、ビニレン基、フェニレン基およびカルボキシル基含有フェニレン基の中から選択されるいずれかである。
【0031】
5.一層好ましい分散剤
本発明においては、下記式(3)に記載の分散剤を使用することが一層好ましい。
【0032】
【化3】

【0033】
但し、式(3)においてRは炭素数が8ないし18であって分岐鎖を有するアルキル基が好適であり、nはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、3ないし20の範囲が好適である。分散剤の組成をこの範囲に限定することで、分散体の調製に使用できる分散媒の選択範囲の拡大、異種の分散媒の混合、置換に対する適用性が向上する。このように、分散剤の組成範囲を限定することで、分散体の経時安定性に対して更に好適に作用し、その結果、最終製品の付加価値向上、生産性向上、加工特性向上および品質安定化などを達成できる。
【0034】
6.分散剤の配合量
本発明における分散剤の配合量は特に限定されるものではないが、分散質粒子である金属酸化物半導体粒子100重量%に対して、1〜30重量%であり、3〜20重量%が好ましく、3〜15重量%がより好ましく、5〜10重量%がさらに好ましい。
【0035】
7.分散剤の製造方法
本発明における分散剤は公知の方法で製造することができる。例えば、アルコール、アミン、チオールに公知の方法でアルキレンオキシドを付加した一般的な非イオン界面活性剤化合物を原料として、モノハロゲン化低級カルボン酸またはその塩を用い、塩基存在下でアルキレンオキシド末端の水酸基と反応させる方法、または、酸無水物を用いてアルキレンオキシド末端の水酸基との開環反応による方法により製造することができるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0036】
また、前述の範囲で疎水基の種類、アルキレンオキシド種とその付加形態、付加モル量、連結基などを特に限定して組成を最適選定することにより、公知の分散剤よりも、より広範な種類の分散質を分散でき、より広範な種類の分散媒に分散質を分散安定化できる点で産業上の利用価値は大きい。
【0037】
また、本発明に使用される分散剤は、公知の精製法により含有するイオン種、特にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、重金属イオン、ハロゲンイオンの各イオンの含有量を低減して用いることができる。分散剤中のイオン種は分散体の分散安定性、耐触性、耐酸化性、分散塗膜の電気特性(導電特性、絶縁特性)、経時安定性、耐熱性、低湿性、耐候性に大きく影響するため、上記イオンの含有量は適宜決定することができるが、分散剤中で10ppm未満であることが望ましい。
【0038】
また、本発明の金属酸化物半導体粒子分散体組成物は公知の撹拌手段、均一化手段、分散化手段を用いて調製することができる。採用することができる分散機の一例としては、2本ロール、3本ロールなどのロールミル、ボールミル、振動ボールミルなどのボールミル、ペイントシェーカー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミルなどのビーズミル、サンドミル、ジェットミルなどが挙げられる。また、超音波発生浴中において分散処理を行うことも出来る。
【0039】
8.溶媒
本発明で使用できる分散媒としては、トルエン、キシレン、芳香族炭化水素系溶剤、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンなどの炭化水素系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、ブチルエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルメチルエーテル、ジグライム 1,3−ジオキソランなどのエーテル系溶媒、アセトン、アセトフェノン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、アセトニルアセトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノンメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶媒、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸(イソ)アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル、モノクロロ酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソアミル、γ−ブチロラクトンなどのエステル系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤、及び、それらモノエーテル類の酢酸エステル系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル系溶剤が挙げられる。メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ヘプタノール、n−アミルアルコール、sec−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、アリルアルコール、エチレンクロロヒドリン、オクチルドデカノール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、イソアミルアルコール、t−アミルアルコール、sec−イソアミルアルコール、ネオアミルアルコール、ヘキシルアルコール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、ターピネオールC、L−α−ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピニルオキシエタノール、ジヒドロターピニルオキシエタノール、日本テルペン化学株式会社製のテルソルブMTPH、テルソルブDTO−210、テルソルブTHA−90、テルソルブTHA−70や、シクロヘキサノール、3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール、1,4−ブタンジオール、オクタンジオール等や、日産化学工業株式会社製のファインオキソコール140N、ファインオキソコール1600、ファインオキソコール180、ファインオキソコール180N、ファインオキソコール2000などのアルコール系溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、へキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール系溶剤が挙げられる。その他、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒などが挙げられる。また、分散媒として反応性基を有する(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニルなどのビニル系単量体、ビニルエーテル誘導体類、ポリアリル誘導体などのエチレン系不飽和単量体類も使用することができる。なお、前記分散媒は単独または2種以上を混合して適宜使用することができる。
【0040】
9.任意成分
本発明の金属酸化物半導体粒子分散体組成物は、酢酸セルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の粘度調整剤を添加することができる。
【0041】
10.使用方法
本発明の金属酸化物半導体粒子分散体組成物を基材上に塗布し、溶剤を蒸発させた後、塗工することにより、本発明の半導体からなる薄膜が形成される。塗工の対象となる基材としては、ステンレス箔、銅箔等の金属基板やガラス基板、シリコン基板その他PETフィルム、ポリイミド樹脂等のプラスチック基板などを挙げることができるが、これらに限定されない。塗工方法も、上記に限らず、通常用いられる装置、器具等を用いて行うことが出来る。
【実施例】
【0042】
以下に本発明の実施例および比較例について説明する。なお、以下において、配合量を示す「部」は「重量部」を示し、「%」は「重量%」を示す。言うまでもないが、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において適宜変更や修正が可能である。
【0043】
<金属酸化物半導体粒子(IGZO)の調製>
硝酸インジウム(アルドリッチ社製試薬)、硝酸亜鉛(アルドリッチ社製試薬)、硝酸ガリウム(アルドリッチ社製試薬)をモル比率で1:1:1となるよう水に溶解した後、アンモニア水により中和を行って水和物を得、これを水洗した。水洗した水和物を耐圧容器に封入し、180℃で3時間反応させることにより、金属酸化物半導体粒子(IGZO)を得た。この金属酸化物半導体粒子の比表面積を、日本ベル製BEL−SORPminiにより測定し、一次粒子径を算出したところ、17nmであった。
【0044】
<分散剤Aの合成>
[製造例1(分散剤Aの合成)]
トルエン溶媒中に、分岐C11〜14アルキルアルコール(製品名:EXXAL13、エクソン・モービル社製)エチレンオキシド10モル付加物640g(1モル)およびモノクロロ酢酸ナトリウム152g(1.3モル)を反応器にとり、均一になるよう撹拌した。その後、反応系の温度を60℃の条件で水酸化ナトリウム52gを添加した。次いで、反応系の温度を80℃に昇温させ、3時間熟成させた。熟成後、反応系が50℃の条件で98%硫酸117g(1.2モル)を滴下することにより、白色懸濁溶液を得た。次いで、この白色懸濁溶液を蒸留水で洗浄し、溶媒を減圧留去することにより、分散剤A(R:分岐C11〜14アルキル、AO:エチレンオキシド、n:10、X:CH)を得た。
[製造例2(分散剤Bの合成)]
製造例1において、分岐C11〜14アルキルアルコールエチレンオキシド10モル付加物に代えて、イソデシルアルコールエチレンオキシド10モル付加物598g(1モル)とした以外は製造例1と同様の方法で行い、分散剤B(R:イソデシル、AO:エチレンオキシド、n:10、X:CH)を得た。
[製造例3(分散剤Cの合成)]
製造例1において、分岐C11〜14アルキルアルコールエチレンオキシド10モル付加物に代えて、分岐C11〜14アルキルアルコールエチレンオキシド5モル付加物420g(1モル)とした以外は製造例1と同様の方法で行い、分散剤C(R:分岐C11〜14アルキル、AO:エチレンオキシド、n:5、X:CH)を得た。
【0045】
<分散体、塗工膜、半導体膜の調製>
〔実施例1〕
上記で調製した金属酸化物半導体粒子にソルフィット(クラレ製、3−メトキシ−3−メチルブタノール)を金属酸化物半導体粒子の濃度が0.3Mとなるよう加え、さらに、上記で調製した分散剤Aを金属酸化物半導体粒子に対して10wt%添加し、ペイントシェーカーにて分散処理を行い、実施例としての金属酸化物半導体粒子分散体を得た。
【0046】
次に、このスピンコーター等を用い、この分散体を塗布し、80℃で30分乾燥することにより塗工膜を得た。
【0047】
更に、この塗工膜を250℃で30分間熱処理することにより、半導体膜を得た。
【0048】
〔実施例2、3〕
分散剤Aに代えて、分散剤Bおよび分散剤Cをそれぞれ用い、その他については実施例1と同様の手順・条件で、実施例2および3の金属酸化物半導体粒子分散体および半導体膜を得た。
【0049】
〔実施例4、5〕
分散剤Aの添加量を金属酸化物半導体粒子に対して、それぞれ5wt%および15wt%添加し、その他については実施例1と同様の手順・条件で、実施例4および実施例5の金属酸化物分散体および半導体膜を得た。
【0050】
〔比較例1、2〕
分散剤Aに代えて、ステアリン酸および分岐C11〜14アルキルアルコール(製品名:EXXAL13、エクソン・モービル社製)エチレンオキシド10モル付加物をそれぞれ用い、その他については実施例と同様の手順・条件で、比較例1および2の金属酸化物半導体粒子分散体および半導体膜を得た。
【0051】
<分散体(分散液)の評価>
上記実施例および比較例の金属酸化物半導体粒子分散体を1日静置し、金属酸化物半導体粒子の沈降の有無について評価を行い、その結果を表1に示した。
【0052】
<塗工膜の評価>
実施例1および比較例1および2で作製した塗工膜についてSEM画像の撮影を倍率100倍および3000倍で行い、その結果を図1〜6に示した。また、これらの塗工膜についてヘイズの測定をスガ試験機株式会社製ヘイズコンピューターにより行った。
【0053】
<半導体膜>
実施例および比較例で作製した半導体膜について、体積抵抗を3回測定し、その平均値を表1に示した。体積抵抗の測定は、(ADVANTEC製デジタル超高抵抗計R8340)により行った。
【0054】
【表1】

【0055】
<結果>
表1から明らかなように、各実施例の分散体は、比較例の分散体に比較して、分散安定性に優れていることが分かる。また、実施例1の分散体から得られる塗工膜のSEM画像は、比較例1および2の分散体から得られる塗工膜に比較して、均一でムラが無く、ヘイズの値も良好な値を示している。従って、実施例の分散体から得られる塗工膜の方が、金属酸化物半導体としての特性が損なわれないことが予想される。更に、実施例の分散体から得られる半導体膜の体積抵抗値は、比較例の分散体から得られる半導体膜の体積抵抗値に比較して小さく、このことからも、各実施例の分散体から得られる半導体膜では、金属酸化物半導体としての特性が損なわれないことが予想される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の金属酸化物半導体粒子分散体組成物から得られる塗工膜および半導体膜は、電子回路、電子部品等の分野で利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1〜100nmである金属酸化物半導体粒子と、下記式(1)で示される化合物からなる分散剤と、溶媒とを含有することを特徴とする金属酸化物半導体粒子分散体組成物。
【化1】

ただし、式(1)のRは、分岐鎖を有し炭素数が3〜24のアルキル基またはアルケニル基であり、AOは炭素数が1ないし4のオキシアルキレン基であり、nはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示す5〜30の範囲の数値であり、Xは炭素原子、水素原子及び/又は酸素原子からなる連結基である。
【請求項2】
前記分散剤における前記式(1)のXは、炭素数が1ないし15のアルキレン基であることを特徴とする請求項1記載の金属酸化物半導体粒子分散体組成物。
【請求項3】
前記分散剤における前記式(1)のXは、下記式(2)で示される連結基であることを特徴とする請求項1記載の金属酸化物半導体粒子分散体組成物。
【化2】

ただし、式(2)のYは、炭素数が1ないし15のアルキレン基、ビニレン基、フェニレン基およびカルボキシル基含有フェニレン基の中から選択されるいずれかである。
【請求項4】
前記金属酸化物半導体粒子を100重量%とした場合に、前記分散剤の配合量が1〜30重量%である請求項1ないし3の何れか一項に記載の金属酸化物半導体粒子分散体組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の金属酸化物半導体粒子分散体組成物を塗工してなる膜を有することを特徴とする半導体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115132(P2013−115132A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257954(P2011−257954)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】