説明

針安全装置

【課題】針が偶発的に刺さってしまうことに対する保護をより向上させる針安全装置を提供する。
【解決手段】装置28は、針24を受けるために貫通して軸方向に延びた穴を有した基部30と、該基部30から概ね軸方向に延び、かつ各々がその自由端領域に頭部38,40を有する2つの対向した顎部34,36とを備える。ここで、少なくとも1つの頭部が、医療装置のハウジング内に針安全装置28を固定するためのロック肩部50を形成している。弾性エレメント44が、基部30と頭部38,40との間の領域において顎部34,36を取り囲む。弾性エレメント44および顎部34,36は、穴に受けられた針24が針安全装置28を完全に貫通して延びるようにするために、顎部34,36が弾性エレメント44の復元力に対抗して拡張するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、静脈内カテーテル器具のような医療装置の針安全装置に関する。この針安全装置は、針を受けるために軸方向に貫通して延びた穴を有した基部と、該基部から概ね軸方向に延び、かつ各々が各自由端の領域に頭部を有する2つの対向した顎部とを備える。ここで、少なくとも1つの頭部が、医療装置のハウジング内に針安全装置を固定するためのロック肩部を形成している。
【背景技術】
【0002】
この種の針安全装置は、患者から針を引き抜いているときに針先端部を自動的に覆う、医療装置の針先端部のための保護具として一般に知られているとともに機能する。これにより、針安全装置は、例えば、針が医療装置から取り除かれた後に医療職業者に偶発的に刺さってしまうことを防止するのに寄与する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、針が偶発的に刺さってしまうことに対する保護をより向上させる針安全装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1の特徴を備えた針安全装置によって満足される。
【0005】
本発明の針安全装置は、弾性エレメントが基部と頭部との間の領域において顎部の少なくとも一部を取り囲むことを特徴としている。ここで、弾性エレメントおよび顎部は、穴に受けられた針が針安全装置を完全に貫通して延びるようにするために、顎部が弾性エレメントの復元力に対抗して拡張できるように構成されている。
【0006】
医療装置、例えば、静脈内カテーテル器具の使用前における一般的な保管状態である顎部の拡張状態において、弾性エレメントが顎部に該弾性エレメントの復元力を与えているので、長期間保管された後でさえも、医療装置から針を引き抜いたときに、弾性エレメントによって、拡張した顎部が互いに嵌り、針先端部を保護することが確実となる。これにより、針安全装置を正確に機能させることが継続的に保証される。さらに、弾性エレメントは、針安全装置が針に沿ってスライドするときの顎部の緩みを防止し、針安全装置を正確に機能させることにさらに寄与する。
【0007】
弾性エレメントは、基部と顎部の頭部との間の領域に配置されることにより、針安全装置から横方向への針先端部の突出を防止することにも寄与し、これにより、針安全装置の保護機能がより向上する。
【0008】
さらに、弾性エレメントが基部と顎部の頭部との間に配置されることにより、医療装置のハウジング内に形成されたロック突出部を受けるためのロックリセス部が、弾性エレメントと少なくとも1つの頭部のロック肩部との間に形成される。ロック突出部が、少なくとも1つの頭部の肩部および弾性エレメントによって形成されたリセス部と噛み合っているときには、針安全装置は、医療装置のハウジング内に安全に固定され、特に、ハウジングに対し軸方向の移動が防止される。
【0009】
弾性エレメントは、顎部を完全に取り囲むテンションリングおよび/または顎部の一部のみを取り囲むクランプ、ブラケット、C型クリップなどからなる。
【0010】
好ましい実施例では、軸方向に見たときに、弾性エレメントは、顎部の実質的な部分を覆う。弾性エレメントは、部分的な側壁を形成し、顎部と組み合わせることによって、針安全装置内にチャンバを画定する。このチャンバにおいて、針先端部は、医療装置から針を完全に引き抜いた後に保持され、これにより、針安全装置の保護機能がより向上する。
【0011】
弾性エレメントの軸方向の寸法は、顎部の長さの約5分の1から3分の2または4分の3までの範囲とすることができ、好ましくは、顎部の長さの約3分の1である。
【0012】
弾性エレメントは、弾性特性を備えた材料、例えば、ゴム、シリコーンなどの弾性材料から形成されることが好ましい。針が針安全装置を完全に貫通して延びることにより顎部が拡張し、弾性エレメントが広がるときに、弾性エレメントは、該弾性エレメントの弾性特性によって顎部に復元力を与える。針安全装置を通して針を引き抜くときに、針先端部が顎部の自由端を越えて移動すると、顎部は、弾性エレメントの復元力によって強制的に収縮する。
【0013】
他の実施例では、顎部は、基部と頭部との間の領域において、少なくとも1つのリンクによって互いに接続されている。リンクは、弾性エレメントの領域に配置されることが好ましい。リンクを、顎部の一方の側のみに設けることができる。代替的に、第1のリンクおよび第2のリンクが顎部の両側に設けられてもよい。
【0014】
少なくとも1つのリンクは、顎部がリンクの復元力に対抗して拡張することができるように、ばねのような特性を備えて形成されることが好ましい。一例として、リンクは、湾曲した形状、例えば、「S」または「Z」のような形状とすることができる。代替的に、リンクは、実質的に直線の形状とすることもできる。
【0015】
少なくとも1つのリンクによって、2つの顎部が拡張し過ぎることが無くなり、これにより、弾性エレメントが過剰に伸びて弾性特性を失うことが防止される。さらに、リンクは、弾性エレメントが顎部に収縮方向の力を与えることに寄与し、これにより、針安全装置が針に沿ってスライドするときに、弾性エレメントが顎部の緩みを防止することに寄与する。また、リンクは、弾性エレメントが機能しなくなった場合でも顎部を収縮させることができる。リンクは、保管期間にわたって該リンクのばねのような特性を維持するように設計される。
【0016】
針安全装置を簡潔であり、かつ経済的な製品にするために、基部、顎部および、好ましくは、少なくとも1つのリンクが一体に形成されてもよく、好ましくは、例えば、射出成形によってプラスチック材料から形成されてもよい。代替的に、基部、顎部および、好ましくは、少なくとも1つのリンクが金属材料から形成されてもよい。他の実施例では、基部、顎部および/またはリンクの各々は、異なる材料から構成されるか、もしくは、例えば、異なるプラスチック材料、異なる金属材料またはプラスチック材料および/または金属材料の異なる組み合わせである材料の組み合わせから構成される。例えば、基部は金属材料で形成され、顎部はプラスチック材料で形成される。また、基部をプラスチック材料で形成し、顎部を金属材料で形成することもできる。針に沿ってスライドするときの摩擦を針安全装置が減少することにより針の引き抜きを容易にするように、針と接触する顎部の内側部分を、熱可塑性エラストマのような熱可塑性材料で形成し、顎部の外側部分を、例えば、プラスチックおよび金属の複合材料のような異なる材料、もしくはエラストマ材料で形成することができることにも留意されたい。
【0017】
針安全装置によって保護された針先端部が顎部の自由端を越えて突出することを防止するために、少なくとも1つの顎部は、該顎部の自由端に傾斜端部を備えており、該傾斜端部は、他方の顎部に向かって軸方向に対して概ね垂直な方向へと延びる。
【0018】
少なくとも1つの傾斜端部の長さは、針が針安全装置を完全に貫通して延びるときに、傾斜端部が針に支持され、これにより、傾斜端部を備えた顎部の頭部に位置した肩部が、医療装置のハウジングに設けられたロック突出部の後方に係合することができる程度に顎部が互いに離間するように選択されることが好ましい。
【0019】
また、本発明の他の特徴は、例えば、静脈内カテーテル器具のような医療装置の針であり、この針は、内周プロフィール、即ち該針の内周縁つまり内周によって画定された断面領域と、主外周プロフィール、即ち針の外周縁つまり外周によって画定された主断面領域と、針先端部とを備える。さらに、針は、針先端部の領域に少なくとも1つの拡大部を備えており、該拡大部は、主外周プロフィールを増加し、かつ内周プロフィールを実質的に変化しないように形成されている。
【0020】
本発明の別の特徴は、医療装置、特に、静脈内カテーテル器具であり、この医療装置は、上述された形式の針と、針先端部を保護するために針にスライド可能に配置される特に上述された針安全装置とを備える。ここで、針安全装置は、針を受けるために貫通して延びる穴を有した基部を備えており、該穴は、針の主外周プロフィールに適合している。
【0021】
針先端部の領域の直径を効果的に拡大つまり増加することによって、医療装置から針を引き抜いているときに、針先端部が針安全装置の基部を通して引き抜かれることが防止される。即ち、拡大部によって、針安全装置が針先端部を越えてスライドすることが防止され、医療装置から針を取り除いた後に、針先端部が針安全装置によって継続的にかつ信頼性が高く保護されることが確実となる。
【0022】
針の主外周プロフィールのみを増加し、かつ内周プロフィールを変化しないように拡大部を形成することによって、即ち、針の長さ全体にわたって実質的に一定の内周断面領域を維持することによって、患者から針に流入する血液が、針の内側に沿って自由に通流することができる。つまり、このように拡大部を形成することにより、針が静脈を貫通したときに、血液の逆流が生じて悪影響を及ぼすことはない。
【0023】
拡大部を、例えば、付加的な材料を使用するか、もしくは使用しないで、レーザー溶接プロセスなどの溶接プロセスを用いて、針の局所的な領域を集中的に加熱することによって形成することができる。
【0024】
代替的に、拡大部を、針の外周面に付加的な材料を分配することによって形成することもできる。所定の位置に材料を分配するために、リセス部つまり溝が、針の外周面つまり外周部に形成されてもよい。
【0025】
付加的な材料は、例えば、プラスチック材料、接着剤、樹脂および金属材料の少なくとも1つから選択され得る。
【0026】
付加的な材料が金属材料である場合には、拡大部を、例えば、針に付加的な材料を肉盛り溶接することによって形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ウィングハウジングに挿入された本発明の針安全装置と、該針安全装置を通して延びる針とを備えた静脈内カテーテル器具のウィングハウジングを、一部を断面にして示した図である。
【図2】針が無い状態の針安全装置を備えた図1のウィングハウジングを、一部を断面にして示した図である。
【図3A】針安全装置が針先端部を保護している状態を示す、テンションリングを備えた図1の針安全装置の側面図である。
【図3B】針およびテンションリングを除いた図3Aの針安全装置の側面図である。
【図3C】本発明の代替の実施例における針安全装置の外周面に形成された、テンションリングを受けるための凹部を示した図である。
【図4A】テンションリングを備えた本発明の針安全装置の代替の実施例を示した側面図である。
【図4B】テンションリングを除いた図4Aの針安全装置の側面図である。
【図5】図1のウィングハウジングの平面図である。
【図6A】環状ロック突出部を詳細に示した図5のウィングハウジングの断面図である。
【図6B】環状ロック突出部の代替の実施例を詳細に示した図5のウィングハウジングの断面図である。
【図7A】針の外周面に形成された拡大部の詳細部を示した図1の針の針先端領域の側面図である。
【図7B】図7Aの針先端領域の平面図である。
【図8】溶接によって形成された拡大部の領域における図7の針の断面図である。
【図9】堆積プロセスによる拡大部の形成を示す、拡大部の領域における図7の針の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、静脈内カテーテル器具のカテーテルハブ即ちウィングハウジング10が示されている。ウィングハウジング10は、軸方向に延びた概ね管状の主ボディ12を備える。主ボディ12は、末端部14および基端部16を備える。主ボディ12には、該主ボディ12の末端部14においてカテーテル17が取り付けられている(図5)。ポート18が、主ボディ12から軸方向に対して概ね垂直な方向へと延びる。主ボディ12のポート18とは反対側には、ウィング20が設けられている(図5)。主ボディ12は、基端部16から末端部14へと延びたチャンバ22を画定する。
【0029】
静脈内カテーテル器具の使用前の状態では、針24が、ウィングハウジング10を通して軸方向に延びている。針24は、内周プロフィール、即ち該針24の内周縁つまり内周によって画定された断面領域を備えており、この内周プロフィールは、針24の長さにわたって実質的に一定である。また、主外周プロフィール、即ち針24の外周縁つまり外周によって画定された主断面領域も、針24の端部における針先端領域に設けられた該針24の拡大部26を除いて、針24の長さにわたって実質的に一定である。拡大部26は、図7〜9を参照してより詳細に後述する。
【0030】
さらに図1を参照すると、針安全装置28が、針24にスライド可能に配置されている。静脈内カテーテル器具の使用前に、針安全装置28は、主ボディ12の基端部16からチャンバ22内へ挿入されている。
【0031】
図1、図3および図4に見られるように、針安全装置28は、基部30を備えており、この基部30は、針24を受けるために該基部30を通して軸方向に延びた穴を有している。この穴は、針24の主外周プロフィールに適合した形状および大きさとされている。
【0032】
第1の顎部34および第2の顎部36が、基部30から概ね軸方向に延びる。第1の顎部34は、該第1の顎部34の自由端領域に第1の頭部38を備えており、第2の顎部36は、該第2の顎部36の自由端領域に第2の頭部40を備える。第1の頭部38は、第2の頭部40を越えて延びるとともに、その自由端に傾斜端部42を備えており、この傾斜端部42は、第2の顎部36へ向かって軸方向に対して概ね垂直な方向へと延びる。
【0033】
傾斜端部42の長さは、顎部34,36が図2、図3および図4に示されているような自由状態にあるときに、傾斜端部42が第2の頭部40の少なくとも一部を覆って突出するように選択される。図1に示されている静脈内カテーテル器具の使用前の状態のように、針24が針安全装置28を完全に貫通して延びているときには、傾斜端部42は、針24に支持されており、これにより、第1の顎部34は、第2の顎部36から離間するように力がかけられ、自由状態から拡張位置へと移動する。
【0034】
顎部34,36は、基部30と頭部38,40との間の領域においてテンションリング44によって取り囲まれている。テンションリング44は、弾性材料、例えば、ゴム、シリコーンなどから形成される。図1に示されているように顎部34,36が針24によって拡張しているときに、テンションリング44が顎部34,36に復元力を与えるように、テンションリング44は、顎部34,36の周囲に適合している。
【0035】
図1,図2,図3Aおよび図4Aに示されているように、テンションリング44は、顎部34,36の軸方向の実質的な部分を覆っている。特に、テンションリングの軸方向の寸法は、顎部の長さの約5分の1から3分の2または4分の3までの範囲とすることができ、好ましくは、顎部の長さの約3分の1である。
【0036】
図3Bおよび図4Bを参照すると、顎部34,36は、リンク46によって互いに接続されている。リンク46は、基部30と頭部38,40との間、即ちテンションリング44の領域の顎部34,36の長さにおける概ね中央に配置されている。さらに、リンク46は、図3Aおよび図4Aに示されているように、テンションリング44によって覆われている。
【0037】
図示されている実施例では、リンク46は、顎部34,36の一方の側のみに設けられている。しかし、顎部34,36の両側にリンクを設けることも一般に可能である。さらに、顎部34,36の一方の側もしくは両方の側に複数のリンクを設けることも一般に可能である。
【0038】
図3Bおよび図4Bに示されているリンク46は、湾曲した形状、特に、リンク46にばねのような特性を与える「S」のような形状である。したがって、図1に示されているように顎部34,36が針24によって拡張するときに、リンク46も顎部34,36に復元力を与える。このようにして、リンク46は、テンションリング44が顎部34,36を互いに向かうように付勢することに寄与する。
【0039】
リンク46は、必ずしも「S」のような形状である必要はなく、リンク46にばねのような特性を与えるのに適した「Z」のような形状や他の形状であってもよいことを理解されたい。
【0040】
基部30、顎部34,36およびリンク46は、例えば、射出成形によって、プラスチック材料から一体に形成される。代替的に、基部30、顎部34,36およびリンク46は、金属材料から形成されてもよい。
【0041】
図3Bおよび図4Bに見られるように、顎部34,36は、テンションリング44の領域において互いに向かうように僅かに傾斜しており、これにより、針安全装置28の外周プロフィールが、頭部38,40へ向かって傾斜する。
【0042】
顎部34,36の固定位置にテンションリング44を保持するために、二つの部分環状突出部48が、図1、図2および図3に示されているように、顎部34,36の外周面に形成される。部分環状突出部48は、テンションリング44の軸方向の寸法と同じ距離だけ互いに離間している。したがって、部分環状突出部48は、該部分環状突出部48の間でテンションリング44を受けることができ、テンションリング44のガイドとして機能するとともに、顎部34,36におけるテンションリング44の位置を確保することができる。部分環状突出部48に加えて、もしくはこれの代わりに、凹部つまり溝49が、図3Cに示されているように、顎部34,36の外周面に形成されてもよい。
【0043】
部分環状突出部48および凹部つまり溝49は、任意選択的なものであり、即ち、針安全装置28は、図4Aおよび図4Bに示されているように、部分環状突出部や凹部つまり溝を設けないで形成することもできることに留意されたい。
【0044】
図3および図4に見られるように、ロック肩部50が、テンションリング44に面する頭部38,40の各々の側に形成される。ロック肩部50およびテンションリング44は、共にリセス部つまり溝52を形成する。
【0045】
図1を再び参照すると、環状ロック突出部54が、ウィングハウジング10の主ボディ12の内周面に形成されるとともにチャンバ22へと突出している。
【0046】
静脈内カテーテル器具の使用前の状態、即ち、針安全装置28がチャンバ22に挿入され、針24が針安全装置28およびウィングハウジング10を完全に貫通して延びているときには、頭部38は、傾斜端部42が針24に支持されるので、力がかけられて第2の顎部36から離間し、環状ロック突出部54は、テンションリング44および第1の顎部34の頭部38によって画定されたリセス部52において受けられる。
【0047】
顎部34,36が拡張した状態で、環状ロック突出部54は、針安全装置28のリセス部52と噛み合うので、針安全装置28は、主ボディ12に対し軸方向に移動しないように固定される。具体的には、第1の顎部34の頭部38のロック肩部50が環状ロック突出部54の後方に係合するので、ウィングハウジング10から針安全装置28を引き抜くことができない。
【0048】
図5に示されているように、環状ロック突出部54は、主ボディ12の基端部16から、5〜6mmの範囲もしくはこれ以上の距離だけ離間している。
【0049】
環状ロック突出部54は、丸い縁部を備えた実質的に矩形のプロフィール(図6A)、ガウス曲線または半分の正弦曲線とされた丸いプロフィール(図6B)、もしくはウィングハウジング10に針安全装置28をロックするのに適した他のプロフィールとすることができる。
【0050】
ロック突出部54は、連続的な環状の形状であることが好ましい。しかし、ロック突出部54は、1つまたは複数の不連続部を備えることも一般に可能である。
【0051】
針24が患者や静脈内カテーテル器具から引き抜かれるときには、針24は、同時に、針安全装置28を通して引き抜かれる。上述したように、顎部34,36が該顎部34,36の拡張位置にあれば、針安全装置28は、主ボディ12に対し軸方向に移動しないように固定される、即ちウィングハウジング10内に留まる。
【0052】
しかし、針24の先端部56が針安全装置28内へと移動する、即ち第1の顎部34の傾斜端部42を越えて移動すると、テンションリング44およびリンク46が復元力を与えているので、第1の顎部34は、図3に示されているように、該第1の顎部34の自由状態へと戻る即ち収縮する。
【0053】
第1の顎部34が該第1の顎部34の自由状態にあるときには、ロック突出部54は、リセス部52から解放されており、第1の頭部38のロック肩部50は、ロック突出部54と係合しない。結果として、針安全装置28は、主ボディ12に対して軸方向に移動することができる。つまり、図2に示されているように、針安全装置28をウィングハウジング10から引き抜くことができる。
【0054】
図3Aおよび図7に示されているように、針24の外周面に形成された拡大部26の位置は、針先端部56が第2の顎部36の自由端を越えたときに、拡大部26が針安全装置28の基部30と接触するように選択される。
【0055】
拡大部26の領域における針24の最大外側寸法が、針24の主外周プロフィール即ち外周に適合した基部30の穴の寸法よりも大きいので、針24を、針安全装置28から、図3に示されている位置を越えて引き出すことができない。つまり、拡大部26があるために、針24および針安全装置28の通常の使用中、即ち針24および/または針安全装置28に外部からの過剰な力が与えられない場合には、針安全装置28は、針24をスライドさせることができない。
【0056】
針先端部56が針安全装置28内に受けられているときには、針先端部56は、第1の顎部34の傾斜端部42によって覆われている。このとき、テンションリング44によって、針先端部56が針安全装置28から横方向へ逸れることが防止される。したがって、針先端部56は、針安全装置28によって安全に保護される。
【0057】
図8および図9を参照すると、針24の拡大部26は、針24の内周プロフィールが拡大部26を形成することにより影響を受けないように、即ちこの内周プロフィールが実質的に変化しないように形成される。したがって、針24が静脈を貫通するときに、拡大部26は、針24を通過する血液の流れに悪影響を及ぼすことがない。
【0058】
拡大部26を、例えば、付加的な材料を使用するか、もしくは使用しないで、肉盛り溶接プロセスやレーザー溶接プロセスなどの溶接プロセスを用いて、針24の局所的な領域を集中的に加熱することによって、こぶとして形成することができる(図8)。
【0059】
代替的に、拡大部26を、例えば、接着剤、樹脂もしくは金属材料などの付加的な材料58を針24の外周面に分配することによって形成することもできる。付加的な材料58は、この付加的な材料58を分配する前に針24の外周面に形成されたリセス部60に配置される。しかし、リセス部60を形成するかは任意に選択することができる。
【0060】
図7および図9には、1つのみの拡大部26が示されているが、複数の拡大部が針24の外周面にあってもよいことに留意されたい。
【符号の説明】
【0061】
10・・・ウィングハウジング
12・・・主ボディ
14・・・末端部
16・・・基端部
17・・・カテーテル
18・・・ポート
20・・・ウィング
22・・・チャンバ
24・・・針
26・・・拡大部
28・・・針安全装置
30・・・基部
34・・・第1の顎部
36・・・第2の顎部
38・・・頭部
40・・・頭部
42・・・傾斜端部
44・・・テンションリング
46・・・リンク
48・・・環状突出部
49・・・溝
50・・・ロック肩部
52・・・リセス部
54・・・ロック突出部
56・・・針先端部
58・・・付加的な材料
60・・・リセス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針(24)を受けるために軸方向に貫通して延びた穴を有した基部(30)と、
前記基部(30)から概ね軸方向に延び、かつ各々がその自由端領域に頭部(38,40)を有する2つの対向した顎部(34,36)であって、前記頭部(38,40)の少なくとも一方が、医療装置のハウジング(10)内に針安全装置(28)を固定するためのロック肩部(50)を形成する、2つの対向した顎部(34,36)と、
を備えた針安全装置(28)において、
弾性エレメント(44)を備え、該弾性エレメント(44)は、前記基部(30)と前記頭部(38,40)との間の領域において前記顎部(34,36)を取り囲んでおり、前記弾性エレメント(44)および前記顎部(34,36)は、前記穴に受けられた前記針(24)が前記針安全装置(28)を完全に貫通して延びるようにするために、前記顎部(34,36)が前記弾性エレメント(44)の復元力に対抗して拡張することができるように構成されていることを特徴とする医療装置の針安全装置(28)。
【請求項2】
前記弾性エレメント(44)は、前記顎部(34,36)の軸方向の実質的な部分を覆うことを特徴とする請求項1に記載の医療装置の針安全装置(28)。
【請求項3】
前記弾性エレメント(44)の軸方向の寸法は、前記顎部(34,36)の長さの約5分の1から3分の2または4分の3までの範囲にあり、好ましくは、前記顎部(34,36)の長さの約3分の1であることを特徴とする請求項1または2に記載の医療装置の針安全装置(28)。
【請求項4】
前記弾性エレメント(44)は、弾性特性を備えた材料もしくは弾性材料で形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の医療装置の針安全装置(28)。
【請求項5】
前記弾性エレメント(44)は、前記顎部(34,36)を完全に取り囲むテンションリング(44)および/または前記顎部(34,36)の一部のみを取り囲むクランプやブラケットを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の医療装置の針安全装置(28)。
【請求項6】
前記顎部(34,36)は、前記基部(30)と前記頭部(38,40)との間の領域において少なくとも1つのリンク(46)によって互いに接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の医療装置の針安全装置(28)。
【請求項7】
前記リンク(46)は、前記弾性エレメント(44)の領域に配置されることを特徴とする請求項6に記載の医療装置の針安全装置(28)。
【請求項8】
前記リンク(46)は、前記顎部(34,36)の一方の側のみに設けられることを特徴とする請求項6または7に記載の医療装置の針安全装置(28)。
【請求項9】
第1のリンクおよび第2のリンクが、前記顎部(34,36)の両側に設けられることを特徴とする請求項6または7に記載の医療装置の針安全装置(28)。
【請求項10】
前記の各リンク(46)は、前記顎部(34,36)がこのリンク(46)の復元力に対抗して拡張することができるように、ばねのような特性を備えて形成されることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の医療装置の針安全装置(28)。
【請求項11】
前記の各リンク(46)は、湾曲した形状、例えば、「S」または「Z」のような形状、もしくは実質的に直線の形状であることを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の医療装置の針安全装置(28)。
【請求項12】
前記基部(30)および前記顎部(34,36)は一体に形成され、好ましくは該顎部(34,36)を接続するリンク(46)も一体に形成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の医療装置の針安全装置(28)。
【請求項13】
前記基部、前記顎部および/または該顎部(34,36)を接続するリンク(46)の各々は、異なる材料もしくは材料の組み合わせからなることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の医療装置の針安全装置(28)。
【請求項14】
少なくとも1つの顎部(34)は、該顎部(34)の自由端に傾斜端部(42)を備え、前記傾斜端部(42)は、他方の顎部(36)へ向かって軸方向に対して概ね垂直な方向へと延びることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の医療装置の針安全装置(28)。
【請求項15】
前記傾斜端部(42)の長さは、前記針(24)が前記針安全装置(28)を完全に貫通して延びるときに、前記傾斜端部(42)が前記針(24)に支持され、これにより、前記傾斜端部(42)を備えた前記顎部(34)の前記頭部(38)に位置した前記肩部(50)が、前記ハウジング(10)内に前記針安全装置(28)を固定するように前記医療装置のハウジング(10)と噛み合う程度に前記顎部(34,36)が互いに離間するように選択されることを特徴とする請求項14に記載の針安全装置(28)。
【請求項16】
特に、医療装置、例えば、静脈内カテーテル器具の針(24)であって、内周プロフィール、主外周プロフィールおよび針先端部(56)を有し、さらに、該針先端部(56)の領域に拡大部(26)を備え、該拡大部(26)は、前記主外周プロフィールを少なくとも一方向に増加することによって形成され、前記内周プロフィールは、実質的に変化しないことを特徴とする医療装置の針(24)。
【請求項17】
前記拡大部(26)は、付加的な材料を使用するか、もしくは使用しないで、例えば、レーザー溶接プロセスなどの溶接プロセスを用いて、前記針(24)の局所的な領域を集中的に加熱することによって形成されることを特徴とする請求項16に記載の医療装置の針(24)。
【請求項18】
前記拡大部(26)は、前記針(24)の外周面に付加的な材料(58)を分配することによって形成されることを特徴とする請求項16または17に記載の医療装置の針(24)。
【請求項19】
前記付加的な材料(58)は、プラスチック材料、接着剤、樹脂および金属材料の少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項18に記載の医療装置の針(24)。
【請求項20】
請求項16〜19のいずれかに記載の針(24)と、
針先端部(56)を保護するために前記針(24)にスライド可能に配置される特に請求項1〜14のいずれかに記載の針安全装置(28)と、
を備え、
前記針安全装置(28)は、前記針(24)を受けるために貫通して延びる穴を有した基部(30)を備え、前記穴は、前記針(24)の主外周プロフィールに適合していることを特徴とする静脈内カテーテル器具。
【請求項21】
前記針安全装置(28)と噛み合うための好ましい環状ロック突出部(54)が、前記静脈内カテーテル器具のカテーテルハブの内周面に形成されることを特徴とする請求項20に記載の静脈内カテーテル器具。
【請求項22】
前記環状ロック突出部(54)は、丸い縁部を備えた実質的に矩形のプロフィール、もしくはガウス曲線または半分の正弦曲線とされた丸いプロフィールであることを特徴とする請求項21に記載の静脈内カテーテル器具。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−10023(P2013−10023A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−228680(P2012−228680)
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【分割の表示】特願2010−516606(P2010−516606)の分割
【原出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(508093573)ポリー メディキュア リミテッド (3)
【Fターム(参考)】