説明

釣り用リールのリール本体、釣り用リール及び釣り用リールのリール本体製造方法

【課題】釣り用リールのリール本体において、軸受装着部を高精度に形成できるようにする。
【解決手段】第1軸受装着部70及び第2軸受装着部80を第2側カバー6bに固定した後に、第1軸受装着部70の第1内側部材72の第1内周面72aと、第2軸受装着部80の第2内側部材82の第3内周面82a及び第4内周面82bとを、切削加工することによって、第1軸受装着部70及び第2軸受装着部80を高精度に形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り用リールのリール本体、釣り用リール及び釣り用リールのリール本体製造方法、特に、開口を有する本体部材を備えた釣り用リールのリール本体、釣り用リール及び釣り用リールのリール本体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
釣竿に装着されて釣り糸の巻き取り及び繰り出しを行う釣り用リールには、主にスピニングリールと、両軸受リールとがある。この種の釣り用リールは、釣竿に装着されるリール本体と、リール本体に回転自在に支持されるハンドル軸と、ハンドル軸の先端に固定されるハンドル組立体とを有している。このようなハンドル軸は、金属製のリール本体を機械加工することによって形成された開口の内周に装着された軸受によって、リール本体に対して回転自在に支持されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3066990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の釣り用リールでは、ハンドル軸の回転を伝達するドライブギアやピニオンギアのモジュールを小さくすると、ギア間ピッチを高精度にする必要が生じる。ギア間ピッチを高精度にするには、ドライブギアが固定されるハンドル軸やピニオンギアが装着されるスプール軸を高精度に配置するために、ハンドル軸やスプール軸を支持する軸受が装着されるリール本体の軸受装着部の内周を高精度に形成する必要が生じる。しかし、従来の構成では、金属製の軸受装着部を機械加工した後に、リール本体の開口に軸受装着部を装着固定しているので、軸受装着部を高精度に配置するのが非常に困難である。
【0005】
本発明の課題は、釣り用リールのリール本体において、軸受装着部を高精度に形成できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1に係る釣り用リールのリール本体は、釣り用リールのリール本体であって、本体部材と、第1軸受装着部とを備えている。本体部材は、第1開口を有する金属製の部材である。第1軸受装着部は、第1軸受を装着可能な第1内周面を有し、第1開口に固定され、固定後に第1内周面が機械加工された金属製の部材である。
【0007】
このリール本体では、第1軸受装着部を第1開口に固定した後に、金属製の第1軸受装着部を機械加工することによって第1内周面が形成されているので、第1軸受装着部を高精度に形成できる。
【0008】
発明2に係るリール本体は、発明1のリール本体において、本体部材の少なくとも外側面は、第1開口を形成した後に形成された耐食性被膜で覆われている。この場合、本体部材の外側面から第1開口にわたって耐食性被膜が形成されているので、耐食性を向上できる。また、第1開口の精度が耐食性被膜形成過程や耐食性被膜そのものによって低下しても、機械加工によって精度を確保できる。
【0009】
発明3に係るリール本体は、発明1又は2のリール本体において、第1軸受装着部は、第1外側部材と、第1内側部材とを有している。第1外側部材は、第1開口に固定されている。第1内側部材は、第1内周面を有し、第1外側部材の内周に固定されている。この場合、第1外側部材と機械加工される第1内側部材とを異なる材料で形成でき、耐食性や加工性を考慮して材料を選定することができる。
【0010】
発明4に係るリール本体は、発明3のリール本体において、第1外側部材は、表面に耐食性被膜が形成された軽金属製である。第1内側部材は、ステンレス合金製である。この場合、第1外側部材を、たとえばアルミニウム合金等の軽金属により形成し、表面に陽極酸化被膜等の耐食性被膜を形成することによって、第1外側部材の耐食性を高く維持しながら、第1内側部材を、ステンレス合金により形成することで、機械加工した後も第1内側部材の耐食性を高く維持できる。
【0011】
発明5に係るリール本体は、発明1から4のいずれかのリール本体において、本体部材は、第1開口と離反して配置された第2開口を有している。第2軸受を装着可能な第2内周面を有し、第2開口に固定され、固定後に第1内周面が機械加工されたときと同じ加工姿勢で第2内周面が機械加工された金属製の第2軸受装着部をさらに備えている。この場合、第2軸受装着部を第2開口に固定した後に、金属製の第2軸受装着部を機械加工することによって第2内周面が形成されているので、第2軸受装着部を高精度に形成できる。さらに、第1軸受装着部の第1内周面と第2軸受装着部の第2内周面とを1回の加工で容易に形成できるとともに、第1軸受装着部と第2軸受装着部との間の距離を高精度に形成できる。
【0012】
発明6に係るリール本体は、発明5のリール本体において、第2軸受装着部は、第2内周面と同芯に配置された第3軸受を装着可能な第3内周面を有している。
【0013】
発明7に係るリール本体は、発明5又は6のリール本体において、第2軸受装着部は、第2外側部材と、第2内側部材とを有している。第2外側部材は、第2開口に固定されている。第2内側部材は、第2内周面を有し、第2外側部材の内周に固定されている。この場合、第2外側部材と第2内側部材とを異なる材料で形成でき、耐食性や加工性を考慮して材料を選定することができる。
【0014】
発明8に係るリール本体は、発明5から7のいずれかのリール本体において、第2外側部材は、表面に耐食性被膜が形成された軽金属製である。第2内側部材は、ステンレス合金製である。この場合、第2外側部材を、たとえばアルミニウム合金等の軽金属により形成し、表面に陽極酸化被膜等の耐食性被膜を形成することによって、第2外側部材の耐食性を高く維持しながら、第2内側部材を、ステンレス合金により形成することで、機械加工した後も第2内側部材の耐食性を高く維持できる。
【0015】
発明9に係る釣り用リールは、発明1から8のいずれかに記載のリール本体を備えている。この場合、発明1から8のいずれかのリール本体を有することによって、高精度に形成された釣り用リールを得ることができる。
【0016】
発明10に係る釣り用リールのリール本体製造方法は、開口を有する本体部材を備えた釣り用リールのリール本体を製造する方法であって、本体部材形成工程と、軸受装着部固定工程と、軸受装着部加工工程とを含んでいる。本体部材形成工程は、型成形した素材に開口と加工基準とを本体部材に形成する工程である。軸受装着部固定工程は、内周面に軸受を装着可能な軸受装着部を本体部材の開口に固定する工程である。軸受装着部加工工程は、本体部材に固定された軸受装着部の内周面を加工基準を基準として機械加工する工程である。この場合、軸受装着部固定工程によって、軸受装着部を開口に固定した後に、軸受装着部固定工程によって、金属製の軸受装着部を機械加工することによって内周面が形成されているので、軸受装着部を高精度に形成できる。
【0017】
発明11に係るリール本体製造方法は、発明10のリール本体製造方法において、本体部材形成工程により得られた本体部材に加工基準を除いて耐食性被膜を形成する耐食性被膜形成工程をさらに含んでいる。軸受装着部固定工程は、耐食性被膜が形成された本体部材の開口に軸受装着部を固定する工程である。この場合、耐食性被膜形成工程によって、本体部材の外側面から開口にわたって耐食性被膜が形成されているので、耐食性を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、釣り用リールのリール本体において、第1軸受装着部を第1開口に固定した後に、金属製の第1軸受装着部を機械加工することによって第1内周面が形成されているので、第1軸受装着部を高精度に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を採用した両軸受リールの斜視図。
【図2】前記両軸受リールの断面図。
【図3】前記両軸受リールの第2側カバーの拡大断面図。
【図4】前記第2側カバーを裏面から見た側面図。
【図5】前記第2側カバーの製造工程を示す図。
【図6】他の実施形態の図4に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態による釣り用リールは、図1に示すように、ベイトキャスト用のロープロフィール型の両軸受リールである。この両軸受リールは、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用ハンドル2と、ハンドル2のリール本体1側に配置されたドラグ調整用のスタードラグ3とを備えている。
【0021】
リール本体1は、図2に示すように、フレーム5と、フレーム5の両側方に装着されたアルミニウム合金製の第1側カバー6a及び第2側カバー6b(本体部材の一例)と、第1軸受装着部70及び第2軸受装着部80とを有している。第1側カバー6a及び第2側カバー6bの表面には、耐食性被膜であるクロムめっき層が形成されている。第2側カバー6bの側部には、図2に示すように、第1軸受装着部70及び第2軸受装着部80がかしめ固定される第1開口6c及び第2開口6dが互いに間隔をあけて形成されている。また、リール本体1は、図1に示すように、前方を覆う前カバー7と、上部を覆うサムレスト8とを有している。リール本体1の内部には糸巻き用のスプール12が回転自在かつ着脱自在に装着されている。
【0022】
フレーム5は、所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された1対の第1側板5a、第2側板5bと、第1側板5aと第2側板5bと連結する図示しない複数の連結部とを有している。
【0023】
フレーム5内には、図2に示すように、回転軸が釣竿と直交する方向に配置されたスプール12と、スプール12内に均一に釣り糸を巻くためのレベルワインド機構15と、サミングを行う場合の親指の当てとなるクラッチレバー17とが配置されている。このスプール12は、第1側板5aの開口5dを通過可能である。また、フレーム5と第2側カバー6bとの間には、ハンドル2からの回転力をスプール12及びレベルワインド機構15に伝えるためのギア機構18と、クラッチ機構13と、クラッチレバー17の操作に応じてクラッチ機構13の係脱及び制御を行うためのクラッチ係脱機構19と、ドラグ機構21と、スプール12の回転時の抵抗力を調整するためのキャスティングコントロール機構22とが配置されている。また、フレーム5と第1側カバー6aとの間には、キャスティング時のバックラッシュを抑えるための遠心ブレーキ機構23が配置されている。
【0024】
スプール12は、図3に拡大して示すように、マグネシウム合金を切削加工することによって形成されており、外周に釣り糸が巻き付けられる筒状の糸巻胴部12bと、糸巻胴部12bの両端にそれぞれ径方向外方に突出して設けられたフランジ部12aと、糸巻胴部12bの内周部に形成され内周にスプール軸16に固定されるボス部12cとを有している。糸巻胴部12b、フランジ部12a及びボス部12cは、マグネシウム合金の部材によって一体成形されている。スプール12は、スプール軸16にたとえばセレーション結合により回転不能に固定されている。この固定方法はセレーション結合等の凹凸による固定法に限定されず、接着やインサート成形等、種々の結合方法を用いることができる。
【0025】
スプール軸16は、図2に示すように、ステンレス合金を切削加工することによって棒状に形成されており、第2側板5bを貫通して第2側カバー6bの外方に延びている。その延びた一端は、第2側カバー6bに形成された第2開口6dに装着された第2軸受装着部80に取り付けられた第2軸受24bにより回転自在に支持されている。またスプール軸16の他端は、遠心ブレーキ機構23内で第4軸受24dにより回転自在に支持されている。これらの第2軸受24b及び第4軸受24dはボールベアリングである。スプール軸16の大径部分16aの右端は、第2側板5bの貫通部分に配置されており、そこにはクラッチ機構13を構成する係合ピン16bが固定されている。係合ピン16bは、直径に沿って大径部分16aを貫通しており、その両端が径方向に突出している。
【0026】
ギア機構18は、図2に示すように、ハンドル軸30と、ハンドル軸30に固定されたドライブギア31と、ドライブギア31に噛み合う筒状のピニオンギア32とを有している。このギア機構18のハンドル軸30の上下位置は、サムレスト8の高さを低くするために、従来の位置より低い。このため、ギア機構18を収納する第2側板5b及び第2側カバー6bの下部は、第1側板5a及び第1側カバー6aの下部より下方に位置している。また、ハンドル軸30は、図2に示すように、第2側カバー6bに形成された第1開口6cに装着された第1軸受装着部70に取り付けられた第1軸受24aにより第2側カバー6bに回転自在に支持されている。第1軸受24aは、図2に示すように、ボールベアリングである。
【0027】
第1軸受装着部70は、図2から図4に示すように、第2側カバー6bに固定された筒状の部材である。第1軸受装着部70は、図3及び図4に拡大して示すように、第2側カバー6bの第1開口6cにかしめ固定される筒状の第1外側部材71と、第1外側部材71の内周に螺合・接着固定される筒状の第1内側部材72とを有している。第1内側部材72の内周には、図4に示すように、第1外側部材71を第1開口6cにかしめ固定した後に行われる切削加工によって形成され、第1軸受24a(図2参照)が装着される第1内周面72aを有している。第1内側部材72の外周には、図4に示すように、第1外側部材71の内周に形成された第1雌ねじ部71aに螺合可能な第1雄ねじ部72bが形成されている。第1外側部材71の内周には、図4に示すように、第1内側部材72の第1雄ねじ部72bが螺合する第1雌ねじ部71aと、第1雌ねじ部71aの図4左側に設けられ内周にワンウェイクラッチ25(図2参照)が装着される第2内周面71bとが形成されている。
【0028】
第1内側部材72は、図4右側から第1外側部材71の内周に装着され、第1雌ねじ部71aに第1雄ねじ部72bを螺合させている。第1雌ねじ部71a及び第1雄ねじ部72bは、図4左側から切削加工する際に第1内側部材72が緩まないようにするために、左ねじになっている。第1雌ねじ部71a及び第1雄ねじ部72bは、さらに、接着されている。また、第1内側部材72の図4右側端面には、図示しないすり割り部が形成されており、このすり割り部には、第1内側部材72を螺合するための工具が係止される。また、第1外側部材71の外周には、第1外側部材71を第1開口6cに固定するときの当たりとなる第1フランジ部71cが形成されている。
【0029】
第1外側部材71は、表面に耐食性被膜である陽極酸化被膜が形成されたアルミニウム合金製である。また、第1内側部材72は、耐食性材料であるステンレス合金製であって、表面に耐食性被膜である陽極酸化被膜を形成する必要がない。
【0030】
第2軸受装着部80は、図2から図4に示すように、第2側カバー6bに固定された筒状の部材である。第2軸受装着部80は、図3及び図4に拡大して示すように、第2側カバー6bの第2開口6dにかしめ固定される筒状の第2外側部材81と、第2外側部材81の内周に螺合・接着固定される筒状の第2内側部材82とを有している。第2外側部材81は、図4に示すように、第2内側部材82の外周に形成された第2雄ねじ部82cが螺合可能な第2雌ねじ部81aと、外周に形成され第2外側部材81を第2側カバー6bの第2開口6dに固定するときの当たりとなる第2フランジ部81bとを有している。第2内側部材82は、第2軸受24b(図2参照)が装着される第3内周面82a及び第3軸受24c(図2参照)が装着される第4内周面82bを有している。第3内周面82a及び第4内周面82bは、第1内側部材72の第1内周面72aが切削される際に同じ加工姿勢で切削される。
【0031】
第2内側部材82は、図4左側から第2外側部材81の内周に装着され、第2雌ねじ部81aに第2雄ねじ部82cを螺合させている。第2雌ねじ部81a及び第2雄ねじ部82cは、第1雌ねじ部71a及び第1雄ねじ部72bと同様に左ねじであり、図4左側から切削加工する際に第2内側部材82が緩まないようになっている。第2雌ねじ部81a及び第2雄ねじ部82cは、さらに、接着されている。また、第2内側部材82の図4左側端面には、図3に示すように、すり割り部82dが形成されており、このすり割り部82dには、第2内側部材82を螺合するための工具が係止される。
【0032】
第2外側部材81は、表面に耐食性被膜である陽極酸化被膜が形成されたアルミニウム合金製である。第2内側部材82は、耐食性材料であるステンレス合金製であって、表面に耐食性被膜である陽極酸化被膜を形成する必要がない。
【0033】
このような第1軸受装着部70及び第2軸受装着部80を第2側カバー6bに取り付ける工程を図5に示す。
【0034】
まず、ステップS1において、アルミニウム合金をダイカスト成形して、第1開口6c及び第2開口6dを有する第2側カバー6bを形成する。
【0035】
次に、ステップS2において、第2側カバー6bの第1開口6c、第2開口6d、加工基準用の2箇所の位置決め穴6e(図3参照)、フレーム5に組み付けるときに位置決めするための2つの位置決めピン6g(図3、図4参照)が圧入される2箇所の凹部6f(図3参照)等を成形によるバリ取り加工を兼ねて切削加工する。
【0036】
次に、ステップS3において、位置決め穴6eにねじを挿入することによって、位置決め穴6eをマスキングする。
【0037】
次に、ステップS4において、クロムめっき処理によって、第2側カバー6bの表面にクロムめっき層を形成する。
【0038】
次に、ステップS5において、表面に陽極酸化被膜が形成されたアルミニウム合金製の第1外側部材71及び第2外側部材81を、第2側カバー6bの第1開口6c及び第2開口6dに、それぞれかしめ固定する。
【0039】
次に、ステップS6において、第1外側部材71及び第2外側部材81の内周に、それぞれ第1内側部材72及び第2内側部材82を螺合・接着固定して、第1軸受装着部70及び第2軸受装着部80を形成する。
【0040】
最後に、ステップS7において、第1軸受装着部70の第1内側部材72の第1内周面72aと、第2軸受装着部80の第2内側部材82の第3内周面82a及び第4内周面82bとを、位置決め穴6eを基準として切削加工する。
【0041】
なお、位置決め穴6eは、加工後、たとえば、組立時にシリコングリスを充填し、防錆処理されたねじ等で閉塞する。また、凹部6fには、位置決めピン6gを圧入し、位置決めピン6gは、フレーム5に組み付ける際の位置決めとして利用する。
【0042】
ピニオンギア32は、図2に示すように、第2側板5bの外方から内方に延び、中心にスプール軸16が間隔をおいて貫通する筒状部材であり、スプール軸16に軸方向に移動自在に装着されている。また、ピニオンギア32の図2左端部は、第5軸受24eによりフレーム5の第2側板5bに、ピニオンギア32の図2右端部は、第3軸受24cによって第2側カバー6の第2軸受装着部80に回転自在かつ軸方向移動自在に支持されている。第3軸受24c及び第5軸受24eは、ボールベアリングである。
【0043】
ピニオンギア32は、図2右端側外周部に形成されドライブギア31に噛合する歯部32aと、他端側に形成された噛み合い部32bと、歯部32aと噛み合い部32bとの間に形成されたくびれ部32cとを有している。噛み合い部32bは、ピニオンギア32の端面に直径に沿って形成された凹溝からなり、そこにスプール軸16を貫通して固定された係合ピン16bが係止される。ここではピニオンギア32が外方に移動してその噛み合い部32bとスプール軸16の係合ピン16bとが離脱すると、ハンドル軸30からの回転力はスプール12に伝達されない。この噛み合い部32bと係合ピン16bとによりクラッチ機構13が構成される。
【0044】
クラッチレバー17は、図2に示すように、1対の第1側板5a及び第2側板5b間の後部でスプール12後方に配置されている。
【0045】
クラッチ係脱機構19は、図2に示すように、クラッチヨーク40を有している。クラッチヨーク40は、スプール軸16の外周側に配置されており、2本のピン41(一方のみ図示)によってスプール軸16の軸心と平行に移動可能に支持されている。またクラッチヨーク40はその中央部にピニオンギア32のくびれ部32cに係合する係合部40aを有している。またクラッチヨーク40を支持する各ピン41の外周で、クラッチヨーク40と第2側カバー6bとの間にはスプリング42が配置されており、クラッチヨーク40はスプリング42によって常にクラッチオン側に付勢されている。
【0046】
このような構成で、通常状態では、ピニオンギア32は内方のクラッチ係合位置に位置しており、その噛み合い部32bとスプール軸16の係合ピン16bとが係合してクラッチオン状態となっている。一方、クラッチヨーク40によってピニオンギア32が外方に移動した場合には、噛み合い部32bと係合ピン16bとの係合が外れクラッチオフ状態となる。
【0047】
ドラグ機構21は、ドライブギア31に押圧される摩擦プレート45と、スタードラグ3の回転操作によって摩擦プレート45をドライブギア31に所定の力で押圧するための押圧プレート46とを有している。
【0048】
キャスティングコントロール機構22は、スプール軸16の両端を挟むように配置された複数の摩擦プレート51と、摩擦プレート51によるスプール軸16の挟持力を調節するための制動キャップ52とを有している。左側の摩擦プレート51は、ブレーキケース65内に装着されている。
【0049】
遠心ブレーキ機構23は、図2に示すように、ブレーキケース65に固定された制動部材68と、制動部材68の内周側に同芯に配置されスプール軸16に固定された回転部材66と、回転部材66に径方向に移動自在に装着された6つの移動部材67とを備えている。
【0050】
このような構成の両軸受リールでは、第1軸受装着部70及び第2軸受装着部80を第2側カバー6bに固定した後に、第1軸受装着部70の第1内側部材72の第1内周面72aと、第2軸受装着部80の第2内側部材82の第3内周面82a及び第4内周面82bを、切削加工することによって、第1軸受装着部70及び第2軸受装着部80を高精度に形成できる。
【0051】
〔他の実施形態〕
(a) 本発明に係る釣り用部品は、両軸受リールの第2側カバー6bを例にあげて説明したが、これに限定されるものではなく、電動リールやカウンタリールのリール本体や、スピニングリールのリール本体にも本発明を適用できる。
【0052】
(b) 前記実施形態では、第1側カバー6a、第2側カバー6b、第1外側部材71及び第2外側部材81は、アルミニウム合金製であり、第1内側部材72及び第2内側部材82は、ステンレス合金製であったが、これらの金属材料に限定されるものではなく、第2側カバー6b、第1外側部材71及び第2外側部材81はマグネシウム合金等の軽金属製であってもよい。
【0053】
(c) 前記実施形態では、第2側カバー6bの表面には、耐食性被膜であるクロムめっき層が形成され、第1外側部材71及び第2外側部材81の表面には、耐食性被膜である陽極酸化被膜が形成されていたが、耐食性被膜はこれらに限定されるものではなく、他のめっき層や塗装膜であってもよい。
【0054】
(d) 前記実施形態では、第2内側部材82は、第2軸受24bが装着される第3内周面82aと、第3軸受24cが装着される第4内周面82bとの2つの内周面を有していたが、1つの軸受が装着される1つの内周面を有していてもよい。また、第2軸受24bが装着される第3内周面82aを有する内側部材と、第3軸受24cが装着される第4内周面82bを有する内側部材との2つの内側部材を有していてもよい。
【0055】
(e) 前記実施形態では、第2側カバー6bに第1外側部材71及び第2外側部材81を固定後に、第1外側部材71及び第2外側部材81に第1内側部材72及び第2内側部材82を装着固定していたが、第1外側部材71及び第2外側部材81に第1内側部材72及び第2内側部材82を装着固定した後に、第2側カバー6bに第1外側部材71及び第2外側部材81を固定してもよい。
【0056】
(f) 前記実施形態では、第1外側部材71及び第2外側部材81を第2側カバー6bの第1開口6c及び第2開口6dにかしめ固定していたが、固定方法はこれに限定されるものではなく、接着、溶接、インサート成型等の固定方法でもよい。
【0057】
(g) 前記実施形態では、第1内側部材72及び第2内側部材82を第1外側部材71及び第2外側部材81の内周に別体で装着固定していたが、第1内側部材72及び第2内側部材82をそれぞれ第1外側部材71及び第2外側部材81と一体成形し、図6に示すように、第1軸受装着部70及び第2軸受装着部80として一体の部材であってもよい。なお、この場合には、第1軸受装着部70及び第2軸受装着部80自体をステンレス合金等の耐食性の高い金属材料で形成することが望ましい。
【符号の説明】
【0058】
1 リール本体
2 ハンドル
3 スタードラグ
5 フレーム
5a 第1側板
5b 第2側板
5d 開口
6a 第1側カバー
6b 第2側カバー
6c 第1開口
6d 第2開口
6e 位置決め穴
6f 凹部
6g 位置決めピン
7 前カバー
8 サムレスト
12 スプール
12a フランジ部
12b 糸巻胴部
12c ボス部
13 クラッチ機構
15 レベルワインド機構
16 スプール軸
16a 大径部分
16b 係合ピン
17 クラッチレバー
18 ギア機構
19 クラッチ係脱機構
21 ドラグ機構
22 キャスティングコントロール機構
23 遠心ブレーキ機構
24a 第1軸受
24b 第2軸受
24c 第3軸受
24d 第4軸受
24e 第5軸受
25 ワンウェイクラッチ
30 ハンドル軸
31 ドライブギア
32 ピニオンギア
32a 歯部
32b 噛み合い部
32c くびれ部
40 クラッチヨーク
40a 係合部
41 ピン
42 スプリング
45 摩擦プレート
46 押圧プレート
51 摩擦プレート
52 制動キャップ
65 ブレーキケース
66 回転部材
67 移動部材
70 第1軸受装着部
71 第1外側部材
71a 第1雌ねじ部
71b 第2内周面
71c 第1フランジ部
72 第1内側部材
72a 第1内周面
72b 第1雄ねじ部
80 第2軸受装着部
81 第2外側部材
81a 第2雌ねじ部
81b 第2フランジ部
82 第2内側部材
82a 第3内周面
82b 第4内周面
82c 第2雄ねじ部
82d すり割り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り用リールのリール本体であって、
第1開口を有する金属製の本体部材と、
第1軸受を装着可能な第1内周面を有し、前記第1開口に固定され、固定後に前記第1内周面が機械加工された金属製の第1軸受装着部と、
を備えた釣り用リールのリール本体。
【請求項2】
前記本体部材の少なくとも外側面は、前記第1開口を形成した後に形成された耐食性被膜で覆われている、請求項1に記載の釣り用リールのリール本体。
【請求項3】
前記第1軸受装着部は、
前記第1開口に固定された第1外側部材と、
前記第1内周面を有し、前記第1外側部材の内周に固定された第1内側部材とを有する、請求項1又は2に記載の釣り用リールのリール本体。
【請求項4】
前記第1外側部材は、表面に耐食性被膜が形成された軽金属製であり、前記第1内側部材は、ステンレス合金製である、請求項3に記載の釣り用リールのリール本体。
【請求項5】
前記本体部材は、前記第1開口と離反して配置された第2開口を有し、
第2軸受を装着可能な第2内周面を有し、前記第2開口に固定され、固定後に前記第1内周面が機械加工されたときと同じ加工姿勢で前記第2内周面が機械加工された金属製の第2軸受装着部をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の釣り用リールのリール本体。
【請求項6】
前記第2軸受装着部は、前記第2内周面と同芯に配置された第3軸受を装着可能な第3内周面を有する、請求項5に記載の釣り用リールのリール本体。
【請求項7】
前記第2軸受装着部は、
前記第2開口に固定される第2外側部材と、
前記第2内周面を有し、前記第2外側部材の内周に固定された第2内側部材とを有する、請求項5又は6に記載の釣り用リールのリール本体。
【請求項8】
前記第2外側部材は、表面に耐食性被膜が形成された軽金属製であり、前記第2内側部材は、ステンレス合金製である、請求項5から7のいずれか1項に記載の釣り用リールのリール本体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の前記リール本体を備えた釣り用リール。
【請求項10】
開口を有する本体部材を備えた釣り用リールのリール本体を製造する方法であって、
型成形した素材に前記開口と加工基準とを前記本体部材に形成する本体部材形成工程と、
内周面に軸受を装着可能な軸受装着部を前記本体部材の前記開口に固定する軸受装着部固定工程と、
前記本体部材に固定された前記軸受装着部の前記内周面を前記加工基準を基準として機械加工する軸受装着部加工工程とを含む釣り用リールのリール本体製造方法。
【請求項11】
前記本体部材形成工程により得られた前記本体部材に前記加工基準を除いて耐食性被膜を形成する耐食性被膜形成工程をさらに含み、
前記軸受装着部固定工程は、前記耐食性被膜が形成された前記本体部材の開口に前記軸受装着部を固定する、請求項10に記載の釣り用リールのリール本体製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−99264(P2013−99264A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244151(P2011−244151)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】