説明

釣り用履き物

【課題】防水性であり、ソール6がアッパー4から離脱しない釣り用履き物2の提供。
【解決手段】釣り用履き物2は、アッパー4、ソール6、フェルト8、面ファスナー10、内材12、リベット14及びインソール15を備えている。アッパー4は、本体16、芯板20及びスペーサー22を備えている。ソール6は、基部28及び起立部30を備えている。ソール6は、接着剤により、アッパー4に接合されている。内材12は、アッパー4に収容されている。内材12は、袋状である。内材12は、透湿防水性材料からなる。リベット14は、内フランジ40、軸42及び外フランジ44を備えている。軸42は、芯板20、スペーサー22及びソール6を貫通している。リベット14により、アッパー4からのソール6の離脱が阻止されている。リベット14は、内材12を貫通していない。内材12には、リベット14に起因する孔が形成されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り人に着用される履き物に関する。
【背景技術】
【0002】
釣り用履き物は、アッパー及びソールを備えている。ソールは、アッパーの底に接合されている。接合には、接着剤が用いられる。典型的な接着剤は、ポリウレタンを基材とする。
【0003】
海釣りでは、波が履き物にかかり、この履き物の内部に海水が浸入することがある。雨天時の釣りでは、雨水が履き物の内部に浸入することがある。水の浸入は、釣り人に不快感を与える。
【0004】
株式会社シマノ発行の「2005 Fishing Tackle Catalogue」の第197ページには、アッパーにゴアテックス(登録商標)のブーティが収容された釣り用履き物が開示されている。このブーティは防水性なので、このブーティにより水の浸入が阻止される。このブーティは透湿性なので、この履き物では蒸れが生じにくい。製造の都合上、ブーティがアッパーに収容された後、アッパーがソールと接合される。
【非特許文献1】株式会社シマノ発行の「2005 Fishing Tackle Catalogue」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接着剤は、経時変化によって劣化する。劣化により、ソールがアッパーから剥離してしまうことがある。海釣りでは、履き物が海水に濡れることが多い。この海水に含まれる塩分により、接着剤の劣化が促進される。特にポリウレタンを基材とする接着剤が海水に曝されると、加水分解によって激しい劣化が生じる。
【0006】
履き物は、繰り返しの使用によりソールの摩耗又はアッパーの損傷が進行し、やがて寿命を迎える。通常の使用頻度であれば、寿命までにソールが剥離することはない。しかし、使用頻度が極めて少なく、かつ海水に濡れたまま放置されることが多い場合、摩耗又は損傷が進行していないにもかかわらず、ソールがアッパーから剥離することがある。釣り場においてソールがアッパーから離脱すると、釣り人は釣りを継続することができず、場所の移動にも苦労を伴う。
【0007】
アッパーとソールとが縫合されれば、ソールの離脱は生じない。しかし、縫合によってブーティに孔が生じる。この孔を通じ、水が履き物の内部に浸入してしまう。
【0008】
本発明の目的は、防水性であり、かつソールがアッパーから離脱しない釣り用履き物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る釣り用履き物は、
アッパー、
このアッパーに収容されており、防水性材料からなり、袋状である内材、
このアッパーの底に取り付けられたされたソール
及び
アッパーとソールとを貫通するリベット
を備える。
【0010】
アッパーが、このアッパーの底を形成する芯板を備えてもよい。リベットは、この芯板とソールとを貫通しうる。
【0011】
ソールが、基部と、この基部の周縁においてこの基部から起立する起立部とを備えてもよい。リベットは、この起立部とアッパーとを貫通しうる。好ましくは、リベットは中空である。
【0012】
本発明に係る釣り用履き物の製造方法は、
フランジと軸とを備えたリベットが、このフランジがアッパーの内面に接するように、このアッパーを通される工程、
このアッパーに、防水性材料からなり袋状である内材が収容される工程、
この軸がソールに通され、かつこのソールが接着剤によってアッパーと接合される工程
及び
この軸がかしめられて、外フランジが形成される工程
を含む。
【発明の効果】
【0013】
この釣り用履き物では、リベットにより、アッパーとソールとが堅固に接合される。この履き物では、ソールの離脱が生じない。この履き物では、内材の防水性が阻害されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用履き物2が示された正面図である。図2は、図1のII−II線に沿った拡大断面図である。図2には、この履き物2の一部が示されている。この履き物2は、アッパー4、ソール6、フェルト8、面ファスナー10、内材12、リベット14及びインソール15を備えている。
【0016】
アッパー4は、本体16、ベロ18、芯板20、スペーサー22及び紐24を備えている。本体16は、布製である。典型的には、本体16にメッシュ状の布が用いられる。本体16が、合成樹脂又はゴムからなってもよい。ベロ18は、本体16と同様の材料からなる。ベロ18が、スポンジを含んでもよい。芯板20は、紙素材からなる。芯板20は、アッパー4の底を形成する。図2に示されるように、本体16の下端は折り曲げられている。この折り曲げにより、縁部26が形成されている。縁部26は、芯板20の下側に位置している。スペーサー22は、芯板20の下面に貼り付けられている。スペーサー22は、左右の縁部26に挟まれている。スペーサー22は、布製である。
【0017】
ソール6は、ゴム又は合成樹脂を基材とする。典型的な基材は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)である。ソール6は、アッパー4の底に取り付けられている。この取付は、接着剤によって達成される。接着剤の基材ポリマーとしては、ポリウレタン、ポリクロロプレン及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合体が例示される。ポリウレタンが好ましい。
【0018】
ソール6は、基部28と、起立部30とを備えている。基部28と起立部30とは、一体的に成形されている。起立部30は、基部28の周縁においてこの基部28から起立している。図2に示されるように、起立部30は本体16の外面に接合されている。基部28の下面には、くぼみ32が形成されている。
【0019】
面ファスナー10は、フック面34とループ面36とを備えている。フック面34は、ソール6に接合されている。ループ面36は、フェルト8に接合されている。フック面34がフェルト8に接合され、ループ面36がソール6に接合されてもよい。典型的な面ファスナー10は、ベルクロ社のマジックテープ(登録商標)である。
【0020】
フェルト8は、面ファスナー10によってソール6と積層されている。フェルト8は、接地面38を有する。この接地面38は、地面と直接に接触する。フェルト8は、釣り場でのスリップを抑制する。地面との擦動によって接地面38が摩耗した場合、フェルト8がソール6から剥がされる。そして、新たなフェルト8が面ファスナー10によって取り付けられる。
【0021】
内材12は、アッパー4に収容されている。内材12は、アッパー4の内面に沿っている。内材12は、袋状である。内材12は、ヒトの足を覆う形状を呈する。内材12は、透湿防水性材料からなる。この内材12は、液体である水の分子を透過させない。この内材12は、気体である水の分子を透過させうる。典型的な透湿防水性材料は、ゴアテックス(登録商標)である。
【0022】
リベット14は、金属材料からなる。リベット14は、中空である。リベット14は、内フランジ40、軸42及び外フランジ44を備えている。内フランジ40は、芯板20の上面に沿っている。軸42は、芯板20、スペーサー22及びソール6を貫通している。外フランジ44は、くぼみ32に位置している。リベット14により、アッパー4とソール6とが堅固に固定されている。リベット14は、内材12を貫通していない。図2には、幅方向に沿って存在する一対のリベット14が示されている。複数のリベット14が、前後方向に並べられてもよい。
【0023】
この履き物2では、海水に曝されることにより、アッパー4とソール6との間の接着剤が劣化することがある。劣化により、アッパー4からソール6が剥離する。この履き物2では、リベット14によってソール6がアッパー4に固定されているので、剥離が生じてもソール6がアッパー4から離脱しない。釣り場で剥離が生じても、釣り人は釣りを継続することができ、歩行によって場所を移動することもできる。
【0024】
前述の通り、リベット14は内材12を貫通していない。従って、内材12にはリベット14に起因する孔が生じていない。この内材12により、履き物2の内部への水の浸入が阻止される。この履き物2は、防水性に優れる。釣り人は、この履き物2を快適に利用することができる。
【0025】
内材12は透湿性なので、発汗によって生じた水蒸気は、内材12を通過して履き物2の外部へと排気されうる。釣り人は、蒸れを感じない。釣り人は、この履き物2を快適に利用することができる。
【0026】
図3から6は、図2の履き物2の製造方法が説明されるための断面図である。図3には、アッパー4及びリベット14が示されている。リベット14は、内フランジ40と軸42とからなる。この段階では、リベット14に外フランジ44(図2参照)は形成されていない。軸42は、芯板20及びスペーサー22を貫通している。内フランジ40は、芯板20の上面に接している。好ましくは、接着剤により、内フランジ40が芯板20に接合される。
【0027】
このアッパー4に、内材12が収容される。図4には、内材12が示されている。内材12は、アッパー4の内面に沿っている。内面により、内フランジ40が覆われている。リベット14がアッパー4を通された後にこのアッパー4に内材12が収容されるので、内材12には、リベット14に起因する孔が生じない。
【0028】
このアッパー4に、接着剤によってソール6が貼り付けられる。図5には、ソール6が示されている。貼り付けのとき、リベット14の軸42は、ソール6に予め形成された孔46を通される。平面視において、孔46の位置はくぼみ32の位置と一致している。図5に示されるように、軸42の下端はくぼみ32に至っている。
【0029】
図6に示されるように、軸42の下端がかしめられ、外フランジ44が形成される。外フランジ44は、くぼみ32に位置する。アッパー4及びソール6が、内フランジ40及び外フランジ44に挟まれることにより、ソール6がアッパー4に固定される。履き物2の製造の都合上、ソール6がアッパー4に取り付けられる前に、アッパー4に内材12が収容される必要がある。本発明に係る製法方法では、アッパー4に内材12が収容される前に、予めリベット14がアッパー4を貫通するので、内材12に孔が生じない。この製造方法により、防水性に優れ、しかもアッパー4からのソール6の離脱が生じにくい履き物2が得られる。
【0030】
図7は、本発明の他の実施形態に係る釣り用履き物48の一部が示された断面図である。この履き物48は、アッパー50、ソール52、フェルト8、面ファスナー10、内材12、リベット14及びインソール15を備えている。フェルト8、面ファスナー10、内材12、リベット14及びインソール15の構成は、図1から6に示された履き物2のそれらと同等である。
【0031】
アッパー50は、本体54、芯板56及びスペーサー58を備えている。本体54は、側壁60と縁部62とを備えている。側壁60には、孔64が形成されている。図2に示された履き物2とは異なり、芯板56及びスペーサー58には、孔は形成されていない。ソール52は、基部66と起立部68とを備えている。起立部68には、孔70が形成されている。
【0032】
リベット14は、中空である。リベット14は、内フランジ40、軸42及び外フランジ44を備えている。内フランジ40は、側壁60の内面に沿っている。軸42は、側壁60及び起立部68を貫通している。外フランジ44は、側壁60の外面に沿っている。リベット14により、アッパー50とソール52とが堅固に固定されている。リベット14は、内材12を貫通していない。図7には、幅方向に沿って存在する一対のリベット14が示されている。複数のリベット14が、前後方向に並べられてもよい。
【0033】
この履き物48の製造では、内フランジ40及び軸42を備えたリベット14が、内から外に向かって、側壁60を通される。内フランジ40は、接着剤により、側壁60の内面に接合される。次に、内材12がアッパー50に収容される。次に、軸42がかしめられ、外フランジ44が形成される。この履き物48の製造では、アッパー50に内材12が収容される前に、予めリベット14がアッパー50を貫通するので、内材12に孔が生じない。この製造方法により、防水性に優れ、しかもアッパー50からのソール52の離脱が生じにくい靴が得られる。
【0034】
前述の通り、リベット14は中空である。履き物48の内部で生じた水蒸気は、内材12を通過し、さらにリベット14を通じて外部へと排出される。この履き物48は、通気性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る履き物は、種々の釣り場において利用されうる。本発明に係る履き物には、ブーツ及びウェーダーが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用履き物が示された正面図である。
【図2】図2は、図1のII−II線に沿った拡大断面図である。
【図3】図3は、図2の履き物の製造方法が説明されるための断面図である。
【図4】図4は、図2の履き物の製造方法が説明されるための断面図である。
【図5】図5は、図2の履き物の製造方法が説明されるための断面図である。
【図6】図6は図2の履き物の製造方法が説明されるための断面図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施形態に係る釣り用履き物の一部が示された断面図である。
【符号の説明】
【0037】
2、48・・・釣り用履き物
4、50・・・アッパー
6、52・・・ソール
8・・・フェルト
10・・・面ファスナー
12・・・内材
14・・・リベット
16、54・・・本体
20、56・・・芯板
28、66・・・基部
30、68・・・起立部
32・・・くぼみ
40・・・内フランジ
42・・・軸
44・・・外フランジ
60・・・側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパー、
このアッパーに収容されており、防水性材料からなり、袋状である内材、
このアッパーの底に取り付けられたされたソール
及び
アッパーとソールとを貫通するリベット
を備えた釣り用履き物。
【請求項2】
上記アッパーが、このアッパーの底を形成する芯板を備えており、
上記リベットが、この芯板とソールとを貫通している請求項1に記載の履き物。
【請求項3】
上記ソールが、基部と、この基部の周縁においてこの基部から起立する起立部とを備えており、
上記リベットが、この起立部とアッパーとを貫通している請求項1に記載の履き物。
【請求項4】
上記リベットが中空である請求項3に記載の履き物。
【請求項5】
フランジと軸とを備えたリベットが、このフランジがアッパーの内面に接するように、このアッパーを通される工程、
このアッパーに、防水性材料からなり袋状である内材が収容される工程、
この軸がソールに通され、かつこのソールが接着剤によってアッパーと接合される工程
及び
この軸がかしめられて、外フランジが形成される工程
を含む釣り用履き物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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