説明

釣り用履き物

【課題】屈曲性が向上した釣り用履き物1の提供。
【解決手段】この釣り用履き物1は、アッパー2と、ミッドソールと3、このミッドソール3の下方に配置されたアウトソール5と、上記ミッドソール3とアウトソール5との対向する面それぞれに装着された、相互に着脱可能な面ファスナー4とを備えており、上記ミッドソール3に装着された面ファスナー4に、履き物1の幅方向に延びる切れ目18が形成されており、上記ミッドソール3の周縁にリブ12が形成されており、このリブ12はミッドソール3の下端より下方に垂下しており、このリブ12の、ボールガース線Bに対応する部分に切れ目が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り人に着用されるブーツ、シューズ等の釣り用履き物に関する。
【背景技術】
【0002】
磯釣りでは、釣り人は岩に登ったり、好ポイントを求めて歩いたり、跳躍したりの動作を行う。これらの動作において、釣り人の靴は、岩に衝突し、岩と擦れ合う。衝突や擦動により、靴の底部やアッパーは傷つく。損傷した底部やアッパーは、釣り人の足を十分には保護しない。損傷が激しい靴は、もはや使用に耐えられない。
【0003】
従来、かかる損傷を抑制するために、磯釣り等のための靴の底部やアッパーは、強度に優れる材料から構成されている。特開2001−204506公報には、アッパーを覆うフード状の補強材を備えた釣り用履き物が開示されている。この補強材は、硬質の合成樹脂からなる。この補強材により、アッパーの損傷が防止される。
【0004】
しかし、強度に優れる材料は、概して柔軟性に劣る。柔軟性に劣る底部やアッパーは、足の屈曲を妨げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−204506公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公報に開示された靴では、補強材が屈曲性を阻害する。この靴は、履き心地に劣る。本発明の目的は、高強度の底部やアッパーを有する場合であっても、屈曲性に優れた釣り用履き物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る釣り用履き物は、
アッパーと、
ミッドソールと、
このミッドソールの下方に配置されたアウトソールと、
上記ミッドソールとアウトソールとの対向する面それぞれに装着された、相互に着脱可能な面ファスナーとを備えており、
上記ミッドソールに装着された面ファスナーに、履き物の幅方向に延びる切除部が形成されている。
【0008】
かかる履き物は、面ファスナーに、幅方向に延びる切除部が形成されているため、この切除部を挟んだ前後部分の上下方向の相互の屈曲性が向上する。
【0009】
上記履き物において、好ましくは、そのミッドソールの周縁にリブが形成されており、このリブはミッドソールの下端より下方に垂下しており、このリブの、ボールガースに対応する部分が切除されている。
【0010】
好ましくは、上記切除部が、ボールガースに対応する部位に形成されている。
【0011】
本発明に係る他の釣り用履き物は、
アッパーと、
ミッドソールと、
このミッドソールの下方に配置されたアウトソールとを備えており、
上記ミッドソールの周縁にリブが形成されており、
このリブはミッドソールの下端より下方に垂下しており、
このリブの、ボールガースに対応する部分が切除されている。
【0012】
かかる履き物は、一般的に剛性を向上せしめるリブが、ボールガースに対応する部分において切除されているため、ボールガース対応部位を挟んだ前後部分の上下方向の屈曲性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る釣り用履き物では、その前後部分が互いに上下方向に屈曲しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用履き物のアウトサイドを示す側面図である。
【図2】図2は、図1の履き物のインサイドの一部を示す側面図である。
【図3】図3は、図1の履き物のソール部を示す断面図である。
【図4】図4は、図1の履き物におけるボールガース対応部位を示す底面図である。
【図5】図5は、図1の履き物のソール部を示す底面図である。
【図6】図6は、図1の履き物の面ファスナのフック面とループ面とが離間しつつある状態を示す断面図であり、図3のVI部に相当する図である。
【図7】図7(a)は、本発明の他の実施形態に係る釣り用履き物のミッドソールの下面を示す底面図であり、図7(b)は、図7(a)のミッドソールの下面からアウトソールが離間しつつある状態を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用履き物1のアウトサイドを示す側面図であり、図2はインサイドの一部を示す側面図であり、図3はそのソール部の断面図である。この履き物1は、アッパー2、ミッドソール3、面ファスナー4、アウトソール5及びインソール6を備えている。上記面ファスナー4は、ミッドソール3とアウトソール5とを着脱可能に接合する。
【0017】
アッパー2は、本体7、ベロ8、防砂用のフード9、ガード10及びベルト(紐でもよい)11を備えている。本体7は布製である。典型的には、本体7にメッシュ状の布が用いられる。本体7は合成樹脂又はゴムから形成されてもよい。ベロ8は本体7と同様の材料からなる。ベロ8がスポンジを含んでもよい。
【0018】
ミッドソール3はゴム又は合成樹脂を基材とする。典型的な基材は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)である。ミッドソール3は、アッパー2の底に取り付けられている。この取付は、接着剤によって達成される。接着剤の基材ポリマーとしては、ポリウレタン、ポリクロロプレン及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合体が例示される。ポリウレタンが好ましい。ミッドソール3は、アッパー2と一体的に連続して形成されてもよい。ミッドソール3の外縁には、リブ12が一体的に形成されている。このリブ12は、ミッドソール3の下面より下方に垂下している。
【0019】
面ファスナー4はフック面13とループ面14とを備えている。フック面13は、接着剤によってミッドソール3に接着されている。ループ面14は、接着剤によってアウトソール5に接着されている。フック面13がアウトソール5に接着され、ループ面14がミッドソール3に接着されてもよい。接着剤による接着に加えて、糸による縫い付けがなされてもよい。典型的な面ファスナー4は、ベルクロ社のマジックテープ(登録商標)である。上記リブ12は、面ファスナー4よりも下方にまで延在している。
【0020】
このリブ12がミッドソール3の全周にわたって形成されていれば、履き物1の屈曲性を阻害するおそれがある。しかし、図1及び図2に示されるように、このリブ12は、複数箇所において切除部を有している。すなわち、リブ12には切れ目15、16が形成されている。この切れ目15、16の部分では、ミッドソール3の外周面が露出している。この切れ目15、16の部分は、その他のリブ12部に較べて曲げ剛性が低い。この切れ目15、16の存在により、リブ12の屈曲性に対する抵抗が大幅に抑制される。本実施形態では、アウトサイドに3個の切れ目15が形成され、インサイドに1個の切れ目16が形成されている。しかし、本発明ではかかる個数に限定されない。アウトサイド及びインサイドともに、少なくとも後述するボールガース線B上に切れ目15、16が存在すればよい。
【0021】
アウトサイドの切れ目15同士の間にある、短いリブ12aを含むミッドソール3の外周面部分は、装飾効果を向上させるために、前方に傾斜した形状にされている。本発明では、かかるリブ12形状に限定されない。切れ目15、16におけるリブ12の端縁の形状は、鉛直線、円弧、波状、角度を持って交差する複数の直線等であってもよい。本実施形態では、リブ12のみならず、ミッドソール3の外方へ張り出した外周面の上下方向全体にわたる切れ目15、16が形成されているが、かかる構成には限定されない。ミッドソール3の下面から下方に垂下しているリブ12にのみ切れ目(切り欠き)が形成されてもよい。
【0022】
図4に示されるように、リブ12の切れ目は、靴底におけるボールガース(ballgirth)に対応する線(ボールガース線Bという)上に位置するものを含む。本実施形態では、インサイドの切れ目16が上記ボールガース線B上に位置しており、アウトサイドの3個の切れ目15のうちの真ん中の切れ目15がボールガース線B上に位置している。「ボールガース」とは、人の足Fの親指Pの付け根と小指Cの付け根とを結ぶ、最も大きい幅の部分である。足のサイズや形状により、靴底におけるボールガースに対応する線の位置には多少のバラツキがある。実際に当該履き物1を着用した人の足のボールガースと、この履き物1のリブ12の切れ目15、16とがわずかに位置ズレすることはある。しかし、そのような場合であっても、この切れ目15、16の存在により、当該履き物1の上下方向の屈曲性は大幅に向上している。
【0023】
アウトソール5は、面ファスナー4によってミッドソール3に着脱可能に接合される。アウトソール5は交換可能である。図3に示されるように、アウトソール5の周縁の上部は、リブ12に囲まれている。従って、面ファスナー4の部分もリブ12に囲まれている。このリブ12により、アウトソール5のミッドソール3からの意図せぬ離脱が防止される。
【0024】
アウトソール5は接地面17を有する。地面との擦動によって接地面17が摩耗した場合、アウトソール5がミッドソール3から剥がされる。そして、新たなアウトソール5が面ファスナー4によって接合される。図示されていないが、接地面17は凹凸模様を備えている。アウトソール5は、ゴム組成物が架橋されることで得られる。ゴム組成物の基材ゴムとしては、ブチルゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム及びアクリロニトリル−ブタジエンゴムが例示される。アウトソール5はフェルトから形成されてもよい。
【0025】
図3、図6及び図7に示されるように、上記面ファスナー4のフック面13は、基材となるシート13aの面に、多数の微細なフック片13bが突設されたものである。上記ループ面14は、基材となるシート14aの面に、多数の微細なループ14bが突設されたものである。基材シート13a、14aは、アウトソール5の安定した接合の観点から、硬質であるのが好ましい。多数のフック片13bと多数のループ14bとが係合し合って、フック面13とループ面14と接合する。
【0026】
図5及び図6に示されるように、ミッドソール3の下面に接着されたフック面13には切除部が形成されている。具体的には、フック面13に上記ボールガース線Bに沿って切れ目18が形成されている。切れ目18は、フック面13の幅全体にわたっている。フック面13は、この切れ目18によって前後に分離されている。図6ではインソール6の図示が省略されている。フック面13の前部13F及び後部13Rが、それぞれミッドソールの下面に接着され且つ縫い付けられている。縫い目Sは、前部13Fの外周縁のわずかに内側を、外周縁に沿ってループ状に延びている。縫い目Sは、後部13Rの外周縁のわずかに内側を、外周縁に沿ってループ状に延びている。縫い目Sは、前部13F及び後部13Rのそれぞれにおいてループ状にされることには限定されない。フック面13全体の外周縁のわずかに内側をループ状に延設されてもよい。
【0027】
本実施形態では、フック面13の硬質の基材シート13aが、ボールガース線Bにおいて前後に分離されている。靴底が屈曲されない平坦な状態で、上記分離部分に隙間が形成されていてもよく、形成されていなくてもよい。隙間が形成される場合は、この隙間からミッドソール3の下面が露出する。しかし、このフック面13には、アウトソール5が面ファスナー4によって接合されるので、隙間は隠れる。靴底におけるこの分離部分においては、曲げ剛性が低下する。その結果、この履き物1の屈曲性がさらに向上する。
【0028】
前述のとおり、本実施形態ではフック面13が切れ目18によって前後に分離されているが、本発明はかかる構成に限定されない。例えば、フック面13に、切れ目18に代えて、ボールガース線Bに沿った溝が形成されてもよい。溝も切除部の一種である。溝は、フック面13の基材シート13aにおける、フック片13bが突設された面に形成される。溝の深さは、基材シート13aの厚さの40%以上が好ましい。基材シート13aに溝が形成された履き物の屈曲性は、フック面13が分離された履き物1の屈曲性より劣るが、従来の履き物の屈曲性より優れる。
【0029】
図示しないが、上記切れ目18又は溝が、フック面13の幅方向に沿って部分的に形成されてもよい。例えば、図7に示された後述する窓部22のように、上記切れ目18又は溝の各端部が、フック面13の外周縁からわずかに内側に位置していてもよい。また、これらの切れ目18又は溝は1本には限定されない。切れ目18又は溝は複数本形成されてもよい。
【0030】
インソール6は、板状のベース19と、このベース19の周縁においてこのベース19から起立する側壁20とを有している。ベース19は、ミッドソール3の上面に載置されている。インソール6は三次元形状を有する。このインソール6は、「カップインソール」と称されている。インソール6は平板状であってもよい。インソール6はポリマー発泡体である。この発泡体の典型的な基材ポリマーは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)である。メッシュ状のインソール6が用いられてもよい。
【0031】
図7には他の履き物21が示されている。この履き物21においては、フック面23に、ボールガース線Bに沿って開口部(窓部という)22が形成されている。この窓部22も切除部の一種である。この履き物21のフック面23以外の構成は、前述の履き物1(図1から図6)の構成と同一である。例えば、ミッドソール3の外周縁にはリブ12が形成されており、このリブ12には図1及び図2に示される切れ目15、16が形成されている。従って、その他の構成については詳細な説明は省略される。図7(b)では、インソール6の図示が省略されている。
【0032】
上記窓部22は長方形を呈している。窓部22の長辺がボールガース線Bに沿っている。窓部22の長辺は、フック面23のボールガース線B方向の幅寸法より小さい。窓部22の長辺方向の各端部は、フック面23の外周縁からわずかに内側に位置する。窓部22の短辺(幅)は6mm以上10mm以下の範囲で形成されている。しかし、本発明ではかかる寸法には限定されない。窓部22はフック面23を貫通している。窓部22からミッドソール3の下面が露出する。しかし、このフック面13には、アウトソール5が面ファスナー4によって接合されるので、窓部22は隠れる。
【0033】
このフック面23も、ミッドソール3の下面に接着され且つ縫い付けられている。縫い目Sは、ミッドソール3の窓部22より前部の外周縁及び窓部22のわずかに内側を、外周縁に沿ってループ状に延びている。縫い目Sは、ミッドソール3の窓部22より後部の外周縁及び窓部22のわずかに内側を、外周縁に沿ってループ状に延びている。靴底におけるこの窓部22においては、曲げ剛性が低下する。その結果、この履き物21の屈曲性がさらに向上する。
【0034】
上記窓部22はフック面23を貫通しているが、本発明ではかかる構成に限定されない。例えば、平面視が長方形の凹部として形成されてもよい。凹部の深さは、基材シート13aの厚さの40%以上が好ましい。また、窓部22又は凹部の形状は長方形には限定されない。例えば、長円形等であってもよい。
【0035】
以上の実施形態では、ミッドソール3の下面に接着された面ファスナー4のフック面13、23にのみ切れ目15、16、溝又は窓部22が形成されている。本発明はかかる構成には限定されない。フック面13がアウトソール5に接着され、ループ面14がミッドソール3の下面に接着された場合には、ループ面14に切れ目15、16、溝又は窓部22が形成される。また、ミッドソール3のフック面(又はループ面)に加えて、アウトソール5の上面に接着されたループ面(又はフック面)に、切れ目、溝又は窓部が形成されてもよい。
【0036】
以上の実施形態は、ベルトを有するシューズを例示している。しかし、本発明は、シューズに限定されず、ブーツ等にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る釣り用履き物は、種々の釣り場において利用されうる。本発明に係る釣り用履き物は、その屈曲性が良好であるため、特に、釣り人が岩に登ったり、歩いたり、跳躍したりすることの多い磯釣り等に便利である。
【符号の説明】
【0038】
1、21・・・履き物
2・・・アッパー
3・・・ミッドソール
4・・・面ファスナー
5・・・アウトソール
6・・・インソール
7・・・本体
8・・・ベロ
9・・・防砂フード
10・・・ガード
11・・・ベルト
12・・・リブ
13、23・・・フック面
14・・・ループ面
15・・・(アウトサイドの)切れ目
16・・・(インサイドの)切れ目
17・・・接地面
18・・・(フック面の)切れ目
19・・・ベース
20・・・側壁
22・・・窓部
B・・・ボールガース
F・・・足
S・・・縫い目


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーと、
ミッドソールと、
このミッドソールの下方に配置されたアウトソールと、
上記ミッドソールとアウトソールとの対向する面それぞれに装着された、相互に着脱可能な面ファスナーとを備えており、
上記ミッドソールに装着された面ファスナーに、履き物の幅方向に延びる切除部が形成されている釣り用履き物。
【請求項2】
上記ミッドソールの周縁にリブが形成されており、
このリブはミッドソールの下端より下方に垂下しており、
このリブの、ボールガースに対応する部分が切除されている請求項1に記載の釣り用履き物。
【請求項3】
上記切除部が、ボールガースに対応する部位に形成されている請求項1又は3に記載の釣り用履き物。
【請求項4】
アッパーと、
ミッドソールと、
このミッドソールの下方に配置されたアウトソールとを備えており、
上記ミッドソールの周縁にリブが形成されており、
このリブはミッドソールの下端より下方に垂下しており、
このリブの、ボールガースに対応する部分が切除されている釣り用履き物。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−52075(P2013−52075A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191427(P2011−191427)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】