説明

釣り糸用スプール、釣り糸用端糸止めリング、釣り糸用パッケージケース、およびこれらを含んでなる釣り糸物品ユニット

【課題】釣り糸を使い切った後の不要となったスプールやパッケージなどと分別することなく、一般家庭から廃棄される紙ゴミと同じように焼却処分することができる釣り糸用スプール、釣り糸用端糸止めリング、釣り糸用パッケージケース、およびこれらを含んでなる釣り糸物品ユニットを提供する。
【解決手段】釣り糸が巻き取られるための円筒部2、該円筒部2の両端に配置されたフランジ部3、該円筒部2の中心に設けられた軸孔部5および該円筒部2と該軸孔部5とを結ぶ複数本のリブ4を含んでなる釣り糸用スプールであって、円筒部2、フランジ部3、軸孔部5およびリブ4は、それぞれ熱可塑性樹脂20〜50重量%と紙および/またはパルプ50〜80重量%とを含む混合物から成型されてなり、該円筒部の外周からその中心部に向かって圧力を掛けた時のピーク応力が1〜30kNの範囲にあることを特徴とする釣り糸用スプールに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた加工性と十分な強度を持ち、釣り糸を使い切った後の不要となったスプールやパッケージなどと分別することなく、一般家庭から廃棄される紙ゴミと同じように焼却処分することができる釣り糸用スプール、釣り糸用端糸止めリング、釣り糸用パッケージケースおよびこれらを含んでなる釣り糸物品ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、釣り糸は使用する際の扱いやすさから、一般的に釣り糸用スプールに巻かれた状態で販売されている。
そして、この釣り糸用スプールの殆どは、強度を出しやすいこと、簡単に成型することができること等の理由から、プラスチックなどの合成樹脂から作られている。
【0003】
ところが、釣り糸を使い切った後では、この釣り糸用スプールを始めとして、釣り糸用端糸止めリングや釣り糸用パッケージケースはゴミとして扱われ、合成樹脂から作られたこれらを含んでなる釣り糸物品ユニットは、そのまま焼却炉などで燃焼させると燃焼温度が高いために焼却炉を損傷させるばかりか、発生する燃焼ガスにより環境汚染等の弊害を生じさせる恐れがあった。
【0004】
そのため、これら釣り糸物品ユニットは、廃棄する際にはプラスチックゴミとして分別して特殊な焼却炉で燃焼させるか、あるいは埋め立て処分をする必要があり、分別することなく一般家庭から出される紙ゴミなどと一緒に焼却処分ができることが望まれていた。
【0005】
この問題に対して、短円筒状の中心部とその中心部の両端に設けられた一対の鍔部とを有し、中心部および鍔部が紙から作られていることを特徴とする釣り糸用スプール(例えば、特許文献1参照)、釣り糸を巻き取るためのスプールであって、円筒状の本体と、本体の外周面に外嵌され、本体と共同して釣り糸巻き部を形成する一対の鍔部を備え、本体はその外周面の周方向に沿ってその外周面の外側に突出形成された複数の系止片を有し、系止片の少なくとも一部は、鍔部の釣り糸巻き取り部側の面に当接され、本体および鍔部が紙で構成されていることを特徴とするスプール(例えば、特許文献2参照)、短筒状の芯部とこの芯部の一部に設けられた鍔部とを有し、これら芯部および鍔部は紙を用いたプレスモールド成型により構成されていることを特徴とする釣り糸用スプール組み立て体(例えば、特許文献3参照)が既に知られている。
【0006】
しかし、これら従来の紙製スプールは、素材の特性上十分な強度が得られず、これら釣り糸用スプールに釣り糸を巻きつけるとスプールが変型するばかりか、変型することなく上手く巻きつけることができたとしても、釣り糸が収縮することにより変型が生じる等の問題があり、結果として商品価値が低くなるといった問題があった。
【0007】
また、プラスチックと紙の複合材料からなる糸巻き用ボビン(例えば、特許文献4参照)がすでに知られているが、この糸巻き用ボビンは収縮が極めて少ないミシン糸用の糸巻きボビンであるため、強度が十分ではなく、この糸巻き用ボビンに釣り糸を巻き付けた場合には、従来の紙スプールと同じようにボビンが変型するなどの不具合を生じていた。
【0008】
このように、従来の技術では、容易に焼却処分をすることができ、かつ釣り糸を巻き付けるのに適した釣り糸用スプール、および釣り糸用端糸止めリングや釣り糸用パッケージケースを伴う釣り糸物品ユニットの実現が強く望まれていた。
【0009】
【特許文献1】特開2001−299173号公報
【特許文献2】特開2002−171887号公報
【特許文献3】特開2002−369646号公報
【特許文献4】特開2002−96975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来技術における問題点を解決すべくなされたものである。
すなわち、本発明の目的は、優れた加工性と十分な強度を持ち、釣り糸を使い切った後の不要となったスプールやパッケージなどと分別することなく、一般家庭から廃棄される紙ゴミと同じように焼却処分することができる釣り糸用スプール、釣り糸用端糸止めリング、釣り糸用パッケージケースおよびこれらを含んでなる釣り糸物品ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、釣り糸が巻き取られるための円筒部、該円筒部の両端に配置されたフランジ部、該円筒部の中心に設けられた軸孔部および該円筒部と該軸孔部とを結ぶ複数本のリブを含んでなる釣り糸用スプールであって、円筒部、フランジ部、軸孔部およびリブは、それぞれ熱可塑性樹脂20〜50重量%と紙および/またはパルプ50〜80重量%とを含む混合物から成型されてなり、該円筒部の外周からその中心部に向かって圧力を掛けた時のピーク応力が1〜30kN、特に5〜20kNの範囲にあることを特徴とする釣り糸用スプールに関する。
【0012】
本発明はまた、釣り糸用スプールの円筒部に巻かれた釣り糸を外側から押圧保持すると共に、釣り糸の導出部として機能する切り欠き部を有するリング状の釣り糸用端糸止めリングであって、該釣り糸用端糸止めリングは、熱可塑性樹脂20〜50重量%と紙および/またはパルプ50〜80重量%とを含む混合物から成型されてなることを特徴とする釣り糸用端糸止めリングに関する。
【0013】
更に本発明は、釣り糸用スプールおよび釣り糸用端糸止めリングを内部に収容する釣り糸用パッケージケースであって、該釣り糸用パッケージケースは、熱可塑性樹脂20〜50重量%と紙および/またはパルプ50〜80重量%とを含む混合物から成型されてなることを特徴とする釣り糸用パッケージケースに関する。
【0014】
本発明はまた、上記の釣り糸用スプールと、釣り糸用端糸止めリングと、釣り糸用パッケージケースとからなることを特徴とする釣り糸物品ユニットに関する。
【0015】
本発明による、上記釣り糸用スプール、釣り糸用端糸止めリングおよび釣り糸用パッケージケースにおける熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ABS樹脂および生分解性樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の釣り糸用スプール、釣り糸用端糸止めリングおよび釣り糸用パッケージケースは、それぞれ優れた加工性と十分な強度を持ち、釣り糸を使い切った後の不要となったスプールを、リングやパッケージなどと分別することなく、ユニットのままで一般家庭から廃棄される紙ゴミと同じように焼却処分することができるため、その実用性は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の釣り糸用スプール、釣り糸用端糸止めリングおよび釣り糸用パッケージケースについて、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態の一例を示す図であって、(a)は釣り糸用スプール、(b)は釣り糸用端糸止めリング、(c)は釣り糸用パッケージケースの一例をそれぞれ示した斜視図である。
【0019】
図1(a)に示したように、本発明の釣り糸用スプール1は、釣り糸が巻き取られるための円筒部2、この円筒部2の両端に配置されたフランジ部3、前記円筒部2の中心に設けられた軸孔部5および前記円筒部2と軸孔部5とを結ぶ複数本(図面では4本)のリブ4とから構成されたものである。
また、図1(b)に示したように、本発明の釣り糸用端糸止めリング6は、釣り糸の導出部として機能する切り欠き部6aを有するリング状を呈しており、釣り糸用スプール1の円筒部2に巻かれた釣り糸を外側から押圧保持するものである。
さらに、図1(c)に示したように、本発明の釣り糸用パッケージケース7は、ケース状の容器であり、釣り糸用スプール1および釣り糸用端糸止めリング6を内部に収容するものである。
【0020】
これら釣り糸用スプール1の円筒部2、フランジ部3、軸孔部5およびリブ4と、釣り糸用端糸止めリング6と、釣り糸用パッケージケース7は、いずれも熱可塑性樹脂20〜50重量%と紙および/またはパルプ50〜80重量%とを含む混合物から成型されてなる。特に釣り糸用スプール1においては、円筒部2の外周からその中心部に向かって圧力を掛けた時のピーク応力が1〜30kN、好ましくは5〜20kNの範囲に制御されている。
【0021】
紙および/またはパルプの添加量が上記範囲を下回る場合、容器リサイクル法の素材分類により紙として認められなくなり、一般家庭から廃棄される紙ゴミと同じように焼却処分することができなくなる。逆に、紙またはパルプの添加量が上記範囲を上回る場合、射出成型などによって各物品を得るに際し成型が難しくなるばかりか、釣り糸用スプール用の成型物品として十分な強度が得られにくくなる。
【0022】
本発明で使用する紙またはパルプとしては、製紙工場で排出される古紙、各種紙製品の製造工程で発生する切れ端等の不要屑、古新聞などの回収屑、再生パルプ、間伐材から作成されたパルプなどを挙げることができる。
【0023】
また、本発明の釣り糸用スプール1においては、その円筒部2の外周から中心部に向かって圧力を掛けた時のピーク応力が、1〜30kNであることが必要であり、さらには5〜20kNであることが好ましい。
ピーク応力が上記範囲を下回ると、釣り糸を巻き付ける際または釣り糸を巻き付けた後の釣り糸の収縮により、釣り用スプールが変形しやすくなる。逆に、ピーク応力が上記範囲を上回ると、釣り糸用スプールの変型はなくなるが、釣り糸用スプールの構造上、円筒部およびフランジ部を厚くする必要があり、釣り糸用スプールを射出成型する際に原料の使用量が増えて製造コストが高くなるばかりか、重量が嵩んで輸送コストも高くなるなど、実用性に欠けた釣り糸用スプールとなる。
【0024】
釣り糸用スプール1の円筒部2およびフランジ部3を厚くすることなく、十分な強度を得るためには、図1に示すように、釣り糸が巻き取られる円筒部2の内側と軸孔部5とを結ぶ複数本のリブ4を設けることが好ましく、このリブ4の本数は3〜10本、特に4〜8本であることが好ましい。
【0025】
本発明において、リブ4の本数には特に制限はないが、リブ4の本数が上記範囲を下回る場合、釣り糸用スプール1の円筒部2の周囲から受ける応力が均一に分散されにくくなり、部分的に歪み変型が生じやすくなる傾向にある。逆に、リブの本数が上記範囲を上回る場合、構造が複雑になり成型性が劣るとともに原料の使用量も増えることから、製造コストがかかり易くなる。
【0026】
本発明は、釣り糸関連物品において、先行技術には存在しなかった特別な技術的特徴、即ち、各物品が、それぞれ熱可塑性樹脂20〜50重量%と紙および/またはパルプ50〜80重量%とを含む混合物から成型されてなるという単一の概念に基づく共通した技術的特徴を有する。
従って、本発明は、釣り糸用スプールのみならず、釣り糸用端糸止めリングおよび釣り糸用パッケージケース、並びに、釣り糸用スプールと、釣り糸用端糸止めリングと、釣り糸用パッケージケースとを含んでなる釣り糸物品ユニットにも関する。
【0027】
即ち、本発明の釣り糸用端糸止めリング6および釣り糸用パッケージケース7もまた、熱可塑性樹脂20〜50重量%と紙および/またはパルプ50〜80重量%とを含む混合物から成型されてなることを特徴とする。この特徴は、上述の釣り糸用スプール1と同じように、優れた加工性と十分な強度を持ち、釣り糸を使い切った後、不要となった場合に分別することなく、一般家庭から廃棄される紙ゴミと同じように焼却処分することができるために必要な条件である。
紙またはパルプの添加量が上記範囲を下回る場合は、容器リサイクル法の素材分類により紙として認められなくなり、一般家庭から廃棄される紙ゴミと同じように焼却処分することができなくなる。逆に、紙またはパルプの添加量が上記範囲を上回る場合は、釣り糸用端糸止めリング6および釣り糸用パッケージケース7を射出成型などによって得るに際し成型が難しくなるばかりか、釣り糸用端糸止めリング6および釣り糸用パッケージケース7として十分な強度が得られにくくなる。
【0028】
ここで、本発明の釣り糸用スプール1、釣り糸用端糸止めリング6および釣り糸用パッケージケース7に使用される熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ABS樹脂、および生分解性樹脂の中から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。二種以上の熱可塑性樹脂を使用する場合には、目的に応じて、各熱可塑性樹脂の使用比率を任意に設定し得る。
【0029】
特にポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクタム、デンプン系、ポリビニルアルコールなどの生分解性樹脂を使った場合は、焼却処分をすることができるとともに、万が一、釣り糸用スプール等を釣り場で落として回収不能となった場合も、自然環境中でバクテリアによって水と炭酸ガスに分解されることから望ましい。
【0030】
また、ポリオレフィン系樹脂を使った場合は、自然環境中で分解することはないが、低コストで釣り糸用スプール等を成型することができることから好ましく選択することができる。
【0031】
さらに、本発明の釣り糸用スプール1、釣り糸用端糸止めリング6および釣り糸用パッケージケース7の成型に用いる上記混合物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、耐熱剤、耐候剤、耐光剤、耐加水分解剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、平滑剤、ワックス類、シリコーンオイル、界面活性剤、染料、顔料など公知の添加剤成分を、必要に応じて任意に添加することもできる。
【0032】
本発明の釣り糸用スプール1の大きさ、形状は特に限定されず、使用目的や用途により、大口径スプール、薄型スプール、幅広スプール、高精度平行巻き用スプール、小型スプールなどを適宜選択することができる。また、形状についても射出成型で成型できる範囲であれば糸渡り用の切り欠き溝や糸止めなど設けることができる。
【0033】
以上のとおり、本発明の釣り糸用スプール、釣り糸用端糸止めリングおよび釣り糸用パッケージケースは、優れた加工性と十分な強度を持ち、釣り糸を使い切った後の不要となったスプールやパッケージなどと分別することなく、ユニットのままで一般家庭から廃棄される紙ゴミと同じように焼却処分することができるため、極めて実用性が高い。
さらに、本発明の釣り糸用スプール、釣り糸用端糸止めリングおよび釣り糸用パッケージケースを一組として使用した釣り糸物品ユニットは、全て一般家庭から廃棄される紙ゴミと同じように焼却処分することができるため、個々に分別して廃棄する必要がなくなり、実用性がより一層高くなる。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明の釣り糸用スプール、釣り糸用端糸止めリングおよび釣り糸用パッケージケースについて、実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
なお、実施例における釣り糸用スプール、釣り糸用端糸止めリングおよび釣り糸用パッケージケースの評価は、以下の方法に従って行った。
【0035】
[釣り糸用スプールのピーク応力]
釣り糸用スプールを23℃/湿度50%の環境中に24時間以上放置後、同環境中で(株)島津製作所製「オートグラフAG5000C」圧縮試験機に、図2に示すように、釣り糸用スプールの胴径に合わせた専用圧縮片8を取り付け、釣り糸用スプールをその円筒部が上部圧縮部11と下部圧縮部12とで挟み込みように設置した。
その後、圧縮試験機を作動させて、上部圧縮片9を圧縮方向Pに2mm/分の速度で動かして上記圧縮片9と下部圧縮片10の距離を狭めてゆき、上部圧縮部11と下部圧縮部12とで釣り糸用スプールの円筒部に力を加えた。そして、釣り用スプールの円筒部に掛かる応力を測定し、応力の最大値をピーク応力とした。ピーク応力が大きいほど強度の高い釣り用スプールであることを示す。
【0036】
[釣り糸用スプールの巻きテスト]
釣り糸用スプールに沸騰水収縮率20%のナイロンテグスを0.05cN/dtexの張力で巻き付け、釣り糸用スプールの変型の有無、および巻き付けてから1ヶ月後の釣り糸用スプールの変型の有無を目視で確認した。
【0037】
[廃棄物として焼却処理可否の判断]
容器リサイクル法の素材分類により、紙として認められるか否かについて○および×で判断した。なお、容器リサイクル法の素材分類によれば、紙またはパルプを50重量%以上含むものは紙として認められる。
【0038】
[実施例1]
ポリプロピレン樹脂49重量%と古紙51重量%との混合物(北越製紙(株)製 Eペレット)を使用して成型温度190℃で射出成型し、図1(a)と同様の形状を有しリブを6ヶ所有する釣り糸用スプールを作成した。
【0039】
[実施例2]
原料としてポリ乳酸樹脂49重量%と古紙51重量%との混合物(北越製紙(株)製 ELペレット(登録商標))を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、釣り糸用スプールを作成した。
【0040】
[実施例3]
リブを9ヶ所設けたこと以外は実施例1と同様にして、釣り糸用スプールを作成した。
【0041】
[実施例4]
ポリプロピレン樹脂35重量%と古紙65重量%との混合物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、釣り糸用スプールを作成した。
【0042】
[比較例1]
ポリスチレン樹脂(出光石油化学製 ザレック(登録商標))を使用して成型温度265℃で射出成型し、実施例1と同じ形状の釣り糸用スプールを作成した。
【0043】
[比較例2]
ポリプロピレン樹脂65重量%と古紙35重量%との混合物(ゴダイ社製 ソシオ樹脂)を使用して成型温度190℃で射出成型し、実施例1と同じ形状の釣り糸用スプールを作成した。
【0044】
[比較例3]
古紙のみを使用してプレスモールド成型により、実施例1と同じ形状の釣り糸用スプールを作成した。
【0045】
[比較例4]
特開2002−171887号公報の図面を参考に、厚さ1mmの厚紙を使用して、実施例1と同じ形状の釣り糸用スプールを作成した。
【0046】
[比較例5]
特開2002−171887号公報の図面を参考に、厚さ1mmのポリエチレンフィルムを使用して、実施例1と同じ形状の釣り糸用スプールを作成した。
以上、釣り糸用スプールの評価結果を表1に併せて記載する。
【0047】
【表1】

【0048】
表1の結果から明らかなように、本発明の釣り糸用スプール(実施例1〜4)は、いずれも十分な強度を持っているため、実際に釣り糸を巻き付けた場合も変型することがなく、また、釣り糸を使い切った後も紙として焼却処分することができた。特に上記実施例では古紙を使用したことから資源の節約に寄与することができるなどのメリットもあり、実用性の高い釣り糸用スプールであることが解る。
【0049】
一方、ポリスチレン樹脂を使用した従来の釣り糸用スプール(比較例1)は、十分な強度を持っているために、変型することはなかったが、ポリスチレン樹脂のみから作成されているため、そのまま紙と同じように焼却処分することができないという点で実用性に欠けたものであった。
【0050】
また、古紙を35重量%添加した釣り糸用スプール(比較例2)は、比較例1と同じように変型することはなかったが、古紙の添加量が50重量%以下であるため、容器リサイクル法の素材分類において紙として認められず、そのまま紙と同じように焼却処分することができないという点で実用性に欠けたものであった。
【0051】
さらに、古紙のみを使用し、プレスモールド成型で作成した釣り糸用スプール(比較例3)、特開2002−171887号公報の図面を参考に作成した釣り糸用スプール(比較例4)は、紙を原料としていることから、分別することなく紙と同じように焼却処分することができるが、十分な強度を持たないために、実際に釣り糸を巻き付けると変型し、実用性に欠けたものであった。
【0052】
さらにまた、特開平2002−171887号公報の図面を参考に作成した釣り糸用スプール(比較例5)は、そのまま紙と同じように焼却処分することができないばかりか、十分な強度を持たないため、実際に釣り糸を巻き付けると変型し、実用性に欠けるものであった。
【0053】
[実施例5]
実施例1と同じ原料を使用して成型温度190℃で射出成型し、図1(b)と同様の形状を有する釣り糸用端糸止めリングを作成した。
【0054】
[実施例6]
実施例2と同じ原料を使用したこと以外は実施例4と同じ条件で、図1(b)と同様の形状を有する釣り糸用端糸止めリングを作成した。
【0055】
[実施例7]
実施例1と同じ原料を使用して成型温度190℃で射出成型し、図1(c)と同様の形状を有する釣り糸用パッケージケースを作成した。
【0056】
[実施例8]
実施例2と同じ原料を使用したこと以外は実施例4と同じ条件で、図1(c)と同様の形状を有する釣り糸用パッケージケースを作成した。
【0057】
[比較例6]
比較例2と同じ原料を使用したこと以外は実施例4と同じ条件で、図1(b)と同様の形状を有する釣り糸用端糸止めリングを作成した。
【0058】
[比較例7]
比較例2と同じ原料を使用したこと以外は実施例4と同じ条件で、図1(c)と同様の形状を有する釣り糸用パッケージケースを作成した。
【0059】
実施例5〜8の釣り糸用端糸止めリングおよび釣り糸用パッケージケースはいずれも十分な強度を持ち、紙と同じように焼却処分することができたのに対して、比較例6および7の釣り糸用端糸止めリングおよび釣り糸用パッケージケースは、強度が十分にあるものの、紙と同じように焼却処分することができなかった。
【0060】
[実施例9]
実施例1の釣り糸用スプール、実施例4の釣り糸用端糸止めリング、および実施例6の釣り糸用パッケージケースを一組セットで使用し、釣り糸用スプールに釣り糸を巻いて、実際に使用した。
その結果、釣り糸用スプールは、釣り糸を使い切った後も変形しておらず、また釣り糸用スプール、釣り糸用端糸止めリングおよび釣り糸用パッケージケースの全てが紙と同じように焼却処分することができた。
【0061】
[比較例8]
比較例3の釣り糸用スプール、実施例4の釣り糸用端糸止めリング、および比較例7の釣り糸用パッケージケースを一組セットで使用し、釣り糸用スプールに釣り糸を巻いて、実際に使用した。
その結果、釣り糸用スプールは、十分な強度を持っていないために釣り糸を巻いた際に変形し、また、釣り糸用スプールおよび釣り糸用端糸止めリングは紙と同じように焼却処分することができるが、釣り糸用パッケージケースは焼却処分することができないため、釣り糸を使い切った後はそれぞれ分別して処分しなければならなかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明の釣り糸用スプール、釣り糸用端糸止めリングおよび釣り糸用パッケージケースは、優れた加工性と十分な強度を持ち、釣り糸を使い切った後の不要となったスプールやパッケージなどと分別することなく、ユニットのままで一般家庭から廃棄される紙ゴミと同じように焼却処分することができるため、極めて実用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例を示す図であって、(a)は釣り糸用スプール、(b)は釣り糸用端糸止めリング、(c)は釣り糸用パッケージケースの一例をそれぞれ示した斜視図である。
【図2】本発明の釣り糸用スプールのピーク応力を測定するための専用圧縮片を示した図である。
【符号の説明】
【0064】
1 釣り糸用スプール
2 円筒部
3 フランジ部
4 リブ
5 軸孔部
6 釣り糸用端糸止めリング
6a 切り欠き部
7 釣り糸用パッケージケース
8 専用圧縮片
9 上部圧縮片
10 下部圧縮片
11 上部圧縮部
12 下部圧縮部
P 圧縮方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り糸が巻き取られるための円筒部、該円筒部の両端に配置されたフランジ部、該円筒部の中心に設けられた軸孔部および該円筒部と該軸孔部とを結ぶ複数本のリブを含んでなる釣り糸用スプールであって、円筒部、フランジ部、軸孔部およびリブは、それぞれ熱可塑性樹脂20〜50重量%と紙および/またはパルプ50〜80重量%とを含む混合物から成型されてなり、該円筒部の外周からその中心部に向かって圧力を掛けた時のピーク応力が1〜30kNの範囲にあることを特徴とする釣り糸用スプール。
【請求項2】
前記ピーク応力が5〜20kNの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の釣り糸用スプール。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ABS樹脂および生分解性樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の釣り糸用スプール。
【請求項4】
釣り糸用スプールの円筒部に巻かれた釣り糸を外側から押圧保持すると共に、釣り糸の導出部として機能する切り欠き部を有するリング状の釣り糸用端糸止めリングであって、該釣り糸用端糸止めリングは、熱可塑性樹脂20〜50重量%と紙および/またはパルプ50〜80重量%とを含む混合物から成型されてなることを特徴とする釣り糸用端糸止めリング。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ABS樹脂および生分解性樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の釣り糸用端糸止めリング。
【請求項6】
釣り糸用スプールおよび釣り糸用端糸止めリングを内部に収容する釣り糸用パッケージケースであって、該釣り糸用パッケージケースは、熱可塑性樹脂20〜50重量%と紙および/またはパルプ50〜80重量%とを含む混合物から成型されてなることを特徴とする釣り糸用パッケージケース。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ABS樹脂および生分解性樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の釣り糸用パッケージケース。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の釣り糸用スプールと、請求項4または5に記載の釣り糸用端糸止めリングと、請求項6または7に記載の釣り糸用パッケージケースとを含んでなることを特徴とする釣り糸物品ユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−312710(P2007−312710A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147013(P2006−147013)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【出願人】(595089293)東レフィッシング株式会社 (1)
【出願人】(392013187)株式会社ヨネプラ (4)
【出願人】(593074857)北越パッケージ株式会社 (8)
【出願人】(000103688)オクイ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】