説明

釣用靴

【課題】岩場のような凹凸のある釣り場であっても、滑り難い釣用靴を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の釣用靴1は、靴本体の底面に靴底10を固定している。そして、靴底10は、複数のピン状突起12と、それぞれのピン状突起12と靴底の周縁10Eとの間に配置される複数の板状突起20とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に魚釣りをする際に使用される釣用靴に関し、詳細には、靴底の裏面に滑り止め部材を固定した釣用靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、渓流釣りや磯釣り等に用いられる釣用靴は、滑り難い靴底構造を備えており、例えば、特許文献1に見られるように、靴本体の靴底(アウターソール)に、突起やピンを固定したものが知られている。このような突起やピンを靴底に固定することで、岩場などの滑り易い部分を歩いても、滑り難くなり、釣り人は安心して釣りを行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−102402号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の釣用靴は、ピンが地面や岩場のような凹凸に食い込むことで、滑りを防止しているが、歩行時に靴が接地した後の横滑りや縦滑りに対しては、十分な滑り防止機能を発揮しないことがある。すなわち、靴が接地した後、釣り人の体重移動などによって足裏が周縁方向に移動しようとすることもあるが、ピンや突起だけでは、前記したような移動に伴う靴底の周縁を押し崩す方向の力が作用した際、その力を十分に受け止めることができず、結果として、滑りが生じてしまう。特に、岩場のような凹凸部分では、接地時にピンによってグリップが成されていても体重移動し易いことから、上記のような周縁を押し崩す方向の力が作用し易く、結果として滑りが生じてしまう。
【0005】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、岩場のような凹凸のある釣り場であっても、滑り難い釣用靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣用靴は、靴本体の底面に靴底を固定した構成において、前記靴底は、複数のピン状突起と、それぞれのピン状突起と靴底周縁との間に配置される複数の板状突起とを有することを特徴とする。
【0007】
上記した構成の釣用靴によれば、靴底に設けられた複数のピン状突起が、歩行する際に地面や岩場などをグリップして滑りが防止される。そして、複数のピン状突起の外側(ピン状突起と靴底周縁との間)には、板状突起が配設されているため、足場の悪い(滑り易い)場所を歩行した際に足裏が靴底周縁方向に滑っても、その滑りは、ピン状突起の外側にある板状突起の表面(線状の接地部)によって受け止めることができるため、より効果的に滑りを抑制することが可能となる。特に、釣り人が岩場のような傾斜した凹凸部分を歩行しても、靴底周縁方向への滑りが抑制されるため、安心して魚釣りや釣り場を移動することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、岩場のような凹凸のある釣り場であっても、滑り難い釣用靴が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る釣用靴の一実施形態を示す側面図。
【図2】図1に示す釣用靴の靴底を示す図であり、(a)は裏面図、(b)は側面図。
【図3】靴底のピン状突起と板状突起の部分を拡大して示す図。
【図4】靴底を示す図であり、ピン状突起と板状突起の作用を説明する概略図。
【図5】板状突起の構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は凹凸部に接地した状態を示す図。
【図6】(a)は、ピン状突起と板状突起部分を拡大して示す図、(b)は両突起部分の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る釣用靴の一実施形態について図1から図6を参照して具体的に説明する。
本実施形態の釣用靴1は、長靴タイプ(ブーツタイプ)に適用されており、釣り人の足部を覆う靴本体2と、靴本体2に対して接着、固定される靴底(ソール部)10とを備えて構成される。この場合、靴本体2と靴底10の固着方法や具体的な構造については特に限定されるものではなく、靴本体2の内部に中敷(インナーソール)やクッション材などが介在されていても良い。
【0011】
前記靴本体2は、例えば、ゴム等の素材で一体形成されており、その裏面(底面)2aに、略同じ形状に形成され、所定の肉厚を有する前記靴底10が接着等によって固定されている。なお、靴底10は、例えば、ゴム、ウレタン、EVA等の合成樹脂によって一体形成されている。
【0012】
前記靴底10の底面10aには、図2(a)に示すように、下方に向けて突出する複数のピン状突起12と、板状に形成された板状突起20が設けられている。この場合、ピン状突起12は、靴底10の底面の内側(中央側)に所定の間隔をおいて設けられており、板状突起20は、靴底10の底面の周縁側に設けられている。
具体的に、本実施形態のピン状突起12は、つま先側領域において足の裏面形状に沿うように、幅方向両サイドのそれぞれに長手方向に沿って所定間隔をおいて3箇所ずつ、つま先部分に1箇所、及び中央に2箇所の合計9箇所設けられている。また、踵側領域において幅方向両サイドのそれぞれに、長手方向に沿って所定間隔をおいて2箇所ずつ、合計4箇所設けられている。
【0013】
前記ピン状突起12及び板状突起20は、ステンレスなどの金属、強度の高いプラスチック等によって形成することが可能であり、靴底10を形成する際に、その構成材料に埋設されて靴底10と一体化される。この場合、ピン状突起12は、図3に示すように、拡大した際、その先端が平坦となるような円柱形状であっても良いし、先端が尖った形状に形成されていても良い。また、板状突起20に関しては、0.5〜5mm程度の肉厚を有し、その肉厚によって線状となる接地表面20aが形成されていれば良い。
【0014】
前記ピン状突起12は、靴底10の表面10aに突設されるだけでも良いが、滑り止めの効果を高めるように、図3に示すように、靴底10の表面にリング状の突起13を形成しておき、その中央位置に突設するように形成しておいても良い。この場合、ピン状突起12を囲繞するリング状の突起13は、多少の肉厚があり、その表面に滑り止め効果を高めるように、所定間隔おいて溝13aを形成しておくことが好ましい。
このようなピン状突起12の配置態様によれば、歩行した際に地面等に食い込み易くなり、かつその周辺領域において、リング状の突起13による表面や溝13aによって凹凸領域が生じるため、全体として滑り止め効果を高めることが可能となる。
また、ピン状突起の周囲には、リング状の突起13に加え、各種凹凸部を形成しても良い。本実施形態では、略三角形状の突起14、及び略矩形形状の突起15を隣接して配設しており、滑り止め効果を向上させている。なお、これらの突起13,14,15についての形状の配設箇所は任意であり、後述する保持部材10Bを形成する際に、一体的に形成することが可能である。
【0015】
前記板状突起20は、複数のピン状突起12と靴底10の周縁10Eとの間に配置されている。具体的には、靴底の周縁方向に滑った際、ピン状突起12による滑り止め作用が発揮できなくなっても、板状突起の部分で滑り止めが成されて、ピン状突起12及び板状突起20によって効果的に滑り難くするように、各板状突起20は、ピン状突起12に対応して、その外側に配設されている。この場合、中央領域に存在するピン状突起12に対しては、図2(a)に示すように、つま先側に配置したり、或いは、踵側に配置される。
【0016】
上記したピン状突起12と、それに関連して配置される板状突起20については、それぞれのピン状突起12と板状突起20が、図4に示すように、板状突起20の両端部20b,20cと、その内側に配置されるピン状突起12の中心部12aとの間で三角形T(代表してつま先位置におけるピン状突起12と板状突起20との関係を示してある)が形成されるように靴底10に設けておくことが好ましい。
すなわち、ピン状突起12と板状突起20を、三角形となるような配置態様にすることで、周縁側に向かって滑るような力(矢印A方向の力;代表して1箇所を示してある)が作用しても、ピン状突起12と板状突起20との間で安定してグリップ力を高めることができる。これは、ピン状突起を三角形状となるように配置した場合と比較すると、矢印A方向の力が作用した際、周縁側のピン状突起は傾いたり、靴底(保持部材10B)に対して沈み込んだりして安定したグリップ力が得られないが、上記のように周縁側を板状突起にすることで、矢印A方向の力を受け止めることができ、ピン状突起と比較すると、傾きや沈み込みが抑制され、結果として安定したグリップ力が得られる。特に、各板状突起20については、その内側にあるピン状突起12の中心部12aから最短となる靴底の周縁10Eに対して直線Sを引いた際、接地表面20aが、その直線に対して略直角(90°±10°であれば良い)となるように配設されていることが好ましい。
【0017】
なお、板状突起20には、図5(a)に示すように、靴底(保持部材10B)と共に一体化する際、樹脂が入り込むように開口20d、及び両側に張り出す突起20e(片方のみ図示)を形成しておくことが好ましい。また、板状突起20の接地表面20aには、凹部20fを形成しておくことが好ましい。本実施形態では、凹部20fは、接地表面20aに沿って所定間隔をおいて2箇所形成されているが、接地表面に沿って連続的に形成(凹凸状に形成)しても良い。
【0018】
上記したピン状突起12及び板状突起20は、硬い材質の部分に設置しておくことが好ましい。すなわち、釣り人が歩行する際、靴底10は、足裏の動きに応じて撓み易い素材で形成されるが、滑り止めとして機能するピン状突起12、及び板状突起20に関しては、滑り止め機能を発揮する際に、ぐらついたりぶれが生じないように、硬い部分を土台として固定しておくことが好ましい。
【0019】
このため、本実施形態の靴底10は、図2(a)に示すように、足裏の形状に対応するベース部材10Aと、ベース部材10Aよりも硬質で、上記したピン状突起12及び板状突起20を固定する保持部材10Bとを備えた構造となっている(図2(a)において、保持部材10Bは白抜き部分で示してある)。この場合、ベース部材10Aは、JIS A 硬度で35〜75の材料、例えば、合成ゴム(NBR,SBR,IR)、合成樹脂(EVA,ウレタン)等によって形成することが可能である。また、保持部材10Bについては、それよりも硬度が高い(JIS A 硬度で50〜95)の材料、例えば、合成ゴム(NBR,SBR,IR)、合成樹脂(EVA,ウレタン)、エラストマー等によって形成することが可能である(同材料であれば、硬度が高いものを用いれば良い)。
【0020】
なお、上記したようなベース部材10A、及びピン状突起12と板状突起20を固定した保持部材10Bを有する靴底10は、例えば、二色成形(ダブルモールド)によって一体成形することが可能である。すなわち、一次成形でベース部材10Aを形成し、引き続き、ピン状突起12及び板状突起20を位置決めした状態で保持部材10Bを二次成形することにより、上記したピン状突起12と板状突起20が設けられた靴底10を形成することが可能である。
【0021】
上記した構成の靴底10を形成するに際しては、板状突起20は靴底の周縁側に配置されて接地表面20aに対して直交する方向の力を受け易いことから、抜けや倒れが生じ難い固定構造としておくことが好ましい。上述したように、前記板状突起20には、図5(a)に示すように、二次成形時に樹脂が入り込むように開口20dが形成されると共に、両側に張り出す突起20e(片方のみ図示)が形成されているため、保持部材10Bに対して抜け難い(倒れ難い)構造とすることが可能となる。
【0022】
さらに、図3及び図6に示すように、板状突起20は、保持部材10Bのピン取付け面10dよりも高く(ピン取付け面10dよりも高さHだけ高く)形成された保持台座10eに固定しておくことが好ましい。
このように、保持台座10eに板状突起20を固定しておくことで、板状突起20に負荷が作用しても倒れ難くすることが可能となる。
【0023】
以上のような構成の靴底10を有する釣用靴1によれば、靴底10に設けられた複数のピン状突起12によって、地面や岩場などをグリップすることができ、滑りを防止することが可能となる。この場合、例えば、岩場を登ったり降りたりする際、釣り人の体重移動によって靴底の周縁10Eに向かって滑りが生じ、ピン状突起12だけでは抑えることのできない滑りが発生しても、それぞれのピン状突起12の外側(ピン状突起と靴底の周縁10Eとの間)に配設されている板状突起20が、線状の接地部分でこれを受けることができるため、滑りをより効果的に抑制することが可能となる。
【0024】
また、上記したように、それぞれのピン状突起12と板状突起20は、図4に示したように、ピン状突起12の中心部12aと板状突起20の両端部20b,20cとの間で三角形が形成されるような配置態様となっているため、上述したように、安定したグリップ力を得ることが可能となる。特に、各板状突起20は、その内側にあるピン状突起12の中心部12aから最短となる靴底の周縁10Eに対して直線Sを引いた際、接地表面20aが、その直線に対して略直角となるように配設されているため、体重移動した際に生じ易い周縁を押し崩す方向の力に対して、最も効果的に滑りを防止することが可能となる。
【0025】
さらに、本実施形態では、各板状突起20の接地表面20aに凹部20fを形成しているため、図5(b)に示すように、凹凸に食い込みやすくなり、矢印で示すような接地表面20aに沿った方向への滑りも効果的に抑制できるようになる。すなわち、表面に細かい凹凸のある岩場に対しても、より効果的に滑りを抑制することが可能となる。
【0026】
なお、上記した構成においては、板状突起20は、ピン状突起12と略同一の高さとなるように形成しておいても良いが、図6に示すように、板状突起20を、ピン状突起12の突出高さよりも低くしておいても良い。
このように構成することで、岩場での歩行時において、先にピン状突起12が岩場の凹所に嵌り、初期の保持力が得られると共に、各ピン状突起12に対し周縁方向に力を受けたときに板状突起20が岩場の表面に当て付くことから、滑り防止効果に加え、履き心地を向上することが可能となる。
【0027】
また、本実施形態の靴底10は、ピン状突起12及び板状突起20を、足裏のベース部材10Aに対して硬質の保持部材10Bに設けており、それ以外の部分については、それよりも軟らかい材質のベース部材10Aとなるように形成しているため、全体として履き心地の向上が図れると共に、ピン状突起12及び板状突起20のぐらつきやぶれ等が生じ難くなり、安定した滑り止め作用が得られるようになる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。上記した実施形態では、釣用靴として、ブーツタイプを例示したが、短靴タイプ(運動靴タイプ)に適用しても良い。すなわち、靴本体1や靴底10の形状、素材については、適宜変形することが可能である。例えば、靴底10については、その表面にフェルトを止着した構成であっても良い。また、前ピン状突起12の配置位置や、板状突起20の配置位置、その高さや固定態様についても適宜変形することが可能である。この場合、ピン状突起12については、硬質な材料で構成される前記保持部材10Bと共に一体成形した構造であっても良い。また、板状突起20は、少なくともピン状突起12に対して、靴底の周縁側に設置されていれば良く、すべてのピン状突起に対応させて配置しない構成であっても良い。このため、ピン状突起との間で三角形Tが形成されないような配置態様であっても良い。
【0029】
また、本実施形態では、ピン状突起12と板状突起20を、ベース部材10Aよりも硬質な保持部材10Bに設置したが、靴底は単一の素材で形成されていても良いし、保持部材10Bの形状については適宜変形することが可能である。
【0030】
さらに、板状突起20については、例えば、以下のように、その構成については、適宜変形することが可能である。上記接地表面20aについては、湾曲する凹形状であっても良い。また、上述した両側に張り出す突起20eについては、片方のみに張り出したものであっても良いし。さらに、突出する板状の部分(突起部分)については、例えば、矩形の板材を準備し、その一部を引き上げるように折曲させて形成しても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 釣用靴
2 靴本体
10 靴底
10A ベース部材
10B 保持部材
10E 靴底の周縁
12 ピン状突起
20 板状突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴本体の底面に靴底を固定した釣用靴において、
前記靴底は、複数のピン状突起と、それぞれのピン状突起と靴底周縁との間に配置される複数の板状突起とを有することを特徴とする釣用靴。
【請求項2】
前記複数のピン状突起と複数の板状突起は、各板状突起の両端部と、その内側に配置されるピン状突起の中心部との間で三角形が形成されるように、前記靴底に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の釣用靴。
【請求項3】
各板状突起は、その内側にあるピン状突起から最短となる靴底周縁に対して直線を引いた際、その直線に対して略直角となるように配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣用靴。
【請求項4】
前記板状突起の接地表面には、凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の釣用靴。
【請求項5】
前記板状突起は、ピン状突起の突出高さよりも低いことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の釣用靴。
【請求項6】
前記靴底は、ベース部材と、ベース部材よりも硬質で、前記ピン状突起および板状突起を固定する保持部材とを二色成形することで形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の釣用靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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