説明

釣用靴

【課題】岩場のような凹凸表面がある釣り場であっても、靴底が滑ることなく、安定して歩行することが可能な釣用靴を提供する。
【解決手段】本発明の釣用靴1は、靴本体2の底面に靴底10を固定している。靴底10は、中央部Pよりもつま先側に、硬質部12と、それよりも硬度が低い軟質部15とを備えており、硬質部12は、靴底の外周に沿った領域と、中心線Cを通る領域に形成され、軟質部15は、中心線Cを通る領域の左右両側の領域に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に魚釣りをする際に使用される釣用靴に関し、詳細には、靴底に特徴を有する釣用靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、渓流釣りや磯釣り等に用いられる釣用靴は、様々な構造の靴底を備えている。例えば、靴底そのものを硬い材質で形成したり、特許文献1に開示されているように、スパイクピンを設けることが知られている。或いは、特許文献2に開示されているように、フェルト製のソールを被着することも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−8708号
【特許文献2】特開平11−99004号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような靴底そのものが硬い材質で形成されていると、例えば、岩場のような凹凸表面のある部分を歩行すると、靴底裏面が凹凸表面を点で受ける(点接触)ようになるため、滑り易いという問題がある。また、特許文献1に開示されているように、スパイクピンを設けることで、歩行時には、スパイクピンが地表に入り込むことからグリップ力は高めることはできるものの、地表が硬くなるとスパイクピンが食い込まなくなり、硬い構造の靴底と同様、点接触して滑り易いという問題がある。
【0005】
また、上記した特許文献2に開示されているように、靴底にフェルトのように柔らかい素材のソールを止着すると、凹凸表面を包み込むようにして変形することから、摩擦力が高まるものの、靴底全体が柔らかいため、力が加わった方向に変形し続けてしまい、踏ん張りがきかなくなる。特に、幅方向(左右方向)に対しては踏ん張りがきかなくなりバランスが取れなくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、岩場のような凹凸表面がある釣り場であっても、靴底が滑ることなく、安定して歩行することが可能な釣用靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣用靴は、靴本体の底面に靴底を固定した構成において、前記靴底は、中央部よりもつま先側に、硬質部と、それよりも硬度が低い軟質部とを備えており、前記硬質部は、靴底の外周に沿った領域と、中心線を通る領域に形成され、前記軟質部は、前記中心線を通る領域の左右両側の領域に形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記した構成の釣用靴によれば、岩場のような凹凸表面がある部分を歩行した際、中心線を通る領域の左右両側の領域に形成されている軟質部が、凹凸表面を包み込むように変形することができるため、滑りが抑制される。また、左右方向の中心線を通る領域と、外周に沿った領域に硬質部を配しているため、踏み込んだ際の中心線領域を硬質部で安定させながら、その左右両側にある軟質部で、凹凸表面に沿うような変形が可能となり、左右のバランスが良い状態でグリップ力を高めることが可能となる。また、外周領域に硬質部を配置したことで、軟質部が周縁方向に向かって変形し続けることがなくなり、これにより、踏ん張りがきいて滑り難い構造となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、岩場のような凹凸表面がある釣り場であっても、靴底が滑ることなく、安定して歩行することが可能な釣用靴が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る釣用靴の一実施形態を示す側面図。
【図2】(a)は、図1に示す釣用靴の靴底を示す裏面図、(b)は、その側面図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】岩場の凹凸表面に対して靴底を踏み込んだ状態をつま先側から見た図。
【図5】岩場の凹凸表面に対して靴底を踏み込んだ状態を側方側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る釣用靴の一実施形態について図1から図3を参照して具体的に説明する。
本実施形態の釣用靴1は、ショートブーツタイプとして構成されており、釣り人の足部を覆う靴本体2と、靴本体2に対して接着、固定される靴底(ソール部)10とを備えて構成される。この場合、靴本体2と靴底10の固着方法や具体的な構造については特に限定されるものではなく、靴本体2の内部に中敷(インナーソール)やクッション材などが介在されていても良い。
【0012】
前記靴本体2は、例えば、ゴム等の素材で一体形成することが可能であり、その裏面(底面)2aには、例えば、ゴム、ウレタン、EVA等の合成樹脂によって一体形成され、所定の肉厚を有する前記靴底10が接着等によって固定されている。なお、前記靴本体2の形成素材や全体構成については、特に限定されることはなく、例えば、合成樹脂や繊維材などを組み合わせて縫製する等、適宜変形することが可能である。
【0013】
前記靴底10の底面10aには、中央部Pよりもつま先側に、硬質部12と、それよりも硬度が低い軟質部15とが設けられている。ここで、中央部とは、底面10aに対して中心線Cを引いた際(この中心線Cは、足裏形状に合わせて、図に示すように屈曲する)、その中心線C上に位置して靴サイズの中間点とされる。なお、中央部Pは、前記のように靴サイズの中間位置に対応する部分であり、装着者の重心は、通常に起立した際、この中央部Pからややつま先側に位置すると考えられる。このため、中央部Pは、装着者の重心が存在する領域と略対応することとなる。
【0014】
前記硬質部12については、図2(a)に示すように、靴底の外周に沿った領域12aと、中心線Cを通る領域12bに形成されており、前記軟質部15は、中心線Cを通る領域の左右両側の領域に形成されている。具体的に軟質部15は、靴底10aの中央部Pよりもつま先側において、中心線Cに対して親指側(母指球領域A1)と小指側(小指球領域A2)に形成されている。
【0015】
また、本実施形態では、前記硬質部12は、つま先側から踵側に移行する途中で左右方向に分岐されており、その分岐部P1よりも踵側となる中央領域A3においても、軟質部15Aを配設している。
【0016】
上記した硬質部12については、例えば、合成ゴム(例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム)、熱可塑性ウレタン樹脂(TPU)、ポリウレタン(PU)によって構成することが可能であり、硬度については、JIS−A硬度で50〜80度のものが用いられる。また、上記した軟質部15,15Aについては、硬質部12の素材よりも軟質な材料で構成され、例えば、合成ゴム(例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム)で、JIS−A硬度で35〜50度のもの、或いは、発泡ウレタンや発泡EVAでJIS−C硬度で30〜60度のものを用いることができる。
【0017】
この場合、前記硬質部12については、靴底10の本体部として形成することが可能であり、軟質部15,15Aについては、硬質部12とは別部材で形成して被着したり、或いは、硬質部と共に、二色成形(ダブルモールド)によって一体成形することが可能である。すなわち、一次成形で靴底10の本体部となる硬質部12を形成し、引き続き、軟質部15,15Aを二次成形することにより形成することが可能である。
【0018】
また、上記した軟質部15(15A)については、図3に示すように、硬質部12よりも突出形成しておく(硬質部12の接地面よりも突出形成する)ことが好ましい。このように軟質部15(15A)を突出させておくことで、岩場などを歩行して凹凸がある表面を踏み込んだ際、軟質部15(15A)が、その凹凸表面に追従して、凹凸を包むように変形することができるようになり、これにより、滑り止めの防止効果を高めることが可能となる。
【0019】
さらに、軟質部15(15A)については、図3に示すように、左右方向において中央部分が突出するような湾曲形状を有すると共に、図2(b)に示すように、中心線Cの軸方向において、中央部分が突出するような湾曲形状を有する形状にすることが好ましい。これは、通常、装着者が歩行する際、靴底10は、最初に踵部分が接地して次第につま先側に向けて撓むように重心位置が移動して行くため、中心線Cに沿った方向において、中央部分が突出するような湾曲形状としておくことで、より凹凸表面に追従して包み込むように変形し易くなる。また、歩行時においては、重心位置の変化は、踵側からつま先側に移行しつつ、小指球側から母指球側に移行するように変位するため、左右方向において中央部分が突出するような湾曲形状としておくことで、より凹凸表面に追従して包み込むように変形し易くなる。
【0020】
上記した構成の釣用靴によれば、岩場のような凹凸表面がある部分を歩行した際、図4に示すように、中心線Cを通る領域の左右両側の領域に形成されている軟質部15が、凹凸表面を包み込むように変形することができるため、滑りが抑制される。特に、歩行による体重移動は、踵側からつま先側に移動するに際して小指球側から母指球側に移動することから、上記した軟質部15の左右方向の湾曲形状によって、凹凸表面に対して自然に追従することができ、安定した状態で左右方向の滑りを抑制することができる。
【0021】
また、中心線Cを通る領域12bに硬質部12が形成されているため、歩行時に体重をかけて踏み込んだ際、不安定の要因となる沈み込みを抑制しつつ、中心線Cを通る領域12bを硬質部12で安定させながら、その左右両側にある軟質部15で、凹凸表面に沿うような変形が可能となり、左右のバランスが良い状態でグリップ力を高めることが可能となる。特に、靴底の外周に沿った領域12aに硬質部12が配されているため、体重移動が生じても軟質部15が周縁方向に向かって変形し続けることがなくなり、これにより、踏ん張りがきいて滑り難い構造となる。
【0022】
さらに、本実施形態では、中心線Cを通る領域12bに形成される硬質部12は、つま先側から踵側に移行する途中で左右方向に分岐されており、その分岐部P1よりも踵側となる中央領域A3に軟質部15Aを配設しているため、中心線に沿った方向の滑りに対してもグリップ力を高めることが可能となる。すなわち、図5に示すように、中心線方向に沿って軟質部15,15Aが配設されていることから、上記した左右方向のみならず、前後方向においても滑り難くすることができ、左右方向にバランスが崩れ難く、安定した歩行をすることが可能となる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
上記した実施形態では、釣用靴として、ショートブーツタイプを例示したが、ロングブーツタイプや短靴タイプ(運動靴タイプ)に適用しても良い。すなわち、靴本体1や靴底10の形状、素材については、適宜変形することが可能である。例えば、軟質部15,15Aの配置位置については適宜変形することが可能であり、図2(a)に示すように、踵側の領域(A4,A5で示す領域)においても、軟質部を配設しても良い。
【0024】
また、上記した軟質部には、必要に応じて、スパイクピンを設置しておいても良い。このようなスパイクピンは、軟質部を形成する際に、所定の位置に固定して一体的に形成することが可能である。もちろん、スパイクピンは、硬質部の領域に形成しても良く、これにより、歩行した際にスパイクピンが地面等に食い込み易くなり、滑り止め効果をより高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1 釣用靴
2 靴本体
10 靴底
12 硬質部
12a 靴底の外周に沿った領域
12b 中心線を通る領域
15,15A 軟質部
C 中心線
P 中央部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴本体の底面に靴底を固定した釣用靴において、
前記靴底は、中央部よりもつま先側に、硬質部と、それよりも硬度が低い軟質部とを備えており、
前記硬質部は、靴底の外周に沿った領域と、中心線を通る領域に形成され、前記軟質部は、前記中心線を通る領域の左右両側の領域に形成されていることを特徴とする釣用靴。
【請求項2】
前記軟質部は、前記硬質部よりも突出形成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣用靴。
【請求項3】
前記軟質部は、左右方向において中央部分が突出するような湾曲形状を有すると共に、中心線の軸方向において、中央部分が突出するような湾曲形状を有することを特徴とする請求項2に記載の釣用靴。
【請求項4】
前記中心線を通る領域に形成される硬質部は、つま先側から踵側に移行する途中で左右方向に分岐されており、その分岐部よりも踵側となる中央領域に、軟質部を配したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の釣用靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−206000(P2011−206000A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78585(P2010−78585)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】