説明

釣用靴

【課題】靴底を靴本体に対して固定する固定部同士の位置ずれを効果的に吸収でき、それにより、十分な固定力を確保できる釣用靴を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の釣用靴1は、靴本体2と、靴本体2の底面に着脱自在に取り付けられる靴底4と、靴本体2と靴底4との取り付け状態を固定する固定手段とを備える。固定手段は、所定の遊度Sをもって靴本体2側に設けられる第1の固定部50(第1の締結部材13)と、靴底4側に設けられ、第1の固定部50と結合して、第1の固定部50と共に靴底4を靴本体2に対して固定する第2の固定部52(第2の締結部材14、支持板22)とを有し、前記遊度Sによって第2の固定部52に対する第1の固定部50の結合位置を調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に魚釣りをする際に使用される釣用靴に関し、特に、靴本体の底面に滑り止め用の靴底が着脱自在に取り付けられて成る釣用靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、渓流釣りや磯釣り等に用いられる釣用靴は、滑り難い靴底構造を備えており、例えば、図7に示されるように、釣り人の足部を覆う靴本体102と、靴本体102の底面に対して着脱自在に取り付け固定される滑り止め効果を奏する靴底(フェルトソール)104とから構成され、靴底104が擦り減った場合には新しい靴底と交換できるようになっている。
【0003】
靴本体102と靴底104との間の着脱構造は、一般に、例えばマジックテープ(登録商標)やベルクロ(登録商標)などの面ファスナから成る。図7の構成例では、靴本体102の底面102aに面ファスナ110Aが固着して設けられ、靴底104の表面(靴本体102の底面102aと対向される面)に面ファスナ110Aと着脱自在に密着接合される面ファスナ110Bが固着して設けられる。
【0004】
また、靴底104が靴本体102に対して面ファスナ110A,110Bにより着脱自在に取り付けられるこのような構造では、靴底104が靴本体102に対してずれたり脱落することがないように、例えば、面ファスナに加えて、ビスにより靴底104が靴本体102に対して締結固定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−168406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1に開示されるように、締結手段により面ファスナ110A,110Bの取り付け状態を固定する構造では、1つの問題が生じる。すなわち、図7に示されるように、靴本体102の底面102aに突設されたネジ付きのピン113とナット114とを締結手段として用いて、靴底104と靴本体102との面ファスナ110A,110Bによる取り付け状態を固定する場合には、靴本体102側のピン113を、靴底104に対応して設けられた座ぐり穴115のピン貫通孔116に挿通して、靴底104の反対側から座ぐり穴115内に挿入されるナット114に螺合させる。このとき、ピン113とピン貫通孔116との位置合わせが精度良くなされなければならないが、一般に、ピン113を埋め込んで成形される靴本体102は合成ゴムやPVCなどから成るため、成形に伴う収縮によりピン113の位置が靴底104のピン貫通孔116の位置と合わなくなる場合がある。
【0007】
そのため、図8に示されるようにピン貫通孔116Aの孔径を予め大きく形成しておき、それにより、靴本体102の成形収縮に伴うピン113の位置ずれを吸収できるようにする(大きな孔径の範囲内でピン113の位置ずれを許容する)ことも考えられる。しかしながら、その場合、図9に示されるように、位置ずれを起こしたピン113の軸心が大径孔としてのピン貫通孔116Aの中心軸から偏心するため、この偏心したピン113にナット114を螺合させると、ナット114の中心軸も座ぐり穴115の中心軸からずれ、図9の(c)および図10に示されるようにナット114の全面を座ぐり穴115の底面115aで完全に支持することができなくなる。そのため、締結力が不十分になる(したがって、靴本体102に対する靴底104の固定力が不十分になる)とともに、座ぐり穴115の底面115aとナット114との間に隙間Pが生じる場合がある。また、このような隙間Pが生じると、この隙間Pを通じて砂や異物が靴本体102の底面102aと靴底104との密着面間に入り込む可能性があり、その場合には、面ファスナ110A,110Bのフックが潰れて密着力が低下してしまう。
【0008】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、靴底を靴本体に対して固定する固定部同士の位置ずれを補償でき、それにより、十分な固定力を確保できる釣用靴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の釣用靴は、靴本体と、前記靴本体の底面に着脱自在に取り付けられる靴底と、前記靴本体と前記靴底との取り付け状態を固定する固定手段とを備え、前記固定手段は、所定の遊度をもって前記靴本体側に設けられる第1の固定部と、前記靴底側に設けられ、前記第1の固定部と結合して、前記第1の固定部と共に前記靴底を前記靴本体に対して固定する第2の固定部とを有し、前記遊度によって前記第2の固定部に対する前記第1の固定部の結合位置を調整できることを特徴とする。
【0010】
この請求項1に記載の釣用靴によれば、靴本体と靴底との取り付け状態を固定する固定手段が、靴本体側および靴底側にそれぞれ設けられて互いに結合される第1の固定部と第2の固定部とを有し、第1の固定部に与えられる遊度により、第2の固定部に対する第1の固定部の結合位置を調整できるため、靴底を靴本体に対して取り付ける段階で第1の固定部と第2の固定部との間に位置ずれが生じる場合であっても、その位置ずれを前記遊度によって効果的に吸収できる。つまり、第1および第2の固定部を互いに適正な位置で結合でき、十分な固定力を生起できる。なお、上記構成において、「遊度」とは、第2の固定部に対する第1の固定部の結合位置を調整するために第1の固定部を移動させることができる第1の固定部の動きの自由度のことである。
【0011】
また、請求項2に記載の釣用靴は、請求項1に記載の釣用靴において、前記第1の固定部は、前記靴本体に設けられる第1の貫通孔と、この第1の貫通孔に径方向の遊度をもって挿通される第1の締結部材とを有し、前記第2の固定部は、前記靴底に設けられて前記第1の締結部材が挿通される第2の貫通孔と、前記第1の締結部材に結合されることにより前記第1の締結部材との間で前記靴底を挟持する第2の締結部材とを有し、前記径方向の遊度によって前記第1の締結部材の中心軸を前記第2の貫通孔の中心軸に位置合わせできることを特徴とする。
【0012】
この請求項2に記載の釣用靴によれば、請求項1に記載の釣用靴と同様の作用効果が得られるとともに、第1の固定部を構成する第1の締結部材が第1の貫通孔に径方向の遊度をもって挿通されているため、靴底を靴本体に対して取り付ける段階で第1の貫通孔と第2の貫通孔との間に位置ずれが生じる場合であっても、第1の締結部材を径方向に変位させて第1の締結部材の中心軸を第2の貫通孔の中心軸に位置合わせできる。そのため、第2の貫通孔の中心軸に対して偏心した位置で第1の締結部材と第2の締結部材とが結合されることを回避でき、その結果、十分な締結力(したがって、靴本体に対する靴底の十分な固定力)を確保できるとともに、靴本体と靴底との密着面間に通じる隙間を生じさせないで済む。これにより、固定手段の固定部から砂や異物が靴本体の底面と靴底との密着面間に入り込む可能性を排除できる。また、貫通孔間の位置ずれとは無関係に第1の締結部材の中心軸を第2の貫通孔の中心軸に位置合わせできるため、第2の貫通孔の孔径を予め大きく形成しておく必要もなく、このことも前記隙間の発生の回避に寄与し得る。
【0013】
また、請求項3に記載の釣用靴は、請求項2に記載の釣用靴において、前記第1の締結部材は、前記靴本体に支持される支持部と、前記第1の貫通孔に径方向の遊度をもって挿通されるネジ付きの軸部とを有し、前記第2の締結部材は、前記靴底に固定されて前記第2の貫通孔を横切る支持板と、この支持板を受けて前記軸部に螺合される螺合部材とから成ることを特徴とする。
【0014】
この請求項3に記載の釣用靴によれば、請求項2に記載の釣用靴と同様の作用効果が得られるとともに、締結部材同士の螺合により、安定した大きな締結力を得ることができる。また、螺合部材が第2の貫通孔を横切る支持板を受けて軸部に螺合されるため、螺合部材を第2の貫通孔から外部に突出させなくても支持板を介した広い面積で螺合部材により靴底を受けることができ、安定した十分な締結力(靴本体に対する靴底の十分な固定力)を得ることができる。
【0015】
また、請求項4に記載の釣用靴は、請求項3に記載の釣用靴において、前記第1の締結部材の前記支持部を支持する前記靴本体の支持面を補強するための補強部材を更に備えることを特徴とする。
【0016】
この請求項4に記載の釣用靴によれば、請求項3に記載の釣用靴と同様の作用効果が得られるとともに、補強部材により前記支持面を補強することにより、締結力によって支持面が変形するのを防止でき、締結力を安定して受けることができる支持構造を実現できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の釣用靴によれば、靴底を靴本体に対して固定する固定部同士の位置ずれを効果的に吸収でき、それにより、十分な固定力を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る釣用靴の側面図、(b)は(a)の釣用靴の底面図である。
【図2】図1の釣用靴を底側から見た部分分解斜視図である。
【図3】図1の釣用靴における靴本体の底面と靴底との取り付け固定部の要部断面図である。
【図4】支持板の平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る釣用靴における靴本体の底面と靴底との取り付け固定部の要部断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る釣用靴における靴本体の底面と靴底との取り付け固定部の要部断面図である。
【図7】従来の釣用靴を底側から見た部分分解斜視図である。
【図8】他の従来例に係る釣用靴を底側から見た部分分解斜視図である。
【図9】図8の釣用靴の靴本体と靴底とを取り付ける取り付け固定部の要部を示し、(a)はピンをピン貫通孔に挿通する前の状態を示す斜視図、(b)はピンをピン貫通孔に挿通した状態を示す斜視図、(c)は(b)の状態を靴底側から見た平面図である。
【図10】図8の釣用靴における靴本体の底面と靴底との取り付け固定部の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る釣用靴の一実施形態について具体的に説明する。
図1〜図4は本発明の第1の実施形態を示している。図1および図2に示すように、本実施形態の釣用靴1は、長靴タイプ(ブーツタイプ)に適用されており、釣り人の足部を覆う靴本体2と、靴本体2の底面に対して着脱自在に取り付け固定される靴底4とを備えて構成される。靴本体2の底面と靴底4との間の着脱自在な取り付けは、特に限定されるものではないが、例えばマジックテープ(登録商標)やベルクロ(登録商標)などの面ファスナ10A,10Bによって行なわれる。
【0020】
靴本体2は、例えば、合成ゴム、ウレタン、EVA等の合成樹脂で一体形成されており、底面を形成するミッドソール2aを有する。ミッドソール2aの表面(靴本体2の底面)には面ファスナ10Aが固着して設けられている。
【0021】
図3に詳しく示されるように、替えソールとしての靴底4は、例えば、地面と接触されるフェルトから成る滑り止め層4bと、ミッドソール2aに対向して靴本体2に取り付けられる例えばフェルトよりも硬質であってもよい(例えば、ミッドソール2aの曲げ剛性と同等かそれ以下の合成ゴムから成る)固定層4aとが少なくとも接着剤20により一体化された積層構造を成し、固定層4aの表面(ミッドソール2aと対向される面)には、面ファスナ10Aと着脱自在に密着接合される面ファスナ10Bが固着して設けられている。
【0022】
また、本実施形態の釣用靴1は、面ファスナ10A,10Bを介した靴本体2と靴底4との取り付け状態を固定する固定手段を更に有する。具体的に、この固定手段は、特に、足裏の母指球と小指球とを結ぶラインよりも指先側にある該靴1(靴底)の前端領域と、足裏の踵近傍の後端領域とに設けられており(図1の(b)および図2参照)、図3に明確に示されるように、所定の遊度Sをもって靴本体2側に設けられる第1の固定部50と、靴底4側に設けられ、第1の固定部50と結合して、第1の固定部50と共に靴底4を靴本体2に対して固定する第2の固定部52とを有し、前記遊度Sによって第2の固定部52に対する第1の固定部50の結合位置を調整できるようになっている。
【0023】
より具体的には、第1の固定部50は、靴本体2の底面を形成するミッドソール2aに設けられる第1の貫通孔23と、この第1の貫通孔23に径方向の遊度Sをもって挿通される第1の締結部材13とを有し、また、第2の固定部52は、靴底4(固定層4aおよび滑り止め層4b)に設けられて第1の締結部材13が挿通される第2の貫通孔16と、第1の締結部材13に結合されることにより第1の締結部材13との間で靴底4を挟持する第2の締結部材18とを有しており、前記径方向の遊度Sによって第1の締結部材13の中心軸O1を第2の貫通孔16の中心軸O2に位置合わせできる(第2の固定部52に対する第1の固定部50の結合位置を調整できる)ようになっている。
【0024】
ここで、第1の締結部材13は、図3に明確に示されるように、靴本体2に支持される支持部としての四角状の頭部13aと、該頭部13aの略中央部分から延び且つ雌ネジ19を内周面に有する円筒状の軸部13bとから成り、例えばステンレスなどの金属、強度の高いプラスチック等によって形成される。この場合、第1の締結部材13の頭部13aは、靴本体2に所定の遊度S,S´(横と縦の遊度S,S´)をもって支持される。具体的には、第1の貫通孔23を有する靴本体2(ミッドソール2a)の四角穴(凹溝)29の内周壁面と頭部13aの外周壁面との間に横方向、縦方向の各々にわたって隙間(遊度)S,S´が設けられた状態で、頭部13aが四角穴29の底面(支持面)30で支持される。また、第1の締結部材13の軸部13bは、第1の貫通孔23に径方向の遊度Sをもって挿通される。具体的には、軸部13bの外周面と第1の貫通孔23の内周面との間に全周にわたって径方向の隙間(遊度)Sが設けられる。
【0025】
また、第2の締結部材18は、靴底2に固定されて第2の貫通孔16を横切る支持板22と、支持板22を受けて第1の締結部材13の軸部13bに螺合される螺合部材としての固定ボルト14とから成る。
【0026】
固定用ボルト14は、支持板22を受けるとともに、支持板22と協働して靴底4(図では、固定層4a)をミッドソール2aとの間で挟持するための頭部14aと、頭部14aの略中央部分から延び且つ雄ネジ17を外周面に有する軸部14bとを有しており、例えばステンレスなどの金属、強度の高いプラスチック等によって形成される。そして、このような固定用ボルト14は、その軸部14bが支持板22の後述する中心孔22cを通じて第1の締結部材13の雌ネジ19に所定の深さまで螺合されることにより、頭部14aが支持板22を第1の締結部材13の軸部13bとの間で挟持する(支持板22を支持する)ようになっている。
【0027】
一方、支持板22は、例えばステンレスなどの金属、強度の高いプラスチック等によって形成されており、靴底4を形成する際にその構成材料中(図3では、接着剤20が介在する固定層4aと滑り止め層4bとの間)に埋設されて靴底4と接着又はインサート成形等の手段を用いて一体化される。また、図4に明確に示されるように、支持板22は、固定ボルト14の軸部14bが挿通される中心孔22c(第2の貫通孔16の中心軸O2と略同心)を有しており、中心孔22cの周囲の下面には、固定用ボルト14の頭部14aが押し付けられる圧接部位(環状面)に、第1の締結部材13と固定ボルト14との間のネジの緩みを防止する凸部(緩み止め)22bが設けられている。図4では、径方向に延びる12個の凸部22bが周方向に等しい角度間隔を隔てて設けられている。また、支持板22は、靴底4に一体化する接着剤が入り込める複数(図では4つ)の凹部(貫通孔)22aをその外周に沿って有する。
【0028】
上記構成において、靴底4を靴本体2に取り付ける場合には、靴底4とミッドソール2aとをその輪郭形状が合うように向き合わせ、面ファスナ10A,10B同士の結合によって靴底4をミッドソール2aに対して取り付ける。その後、この取り付け状態を固定するために、第1の固定部50と第2の固定部52とを結合する。具体的には、第1の締結部材13をミッドソール2aの四角穴29に取り付け、ミッドソール2aの第1の貫通孔23を通じて突出する第1の締結部材13の軸部13bを靴底4側の第2の貫通孔16に嵌め入れる。このとき、第1の締結部材13の軸部13bの中心軸O1を、第2の貫通孔16を横切る支持板22の中心孔22cの中心軸(したがって、第2の貫通孔16の中心軸O2)に位置合わせする。第1の貫通孔23と第2の貫通孔16との間に位置ずれが生じている場合には、前記遊度S,S´を利用して第1の締結部材13を横及び縦方向に変位させて、第1の締結部材13の軸部13bの中心軸O1を支持板22の中心孔22cの中心軸(したがって、第2の貫通孔16の中心軸O2)に位置合わせする。その位置合わせ状態で、今度は、反対側から第2の貫通孔16内に固定用ボルト14を挿入し、固定用ボルト14の軸部14bを支持板22の中心孔22cを通じて第1の締結部材13の雌ネジ19に所定の深さまで螺合する。これにより、第1の締結部材13の頭部13aが四角穴29の底面(支持面)30に圧接されて支持されるとともに、固定用ボルト14の頭部14aが支持板22に押し付けられ、支持板22が頭部14aと第1の締結部材13の軸部13bとの間で挟持される。つまり、固定用ボルト14は、支持板22を受けるとともに、支持板22と協働して靴底4(図では、固定層4a)をミッドソール2aとの間で挟持する。したがって、靴底4がミッドソール2aに対して強固に固定される。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の釣用靴1によれば、靴本体2と靴底4との取り付け状態を固定する固定手段が、靴本体2側および靴底4側にそれぞれ設けられて互いに結合される第1の固定部50と第2の固定部52とを有し、第1の固定部50に与えられる遊度Sにより、第2の固定部52に対する第1の固定部50の結合位置を調整できるため、靴底4を靴本体2に対して取り付ける段階で第1の固定部50と第2の固定部52との間に位置ずれが生じる場合であっても、その位置ずれを前記遊度Sによって効果的に吸収できる。つまり、第1および第2の固定部50,52を互いに適正な位置で結合でき、十分な固定力を生起できる。
【0030】
特に、本実施形態では、第1の固定部50を構成する第1の締結部材13が第1の貫通孔23に径方向の遊度Sをもって挿通されているため、靴底4を靴本体2に対して取り付ける段階で第1の貫通孔23と第2の貫通孔16との間に位置ずれが生じる場合であっても、第1の締結部材13を横及び縦方向に変位させて第1の締結部材13の中心軸O1を第2の貫通孔16の中心軸O2に位置合わせできる。そのため、第2の貫通孔16の中心軸O2に対して偏心した位置で第1の締結部材13と第2の締結部材18(14,22)とが結合されることを回避でき、その結果、十分な締結力(したがって、靴本体2に対する靴底2の十分な固定力)を確保できるとともに、靴本体2と靴底4との密着面間に通じる隙間を生じさせないで済む。これにより、固定手段の固定部から砂や異物が靴本体2の底面と靴底4との密着面間に入り込む可能性を排除できる。また、貫通孔16,23間の位置ずれとは無関係に第1の締結部材13の中心軸O1を第2の貫通孔16の中心軸O2に位置合わせできるため、第2の貫通孔16の孔径を予め大きく形成しておく必要もなく、このことも前記隙間の発生の回避に寄与し得る。すなわち、第2の貫通孔16の孔径を予め大きく形成したことに伴って生じる隙間から砂や異物が靴本体の底面と靴底との密着面間に入り込む可能性を排除できる。このことから分かるように、本実施形態を含む本発明では、異物の浸入経路となる靴底側ではなく、靴本体側に遊度をもって第1の固定部50を設けることが重要である。
【0031】
本実施形態によれば、螺合部材としての固定用ボルト14が第2の貫通孔16を横切る支持板22を受けて第1の締結部材13の軸部13bに螺合されるため、固定用ボルト14を第2の貫通孔16から外部に突出させなくても支持板22を介した広い面積で固定用ボルト14により靴底4を受けることができ、安定した十分な締結力(靴本体2に対する靴底4の十分な固定力)を得ることができる。
【0032】
図5は本発明の第2の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、第1の締結部材13の軸部13bが雌ネジ19ではなく雄ネジ19aを有している。すなわち、軸部13bの外周面にネジが形成されている。また、これに対応して、軸部13bに螺合されるべき第2の締結部材18の螺合部材14がナット14Aとして形成されている。したがって、この構成では、支持板22の中心孔22cを貫通する第1の締結部材13の軸部13bの雄ネジ19aにナット14Aの中心孔の内周面に形成される雌ネジ72が螺合される(図中、二点鎖線参照)。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同一であり、したがって、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
図6は本発明の第3の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、第1の締結部材13の支持部としての頭部13aを支持する靴本体2の支持面30(四角穴29の底面)にこれを補強するための補強部材90が設けられている。この補強部材90は、ミッドソール2aにインサート成形又は組み込み等の適宜方法で固定され、第1の締結部材13の軸部13bが貫通できる中心孔90aを有する。この中心孔90aは、軸部13bの外周面との間に隙間Sを形成し、前述した軸部13bの径方向遊度をもたらす。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同一である。
【0034】
このように、補強部材90により支持面30を補強すれば、締結力(締結部材に加わる外力)によって支持面30が変形するのを防止でき、締結力を安定して受けることができる支持構造を実現できる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した実施形態では、釣用靴として、ブーツタイプを例示したが、短靴タイプ(運動靴タイプ)に適用しても良い。すなわち、靴本体1の形状、素材については、適宜変形することが可能である。また、固定手段の構造や固定形態も前述した実施形態に限定されず任意である。要は、第1の固定部が遊度をもって設けられ、第2の固定部に対する第1の固定部の結合位置を変動できさえすればよい。また、固定手段の配置位置は、靴の前端領域および後端領域に限らず、また、固定手段の数も任意である。また、靴本体2と靴底4とを着脱自在に取り付ける構造は面ファスナに限らず、任意の着脱構造を採用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 釣用靴
2 靴本体
4 靴底
13 第1の締結部材
13a 頭部(支持部)
13b 軸部
14 固定用ボルト(螺合部材)
18 第2の締結部材
16 第2の貫通孔
22 支持板
23 第1の貫通孔
50 第1の固定部
52 第2の固定部
90 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴本体と、
前記靴本体の底面に着脱自在に取り付けられる靴底と、
前記靴本体と前記靴底との取り付け状態を固定する固定手段と、
を備え、
前記固定手段は、所定の遊度をもって前記靴本体側に設けられる第1の固定部と、前記靴底側に設けられ、前記第1の固定部と結合して、前記第1の固定部と共に前記靴底を前記靴本体に対して固定する第2の固定部とを有し、前記遊度によって前記第2の固定部に対する前記第1の固定部の結合位置を調整できることを特徴とする釣用靴。
【請求項2】
前記第1の固定部は、前記靴本体に設けられる第1の貫通孔と、この第1の貫通孔に径方向の遊度をもって挿通される第1の締結部材とを有し、前記第2の固定部は、前記靴底に設けられて前記第1の締結部材が挿通される第2の貫通孔と、前記第1の締結部材に結合されることにより前記第1の締結部材との間で前記靴底を挟持する第2の締結部材とを有し、前記径方向の遊度によって前記第1の締結部材の中心軸を前記第2の貫通孔の中心軸に位置合わせできることを特徴とする請求項1に記載の釣用靴。
【請求項3】
前記第1の締結部材は、前記靴本体に支持される支持部と、前記第1の貫通孔に径方向の遊度をもって挿通されるネジ付きの軸部とを有し、
前記第2の締結部材は、前記靴底に固定されて前記第2の貫通孔を横切る支持板と、この支持板を受けて前記軸部に螺合される螺合部材とから成る、
ことを特徴とする請求項2に記載の釣用靴。
【請求項4】
前記第1の締結部材の前記支持部を支持する前記靴本体の支持面を補強するための補強部材を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の釣用靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−27575(P2013−27575A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166148(P2011−166148)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】