説明

釣竿支持装置

【課題】確実に釣竿をホールドすることができると共に、簡単な操作により釣竿のロックを容易に解除する釣竿支持装置の提供。
【解決手段】釣竿支持装置10は、ベース16と、スライダー12と、ベース16に設けられた揺動アーム14、15と、揺動アーム14、15を駆動するリンク機構13と、揺動アーム14、15を回動付勢するねじりバネ49,50と、リンク機構13の動きを制御する操作レバー17とを備えている。スライダー12は、上下方向にスライドし、上側の第1位置と下側の第2位置との間で変位する。スライダー12の変位にリンク機構13が連動する。スライダー12が第2位置に変位したとき、リンク機構13を構成するフラットバー35、36の成す角度θは、180°よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿を船体等に対して着脱自在に支持する釣竿支持装置の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば船釣りでは、一般に、釣竿は船縁に支持される。船釣りで使用される釣竿は、通常、釣糸リール(以下、単に「リール」という。)を装着している。このリールを備えた釣竿を支持するための装置が従来から提案されている(たとえば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
従来の釣竿支持装置は、釣竿に固定される嵌合部材(典型的には固定ピン)と、船縁に固定される被嵌合部材(典型的には上記固定ピンを固定するホルダ)とを有し、釣人が釣竿を持って嵌合部材を被嵌合部材に嵌め合わせることによって、当該釣竿が船縁に固定されるようになっている。なお、従来の釣竿支持装置は、嵌合解除機構も備えている。釣人は、この嵌合解除機構を操作することによって上記嵌合部材と上記被嵌合部材との嵌合を解除させ、釣竿を船縁から離脱させて操作することができる。
【0004】
ところが、前述の釣竿支持装置では、上記嵌合部材が常に釣竿に装着されることになるから、釣竿支持装置を構成する部品点数が多く、構造が複雑となっていた。また、釣人が釣竿を操作する際に上記嵌合部材が邪魔になることもあった。
【0005】
これらの問題が解決されるために、釣竿を直接保持する釣竿支持装置が提案された(たとえば、特許文献3、特許文献4参照)。この釣竿支持装置は、上記嵌合部材を備えておらず、一対の開閉アームと、この開閉アームを開閉するアーム開閉機構を備えている。そして、開閉アームが閉じられることにより釣竿の所定部位(典型的にはグリップやバット部)が当該開閉アームによって直接把持され、開閉アームが開かれることにより、釣竿が釣竿支持装置から取り外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−84550号公報
【特許文献2】特開平8−187046号公報
【特許文献3】特開平8−266205号公報
【特許文献4】特開2000−116299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記アーム開閉機構は、一対の開閉アームの間に配置された押圧部材が所定方向に押圧されることにより、リンクを介して開閉アームを駆動する構造を備えている。そして、開閉アームが閉じられると、当該当該開閉アームを閉じた姿勢にロックするロックレバーが上記押圧部材に係合し、一対の開閉アームが当該閉じた姿勢にロックされる。釣人は、上記ロックレバーを操作して上記係合を解除することにより、上記開閉アームが開いて釣竿が取り外される。
【0008】
ところで、実釣において大型の魚がヒットした場合、釣竿支持装置によってホールドされている釣竿に大きな曲げモーメントが作用する。このため、釣竿をホールドしている開閉アームに支持反力が作用し、当該開閉アームの先端部(すなわち、釣竿が当接している部分)は、開かれる方向に力を受ける。
【0009】
従来の釣竿支持装置では、開閉アームが開かれる方向に力を受けると、上記リンクを介して上記ロックレバーにきわめて大きな力が作用する。この力は、上記ロックレバーと押圧部材とがより強固に係合する方向に作用する。その結果、大型魚がヒットした場合に、釣人は、釣竿支持装置から釣竿を外すことが困難になることがあった。また、上記ロックレバーと押圧部材とがより強固に係合する方向に大きな力が作用した場合、ロックレバーが変形して当該ロックレバーと押圧部材との係合が解除されてしまうおそれもあった。
【0010】
そこで、本発明は、開閉アームが開かれる方向に力を受けた場合であっても、つまり、実釣において大型魚がヒットした場合であっても、確実に釣竿をホールドすることができると共に簡単な操作により釣竿のロックが容易に解除される釣竿支持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明に係る釣竿支持装置は、ベースと、当該ベースに設けられ、当該ベースから所定方向の第1向き側に突出した第1位置及び当該第1位置から所定方向の反第1向きである第2向きに沿ってスライドすることにより上記ベースに進入した第2位置の間で変位可能なスライダーと、当該スライダーの上記第1向き側の端面を上記第1向きに変位させるように常時弾性力を付与する付勢部材と、先端部及び基端部を有し、これらの中間部位が上記ベースに回動自在に軸支され且つ上記スライダーを挟んで対向配置されており、回動することによって上記スライダーと協働して当該スライダーの上記第1向き側の端面に配置された釣竿を保持する保持姿勢と当該保持を解除する解除姿勢との間で姿勢変化する一対の揺動アームと、一対のリンク部材を有し、当該一対のリンク部材の第1端部が上記一対の揺動アームの基端部にそれぞれ回動自在に軸支されると共に当該一対のリンク部材の第2端部同士が回動自在に連結された連結部を形成するリンク機構と、上記第2位置に達したスライダーに当接して当該第2位置から第2向きへの変位を規制すると共に、上記連結部を第1向きに押圧することにより当該連結部を同向きに変位させる操作レバーとを備える。上記連結部は、上記スライダーが上記第1位置から上記第2位置に変位する過程で上記一対のリンク部材の成す角度θが漸次大きくなり、上記スライダーが上記第2位置に達する前に当該角度θが180°(degree)となるように、上記スライダーと連結されている。
【0012】
この構成によれば、上記スライダーが上記ベースに対して上記所定方向に沿って上記第1位置あるいは第2位置にスライドすることにより、上記各揺動部材は、上記リンク機構を介して揺動し、保持姿勢と解除姿勢との間で姿勢変化する。つまり、各揺動アームの先端部同士は、上記スライダーを挟んで互いに近接してスライダーに配置された釣竿を挟持することができるし、また、各揺動アームの先端部同士は、互いに離反して釣竿の挿通を許容する。上記スライダーの第1向き側の端面は、常時上記第1向き側へ変位するように弾性付勢されているから、当該スライダーに配置された釣竿は、常に各揺動アームの先端部とスライダーとによって挟持される。
【0013】
具体的には、釣人は、釣竿を持って当該釣竿を上記スライダーの第1向き側の端面に押し付ける。このスライダーは、釣竿と共に上記第2向きに押されてスライドし、第1位置から第2位置側へスライドする。このスライダーの動きに伴って上記リンク機構の連結部が第2向きに移動する。この連結部の移動によって各リンク部材の第1端部間の距離が大きくなり、各リンク部材同士の成す角度θが大きくなっていく。これにより、各揺動アームの基端部間の距離が大きくなって、各揺動アームの先端部同士が近接し、上記釣竿は、スライダーと各揺動アームの先端部とによって挟み込まれる。そして、スライダーが第2位置に到達する前に上記角度θが180°となり、当該スライダーが第2位置に到達したときは、上記角度θが180度を超える。
【0014】
上記スライダーが第2位置に達した状態では、上記角度θが180°よりも大きくなって釣竿がホールドされているが、このとき、釣竿及びスライダーへの押圧力が除去されると、上記付勢部材の弾性力に対する反力が上記連結部に対して第2向きに作用するから、上記揺動アームの基端部同士が近接し、上記角度θが180°よりもさらに大きくなる傾向にある。しかし、上記操作レバーが設けられているから、上記スライダーが第2位置からさらに第2向きへ移動することが規制され、上記揺動アームは、解除姿勢に姿勢変化をすることなく保持姿勢の状態に維持される。換言すれば、上記角度θが180°よりも大きいときに釣竿及びスライダーへの押圧力が除去されたとしても、釣人が意図的に操作レバーを操作して上記連結部を第1向き側へ移動させない限り、上記揺動アームは解除姿勢へと変化しない。
【0015】
しかも、上記スライダーが第2位置にあるとき、つまり、上記揺動アームが保持姿勢にあって且つ上記角度θが180°よりも大きい状態のとき、当該揺動アームの先端部同士が離反される向きに外力が付加されると、当該外力は、上記揺動アームの基端部同士を近接させる向きに作用する。このため、上記連結部は、上記操作レバーに押し付けられることになるから、当該外力によって揺動アームが保持姿勢から解除姿勢に変化することはない。
【0016】
(2) 上記所定方向が上下方向、上記第1向きが上向き及び上記第2向きが下向きであるのが好ましい。
【0017】
この場合、上記釣竿やスライダーは上下方向に沿って操作されることになるので、釣人にとって非常に操作がしやすい。
【0018】
(3) 上記スライダーは、上記ベースに支持されたポットと、当該ポットに内嵌され且つ上記所定方向に沿ってスライド自在に支持されたピストンと、上記付勢部材とを備えており、当該付勢部材は、上記ポットとピストンとの間に介在され、当該ピストンを上記ポットに対して上記第1向きに弾性的に付勢するバネであるのが好ましい。
【0019】
この構成によれば、上記スライダーの構造がきわめて簡単である。
【0020】
(4) 上記ベースと上記揺動アームとの間に介在され、上記揺動アームの基端部同士が近接する向きに弾性力を付与するねじりバネがさらに備えられているのが好ましい。
【0021】
この構成によれば、上記揺動アームは、ねじりバネの弾性力によってより確実に解除姿勢となるように付勢される。これにより、スライダーが第2位置にあるときは、より確実に釣竿がホールドされる。
【0022】
(5) 上記一対のリンク部材は、当該リンク部材の第1端部がそれぞれ対応する一対の揺動アームの基端部に第1連結ピンを介して連結されたフラットバーからなり、上記連結部は、上記一対のリンク部材の第2端部同士が第2連結ピンを介して連結されており、当該第2連結ピンは、上記スライダーの上記第2向き側の端部に連結されているのが好ましい。
【0023】
この構成では、リンク機構がきわめて簡単であり、揺動アームが確実に作動する。
【0024】
(6) 上記スライダーの上記第1向き側の端部に、釣竿が載置されるシートが設けられていてもよい。このシートは、上記釣竿の周方向に沿う2箇所で当該釣竿と当接し且つ当該釣竿の外周面と長手方向に沿って当接するシート面を備えているのが好ましい。
【0025】
この構成では、釣竿は上記シートのシート面に当接した状態で上記所定方向に沿って操作される。しかも、釣竿は、上記シート面と2箇所で接しつつ操作されるので、釣人は、釣竿を安定して操作することができる。
【0026】
(7) 上記シート面は、上記シートに形成されたV字状溝の壁面により形成され得る。
【0027】
この場合、上記シート面は、簡単且つ安価に形成される。
【0028】
(8) 上記揺動アームは、上記ベースに軸支されると共に上記リンク部材と連結され且つ当該揺動アームの基端部を形成するコアと、当該コアに設けられ、当該揺動アームの先端部を形成する樹脂製パッドとを備えて構成される。上記一対の揺動アームが上記保持姿勢となった状態で上記樹脂製パッドの上記スライダーと対向する面は、当該面間の距離が上記第1向きに沿って漸次小さくなるように傾斜されているのが好ましい。
【0029】
この構成では、樹脂製パッドが釣竿に当接するので、揺動アームが釣竿に損傷を与えることがない。また、樹脂製パッドの上記面が前述のように傾斜されているから、釣竿の外径が異なる場合であっても、樹脂製パッドは確実に釣竿と当接することができる。つまり、揺動アームは、異なる外径の釣竿を保持することができる。
【発明の効果】
【0030】
この発明では、揺動アームの動作は、一対のリンク部材によって規定され、これらリンク部材が成す角度によって、リンク機構の連結部が付勢される向きが変化する。すなわち、リンク部材が成す角度θが180°よりも大きい場合は、付勢部材による弾性力は、上記連結部を操作レバーに押し付けることになると共に、当該連結部の変位は、操作レバーによって規制される。したがって、揺動アームが釣竿を保持している状態で、揺動アームが開かれる方向に力が作用した場合であっても、つまり、実釣において大型魚がヒットした場合であっても、確実に釣竿がホールドされる。しかも、操作レバーが第1向きに操作されるだけで、簡単に釣竿のロックが解除される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿支持装置の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る釣竿支持装置の正面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る釣竿支持装置の背面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る釣竿支持装置の右側面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る釣竿支持装置の一部断面正面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る釣竿支持装置の平面図である。
【図7】図7は、図2におけるVII−VII断面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係る釣竿支持装置の揺動アームの姿勢変化を示す図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係る釣竿支持装置のポットの正面図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に係る釣竿支持装置のポットの平面図である。
【図11】図11は、図9におけるXI−XI断面図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態に係る釣竿支持装置のピストンの正面図である。
【図13】図13は、本発明の一実施形態に係る釣竿支持装置のピストンの平面図である。
【図14】図14は、図12におけるXIV−XIV断面図である。
【図15】図15は、本発明の一実施形態に係る釣竿支持装置のピストンの縦断面図である。
【図16】図16は、図5における要部拡大図である。
【図17】図17は、本発明の一実施形態に係る釣竿支持装置のシートの斜視図である。
【図18】図18は、本発明の一実施形態に係る釣竿支持装置のシートの平面図である。
【図19】図19は、図18におけるXIX−XIX断面図である。
【図20】図20は、本発明の一実施形態の変形例に係る釣竿支持装置の要部拡大正面図である。
【図21】図21は、本発明の一実施形態の変形例に係るシートの一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0033】
[概略構成と特徴点]
【0034】
図1は、釣竿支持装置10が釣竿11を支持している状態を示している。この釣竿支持装置10は、一般に船釣りに供され、図示されていない固定治具を介して船縁に固定される。また、一般に釣竿は、釣竿本体、グリップ及びリールシートを備えており、本実施形態では、釣竿本体が釣竿支持装置10によって支持されている。もっとも、釣竿11のうち上記リールシートやグリップが釣竿支持装置10に支持されてもよい。
【0035】
この釣竿支持装置10は、実釣において釣竿11を保持し且つ当該保持を解除することができる。図8が示すように、スライダー12に釣竿11が載置され、上下方向18(特許請求の範囲に記載された「所定方向」に相当)の下向き(特許請求の範囲に記載された「第2向き」に相当)に押されることにより、リンク機構13を介して揺動アーム14、15が姿勢変化し(同図(b)参照)、釣竿11がスライダー12と揺動アーム14、15とによって挟み込まれて保持されるようになっている。
【0036】
本実施形態に係る釣竿支持装置10の特徴とするところは、上記リンク機構13の構造である。すなわち、このリンク機構13が後述の構造を備えることにより、釣竿支持装置10が釣竿11を支持している状態で大型の魚がヒットした場合であっても釣竿11は確実に保持され、しかも、釣人が簡単な操作を行うことによって釣竿11が釣竿支持装置10から容易に取り外されるようになっている。
【0037】
[構造]
【0038】
図1並びに図2ないし図8が示すように、釣竿支持装置10は、ベース16と、ベース16の中央に配置されたスライダー12と、ベース16に設けられた揺動アーム14、15と、スライダー12の動きに連動して揺動アーム14、15を駆動するリンク機構13と、揺動アーム14、15を講述のように回動付勢するねじりバネ49,50と、リンク機構13の動きを制御する操作レバー17とを備えている。
【0039】
[ベース]
【0040】
ベース16は、金属(典型的にはステンレス鋼)からなり、図1が示すように全体としてU字状に形成されている。具体的には、ベース16は、基板19と、基板19の左右方向20の両端に立設された一対のフォーク21、22と、フォーク21、22の間に配置された固定リング23とを有する。基板19、フォーク21、22、固定リング23は、一体的に形成されている。フォーク21、22が基板19の両側に配置されることにより、ベース16の中央にキャビティ24(図3参照)が形成されている。スライダー12は、固定リング23に嵌め込まれて支持された状態でキャビティ24内に配置される。フォーク21、22は、それぞれ一対の対向する平板25,26を備えており、この一対の平板25、26の間に揺動アーム14、15が配置されている。
【0041】
[スライダー]
【0042】
図5が示すように、スライダー12は、ポット27と、ピストン28と、バネ29(特許請求の範囲に記載された「付勢部材」に相当)とを有する。図9から図11が示すように、ポット27は、上端面が開口された略円柱形状を呈している。ポット27は中空に形成されており、当該開口が外部空間と内部空間とを連続している。つまり、ポット27は、容器状に形成されている。図10が示すように、ポット27の内周面には、上下方向18(図10の紙面と垂直な方向)に沿ったスライド部30が形成されている。スライド部30は、ポット27の内周面において90度ずつ角度がずらされて合計4つが設けられている。スライド部30は、上下方向18に沿った溝31を有している。図1から図3が示すように、ポット27は、ベース16の中央のキャビティ24において、固定リング23の内側に保持されている。ポット27は、固定リング23の内側を、図8(a)に示す第1位置から、図8(b)に示す第2位置までの範囲を上下方向18に移動自在である。
【0043】
また、図9及び図11が示すように、ポット27の外底面に一対の結合板32が設けられている。これら一対の結合板32は、平板からなり、下向きに突出している。図5及び図8が示すように、各結合板32にリンク機構13の連結部51が連結されている。具体的には、リンク機構13を構成するフラットバー35、36の第2端部38が第2連結ピン34を介して結合板32に回動自在に連結されている。つまり、フラットバー35、376の第2端部38同士が重合して上記連結部51を構成している。
【0044】
さらに、図9及び図10が示すように、ポット27の外周面にキー53が突設されている。このキー53は、上記固定リング23(図1参照)に設けられたキー溝54と嵌合しており、キー溝54に沿って上下方向18に相対移動することができる。なお、図1では図示されていないが、キー溝54は、固定リング23の中央を挟んで対向する位置にも設けられている。
【0045】
図12から図15が示すように、ピストン28は略円筒形状を呈している。ピストン28は、ポット27の内部空間に収容可能である。ピストン28の外周面に突起39が設けられている。突起39は、ピストン28の外周面において90度ずつ角度がずらされて合計4つが設けられている。4つの突起39は、それぞれピストン28の下端部近傍から径方向に突出されている。
【0046】
図7が示すように、ピストン28は、ポット27の内部空間に収容されており、4つの突起39がそれぞれスライド部30の溝31に嵌め合わされる。突起39は、それぞれ溝31の内部を上下方向18(図7の紙面と垂直な方向)に沿って移動することができる。これにより、ピストン28がポット27に対してスライド可能とされている。図5が示すように、ポット27の内部空間の底にはピストン28を上方に付勢するバネ29が設けられている。バネ29は、ポット27とピストン28との間に配置されたコイルバネである。これにより、ピストン28は、平常時において、ポット27の上端の開口から上方に突出した状態にある。
【0047】
図16が示すように、ピストン28の上端には、釣竿11が載置されるシート40が取り付けられている。シート40は、たとえば樹脂によって形成されている。図16から図19が示すように、シート40の上部には、釣竿11と当接するシート面41が形成されている。図16及び図19が示すように、前後方向42(図16、図19の紙面と垂直な方向)から見て、シート面41は、略V字状に形成され、中央部が陥没している。シート面41の中央部(底に相当する部分)は釣竿11とは当接せず、底よりも左右方向20の両外側において、シート面41が釣竿11と当接する。図19には、内径の異なる3つの釣竿11を示しているが、いずれの釣竿11においても、底よりも左右方向20の両外側の2箇所において、シート面41が釣竿11と当接している。なお、図16、図19には断面のみを示しているが、シート面41は、前後方向42に沿って釣竿11と当接している。
【0048】
[揺動アーム]
【0049】
図1、図5及び図6が示すように、揺動アーム14、15は、略棒状に形成された金属製のコア43、44と、コア43、44の先端部に取り付けられた樹脂製のパッド45、46とを有する。コア43、44は先端部(図5における上方側の端部)が鍵状に湾曲されており、当該先端部にパッド45、46が取り付けられている。パッド45、46は、コア43、44の先端部の大部分を被覆している。
【0050】
図1が示すように、揺動アーム14は、フォーク21に取り付けられており、揺動アーム15は、フォーク22に取り付けられている。フォーク21、22において、それぞれ平板25、26の間に揺動アーム14、15の一部が収容されて取り付けられている。図5が示すように、平板25、26(図1参照)は、軸47A、47Bを介して揺動アーム14、15と連結されている。つまり、軸47A、47Bは、前後方向42に沿って平板25、26及び揺動アーム14、15の軸穴48に挿通されて、これにより、揺動アーム14、15が回動自在となっている。この軸穴48は、揺動アームの14、15の中間部位に設けられている。図1が示すように、揺動アーム14,15の先端部(軸穴48よりも先端側)は、フォーク21、22の外側に延出されている。揺動アーム14、15の基端部は、平板25、26の間に概ね収容されている。なお、揺動アーム14,15の基端部には、第1連結ピン33A,33B(図5参照)を介して、後述するフラットバー35,36(図5参照)の第1端部37が回動自在に連結されている。
【0051】
動作の詳細については後述するが、揺動アーム14,15は、軸47A,47Bを中心に先端部が開かれた解除姿勢(図8(a)参照)と、閉じられた保持姿勢(図8(b)参照)との間で、回動し姿勢変化する。揺動アーム14,15は、保持姿勢において釣竿11を固定する。その際、図16が示すように、釣竿11は、シート40のシート面41と揺動アーム14、15とによって挟み込まれた状態になる。揺動アーム14,15は、その長手方向が上下方向18に沿っており、先端部が上方に位置している。揺動アーム14,15の先端近傍部分は左右方向20の内側に湾曲しており、2つのパッド45,46が左右方向20に沿って並設された状態となる。2つのパッド45,46が協働して釣竿11の上半部を覆っている。
【0052】
図16が示すように、パッド45,46の内側の面55が釣竿11の周面にそれぞれ当接されている。当該面55は、釣竿11側に向かって膨らんでいる。そして、当該面55同士の距離は、上方に向かうほど小さくなっている。したがって、2つのパッド45,46は、釣竿11と2箇所で接触しており、当該接触している部分以外の部分では、各パッド45,46は釣竿11と当接していない。なお、パッド45、46は、前後方向42(同図の紙面と垂直な方向)に沿って釣竿11と線接触している。
【0053】
[リンク機構]
【0054】
図5、図8が示すように、リンク機構13は、平板棒状のフラットバー35、36(特許請求の範囲に記載された「リンク部材」に相当)を有している。フラットバー35は、前後方向42に挿通された第1連結ピン33Aを介して、長手方向の一方の端部である第1端部37が、揺動アーム14の基端部と回動自在に連結されている。同様にフラットバー36は、前後方向42に挿通された第1連結ピン33Bを介して、第1端部37が、揺動アーム15の基端部と回動自在に連結されている。第1端部37と反対側の端部である第2端部38は、それぞれ、フォーク21、22から中央側のキャビティ24に進入している。第2端部38は、それぞれ、前後方向42に挿通された第2連結ピン34を介して、ポット27の結合板32と回動自在に連結されている。前述のように、第2端部38が連結されることによって上記連結部51が構成されている。
【0055】
[ねじりバネ]
【0056】
図5、図8が示すねじりバネ49,50は、揺動アーム14,15をそれぞれ、先端部が互いに開く向き(解除姿勢側)に付勢するものである。ねじりバネ49,50は、揺動アーム14,15とベース16との間に配置されている。ねじりバネ49,50の中央部に軸47A,47Bが挿通されている。つまり、ねじりバネ49,50は、揺動アーム14,15の上記中間部位に取り付けられている。
【0057】
[操作レバー]
【0058】
図1、図4が示すように、操作レバー17は、薄平な棒形状を呈している。操作レバー17は、キャビティ24の内部に進入している。操作レバー17は、スライダー12及びリンク機構13の下側において、前後方向42に沿って配置されている。スライダー12よりも後方位置において、キャビティ24の後端部が、ベース16に設けられたレバー取付部52(図4に図示)に軸支されている。これにより、操作レバー17は、図4の位置からレバー取付部52を中心に時計回りに回動することができる。キャビティ24よりも前方では、操作レバー17が上方へ傾斜され、より高い位置に位置している。これは、釣人が操作レバー17を操作することを容易とするためである。この部分が釣人によって押し上げられることで、操作レバー17が回動し、上記連結部51及びスライダー12を押し上げる。詳細については後述される。
【0059】
[操作要領]
【0060】
まず、揺動アーム14,15が解除姿勢にあるとき、釣人が釣竿11を釣竿支持装置10に固定する手順が説明される。
【0061】
図8(a)が示すように、揺動アーム14,15が解除姿勢にあるとき、保持姿勢の状態にあるときに比べて揺動アーム14,15の基端部同士が左右方向20に沿って近接する。そのため、リンク機構13は、フラットバー35,36が左右方向20を長手方向として一直線に並んだ状態になることはできず、第2端部38を中心にフラットバー35,36が上方に凸となる山形に形成される。これにより、スライダー12が上方へ押し上げられている。このときのスライダー12の位置が第1位置と称される。ねじりバネ49,50の弾性力によって、揺動アーム14,15は先端部同士が離反する向きに付勢されているため、外力が作用しない状態では、揺動アーム14,15及びリンク機構13は、この状態を維持する。
【0062】
釣人が、釣竿11をシート40のシート面41に載置して、釣竿11ごとピストン28を下方へ押し下げると、ピストン28がポット27の内部を下方へスライドする。ピストン28を押し下げる力がねじりバネ49,50の弾性力よりも大きい場合、ピストン28がバネ29を縮短させ、ポット27を下方へ押し下げる。これにより、スライダー12が固定リング23に案内された状態で当該固定リング23の内側を下方へ移動する。スライダー12の移動により、結合板32が下方に押し下げられる。
【0063】
結合板32が下方へ移動するに伴って、上記連結部51も下方へ移動する。この移動に伴って、第2端部38を中心とする2つのフラットバー35,36が為す角度θが漸次大きくなる。フラットバー35,36は、左右方向20を長手方向として一直線に並んだ状態(角度θが180°)となり、スライダー12はそこから更に下方まで移動することが可能である。つまり、最終的に角度θは180°よりも僅かに大きくなり、スライダー12は、フラットバー35,36の第2端部38が第1端部37よりも僅かに下方に位置するまで下げられる。スライダー12の移動は、連結部51が操作レバー17に当接することによって止められる(図8(b)の状態)。このときのスライダー12の位置が、第2位置と称される。
【0064】
図8(b)が示すように、スライダー12が第2位置にある状態では、フラットバー35,36の先端が近接して保持姿勢となっている。ピストン28がポット27に対して上方へ付勢されているため、釣竿11はシート40とパッド45,46とによって上下から挟み込まれて固定された状態となっている。
【0065】
スライダー12が第2位置に移動した後、釣人は、釣竿11の押圧を中止する。このとき、ねじりバネ49,50の弾性力によって揺動アーム14,15は再び先端側が開こうとする。しかし、角度θが180°よりも大きくなっているため、揺動アーム14,15がフラットバー35,36の第1端部37を左右方向20の中央側へ移動させようとする力は、連結部51を下方へ移動させる向きに作用する。連結部51の下方への移動は操作レバー17によって阻止されているため、フラットバー35,36の第1端部37が中央側へ移動することはできず、その結果、揺動アーム14,15の先端側が開くことが阻止される。
【0066】
続いて、釣人が、釣竿支持装置10から釣竿11を取り外す際の手順が説明される。
【0067】
釣人は、操作レバー17を上方へ押し上げる。連結部51がスライダー12と共に上向き(特許請求の範囲に記載された「第1向き」に相当)に移動されて、角度θが180°よりも小さくなる。このため、フラットバー35,36の第1端部37が左右方向20の中央側へ移動可能となり、ねじりバネ49,50の弾性力によって揺動アーム14,15が回動し、その先端部同士が離反する。こうして、揺動アーム14,15は、解除姿勢へと変化する。また、スライダー12が第1位置まで移動すると、釣竿支持装置10は、図8(a)に示す状態に復帰する。
【0068】
[実施形態の作用効果]
【0069】
本実施形態に係る釣竿支持装置10によれば、フラットバー35,36の為す角度θが180°よりも大きいときにスライダー12への押圧力が除去されたとしても、釣人が意図的に操作レバー17を操作して上記連結部51を上方へ移動させない限り、揺動アーム14,15は解除姿勢へと変化しない。したがって、釣竿11が確実に固定される。一方、上記連結部51が上方へ移動された場合には、揺動アーム14,15は、容易に解除姿勢へと変化することができるので、釣竿11が簡単に取り外される。
【0070】
また、釣竿11やスライダー12は上下方向に沿って操作されることになるので、釣人にとって非常に操作がしやすい。
【0071】
また、リンク機構13、揺動アーム14,15、及びスライダー12などの各部の構造がきわめて簡単であるため、釣竿支持装置10は、低コストに生産される。また、揺動アーム14,15の姿勢を維持するために、留め具などを引っ掛ける構成を採用していないので、剛性をきわめて高くすることができる。
【0072】
また、パッド45,46及びシート40によって、上下方向から2箇所ずつが釣竿11に当接されるため、釣竿11はより一層安定的に固定される。また、異なる内径の釣竿11を固定することも可能である。
【0073】
[変形例]
【0074】
次に、本実施形態の変形例について説明される。
【0075】
図20は、本発明の変形例に係るスライダー12を示している。同図(a)は上記実施形態に係るスライダー12のシート40を示しており、同図(b)が本変形例に係るスライダー12のシート60を示している。本変形例では、シートの形状のみが上記実施形態と相違している。
【0076】
本変形例に係るシート60は、上記実施形態のシート40よりも全高が高くされており、また、左右方向20における中央の窪みの幅が小さくされている。図21には、内径の異なる3つの釣竿11を示している。内径の比較的大きな2つの釣竿11は、底よりも左右方向20の両外側の2箇所において、シート面41と当接している。一方、内径が最も小さな釣竿11は、窪みの中に入り込んだ状態となり、下側の周面に沿ってシート40と当接している。このように、本変形例に係るシート60によれば、多様な内径の釣竿11が確実に固定され得る。
【0077】
なお、スライダー12に対して、シート40及びシート60が着脱自在に構成されていてもよい。これにより、釣人がシート40又はシート60を選択的に使用することができ、また、シート40又はシート60が劣化した際にも交換が容易となる。
【符号の説明】
【0078】
10・・・釣竿支持装置
11・・・釣竿
12・・・スライダー
13・・・リンク機構
14,15・・・揺動アーム
16・・・ベース
17・・・操作レバー
27・・・ポット
28・・・ピストン
29・・・バネ(付勢部材)
33A,33B・・・第1連結ピン
34・・・第2連結ピン
35,36・・・フラットバー(リンク部材)
37・・・第1端部
38・・・第2端部
40,60・・・シート
41,61・・・シート面
43,44・・・コア
45,46・・・パッド(樹脂製パッド)
49,50・・・ねじりバネ
51・・・連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
当該ベースに設けられ、当該ベースから所定方向の第1向き側に突出した第1位置及び当該第1位置から所定方向の反第1向きである第2向きに沿ってスライドすることにより上記ベースに進入した第2位置の間で変位可能なスライダーと、
当該スライダーの上記第1向き側の端面を上記第1向きに変位させるように常時弾性力を付与する付勢部材と、
先端部及び基端部を有し、これらの中間部位が上記ベースに回動自在に軸支され且つ上記スライダーを挟んで対向配置されており、回動することによって上記スライダーと協働して当該スライダーの上記第1向き側の端面に配置された釣竿を保持する保持姿勢と当該保持を解除する解除姿勢との間で姿勢変化する一対の揺動アームと、
一対のリンク部材を有し、当該一対のリンク部材の第1端部が上記一対の揺動アームの基端部にそれぞれ回動自在に軸支されると共に当該一対のリンク部材の第2端部同士が回動自在に連結された連結部を形成するリンク機構と、
上記第2位置に達したスライダーに当接して当該第2位置から第2向きへの変位を規制すると共に、上記連結部を第1向きに押圧することにより当該連結部を同向きに変位させる操作レバーとを備え、
上記連結部は、
上記スライダーが上記第1位置から上記第2位置に変位する過程で上記一対のリンク部材の成す角度θが漸次大きくなり、上記スライダーが上記第2位置に達する前に当該角度θが180°(degree)となるように、上記スライダーと連結されている釣竿支持装置。
【請求項2】
上記所定方向が上下方向、上記第1向きが上向き及び上記第2向きが下向きである請求項1に記載の釣竿支持装置。
【請求項3】
上記スライダーは、
上記ベースに支持されたポットと、
当該ポットに内嵌され且つ上記所定方向に沿ってスライド自在に支持されたピストンと、
上記付勢部材とを備えており、
当該付勢部材は、上記ポットとピストンとの間に介在され、当該ピストンを上記ポットに対して上記第1向きに弾性的に付勢するバネである請求項1又は2に記載の釣竿支持装置。
【請求項4】
上記ベースと上記揺動アームとの間に介在され、上記揺動アームの基端部同士が近接する向きに弾性力を付与するねじりバネがさらに備えられている請求項1から3のいずれかに記載の釣竿支持装置。
【請求項5】
上記一対のリンク部材は、
当該リンク部材の第1端部がそれぞれ対応する一対の揺動アームの基端部に第1連結ピンを介して連結されたフラットバーからなり、
上記連結部は、上記一対のリンク部材の第2端部同士が第2連結ピンを介して連結されており、
当該第2連結ピンは、上記スライダーの上記第2向き側の端部に連結されている請求項1から4のいずれかに記載の釣竿支持装置。
【請求項6】
上記スライダーの上記第1向き側の端部に、釣竿が載置されるシートが設けられており、
当該シートは、上記釣竿の周方向に沿う2箇所で当該釣竿と当接し且つ当該釣竿の外周面と長手方向に沿って当接するシート面を備えている請求項1から5のいずれかに記載の釣竿支持装置。
【請求項7】
上記シート面は、上記シートに形成されたV字状溝の壁面により形成されている請求項6に記載の釣竿支持装置。
【請求項8】
上記揺動アームは、
上記ベースに軸支されると共に上記リンク部材と連結され且つ当該揺動アームの基端部を形成するコアと、
当該コアに設けられ、当該揺動アームの先端部を形成する樹脂製パッドとを備え、
上記一対の揺動アームが上記保持姿勢となった状態で上記樹脂製パッドの上記スライダーと対向する面は、当該面間の距離が上記第1向きに沿って漸次小さくなるように傾斜されている請求項1から7のいずれかに記載の釣竿支持装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−94113(P2013−94113A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239497(P2011−239497)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】