説明

鉄道車両の天井構造

【課題】清掃性やリサイクル性の向上を図ると共に、軽量化やコストダウンを可能とする鉄道車両の天井構造を簡易な構成で安価に提供する。
【解決手段】天井部1は、車両長手方向に渡って、分割された複数の天井ユニットUとしてアルミ板にて形成されており、各天井ユニットUは、幅方向略中央部に形成されてその内部に送風機を収容する中央収容部20と、この中央収容部20の幅方向両端部に形成されて空調用空気の流路を形成する風道部10とを有し、両端の各風道部10の底板は、車両客室CRの天井面CCを形成していると共に、開閉可能な点検蓋10cとして形成されており、かつ、当該点検蓋10cのそれぞれは、隣接する中央収容部20の側板20sの下端部まで延長され、当該側板20sに回転可能に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の天井構造に関するものであり、特に、清掃性、保守性、リサイクル性の向上を図った天井構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の天井部を、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)等の樹脂により一体成型してユニット構造とした天井構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、特許文献1には、天井の一部を取り外し可能なようにFRP樹脂にて一体ユニット化し、当該ユニット化された天井部を下方より嵌め込み可能に構成した天井構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4071270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された先行技術では、ユニット構造の天井部を部分的に取り外し可能とするものの、天井内の清掃や保守点検の際には、かかる取り外し可能な天井ユニットを吊り降ろして取り外す必要が生じていた。
【0006】
具体的には、上記ユニット構造の天井部は、断熱性能や剛性を確保するために、FRP樹脂による成形厚を比較的厚く(厚さ2〜3.5mm)形成する必要があり、ユニット重量が増大(約40kg)して作業者の負担が増大する上に、天井ユニットの取り外し作業に当たっては、蛍光管、蛍光灯具、アンテナ線、横流ファン、吊り手棒といった天井部に取り付けられた付帯設備を事前に取り外す必要が生じ、清掃時の作業工数の増大や作業性の低下といった問題が生じていた。さらに、結露防止のためには、発砲ポリエチレン等から形成されたシート状の断熱材を風道部に貼り付ける必要があるため、付帯的な工数が増大すると共にかかる断熱材に塵埃が付着し易くなり、空調吹き出し口から埃等が吹き出すといった問題が生じていた。そして、このような問題を未然に回避するためにも風道内の清掃頻度は増大する傾向にあり、かかる清掃の度に上記天井ユニットを取り外すことは作業性を著しく損ねていた。
【0007】
加えて、上記天井ユニットは、FRP等の強化樹脂にて一体成型されるため、比較的高価な成型用の型が必要となりコストアップするといった問題や、かかるFRP樹脂自体が、近年の社会的な要請であるリサイクル性に劣る(リサイクルが困難)といった問題も生じていた。
【0008】
そこで、本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、清掃性やリサイクル性の向上を図ると共に、軽量化やコストダウンを可能とする鉄道車両の天井構造を簡易な構成で安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る鉄道車両の天井構造は、車両客室と車両屋根との間に天井部を形成した鉄道車両の天井構造であって、前記天井部は、車両長手方向に渡って、分割された複数の天井ユニットとしてアルミ板にて形成されており、各天井ユニットは、幅方向略中央部に形成されてその内部に送風機を収容する中央収容部と、この中央収容部の幅方向両端部に形成されて空調用空気の流路を形成する風道部とを有し、前記両端の各風道部の底板は、前記車両客室の天井面を形成していると共に、開閉可能な点検蓋として形成されており、かつ、当該点検蓋のそれぞれは、隣接する中央収容部の側板の下端部まで延長され、当該側板に回転可能に支持されていることを特徴とするものである。
【0010】
このように構成した場合には、天井ユニットを取り外すことなく、清掃等の保守作業が簡易な構成で容易に可能となると共に、点検蓋を風道部の側板に取り付ける構成に比し、当該点検蓋を均一の大きさに形成することができ、部品の標準化によるコストダウンや車両天井面の美観の向上に寄与することができる。また、点検蓋を開放した際に、風道部と中央収容部との間の空間から、風道部側板の結露の確認や、風漏れのチェック、清掃等が可能となる。加えて、リサイクル性の悪いFRP樹脂に替えて、加工性の良いアルミ板を用いることにより、ヒンジ部の形成支持を容易に可能とすると共に、リサイクル性の向上やコストダウンが可能となる。
【0011】
また、前記風道部は、対向するアルミ板の間に板状の発泡性断熱材を介装した積層構造のアルミ積層板にて形成されていることが好ましい。
【0012】
このように構成した場合には、アルミ板を使用することによる断熱性能の低下を、介装された断熱板にて補うと共に、埃等が付着し易い発泡性断熱材がアルミ板の表面に露出することがないので、断熱材への埃等の付着を確実に防止して清掃性の向上に寄与することができる。
【0013】
さらに、前記中央収容部の底板は、前記車両客室の天井面を形成していると共に、車両客室内に送風を導く傾斜板を有する開閉可能な整風板として形成されており、前記点検蓋と前記整風板とは、前記中央収容部の共通の側板に回転可能に支持されていると共に、前記点検蓋の回転支点と前記整風板の回転支点とは、前記共通の側板を挟んで互いに反対側に配置形成されていることが好ましい。
【0014】
このように構成した場合には、中央収容部を画成する側板を点検蓋及び整風板を回転可能に支持する支持部材として兼用することにより、部品点数の削減に伴う軽量化やコストダウンに寄与すると共に、軽量化のために薄肉化したアルミ側板に対して、回転支点を片側に配置する構成に比し、操作負荷による変形を経年的に抑制することができる。
【0015】
以上において、前記発泡性断熱材は、炭酸カルシウムを主原料とする発泡性断熱材であることが好ましい。
【0016】
このように構成した場合には、良好な断熱性能及び強度を確保して結露の発生を防止すると共に、アルミ板の厚さを低減することが可能となり天井ユニットの大幅な重量軽減に寄与することができる。
【0017】
さらに、前記アルミ積層板中のアルミ板の総厚さは、0.8〜1mmであることが好ましい。
【0018】
このように構成した場合には、従来のFRP製の天井ユニットに比し、大幅な軽量化が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、清掃性やリサイクル性の向上を図ると共に、軽量化やコストダウンを可能とする鉄道車両の天井構造を簡易な構成で安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態に係る鉄道車両の天井構造の概要を説明するための模式図である。
【図2】本実施の形態に係る鉄道車両の天井構造の構成を示す模式的斜視図である。
【図3】本実施の形態に係る天井ユニットの配置構成を示す模式図である。
【図4】本実施の形態に係るアルミ積層板の概要を示す模式図であり、(a)はアルミ積層板の構成を示す模式図であり、(b)はアルミ積層板、アルミ板それぞれの形成箇所を示す模式図である。
【図5】本実施の形態に係る点検蓋の取り付け構造を示す側面図である。
【図6】本実施の形態に係る整風板の取り付け構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る鉄道車両の天井構造の一実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1は、本発明に係る鉄道車両の天井構造を説明するための模式図であり、図2は、天井構造を示す斜視図である。また、図3は、車両の長手方向に対して分割された天井ユニットの配置構成を示す模式図である。
【0022】
図1及び図2に示すように、本発明に係る鉄道車両の天井構造1は、車両屋根部TRと車両客室CRの上部(天井)CCとの間の空間に形成されており、空調機からの空気流の流路(空調ダクト)を形成する風道部10と、車両客室CR内の空気を撹拌する送風機等が設置されている中央収容部20とを備えている。さらに、風道部10の幅方向(車両長手方向と直交する方向)両端部には、灯具座SCを介して不図示の側天井が連接して形成されている。
【0023】
また、本実施の形態において、上記空調機は、コンプレッサー、コンデンサー等の熱交換器を備え、車両屋根部TRから突出するように設けられた不図示の空調機収容部内に設置されている。
【0024】
本実施の形態に係る風道部10、中央収容部20を構成する外装体(躯体)は、いずれも断面略方形状に形成されており、車両幅方向中央部に中央収容部20が配設されていると共に、その両端に風道部10が配設されている。
【0025】
また、図3に模式的に示すように、天井部Uは、分割されたユニット構造(本例では、1車両当たり12ユニットに分割)となっており、一部の天井ユニット(本例では、図中、ハッチングで示したユニット)U0には、開閉可能な点検蓋10cや整風板20cが設けられている。
【0026】
そして、風道部10内の清掃を行う際には、当該風道部10を取り外すことなく、点検蓋10cを開放するのみで上記風道部10内の清掃を可能とすると共に、隣接する天井ユニット(点検蓋が設けられていない天井ユニット)U1については、点検蓋10cにより開放された天井ユニットU0の開口部から清掃用ノズルを挿入して風道部10内の清掃を行うようになっている。なお、点検蓋10cを設ける天井ユニットU0は、適宜任意に選定することができるが、ユニットの簡素化やコストダウンといった観点からは、図3に模式的に示すように、1つ又は2つおきの天井ユニットごとに点検蓋10cを設けることが好ましい。
【0027】
以下、点検蓋10cを設けた天井ユニットU0の構成について図面を参照してさらに説明する。ここで、図4(a)は、本発明に係るアルミ積層板の構成を示す模式図であり、(b)は、アルミ積層板、アルミ板それぞれの形成箇所を示す模式図である。
【0028】
本実施の形態に係る天井ユニットU0は、リサイクル性の悪いFRP樹脂を用いることなく加工性の高いアルミ板にて天井ユニットUの外装体(躯体)を形成しており、かつ、当該アルミ板の厚さを極力薄くすることを可能として、従来に比し、大幅な軽量化を実現している。
【0029】
上記中央収容部20は、アルミ板にて断面略方形状に形成されており、その内部に車両客室CR内の空気を撹拌するための送風機(横流ファン)が設置されている。一方、中央収容部20の下面には、車両客室CRの天井面CCを形成すると共に送風機からの送風を車両客室CR内に拡散させる整風板20wが取り付けられている。
【0030】
この整風板20wは、図1に模式的に示すように、方形状の枠体の内部に複数の傾斜板20bを配設したものであり、各傾斜板20bの傾斜角は、送風機からの送風が車両客室CR内に行き渡るように設定されている。また、横流ファンの保守点検のために、一部の整風板20wは、後述する点検蓋10cと同様に、開閉可能な整風板20cとして形成されている。
【0031】
一方、上記風道部10の外装体は、図4(a)に模式的に示すように、対向するアルミ板At,Acの間に、比較的剛性の高い硬質軽量発泡性断熱板(例えば、密度:100kg/m3以下、熱伝導率:0.0372W/m・k以下、曲げ強度:0.5N/mm2以上)Isを介装した積層板(以下、アルミ積層板とも称する)ALにより形成されており、中央収容部20とは独立した密閉構造となっている。この風道部10は、車両屋根部TRに設置された空調機からの空調用空気の流路を形成していると共に、風道部10の下面には、開閉可能な点検蓋10cが設けられている。
【0032】
具体的には、図4(a)に模式的に示すように、天井側アルミ板At(本例では、厚さ0.4mm)及び客室側アルミ化粧板Ac(本例では、厚さ0.6mm)の間に発泡性断熱板(本例では、厚さ6.0mmのフジ化成工業株式会社製ロックセルボード、密度:90kg/m3、熱伝導率:0.0372W/m・k、曲げ強度:0.51N/mm2)を貼り付けた積層構造となっており、従来のFRP(厚さ2〜3.5mm)に発泡ポリエチレン等の断熱材(厚さ5.0mm)を貼り付けた天井ユニットと略同等の断熱性能を実現すると共に、断熱材Isを芯材としたサンドイッチ構造を採用することによりアルミ積層板ALの剛性を確保し、上下アルミ板At,Acの厚さの大幅な低減を可能(本例では、天井側アルミ板Atと客室側アルミ板Acとの総厚さで1.0mm)としている。
【0033】
なお、より一層の軽量化を図るといった観点からは、客室側に面さない箇所では、下板Acの厚さを上板(天井側アルミ板)Atと同等な厚さ(本例では、厚さ0.4mm)としても差し支えない。
【0034】
また、上記アルミ積層板ALでは、硬質軽量断熱材Isとして炭酸カルシウム系発泡断熱材を介装したが、従来と同等な断熱性能及び剛性を確保できれば、介装する発泡性断熱材は、適宜選定することができる。硬質軽量発泡性断熱材としては、無機化合物系断熱材あるいは有機化合物系断熱材を用いることができる。例えば、炭酸カルシウム系発泡断熱材、ホウ珪酸シリカ系断熱材、硬質ウレタンフォーム、硬質ポリスチレンフォーム、ポリイミドフォーム、硬質ポリエチレンフォーム、架橋ポリエチレンフォーム、ガラスウール含有ハニカムコア等があるがこれに限られるものではない。
【0035】
さらに、上記アルミ積層板ALの形成箇所としては、図4(b)に模式的に示すように、少なくとも風道部10の側板10s、底板(点検蓋)10cを上記アルミ積層板ALにて形成すると共に、天板10tについては、製作容易性の観点から、中央収容部20と共通の天板10tとして、上記アルミ積層板ALにて連続的に一体形成している。
【0036】
なお、本実施の形態において、空調用空気の流路である上記風道部10は、車両客室CR内全体に渡って空調が均一となるように、車両の長手方向端部に向かうに従い、その断面積が狭くなるように側板10sの取付位置が変更調整されている。具体的には、車両端部に向かうに従い、中央収容部20側の側板10sが、車両幅方向端部に近づく(風道部10内の側板10s同士の間隔が狭くなる)ように配設されている(図3参照)。
【0037】
一方、結露等が問題とならない中央収容部20の側板20sについては、厚さ1.2mmの薄肉のアルミ板Alを略鉛直方向に立設して形成している。
【0038】
このように構成した本実施の形態に係る天井構造では、結露が問題となる風道部10に、板状の発泡性断熱材Isを芯材として介装した積層構造のアルミ積層板ALを用いることにより、従来の厚さ2〜3.5mmのFRP製の天井ユニットと同等な断熱性能(熱伝導率:0.0372W/m・k以下)を確保して結露の発生を防止すると共に、断熱材Isがアルミ表面に露出することがないので、断熱材への塵埃等の付着を防止して清掃性、保守性の向上を図ることができる。また、芯材を介装した積層構造(サンドイッチ構造)のアルミ積層板ALにて強度(剛性)を確保することにより、アルミ板自体の厚さを低減し、天井ユニットUの大幅な軽量化(従来のFRP製の天井ユニットに比し、10両編成の車両当たり、1〜1.5トンの軽量化)を可能としている。
【0039】
本実施の形態において、上記点検蓋10cは、図5に示すように、車両客室CRの天井面CCを形成すると共に、中央収容部20の側面(側壁)を構成する側板20sの下端部まで延長され、側板20sにネジ止め固定されたL字状の支持金具21の先端に設けられたヒンジ部(蝶番)23を介して回転可能に取り付けられている。一方、点検蓋10cの先端側(ヒンジ部23と反対側)は、風道部10内に設けた仕切板(多数の貫通孔が形成された風量調節用のアルミ板)10wにネジ止め固定するようになっている。
【0040】
このように点検蓋10cを中央収容部20まで延長して形成することにより、車両長手方向に沿って配設位置が異なる風道部10の側板10sに固定する構成に比し、点検蓋10cを均一の大きさに形成することができ、部品の標準化によるコストダウン及び車両天井面の美観の向上に寄与することができる。
【0041】
また、点検蓋10cの開放時に、風道部10内のみならず、風道部10と中央収容部20との間に形成された空間(デッドスペース)をも開放することができ、当該デッドスペースから、風道部側板10sの結露の確認や、風漏れのチェック、清掃等が可能となる。
【0042】
一方、本実施の形態に係る開閉可能な整風板20cは、図6に示すように、点検蓋10cが取り付けられた側板10sと共通の側板10sに取り付けられている。なお、図6では、明瞭化のために、整風板20cのみを取り付けた状態を示している。
【0043】
具体的には、上記整風板20cは、中央収容部20の側板20sにL字状の支持金具25をネジ止め固定し、かかるL字状の支持金具25の水平部25hを点検蓋10cの外側(客室側)表面に延在させ、その先端にヒンジ部(蝶番)27を設け、かかるヒンジ部27を介して回転可能に取り付けられている。なお、上記整風板20cのヒンジ部27(支持金具25)と、点検蓋10cのヒンジ部25(支持金具23)とは、その取り付け位置を長手方向にずらして配設している。また、整風板20cの反対側(ヒンジ部27と反対側)は、中央収容部20の他方(反対側)の側板20sにネジ止め固定するようになっている。
【0044】
従って、本実施の形態において、風道部10を開口する点検蓋10cのヒンジ部(回転支点)23と、中央収容部20を開口する整風板20cのヒンジ部(回転支点)27とは、中央収容部20の側板20sを挟んで互いに反対側に配設されることとなる。
【0045】
すなわち、本実施の形態において、中央収容部20の領域を区画形成する側板20sは、点検蓋10c及び整風板20cのそれぞれを回転可能に支持する共通の支持部材として形成されており、これにより、部品点数の削減に伴う小型軽量化やコストダウンに寄与している。また、上記ヒンジ部(回転支点)23,27を支持部材(側板)20sを挟んで反対側に配置することにより、点検蓋10cや整風板20cを開閉操作する際の操作反力(負荷)を側板20sの両側に分散させ、片側に配置した構成に比し、軽量化のために極力薄肉化したアルミ板Al(本例では、厚さ1.2mm)に対する変形を経年的に抑制することができる。
【0046】
以上、本発明に係る鉄道車両の天井構造によれば、清掃等の保守点検時において、付帯設備の取り外し作業や風道部の吊り降ろし作業を要することなく、内部の清掃を容易に行うことができるので、清掃等の保守作業の際の工数を大幅に低減して作業性を著しく向上させることができる。加えて、点検蓋10cが中央収容部まで延長されて開放可能に構成されているので、点検蓋の標準化によるコストダウン及び車両天井面の美観の向上に寄与すると共に、風道部10と中央収容部20との間の空間から、風道部側板10sの結露の確認や、風漏れのチェック、清掃等が可能となる。
【0047】
また、リサイクルが困難なFRP樹脂に替えて加工性の良いアルミ板にて天井ユニットを形成することにより、リサイクル性を向上させると共に、樹脂成型用の型を不要としてコストダウンに寄与することができる。
【0048】
さらに、断熱材を芯材として介装したアルミ積層板を結露が問題となる風道部等に用いることにより、従来と同等の断熱性と剛性を確保しつつ、断熱材への埃等の付着を未然に防止すると共に、天井ユニットの大幅な軽量化(10両編成の車両当たり1〜1.5トン)が可能となる。
【0049】
なお、本発明の技術的範囲は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨に逸脱しない範囲において多様な変更もしくは改良を加え得るものである。例えば、本実施の形態に係る天井ユニットUは基本的に取り外す必要はないが、従来のように取外し可能なユニットとして構成してもよい。このように構成した場合でも、当該ユニットに開閉可能な点検蓋10cを設けることにより、天井ユニット内へのアプローチ(特に、天板部へのアプローチ)が容易となり、作業性の向上に資することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:天井構造、10:風道部、10c:点検蓋、10s:側板、10t:天板、20:中央収容部、20b:傾斜板、20c:整風板、20s:側板、20w:整風板、21:支持金具、23:ヒンジ部、25:支持金具、25h:水平部、27:ヒンジ部、A:アルミ板、At:天井側アルミ板、Ac:客室側アルミ化粧板、AL:アルミ積層板、CC:天井面、CR:車両客室、Is:発泡性断熱材、SC:灯具座、TR:車両屋根部、U:天井ユニット、U、U0、U1:天井ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両客室と車両屋根との間に天井部を形成した鉄道車両の天井構造であって、
前記天井部は、車両長手方向に渡って、分割された複数の天井ユニットとしてアルミ板にて形成されており、各天井ユニットは、幅方向略中央部に形成されてその内部に送風機を収容する中央収容部と、この中央収容部の幅方向両端部に形成されて空調用空気の流路を形成する風道部とを有し、
前記両端の各風道部の底板は、前記車両客室の天井面を形成していると共に、開閉可能な点検蓋として形成されており、かつ、当該点検蓋のそれぞれは、隣接する中央収容部の側板の下端部まで延長され、当該側板に回転可能に支持されていることを特徴とする鉄道車両の天井構造。
【請求項2】
前記風道部は、対向するアルミ板の間に板状の発泡性断熱材を介装した積層構造のアルミ積層板にて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の天井構造。
【請求項3】
前記中央収容部の底板は、前記車両客室の天井面を形成していると共に、車両客室内に送風を導く傾斜板を有する開閉可能な整風板として形成されており、
前記点検蓋と前記整風板とは、前記中央収容部の共通の側板に回転可能に支持されていると共に、前記点検蓋の回転支点と前記整風板の回転支点とは、前記共通の側板を挟んで互いに反対側に配置形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道車両の天井構造。
【請求項4】
前記発泡性断熱材は、炭酸カルシウムを主原料とする発泡断熱材であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鉄道車両の天井構造。
【請求項5】
前記アルミ積層板中のアルミ板の総厚さは、0.8〜1mmであることを特徴とする請求項4に記載の鉄道車両の天井構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−95397(P2013−95397A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243173(P2011−243173)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(391024951)東日本トランスポ−テック株式会社 (24)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(591265840)横浜製機株式会社 (8)