鉄道車両車体用の搬送車
【課題】非使用時に小さい場所で待機することができる、鉄道車両車体の搬送車を提供する。
【解決手段】鉄道車輌車体Sを搬送するための鉄道車両車体用の搬送車10であって、鉄道車両車体Sの前方部を載せる第1の荷台部12aと前記第1の荷台部12aの下部に備えられた2つの車輪14aとを有する第1の車部10aと、鉄道車両車体Sの後方部を載せる第2の荷台部12bと前記第2の荷台部12bの下部に備えられた2つの車輪14bとを有する第2の車部10bとからなる。
【解決手段】鉄道車輌車体Sを搬送するための鉄道車両車体用の搬送車10であって、鉄道車両車体Sの前方部を載せる第1の荷台部12aと前記第1の荷台部12aの下部に備えられた2つの車輪14aとを有する第1の車部10aと、鉄道車両車体Sの後方部を載せる第2の荷台部12bと前記第2の荷台部12bの下部に備えられた2つの車輪14bとを有する第2の車部10bとからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車体を搬送するための搬送車に関し、鉄道車両車体の搬送技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
気動車、客車、または貨車などの鉄道車両は軌道上を能動的にまたは受動的に走行するための台車と該台車に搭載されて旅客や貨物を収容する車体とから構成され、鉄道車両によってはこれらの分離が可能なものがある。このような車両においては、台車と車体が異なる場所で製造されたり、台車と車体が分離されて別々にメンテナンスされることがある。
【0003】
そのために、鉄道車両の車体を搬送するための搬送車が存在する。搬送車は、鉄動車両の車体を搭載可能な大きさを有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、鉄道車両の車体の搬送車は、その大きさから大きな待機場所を必要とする。例えば、種々の鉄道車両の車体をメンテナンス工場内で搬送するために異なる複数の搬送車が存在する場合、該工場は、メンテナンスを実行する場所以外に複数の搬送車が待機する場所を備える必要がある。これは、メンテナンス工場内において同時にメンテナンスが実行できる車体の数を少なく制限することになり、経済的に不利益である。
【0005】
そこで、本発明は、非使用時に小さい場所で待機することができる鉄道車両車体用の搬送車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本願の請求項1に記載の発明は、鉄道車輌車体を搬送するための鉄道車両車体用の搬送車であって、鉄道車両車体の前方部を載せる荷台部と前記荷台部の下部に備えられた左右一対の車輪とを有する第1の車部と、鉄道車両車体の後方部を載せる荷台部と前記荷台部の下部に備えられた左右一対の車輪とを有する第2の車部とからなることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鉄道車両車体用の搬送車において、前記第1の車部は、前記2つの車輪に操舵角を与える操舵手段を有することを特徴とする。
【0008】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の鉄道車両車体用の搬送車において、前記第1および第2の車部は、鉄道車両車体から取り外した状態で自立走行するための取り外し可能な補助輪を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、搬送車は、それぞれ左右一対の車輪を備える2つの車部からなり、第1の車部が鉄道車両車体の前方部を載せるとともに、第2の車部が該車体の後方部を載せた状態で該車体を搬送する。この搬送車は、構造上、鉄道車両車体の長手方向の車輪間距離が一定でないため、非使用時は該車輪間距離を最小にして待機させることができ、また長手方向長さが異なる複数の鉄道車両車体の搬送が可能である。その結果、例えばメンテナンス工場内における鉄道車両車体用の搬送車の待機場所を小さくすることができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、鉄道車両車体の前方部を載せて搬送する第1の車部は、左右一対の車輪に操舵角を与える操舵手段を有する。これにより、搬送車は、鉄道車両車体の搬送中、移動方向を変更することができる。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、搬送車の2つの車部は取り外し可能な補助輪を有する。各車部はそれぞれ左右一対の車輪を有するだけなので鉄道車両車体を載せていない場合は転倒するが、補助輪を取り付けることにより自立し、走行することが可能になる。また、各車部が鉄道車両車体を載せた後は補助輪を外すことにより、作業者の作業領域を大きく確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る鉄道車両の車体を搬送する搬送車を示している。図において符号10に示す搬送車は、鉄道車両車体Sの前方部を載せる車部10aと、該車体Sの後方部を載せる車部10bとから構成される。鉄道車両車体Sは、前方部が搬送車10の車部10aの載せられるとともに、後方部が車部10bに載せられた状態で該搬送車10に搬送される。
【0013】
搬送車10の車部10aは、鉄道車両車体Sを載せる荷台部12aと、荷台部12aの下部に備えられた左右一対の車輪14aとを有する。同様に、車部10bも、鉄道車両車体Sを載せる荷台部12bと左右一対の車輪14bとを有する。
【0014】
搬送車10の車部10aの詳細を図2と図3に示す。図2は、図1において鉄道車両車体S側から見た車部10aを示している。また、図3は、鉄道車両車体Sの前方側から見た車部10aを示している。
【0015】
図に示すように、車部10aの荷台部12aは、種々の鉄道車両車体Sの前方部を載せることが可能な形状に構成されており、車体Sをボルトとナット(図示せず)によって固定するための通し穴16aを複数有する。通し穴16aが複数ある理由は、種々の鉄道車両車体Sを荷台部12aに固定できるようにするためである。なお、本発明は、車体Sへの荷台部12aの固定方法を、ボルトとナットに限定していない。
【0016】
搬送車10の車部10aの2つの車輪14aそれぞれは、荷台部12aの下部のベース18aが備える車軸20aに軸受け22aを介して支持されている。これにより、車輪14aそれぞれは、異なる回転をすることができる。
【0017】
また、荷台部12aとベース18aは、ターンテーブル(請求の範囲に記載の操舵手段に対応。)24を介して接続されている。ターンテーブル24は、荷台部12aに対して、鉛直方向に伸びる回転軸CLを中心としてベース18aを回転させるように構成されている。
【0018】
図4に示すように、ターンテーブル24を介して、荷台部12aに対して、回転軸CLを中心としてベース18aが回転することにより、車輪14aに操舵角θが与えられる(図4(B)参照。)。これにより、搬送車10は、鉄道車両本体Sの搬送中、搬送方向を変更することができる。
【0019】
さらに、ベース18aには、図2や図3に示すように、鉄道車両本体Sに固定された車部10aを牽引するための牽引具26が取り付けられている。牽引具26は、回転軸CLに対して直行する方向に伸びており、牽引具26を回転軸CLを中心として回転させることによりベース18aが回転される。すなわち、牽引具26も操舵手段として機能している。
【0020】
一方、搬送車10の車部10bの荷台部12bは、図5や図6に示すように、車部10aの荷台部12aと同様に、種々の鉄道車両車体Sの前方部を載せることが可能な形状に構成されており、車体Sをボルトとナット(図示せず)によって固定するための通し穴16bを複数有する。
【0021】
搬送車10の車部10bの2つの車輪14bそれぞれは、荷台部12bの下部に取り付けられたベース18bが備える車軸20bに軸受け22bを介して支持されている。これにより、車輪14bそれぞれは、異なる回転をすることができる。なお、車部10bは、車部10aのようにターンテーブル24を備えていない。
【0022】
本実施形態によれば、搬送車10は、それぞれ左右一対の車輪14a、14bを備える2つの車部10a、10bからなり、車部10aが鉄道車両車体Sの前方部を載せるとともに、車部10bが該車体Sの後方部を載せた状態で該車体Sを搬送する。この搬送車10は、構造上、鉄道車両車体Sの長手方向(図1においてLで示す方向)の車輪間距離(14aと14bの間の距離)が一定でないため、非使用時は該車輪間距離を最小にして待機させることができ、また長手方向長さが異なる複数の鉄道車両車体Sの搬送が可能である。その結果、例えばメンテナンス工場内における搬送車10の待機場所を小さくすることができる。
【0023】
(第2の実施形態)
本実施形態の搬送車を図7に示す。第1の実施形態と異なる点は、鉄道車両車体Sの後方部を載せる車部にもターンテーブル(操舵手段)が備えられている点である。
【0024】
搬送車110の車部110a、110bは、第1の実施形態の搬送車10の車部10aと略同一構成である。
【0025】
車部110aが第1の実施形態の車部10a異なる点は、ベース118aの一方の車輪114a側から車部110bに向かって伸びるリンクアーム130aを備える点である。
【0026】
一方、車部110bは、第1の実施形態の車部10aから牽引具26を除いた構成であって、さらに、ベース118bの他方の車輪114b側から車部110aに向かって伸びるリンクアーム130bを備える。ターンテーブル124bは、第1の実施形態のターンテーブル26と同一である。
【0027】
車部110aのリンクアーム130aと車部110bのリンクアーム130bは、車部110aと車部110bの並列方向132には対向しておらず、該並列方向と交差するように対向している。リンクアーム130aと130bは、リンクバー134によって連結されている。
【0028】
リンクアーム130aと130bは、図8に示すように、その先端にジョイント穴140a、140bを有し、ジョイント穴140a(140b)にはリンクバー134の両端に設けられたジョイントピン142に挿入される。このジョイントピン142はジョイント穴140内で回転可能であって、着脱可能である。これは、リンクバー134とリンクアーム130a(130b)が常に連結した状態であると搬送車110の待機場所が大きくなるためで、搬送車110の非使用時はリンクバー134がリンクアーム130a(130b)から外せるようにしてある。
【0029】
図9に示すように、例えば、車部110aのベース118aが回転軸CLaを中心として時計回り方向に回転すると、リンクアーム130aを介してリンクバー134が車部118bに向かって押され、それにより、車部110bのベース118bが回転軸CLbを中心として半時計回り方向に回転される。すなわち、車部110aの車輪114aに操舵角が与えられると、車部110bの車輪114bにも操舵角が与えられる。
【0030】
本実施形態の搬送車によれば、鉄道車両車体の後方部を載せる車部の車輪にも操舵角を与えることができるため、鉄道車両車体の搬送中、第1の実施形態に比べて小さい旋回径で旋回することができる。
【0031】
以上、上述の2つの実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0032】
例えば、上述の実施形態においては、操舵手段はターンテーブルであったが、本発明は、これに限定されない。
【0033】
図10や図11に示すように、一例の鉄道車両車体の前方部を載せる搬送車の車部210aは、自動車の操舵機構と類似の操舵機構を有する。
【0034】
具体的に説明すると、車部210aの2つの車輪214aそれぞれは、荷台部212と一体のベース218aにナックルアーム250を介して支持されている。2つのナックルアーム250は、鉛直方向に伸びる回転軸CL2を中心にして回転可能にベース218aの両端にそれぞれ支持されている。
【0035】
また、車部210aの牽引具226は、可動ベース252に取り付けられている。可動ベース252は、荷台部212とベース218aとの間に取り付けられた鉛直方向に伸びるシャフト254を中心として回転可能に支持されている。
【0036】
可動ベース252の牽引具226が取り付けられている反対側には、一端がナックルアーム250に連結されたタイロッド256の他端が連結されている。2つのタイロッド256の他端は、可動ベース252を挟んで対向するように該ベース252に連結されている。
【0037】
このような構成によれば、図12に示すように、牽引具226を介して可動ベース252がシャフト254を中心として回転されると、タイロッド256がナックルアーム250を回転させる。これにより車輪214aに操舵角が与えられる。
【0038】
また、上述の実施形態においては、搬送車の2つの車部は2輪であるため自立することができない。その対処として、取り外し可能な補助輪を各車部に備えてもよい。
【0039】
例えば、図13や図14は、第1の実施形態の搬送車10の車部10bが補助輪を備えた場合を示している。図14は、図13に示すC方向から見た車部10bの断面図である。
【0040】
図に示すように、車部10bは、補助輪を取り付けるための鉛直方向に伸びる2つの取り付けピン360を荷台部12bに備える。2つの取り付けピン360は、荷台部12bの前方部と後方部それぞれに備えられている。
【0041】
2つの補助輪362それぞれは、一端に取り付けピン360に挿入される取り付け穴364と、他端に車輪366を有する。
【0042】
車部10bに2つの補助輪362が取り付けられると、車部10bは四輪となり、自立して走行することが可能になる。また、車部10bが鉄道車両車体を載せてその荷台部12bに固定した後は補助輪362を外すことにより、作業者の作業領域を大きく確保することができる(補助輪362によって作業者の作業が妨害されることがなくなる。)。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように本発明によれば、鉄道車両車体を搬送する搬送車の待機場所が小さくなる。したがって、鉄道車両車体に関連する分野、例えば製造分野、輸送分野、若しくはメンテナンス分野において好適に利用される可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る、鉄道車両車体を搬送中の搬送車を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る搬送車の一方の車部の平面図である。
【図3】第1の実施形態に係る搬送車の一方の車部の正面図である。
【図4】第1の実施形態に係る搬送車の一方の車部の操舵手段を説明するための図である。
【図5】第1の実施形態に係る搬送車の他方の車部の平面図である。
【図6】第1の実施形態に係る搬送車の他方の車部の正面図である。
【図7】第2の実施形態の搬送車を示す図である。
【図8】リンクアームとリンクバーのジョイント方法を説明するための図である。
【図9】第2の実施形態の搬送車が旋回している状態を示す図である。
【図10】別の操舵手段を備える搬送車の車部の平面図である。
【図11】図10に示す搬送車の車部の正面図である。
【図12】図10に示す搬送車の車部の操舵手段を説明するための図である。
【図13】補助輪を備えた搬送車の車部の正面図である。
【図14】図13に示すC方向から見た車部の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 搬送車
10a 車部(第1の車部)
10b 車部(第2の車部)
12a、12b 荷台部
14a、14b 車輪
S 鉄道車両車体
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車体を搬送するための搬送車に関し、鉄道車両車体の搬送技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
気動車、客車、または貨車などの鉄道車両は軌道上を能動的にまたは受動的に走行するための台車と該台車に搭載されて旅客や貨物を収容する車体とから構成され、鉄道車両によってはこれらの分離が可能なものがある。このような車両においては、台車と車体が異なる場所で製造されたり、台車と車体が分離されて別々にメンテナンスされることがある。
【0003】
そのために、鉄道車両の車体を搬送するための搬送車が存在する。搬送車は、鉄動車両の車体を搭載可能な大きさを有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、鉄道車両の車体の搬送車は、その大きさから大きな待機場所を必要とする。例えば、種々の鉄道車両の車体をメンテナンス工場内で搬送するために異なる複数の搬送車が存在する場合、該工場は、メンテナンスを実行する場所以外に複数の搬送車が待機する場所を備える必要がある。これは、メンテナンス工場内において同時にメンテナンスが実行できる車体の数を少なく制限することになり、経済的に不利益である。
【0005】
そこで、本発明は、非使用時に小さい場所で待機することができる鉄道車両車体用の搬送車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本願の請求項1に記載の発明は、鉄道車輌車体を搬送するための鉄道車両車体用の搬送車であって、鉄道車両車体の前方部を載せる荷台部と前記荷台部の下部に備えられた左右一対の車輪とを有する第1の車部と、鉄道車両車体の後方部を載せる荷台部と前記荷台部の下部に備えられた左右一対の車輪とを有する第2の車部とからなることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鉄道車両車体用の搬送車において、前記第1の車部は、前記2つの車輪に操舵角を与える操舵手段を有することを特徴とする。
【0008】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の鉄道車両車体用の搬送車において、前記第1および第2の車部は、鉄道車両車体から取り外した状態で自立走行するための取り外し可能な補助輪を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、搬送車は、それぞれ左右一対の車輪を備える2つの車部からなり、第1の車部が鉄道車両車体の前方部を載せるとともに、第2の車部が該車体の後方部を載せた状態で該車体を搬送する。この搬送車は、構造上、鉄道車両車体の長手方向の車輪間距離が一定でないため、非使用時は該車輪間距離を最小にして待機させることができ、また長手方向長さが異なる複数の鉄道車両車体の搬送が可能である。その結果、例えばメンテナンス工場内における鉄道車両車体用の搬送車の待機場所を小さくすることができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、鉄道車両車体の前方部を載せて搬送する第1の車部は、左右一対の車輪に操舵角を与える操舵手段を有する。これにより、搬送車は、鉄道車両車体の搬送中、移動方向を変更することができる。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、搬送車の2つの車部は取り外し可能な補助輪を有する。各車部はそれぞれ左右一対の車輪を有するだけなので鉄道車両車体を載せていない場合は転倒するが、補助輪を取り付けることにより自立し、走行することが可能になる。また、各車部が鉄道車両車体を載せた後は補助輪を外すことにより、作業者の作業領域を大きく確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る鉄道車両の車体を搬送する搬送車を示している。図において符号10に示す搬送車は、鉄道車両車体Sの前方部を載せる車部10aと、該車体Sの後方部を載せる車部10bとから構成される。鉄道車両車体Sは、前方部が搬送車10の車部10aの載せられるとともに、後方部が車部10bに載せられた状態で該搬送車10に搬送される。
【0013】
搬送車10の車部10aは、鉄道車両車体Sを載せる荷台部12aと、荷台部12aの下部に備えられた左右一対の車輪14aとを有する。同様に、車部10bも、鉄道車両車体Sを載せる荷台部12bと左右一対の車輪14bとを有する。
【0014】
搬送車10の車部10aの詳細を図2と図3に示す。図2は、図1において鉄道車両車体S側から見た車部10aを示している。また、図3は、鉄道車両車体Sの前方側から見た車部10aを示している。
【0015】
図に示すように、車部10aの荷台部12aは、種々の鉄道車両車体Sの前方部を載せることが可能な形状に構成されており、車体Sをボルトとナット(図示せず)によって固定するための通し穴16aを複数有する。通し穴16aが複数ある理由は、種々の鉄道車両車体Sを荷台部12aに固定できるようにするためである。なお、本発明は、車体Sへの荷台部12aの固定方法を、ボルトとナットに限定していない。
【0016】
搬送車10の車部10aの2つの車輪14aそれぞれは、荷台部12aの下部のベース18aが備える車軸20aに軸受け22aを介して支持されている。これにより、車輪14aそれぞれは、異なる回転をすることができる。
【0017】
また、荷台部12aとベース18aは、ターンテーブル(請求の範囲に記載の操舵手段に対応。)24を介して接続されている。ターンテーブル24は、荷台部12aに対して、鉛直方向に伸びる回転軸CLを中心としてベース18aを回転させるように構成されている。
【0018】
図4に示すように、ターンテーブル24を介して、荷台部12aに対して、回転軸CLを中心としてベース18aが回転することにより、車輪14aに操舵角θが与えられる(図4(B)参照。)。これにより、搬送車10は、鉄道車両本体Sの搬送中、搬送方向を変更することができる。
【0019】
さらに、ベース18aには、図2や図3に示すように、鉄道車両本体Sに固定された車部10aを牽引するための牽引具26が取り付けられている。牽引具26は、回転軸CLに対して直行する方向に伸びており、牽引具26を回転軸CLを中心として回転させることによりベース18aが回転される。すなわち、牽引具26も操舵手段として機能している。
【0020】
一方、搬送車10の車部10bの荷台部12bは、図5や図6に示すように、車部10aの荷台部12aと同様に、種々の鉄道車両車体Sの前方部を載せることが可能な形状に構成されており、車体Sをボルトとナット(図示せず)によって固定するための通し穴16bを複数有する。
【0021】
搬送車10の車部10bの2つの車輪14bそれぞれは、荷台部12bの下部に取り付けられたベース18bが備える車軸20bに軸受け22bを介して支持されている。これにより、車輪14bそれぞれは、異なる回転をすることができる。なお、車部10bは、車部10aのようにターンテーブル24を備えていない。
【0022】
本実施形態によれば、搬送車10は、それぞれ左右一対の車輪14a、14bを備える2つの車部10a、10bからなり、車部10aが鉄道車両車体Sの前方部を載せるとともに、車部10bが該車体Sの後方部を載せた状態で該車体Sを搬送する。この搬送車10は、構造上、鉄道車両車体Sの長手方向(図1においてLで示す方向)の車輪間距離(14aと14bの間の距離)が一定でないため、非使用時は該車輪間距離を最小にして待機させることができ、また長手方向長さが異なる複数の鉄道車両車体Sの搬送が可能である。その結果、例えばメンテナンス工場内における搬送車10の待機場所を小さくすることができる。
【0023】
(第2の実施形態)
本実施形態の搬送車を図7に示す。第1の実施形態と異なる点は、鉄道車両車体Sの後方部を載せる車部にもターンテーブル(操舵手段)が備えられている点である。
【0024】
搬送車110の車部110a、110bは、第1の実施形態の搬送車10の車部10aと略同一構成である。
【0025】
車部110aが第1の実施形態の車部10a異なる点は、ベース118aの一方の車輪114a側から車部110bに向かって伸びるリンクアーム130aを備える点である。
【0026】
一方、車部110bは、第1の実施形態の車部10aから牽引具26を除いた構成であって、さらに、ベース118bの他方の車輪114b側から車部110aに向かって伸びるリンクアーム130bを備える。ターンテーブル124bは、第1の実施形態のターンテーブル26と同一である。
【0027】
車部110aのリンクアーム130aと車部110bのリンクアーム130bは、車部110aと車部110bの並列方向132には対向しておらず、該並列方向と交差するように対向している。リンクアーム130aと130bは、リンクバー134によって連結されている。
【0028】
リンクアーム130aと130bは、図8に示すように、その先端にジョイント穴140a、140bを有し、ジョイント穴140a(140b)にはリンクバー134の両端に設けられたジョイントピン142に挿入される。このジョイントピン142はジョイント穴140内で回転可能であって、着脱可能である。これは、リンクバー134とリンクアーム130a(130b)が常に連結した状態であると搬送車110の待機場所が大きくなるためで、搬送車110の非使用時はリンクバー134がリンクアーム130a(130b)から外せるようにしてある。
【0029】
図9に示すように、例えば、車部110aのベース118aが回転軸CLaを中心として時計回り方向に回転すると、リンクアーム130aを介してリンクバー134が車部118bに向かって押され、それにより、車部110bのベース118bが回転軸CLbを中心として半時計回り方向に回転される。すなわち、車部110aの車輪114aに操舵角が与えられると、車部110bの車輪114bにも操舵角が与えられる。
【0030】
本実施形態の搬送車によれば、鉄道車両車体の後方部を載せる車部の車輪にも操舵角を与えることができるため、鉄道車両車体の搬送中、第1の実施形態に比べて小さい旋回径で旋回することができる。
【0031】
以上、上述の2つの実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0032】
例えば、上述の実施形態においては、操舵手段はターンテーブルであったが、本発明は、これに限定されない。
【0033】
図10や図11に示すように、一例の鉄道車両車体の前方部を載せる搬送車の車部210aは、自動車の操舵機構と類似の操舵機構を有する。
【0034】
具体的に説明すると、車部210aの2つの車輪214aそれぞれは、荷台部212と一体のベース218aにナックルアーム250を介して支持されている。2つのナックルアーム250は、鉛直方向に伸びる回転軸CL2を中心にして回転可能にベース218aの両端にそれぞれ支持されている。
【0035】
また、車部210aの牽引具226は、可動ベース252に取り付けられている。可動ベース252は、荷台部212とベース218aとの間に取り付けられた鉛直方向に伸びるシャフト254を中心として回転可能に支持されている。
【0036】
可動ベース252の牽引具226が取り付けられている反対側には、一端がナックルアーム250に連結されたタイロッド256の他端が連結されている。2つのタイロッド256の他端は、可動ベース252を挟んで対向するように該ベース252に連結されている。
【0037】
このような構成によれば、図12に示すように、牽引具226を介して可動ベース252がシャフト254を中心として回転されると、タイロッド256がナックルアーム250を回転させる。これにより車輪214aに操舵角が与えられる。
【0038】
また、上述の実施形態においては、搬送車の2つの車部は2輪であるため自立することができない。その対処として、取り外し可能な補助輪を各車部に備えてもよい。
【0039】
例えば、図13や図14は、第1の実施形態の搬送車10の車部10bが補助輪を備えた場合を示している。図14は、図13に示すC方向から見た車部10bの断面図である。
【0040】
図に示すように、車部10bは、補助輪を取り付けるための鉛直方向に伸びる2つの取り付けピン360を荷台部12bに備える。2つの取り付けピン360は、荷台部12bの前方部と後方部それぞれに備えられている。
【0041】
2つの補助輪362それぞれは、一端に取り付けピン360に挿入される取り付け穴364と、他端に車輪366を有する。
【0042】
車部10bに2つの補助輪362が取り付けられると、車部10bは四輪となり、自立して走行することが可能になる。また、車部10bが鉄道車両車体を載せてその荷台部12bに固定した後は補助輪362を外すことにより、作業者の作業領域を大きく確保することができる(補助輪362によって作業者の作業が妨害されることがなくなる。)。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように本発明によれば、鉄道車両車体を搬送する搬送車の待機場所が小さくなる。したがって、鉄道車両車体に関連する分野、例えば製造分野、輸送分野、若しくはメンテナンス分野において好適に利用される可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る、鉄道車両車体を搬送中の搬送車を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る搬送車の一方の車部の平面図である。
【図3】第1の実施形態に係る搬送車の一方の車部の正面図である。
【図4】第1の実施形態に係る搬送車の一方の車部の操舵手段を説明するための図である。
【図5】第1の実施形態に係る搬送車の他方の車部の平面図である。
【図6】第1の実施形態に係る搬送車の他方の車部の正面図である。
【図7】第2の実施形態の搬送車を示す図である。
【図8】リンクアームとリンクバーのジョイント方法を説明するための図である。
【図9】第2の実施形態の搬送車が旋回している状態を示す図である。
【図10】別の操舵手段を備える搬送車の車部の平面図である。
【図11】図10に示す搬送車の車部の正面図である。
【図12】図10に示す搬送車の車部の操舵手段を説明するための図である。
【図13】補助輪を備えた搬送車の車部の正面図である。
【図14】図13に示すC方向から見た車部の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 搬送車
10a 車部(第1の車部)
10b 車部(第2の車部)
12a、12b 荷台部
14a、14b 車輪
S 鉄道車両車体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車輌車体を搬送するための鉄道車両車体用の搬送車であって、
鉄道車両車体の前方部を載せる荷台部と前記荷台部の下部に備えられた左右一対の車輪とを有する第1の車部と、
鉄道車両車体の後方部を載せる荷台部と前記荷台部の下部に備えられた左右一対の車輪とを有する第2の車部とからなることを特徴とする鉄道車両車体用の搬送車。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両車体用の搬送車において、
前記第1の車部は、前記2つの車輪に操舵角を与える操舵手段を有することを特徴とする鉄道車両車体用の搬送車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鉄道車両車体用の搬送車において、
前記第1および第2の車部は、鉄道車両車体から取り外した状態で自立走行するための取り外し可能な補助輪を有することを特徴とする鉄道車両車体用の搬送車。
【請求項1】
鉄道車輌車体を搬送するための鉄道車両車体用の搬送車であって、
鉄道車両車体の前方部を載せる荷台部と前記荷台部の下部に備えられた左右一対の車輪とを有する第1の車部と、
鉄道車両車体の後方部を載せる荷台部と前記荷台部の下部に備えられた左右一対の車輪とを有する第2の車部とからなることを特徴とする鉄道車両車体用の搬送車。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両車体用の搬送車において、
前記第1の車部は、前記2つの車輪に操舵角を与える操舵手段を有することを特徴とする鉄道車両車体用の搬送車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鉄道車両車体用の搬送車において、
前記第1および第2の車部は、鉄道車両車体から取り外した状態で自立走行するための取り外し可能な補助輪を有することを特徴とする鉄道車両車体用の搬送車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−254477(P2008−254477A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95971(P2007−95971)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(391004241)大阪車輌工業株式会社 (5)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(391004241)大阪車輌工業株式会社 (5)
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