鉛蓄電池の容量推定方法
【課題】 放電容量を精度よく推定することができ、また、寿命予測にも応用することができる鉛蓄電池の容量推定方法を提供する。
【解決手段】 短時間放電による鉛蓄電池の容量推定方法において、放電曲線の近似曲線の式Y=aX+b+c/(X−d)を用いて、短時間放電したときの放電初期の特性と概蓄電池の内部インピーダンスとから、各係数a,b,c,dを求め、放電曲線を予測することにより、任意の終止電圧の容量を推定する鉛蓄電池の容量推定方法。
【解決手段】 短時間放電による鉛蓄電池の容量推定方法において、放電曲線の近似曲線の式Y=aX+b+c/(X−d)を用いて、短時間放電したときの放電初期の特性と概蓄電池の内部インピーダンスとから、各係数a,b,c,dを求め、放電曲線を予測することにより、任意の終止電圧の容量を推定する鉛蓄電池の容量推定方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、短時間放電すなわち蓄電池の容量の一部分を放電して得られる特性から、放電可能容量を推定する鉛蓄電池の容量推定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の鉛蓄電池の容量推定方法には、内部インピーダンスを測定して内部インピーダンスと放電容量との相関から容量を推定する方法や、高率放電時の任意の時間(例:5秒目)での電圧を測定して放電電圧と容量との相関から容量を推定する方法等がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような容量推定方法は、アウトプットである容量を、インプットデータである内部インピーダンスや短時間放電電圧との相関式から、直接推定してしまうので、あらかじめ相関式に定めてある終止電圧での容量しか推定できず、また、推定精度の誤差も大きいという問題があった。
【0004】本発明は上述のような背景の下になされたものであり、直線+双曲線の複合式Y=aX+b+c/(X−d)
Y:放電電圧、X:放電時間、a,b,c,d:係数による曲線が蓄電池の放電特性に近似することを用いて、短時間放電したときの放電初期の特性と内部インピーダンスとから、各係数a,b,c,dを求め、放電曲線を予測することを特徴としており、各使用機器に応じた終止電圧を任意に設定して、その設定した終止電圧の放電容量を精度良く推定することを可能にした、鉛蓄電池の容量推定方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明鉛蓄電池の容量推定方法は、放電曲線の近似曲線の式Y=aX+b+c/(X−d)を用いて、短時間放電したときの放電初期の特性と放電前の概蓄電池の内部インピーダンスとから、各係数a,b,c,dを求め、放電曲線を予測することにより容量を推定すること特徴としている。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明による鉛蓄電池の容量推定方法では、放電曲線の近似曲線の式Y=aX+b+c/(X−d)を用いて、短時間放電したときの放電初期の特性とこの蓄電池の内部インピーダンスとから、各係数a,b,c,dを求め、放電曲線を予測して、任意の終止電圧の容量を推定する。このようにすることにより、放電容量を精度よく推定することができ、また、近似式の係数は寿命予測にも応用することができる。
【0007】
【実施例】図1は本発明による放電曲線の近似曲線の実施例を示す特性図であり、1が近似曲線、2が近似曲線の直線部分,3が近似曲線の双曲線部分である。またXは放電時間、Yは放電電圧を示す。a,b,c,dは近似曲線の各係数である。実際の放電電圧のプロットに本発明による近似曲線1を重ねたものを図1に示す。この例では、各係数は、0=−0.01227,b=2.094,c=0.2681,d=13.35である。直線2,双曲線3も併せて描いた。
【0008】放電末期に電圧の垂下が曲線的に低下していくのは次のようなことからである。
【0009】図2は放電中の電池内部の状態を模式的にあらわした説明図である。図2に示すように、放電開始時は極板内の多孔体である活物質には、放電反応により硫酸が消費されても、セパレータに保持されている硫酸が拡散されてくるので、蓄電池内部の硫酸濃度が全体的に低下していく。しかしながら、放電末期になってくると、細孔内に硫酸鉛の結晶が析出し、この細孔をふさぐので、反応部への硫酸の拡散が追いつかなくなり、極板内の硫酸濃度が著しく低くなる。また、極板内の硫酸濃度が低下することで、溶解度が上がり大きな結晶が析出してきて、さらに細孔がふさがってきてこれを加速する。反応部周囲の硫酸濃度が低下するので即ち起電力も低下することとなり、放電電圧の垂下度合いは、放電末期に著しく大きくなる。しかし、そのような細孔閉塞による著しい電圧低下がおきるまでは、電圧は放電量に応じて、コンスタントに下がっていく。
【0010】放電初期から中期にかけての電圧がコンスタントに低下していくのは次のようなことからである。
【0011】電解液比重と起電力の関係は正の直線的比例関係である。今、図1に使用した電池を例にして述べる。この例で使用した電池は100%充電状態で電解液(希硫酸)の比重1.280の電池である。
【0012】比重1.280における希硫酸溶液中のSO4 量は0.480(g/ml)
蓄電池の電解液(希硫酸)量は約2500(cc)
従って電池内部全体のSO4 量は、0.480(g/ml)×2500(cc)=1200(g)
また硫酸の電気化学当量は3.657(g/Ah)である。
【0013】よって例えば20A×1h放電したとすると、3.657(g)×20(Ah)=73.14(g)
73.14(g)の硫酸が消費され、放電後の全SO4 量は、(1200−73.14)/2500=0.451(g/ml)
ここでSO4 量0.451(g/ml)は比重1.264に相当する。
【0014】従って、比重1.280のとき起電力は2.125V,比重1.264のとき起電力は2.109Vなので、比重低下による起電力低下は−0.016V/hとなる。図1は実際に20Aで放電しており、1hあたりの電圧変化量は計算値と一致している。
【0015】このように、放電した電気量に応じて、内部の電解液中の硫酸がコンスタントに消費され、比重が低下することで、電池の起電力が低下していくので、その電圧推移は放電電気量(定電流放電の場合、放電時間)に対してコンスタントに低下していく。
【0016】図3は前述の内容をあらわした説明図である。また図4は図1を範囲を大きくして書き直したものである。図4の符号4は切片bを含まない双曲線を示している。本来図3に示すような2つの特性カーブの合成であるものを、本発明の近似曲線では、これを図4のような直線+双曲線で近似しているのである。
【0017】前述のようなことから、本発明の式以外にも、以下に示すような直線+曲線の複合式等であっても蓄電池の放電特性に近似することがわかる。
【0018】■ Y=aX+b+c(X−d)2■ Y=aX+b+ce(X-d) ,e:自然対数■ Y=aX+b+y1y1 =c(X−d)2 +fただしX<[2cd+√{4c2 d2 −4c(cd2 +f)}]/2cのときは、y1 =0。
【0019】しかしながら、近時式はなるべくシンプルであることが望ましい。それは、すなわち放電特性を推定する過程において、係数を求める手順が簡単になるからである。以下、本発明による放電曲線の近似曲線を用いた容量推定について、その具体的な手順を述べる。
【0020】図5は同じ形式の新旧様々な使用来歴の電池を等しい放電レートで放電した放電特性に、本発明の近似曲線を重ね合わせたものである。様々な電池の放電特性に近似曲線を重ねていきながら、この近似曲線の係数cが、放電レートが等しい限り、同じ値を用いることができることを発見した。
【0021】その係数cが放電レートに応じた定数であることを利用し、次に放電初期の特性から他の係数を求める。
【0022】まず放電を放電深度30%になるまで行い、20%放電電圧と30%放電電圧を測定する。20%放電電圧と30%放電電圧との間を直線で結ぶ。その直線をX=0の時点までのばしていき、X=0における電圧Y0 を求める。ここでY0=b−c/dの値である。
【0023】係数cは各放電レートに応じた定数であるので未知数はbおよびdとなる。図6は20%放電電圧と係数dとの相関図である。図7は内部インピーダンスZと係数dとの相関図である。20%放電電圧をV1 、内部インピーダンスをZとし、dを求める重相関式(d=AV1 +BZ+C、ここでA,B,Cは定数)を求め、相関式からdを推定する。
【0024】図8は推定したdと放電曲線に近似曲線をあてはめたときの実際のdとの相関図である。以上のようにして短時間放電したときに求まるV1 と内部インピーダンスZからdが求まるので、Y0 の式に代入してやれば、残りの未知数であるbが求まる。放電係数b,c,dが求まったところで、近似曲線の式のXに20%放電時の時間,Yに20%放電時の電圧をそれぞれ代入すれば係数aが求まる。
【0025】図9は放電深度30%までの放電特性から、前述の手順に従って推定した放電特性と、その実測値との比較を示す。
【0026】また、 Y=aX+b+c/(X−d)の式を以下に示すように放電時間Xを求める式に変形して、求めた係数a,b,c,dを近似曲線の式に代入する。
【0027】X=−β+√(β2−4αγ)/2αα=a,β=(b−Y−ad),γ=c−(b−Y)dYの値に負荷が必要とする最低電圧、すなわち推定したい放電時間における終止電圧を入力してやれば、負荷それぞれに適した終止電圧での放電時間が推定できる。図1010は本発明の方法で推定した放電時間と実測の放電時間との相関図である。終止電圧1.8Vで推定した放電時間と実測値との誤差は最大±5%の範囲内におさまった。これは従来の容量推定の精度と比べてもきわめて高い値である。
【0028】また係数aは蓄電池の電解液量が減少すると大きくなる関係がある。これは、電解液量が少なくなると、一定放電量あたりの電解液比重変化の量が大きくなるからである。
【0029】図11に減液量とaとの相関の一例を示す。このようなことから、係数aにより容量が低下した劣化電池の劣化モードが電解液の減少(ドライアウト)であるかどうかも推定できる。劣化モードの違いによって、概蓄電池の内部インピーダンスから予測される残寿命も変わってくるので、本発明は寿命予測技術の精度向上にもつながる有用な発明である。
【0030】
【発明の効果】以上のように、本発明による近似式を用いれば、蓄電池を短時間放電したときの放電電圧と内部インピーダンスとから、その放電容量が任意の終止電圧にて、精度よく推定することができ、また、近似式の係数は寿命予測にも応用することができるので、その工業的な価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】放電曲線の近似曲線の実施例を示す特性図
【図2】放電中の電池内部の状態を模式的にあらわした説明図
【図3】放電時の電圧変化の内容の説明図
【図4】図1を範囲を大きくして書き直した特性図
【図5】放電特性に近似曲線を重ねた一例を示す特性図
【図6】20%放電電圧と係数dとの相関図
【図7】内部インピーダンスと係数dとの相関図
【図8】推定したdと実際のdとの相関図
【図9】推定した放電特性と実測値との比較図
【図10】推定した放電時間と実測した放電時間の相関図
【図11】減液量と係数aとの相関図
【符号の説明】
1 放電曲線の近似曲線
2 近似曲線の直線部分
3 近似曲線の曲線部分(切片b含む)
4 近似曲線の曲線部分(切片b含まない)
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、短時間放電すなわち蓄電池の容量の一部分を放電して得られる特性から、放電可能容量を推定する鉛蓄電池の容量推定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の鉛蓄電池の容量推定方法には、内部インピーダンスを測定して内部インピーダンスと放電容量との相関から容量を推定する方法や、高率放電時の任意の時間(例:5秒目)での電圧を測定して放電電圧と容量との相関から容量を推定する方法等がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような容量推定方法は、アウトプットである容量を、インプットデータである内部インピーダンスや短時間放電電圧との相関式から、直接推定してしまうので、あらかじめ相関式に定めてある終止電圧での容量しか推定できず、また、推定精度の誤差も大きいという問題があった。
【0004】本発明は上述のような背景の下になされたものであり、直線+双曲線の複合式Y=aX+b+c/(X−d)
Y:放電電圧、X:放電時間、a,b,c,d:係数による曲線が蓄電池の放電特性に近似することを用いて、短時間放電したときの放電初期の特性と内部インピーダンスとから、各係数a,b,c,dを求め、放電曲線を予測することを特徴としており、各使用機器に応じた終止電圧を任意に設定して、その設定した終止電圧の放電容量を精度良く推定することを可能にした、鉛蓄電池の容量推定方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明鉛蓄電池の容量推定方法は、放電曲線の近似曲線の式Y=aX+b+c/(X−d)を用いて、短時間放電したときの放電初期の特性と放電前の概蓄電池の内部インピーダンスとから、各係数a,b,c,dを求め、放電曲線を予測することにより容量を推定すること特徴としている。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明による鉛蓄電池の容量推定方法では、放電曲線の近似曲線の式Y=aX+b+c/(X−d)を用いて、短時間放電したときの放電初期の特性とこの蓄電池の内部インピーダンスとから、各係数a,b,c,dを求め、放電曲線を予測して、任意の終止電圧の容量を推定する。このようにすることにより、放電容量を精度よく推定することができ、また、近似式の係数は寿命予測にも応用することができる。
【0007】
【実施例】図1は本発明による放電曲線の近似曲線の実施例を示す特性図であり、1が近似曲線、2が近似曲線の直線部分,3が近似曲線の双曲線部分である。またXは放電時間、Yは放電電圧を示す。a,b,c,dは近似曲線の各係数である。実際の放電電圧のプロットに本発明による近似曲線1を重ねたものを図1に示す。この例では、各係数は、0=−0.01227,b=2.094,c=0.2681,d=13.35である。直線2,双曲線3も併せて描いた。
【0008】放電末期に電圧の垂下が曲線的に低下していくのは次のようなことからである。
【0009】図2は放電中の電池内部の状態を模式的にあらわした説明図である。図2に示すように、放電開始時は極板内の多孔体である活物質には、放電反応により硫酸が消費されても、セパレータに保持されている硫酸が拡散されてくるので、蓄電池内部の硫酸濃度が全体的に低下していく。しかしながら、放電末期になってくると、細孔内に硫酸鉛の結晶が析出し、この細孔をふさぐので、反応部への硫酸の拡散が追いつかなくなり、極板内の硫酸濃度が著しく低くなる。また、極板内の硫酸濃度が低下することで、溶解度が上がり大きな結晶が析出してきて、さらに細孔がふさがってきてこれを加速する。反応部周囲の硫酸濃度が低下するので即ち起電力も低下することとなり、放電電圧の垂下度合いは、放電末期に著しく大きくなる。しかし、そのような細孔閉塞による著しい電圧低下がおきるまでは、電圧は放電量に応じて、コンスタントに下がっていく。
【0010】放電初期から中期にかけての電圧がコンスタントに低下していくのは次のようなことからである。
【0011】電解液比重と起電力の関係は正の直線的比例関係である。今、図1に使用した電池を例にして述べる。この例で使用した電池は100%充電状態で電解液(希硫酸)の比重1.280の電池である。
【0012】比重1.280における希硫酸溶液中のSO4 量は0.480(g/ml)
蓄電池の電解液(希硫酸)量は約2500(cc)
従って電池内部全体のSO4 量は、0.480(g/ml)×2500(cc)=1200(g)
また硫酸の電気化学当量は3.657(g/Ah)である。
【0013】よって例えば20A×1h放電したとすると、3.657(g)×20(Ah)=73.14(g)
73.14(g)の硫酸が消費され、放電後の全SO4 量は、(1200−73.14)/2500=0.451(g/ml)
ここでSO4 量0.451(g/ml)は比重1.264に相当する。
【0014】従って、比重1.280のとき起電力は2.125V,比重1.264のとき起電力は2.109Vなので、比重低下による起電力低下は−0.016V/hとなる。図1は実際に20Aで放電しており、1hあたりの電圧変化量は計算値と一致している。
【0015】このように、放電した電気量に応じて、内部の電解液中の硫酸がコンスタントに消費され、比重が低下することで、電池の起電力が低下していくので、その電圧推移は放電電気量(定電流放電の場合、放電時間)に対してコンスタントに低下していく。
【0016】図3は前述の内容をあらわした説明図である。また図4は図1を範囲を大きくして書き直したものである。図4の符号4は切片bを含まない双曲線を示している。本来図3に示すような2つの特性カーブの合成であるものを、本発明の近似曲線では、これを図4のような直線+双曲線で近似しているのである。
【0017】前述のようなことから、本発明の式以外にも、以下に示すような直線+曲線の複合式等であっても蓄電池の放電特性に近似することがわかる。
【0018】
【0019】しかしながら、近時式はなるべくシンプルであることが望ましい。それは、すなわち放電特性を推定する過程において、係数を求める手順が簡単になるからである。以下、本発明による放電曲線の近似曲線を用いた容量推定について、その具体的な手順を述べる。
【0020】図5は同じ形式の新旧様々な使用来歴の電池を等しい放電レートで放電した放電特性に、本発明の近似曲線を重ね合わせたものである。様々な電池の放電特性に近似曲線を重ねていきながら、この近似曲線の係数cが、放電レートが等しい限り、同じ値を用いることができることを発見した。
【0021】その係数cが放電レートに応じた定数であることを利用し、次に放電初期の特性から他の係数を求める。
【0022】まず放電を放電深度30%になるまで行い、20%放電電圧と30%放電電圧を測定する。20%放電電圧と30%放電電圧との間を直線で結ぶ。その直線をX=0の時点までのばしていき、X=0における電圧Y0 を求める。ここでY0=b−c/dの値である。
【0023】係数cは各放電レートに応じた定数であるので未知数はbおよびdとなる。図6は20%放電電圧と係数dとの相関図である。図7は内部インピーダンスZと係数dとの相関図である。20%放電電圧をV1 、内部インピーダンスをZとし、dを求める重相関式(d=AV1 +BZ+C、ここでA,B,Cは定数)を求め、相関式からdを推定する。
【0024】図8は推定したdと放電曲線に近似曲線をあてはめたときの実際のdとの相関図である。以上のようにして短時間放電したときに求まるV1 と内部インピーダンスZからdが求まるので、Y0 の式に代入してやれば、残りの未知数であるbが求まる。放電係数b,c,dが求まったところで、近似曲線の式のXに20%放電時の時間,Yに20%放電時の電圧をそれぞれ代入すれば係数aが求まる。
【0025】図9は放電深度30%までの放電特性から、前述の手順に従って推定した放電特性と、その実測値との比較を示す。
【0026】また、 Y=aX+b+c/(X−d)の式を以下に示すように放電時間Xを求める式に変形して、求めた係数a,b,c,dを近似曲線の式に代入する。
【0027】X=−β+√(β2−4αγ)/2αα=a,β=(b−Y−ad),γ=c−(b−Y)dYの値に負荷が必要とする最低電圧、すなわち推定したい放電時間における終止電圧を入力してやれば、負荷それぞれに適した終止電圧での放電時間が推定できる。図1010は本発明の方法で推定した放電時間と実測の放電時間との相関図である。終止電圧1.8Vで推定した放電時間と実測値との誤差は最大±5%の範囲内におさまった。これは従来の容量推定の精度と比べてもきわめて高い値である。
【0028】また係数aは蓄電池の電解液量が減少すると大きくなる関係がある。これは、電解液量が少なくなると、一定放電量あたりの電解液比重変化の量が大きくなるからである。
【0029】図11に減液量とaとの相関の一例を示す。このようなことから、係数aにより容量が低下した劣化電池の劣化モードが電解液の減少(ドライアウト)であるかどうかも推定できる。劣化モードの違いによって、概蓄電池の内部インピーダンスから予測される残寿命も変わってくるので、本発明は寿命予測技術の精度向上にもつながる有用な発明である。
【0030】
【発明の効果】以上のように、本発明による近似式を用いれば、蓄電池を短時間放電したときの放電電圧と内部インピーダンスとから、その放電容量が任意の終止電圧にて、精度よく推定することができ、また、近似式の係数は寿命予測にも応用することができるので、その工業的な価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】放電曲線の近似曲線の実施例を示す特性図
【図2】放電中の電池内部の状態を模式的にあらわした説明図
【図3】放電時の電圧変化の内容の説明図
【図4】図1を範囲を大きくして書き直した特性図
【図5】放電特性に近似曲線を重ねた一例を示す特性図
【図6】20%放電電圧と係数dとの相関図
【図7】内部インピーダンスと係数dとの相関図
【図8】推定したdと実際のdとの相関図
【図9】推定した放電特性と実測値との比較図
【図10】推定した放電時間と実測した放電時間の相関図
【図11】減液量と係数aとの相関図
【符号の説明】
1 放電曲線の近似曲線
2 近似曲線の直線部分
3 近似曲線の曲線部分(切片b含む)
4 近似曲線の曲線部分(切片b含まない)
【特許請求の範囲】
【請求項1】 短時間放電による鉛蓄電池の容量推定方法において、放電曲線の近似曲線の式Y=aX+b+c/(X−d)を用いて、短時間放電したときの放電初期の特性と概蓄電池の内部インピーダンスとから、各係数a,b,c,dを求め、放電曲線を予測することにより、任意の終止電圧の容量を推定することを特徴とする鉛蓄電池の容量推定方法。
【請求項1】 短時間放電による鉛蓄電池の容量推定方法において、放電曲線の近似曲線の式Y=aX+b+c/(X−d)を用いて、短時間放電したときの放電初期の特性と概蓄電池の内部インピーダンスとから、各係数a,b,c,dを求め、放電曲線を予測することにより、任意の終止電圧の容量を推定することを特徴とする鉛蓄電池の容量推定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開平11−121049
【公開日】平成11年(1999)4月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−303748
【出願日】平成9年(1997)10月17日
【出願人】(000004282)日本電池株式会社 (48)
【公開日】平成11年(1999)4月30日
【国際特許分類】
【出願日】平成9年(1997)10月17日
【出願人】(000004282)日本電池株式会社 (48)
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