説明

鉛蓄電池極板用格子体の鋳造鋳型及び製造装置

【課題】鋳造後の鉛蓄電池極板用格子体を、鋳型から取り出す際に、該格子体を殆ど変形させることがないばかりか、鋳造後の鉛蓄電池極板用格子体に形成される押し湯部分及びガス抜け用の余剰金属部分を極めて正確に切り落とすことができ、かつ自体簡単な構造から成るブックモールド式の鋳造鋳型、及び、該ブックモールド式の鋳造鋳型を備える、鉛蓄電池極板用格子体の製造装置を提供する。
【解決手段】鉛蓄電池極板用格子体を鋳造するところの、一対の割型を備えるブックモールド式の鋳造鋳型において、上記鋳造鋳型から、鋳造された格子体を取り出しかつ搬送する取り出し搬送鋳型を更に備えることを特徴とするブックモールド式の鋳造鋳型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池極板用格子体の鋳造鋳型に関し、更に詳しくは、鉛蓄電池極板用格子体を鋳造するための改良されたブックモールド式の鋳造鋳型、及びそれを備える鉛蓄電池極板用格子体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池極板用格子体の製造方法としては、従来から鋳造方式が使用されてきた。その中でもブックモールド式の鋳造方式が一般的である(図19及び20)。ブックモールド式の鋳造方式は、通常、一対の板状の鋳型の一方を固定鋳型(101)として、鋳造装置本体に対して移動しないように固定し、そして、もう一方を移動鋳型(102)として、スライド装置等によって鋳造装置本体に対して前後に移動できるようにしたものである。これら固定鋳型及び移動鋳型の内面(110)は、極板用格子体の基板形状に刻印されており、固定鋳型と移動鋳型とが突き合わされて形成された空間内に、上部の湯口(106)から溶融金属(湯)が注ぎ込まれ、次いで、冷却凝固されることにより、極板用格子体が鋳造されるものである。通常、極板用格子体は2枚1組で鋳造されることが多いが、多数枚が同時に鋳造されることもある。いずれの場合においても、鋳造後の搬送のために格子体の両側には、突出する部分、いわゆる懸垂耳又は耳(110a)と呼ばれる部分が形成されている。ブックモールド式の鋳造鋳型においては、格子形状(枠骨、中骨、耳)の配置自由度が高いため、電圧特性、耐グロース特性、寿命特性の優れた格子体を製造できる利点がある。該ブックモールド式の鋳造鋳型においては、従来、鋳型から格子体の取り出しを行う際、鋳型の下方に格子体を自由落下させて、大きい曲率のシューター等に落としていた。しかし、この際、鋳造された格子体が変形してしまうと言う問題があった。なお、鋳造により、図20中、(110b)で示される部分に押し湯部分が形成され、かつ(110c)で示される部分にガス抜け用の余剰金属部分が形成される。
【0003】
上記の問題を解決するために種々の改良がなされている。例えば、鋳造機構とトリミング機構と集積機構とを備え、これらを上下方向に順次下方に位置するように配置し、格子体をトリミング機構から集積機構に移動させる移動機構を備え、移動機構にはその下方を中心として回動するキャッチプレートと、キャッチプレートに固定され、かつトリミング機構から落下してくる格子体を受け緩速度で下降させる迎えシリンダーと、迎えシリンダーにて下降し、キャッチプレートを回動させることにより集積機構側に移動した格子体を押し出して集積機構に載せる押出装置を備えている鉛蓄電池の格子体の製造装置が知られている(特許文献1)。該装置は、トリミングされた格子体がそのまま無抵抗でキャッチプレートに落下して、格子体が変形してしまうことを防止するように工夫されたものである。また、鋳型、シュート、シェアカッタ、受取板及びストック部を有する鉛蓄電池極板用格子体の製造装置であって、受取板がシェアカッタの排出部下方に傾斜状に配置され、摩擦増大面とその下方に底面とを有するものであって、シェアカッタから排出された格子体を摩擦増大面で落下速度を低下せしめて小さい衝撃で底面上に受け取り、ストック部へ移送させる、鉛蓄電池極板用格子体の製造装置が知られている(特許文献2)。該装置は、格子体が底面に当たって止まるときの衝撃を小さくして、格子体の変形を防止するものである。しかし、近年の格子体の薄型化及び合金種の改良により、これらの装置においても、格子体の変形を十分には抑制することができないのが現状である。この対策として、ブックモールド式の鋳造方式において、格子体取り出し用のロボットアームを取り付けることも考えられるが、装置コストの上昇と生産性の低下が避けられないために実用的ではない。
【0004】
また、ブックモールド式の鋳造方式は、重力を利用して鋳型内部に溶融金属を流し込むため、充填不足及び鋳造欠陥が生じ易い。そのため、押し湯部分及び格子体下部にガス抜け用の余剰金属部分を形成することによって、このような充填不足及び鋳造欠陥を抑制するようにしている。従って、格子体を鋳型から取り出した後に、この押し湯部分と格子体下部の余剰金属部分とを切断して取り除く必要がある。しかし、この押し湯部分及びガス抜け用の余剰金属部分を切断する作業の際に、切断位置がバラツキ、最悪の場合、枠骨を切断してしまったり、あるいは枠骨の幅が規格以下のサイズになってしまうと言う問題も有していた。この原因としては、前記した変形による場合に他に、ブックモールド式の鋳造方式においては、離型剤として、水ガラスにコルクを粉砕したものを混ぜ合わせたものが使用されているために、パリが発生し易く、このパリの有無によって切断位置がバラツクためである。そのため、切断時の多少のずれを許容すべく、格子体本体と押し湯部分及びガス抜け用の余剰金属部分とが接する部分を所定寸法より多少大きくすることにより、即ち、切断位置にある枠骨に切断しろを設けて、鋳造後に切断する等の対策が採られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−219467号公報
【特許文献2】実公平3−12221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、鋳造後の鉛蓄電池極板用格子体を、鋳型から取り出す際に、該格子体を殆ど変形させることがないばかりか、鋳造後の鉛蓄電池極板用格子体に形成される押し湯部分及びガス抜け用の余剰金属部分を極めて正確に切り落とすことができ、かつ自体簡単な構造から成るブックモールド式の鋳造鋳型、及び、該ブックモールド式の鋳造鋳型を備える、鉛蓄電池極板用格子体の製造装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく種々の検討を試みた。その結果、固定鋳型と移動鋳型とを組み合わせたブックモールド式の鋳造鋳型において、固定鋳型と移動鋳型に加えて、更に、鋳造後の鉛蓄電池極板用格子体を支持して搬送し得る所定の取り出し搬送鋳型を、ブックモールド式の鋳造鋳型中に組み込むことができれば、格子体をシュート等に落とし込む必要がなく、従って、格子体を殆ど変形させることがないことに思い至った。加えて、鋳造後の鉛蓄電池極板用格子体を上記所定の取り出し搬送鋳型で支持しながら、格子体の押し湯部分及びガス抜け用の余剰金属部分を切断すれば、これらの余剰部分を正確に切り落とすことができると考えた。また、好ましくは、ブックモールド式の鋳造鋳型中に、格子体の押し湯部分及びガス抜け用の余剰金属部分を切断する切断装置を組み込むことができるなら、より一層装置をコンパクト化することができ、加えて、これらの余剰部分をより正確に切り落とすことができると考え、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)鉛蓄電池極板用格子体を鋳造するところの、一対の割型を備えるブックモールド式の鋳造鋳型において、上記鋳造鋳型から、鋳造された格子体を取り出しかつ搬送する取り出し搬送鋳型を更に備えることを特徴とするブックモールド式の鋳造鋳型である。
【0009】
好ましい態様として、
(2)上記一対の割型の内面が、鋳造される格子体の上部両端に耳部が形成されるように刻印されており、かつ該耳部用の刻印の下端面に取り出し搬送鋳型が配置されている上記(1)記載のブックモールド式の鋳造鋳型、
(3)取り出し搬送鋳型が、鋳造された格子体の端部を支持して、上記鋳造鋳型から、鋳造された格子体を取り出しかつ搬送する上記(1)記載のブックモールド式の鋳造鋳型、
(4)鋳造された格子体がその両端部に一対の耳部を備え、かつ取り出し搬送鋳型が該一対の耳部を支持して、上記鋳造鋳型から、鋳造された格子体を取り出しかつ搬送する上記(1)記載のブックモールド式の鋳造鋳型、
(5)鋳造された格子体がその両端部に一対の耳部を備え、かつ取り出し搬送鋳型が、該一対の耳部の下部及び該一対の耳部の下部から延びる格子体側面に平行に存在し、かつ上記一対の割型に挟まれることにより組み合って一の鋳造鋳型を構成し、ここで、該取り出し搬送鋳型が、上記一対の割型が開いた後に、該一対の耳部を支持して、上記鋳造鋳型から、鋳造された格子体を取り出しかつ搬送する上記(1)記載のブックモールド式の鋳造鋳型、
(6)一対の割型が、板状の固定鋳型及び移動鋳型から構成される上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載のブックモールド式の鋳造鋳型、
(7)上記鋳造鋳型の一部に、鋳造された格子体から余剰部分を切断する切断装置を更に備える上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のブックモールド式の鋳造鋳型、
(8)上記切断装置が、細長い空隙を構成する少なくとも一つの長辺にブレードを備え、かつ該細長い空隙を平板の略中央に備える平板状の鋳型から構成され、該平板状の鋳型は、一対の割型の一の割型から他の一の割型へと、割型の頂部面に対して略水平に貫通し、該一対の割型が組み合ってできる空間と平板状の鋳型に備えられた該細長い空隙とが一致して一の鋳造鋳型を構成し、ここで、該平板状の鋳型が略水平方向に移動することにより、鋳造された格子体の余剰部分を切断する上記(7)記載のブックモールド式の鋳造鋳型、
(9)上記切断装置が、一対の割型が組み合ってできる面に細長い空隙を有し、該空隙を構成する少なくとも一つの長辺にブレードを備え、かつ格子体の余剰部分のみを鋳造する一対の割型から構成され、該一対の割型は、ブレードを備える面で格子体の本体部分を鋳造する割型と接することにより組み合い、かつ該格子体の余剰部分のみを鋳造する割型が組み合ってできる面に形成される細長い空隙と格子体の本体部分を鋳造する割型が組み合ってできる面に形成される細長い空隙とが一致して一の鋳造鋳型を構成し、ここで、該格子体の余剰部分のみを鋳造する一対の割型が、本体部分を鋳造する割型に対して略水平方向に移動することにより、鋳造された格子体の余剰部分を切断する上記(7)記載のブックモールド式の鋳造鋳型、
(10)鋳造された格子体の余剰部分が、格子体上部の押し湯部分及び格子体下部のガス抜け用の余剰金属部分である上記(8)又は(9)記載のブックモールド式の鋳造鋳型、
(11)上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のブックモールド式の鋳造鋳型、該鋳型で鋳造された格子体から余剰部分を切断する切断装置、及び該装置により余剰部分を切断された格子体を集積する集積装置を順次備える、鉛蓄電池極板用格子体の製造装置、
(12)上記(7)〜(10)のいずれか一つに記載のブックモールド式の鋳造鋳型、及び該鋳造鋳型により鋳造されかつ余剰部分を切断された格子体を集積する集積装置を順次備える、鉛蓄電池極板用格子体の製造装置
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブックモールド式の鋳造鋳型によれば、鋳造後の鉛蓄電池極板用格子体を、鋳型から取り出す際にシュート等に落とし込むことがない故、該格子体を殆ど変形させることがない。また、鋳造後の鉛蓄電池極板用格子体を所定の取り出し搬送鋳型で支持しながら、格子体の押し湯部分及びガス抜け用の余剰金属部分を切断する故、これらの余剰部分を正確に切り落とすことができる。よって、切断しろ等の余分な部分を最小にし得、又は設ける必要がない。更に、ブックモールド式の鋳造鋳型中に、格子体の押し湯部分及びガス抜け用の余剰金属部分を切断する切断装置を組み込めば、装置をコンパクト化でき、かつこれらの余剰部分をより正確に切り落とすことができる。よって、本発明のブックモールド式の鋳造鋳型及び該鋳造鋳型を備える鉛蓄電池極板用格子体の製造装置によれば、製造される格子体に不良品が殆ど発生せず、極めて良好な生産性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のブックモールド式の鋳造鋳型の一実施態様を示す説明図である。
【図2】図2は、鉛蓄電池極板用格子体の構造の例を示す説明図である。
【図3】図3は、本発明のブックモールド式の鋳造鋳型の他の実施態様を示す説明図である。
【図4】図4は、図3に示された実施態様のブックモールド式の鋳造鋳型の切断装置(14、14’)の構造を示す説明図である。
【図5】図5は、本発明のブックモールド式の鋳造鋳型の更に他の実施態様を示す説明図である。
【図6】図6は、図5に示された実施態様のブックモールド式の鋳造鋳型の切断装置(24、24’)の構造を示す説明図である。
【図7】図7は、図1に示したブックモールド式の鋳造鋳型を備える、鉛蓄電池極板用格子体の製造装置の一実施態様を示す説明図である。
【図8】図8は、図7に示された実施態様の鉛蓄電池極板用格子体の製造装置において、ブックモールド式の鋳造鋳型(A)の移動鋳型(2)が移動し始めた状態を示す説明図である。
【図9】図9は、図7に示された実施態様の鉛蓄電池極板用格子体の製造装置において、ブックモールド式の鋳造鋳型(A)が完全に開いた状態を示す説明図である。
【図10】図10は、図7に示された実施態様の鉛蓄電池極板用格子体の製造装置において、ブックモールド式の鋳造鋳型(A)の取り出し搬送鋳型(3)が切断装置(B)に移動している状態を示す説明図である。
【図11】図11は、図7に示された実施態様の鉛蓄電池極板用格子体の製造装置において、ブックモールド式の鋳造鋳型(A)の取り出し搬送鋳型(3)が切断装置(B)の切断用押さえブロック(5,5’)との間で静止している状態を示す説明図である。
【図12】図12は、図7に示された実施態様の鉛蓄電池極板用格子体の製造装置において、鋳造された格子体(7)が、集積装置(C)の懸垂バー(8、8’)に支持される直前の状態を示す説明図である。
【図13】図13は、図7に示された実施態様の鉛蓄電池極板用格子体の製造装置において、鋳造された格子体(7)が、集積装置(C)の懸垂バー(8、8’)に支持された状態を示す説明図である。
【図14】図14は、図3に示されたブックモールド式の鋳造鋳型を備える、鉛蓄電池極板用格子体の製造装置の一実施態様を示す説明図である。
【図15】図15は、図14に示された実施態様の鉛蓄電池極板用格子体の製造装置において、鋳造された格子体(7)をブックモールド式の鋳造鋳型(A’)から取り出して、集積装置(C’)の懸垂バー(18、18’)に支持するまでの工程を示す説明図である。
【図16】図16は、図5に示したブックモールド式の鋳造鋳型を備える、鉛蓄電池極板用格子体の製造装置の一実施態様を示す説明図である。
【図17】図17は、図16に示された実施態様の鉛蓄電池極板用格子体の製造装置において、上部切断装置(24)及び下部切断装置(24’)をスライドして押し湯部分(b)及びガス抜け用の余剰金属部分(c)を切断した状態を示す説明図である。
【図18】図18は、図16に示された実施態様の鉛蓄電池極板用格子体の製造装置において、鋳造された格子体(7)をブックモールド式の鋳造鋳型(A’’)から取り出して、集積装置(C’’)の懸垂バー(28、28’)に支持するまでの工程を示す説明図である。
【図19】図19は、従来のブックモールド式の鋳造鋳型を示す外観図である。
【図20】図20は、従来のブックモールド式の鋳造鋳型の内面を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の鉛蓄電池極板用格子体を鋳造するブックモールド式の鋳造鋳型は、従来の一対の割型を備えるブックモールド式の鋳造鋳型を改良したものであり、一対の割型に加えて、更に、該鋳造鋳型から、鋳造された格子体を取り出しかつ搬送する取り出し搬送鋳型を備えるものである。該取り出し搬送鋳型は、好ましくは、鋳造された格子体の端部を支持して、鋳造された格子体を取り出しかつ搬送するものである。通常、鉛蓄電池極板用格子体は、図2に示すように一対の耳部(a,a’)を有する。従って、取り出し搬送鋳型は、好ましくは、該一対の耳部(a,a’)を支持して、ブックモールド式の鋳造鋳型から、鋳造された格子体を取り出しかつ搬送するように構成されている。
【0013】
図1には、本発明のブックモールド式の鋳造鋳型(A)の好ましい一実施態様を示す。ここで、図1(イ)は、ブックモールド式の鋳造鋳型を構成する一対の割型、即ち、固定鋳型(1)及び移動鋳型(2)、並びにこれら固定鋳型(1)と移動鋳型(2)とに挟まれた取り出し搬送鋳型(3)が組み合って密閉状態となり、一の鋳造鋳型を構成した状態を示しており、図1(ロ)は、ブックモールド式の鋳造鋳型の固定鋳型(1)及び移動鋳型(2)が完全に開いた状態を示している。鉛蓄電池極板用格子体(7)は、溶融金属(湯)が湯口(6)から注ぎ込まれ冷却凝固されることにより鋳造される。図1(ロ)に示されているように、鋳造された格子体(7)は両端部に一対の耳部(a,a’)を備えている。また、取り出し搬送鋳型(3)は、該一対の耳部(a,a’)の各先端下部面のみに接するように構成されている。例えば、図12を参照すると、取り出し搬送鋳型(3)が固定鋳型(1)とその切欠き部分(9)において組み合ったとき、取り出し搬送鋳型(3)が一対の耳部(a,a’)の各先端下部面のみと接することは明らかである。取り出し搬送鋳型(3)がこのように構成されることにより、格子体(7)の鋳造が完了し、移動鋳型(2)が移動して割型が完全に開いた後、一対の耳部(a,a’)を支持して、鋳造鋳型から、鋳造された格子体(7)を取り出しかつ搬送することができる。取り出し搬送鋳型(3)は、上記のように鋳造された格子体(7)の一対の耳部(a,a’)を支持して、鋳造鋳型から、鋳造された格子体(7)を取り出しかつ搬送することができ、かつ一対の割型、即ち、固定鋳型(1)及び移動鋳型(2)と組み合って密閉構造となり一の鋳造鋳型を構成し得るものであれば、その他の部分の形状及び構造は特に限定されるものではない。好ましくは、図1に示したような略直方体形の構造のものが用いられる。図1中、(b)は、湯口(6)付近に形成された格子体(7)の押し湯部分であり、(c)は、格子体(7)の下部に形成された余剰金属部分である。
【0014】
本発明のブックモールド式の鋳造鋳型は、好ましくは、鋳造鋳型の一部に、鋳造された格子体の余剰部分、例えば、格子体上部の押し湯部分(b)及び格子体下部のガス抜け用の余剰金属部分(c)を切断する切断装置を更に備えることができる。これにより、鉛蓄電池極板用格子体の製造装置に、鋳造された格子体から余剰部分を切断する切断装置を別途備える必要がなく、製造装置全体をコンパクト化することができる。
【0015】
図3には、本発明の、格子体から余剰部分を切断する切断装置(14,14’)を備えたブックモールド式の鋳造鋳型(A’)の好ましい一実施態様を示す。該切断装置(14,14’)は、図4に示すように、平板状の形状を有し、その略中央に細長い空隙(s,s’)を備えている。そして、該細長い空隙(s,s’)を構成する長辺(l,l;l’,l’)の両方又は片方にブレードを備える。図3に示すように、該平板状の切断装置(14,14’)は、一対の割型、即ち、固定鋳型(11)及び移動鋳型(12)が組み合った状態において、一の割型から他の一の割型へと、例えば、固定鋳型(11)から移動鋳型(12)へと、割型の頂部面(19)に対して略水平に貫通するように構成されている。そして、一対の割型、即ち、固定鋳型(11)及び移動鋳型(12)、取り出し搬送鋳型(13)並びに該平板状の切断装置(14,14’)が一緒に組み合って密閉状態となり、一の鋳造鋳型(A’)を構成する。このように、該平板状の切断装置(14,14’)は、ブックモールド式の鋳造鋳型を構成する鋳型の一つとしても機能する。このとき、一対の割型、即ち、固定鋳型(11)及び移動鋳型(12)が組み合ってできる空間と平板状の切断装置(14,14’)に備えられた細長い空隙とが一致するように構成されている。該平板状の切断装置(14,14’)は、鋳造された格子体の本体と、余剰部分、例えば、格子体上部の押し湯部分及び格子体下部のガス抜け用の余剰金属部分との境界に設置されており、格子体の鋳造後に該平板状の切断装置(14,14’)を、例えば、図3の矢印方向に移動することにより、鋳造された格子体の余剰部分を切断することができる。
【0016】
図5には、本発明の、格子体から余剰部分を切断する切断装置(24,24’)を備えたブックモールド式の鋳造鋳型(A’’)の好ましい他の実施態様を示す。また、図6には、図5に示した切断装置(24,24’)を、該切断装置が一対の割型(21,22)と接する方向から見た状態を示す。図5及び6に示すように、切断装置(24,24’)は、一対の割型から構成されており、該一対の割型が組み合ってできる面に細長い空隙(s,s’)を形成している。そして、該細長い空隙(s,s’)を構成する長辺(l,l;l’,l’)の両方又は片方にブレードを備える。図5に示す通り、該切断装置(24,24’)は組み合った状態で、夫々のブレードを備える面において、同様に組み合った状態にある、格子体の本体部分を鋳造する割型、即ち、固定鋳型(21)及び移動鋳型(22)と接し、かつ取り出し搬送鋳型(23)と一緒に組み合って密閉状態となり、一の鋳造鋳型(A’’)を構成する。このように、夫々、一対の割型から成る切断装置(24,24’)は、ブックモールド式の鋳造鋳型を構成する鋳型の一つとしても機能する。このとき、一対の割型から成る切断装置(24,24’)が組み合ってできる面に形成される細長い空隙と格子体の本体部分を鋳造する割型、即ち、固定鋳型(21)及び移動鋳型(22)が組み合ってできる面に形成される細長い空隙とが一致するように構成されている。ここで、切断装置(24,24’)を構成する一対の割型は、格子体の余剰部分のみを鋳造するように配置されている。従って、格子体の鋳造後に切断装置(24,24’)を、例えば、図5の矢印方向に移動することにより、鋳造された格子体の余剰部分を切断することができる。なお、鋳造鋳型(A’’)の上部に配置されている切断装置(24)には湯口が形成され、下部に配置されている切断装置(24’)にはガス抜け用の余剰金属部分が刻印されている。
【0017】
以下、上記の本発明のブックモールド式の鋳造鋳型を備えた鉛蓄電池極板用格子体の製造装置の好ましい実施態様のいくつかの例を、図面を参照しながら説明する。本発明のブックモールド式の鋳造鋳型及びそれを備えた鉛蓄電池極板用格子体の製造装置は、これらの実施態様に限定されるものではない。
【0018】
図7には、図1に示したブックモールド式の鋳造鋳型(A)を備えた、本発明の鉛蓄電池極板用格子体の製造装置の一実施態様を示す。該鉛蓄電池極板用格子体の製造装置は、図7に示されているようにブックモールド式の鋳造鋳型(A)、切断装置(B)及び集積装置(C)を備える。これらは、通常、ブックモールド式の鋳造鋳型(A)、切断装置(B)及び集積装置(C)の順序で上方から下方へと設置されている。ブックモールド式の鋳造鋳型(A)において鋳造された鉛蓄電池極板用格子体(7)は、順次、切断装置(B)及び集積装置(C)へと搬送され、切断装置(B)では、鋳造後の鉛蓄電池極板用格子体(7)に形成されている押し湯部分(b)及びガス抜け用の余剰金属部分(c)が切断され、次いで、鉛蓄電池極板用格子体(7)は、集積装置(C)の懸垂バー(8,8’)に懸架される。上記の工程を順次に経ることができるものであれば、ブックモールド式の鋳造鋳型(A)、切断装置(B)及び集積装置(C)を必ずしも上方から下方の順序で設置しなければならないというものではない。
【0019】
上記の鉛蓄電池極板用格子体の製造装置に備えられるブックモールド式の鋳造鋳型(A)は、従来の固定鋳型と移動鋳型とを組み合わせたブックモールド式の鋳造鋳型に、更に、鋳造後の鉛蓄電池極板用格子体の耳部(a,a’)を支持して移動可能な、取り出し搬送鋳型(3)を備えるものである。本発明の鋳造鋳型(A)においては、図7に示されているように固定鋳型(1)と移動鋳型(2)と取り出し搬送鋳型(3)が組み合って、上部の湯口(6)を除いて密閉状態を構成することができる。溶融金属(湯)は湯口(6)から注ぎ込まれる。固定鋳型(1)及び移動鋳型(2)には、図示しないが、従来同様温度調節のためにヒーター、水冷用の穴、熱電対等が備えられており、これらにより適切な温度に適宜制御される。該ブックモールド式の鋳造鋳型(A)において、鉛蓄電池極板用格子体(7)が鋳造される。ここで、鉛蓄電池極板用格子体(7)としては、例えば、図2の(イ)及び(イ’)に示されているような2枚1組のもの及び4枚1組のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いずれの場合においても、格子体(7)には、鋳造後の搬送のために少なくとも一対の耳部(a、a’)が形成されている。格子体(7)の寸法は適宜変えることができるが、例えば、横270〜330mm、縦120〜180mm、厚さ1.1〜1.5mであり、図示されているものは、横約300mm、縦約150mm、厚さ約1.3mmである。また、耳部(a、a’)の寸法も特に限定されないが、通常、横約20mm、縦約15mm、厚さ約1.3mmである。図2中、(ロ)及び(ロ’)は、いずれも、格子体(7)が鋳型(A)から取り出された直後の状態を示しており、格子体(7)の上部には押し湯部分(b)、下部にはガス抜け用の余剰金属部分(c)が形成されている。
【0020】
鋳型(A)中に注がれた溶融金属(湯)が冷却凝固されて鋳造が完了すると、図8に示されているように移動鋳型(2)が矢印の方向に移動し始める。鋳型(A)が開き始めると同時に、固定鋳型(1)の表面に配置されたイジェクトピン(図示されていない)により、鋳造された格子体(7)が固定鋳型(1)から押し出され始める。図9は、鋳型(A)が完全に開いた状態を示している。このとき、格子体(7)は、耳部(a、a’)において取り出し搬送鋳型(3)に支持された状態にある。
【0021】
鉛蓄電池極板用格子体の製造装置に備えられる切断装置(B)は、図7に示されているように、一対の切断用押さえブロック(5,5’)を備えており、かつ一方の切断用押さえブロック(5)には上下に一対のブレード(4,4’)が備えられている。一対のブレード(4,4’)は、鋳造された鉛蓄電池極板用格子体(7)と、同時に鋳造された余剰部分である押し湯部分(b)及びはガス抜け用の余剰金属部分(c)とを正確に切り離すことができる位置に設置されている。図10及び11に示されているように、鋳造された鉛蓄電池極板用格子体(7)は、その耳部(a、a’)が取り出し搬送鋳型(3)に支持された状態で、ブックモールド式の鋳型(A)から切断装置(B)に移動し、鋳型(A)の下方に位置する切断装置(B)の一対の切断用押さえブロック(5,5’)の間で静止する。次いで、格子体(7)は、切断用押さえブロック(5,5’)により両側から挟みつけられて固定された後、一方の切断用押さえブロック(5)の上下に備えられた一対のブレード(4,4’)が他方の切断用押さえブロック(5’)方向に移動することにより、押し湯部分(b)及びガス抜け用の余剰金属部分(c)が切断される。
【0022】
鉛蓄電池極板用格子体の製造装置に備えられる集積装置(C)は、図7に示されているように、一対の懸垂バー(8,8’)を備えている。切断装置(B)において押し湯部分(b)及びガス抜け用の余剰金属部分(c)を切断された格子体(7)は、図12に示されているように、取り出し搬送鋳型(3)に耳部(a、a’)において支持された状態で、取り出し搬送鋳型(3)と共に下降し、切断装置(B)の下方に位置する集積装置(C)の懸垂バー(8,8’)に、格子体(7)の耳部(a、a’)が載る形で支持される。その後、図13に示されているように、集積装置(C)の懸垂バー(8、8’)に支持された格子体(7)は、適宜、次工程に搬送される。
【0023】
その後、取り出し搬送鋳型(3)は上方に移動して、固定鋳型(1)内に収容され、次いで、移動鋳型(2)が固定鋳型(1)に突き合わされて、密閉状態の鋳型(A)が構成され、再び、溶融金属(湯)が上部の湯口(6)から注ぎ込まれる。以後、このサイクルが繰り返されて、順次、鉛蓄電池極板用格子体が製造される。また、本発明の鉛蓄電池極板用格子体の鋳造装置においては、取り出し搬送鋳型(3)を一つのブックモールド式の鋳型(A)に対して複数個備えることもできる。これにより、鋳型(A)における格子体(7)の鋳造が完了した後、直ちに別の取り出し搬送鋳型(3)を使用して密閉状態の鋳型(A)を構成し、鋳造を開始することができ、上記鋳造サイクルの効率を高めることができる。
【0024】
図14には、図3に示したブックモールド式の鋳造鋳型(A’)を備えた、本発明の鉛蓄電池極板用格子体の製造装置の他の実施態様を示す。該ブックモールド式の鋳造鋳型(A’)は、図1に示したブックモールド式の鋳型(A)に上下一対の切断装置(14、14’)を組み込んだものである。移動鋳型(12)には切断装置(14、14’)の先端部分(d、d’)が組み込まれている。切断装置(14、14’)は、図4に示されたような平板状の形状を有し、その略中央に細長い空隙(s,s’)が形成されている。細長い空隙(s,s’)の幅(短辺)は、鋳型(A’)内の空間の幅(厚み)と同一であり、かつ細長い空隙(s,s’)は、切断装置(14、14’)が鋳型(A’)に組み込まれた状態で、細長い空隙(s,s’)が鋳型(A’)内の空間と一致するように配置されている。この細長い空隙(s,s’)の水平移動により、鋳造後の格子体(7)に形成される押し湯部分(b)及びガス抜け用の余剰金属部分(c)が切断されるように、細長い空隙(s,s’)は鋳型(A’)に配置されている。まず、図14に示すように、固定鋳型(11)に取り出し搬送鋳型(13)が組み込まれ、かつ移動鋳型(12)が固定鋳型(11)に突き合わされ、更に、上下一対の切断装置(14、14’)が組み込まれて、密閉状態になっている鋳型(A’)が構成される。次いで、該鋳型(A’)中に、溶融金属(湯)が上部の湯口(16)から注ぎ込まれる。鋳型(A’)中に注ぎ込まれた溶融金属(湯)が冷却凝固されて鋳造が完了すると、上下一対の切断装置(14、14’)が矢印の方向に引き抜かれ、押し湯部分(b)及びガス抜け用の余剰金属部分(c)が切断される。次いで、図15の(イ)から(ホ)に順次示されているように、移動鋳型(12)が矢印方向に移動して鋳型(A’)が開き、固定鋳型(11)の表面に配置されたイジェクトピン(図示されていない)により、鋳造された格子体(7)が固定鋳型(11)から押し出される。そして、取り出し搬送鋳型(13)に耳部(a、a’)において支持された格子体(7)は、取り出し搬送鋳型(13)と共に下降して、鋳型(A’)の下方に位置する集積装置(C’)の懸垂バー(18、18’)に、格子体(7)の耳部(a、a’)が載る形で支持される。固定鋳型(11)の内部に残存した切断された押し湯部分(b)及びガス抜け用の余剰金属部分(c)は、固定鋳型(11)の表面に配置された余剰部分排出用のイジェクトピン(図示されていない)により押し出されて排出される。取り出し搬送鋳型(13)は上方に移動して、固定鋳型(11)内に収容され、次いで、移動鋳型(12)が固定鋳型(11)に突き合わされ、かつ上下一対の切断装置(14、14’)が組み込まれて、密閉状態の鋳型(A’)が構成され、再び、溶融金属(湯)が上部の湯口(16)から注ぎ込まれる。以後、このサイクルが繰り返されて、順次、鉛蓄電池極板用格子体が製造される。また、取り出し搬送鋳型(13)を一つのブックモールド式の鋳型(A’)に対して複数個備えることができることは、上記の実施態様と同様であり、これにより鋳造サイクルの効率を高めることができる。
【0025】
図16には、図5に示したブックモールド式の鋳造鋳型(A’’)を備えた、本発明の鉛蓄電池極板用格子体の鋳造装置の更なる他の実施態様を示す。該ブックモールド式の鋳造鋳型(A’’)は、固定鋳型(21)、移動鋳型(22)及び取り出し搬送鋳型(23)に加えて、更に、上部切断装置(24)及び下部切断装置(24’)を備えたものである。ここで、上部切断装置(24)及び下部切断装置(24’)は、夫々、ブックモールド式の鋳型(A’’)の湯口(26)を含む上部の一部分、及び、ブックモールド式の鋳型(A’’)の、ガス抜け用の余剰金属部分が刻印された部分を含む下部の一部分自体を切断装置にしたものである。これらは一体となってブックモールド式の鋳型(A’’)を構成する。まず、図16に示すように、固定鋳型(21)に取り出し搬送鋳型(23)が組み込まれ、かつ移動鋳型(22)が突き合わされ、更に、上部切断装置(24)及び下部切断装置(24’)が組み込まれて、密閉状態になっている鋳型(A’’)が構成される。次いで、該鋳型(A’’)中に、溶融金属(湯)が上部切断装置(24)の上部に備えられた湯口(26)から注ぎ込まれる。鋳型(A’’)中に注ぎ込まれた溶融金属(湯)が冷却凝固されて鋳造が完了すると、図17に示すように、上部切断装置(24)及び下部切断装置(24’)が図16の矢印の方向にスライドされて、押し湯部分(b)及びガス抜け用の余剰金属部分(c)が切断される。次いで、図18の(イ)から(ホ)に順次示されているように、移動鋳型(22)が矢印方向に移動して鋳型(A’’)が開き、固定鋳型(21)の表面に配置されたイジェクトピン(図示されていない)により、鋳造された格子体(7)が固定鋳型(21)から押し出される。そして、取り出し搬送鋳型(23)に耳部(a、a’)において支持された格子体(7)は、取り出し搬送鋳型(23)と共に下降して、鋳型(A)の下方に位置する集積装置(C’’)の懸垂バー(28、28’)に、格子体(7)の耳部(a、a’)が載る形で支持される。上部切断装置(24)及び下部切断装置(24’)の内部に、夫々、残存した切断された押し湯部分(b)及びガス抜け用の余剰金属部分(c)は、上部切断装置(24)及び下部切断装置(24’)の表面に配置された余剰部分排出用のイジェクトピン(図示されていない)により押し出されて排出される。取り出し搬送鋳型(23)は上方に移動して、固定鋳型(21)内に収容され、次いで、移動鋳型(22)が固定鋳型(21)に突き合わされ、かつ上部切断装置(24)及び下部切断装置(24’)が組み合わされて、密閉状態の鋳型(A’’)が構成され、再び、溶融金属(湯)が上部の湯口(26)から注ぎ込まれる。以後、このサイクルが繰り返されて、順次、鉛蓄電池極板用格子体が製造される。また、取り出し搬送鋳型(23)を一つのブックモールド式の鋳型(A’’)に対して複数個備えることができることは、上記のいずれの実施態様とも同様であり、これにより鋳造サイクルの効率を高めることができる。
【0026】
上記のいずれの態様においても、鉛蓄電池極板用格子体の製造装置の各部分、例えば、移動鋳型、取り出し搬送鋳型、切断用押さえブロック、ブレード、上部切断型、下部切断型等の一連の動作は全てコンピューターにより制御することができ、これらは正確かつ確実に作動することができる。また、これら各部分の動作、例えば、鋳型のスライド、上下移動等は、当業者に公知の手段を組み合わせることにより容易に達成することができる。
【実施例】
【0027】
[実施例1]
鉛蓄電池極板用格子体の製造装置として、上記の図7に示した装置を使用した。
【0028】
離型剤を、スプレーガンを使用して、図7に示した装置の鋳造鋳型(A)の内面全面に均一にスプレー塗布した。次いで、離型剤が塗布された鋳造鋳型(A)に溶湯を流し込んで、横300mm、縦150mm及び厚さ1.3mmの2枚1組のカルシウム鉛合金格子体を鋳造した。次いで、鋳造された格子体を切断装置(B)に移動して、押し湯部分及びガス抜け用の余剰金属部分を切断した後、集積装置(C)に移動して懸垂バーに格子体の耳部が載る形で集積した。鋳造鋳型(A)に溶湯を流し込む操作を繰り返して1,000枚の格子体を製造した。
【0029】
得られた格子体の変形の程度を測定した。その結果、製造された1,000枚の格子体の全てに変形が認められなかった。ここで、格子体の変形は、切断された押し湯部分及びガス抜け用余剰金属部分に接していた、格子体の上下の枠骨の幅を全長に亘り測定して評価し、測定した幅寸法が、全て所定寸法(1.3mm)の5%以下である場合は変形なしとし、一部でも5%を超える場合には変形ありと判断した。
【0030】
[比較例1]
鉛蓄電池極板用格子体の製造装置としては、従来から使用されている固定型と移動型のみから成るブックモールド式の鋳造鋳型とシュートとカッタと受取板とストック部から成る装置を使用した。該装置を使用して、鋳造鋳型からシュート、シュートからカッタ、カッタから受取板へと、夫々、格子体を自然落下させて、実施例1と同形の1,000枚の格子体を製造した。
【0031】
次いで、実施例1と同一の方法を使用して、得られた格子体の変形の程度を測定した。その結果、1,000枚中30枚に変形が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のブックモールド式の鋳造鋳型によれば、鋳造後の鉛蓄電池極板用格子体を鋳型から取り出す際に、該格子体を殆ど変形させることがない。また、鋳造後の格子体の押し湯部分及びガス抜け用の余剰金属部分を正確に切り落とすことができる。加えて、該製造装置は安価である。従って、鉛蓄電池極板用格子体、とりわけ、近年の薄型化された格子体の製造に積極的に使用されることが大いに期待される。
【符号の説明】
【0033】
A,A’,A’’:ブックモールド式の鋳造鋳型
B,B’,B’’:切断装置
C,C’,C’’:集積装置
a,a’:一対の耳部
b:押し湯部分
c:ガス抜け用の余剰金属部分
d,d’:切断装置の先端部分
,s’,s,s’:細長い空隙
,l,l’,l’,l,l,l’,l’:細長い空隙を構成する長辺
1,11,21:固定鋳型
2,12,22:移動鋳型
3,13,23:取り出し搬送鋳型
4,4’:一対のブレード
5,5’:一対の切断用押さえブロック
6,16,26:湯口
7:格子体
8,8’,18,18’,28,28’:懸垂バー
9:切欠き部分
14,14’,24,24’:切断装置
19:割型の頂部面
101 固定鋳型
102 移動鋳型
106 湯口
110 固定鋳型及び移動鋳型の内面
110a 一対の耳部に対応する鋳型の刻印部分
110b 押し湯部分に対応する鋳型部分
110c ガス抜け用の余剰金属部分に対応する鋳型部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛蓄電池極板用格子体を鋳造するところの、一対の割型を備えるブックモールド式の鋳造鋳型において、上記鋳造鋳型から、鋳造された格子体を取り出しかつ搬送する取り出し搬送鋳型を更に備えることを特徴とするブックモールド式の鋳造鋳型。
【請求項2】
上記一対の割型の内面が、鋳造される格子体の上部両端に耳部が形成されるように刻印されており、かつ該耳部用の刻印の下端面に取り出し搬送鋳型が配置されている請求項1記載のブックモールド式の鋳造鋳型。
【請求項3】
上記鋳造鋳型の一部に、鋳造された格子体の余剰部分を切断する切断装置を更に備える請求項1又は2記載のブックモールド式の鋳造鋳型。
【請求項4】
請求項1又は2記載のブックモールド式の鋳造鋳型、該鋳型で鋳造された格子体から余剰部分を切断する切断装置、及び該装置により余剰部分を切断された格子体を集積する集積装置を順次備える、鉛蓄電池極板用格子体の製造装置。
【請求項5】
請求項3記載のブックモールド式の鋳造鋳型、及び該鋳型で鋳造された格子体を集積する集積装置を順次備える、鉛蓄電池極板用格子体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−173165(P2011−173165A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41056(P2010−41056)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)