説明

銅含有材料用エッチング剤組成物及び銅含有材料のエッチング方法

【課題】微細パターンの回路配線の形状不良及びスラッジの発生を防止することにより、断線やショート等がない微細パターンの回路配線を形成し得る銅含有材料用エッチング剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)第二銅イオン及び第二鉄イオンから選択される少なくとも1つの酸化剤成分0.1〜15質量%、(B)エチレンオキサイド基及びプロピレンオキサイド基から選択される少なくとも1つの基を(ポリ)アミン類化合物の活性水素に付加した化合物0.001〜5質量%、(C)ヒドロキシアルカンスルホン酸及びヒドロキシアルカンスルホン酸塩から選択される少なくとも1つのヒドロキシアルカンスルホン酸成分0.1〜10質量%、並びに(D)塩酸及び硫酸から選択される少なくとも1つの無機酸0.1〜10質量%を必須成分とする水溶液からなることを特徴とする銅含有材料用エッチング剤組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅含有材料用エッチング剤組成物及び銅含有材料のエッチング方法に関し、特に、プリント配線基板、パッケージ用基板、COF、TAB等の製造において用いられる銅含有材料用エッチング剤組成物、及び当該エッチング剤組成物を用いた銅含有材料のエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に回路配線を形成したプリント配線基板(或いはフィルム)が、電子部品や半導体素子等を実装するために広く用いられている。そして、近年の電子機器の小型化及び高機能化の要求に伴い、プリント配線基板(或いはフィルム)の回路配線についても、高密度化及び薄型化が望まれている。
高密度の回路配線(すなわち、微細パターンの回路配線)を形成する方法としては、サブトラクティブ法やセミアディティブ法と呼ばれる方法が知られており、これらの方法ではウエットエッチングが一般に行われている。
【0003】
微細パターンの回路配線の形成においては、エッチング部分の残膜がないこと、上部からみた回路配線の側面が直線となること(直線性)、回路配線の断面が矩形となること、及び高いエッチングファクターを示すことが理想であるが、実際には、残膜、直線性の乱れ、サイドエッチング、アンダーカット、及び回路配線上部幅(以下、「トップ幅」ということもある)の細りによるエッチングファクターの低下等の形状不良が起こる。そのため、ウエットエッチングでは、これらの形状不良を抑制することが望まれている。
【0004】
上記のような回路配線の形状不良について、エッチング剤組成物の成分を工夫することによって改良する技術が種々報告されている。
例えば、特許文献1には、酸化剤である2価の鉄イオンと、塩酸と、銅含有材料エッチング促進剤と、銅含有材料エッチング抑制剤とを必須成分とするエッチング剤組成物が開示されている。ここで、銅含有材料エッチング抑制剤としては、アミン類化合物の活性水素基にプロピレンオキシド基及びエチレンオキシド基を付加した化合物が例示されている。
【0005】
また、特許文献2には、塩化第二銅又は塩化第二鉄と、塩酸と、有機化合物とからなるエッチング剤組成物が開示されている。ここで、有機化合物としては、ポリオキシエチレン、ポリプロピレンオキシド及びこれらのモノ或いはジ−アルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール及びそのモノ或いはジ−アルキルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩などのアニオン性界面活性剤が例示されている。
【0006】
また、特許文献3には、硫酸又はスルホン酸化合物と、塩酸又は塩素化合物と、亜硝酸塩とを含有するエッチング剤組成物が開示されている。ここで、スルホン酸化合物としては、ヒドロキシエタンスルホン酸が例示されている。
【0007】
また、特許文献4には、第二銅イオン及び第二鉄イオンから選ばれる少なくとも1つの酸化剤成分と、1個の水酸基を有するグリコールエーテル類化合物と、エチレンオキサイド基及びプロピレンオキサイド基の少なくとも1つを(ポリ)アミン類化合物の活性水素に付加した化合物と、リン酸及びリン酸塩から選ばれる少なくとも1つのリン酸成分と、塩酸及び硫酸から選ばれる少なくとも1つの無機酸とを必須成分とするエッチング剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−138389号公報
【特許文献2】特開2004−175839号公報
【特許文献3】国際公開第2007/040046号パンフレット
【特許文献4】特開2009−167459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されたエッチング剤組成物では、微細パターンの回路配線の形状不良を抑制する効果が不十分であり、微細パターンの回路配線の断線やショート等が生じるという問題がある。また、特許文献4に開示されたエッチング剤組成物では、リン酸と鉄又は銅との塩に由来するスラッジの発生により、微細パターンの回路配線の断線やショート等が生じるという問題がある。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、微細パターンの回路配線の形状不良及びスラッジの発生を防止することにより、断線やショート等がない微細パターンの回路配線を形成し得る銅含有材料用エッチング剤組成物及び銅含有材料のエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記のような問題を解決すべく鋭意研究した結果、エッチング剤組成物の組成が、微細パターンの回路配線の形状及びスラッジの発生に大きく影響するという知見に基づき、特定の組成を有する銅含有材料用エッチング剤組成物とすることで、上記問題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、(A)第二銅イオン及び第二鉄イオンから選択される少なくとも1つの酸化剤成分0.1〜15質量%、(B)エチレンオキサイド基及びプロピレンオキサイド基から選択される少なくとも1つの基を(ポリ)アミン類化合物の活性水素に付加した化合物0.001〜5質量%、(C)ヒドロキシアルカンスルホン酸及びヒドロキシアルカンスルホン酸塩から選択される少なくとも1つのヒドロキシアルカンスルホン酸成分0.1〜10質量%、並びに(D)塩酸及び硫酸から選択される少なくとも1つの無機酸0.1〜10質量%を必須成分とする水溶液からなることを特徴とする銅含有材料用エッチング剤組成物である。
また、本発明は、上記の銅含有材料用エッチング剤組成物を使用することを特徴とする銅含有材料のエッチング方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、微細パターンの回路配線の形状不良及びスラッジの発生を防止することにより、断線やショート等がない微細パターンの回路配線を形成し得る銅含有材料用エッチング剤組成物及び銅含有材料のエッチング方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の銅含有材料用エッチング剤組成物(以下、「エッチング剤組成物」という)は、(A)第二銅イオン及び第二鉄イオンから選択される少なくとも1つの酸化剤成分(以下、「(A)成分」という)、(B)エチレンオキサイド基及びプロピレンオキサイド基から選択される少なくとも1つの基を(ポリ)アミン類化合物の活性水素に付加した化合物(以下、「(B)成分」という)、(C)ヒドロキシアルカンスルホン酸及びヒドロキシアルカンスルホン酸塩から選択される少なくとも1つのヒドロキシアルカンスルホン酸成分(以下、「(C)成分」という)、並びに(D)塩酸及び硫酸から選択される少なくとも1つの無機酸(以下、「(D)成分」という)を必須成分とする水溶液からなる。
【0014】
(A)成分は、銅含有材料を酸化させてエッチングを行う機能を有し、第二銅イオン、第二鉄イオン、又は第二銅イオンと第二鉄イオンとの混合物を用いることができる。これらは、通常、銅や銅(II)化合物及び/又は鉄(III)化合物を供給源として配合することができる。銅(II)化合物としては、塩化第二銅、臭化第二銅、硫酸第二銅、水酸化第二銅及び酢酸第二銅が挙げられ、鉄(III)化合物としては、塩化第二鉄、臭化第二鉄、ヨウ化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄及び酢酸第二鉄等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、コスト、エッチング剤組成物の安定性、及びエッチング速度の制御性の面において、銅、塩化第二銅、硫酸第二銅及び塩化第二鉄が好ましく、塩化第二鉄がより好ましい。
【0015】
エッチング剤組成物における(A)成分の含有量は、第二銅イオン及び/又は第二鉄イオン換算で0.1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%である。(A)成分の含有量が0.1質量%よりも少ないと、エッチング時間が長くなり、レジストが劣化したり、生産性が低下したりする。また、サブトラクティブ法においては、銅裏面のNi−Crシード層のエッチング効果が低下するため、銅の残膜除去性が悪くなる。一方、(A)成分の含有量が15質量%よりも多いと、エッチング速度が制御できなくなり、エッチングファクターが低下する。
【0016】
また、第二鉄イオンと第二銅イオンとを併用すれば、エッチング剤組成物の酸化還元電位、比重、酸濃度、銅濃度等を制御し、エッチング剤組成物のエッチング能力を自動制御することができる。この場合の第二銅イオンの含有量は、第二銅イオン換算で0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。第二銅イオンの含有量が0.05質量%よりも少ないと所望の使用効果が得られないことがある。一方、第二銅イオンの含有量が10質量%よりも多いと、エッチング剤組成物中にスラッジが発生してしまうことがある。
【0017】
(B)成分は、回路配線のパターンへのエッチング剤組成物の浸透性を向上させる機能、及び回路配線周辺のエッチング剤組成物の滞留を低減させる機能を有する。さらに、(B)成分は、銅に対して親和性であるので、エッチング抑制剤としても機能する。そのため、直線性の向上効果、サイドエッチング抑制効果、アンダーカット抑制効果、配線上部幅の減少抑制効果等をエッチング剤組成物に付与することができる。
【0018】
(B)成分を与える(ポリ)アミン類化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、及びエタノールジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン;これらのアルカノールアミンをアルキル置換したアルキルアルカノールアミン;下記一般式(1)で表される化合物;下記一般式(1)で表される(ポリ)アミンをアルカノール置換したアルカノールアルキレンポリアミン等が挙げられる。
【0019】
【化1】

【0020】
上記の一般式(1)中、Rは炭素数2〜6のアルカンジイル基を表し;X〜Xは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、且つそのうちの少なくとも1つは水素原子であり;nは0〜6である。
【0021】
により表されるアルカンジイル基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、1,3−ジメチルプロピレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、4−メチルブチレン、2,4−ジメチルブチレン、1,3−ジメチルブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン等が挙げられる。X〜Xにより表される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル等が挙げられる。
【0022】
(B)成分は、エチレンオキサイド基及びプロピレンオキサイド基から選択される少なくとも1つの基を上記の(ポリ)アミン類化合物の活性水素に付加した化合物である。エチレンオキサイド基及びプロピレンオキサイド基の両方を(ポリ)アミン類化合物の活性水素に付加した化合物を用いる場合、これらのオキサイド基の(ポリ)アミン類化合物に対する付加順序は特に問われない。また、この付加は、ブロック付加でもランダム付加でもよい。また、エチレンオキサイド基とプロピレンオキサイド基との付加割合は、エチレンオキサイド基とプロピレンオキサイド基とのモル比が95:5〜10:90であることが好ましい。また、エチレンオキサイド基の付加量は、得られた付加化合物の分子量の10〜80質量%であればよいが、泡立ちを抑えることを重視する場合には10〜50質量%が好ましい。
【0023】
(B)成分の中でも、エッチング剤組成物の特性の制御し易さを考慮した場合、プロピレンオキサイド基及びエチレンオキサイド基の両方がエチレンジアミンの活性水素にブロック付加した化合物が好ましく、下記一般式(2)の構造を有する基がエチレンジアミンに付加した化合物がより好ましい。
【0024】
【化2】

【0025】
上記の一般式(2)中、Rはプロピレン基を表し、Rはエチレン基を表し、p及びqは、(B)成分の数平均分子量が200〜10,000となる数を表す。
【0026】
(B)成分の分子量(以下、特段断りのない限り、本明細書における分子量とは、数平均分子量のことを意味する)は、200〜10,000、好ましくは200〜7,000である。(B)成分の数平均分子量が200よりも小さいと、回路形状の向上効果が充分でない。一方、(B)成分の数平均分子量が10,000よりも大きいと、充分なエッチング速度を得ることができない。
【0027】
(B)成分は、1種類を単独で使用することができるが、2種類以上を混合して使用することも可能である。
エッチング剤組成物における(B)成分の濃度は、0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜2質量%である。(B)成分の濃度が0.001質量%未満であると、(B)成分を配合することによる所望の効果が得られない。一方、(B)成分の濃度が5質量%超えると、エッチング速度の低下や、銅とレジストとの界面にエッチング剤組成物が浸透することによる回路配線の形状不良等が生じる。
【0028】
(C)成分は、直線性の向上及び残膜防止の機能を有する。(C)成分としては、ヒドロキシアルカンスルホン酸及びその塩をそれぞれ単独で、或いはそれらを混合して使用することができる。ヒドロキシアルカンスルホン酸としては、例えば、2−ヒドロキシエタン−1−スルホン酸(イセチオン酸)、2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸、1−ヒドロキシプロパン−2−スルホン酸、3−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸、4−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシペンタン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシヘキサン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシデカン−1−スルホン酸等が挙げられるが、その中でも2−ヒドロキシエタン−1−スルホン酸(イセチオン酸)が好ましい。
【0029】
ヒドロキシアルカンスルホン酸塩としては、例えば、ヒドロキシアルカンスルホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、銅塩、鉄塩等が挙げられる。
【0030】
エッチング剤組成物における(C)成分の濃度は、0.1〜10質量%である。(C)成分の濃度が0.1質量%未満であると、(C)成分を配合することによる充分な効果が得られない。一方、(C)成分の濃度が10質量%を超えると、エッチングファクターが低下してしまう。
【0031】
(D)成分は、エッチングされる銅含有材料表面の銅酸化膜や銅塩化物を除去する機能、酸化剤(例えば、(A)成分)を安定化させる機能、及び銅含有材料に対するレベリング性を向上させる機能を有すると共に、エッチングを促進する効果もある。
(D)成分としては、塩酸及び硫酸をそれぞれ単独で、或いはそれらを混合して使用することができる。
【0032】
エッチング剤組成物における(D)成分の濃度は、0.1〜10質量%である。(D)成分の濃度が0.1質量%未満であると、(D)成分を配合することによる所望の効果が得られない。一方、(D)成分の濃度が10質量%を超えると、エッチングが過剰となって、エッチング速度の制御ができなくなったり、回路配線の形状不良が生じたりする。
【0033】
本発明のエッチング剤組成物は、上記の(A)〜(D)成分を必須成分とする水溶液であり、上記の(A)〜(D)成分を水に溶解させることによって容易に調製することができる。この水溶液に使用される水としては、特に制限されることはないが、イオン交換水、純水及び超純水等のイオン性物質や不純物を除去した水が好ましい。
【0034】
本発明のエッチング剤組成物には、本発明の効果を阻害することのない範囲で、上記の必須成分(A)〜(D)以外に当該用途に使用される周知の任意成分を配合することができる。配合可能な任意成分としては、(E)1個の水酸基を有するグリコールエーテル類化合物(以下、「(E)成分」という)、(F)ポリアルキレングリコール類化合物(以下、「(F)成分」という)、界面活性剤(ただし、必須成分に含まれるものを除く)、有機酸(ただし、必須成分に含まれるものを除く)、無機酸(ただし、必須成分に含まれるものを除く)、アミノ酸類化合物、アゾール類化合物、ピリミジン類化合物、チオ尿素類化合物、アミン類化合物、アルキルピロリドン類化合物、有機キレート剤化合物、ポリアクリルアミド類化合物、過酸化水素、過硫酸塩、無機塩、第一銅イオン、及び第一鉄イオンが挙げられる。これらの任意成分を使用する場合のエッチング剤組成物中の濃度は、一般的に0.001質量%〜10質量%の範囲である。
【0035】
(E)成分は、回路配線のパターンへのエッチング剤組成物の浸透性を向上させる機能、及び回路配線周辺のエッチング剤組成物の滞留を低減させる機能を有する。これにより、エッチングの促進及び均一化をエッチング剤組成物に付与することができる。
【0036】
(E)成分は、1個の水酸基を有し、且つ残りの1個の水酸基がエーテル化された構造を有する。(E)成分としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、及び3−メチル−3−メトキシ−3−メトキシブタノール等の低分子グリコールエーテル化合物、並びにポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、及びポリエチレングリコールモノブチルエーテル等の高分子グリコールエーテル化合物が挙げられる。これらの化合物は、単独又は二種以上を混合して使用することができる。また、これらの化合物の中でも、低分子グリコールエーテル化合物は、添加効果が良好であるため好ましい。
【0037】
エッチング剤組成物における(E)成分の濃度は、0.001〜5質量%が好ましく、0.1〜2.5質量%がより好ましい。(E)成分の濃度が0.001質量%未満であると、(E)成分を配合することによる所望の効果が得られない。一方、(E)成分の濃度が5質量%を超えると、エッチング剤組成物の粘度が大きくなるため、液抜け性の悪化や、直線性の不良が生じる場合がある。
【0038】
(F)成分もまた、回路配線のパターンへのエッチング剤組成物の浸透性を向上させる機能を有する。
(F)成分としては、例えば、ポリエチレングリコール;ポリエチレングリコールジメチルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタノール及び1,4−ブタノール等のジオールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック又はランダム付加させたポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0039】
(F)成分の中でも、下記一般式(3)で表される化合物は、(B)成分との組み合わせによって、より一層良好な回路形状を与えることができる。特に、(B)成分の数平均分子量が200〜1,500である場合に、(B)成分と共に使用することが好ましい。
【0040】
【化3】

【0041】
上記の一般式(3)中、R及びR’はエチレン基又はプロピレン基を表し、Rがエチレン基の場合にR’がプロピレン基であり、Rがプロピレン基の場合にR’がエチレン基であり、a、b及びcは、数平均分子量が1,500〜5,000であり、且つエチレンオキサイド基の含有量が10〜50質量%となる数を表す。
【0042】
上記の一般式(3)で表されるポリアルキレングリコール類化合物を使用する場合、そのエッチング剤組成物中の濃度は、好ましくは0.001〜3質量%、より好ましくは0.05〜2質量%である。0.001質量%よりも少ないと、充分な使用効果が得られない。一方、3質量%よりも多いと、エッチング剤組成物の粘度が高くなって液抜け性が低下し、回路形状の直線性が悪くなる場合がある。
【0043】
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、硫化オレフィン塩、高級アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、硫酸化脂肪酸塩、スルホン化脂肪酸塩、リン酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、グリセライド硫酸エステル塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩、スルホコハク酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸塩、N−アシル−N−メチルタウリンの塩、N−アシルグルタミン酸又はその塩、アシルオキシエタンスルホン酸塩、アルコキシエタンスルホン酸塩、N−アシル−β−アラニン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシエチルタウリン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシメチルグリシン又はその塩、アシル乳酸塩、N−アシルサルコシン塩、及びアルキル又はアルケニルアミノカルボキシメチル硫酸塩等が挙げられる。
【0044】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加形態は、ランダム状、ブロック状の何れでもよい)、ポリエチレングリコールプロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、アルキレンジアミンのエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム又はブロック付加物、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキサイド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸モノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸−N−メチルモノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸ジエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリセリンエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、及びN−長鎖アルキルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0045】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル(アルケニル)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(アルケニル)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、エーテル基又はエステル基又はアミド基を含有するモノ又はジアルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、アルキル(アルケニル)ピリジニウム塩、アルキル(アルケニル)ジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)イソキノリニウム塩、ジアルキル(アルケニル)モルホニウム塩、ポリオキシエチレンアルキル(アルケニル)アミン、アルキル(アルケニル)アミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン、スルホベタイン、ホスホベタイン、アミドアミノ酸、及びイミダゾリニウムベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
上記の界面活性剤は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0046】
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、スルファミン酸、ニコチン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシピバリン酸、レブリン酸及びβ−クロロプロピオン酸等のカルボン酸類、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸等の有機スルホン酸類が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
無機酸としては、例えば、硝酸、ホウ酸、フッ化水素等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
アミノ酸類化合物としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、フェニルアラニン、トリプトファン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン、アルギニン及びヒスチジン等のアミノ酸、並びにこれらのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
アゾール類化合物としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−メチルベンゾイミダゾール等のアルキルイミダゾール類;ベンゾイミダゾール、2−メチルベンゾイミダゾール、2−ウンデシルベンゾイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール類;1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−1,2,4−トリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−アミノベンゾトリアゾール、4−アミノベンゾトリアゾール、1−ビスアミノメチルベンゾトリアゾール、1−メチル−ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−クロロベンゾトリアゾール等のトリアゾール類;1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−シクロヘキシル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、5,5'−ビス−1H−テトラゾール等のテトラゾール類;ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−フェニルチアゾール、2−アミノベンゾチアゾール、2−アミノ−6−ニトロベンゾチアゾール、2−アミノ−6−メトキシベンゾチアゾール、2−アミノ−6−クロロベンゾチアゾール等のチアゾール類が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0049】
ピリミジン類化合物としては、例えば、ジアミノピリミジン、トリアミノピリミジン、テトラアミノピリミジン、及びメルカプトピリミジン等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
チオ尿素類化合物としては、例えば、チオ尿素、エチレンチオ尿素、及びチオジグリコール、メルカプタン等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0050】
アミン類化合物としては、例えば、ジアミルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリアミルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、エタノールジイソプロパノールアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、及びこれらの塩酸塩等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
アルキルピロリドン類化合物としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、N−アミル−2−ピロリドン、N−ヘキシル−2−ピロリドン、N−ヘプチル−2−ピロリドン、及びN−オクチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
有機キレート剤化合物としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、テトラエチレンペンタミン七酢酸、ペンタエチレンヘキサミン八酢酸、ニトリロ三酢酸、並びにそれらのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0053】
ポリアクリルアミド類化合物としては、例えば、ポリアクリルアミド及びt−ブチルアクリルアミドスルホン酸等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウム等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0054】
無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、及び塩素酸カリウム等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0055】
第一銅イオンを与える化合物としては、例えば、塩化銅(I)、臭化銅(I)、硫酸銅(I)、及び水酸化銅(I)等が挙げられる。また、第一鉄イオンを与える化合物としては、例えば、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)、硫酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、及び酢酸鉄(II)等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0056】
特に、第一鉄イオンは、エッチング剤組成物のエッチング能力について、酸化還元電位や比重、酸濃度、銅濃度等によるオートコントロールを採用する場合に使用することが好ましい。第一鉄イオンを使用する場合、コーティング剤組成物中のその含有量は、第一鉄イオン換算で0.1〜5質量%である。第一鉄イオンの含有量が0.1質量%よりも少ないと、充分な使用効果を得ることができない。一方、第一鉄イオンの含有量が5質量%よりも多いと、エッチング能力等が低下してしまう場合がある。
【0057】
本発明のエッチング剤組成物は、上記の各成分と水とを混合することにより調製することができる。混合方法は特に限定されず、周知の混合装置を用いて混合すればよい。
このようにして得られる本発明のエッチング剤組成物の比重は、1.10〜1.30であることが好ましい。比重が1.10よりも小さいと、充分なエッチング速度が得られなかったり、エッチングファクターが低下したりすることがある。一方、比重が1.30よりも大きいと、エッチングファクターが低下することがある。
【0058】
本発明のエッチング剤組成物は、銅含有材料において様々な微細パターンの回路配線を形成することができるが、特に、形状不良抑制効果及びエッチング速度の観点から、厚さが1〜10μm、エッチングスペースが1〜10μmのパターニングに適している。また、厚さが10μmを超え25μm以下、エッチングスペースが10μmを超え40μm以下のパターニングにおいても用いることが可能である。
【0059】
本発明のエッチング剤組成物を用いた銅含有材料のエッチングは、周知一般の方法により行うことができる。被エッチング材料である銅含有材料としては、銀銅合金、アルミニウム銅合金等の銅合金及び銅が挙げられ、特に銅が好適である。また、エッチング方法についても特に限定されず、浸漬法やスプレー法等を用いることができ、エッチングの条件についても、使用するエッチング剤組成物やエッチング方法に応じて適宜調整すればよい。加えて、バッチ式、フロー式、エッチャントの酸化還元電位や比重、酸濃度によるオートコントロール式等の周知の様々な方式を用いてもよい。
【0060】
本発明のエッチング剤組成物をスプレー法で用いる場合、処理温度は30〜50℃、処理圧力は0.03〜0.2MPa、処理時間は20〜300秒であることが好ましい。
また、本発明のエッチング剤組成物を用いたエッチング方法では、エッチングを繰り返すことによる液の劣化を回復させるために補給液を加えてもよい。特に、上記のオートコントロール式のエッチング方法では、補給液がエッチング装置に予めセットされ、液が劣化した段階でエッチング剤組成物に添加される。当該補給液は、例えば、(A)成分、(D)成分及び水であり、(A)成分及び(D)の濃度は、エッチング剤組成物の1〜20倍程度である。また、当該補給液には、本発明のエッチング剤組成物の(B)成分、(C)成分又は任意成分を必要に応じて添加してもよい。
【0061】
本発明のエッチング剤組成物は、微細パターンの回路配線の形状不良及びスラッジの発生を防止することにより、断線やショート等がない微細パターンの回路配線を形成し得るので、プリント配線基板の他、微細パターンが要求されるパッケージ用基板、COF、TAB用途のサブトラクティブ法に好適に使用することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
下記の実施例及び比較例で使用した(B)成分を表1に示す。なお、表1中のb−1〜b−6は、上記一般式(1)において、Rがエチレン基であり、nが1であり、X〜Xが上記一般式(2)で表される基であり、Rがプロピレン基であり、Rがエチレン基であり、p、qは、表1で表される数平均分子量及びエチレンオキサイド基含有量を示す値のものである。
【0063】
【表1】

【0064】
また、下記の実施例及び比較例で使用したその他の各成分は以下の通りである。
(A)成分:塩化第二鉄(「a−1」と表す)及び硫酸第二銅(「a−2」と表す)
(C)成分:2−ヒドロキシエタン−1−スルホン酸
(D)成分:塩酸
(E)成分:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
(F)成分:数平均分子量が2,200、エチレンオキサイド基の含有量が40質量%のポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド付加物(上記一般式(3)において、Rがプロピレン基であり、R’がエチレン基であり、a、b及びcは、数平均分子量が2,200であり、且つエチレンオキサイド基の含有量が40質量%となる数を表すものである)
【0065】
(実施例1)
表2に示した組成で(A)〜(E)成分を混合して、エッチング剤組成物No.1〜No.3を得た。なお、これらのエッチング剤組成物における残部は水である。
【0066】
【表2】

【0067】
(比較例1)
(C)成分の代替成分してリン酸、硫酸又はメタンスルホン酸を用い、表3に示した組成で各成分を混合して、比較用エッチング剤組成物1〜3を得た。なお、これらの比較用エッチング剤組成物における残部は水である。
【0068】
【表3】

【0069】
(実施例2)
表4に示した組成で(A)〜(D)及び(F)成分を混合して、エッチング剤組成物No.4〜No.9を得た。なお、これらのエッチング剤組成物における残部は水である。
【0070】
【表4】

【0071】
(比較例2)
(C)成分の代替成分して硫酸又はメタンスルホン酸を用い、表5に示した組成で各成分を混合して、比較用エッチング剤組成物4〜7を得た。なお、これらの比較用エッチング剤組成物における残部は水である。
【0072】
【表5】

【0073】
(スラッジ発生の有無の評価)
実施例1及び2で得たエッチング剤組成物No.1〜No.9及び比較例1及び2で得た比較用エッチング剤組成物No.1〜No.7を、45℃で1週間保管し、スラッジの発生の有無を確認した。その結果、エッチング剤組成物No.1〜No.9及び比較用エッチング剤組成物No.2〜No.7ではスラッジが発生しなかったものの、比較用エッチング剤組成物No.1ではスラッジが発生した。
【0074】
(実施例3)
銅厚8μmのCOFテープ基材(158mm×100mm)にレジスト(PMER−P;東京応化株式会社製)を塗布して乾燥させた後、露光装置(UFX−2458B;ウシオ電機株式会社社製)を用いて露光し、現像及びリンスを行うことにより、ピッチ25μm及びギャップ8.5μmのレジストパターンを形成した。
次に、レジストパターンを形成したCOFテープ基材について、上記のエッチング剤組成物No.1〜No.9を用い、処理温度45℃、処理圧力0.05MPaの条件下で、ジャストエッチングとなる秒数(60〜100秒)の間スプレーすることでウエットエッチングを行なった。そして、レジスト除去剤(アセトン)を用いてレジストパターンを除去し、微細パターンの回路配線を得た。
【0075】
(比較例3)
比較用エッチング剤組成物No.1〜No.7を用いたこと以外は、実施例3と同様にしてウエットエッチングを行い、微細パターンの回路配線を得た。
【0076】
実施例3及び比較例3で得られた回路配線の形状について、下記の評価を行った。
(1)直線性
キーエンス株式会社製レーザー顕微鏡を用いて回路配線の形状を観察し、線幅のブレが1μm未満のものを「5」、1μm以上1.7μm未満のものを「4」、1.7μm以上2.4μm未満のものを「3」、2.4μm以上3μm未満のものを「2」、3μm以上のものを「1」とする5段階評価を行なった。
(2)配線上部幅(トップ幅)
レーザー顕微鏡像により測定した。なお、単位はμmである。
(3)エッチングファクター
以下の式より算出した。
エッチングファクター=銅厚(μm)/{(B−T)/2}
式中、Tはトップ幅(μm)、Bはボトム幅(μm)である。
上記の各評価の結果を表6に示す。
【0077】
【表6】

【0078】
表6の結果に示されているように、エッチング剤組成物No.1〜No.9及び比較用エッチング剤組成物No.1は、比較用エッチング剤組成物No.2〜No.7に比べて、良好な形状の回路配線を与えた。しかしながら、比較用エッチング剤組成物No.1は、上記したようにスラッジが発生するため、回路配線の断線やショート等が起こる可能性がある。これに対して、エッチング剤組成物No.1〜No.9は、良好な形状の回路配線を与える上、スラッジの発生もなかった。
以上の結果からわかるように、本発明によれば、微細パターンの回路配線の形状不良及びスラッジの発生を防止することにより、断線やショート等がない微細パターンの回路配線を形成し得る銅含有材料用エッチング剤組成物及び銅含有材料のエッチング方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第二銅イオン及び第二鉄イオンから選択される少なくとも1つの酸化剤成分0.1〜15質量%、
(B)エチレンオキサイド基及びプロピレンオキサイド基から選択される少なくとも1つの基を(ポリ)アミン類化合物の活性水素に付加した化合物0.001〜5質量%、
(C)ヒドロキシアルカンスルホン酸及びヒドロキシアルカンスルホン酸塩から選択される少なくとも1つのヒドロキシアルカンスルホン酸成分0.1〜10質量%、並びに
(D)塩酸及び硫酸から選択される少なくとも1つの無機酸0.1〜10質量%
を必須成分とする水溶液からなることを特徴とする銅含有材料用エッチング剤組成物。
【請求項2】
前記水溶液は、(E)1個の水酸基を有するグリコールエーテル類化合物0.001〜5質量%をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の銅含有材料用エッチング剤組成物。
【請求項3】
前記(B)成分は、エチレンオキサイド基及びプロピレンオキサイド基がエチレンジアミンの活性水素にブロック付加又はランダム付加した化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅含有材料用エッチング剤組成物。
【請求項4】
前記(B)成分は、200〜10,000の数平均分子量を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅含有材料用エッチング剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅含有材料用エッチング剤組成物を使用することを特徴とする銅含有材料のエッチング方法。

【公開番号】特開2012−140651(P2012−140651A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292233(P2010−292233)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】