説明

錠剤緩衝シュート

【課題】錠剤のコンタミネーションを発生させることなく、重量の軽減及び衝撃吸収性能の向上を実現できる錠剤緩衝シュートを提供する。
【解決手段】四角筒部材11の内部を落下する錠剤を、前記四角筒部材11の内部に配置される緩衝板21、22、23、及び24に接触させることによって、前記錠剤が一度に落下する落下距離を前記四角筒部材11の長さよりも短くする、錠剤緩衝シュート10において、前記四角筒部材11及び前記緩衝板21、22、23、及び24の材料が、ウレタンであり、前記四角筒部材が上前板材31、下前板材32、左板材、上後板材51、中後板材52、下後板材53、及び右板材によって構成されており、前記錠剤緩衝シュート10が、板材21、22、23、24、31、32、、51、52、及び53を溶着させることによって、組み立てられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒部材の内部を落下する錠剤を、前記筒部材の内部に配置される緩衝部材に接触させることによって、前記錠剤が一度に落下する落下距離を前記筒部材の長さよりも短くする、錠剤緩衝シュートに関する。
【背景技術】
【0002】
製剤工程には、例えば、軽量・充填・混合工程、造粒・整粒工程、打錠工程、及びコーティング工程がある。このため、製剤工場には、打錠機など、各工程を担当する処理機が設けられている。前工程の処理機から後工程の処理機への錠剤の搬送は、コンテナによって行われている。また、錠剤は、コンテナと処理機との間で、リフターを介して受け渡されている。
【0003】
図9は、打錠工程に関係する機器を示す図である。図9には、第1コンテナ1、旋回リフター2、打錠機3、投入機4、バケットリフター5、及び第2コンテナ6が示されている。旋回リフター2は、昇降可能且つ旋回可能なフォーク7を有している。旋回リフター2は、フォーク7を用いて床上にある第1コンテナ1を打錠機3の上方に移動させ、第1コンテナ1の排出口1bを打錠機3の投入口3aに接続する。打錠機3は、投入口3aから投入された錠剤に打錠処理を施し、処理後の錠剤を排出口3bから排出する。打錠機3の排出口3bの下方には、投入機4の投入口4aがある。投入機4の排出口4bの下方には、バケットリフター5の投入口5aがある。バケットリフター5は、昇降可能なバケット8と、排出口としての排出シュート5bとを有している。バケットリフター5は、投入口5a内に投入された錠剤を収納したバケット8を上方に移動させ、バケット8から排出シュート5bに錠剤を投入する。作業者は、排出シュート5bの下方に、第2コンテナ6の投入口6aを配置する。また、作業者は、第2コンテナ6内に、緩衝シュート10を配置する。排出シュート5bから排出される錠剤は、緩衝シュート10を介して、第2コンテナ6内に投入される。
【0004】
打錠機3以外の他の処理機においても、処理前の錠剤は上方から投入され、処理後の錠剤は下方から排出される。また、コンテナは上方に開口しているが、コンテナの開口は、処理機における錠剤の排出口よりも高い位置にある。このため、錠剤は、コンテナと処理機との間で、リフター(旋回リフター又はバケットリフター)を介して受け渡されている。
【0005】
コンテナは、多量の錠剤を一度に搬送できるように、比較的大型に形成されている。つまり、コンテナの底面から開口までの距離が比較的長い。このため、コンテナの開口の上方から錠剤をそのままコンテナ内に投入すると、落下の衝撃によって錠剤が破損する可能性がある。そこで、従来、錠剤が落下による衝撃を受けないようにするため、錠剤緩衝シュートが用いられている。
【0006】
特許文献1には、錠剤移し替え装置が開示されているが、この錠剤移し替え装置に含まれる投入部4(同文献中の符号)が、錠剤緩衝シュートの一例である。投入部4は、円筒体41と複数の漏斗状部材42とで構成されており、漏斗状部材42の下開口は上下方向で重ならないように設けられている。このため、投入部4の上方から投入された錠剤が、全ての漏斗状部材42をすり抜けて落下することがなく、必ず各漏斗状部材42の上面を滑りながら落下する。つまり、錠剤が一度に落下する落下距離が、投入部4の長さよりも短くなっている。一度に落下する距離が短くなると落下による衝撃の大きさが小さくなるので、落下による錠剤の破損が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−155877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の緩衝シュートは、アクリル、ポリアセタールなどの合成樹脂材料によって製造されている。アクリル及びポリアセタールは硬い素材である。このため、漏斗状部材42によって落下距離が短縮されていても、コンテナの底面だけでなく漏斗状部材42との衝突によって、錠剤が破損する可能性がある。また、素材がアクリル及びポリアセタールである場合、緩衝シュートが重量物になる。この結果、緩衝シュートを使用する作業者の負担を増大させている。更に、コンテナ内への錠剤の収納が完了すると、作業者は、コンテナから緩衝シュートを引き抜く必要がある。引き抜く際には、コンテナの重量に錠剤の重量も加わるので、より一層作業者の負担を増大させてしまう。
【0009】
本願の発明者らは、緩衝シュートにおける重量の軽減及び衝撃吸収性能の向上を実現するために、緩衝シュートの材料について、アクリル及びポリアセタール以外の他の材料を検討した。例えば、緩衝シュートの材料をナイロンターポリンにした場合、重量の軽減及び衝撃吸収性能の向上が実現される。緩衝シュートは複数の部品からなっているので、緩衝シュートを製造するためにそれらの部品を組み立てる必要がある。しかし、材料がナイロンターポリンである場合、部品同士を溶着させることができないので、部品同士を縫い付けることによって、組立を行う必要がある。ナイロンターポリンによって製造された緩衝シュートの場合、縫い目の繊維や、ナイロンターポリンの切断面に露出する繊維が、緩衝シュート内を落下する錠剤に混じってしまう。つまり、ナイロンターポリンによって製造された緩衝シュートの場合、錠剤のコンタミネーション(汚染)という新たな問題が発生してしまう。
【0010】
本発明の目的は、錠剤のコンタミネーションを発生させることなく、重量の軽減及び衝撃吸収性能の向上を実現できる、錠剤緩衝シュートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る錠剤緩衝シュートは、筒部材の内部を落下する錠剤を、前記筒部材の内部に配置される緩衝部材に接触させることによって、前記錠剤が一度に落下する落下距離を前記筒部材の長さよりも短くする、錠剤緩衝シュートにおいて、前記筒部材及び前記緩衝部材の材料が、ウレタン又はシリコンゴムであり、前記筒部材及び前記緩衝部材が、それぞれ1又は複数の板材によって構成されており、前記錠剤緩衝シュートが、前記筒部材及び前記緩衝部材を構成する複数の前記板材を溶着させることによって、組み立てられている。
【0012】
前記2つの板材の溶着は、重ねられた2つの前記板材の一部を加圧及び加熱することによって行われており、且つ、前記溶着によって接合された接合部に、落下中の前記錠剤が接触しないように、前記接合部が前記筒部材の外側又は前記緩衝部材の下側に配置されている。
【0013】
前記筒部材が、四角筒形状を有しており、前記緩衝部材が、板形状を有し、且つ1つの前記板材から構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、錠剤のコンタミネーションを発生させることなく、重量の軽減及び衝撃吸収性能の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】錠剤緩衝シュートを示す斜視図である。
【図2】錠剤緩衝シュートの縦断面図(前後方向で切断された断面図)である。
【図3】錠剤緩衝シュートの前面図(図3A)、及び上前板材及び下前板材の前面図(図3B)である。
【図4】錠剤緩衝シュートの左側面図(図4A)、及び左板材の左側面図(図4B)である。
【図5】錠剤緩衝シュートの後面図(図5A)、及び上後板材、中後板材、及び下後板材の後面図(図5B)である。
【図6】第1排出口と第2緩衝板との間における錠剤緩衝シュートの軸断面図(図2のX1−X1断面図)である。
【図7】第1緩衝板の周辺の縦断面図(前後方向で切断された断面図)である。
【図8】第1緩衝板の周辺の横断面図(左右方向で切断された断面図)である。
【図9】打錠工程に関係する機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本実施形態の構成)
図1は、錠剤緩衝シュート10を示す斜視図である。図1は、使用時における錠剤緩衝シュート10の姿勢を示している。図1の上側は、実際の上側であり、図1の下側は、実際の下側である。以下、錠剤緩衝シュート10に係る方向は、使用時における錠剤緩衝シュート10の姿勢を基準として、定義されている。
【0017】
図1において、錠剤緩衝シュート10の形状は、概ね四角筒状である。錠剤緩衝シュート10は、四角筒部材11と、四角筒部材11の内部に配置される4つの緩衝板と、からなっている。
【0018】
図2は、錠剤緩衝シュート10の縦断面図である。4つの緩衝板は、第1緩衝板21、第2緩衝板22、第3緩衝板23、及び第4緩衝板24である。また、四角筒部材11は、主として、7つの板材からなっている。7つの板材は、上前板材31、下前板材32、左板材40、上後板材51、中後板材52、下後板材53、及び右板材60である。なお、左板材40及び右板材60は、図1に図示されている。四角筒部材11は、前記7つの板材の他に、補強用の板材を備えている。補強用の板材に関する説明は省略する。
【0019】
錠剤緩衝シュート10は、上側の投入口A0及び下側の排出口A4を有している。第1緩衝板21、第2緩衝板22、第3緩衝板23、及び第4緩衝板24は、投入口A0と排出口A4との間に、上から下に向かって配置されている。
【0020】
図2において、錠剤緩衝シュート10は、第1緩衝板21、第2緩衝板22、及び第3緩衝板23の下方に、それぞれ、3つの補助排出口を有している。錠剤緩衝シュート10は、第1緩衝板21の下側に、第1排出口A1及び2つの第1側排出口AS1を有している。錠剤緩衝シュート10は、第2緩衝板22の下側に、第2排出口A2及び2つの第2側排出口AS2を有している。錠剤緩衝シュート10は、第3緩衝板23の下側に、第3排出口A3及び2つの第3側排出口AS3を有している。側排出口AS1、AS2、及びAS3は、左板材40だけでなく右板材60にも形成されている。
【0021】
図3は、錠剤緩衝シュート10の前面図(図3A)、及び上前板材31及び下前板材32の前面図(図3B)である。上前板材31及び下前板材32は、四角形状の板材である。上前板材31及び下前板材32は、第2排出口A2を形成する間隔を空けて配置されている。
【0022】
図2に示されるように、上前板材31は、上側の前面上端傾斜部31aと、下側の前面上部31bとからなっている。前面上端傾斜部31aは、前面上部31bに対して外側に折り曲げられている。下前板材32は、上側の前面下部32aと、下側の第4緩衝板24とからなっている。第4緩衝板24は、前面下部32aに対して内側に折り曲げられている。
【0023】
図4は、錠剤緩衝シュート10の左側面図(図4A)、及び左板材40の左側面図(図4B)である。左板材40は、錠剤緩衝シュート10の全長を形成する長手の板材である。左板材40は、開口部として、上から下に向けて、第1側排出口AS1、第2側排出口AS2、及び第3側排出口AS3を有している。図示しないが、右板材60も、左板材40と同様の形状を有している。
【0024】
図5は、錠剤緩衝シュート10の後面図(図5A)、及び上後板材51、中後板材52、及び下後板材53の後面図(図5B)である。上後板材51、中後板材52、及び下後板材53は、四角形状の板材である。上後板材51及び中後板材52は、第1排出口A1を形成する間隔を空けて配置されている。中後板材52及び下後板材53は、第3排出口A3を形成する間隔を空けて配置されている。
【0025】
図2に示されるように、上後板材51は、前側の前面上端部51a、上側の上面部51b、及び後側の後面上部51cからなっている。前面部51aは上面部51bに対して折り曲げられており、上面部51bは後面部51cに対して折り曲げられている。また、下後板材53は、上側の後面下部53aと、下部の後面下端部53bとからなっている。後面下端部53bは、後面下部53aに対して折り曲げられている。
【0026】
図1及び図2に示されるように、投入口A0は、上前板材31の前面上端傾斜部31a、左板材40、上後板材51の前面上端部51a、及び右板材60によって形成されている。排出口A4は、下前板材32の前面下部32a、左板材40、下後板材53の後面下端部53b、及び右板材60によって形成されている。第1排出口A1は、上後板材51の後面上部51c、左板材40、中後板材52、及び右板材60によって形成されている。第2排出口A2は、上前板材31の前面上部31b、左板材40、下前板材32の前面下部32a、及び右板材60によって形成されている。第3排出口A3は、中後板材52、左板材40、下後板材53の後面下部53a、及び右板材60によって形成されている。
【0027】
図2において、第1緩衝板21、第2緩衝板22、第3緩衝板23、及び第4緩衝板24は、前後方向において、互い違いに配置されている。第1緩衝板21の上端部は、後側の後面部31cに取り付けられている。第2緩衝板22の上端部は、前側の前面上部31bに取り付けられている。第3緩衝板23の上端部は、後側の後面下部53aに取り付けられている。また、第1緩衝板21、第2緩衝板22、及び第3緩衝板23の2つの側端部は、それぞれ、左板材40及び右板材60に取り付けられている。
【0028】
次に、錠剤緩衝シュート10を構成する板材及び、板材同士を固定するための接合法を説明する。
【0029】
錠剤緩衝シュート10を構成する板材の素材は、本実施形態では、ウレタンである。このため、板材同士を固定するための接合法として、溶着が採用されている。
【0030】
錠剤緩衝シュート10を構成する板材は、再掲載すると、主として、第1緩衝板21、第2緩衝板22、第3緩衝板23、第4緩衝板24、上前板材31、下前板材32、左板材40、上後板材51、中後板材52、下後板材53、及び右板材60である。錠剤緩衝シュート10を構成する板材は、その他に、錠剤緩衝シュート10の形状を補強するための板材を含むことができる。
【0031】
図6、図7、及び図8を参照して、溶着による板材同士の接合を説明する。
【0032】
図6は、第1排出口A1と第2緩衝板22との間における錠剤緩衝シュート10の軸断面図(図2のX1−X1断面図)である。錠剤緩衝シュート10の四角筒部材11は、大まかには、左板材40及び右板材60に、上前板材31、下前板材32、上後板材51、中後板材52、及び下後板材53を取り付けることによって、構成されている。図6において、上前板材31の2つの側端部は、左板材40及び右板材60の前端部に溶着されており、中後板材52の2つの側端部は、左板材40及び右板材60の後端部に溶着されている。
【0033】
図6において、上前板材31及び左板材40の溶着は、上前板材31及び左板材40を重ね合わせた後、上前板材31の側端部と左板材40の前端部とを加圧且つ加熱することによって行われている。溶着後、上前板材31の側端部及び左板材40の前端部は、溶着によって接合された接合部P31−40になる。接合部P31−40は、開かれた上前板材31及び左板材40から突出している。接合部P31−40が、錠剤緩衝シュート10の内側ではなく外側に配置されるように、錠剤緩衝シュート10は組み立てられている。図6において、他の3つの接合部P31−60、P52−40、及びP52−60も、錠剤緩衝シュート10の外側に配置されるように、錠剤緩衝シュート10は組み立てられている。
【0034】
下前板材32、上後板材51、及び下後板材53も、上前板材31と同様の接合法が採用されている。つまり、下前板材32、上後板材51、及び下後板材53の溶着によって発生する接合部が、錠剤緩衝シュート10の外側に配置されるように、錠剤緩衝シュート10は組み立てられている。
【0035】
図7は、第1緩衝板21の周辺の縦断面図(前後方向で切断された断面図)である。図7において、第1緩衝板21の上端部は、上後板材51の後面上部51cに溶着されている。第1緩衝板21及び上後板材51の溶着は、第1緩衝板21の上端部及び上後板材51を重ね合わせた後、第1緩衝板21の上端部と上後板材51の一部とを加圧且つ加熱することによって行われている。ここで、上後板材51の一部は、第1緩衝板21及び上後板材51が重ねられたときに、第1緩衝板21の上端部に重なる部位を指している。溶着後、第1緩衝板21の上端部と左板材40の一部は、溶着によって接合された接合部P21−51になる。接合部P21−51が、第1緩衝板21の上側ではなく下側に配置されるように、錠剤緩衝シュート10は組み立てられている。
【0036】
図8は、第1緩衝板21の周辺の横断面図(左右方向で切断された断面図)である。図8において、第1緩衝板21の2つの側端部は、左板材40及び右板材60に溶着されている。第1緩衝板21及び左板材40の溶着は、第1緩衝板21の側端部及び左板材40を重ね合わせた後、第1緩衝板21の側端部と左板材40の一部とを加圧且つ加熱することによって行われている。ここで、左板材40の一部は、第1緩衝板21及び左板材40が重ねられたときに、第1緩衝板21の上端部に重なる部位を指している。溶着後、第1緩衝板21の上端部と左板材40の一部は、溶着によって接合された接合部P21−40になる。接合部P21−40が、第1緩衝板21の上側ではなく下側に配置されるように、錠剤緩衝シュート10は組み立てられている。同様に、第1緩衝板21の側端部と右板材60との溶着によって発生する接合部P21−60も、第1緩衝板21の上側ではなく下側に配置されるように、錠剤緩衝シュート10は組み立てられている。
【0037】
第2緩衝板22及び第3緩衝板23も、第1緩衝板21と同様の接合法が採用されている。つまり、第2緩衝板22及び第3緩衝板23の溶着によって発生する接合部が、第2緩衝板22及び第3緩衝板23の下側に配置されるように、錠剤緩衝シュート10は組み立てられている。
【0038】
(本実施形態の作動)
次に、錠剤緩衝シュート10の作動を説明する。図9に示されるように、錠剤緩衝シュート10は、例えば、錠剤緩衝シュート10が第2コンテナ6内に挿入された状態で、使用される。作業者は、錠剤緩衝シュート10の姿勢を前述の状態に保持しながら、バケットリフター5の排出シュート5bから投入口A0に向けて錠剤を落下させる。
【0039】
図2において、投入口A0から投入された錠剤の大半は、第1緩衝板21に直接当たるか、上後板材51等の四角筒部材11の内壁に当たった後、第1緩衝板21上を滑って落下する。投入口A0から投入された錠剤の一部は、第1緩衝板21と上前板材31との間を落下して第2緩衝板22に接触する。いずれにしても、投入口A0から投入された錠剤は、第1緩衝板21又は第2緩衝板22に必ず接触し、直接排出口A4まで落下することはない。このため、錠剤が一度に落下する落下距離が、四角筒部材11の長さよりも短くなっており、錠剤が一度に受ける衝撃が軽減されている。また、錠剤緩衝シュート10を構成する板材の素材は、前述したようにウレタンである。このため、錠剤が、第1緩衝板21又はその他の板材との接触によって受ける衝撃自体が緩和されている。
【0040】
第1緩衝板21の下方において、錠剤は、互い違いに配置された緩衝板21、22、23、及び24によって順に案内されながら、排出口A4へと落下する。第1緩衝板21の下方において、錠剤の落下方向は、緩衝板の傾斜方向に誘導されている。このため、錠剤は、第1緩衝板21又は第2緩衝板22を滑った後、必ず、緩衝板22、23、及び24を順に滑りながら落下する。したがって、落下距離が短縮される効果は、第1緩衝板21の下方でも、実現されている。また、錠剤の落下方向は、各緩衝板の傾斜方向に誘導されているので、各緩衝板の直下方に形成されている3つの排出口に錠剤が向かうこともない。
【0041】
錠剤が第2コンテナ6内に収納される収納量が増大すると、第2コンテナ6内の錠剤群によって排出口A4が閉鎖される。この場合、錠剤緩衝シュート10の内部に錠剤が溜まってくる。錠剤緩衝シュート10の錠剤群が、第3排出口A3にまで到達すると、以後、第3排出口A3から錠剤が排出される。以後、第2コンテナ6内に収納される錠剤の収納量が増大するにつれて、第3排出口A3、第2排出口A2、及び第1排出口A1の順に、錠剤の排出口が切り換えられていく。
【0042】
第2コンテナ6内に所定量の錠剤が収納されると、作業者は錠剤緩衝シュート10を第2コンテナ6から上方に引き抜く。
【0043】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る錠剤緩衝シュート10は、前述の構成を採用したことにより、次の効果を有している。
【0044】
本実施形態では、錠剤緩衝シュート10を構成する板材はウレタンであり、これらの板材を溶着させることによって錠剤緩衝シュート10が組み立てられている。ウレタンは、アクリル等の合成樹脂材料と比べて軽量であり、衝撃吸収性能も有している。また、溶着による接合は、繊維片を発生させる縫い付け糸又はナイロンターポリンの切断面のような塵芥源を有しない。このため、本実施形態は、異物による錠剤のコンタミネーションを発生させることなく、重量の軽減及び衝撃吸収性能の向上を実現できる。
【0045】
本実施形態では、溶着によって接合された接合部に、落下中の錠剤が接触しないように、接合部が四角筒部材11の外側又は緩衝板21、22、及び23の下側に配置されている。接合部は板材の端部を含んでいるが、板材の端部は角張っている。端部を丸める場合は、加工の工数が増大する。錠剤が板材の端部に接触する場合は、錠剤が板材の平面部分に接触する場合と比べて、接触によって錠剤が傷む可能性が高い。本実施形態では、接合部は、落下中の錠剤の落下経路から外れた位置に配置されている。このため、本実施形態は、錠剤に損傷が加わる可能性を、より一層軽減できる。
【0046】
本実施形態では、四角筒部材11は四角筒形状を有しており、緩衝板21、22、23、及び24は、それぞれ、1つの板材から構成されている。第4緩衝板24は、下前板材32の一部であり、1つの板材である。四角筒は、円筒と比べて錠剤緩衝シュート10の筒部材を安定的に形成でき、他の角筒と比べて組立の容易な錠剤緩衝シュート10の筒部材を提供できる。また、1つの板材によって構成される緩衝板は、複数の板材によって構成される緩衝板よりも、容易に組立が可能な緩衝部材を提供できる。このため、本実施形態は、錠剤緩衝シュート10の形状の安定性及び組立の容易性を提供できる。
【0047】
(変形例)
本実施形態は、次の変形構成を採用できる。
【0048】
錠剤緩衝シュート10を構成する板材の材料は、軽量であり、衝撃吸収性能を有し、且つ、溶着可能であればよい。したがって、錠剤緩衝シュート10を構成する板材の材料は、ウレタンに代えて、シリコンゴムを採用できる。
【0049】
錠剤緩衝シュート10の筒部材は、四角筒形状を有する四角筒部材に代えて、円筒部材又は四角以外の多角形筒部材を採用できる。
【0050】
錠剤緩衝シュート10の緩衝部材は、本実施形態の緩衝板21、22、23、及び24のように、1つの板材によって構成される場合に限定されるわけではなく、複数の板材で構成されてもよい。また、緩衝部材の形状は、本実施形態のように、単なる平面の板形状で形成される場合に限定されない。緩衝部材の形状は、例えば、円錐台のような漏斗状であってもよい。
【0051】
本実施形態では、四角筒部材11は、主として7つの板材によって構成されている。しかし、筒部材を構成する板材の数は、限定されない。例えば、1つの板材に複数の折り目を形成し、その板材を折り曲げ、その板材の両端を溶着することによって、多角形の筒部材を形成できる。あるいは、1つの板材を曲げ、その板材の両端を溶着することによって、円柱を形成することが可能である。
【0052】
本実施形態では、錠剤緩衝シュート10は、4つの緩衝板(緩衝部材)と、各緩衝板に対応する3つの排出口とを備えている。錠剤緩衝シュート10が備える緩衝部材の数、及び錠剤緩衝シュート10が備える排出口の数は、限定されない。
【符号の説明】
【0053】
10 錠剤緩衝シュート
11 四角筒部材
21 第1緩衝板(緩衝部材)
22 第2緩衝板(緩衝部材)
23 第3緩衝板(緩衝部材)
24 第4緩衝板(緩衝部材)
31 上前板材
32 下前板材
40 左板材
51 上後板材
52 中後板材
53 下後板材
60 右板材
P31−40、P31−60、P52−40、P52−60、P21−51、P21−40、及びP21−60 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部材の内部を落下する錠剤を、前記筒部材の内部に配置される緩衝部材に接触させることによって、前記錠剤が一度に落下する落下距離を前記筒部材の長さよりも短くする、錠剤緩衝シュートにおいて、
前記筒部材及び前記緩衝部材の材料が、ウレタン又はシリコンゴムであり、
前記筒部材及び前記緩衝部材が、それぞれ1又は複数の板材によって構成されており、
前記錠剤緩衝シュートが、前記筒部材及び前記緩衝部材を構成する複数の前記板材を溶着させることによって、組み立てられている、
ことを特徴とする錠剤緩衝シュート。
【請求項2】
前記2つの板材の溶着は、重ねられた2つの前記板材の一部を加圧及び加熱することによって行われており、且つ、
前記溶着によって接合された接合部に、落下中の前記錠剤が接触しないように、前記接合部が前記筒部材の外側又は前記緩衝部材の下側に配置されている、
請求項1に記載の錠剤緩衝シュート。
【請求項3】
前記筒部材が、四角筒形状を有しており、
前記緩衝部材が、板形状を有し、且つ1つの前記板材から構成されている、
請求項2に記載の錠剤緩衝シュート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−6704(P2012−6704A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143615(P2010−143615)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000004732)株式会社日本アルミ (64)
【Fターム(参考)】