説明

閃光放電ランプ点灯装置、光照射器、及びそれを用いた光硬化材料の硬化方法

【課題】半導体ウェハー等の光照射工程においてウェハー上のひずみの発生を抑制し、それにより半導体チップ製造における歩留まりを向上する。
【解決手段】本発明は基板に付された光硬化材料を硬化させるために閃光放電ランプを点灯させる閃光放電ランプ点灯装置を提供する。閃光放電ランプ点灯装置は、入力電圧を昇圧する昇圧回路及び昇圧回路の出力を充電する蓄電回路からなる昇圧充電回路、閃光放電ランプを絶縁破壊させて蓄電回路からのエネルギーを閃光放電ランプに投入させるための始動回路、並びに閃光放電ランプに複数回にわたる一連の点灯を行わせるために昇圧充電回路及び始動回路を制御する制御部を備え、制御部は、一連の点灯において、相対的に低いエネルギーを蓄電回路に充電して点灯させる弱照射モードの後に相対的に高いエネルギーを蓄電回路に充電して点灯させる本照射モードを適用するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は閃光放電ランプ点灯装置、光照射器、及びそれを用いた光硬化材料の硬化方法に関し、例えば、半導体製造工程における半導体ウェハー基板の光照射工程に用いられる閃光放電ランプ点灯装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程において、ダイシングと呼ばれる半導体ウェハー基板を個々の半導体チップに分離する工程では、分離前に半導体ウェハー基板に貼付する紫外線硬化性テープ(以下、「テープ」という)又は半導体ウェハー基板に塗布する紫外線硬化性の塗料(以下、「塗料」という)を硬化させるための紫外線照射用の光源として紫外線ランプが用いられてきた。
【0003】
しかしながら、UVランプからの放射熱による半導体ウェハー基板の変形や、照射時間などを考慮して、近年では紫外線ランプに代わり、閃光放電光を照射させることのできるキセノンランプに代表される閃光放電ランプが採用されるようになってきた。これは、紫外線ランプと比較して、閃光放電ランプは点灯時に放射する熱が少ないこと、及び短時間に高照度の放射光を照射できることから、テープ又は塗料を効率よく硬化させることができるためである。
【0004】
特許文献1はこの閃光放電ランプを点灯させるための点灯装置を開示する。点灯装置は蓄電コンデンサを高電圧で充電し、この充電された高電圧を閃光放電ランプに印加した状態で、放電ランプの外部に近接させたトリガワイヤに数10kVの高電圧パルスを印加することにより、ランプを絶縁破壊させて蓄電コンデンサの電荷をランプ電流として一気に放電させる。閃光放電ランプは通常、円形の半導体ウェハーに対応するような環状ランプであり、半導体ウェハーは閃光放電ランプによってほぼ一様に照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4140279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年は半導体製造の高効率化を目的として半導体ウェハーの大型化(大口径化)が望まれており、従来主流であったφ300mmのウェハーに代わりφ450mmのウェハーが採用されるようになってきた。半導体ウェハーの面積が大きくなるので、その分エネルギーの大きな光を放電照射すればよい。しかし、φ300mmのウェハーではほとんど問題とならなかった光照射に起因するウェハーのひずみが、φ450mmのウェハーにおいては無視できないレベルとなって現れることが分かってきた。
【0007】
上記の光照射工程においてテープ又は塗料を硬化させる際、テープ又は塗料は硬化する過程で微少ながら収縮をする。この収縮の影響として、半導体ウェハーにおけるチップにひずみが生じる。これは円形の半導体ウェハーの中心部付近のチップではほとんど問題とならないが、中心部から外側方向へ向かうほど収縮の影響が大きくなりチップのひずみが問題となる。従って、このひずみはφ300mmのウェハーの場合ではほとんど問題とならないが、φ450mmのウェハーでは、特に外周部に存在するチップでその影響が大きくなる。ひずみの量が大きいと半導体チップは不良となってしまい、これにより半導体チップ製造における歩留まりが低下してしまうという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、照射対象物となる基板に付されたテープ又は塗料を硬化させる際に、テープ又は塗料の収縮による基板上のひずみ発生を抑制することを目的とする。特に、半導体ウェハーの光照射工程においてウェハー上のひずみの発生を抑制し、それにより半導体チップ製造における歩留まりを向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面は、基板に付された光硬化材料を硬化させるために閃光放電ランプを点灯させる閃光放電ランプ点灯装置である。その閃光放電ランプ点灯装置は、入力電圧を昇圧する昇圧回路及び昇圧回路の出力を充電する蓄電回路からなる昇圧充電回路、閃光放電ランプを絶縁破壊させて蓄電回路からのエネルギーを閃光放電ランプに投入させるための始動回路、並びに閃光放電ランプに複数回にわたる一連の点灯を行わせるために昇圧充電回路及び始動回路を制御する制御部を備え、制御部が、一連の点灯において、相対的に低いエネルギーを蓄電回路に充電して点灯させる弱照射モードの後に相対的に高いエネルギーを蓄電回路に充電して点灯させる本照射モードを適用するように構成される。
【0010】
本発明の第2の側面は、上記第1の側面の閃光放電ランプ点灯装置及び閃光放電ランプを備えた光照射器である。
【0011】
本発明の第3の側面は基板に付された光硬化材料を硬化させる方法であり、入力電圧を昇圧する昇圧回路及び昇圧回路の出力を充電する蓄電回路からなる昇圧充電回路、閃光放電ランプを絶縁破壊させて蓄電回路からのエネルギーを閃光放電ランプに投入するための始動回路、及び閃光放電ランプに複数回にわたる一連の点灯を行わせるために昇圧充電回路及び始動回路を制御する制御部を有する閃光放電ランプ点灯装置を用いる。本方法は、一連の点灯において、相対的に低いエネルギーを蓄電回路に充電して点灯させる弱照射段階、及び弱照射段階の後に相対的に高いエネルギーを蓄電回路に充電して点灯させる本照射段階を備える。
【0012】
上記第1及び第3の側面において、弱照射モード(弱照射段階)における昇圧回路による昇圧値が本照射モード(本照射段階)における昇圧値よりも低くなるようにすればよい。また、蓄電回路を複数の蓄電素子及び複数の蓄電素子の接続状態を切り替えるためのスイッチで構成し、弱照射モードにおける蓄電素子の合成容量が本照射モードにおける合成容量よりも小さくなるようにしてもよい。またさらに、弱照射モードと本照射モードの間に、弱照射モードで充電されるエネルギーよりも高く本照射モードで充電されるエネルギーよりも低いエネルギーを蓄電回路に充電して点灯させる中間照射モード(中間照射段階)を適用するようしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1及び第2の実施例で用いる閃光放電ランプ点灯装置を示す図である。
【図2】閃光放電ランプを示す図である。
【図3】本発明の光照射器を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施例による閃光放電ランプ点灯装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の第1及び第2の実施例で用いる閃光放電ランプ点灯装置(以下、「点灯装置」という)の図である。点灯装置は、交流電源10を整流平滑化する整流部(11、12)、整流部の出力を昇圧する昇圧回路(13−18、25)及び昇圧回路の出力を充電する蓄電回路(19−22)からなる昇圧充電回路、閃光放電ランプ24を絶縁破壊させて蓄電回路からのエネルギーを閃光放電ランプ24に投入するための始動回路(26、27)、並びに閃光放電ランプ24に複数回にわたる一連の点灯を行わせるために昇圧充電回路及び始動回路を制御する制御部30を備える。なお、各回路素子が上記のどの回路に属するかは便宜的なものであり、本発明を拘束するものではない。
【0015】
図1において、入力電源は単相電源を図示しているが三相電源であってもよい。また、整流部は整流回路11及び平滑コンデンサ12で図示しているが、昇圧チョッパ回路等で構成してもよい。なお、入力電源として直流電源が接続される場合には整流部はなくてもよい。整流部が昇圧チョッパ回路で構成される場合は、昇圧回路の昇圧機能を昇圧チョッパ回路側に持たせてもよい。
【0016】
昇圧回路は、整流部の出力を交流変換するフルブリッジ回路(13−16)を備える昇圧インバータ回路からなる。フルブリッジ回路において、昇圧制御回路25は制御部30からの充電開始指令を受けると、トランジスタ13及び16とトランジスタ14及び15を50kHz程度の高周波で交互にオン/オフさせる。このスイッチング動作によって整流部からの直流入力が交流変換される。フルブリッジ回路の交流出力はインダクタ17によって電流制限されて昇圧トランス18の1次巻線に入力され、昇圧トランス18の巻数比に従って昇圧された電圧が2次巻線に発生する。昇圧トランス18の2次巻線に発生した電圧がダイオードブリッジ19−21によって整流され、これが蓄電コンデンサ(蓄電素子)22に充電される。充電動作時の充電電圧は、インダクタ17及び昇圧トランス18の1次巻線側のインダクタンスと、フルブリッジ回路のスイッチングパルス幅又はスイッチング周波数、及び蓄電コンデンサの容量によって決まる充電速度で上昇していく。そして、不図示の充電検出手段(例えば、蓄電コンデンサ22の電圧検出回路)によって充電電圧値が所定の電圧値まで上昇したと検出されると、昇圧制御回路25は充電インバータ回路の動作を停止し、充電完了信号を制御部30に返す。所定の電圧値は、例えば、2000〜3000Vdc程度である。
【0017】
制御部30は充電完了信号を受けた後、所定のタイミングで点灯指令を昇圧制御回路25に出力する。昇圧制御回路25は点灯指令を受けてイグナイタ回路26に始動信号を出力する。イグナイタ回路26は始動信号を受けると、外部トリガ27に10k〜20kVの高圧パルス電圧を発生させる。
【0018】
外部トリガ27からの高圧パルスによって閃光放電ランプ24が絶縁破壊されると、蓄電コンデンサ22に充電されていたエネルギーが放電電流ピーク制御インダクタ23によって限流されつつ閃光放電ランプ24に投入される。これにより、閃光放電ランプ24の一回の閃光点灯が行われる。この充電から点灯までの動作が、設定されたタイミングで繰り返されて複数回にわたる一連の点灯が行われる。
【0019】
本発明では、制御部30は、複数回にわたる一連の点灯において、相対的に低いエネルギーを蓄電回路に充電して点灯させる弱照射モードの後に相対的に高いエネルギーを蓄電回路に充電して点灯させる本照射モードを適用するように構成される。
【0020】
閃光放電ランプ24の点灯が不図示の点灯検出手段によって検出されると、昇圧制御回路25は点灯確認信号を制御部30に返す。閃光放電ランプ24が不点の場合には、昇圧制御回路25は不点信号を制御部30に返す。但し、点灯確認信号及び不点信号の送信は本発明においては必須の動作ではない。
【0021】
制御部30はマイコン、パソコン等のコンピュータからなり、CPU31、メモリ32、及び場合によっては入出力インターフェイス33を備える。制御部30は、上述したように所定のタイミングで閃光放電ランプ24を点灯させるように構成される。従って、この所定のタイミングは、メモリ32にプログラムしておいてもよいし、挿抜可能な記憶媒体から読み込まれるようにしてもよいし、通信機器から伝送媒体を介して読み込まれるようにしてもよい。また、制御部30がパソコンからなる場合には、製造工程に応じてユーザが入出力インターフェイス33を介して所望のタイミングを入力できるようにしてもよい。また、図1では制御部30と昇圧制御回路25とを有線で接続しているが、無線通信で接続してもよい。
【0022】
図2は図1の閃光放電ランプ24及び外部トリガ27の具体的構成を示す。閃光放電ランプ(以下、「ランプ」という)は、石英発光管101、石英発光管101の一端内部に配置された陽極102、石英発光管101の他端内部に配置された陰極103、石英発光管101の両端部を封止するシール部104、石英発光管に近接配置されたトリガワイヤ105(外部トリガ)、並びに陽極102及び陰極103にそれぞれ接続された電極芯棒106からなる。陽極102はタングステン製であり、陰極103はタングステン製電極の先端に焼結電極を溶接したものである。なお、焼結電極とはタングステンに酸化バリウムBaOや酸化アルミニウムAL203をドープし、焼き固めたものである。
【0023】
図3は本発明の光照射器を示すものであり、上段が上面図、下段が側面図である。光照射器は、ランプを内包する照射器301、ランプ324(図1の閃光放電ランプ24に対応するものとする)、反射板302、及びダクト303を備える。照射対象となる半導体ウェハー等の基板304がランプ324及び反射鏡302に対して対向配置される。また、上述のイグナイタ回路26からの高圧パルスが減衰しないように、ランプ324に付されるトリガワイヤとイグナイタ回路26との間の配線は短い方が好ましい。従って、照射器301にイグナイタ回路26が設けられるものとする。反射板302はランプからの放電光を被照射物に対して効率よく反射させるためのものであり、ダクト303はランプを冷却(空冷)するための吸気用又は排気用のダクトである。
【0024】
本発明では、一連の複数回の点灯動作は、予備的な弱い照射を行う弱照射段階とその後の本格的な硬化をもたらす本照射段階からなる。弱照射段階では、後の本照射段階でひずみが発生し難いように低い照射エネルギーでウェハーをある程度照射しておき、その後の最終的な本照射段階で、光硬化材料の硬化に必要なエネルギーを投入する。この最初の弱い照射によってテープ又は塗料の硬化工程におけるウェハーのひずみ発生を抑制することができ、特に、大口径化したφ450mmの半導体ウェハーの外周付近においても、ひずみが問題とならないレベルとすることができる。
【0025】
以降に示す各実施例では、次のことを前提としている。
光照射器において、φ450mmウェハーが使用され、ウェハーのチップ上にはテープ又は塗料(以下、「光硬化材料」という)が付される。
φ450mmウェハーに貼付したテープを完全に硬化させるためには、ランプ324の点灯における積算エネルギー値(蓄電コンデンサからの放電エネルギーの積算値又は累積値)を15000J以上とする必要がある。
また、通常の半導体製造工程のタクトタイムとして、ランプ点灯に費やせる時間は10秒程度であり(その後20秒程度でウェハーの搬送及び待機が行われる)、この10秒程度の間に30発程度の閃光点灯が行われる。なお、ランプ点灯サイクルPPS(Pulse Per Second)は電源の充電能力にもよるが、5PPS〜10PPSとするのが一般的である。従って、一般的な製造方法から大幅な変更を行わなくても済むように、タクトタイムやランプ点灯サイクルは上記の範囲に準ずることが好ましい。
【0026】
実施例1.
本実施例では蓄電コンデンサ22の容量を80μFとし、複数回にわたる一連の点灯動作中にランプ点灯時の蓄電コンデンサ22の充電電圧を2100Vdc、2400Vdc、2700Vdc、3000Vdcと4段階に変更できるようにした(本実施例では2段階のみを用いる)。具体的には、制御部30からの指令値に応じて、昇圧制御回路25がフルブリッジ回路のスイッチングパルス幅又はスイッチング周波数を制御して蓄電コンデンサ22に充電される電圧を制御する。各充電電圧に対する1回の点灯あたりの放電エネルギーEを表1に示す。放電エネルギーEは、蓄電コンデンサ22の容量をC、充電電圧をVとした場合に、C×V/2によって算出される。なお、点灯装置の充電能力を考慮してランプ点灯サイクルを5PPSとした。
【表1】

【0027】
上述したように、一連の複数回の点灯動作は、予備的な弱い照射を行う弱照射段階とその後の本格的な硬化をもたらす本照射段階からなる。弱照射段階では、後の本照射段階でひずみが発生し難いように、まず低い照射エネルギーでウェハーを照射しておく。その後、本照射段階で光硬化材料の硬化に必要なエネルギーを投入する。具体的には、弱照射段階では、充電電圧を2100Vdcとして5回点灯を行う。その後、本照射段階では、充電電圧を3000Vdcとして40回点灯を行う。この合計45回の点灯での積算(累積)エネルギーは、176J×5+360J×40=15280Jとなる。これにより、硬化時のひずみを抑制しつつも光硬化材料の硬化に必要な15000Jが確保される。また、ランプ点灯時間も1秒(5回分)+8秒(40回分)=9秒であり、光照射工程として問題のない時間(10秒以下)である。
【0028】
実施例2.
本実施例は実施例1に比べてさらに細かく充電電圧を制御するものである。即ち、一連の点灯動作は、予備的な照射を行う弱照射段階から、弱照射段階よりも強く本照射段階よりも弱い照射を行う中間照射段階を経て、本格的な硬化をもたらす本照射段階まで、徐々に充電電圧を上昇させていくものである。なお、他の条件は実施例1と同様である。弱照射段階では、充電電圧を2100Vdcとして5回点灯を行い、続いて中間照射段階において充電電圧を2400Vdcとして5回点灯させ、次に充電電圧を2700Vdcとして5回点灯し、最後に本照射段階において充電電圧を3000Vdcとして32回点灯させる。この合計47回の点灯での積算(累積)エネルギーは、176J×5+230J×5+292J×5+360J×32=15010Jとなる。これにより、硬化時のひずみを抑制しつつも光硬化材料の硬化に必要な15000Jが確保される。また、ランプ点灯時間も1秒(5回分)+1秒(5回分)+1秒(5回分)+6.4秒(32回分)=9.4秒であり、光照射工程として問題のない時間(10秒以下)である。
【0029】
実施例3.
実施例1及び2では単一の蓄電コンデンサを用いて充電電圧値を変化させる構成を示したが、本実施例では蓄電コンデンサの蓄電容量を可変としたものを示す。
図4に、本実施例による閃光放電ランプ点灯装置を示す。図1と異なる点は、蓄電回路において、蓄電コンデンサ28及びその接続状態を切り替えるためのスイッチ29が蓄電コンデンサ22に並列接続された点である。本実施例では、複数回にわたる一連の点灯において、制御部30がスイッチ29を切り替えて蓄電素子22及び28の合成容量を増加させていく。
【0030】
具体的には、蓄電コンデンサ22、28の容量をそれぞれ30μF、50μFとして、スイッチ29のオフ時の合成容量が30μF、オン時の合成容量が80μFとなるようにし、スイッチ29のオン/オフにかかわらず充電電圧が3000Vdcとなるようにした。これにより、スイッチ29がオフしている場合の放電エネルギーは135Jとなり、オンしている場合の放電エネルギーは360Jとなる。なお、本実施例でもランプ点灯サイクルは5PPSである。
【0031】
本実施例は実施例1と同様に、複数回にわたる一連の点灯動作は、予備的な弱い照射を行う弱照射段階とその後の本格的な硬化をもたらす本照射段階からなる。具体的には、弱照射段階では、スイッチ29をオフして放電エネルギーを135Jとして5回点灯を行い、その後、本照射段階では、スイッチ29をオンして放電エネルギーを360Jとして40回点灯を行う。この合計45回の点灯での積算(累積)エネルギーは、135J×5+360J×40=15075Jとなる。これにより、硬化時のひずみを抑制しつつも光硬化材料の硬化に必要な15000Jが確保される。また、ランプ点灯時間も1秒(5回分)+8秒(40回分)=9秒であり、光照射工程として問題のない時間(10秒以下)である。
【0032】
なお、本実施例では蓄電容量を2段階に変化させる構成を示したが、蓄電コンデンサ及びスイッチの組をより多く設けて複数の蓄電コンデンサの合成容量を多段階に増加させていく構成としてもよい。また、複数の蓄電コンデンサを並列に接続する構成を示したが、複数の蓄電コンデンサを直列に接続して各コンデンサにスイッチを並列接続する構成とすることも可能である。
【0033】
以上のように、所定の積算エネルギーにおける一連の点灯において、高いエネルギーで本照射を行う前に低いエネルギーで弱い照射を行っておく段階を設けたことによりウェハー上のひずみ発生の抑制が可能となった。これにより、φ450mm半導体ウェハーのような大口径化したウェハーの光照射工程においても、外周付近のひずみが問題とならない程度となり、半導体チップ製造における歩留まりを向上することが可能となる。
【0034】
なお、上記実施例は本発明の最も好適な例として示したものであるが、以下を注記しておく。
(1)実施例では閃光放電ランプとして円形の環状ランプを用いたが、形状はこれに限られず、例えば角形の環状ランプを用いてもよいし、半円弧上のランプをつなげるように配置して環状としてもよいし、あるいは、複数の短い直管ランプを輪状に配置して環状形成してもよい。
【0035】
(2)実施例では電源部にフルブリッジ+昇圧トランスタイプのものを用いたが、高電圧を充電することができれば他の構成の昇圧充電回路であってもよい。また、蓄電コンデンサ22及び28を蓄電素子として示したが、蓄電コンデンサの代わりに、バッテリー、電気二重層コンデンサ等、他の蓄電素子を用いてもよい。
【0036】
(3)実施例では充電電圧を可変とする構成と蓄電容量(充電容量)を可変とする構成を個別に示したが、これらを組み合わせ充電電圧及び充電容量の双方を変化させる構成としてもよい。また、実施例1及び2では充電電圧を段階的に増加させる構成を示したが、連続的に増加させる構成としてもよい。
【0037】
(4)本発明は半導体チップの製造工程だけでなく、DVDの貼り合せ工程における接着剤硬化工程等にも適用できる。
【符号の説明】
【0038】
13−16.トランジスタ
17、23.インダクタ
18.昇圧トランス
19−21.ダイオードブリッジ
22、28.蓄電コンデンサ(蓄電素子)
24.閃光放電ランプ
25.昇圧制御回路
26.イグナイタ回路
27.外部トリガ
29.スイッチ
30.制御部
31.CPU
32.メモリ
33.入出力インターフェイス
101.石英発光管
102.陽極
103.陰極
104.封止部
105.トリガワイヤ
106.電極芯棒
301.照射器
302.反射板
303.ダクト
304.半導体ウェハー(基板)
324.ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に付された光硬化材料を硬化させるために閃光放電ランプを点灯させる閃光放電ランプ点灯装置であって、
入力電圧を昇圧する昇圧回路及び該昇圧回路の出力を充電する蓄電回路からなる昇圧充電回路、
前記閃光放電ランプを絶縁破壊させて前記蓄電回路からのエネルギーを該閃光放電ランプに投入させるための始動回路、及び
前記閃光放電ランプに複数回にわたる一連の点灯を行わせるために前記昇圧充電回路及び前記始動回路を制御する制御部
を備え、
前記制御部が、前記一連の点灯において、相対的に低いエネルギーを前記蓄電回路に充電して点灯させる弱照射モードの後に相対的に高いエネルギーを該蓄電回路に充電して点灯させる本照射モードを適用するように構成された閃光放電ランプ点灯装置。
【請求項2】
請求項1の閃光放電ランプ点灯装置において、前記弱照射モードにおける前記昇圧回路による昇圧値が前記本照射モードにおける昇圧値よりも低くなるように前記制御部が前記昇圧回路を制御することを特徴とする閃光放電ランプ点灯装置。
【請求項3】
請求項1の閃光放電ランプ点灯装置において、前記蓄電回路が複数の蓄電素子及び該複数の蓄電素子の接続状態を切り替えるためのスイッチを備え、
前記弱照射モードにおける前記蓄電素子の合成容量が前記本照射モードにおける合成容量よりも小さくなるように前記制御部が前記スイッチを制御することを特徴とする閃光放電ランプ点灯装置。
【請求項4】
請求項1の閃光放電ランプ点灯装置において、前記制御回路が、前記弱照射モードと前記本照射モードの間に、該弱照射モードで充電されるエネルギーよりも高く該本照射モードで充電されるエネルギーよりも低いエネルギーを前記蓄電回路に充電して点灯させる中間照射モードを適用するように構成された閃光放電ランプ点灯装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれか一項に記載の閃光放電ランプ点灯装置及び前記閃光放電ランプを備えた光照射器。
【請求項6】
入力電圧を昇圧する昇圧回路及び該昇圧回路の出力を充電する蓄電回路からなる昇圧充電回路、閃光放電ランプを絶縁破壊させて前記蓄電回路からのエネルギーを該閃光放電ランプに投入するための始動回路、及び前記閃光放電ランプに複数回にわたる一連の点灯を行わせるために前記昇圧充電回路及び前記始動回路を制御する制御部を有する閃光放電ランプ点灯装置を用いて、基板に付された光硬化材料を硬化させる方法であって、
前記一連の点灯において、
相対的に低いエネルギーを前記蓄電回路に充電して点灯させる弱照射段階、及び
前記弱照射段階の後に、相対的に高いエネルギーを前記蓄電回路に充電して点灯させる本照射段階
を備える方法。
【請求項7】
請求項6の方法であって、前記弱照射段階において、前記昇圧回路による昇圧値が前記本照射段階における昇圧値よりも低くなるように制御されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6の方法において、前記蓄電回路が前記複数の蓄電素子及び該複数の蓄電素子の接続状態を切り替えるためのスイッチを備え、
前記弱照射段階において、前記複数の蓄電素子の合成容量が前記本照射段階における合成容量よりも小さくなるように制御されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6の方法であって、さらに、前記制御回路が、前記弱照射段階と前記本照射段階の間に、該弱照射段階で充電されるエネルギーよりも高く該本照射段階で充電されるエネルギーよりも低いエネルギーを前記蓄電回路に充電して照射させる中間照射段階を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−226893(P2012−226893A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91818(P2011−91818)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】