説明

開缶装置

【課題】簡単且つ容易に、しかも、安定して開缶できる装置を提供する。
【解決手段】開缶装置(1)は、横断面が四角形を有する缶胴(10)の底部と上部をそれぞれ缶底(12)と缶蓋(14)で閉じた缶(2)の缶蓋(14)に内容物を取り出すための開口(68)を形成する。開缶装置(1)は、缶(2)を支持する基台(16)と、基台(16)に支持された缶(2)の中心(70)と一対の対向する缶蓋角部を通る垂直面(80)に沿って上下方向に旋回可能に基台(16)に連結されたアーム(22)と、アーム(22)に固定され、アーム(22)の下方向への旋回動作に基づいて、一対の缶蓋角部の一方に、缶蓋(14)の縁に沿って缶蓋(14)を切断してL字形状開口(68)を形成する刃部(52)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶蓋に内容物を取り出すための開口を形成する開缶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば一斗缶の開缶装置として、図6に示す開缶装置100が提案されている。この開缶装置100は、横断面がL字形状を有するV型刃部102の上部に取手104を固定するとともに、V型刃部102の背後に横断面がL字形状の防護板106を備えており、使用時、両手で取手部104を握り、V型刃部102の先端鋭利部108を缶蓋角部に押し込むことによって、缶蓋の角部にL字形状の開口を形成するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、図6の開缶装置は、使用者がその体重の一部を加えながらV型刃部を缶蓋に押し込むものであることから、多数の一斗缶を開缶するときは相当な体力を必要とする。また、V型刃部の先端を缶蓋に当てた状態では不安定であり、その後の押し込み方向を誤ると一斗缶を転倒させてしまう可能性がある。
【0004】
そこで、本発明は、簡単且つ容易に、しかも、安定して開缶できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明の開缶装置は、横断面が四角形を有する缶胴の底部と上部をそれぞれ缶底と缶蓋で閉じた缶の缶蓋に内容物を取り出すための開口を形成するための開缶装置である。この開缶装置は、缶を支持する基台と、上記基台に支持された缶の中心と一対の対向する缶蓋角部を通る垂直面に沿って上下方向に旋回可能に上記基台に連結されたアームと、上記アームに固定され、上記アームの下方向への旋回動作に基づいて、上記一対の缶蓋角部の一方に、上記缶蓋の縁に沿って缶蓋を切断してL字形状開口を形成する刃部を備えている。
【発明の効果】
【0006】
このような構成を有する開缶装置によれば、缶に一定した形状の開口を安定して形成できる。また、てこの原理を応用しているので、僅かな力によって開缶できる。したがって、使用者の負担が著しく軽減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して本発明の開缶装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0008】
図1,2は、本発明に係る開缶装置を示す。開缶装置1が対象とする缶(実施例では「一斗缶2」)は、図4に示すように、横断面が四角形の缶胴10と、缶胴10の底部と上部をそれぞれ閉じる缶底12と缶蓋14を有する。一般にこの種の缶で容量が18リットルのものは「一斗缶」と呼ばれている。しかし、本発明の開缶装置が対象とする缶は一斗缶に限るものでないし、缶の材料も金属に限るものでない。したがって、以下の説明では、本発明を一斗缶の開缶装置に適用した例を示すが、その目的は発明の理解を容易にするためであって、実施例の内容に本発明の技術的範囲が限定されるべきでない。また、以下の説明では、図面を参照した発明の理解を容易にするために、特定の方向を意味する用語(例えば、「上」、「下」、「左」、「右」、およびそれらの用語を含む別の用語)を使用するが、それらの意味によって本発明の技術的範囲が限定されるべきでない。
【0009】
図1に戻ると、開缶装置1は、作業場の床面に設置される基台16を有する。基台16は、一斗缶2を支持する基板18と、基板の一端部から上方に伸びる柱20を有する。実施例では、基板18は上方から見たときに四角形を有するが、その形状は限定的なものでない。一般に、基板18は十分に安定した重量を有することが好ましいことから金属板を用いて形成されるが、基板18の材料は金属板に限るものでない。同様に、柱20も金属部材で形成されるが、柱20の材料も金属に限るものでない。また、実施例では、柱20は横断面が四角形を有するが、柱の横断面形状も特定の形状に限るものでない。
【0010】
柱20の上部には操作アーム22が連結されている。アーム22は、基端(図上右側の端部)が水平支軸(旋回軸)24を介して柱20に旋回可能に連結されている。実施例では、アーム22は金属部材で形成されているが、その材料は金属に限るものでない。
【0011】
アーム22の形状及びアーム22と水平支軸24の高さは、図1に示すように、基板18の上に一斗缶2を設置した状態で、一斗缶2の上方で、一斗缶2と干渉しないようにアーム22がほぼ水平方向に向けられた下降位置(図1に一点鎖線で示す位置)とアーム22の末端が斜め上方に向けられた上昇位置又は待機位置(図1に実線で示す位置)との間を上下方向に往復移動できるように決められている。
【0012】
不使用時(非開缶時)にアーム22を上昇位置に保持する機構を設けることが好ましい。実施例では、保持機構26は、アーム22を上方(下降位置から上昇位置)に付勢する付勢手段28を有する。実施例では、付勢手段はコイルばねで構成されているが、その他のばね(例えば、板ばね)又はゴムなどの弾性部材で形成することもできる。保持機構26はまた、付勢手段28で付勢されたアーム22を上昇位置に位置決めするための規制手段30を有する。実施例では、規制手段30は、アーム22の基端側上方で柱20に固定された固定部材32と、固定部材32に形成された上下方向のねじ孔34に螺合したねじ36を有し、付勢手段28で付勢されたアーム22の一部(例えば、アーム上面)がねじ36の下端に当たり、アーム22が上昇位置に位置決めできるようにしてある。なお、ねじ36を位置決めする(緩みを防止する)ために、ねじ36にはナット38を螺合することが好ましい。
【0013】
同様に、アーム22の下降量を制限して下降位置を一定させるための規制手段40を設けることが好ましい。実施例では、規制手段40は、保持機構26の規制手段30とほぼ同様の構成を有し、アーム22の基端側下方で柱20に固定された固定部材42、固定部材42に形成された上下方向のねじ孔44に螺合したねじ46を有し、下降位置に到達したアーム22の一部(例えば、アーム下面)がねじ46の上端に当たり、アーム22が下降位置に位置決めできるようにしてある。なお、ねじ46を位置決め(緩みを防止する)するために、ねじ46にはナット48を螺合することが好ましい。
【0014】
アーム22の末端には、操作用のハンドル50が固定されている。実施例では、ハンドル50は、アーム22と直交する水平方向に向けられているが、アーム22と同軸上に設けてもよい。なお、アーム22やハンドル50の長さ等は、スペース等の制約の範囲内で、開缶時に必要とする力を出来るだけ抑えるように決めることが好ましい。
【0015】
アーム22の末端側には、下方に向けて伸びるV型刃部52が固定されている。図3に詳細に示すように、V型刃部52は、横断面がL形をしており、逆三角形を有する2つの刃板54を一体化して形成されており、上下方向に伸びる中央の稜線部56と、稜線部56の下端から斜め上方に向けて伸びる2つの比較的鋭利な刃先(縁)58を有する。実施例では、一枚の略V形状の金属板をその中央部で直角に折り曲げて形成されているが、2枚の逆三角形の板を溶接して一体化してもよい。また、2つの刃板54は一体化されていることが好ましいが、必ずしもその必要はない。このように構成された刃部52は、図2に示すように、稜線部56に沿って伸びる2つの刃板54の対称面60が、アーム22の中心軸62を含むように、上端部でアーム22に固定される。
【0016】
なお、開缶時、刃先58を除き、刃板54の内面が線状軌跡を描き、缶蓋14の刃板内面に接触する位置が次第に横方向(内側)に移動しないようにすることが好ましい。そのため、図5に示すように、V型刃部52の缶蓋14と接触する部分は、アーム22の水平支軸24を中心とする円弧に沿って曲線状に加工することが好ましい。
【0017】
図3を参照すると、刃部52の外側には防護板64を取り付けることが好ましい。実施例では、防護板64は、一枚の四角形板をその中央で直角に折り曲げて横断面がL形に形成されており、刃部52との間に所定の間隔をあけて、アーム22に固定されている。防護板64も金属板で形成することが好ましいが、その材料は限定的ではない。
【0018】
基板18の上に設置される一斗缶2を位置決めするため、基板18には、位置決め手段66(図2参照)を設けることが好ましい。ところで、実施例の開缶装置1は、図1,2に示すように、アーム22を上昇位置から下降位置に下ろしたとき、V型刃部52が一斗缶2の缶蓋角部に、2つの刃板54が缶蓋14の縁に沿って突き刺さり、この缶蓋角部近傍に缶蓋14の縁に沿ってL字状に伸びる開口68を形成するように設計されている。そのため、図2に示すように、一斗缶2は、その中心軸70と対向する一対の缶蓋角部がアーム22の中心軸62を含む垂直面80上に位置し、アーム22を下降位置に向けて下ろしたときに、V型刃部52の先端72(図3参照)が缶蓋角部に当たるように、位置決めされることが好ましい。一斗缶が設置されるこの位置(図2に点線で示す位置)を「開缶位置」という。
【0019】
実施例では、位置決め手段66は、図2に示すように、アーム22の中心軸62を含む垂直面によって分けられる基板上の一方の領域に、開缶位置に設置された一斗缶2の2つの隣接する側面又は下端部に当接するように固定された2つの突部74を有する。この位置決め手段66によれば、アーム22の下方領域にその側方(図2に矢印76で示す方向)から一斗缶2を装入して開缶位置に位置決めできる。
【0020】
以上のように構成された開缶装置1の使用時、使用者は、一斗缶2をアーム22の下方領域にその側方から装入し、一斗缶2の隣接する側面又は下端を位置決め突部74に当てる。これにより、一斗缶2は適正に位置決めされる。次に、使用者は、ハンドル50を持ってアーム22を上昇位置から下降位置に下ろす。これにより、V型刃部52の先端が缶蓋角部に当たる。使用者は、この状態から更に力を加えてアーム22を押し下げる。これにより、V型刃部52が缶蓋角部に突き刺さり、缶蓋14の角部に缶蓋14の縁に沿ったL形の開口68が形成される。アーム22の下降は規制手段40によって規制される。そのため、一斗缶2に形成される開口68の大きさは常に一定している。その後、使用者はアーム22を持ちながら加えていた力を緩める。これにより、アーム22は付勢手段28から受ける付勢力により、下降位置から上昇位置に戻る。
【0021】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る開缶装置1によれば、一斗缶等の缶に一定した形状の開口を安定して形成できる。また、てこの原理を応用しているので、僅かな力によって開缶できる。したがって、使用者の負担が著しく軽減する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る開缶装置の側面図。
【図2】本発明に係る開缶装置の平面図。
【図3】図1,2に示す開缶装置のV型刃部の斜視図。
【図4】一斗缶の斜視図。
【図5】刃部の軌跡を説明する図。
【図6】従来の開缶装置の斜視図。
【符号の説明】
【0023】
1:開缶装置
2:一斗缶
10:缶胴
12:缶底
14:缶蓋
16:基台
18:基板
20:柱
22:アーム
24:水平支軸
26:保持機構
28:付勢手段
30:規制手段
32:固定部材
34:ねじ孔
36:ねじ
38:ナット
40:規制手段
42:固定部材
44:ねじ孔
46:ねじ
48:ナット
50:ハンドル
52:V型刃部
54:刃板
56:稜線部
58:刃先
60:対称面
62:アームの中心軸
64:防護板
66:位置決め手段
68:開口
70:一斗缶の中心軸
72:先端
74:突部
76:矢印
80:垂直面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面が四角形を有する缶胴の底部と上部をそれぞれ缶底と缶蓋で閉じた缶の缶蓋に内容物を取り出すための開口を形成するための開缶装置であって、
缶を支持する基台と、
上記基台に支持された缶の中心と一対の対向する缶蓋角部を通る垂直面に沿って上下方向に旋回可能に上記基台に連結されたアームと、
上記アームに固定され、上記アームの下方向への旋回動作に基づいて、上記一対の缶蓋角部の一方に、上記缶蓋の縁に沿って缶蓋を切断してL字形状開口を形成する刃部を備えたことを特徴とする開缶装置。
【請求項2】
上記刃部は、
横断面がL字形状を有し、
上記アームから下方に伸びる中央稜線部と、上記中央稜線部の下端から斜め上方に向かって伸びる2つの縁を有し、
上記稜線部と2つの縁によって囲まれた刃板は、上記アームの旋回軸を中心とする円弧に沿って伸びていることを特徴とする請求項1の開缶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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