説明

開脚釘及びその打設方法

【課題】 本発明は、打ち込み不良がない開脚釘及びその打設方法、更にはそれを用いた部材固定用ブラケットの取付方法及び取付構造を提供することを可能にすることを目的としている。
【解決手段】 先端部に第2の釘体2の先端を開脚させる開脚制御部3が設けられた第1の釘体1と、該釘体1とは別体で構成され先端が開脚する第2の釘体2とからなり、該釘体2の先端部2aが釘体1の先端部1aに設けられた開脚制御部3よりも頭部1b側で、且つ釘体2の頭部2bが釘体1の頭部1bよりもその外側に配置された状態で、釘体1の軸部1c及び釘体2の軸部2cがパイプ4内に並行して嵌入されてなると共に、軸方向にスライド可能に該パイプ4により拘束されてなる開脚釘Aとしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開脚釘及びその打設方法、更にはそれを用いた部材固定用ブラケットの取付方法及び取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量気泡コンクリート(ALC)パネル等に木材や各種器材を取り付けるために使用する開脚釘が特許第3002629号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1の技術では、先行する第1の釘と後続する第2の釘とは僅かに切削残した可破壊部により連続されており、後続する第2の釘の頭部を打ち込むことにより可破壊部で一体的に接続された先行する第1の釘と後続する第2の釘とが一体的に打ち込まれ、先行する第1の釘が対象物に完全に打ち込まれた状態で更に後続する第2の釘を打ち込むと、可破壊部が破壊されて、後続する第2の釘が先行する第1の釘から切り離された後、先行する第1の釘の先端部に設けられた開脚制御部により後続する第2の釘の進行方向が変更されて先端が開脚するものである。
【0003】
【特許文献1】特許第3002629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、先行する第1の釘が対象物に完全に打ち込まれる前に可破壊部が破壊されて、後続する第2の釘が先行する第1の釘から切り離されて先端が開脚してしまう場合があり、打ち込み不良となることがあった。
【0005】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、打ち込み不良がない開脚釘及びその打設方法、更にはそれを用いた部材固定用ブラケットの取付方法及び取付構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明に係る開脚釘の第1の構成は、先端部に第2の釘体の先端を開脚させる開脚制御部が設けられた第1の釘体と、先端が開脚する第2の釘体とからなり、前記第2の釘体の先端部が前記第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部よりも頭部側で、且つ該第2の釘体の頭部が前記第1の釘体の頭部よりもその外側に配置された状態で、前記第1の釘体の軸部及び前記第2の釘体の軸部がパイプ内に並行して嵌入されてなると共に軸方向にスライド可能に該パイプにより拘束されてなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る開脚釘の第2の構成は、先端部に第2の釘体の先端を開脚させる開脚制御部が設けられた第1の釘体と、先端が開脚する第2の釘体とからなり、前記第2の釘体の先端部が前記第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部よりも頭部側で、且つ該第2の釘体の頭部が前記第1の釘体の頭部よりもその外側に配置された状態で、前記第1の釘体の軸部及び前記第2の釘体の軸部が少なくとも1枚のワッシャの孔内に並行して嵌入されてなると共に軸方向にスライド可能に該ワッシャにより拘束されてなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る開脚釘の打設方法の第1の構成は、前記開脚釘の第1の構成の前記第2の釘体の頭部を嵌入し得る内径で且つ該第2の釘体の頭部が前記第1の釘体の頭部よりもその外側に配置された長さ以上の深さを有する穴部と、前記第1の釘体の頭部が当接する当接部と、前記当接部と反対側に設けられた打ち込み部と、を有する打ち込み治具を用いて前記第1の構成の開脚釘を打設する方法であって、前記打ち込み治具の前記穴部に前記第2の釘体の頭部を挿入し且つ前記当接部に前記第1の釘体の頭部を当接させて前記打ち込み部を打ち込んで前記第1の釘体と前記パイプとを先行して前記対象物に一体的に打設した後、前記打ち込み治具を取り外して前記第2の頭部を打ち込んで、前記第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により前記第2の釘体の進行方向を変更して先端を開脚させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る開脚釘の打設方法の第2の構成は、前記開脚釘の第2の構成の前記第2の釘体の頭部を嵌入し得る内径で且つ該第2の釘体の頭部が前記第1の釘体の頭部よりもその外側に配置された長さ以上の深さを有する穴部と、前記第1の釘体の頭部が当接する当接部と、前記当接部と反対側に設けられた打ち込み部と、を有する打ち込み治具を用いて前記第2の構成の開脚釘を打設する方法であって、前記打ち込み治具の前記穴部に前記第2の釘体の頭部を挿入し且つ前記当接部に前記第1の釘体の頭部を当接させて前記打ち込み部を打ち込んで前記第1の釘体を先行して前記対象物に打設した後、前記打ち込み治具を取り外して前記第2の頭部を打ち込んで、前記第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により前記第2の釘体の進行方向を変更して先端を開脚させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る部材固定用ブラケットの取付方法の第1の構成は、貫通穴と対象物表面に当接する当接面とを有する部材固定用ブラケットの取付方法であって、前記部材固定用ブラケットの貫通穴に前記開脚釘の第1の構成の前記第1、第2の釘体及び前記パイプを一体的に挿通し、前記開脚釘の打設方法の第1の構成の打ち込み治具の前記穴部に前記第2の釘体の頭部を挿入し且つ前記当接部に前記第1の釘体の頭部を当接させて前記打ち込み部を打ち込んで前記第1の釘体と前記パイプとを先行して前記対象物に一体的に打設して前記部材固定用ブラケットの当接面が前記対象物に当接した状態で該第1の釘体の頭部を前記部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部に係止した後、前記打ち込み治具を取り外して前記第2の頭部を打ち込んで、前記第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により前記第2の釘体の進行方向を変更して先端を開脚させ、前記第2の釘体の頭部を前記部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部に係止して前記部材固定用ブラケットを前記対象物に固定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る部材固定用ブラケットの取付方法の第2の構成は、貫通穴と対象物表面に当接する当接面とを有する部材固定用ブラケットの取付方法であって、前記部材固定用ブラケットの貫通穴に前記開脚釘の第2の構成の前記第1、第2の釘体を一体的に挿通し、前記開脚釘の打設方法の第2の構成の打ち込み治具の前記穴部に前記第2の釘体の頭部を挿入し且つ前記当接部に前記第1の釘体の頭部を当接させて前記打ち込み部を打ち込んで前記第1の釘体を先行して前記対象物に打設して前記部材固定用ブラケットの当接面が前記対象物に当接した状態で該第1の釘体の頭部を前記部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部に係止した後、前記打ち込み治具を取り外して前記第2の頭部を打ち込んで、前記第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により前記第2の釘体の進行方向を変更して先端を開脚させ、前記第2の釘体の頭部を前記部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部に係止して前記部材固定用ブラケットを前記対象物に固定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る部材固定用ブラケットの取付構造は、貫通穴と対象物表面に当接する当接面とを有する部材固定用ブラケットの取付構造であって、前記部材固定用ブラケットの貫通穴に前記開脚釘の第1の構成の前記第1、第2の釘体及び前記パイプが一体的に挿通されてなり、且つ前記第1、第2の釘体と前記パイプとが前記対象物に打設されてなると共に、前記第2の釘体の先端は前記第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により進行方向が変更されて開脚されており、前記部材固定用ブラケットの当接面は前記対象物に当接すると共に前記第1、第2の釘体の頭部が前記部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部に係止されて前記部材固定用ブラケットが前記対象物に固定されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る開脚釘の第1の構成によれば、別体で構成された第1、第2の釘体がパイプ内に並行して嵌入され、互いの軸方向にスライド可能に拘束される。そして、第1の釘体の頭部を打ち込んで該第1の釘体とパイプとを先行して対象物に打設した後、第2の釘体の頭部を打ち込んで該第2の釘体を後続して対象物に打設することが出来る。そして、第1の釘体が対象物に確実に打設された後で該第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により後続する第2の釘体の進行方向を変更して対象物内で該第2の釘体の先端を開脚することが出来る。パイプは第1の釘体に沿って打ち込まれる第2の釘体の進行方向を確実に拘束することが出来、第2の釘体の先端を確実に開脚することが出来る。
【0014】
また、本発明に係る開脚釘の第2の構成によれば、別体で構成された第1、第2の釘体が少なくとも1枚のワッシャの孔内に並行して嵌入され、互いの軸方向にスライド可能に拘束される。そして、第1の釘体の頭部を打ち込んで該第1の釘体を先行して対象物に打設した後、第2の釘体の頭部を打ち込んで該第2の釘体を後続して対象物に打設することが出来る。そして、第1の釘体が対象物に確実に打設された後で該第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により後続する第2の釘体の進行方向を変更して対象物内で該第2の釘体の先端を開脚することが出来る。ワッシャは第1の釘体に沿って打ち込まれる第2の釘体の進行方向を確実に拘束することが出来、第2の釘体の先端を確実に開脚することが出来る。
【0015】
また、本発明に係る開脚釘の打設方法の第1の構成によれば、後続する第2の釘体の頭部が先行する第1の釘体の頭部よりも打ち込み側に配置される構成であっても、打ち込み治具により第2の釘体が干渉することなく第1の釘体の頭部を先行して打ち込むことが出来、パイプは第1の釘体の頭部下面に係止されつつ該第1の釘体と一体的に対象物に打ち込まれる。第1の釘体を対象物に確実に打設した後、打ち込み治具を取り外して第2の釘体の頭部を後続して打設することが出来、第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により後続する第2の釘体の進行方向を変更して対象物内で該第2の釘体の先端を開脚することが出来る。
【0016】
また、本発明に係る開脚釘の打設方法の第2の構成によれば、後続する第2の釘体の頭部が先行する第1の釘体の頭部よりも打ち込み側に配置される構成であっても、打ち込み治具により第2の釘体が干渉することなく第1の釘体の頭部を先行して打ち込むことが出来、ワッシャは対象物表面に当接して係止され、該ワッシャの孔内を第1の釘体の軸部がスライドして移動し、該第1の釘体が対象物に打ち込まれる。第1の釘体を対象物に確実に打設した後、打ち込み治具を取り外して第2の釘体の頭部を後続して打設することが出来、対象物表面に当接して係止されたワッシャの孔内を第2の釘体の軸部がスライドして移動し、該第2の釘体が対象物に打ち込まれる。第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により後続する第2の釘体の進行方向を変更して対象物内で該第2の釘体の先端を開脚することが出来る。
【0017】
また、本発明に係る部材固定用ブラケットの取付方法の第1の構成によれば、部材固定用ブラケットの貫通穴にパイプにより拘束された第1、第2の釘体及びパイプを一体的に挿通し、打ち込み治具により第1の釘体の頭部を先行して打ち込むと、パイプは第1の釘体の頭部下面に係止されつつ部材固定用ブラケットの貫通穴内をスライドして移動し、該第1の釘体と一体的に対象物に打ち込まれる。部材固定用ブラケットの当接面が対象物表面に当接すると共に、該第1の釘体の頭部下面が部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部に係止されるまで第1の釘体を対象物に確実に打設した後、打ち込み治具を取り外して第2の釘体の頭部を後続して打設し、第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により後続する第2の釘体の進行方向を変更して対象物内で該第2の釘体の先端を開脚すると共に、該第2の釘体の頭部下面が部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部に係止されるまで該第2の釘体を対象物に確実に打設することにより部材固定用ブラケットを対象物に確実に固定することが出来る。
【0018】
また、本発明に係る部材固定用ブラケットの取付方法の第2の構成によれば、部材固定用ブラケットの貫通穴にワッシャにより拘束された第1、第2の釘体を一体的に挿通し、打ち込み治具により第1の釘体の頭部を先行して打ち込むと、ワッシャは部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部により係止されて第1の釘体がワッシャの孔内及び部材固定用ブラケットの貫通穴内をスライドして移動し、対象物に打ち込まれる。部材固定用ブラケットの当接面が対象物表面に当接すると共に、該第1の釘体の頭部下面が部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部に係止されるまで第1の釘体を対象物に確実に打設した後、打ち込み治具を取り外して第2の釘体の頭部を後続して打設し、該第2の釘体は部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部により係止されたワッシャの孔内及び部材固定用ブラケットの貫通穴内をスライドして移動し、対象物に打ち込まれる。第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により後続する第2の釘体の進行方向を変更して対象物内で該第2の釘体の先端を開脚すると共に、該第2の釘体の頭部下面が部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部に係止されるまで該第2の釘体を対象物に確実に打設することにより部材固定用ブラケットを対象物に確実に固定することが出来る。
【0019】
また、本発明に係る部材固定用ブラケットの取付構造によれば、第1、第2の釘体を拘束するパイプが対象物に一体的に打設されて対象物内に埋設され、第2の釘体の先端が第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により進行方向が変更されて開脚され、部材固定用ブラケットの当接面が対象物表面に当接すると共に、第1、第2の釘体の頭部が部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部に係止されて部材固定用ブラケットが対象物に強固に固定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図により本発明に係る開脚釘及びその打設方法、更にはそれを用いた部材固定用ブラケットの取付方法及び取付構造の一実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係る開脚釘の第1実施形態の構成を示す図、図2は第1実施形態の開脚釘の打設方法を説明する図、図3は第1実施形態の開脚釘を使用して部材固定用ブラケットを取り付ける取付方向及び取付構造を説明する図、図4は打込み治具の構成を説明する図、図5は各種の部材固定用ブラケットの構成を示す図である。
【0021】
先ず、図1〜図5を用いて本発明に係る開脚釘及びその打設方法、更にはそれを用いた部材固定用ブラケットの取付方法及び取付構造の第1実施形態について説明する。
【0022】
図1において、Aは第1実施形態の開脚釘であり、先端部に第2の釘体2の先端を開脚させる開脚制御部3が設けられた第1の釘体1と、該釘体1とは別体で構成され先端が開脚する第2の釘体2とからなり、該釘体2の先端部2aが釘体1の先端部1aに設けられた開脚制御部3よりも頭部1b側で、且つ釘体2の頭部2bが釘体1の頭部1bよりもその外側に配置された状態で、釘体1の軸部1c及び釘体2の軸部2cがパイプ4内に並行して嵌入されてなると共に、軸方向にスライド可能に該パイプ4により拘束されてなる。本実施形態の開脚制御部3は釘体1の先端部1aに溶接等により固定されている。
【0023】
図2は第1実施形態の開脚釘Aの打設方法を説明する図であり、図4に示すように、開脚釘Aを打設する際に使用する打ち込み治具5は、第2の釘体2の頭部2bを嵌入し得る内径で且つ釘体2の頭部2bが第1の釘体1の頭部1bよりもその外側に配置された長さ以上の深さを有する穴部5aと、第1の釘体1の頭部1bが当接する当接部5bと、該当接部5bと反対側に設けられた打ち込み部5cとを有して構成される。尚、穴部5aは打ち込み治具5に設けられた貫通穴で構成することでも良い。
【0024】
先ず、図2(a)に示すように、打ち込み治具5の穴部5aに第2の釘体2の頭部2bを挿入し、当接部5bに第1の釘体1の頭部1bを当接させて打ち込み部5cを打ち込んで釘体1とパイプ4とを先行して対象物6に一体的に打設する。本実施形態の打ち込み治具5を使用すると有底の穴部5aにより釘体2もパイプ4と一体的に打設される(図2(b)参照)。対象物6としては軽量気泡コンクリート(ALC)等が適用出来る。
【0025】
ここで、パイプ4の内径は第1、第2の釘体1,2を並行して配置した際の軸部1c,2cを合わせた外径よりも大きく、頭部1b,2bを合わせた外径よりも小さくなるように設定されており、パイプ4の端部周縁部4aに釘体1の頭部1b下面が係止されてパイプ4は釘体1と一体的に対象物6内に打設される。また、パイプ4の先端部にはテーパ面4bが形成されており、このテーパ面4bによりパイプ4が対象物6内に容易に打設出来るように構成される。
【0026】
釘体1の先端部1aに設けられた開脚制御部3の外径は釘体2の外径と略同じかそれよりも大きな外径を有して構成されており、釘体1と一体的に対象物6内に打設される開脚制御部3により釘体2の進路前方が予め開孔され、その開孔に沿って釘体2が対象物6内に打設される(図2(b)参照)。
【0027】
本実施形態の釘体1,2の軸部1c,2cの外形は断面略半円形状で構成され、釘体1,2を並行して抱き合わせた際に全体の軸部が断面略円形状に構成される。また、頭部1b,2bもそれぞれ半円形状に形成されており、釘体1,2を並行して抱き合わせた際に全体の頭部が略円形状に構成される。
【0028】
図2(c)に示すように、第1の釘体1が対象物6内に完全に打設され、頭部1bの下面がパイプ4の端部周縁部4aに係止された段階で、図2(d)に示すように、打ち込み治具5を取り外す。開脚制御部3の釘体2側には該釘体2の先端部2aの進行方向を変更して先端を開脚させるためのガイド面3aが設けられており、第2の釘体2の頭部2bを打ち込んで第1の釘体1の先端部1aに設けられた開脚制御部3のガイド面3aに沿って釘体2の先端部2aが案内されることにより該釘体2の先端部2aの進行方向を変更して該釘体2の先端を開脚させる。
【0029】
そして、第2の釘体2が対象物6内に完全に打設され、頭部2bの下面がパイプ4の端部周縁部4aに係止され、釘体1,2及びパイプ4が一体的に対象物6内に打設される。
【0030】
次に図3を用いて第1実施形態の開脚釘Aを使用して部材固定用ブラケット7を取り付ける方法及び取付構造について説明する。部材固定用ブラケット7は、図5(a)に示すように、貫通穴7aと対象物6の表面に当接する当接面7bとを有して構成されており、図3(a)に示すように、部材固定用ブラケット7の貫通穴7aに開脚釘Aの釘体1,2及びパイプ4を一体的に挿通し、図2に示して前述したと同様に、打ち込み治具5の穴部5aに第2の釘体2の頭部2bを挿入し、且つ当接部5bに第1の釘体1の頭部1bを当接させて打ち込み部5cを打ち込んで釘体1とパイプ4とを先行して対象物6に一体的に打設して部材固定用ブラケット7の当接面7bが対象物6に当接した状態で釘体1の頭部1b下面を部材固定用ブラケット7の貫通穴7aの周縁部7a1に係止した後、打ち込み治具5を取り外して第2の釘体2の頭部2bを打ち込んで釘体1の先端部1aに設けられた開脚制御部3により釘体2の進行方向を変更して先端を開脚させ、釘体2の頭部2b下面を部材固定用ブラケット7の貫通穴7aの周縁部7a1に係止して部材固定用ブラケット7を対象物6に固定する(図3(b)参照)。
【0031】
図5(a)に示す部材固定用ブラケット7には、円筒状のブラケット本体7cの内部を貫通する貫通穴7aが形成される。また、ブラケット本体7cの周りには該ブラケット本体7cの外径よりも大きい外径を有する鍔部7dが形成される。そして、鍔部7dよりも対象物6側に突出した凸部7eが形成される。更に、ブラケット本体7cの固定部材9側の外周には、ネジ部7c1が形成されている。
【0032】
部材固定用ブラケット7を対象物6に取付ける際には、図3(a)に示すように、予め対象物6に部材固定用ブラケット7の凸部7e及び鍔部7dの外形に対応した形状の溝6aを形成しておく。溝6aは、対象物6を削りとることで形成しても良いし、対象物6の作成時に予め形成するものとしても良い。一方、部材固定用ブラケット7の鍔部7dの対象物6側の当接面7bには、接着剤又は充填材を塗布しておく。
【0033】
そして、図3(b)に示すように、対象物6の溝6aに対して、部材固定用ブラケット7の凸部7e及び鍔部7dを嵌合させる。ここで、前述のように部材固定用ブラケット7の鍔部7dの当接面7bには接着剤又は充填材が塗布されている。このため、接着剤又は充填材が部材固定用ブラケット7と対象物6とを接着し、対象物6の溝6aにおいて、部材固定用ブラケット7のガタツキを防止することが出来る。
【0034】
この状態で、開脚釘Aを部材固定用ブラケット7の貫通穴7aに貫通させて、前述したように釘体1,2を対象物6内に打ち込む。この状態において、部材固定用ブラケット7は、貫通穴7a内に開脚釘Aがあることにより上下方向の位置が規定され、対象物6と釘体1,2の頭部1b,2bとに挟持されることにより左右方向の位置が規定される。
【0035】
その後、図3(c)に示すように、部材固定用ブラケット7のネジ部7c1に対して、外装材8を固定するための胴縁等の固定部材9を固定する。尚、対象物6の外部で外装材8の内部に、断熱材を配置し、該断熱材を固定するための断熱材固定部材を配設しても良い。
【0036】
図5は種々の部材固定用ブラケット7を示す図であり、図5(b)に示すように、図5(a)に示して前述した部材固定用ブラケット7の凸部7eを省略した構成であっても良いし、図5(c)に示すように、凸部7eが長く、図5(a)に示す鍔部7dの代わりにブラケット本体7cが該鍔部7dと同径で形成される構成であっても良い。
【0037】
次に図6〜図8を用いて本発明に係る開脚釘及びその打設方法、更にはそれを用いた部材固定用ブラケットの取付方法の第2実施形態について説明する。図6は本発明に係る開脚釘の第2実施形態の構成を示す図、図7は第2実施形態の開脚釘の打設方法を説明する図、図8は第2実施形態の開脚釘を使用して部材固定用ブラケットを取り付ける取付方向を説明する図である。尚、前記第1実施形態と同様に構成したものは同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
本実施形態の開脚釘Bは先端部に第2の釘体2の先端を開脚させる開脚制御部3が設けられた第1の釘体1と、該釘体1とは別体で構成され先端が開脚する第2の釘体2とからなり、該釘体2の先端部2aが釘体1の先端部1aに設けられた開脚制御部3よりも頭部1b側で、且つ釘体2の頭部2bが釘体1の頭部1bよりもその外側に配置された状態で、釘体1の軸部1c及び釘体2の軸部2cが少なくとも1枚のワッシャ11の孔内に並行して嵌入されてなると共に、軸方向にスライド可能に該ワッシャ11により拘束されてなる。
【0039】
本実施形態では、図6に示すように、2枚のワッシャ11が釘体1頭部1b近傍と釘体2の先端部2a近傍にそれぞれ嵌装されている。ワッシャ11の孔の壁面には複数の突起部が形成されており、これにより、ワッシャ11が釘体1,2の軸部1c,2cにスライド可能に係止されている。他の構成は前記第1実施形態の開脚釘Aと同様に構成され、同様の効果を得ることが出来る。
【0040】
図7は第2実施形態の開脚釘Bの打設方法を説明する図であり、先ず、図7(a)に示すように、打ち込み治具5の穴部5aに第2の釘体2の頭部2bを挿入し、当接部5bに第1の釘体1の頭部1bを当接させて打ち込み部5cを打ち込んで釘体1を先行して対象物6に打設する。
【0041】
ここで、ワッシャ11の内径は第1、第2の釘体1,2を並行して配置した際の軸部1c,2cを合わせた外径よりも大きく、頭部1b,2bを合わせた外径よりも小さくなるように設定されており、図7(b)に示すように、先端側のワッシャ11が対象物6の表面に当接した後、更に図7(c)に示すように、頭部側のワッシャ11が対象物6の表面に先に当接したワッシャ11に重ねて当接し、該ワッシャ11に釘体1の頭部1b下面が当接するまで釘体1,2が一体的に対象物6内に打設される。
【0042】
図7(c)に示すように、第1の釘体1が対象物6内に完全に打設され、頭部1bの下面が対象物6の表面に当接する2枚のワッシャ11に当接した段階で、図7(d)に示すように、打ち込み治具5を取り外し、第2の釘体2の頭部2bを打ち込んで第1の釘体1の先端部1aに設けられた開脚制御部3のガイド面3aに沿って釘体2の先端部2aが案内されることにより該釘体2の先端部2aの進行方向を変更して該釘体2の先端を開脚させる。
【0043】
そして、第2の釘体2が対象物6内に完全に打設され、頭部2bの下面が対象物6の表面に当接する2枚のワッシャ11に当接され、釘体1,2が一体的に対象物6内に打設される。
【0044】
次に図8を用いて第2実施形態の開脚釘Bを使用して部材固定用ブラケット7を取り付ける方法及び取付構造について説明する。図8(a)に示すように、部材固定用ブラケット7の貫通穴7aに開脚釘Bの釘体1,2を一体的に挿通し、図7に示して前述したと同様に、打ち込み治具5の穴部5aに第2の釘体2の頭部2bを挿入し、且つ当接部5bに第1の釘体1の頭部1bを当接させて打ち込み部5cを打ち込んで釘体1を先行して対象物6に打設して部材固定用ブラケット7の当接面7bが対象物6に当接した状態で釘体1の頭部1b下面を部材固定用ブラケット7の貫通穴7aの周縁部7a1にワッシャ11を介して係止した後、打ち込み治具5を取り外して第2の釘体2の頭部2bを打ち込んで釘体1の先端部1aに設けられた開脚制御部3により釘体2の進行方向を変更して先端を開脚させ、釘体2の頭部2b下面を部材固定用ブラケット7の貫通穴7aの周縁部7a1にワッシャ11を介して係止して部材固定用ブラケット7を対象物6に固定する。他の構成は前記第1実施形態と同様に構成され、同様の効果を得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の活用例として、開脚釘及びその打設方法、更にはそれを用いた部材固定用ブラケットの取付方法及び取付構造に適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る開脚釘の第1実施形態の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の開脚釘の打設方法を説明する図である。
【図3】第1実施形態の開脚釘を使用して部材固定用ブラケットを取り付ける取付方向及び取付構造を説明する図である。
【図4】打込み治具の構成を説明する図である。
【図5】各種の部材固定用ブラケットの構成を示す図である。
【図6】本発明に係る開脚釘の第2実施形態の構成を示す図である。
【図7】第2実施形態の開脚釘の打設方法を説明する図である。
【図8】第2実施形態の開脚釘を使用して部材固定用ブラケットを取り付ける取付方向を説明する図である。
【符号の説明】
【0047】
A,B…開脚釘
1,2…釘体
1a,2a…先端部
1b,2b…頭部
1c,2c…軸部
3…開脚制御部
3a…ガイド面
4…パイプ
4a…端部周縁部
4b…テーパ面
5…打ち込み治具
5a…穴部
5b…当接部
5c…打ち込み部
6…対象物
6a…溝
7…部材固定用ブラケット
7a…貫通穴
7a1…周縁部
7b…当接面
7c…ブラケット本体
7c1…ネジ部
7d…鍔部
7e…凸部
8…外装材
9…固定部材
11…ワッシャ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に第2の釘体の先端を開脚させる開脚制御部が設けられた第1の釘体と、先端が開脚する第2の釘体とからなり、
前記第2の釘体の先端部が前記第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部よりも頭部側で、且つ該第2の釘体の頭部が前記第1の釘体の頭部よりもその外側に配置された状態で、前記第1の釘体の軸部及び前記第2の釘体の軸部がパイプ内に並行して嵌入されてなると共に軸方向にスライド可能に該パイプにより拘束されてなることを特徴とする開脚釘。
【請求項2】
先端部に第2の釘体の先端を開脚させる開脚制御部が設けられた第1の釘体と、先端が開脚する第2の釘体とからなり、
前記第2の釘体の先端部が前記第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部よりも頭部側で、且つ該第2の釘体の頭部が前記第1の釘体の頭部よりもその外側に配置された状態で、前記第1の釘体の軸部及び前記第2の釘体の軸部が少なくとも1枚のワッシャの孔内に並行して嵌入されてなると共に軸方向にスライド可能に該ワッシャにより拘束されてなることを特徴とする開脚釘。
【請求項3】
請求項1に記載の開脚釘の前記第2の釘体の頭部を嵌入し得る内径で且つ該第2の釘体の頭部が前記第1の釘体の頭部よりもその外側に配置された長さ以上の深さを有する穴部と、前記第1の釘体の頭部が当接する当接部と、前記当接部と反対側に設けられた打ち込み部と、を有する打ち込み治具を用いて請求項1に記載の開脚釘を打設する方法であって、
前記打ち込み治具の前記穴部に前記第2の釘体の頭部を挿入し且つ前記当接部に前記第1の釘体の頭部を当接させて前記打ち込み部を打ち込んで前記第1の釘体と前記パイプとを先行して前記対象物に一体的に打設した後、
前記打ち込み治具を取り外して前記第2の頭部を打ち込んで、前記第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により前記第2の釘体の進行方向を変更して先端を開脚させることを特徴とする開脚釘の打設方法。
【請求項4】
請求項2に記載の開脚釘の前記第2の釘体の頭部を嵌入し得る内径で且つ該第2の釘体の頭部が前記第1の釘体の頭部よりもその外側に配置された長さ以上の深さを有する穴部と、前記第1の釘体の頭部が当接する当接部と、前記当接部と反対側に設けられた打ち込み部と、を有する打ち込み治具を用いて請求項2に記載の開脚釘を打設する方法であって、
前記打ち込み治具の前記穴部に前記第2の釘体の頭部を挿入し且つ前記当接部に前記第1の釘体の頭部を当接させて前記打ち込み部を打ち込んで前記第1の釘体を先行して前記対象物に打設した後、
前記打ち込み治具を取り外して前記第2の頭部を打ち込んで、前記第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により前記第2の釘体の進行方向を変更して先端を開脚させることを特徴とする開脚釘の打設方法。
【請求項5】
貫通穴と対象物表面に当接する当接面とを有する部材固定用ブラケットの取付方法であって、
前記部材固定用ブラケットの貫通穴に請求項1に記載の開脚釘の前記第1、第2の釘体及び前記パイプを一体的に挿通し、
請求項3に記載の打ち込み治具の前記穴部に前記第2の釘体の頭部を挿入し且つ前記当接部に前記第1の釘体の頭部を当接させて前記打ち込み部を打ち込んで前記第1の釘体と前記パイプとを先行して前記対象物に一体的に打設して前記部材固定用ブラケットの当接面が前記対象物に当接した状態で該第1の釘体の頭部を前記部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部に係止した後、
前記打ち込み治具を取り外して前記第2の頭部を打ち込んで、前記第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により前記第2の釘体の進行方向を変更して先端を開脚させ、前記第2の釘体の頭部を前記部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部に係止して前記部材固定用ブラケットを前記対象物に固定することを特徴とする部材固定用ブラケットの取付方法。
【請求項6】
貫通穴と対象物表面に当接する当接面とを有する部材固定用ブラケットの取付方法であって、
前記部材固定用ブラケットの貫通穴に請求項2に記載の開脚釘の前記第1、第2の釘体を一体的に挿通し、
請求項4に記載の打ち込み治具の前記穴部に前記第2の釘体の頭部を挿入し且つ前記当接部に前記第1の釘体の頭部を当接させて前記打ち込み部を打ち込んで前記第1の釘体を先行して前記対象物に打設して前記部材固定用ブラケットの当接面が前記対象物に当接した状態で該第1の釘体の頭部を前記部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部に係止した後、
前記打ち込み治具を取り外して前記第2の頭部を打ち込んで、前記第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により前記第2の釘体の進行方向を変更して先端を開脚させ、前記第2の釘体の頭部を前記部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部に係止して前記部材固定用ブラケットを前記対象物に固定することを特徴とする部材固定用ブラケットの取付方法。
【請求項7】
貫通穴と対象物表面に当接する当接面とを有する部材固定用ブラケットの取付構造であって、
前記部材固定用ブラケットの貫通穴に請求項1に記載の開脚釘の前記第1、第2の釘体及び前記パイプが一体的に挿通されてなり、且つ前記第1、第2の釘体と前記パイプとが前記対象物に打設されてなると共に、前記第2の釘体の先端は前記第1の釘体の先端部に設けられた開脚制御部により進行方向が変更されて開脚されており、前記部材固定用ブラケットの当接面は前記対象物に当接すると共に前記第1、第2の釘体の頭部が前記部材固定用ブラケットの貫通穴周縁部に係止されて前記部材固定用ブラケットが前記対象物に固定されてなることを特徴とする部材固定用ブラケットの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−113667(P2007−113667A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305127(P2005−305127)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】