説明

開閉器

【課題】消弧性能を向上させて大電流域だけでなく小電流域のアークを安定して消弧することができる開閉器を提供する。
【解決手段】可動電極21側の軸着部45には駆動リンク24とともに可動送風部材201をその基端部を中心として回動可能に設けるようにした。開路時、可動電極21が所定の開放位置に達して駆動リンク24の駆動が停止したとき、慣性力により可動送風部材201はその基端部を中心として駆動リンク24の移動方向へ回転する。その際に消弧装置17側への気体流が発生し、その気体流の風圧によりアークIの磁性板110の奥方への移動が促進される。これはアーク電流のエネルギー不足により磁性板110に発生する電磁力が弱い微少電流域のアークIの遮断時に特に有効である。その結果、微小電流域のアークIの安定化が図られ、遮断性能を安定させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開路時、固定電極と可動電極との間に発生するアークを消弧する消弧装置を備えた開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本出願人は特許文献1に示されるような消弧装置を提案している。即ち、この消弧装置は磁性板通路を有する複数の磁性板と、消弧部材通路を有する複数の板状の消弧部材とを備えている。各磁性板及び各消弧部材は、それぞれ可動電極の移動方向に所定の間隔をおいて交互に配置されている。また、前記磁性板において、前記磁性板通路の最奥部には当該通路よりも幅が狭い切欠溝が形成されている。開路時、固定電極から離間した可動電極は磁性板通路及び消弧部材通路を順次通過する。この際、固定電極と可動電極との間に発生したアークは前記磁性板に発生した電磁力により奥方へ駆動され、前記切欠溝に吸引固定(拘束)される。特に小電流域のアークを消弧装置内に拘束することにより、当該アークと消弧部材との接触時間が確保される。この結果、アーク熱により消弧部材から発生する消弧性分解ガスの発生が促され、小電流域におけるアークの消弧性能の向上が図られる。
【特許文献1】特開2004−152703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の消弧装置においては、大電流域から小電流域にかけての幅広い領域での遮断性能の確保が望まれている。ところが、励磁電流及び充電電流等の30アンペア以下の小電流域におけるアーク、特に5アンペア以下の微小電流域におけるアークについては、アーク電流のエネルギー不足により各磁性板に発生する電磁力が弱く、磁性板の磁性板通路及び切欠溝の奥方への駆動力が十分に得られなかった。このため、特に微小電流域のアークは消弧装置内に十分に拘束されず、当該アークを積極的に前記消弧部材に接触させることが困難であった。また、エネルギー不足により開路時に発生する熱も少なく消弧部材からの消弧性分解ガスの発生量も少ない。このため、励磁電流及び充電電流等の30アンペア以下の小電流域におけるアーク、特に5アンペア以下の微小電流域におけるアークの遮断時間(アーク時間)の短縮化については満足の得られるものではなく、大電流域から小電流域にかけての幅広い領域での遮断性能の安定性の点についても不十分であった。
【0004】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、消弧性能を向上させて大電流域だけでなく小電流域のアークを安定して消弧することができる開閉器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、本体ケース内に絶縁性支持部材を介して固定された固定電極と、前記本体ケース内に前記とは別の絶縁性支持部材を介して回動可能に設けられた可動電極と、当該可動電極に作動連結された駆動リンクとを備え、当該駆動リンクの駆動により前記可動電極が前記固定電極に対して接離するようにした開閉器において、前記固定電極には、可動電極を通過可能とした切欠通路を有する複数枚の磁性板を可動電極の移動方向に所定の間隔をおいて配置して開路時には固定電極から離間した可動電極を前記切欠通路を順次通過させるようにした消弧装置を設け、前記可動電極には、開路時の可動電極の動作に連動して可動電極と固定電極との間に発生したアークを磁性板の切欠通路内へ押込むための気体流を発生させる可動送風部材をその基端部を中心として回動可能に設けるようにしたことをその要旨とする。
【0006】
開路時、可動電極が固定電極から離間すると、両電極間にはアークが発生する。このアークの周囲には磁性板の存在により片寄った磁束分布が発生し、アークは磁性板の切欠通路の奥の方へ駆動される。このため、アークは引き伸ばされると共に各磁性体により分断され、陰極降下電圧が高められる。また、アーク熱が磁性体に伝導することによりアークが冷却される。この結果、アーク電圧が高められて消弧が完了する。こうした磁性板による消弧メカニズムの観点からアークが磁性板の切欠通路の奥方へ十分に引き込まれるようにする必要がある。しかし、小電流、特に微少電流域のアークは当該アーク電流のエネルギー不足により磁性板に発生する電磁力が弱い。従って、特に微少電流域のアークについては磁性板の切欠通路の奥方へ十分に引き込まれないことが懸念されていた。
【0007】
その点、本発明によれば、開路時、可動電極の駆動が停止したとき、慣性力により可動送風部材はその基端部を中心として可動電極の移動方向へ回転する。その際に消弧装置側への気体流が発生し、その気体流の風圧によりアーク発生空間の空気が撹拌されると共にアークの磁性板の奥方への移動が促進される。これはアーク電流のエネルギー不足により磁性板に発生する電磁力が弱い微少電流域のアークの遮断時に特に有効である。即ち、前記風圧により微小電流域のアークの磁性板の切欠通路内への駆動力が補われる。その結果、微小電流域のアークの安定化が図られ、遮断性能を安定させることができる。従って、消弧性能が向上し、大電流域だけでなく小電流域及び微少電流域のアークを安定して消弧することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、本体ケース内に絶縁性支持部材を介して固定された固定電極と、前記本体ケース内に前記とは別の絶縁性支持部材を介して回動可能に設けられた可動電極と、当該可動電極に作動連結された駆動リンクとを備え、当該駆動リンクの駆動により前記可動電極が前記固定電極に対して接離するようにした開閉器において、前記固定電極には、可動電極を通過可能とした切欠通路を有する複数枚の磁性板を可動電極の移動方向に所定の間隔をおいて配置して開路時には固定電極から離間した可動電極を前記切欠通路を順次通過させるようにした消弧装置を設け、前記駆動リンクには、開路時の駆動リンクの動作に連動して可動電極と固定電極との間に発生したアークを磁性板の切欠通路内へ押込むための気体流を発生させる可動送風部材をその基端部を中心として回動可能に設けるようにしたことをその要旨とする。
【0009】
本発明によれば、可動送風部材は駆動リンクと連動する。開路時に駆動リンクの駆動が停止したときには可動送風部材は慣性力により駆動リンクの移動方向へ回転し、その回転により消弧装置側への気体流が発生する。その気体流の風圧によりアーク発生空間の空気が撹拌されると共にアークの磁性板の奥方への移動が促進される。このため、消弧性能が向上し、大電流域だけでなく小電流域及び微少電流域のアークを安定して消弧することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の開閉器において、前記駆動リンクは軸を介して可動電極に回動可能に連結し、前記可動送風部材の基端部は前記軸を介して駆動リンクに回動可能に連結するようにしたことをその要旨とする。
【0011】
本発明によれば、駆動リンクを可動電極に回動可能に連結する軸を使用して、可動送風部材は駆動リンクに回動可能に連結される。軸の共用化が図られることにより部品点数の増大が抑制される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の開閉器において、前記可動送風部材は、前記可動送風部材は、可動電極が固定電極に接触する投入位置にある場合には消弧装置の下方を向く第1の位置に保たれ、可動電極の開放動作により消弧装置の切欠通路の開口部側側面に沿うように移動して当該可動電極が固定電極と離間する開放位置に達して停止した場合には消弧装置の下部を向く第2の位置に至るとともに慣性力により自身の基端部を中心として消弧装置の上方を向く第3の位置へ変位するように設けたことをその要旨とする。
【0013】
本発明によれば、可動電極の開放動作に連動して送風部材は消弧装置の切欠通路の開口部側の側面に沿うように変位する。可動送風部材の動作により発生した気体流は、消弧装置の下段部から上方までの領域において吹き付けられる。従って、アークは消弧装置の下段部から上段部の全域にわたって磁性板の切欠通路内に押し込まれ、当該アークを消弧装置の奥方へ円滑に移動させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の開閉器において、前記駆動リンクにおける可動送風部材よりも下側には、開路時に当該駆動リンクの動作に連動して可動電極と固定電極との間に発生したアークを磁性板の切欠通路内へ押込むための気体流を発生させる固定送風部材を設けるようにしたことをその要旨とする。
【0015】
本発明によれば、駆動リンクの駆動による可動電極の開放動作に伴って固定電極と可動電極との間に発生したアークは、駆動リンクに設けられた固定送風部材の移動に伴って発生する風圧により、消弧装置の磁性板に形成された切欠通路の奥方への誘導が促進される。アークは前記可動送風部材の動作により発生する風圧と固定送風部材の動作により発生する風圧との相乗効果により磁性板の切欠通路の奥方へ円滑に駆動する。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の開閉器において、前記可動送風部材には柔軟性を持たせて開路時における駆動リンクの動作に連動して当該可動送風部材の移動方向と反対側に撓むようにしたことをその要旨とする。
【0017】
本発明によれば、可動送風部材は開路時における駆動リンクの動作に連動して当該可動送風部材の移動方向と反対側に撓む。可動送風部材の移動が停止したときには、撓み方向とは反対方向へ弾性復帰し、その際にも電極間に発生したアークを磁性板の切欠通路内へ押し込む方向の風圧が発生する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、大電流域から小電流域にかけての幅広い領域でのアークが送風部材の送風作用により磁性板側に押しやられることにより消弧性能が向上し大電流域だけでなく小電流域のアークを安定して消弧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をグリッド式の消弧装置を備えた気中開閉器に具体化した一実施形態を図1〜図20に基づいて説明する。
図1に示すように、開閉器11の本体ケース12の互いに対向する両側壁12a,12bには電源側ブッシング13及び負荷側ブッシング14が3相の相毎(図1においては1相分のみ示す。)に互いに対向するように貫通支持されている。電源側ブッシング13の内端部には棒状の固定電極15が突設されており、同固定電極15の先端上部には耐弧メタル16が固定されている。また、電源側ブッシング13の内端(正確には、固定電極15の先端側)には消弧装置17が固定用金具18を介して固定されている。この消弧装置17については後に詳述する。負荷側ブッシング14の内端部には導電棒19が突設されており、同導電棒19の上部には支持部材19aが固定されている。当該支持部材19aには軸20を介して可動電極21の基端部が回動可能に支持されている。
【0020】
可動電極21は例えば図2に二点鎖線で示されるように、一対の平板状の接触刃21a,21bを備えている。図1に併せ示されるように、両接触刃21a,21b間には支持部材41を介して絶縁バリヤ42が固定されている。具体的には、支持部材41及び絶縁バリヤ42は例えばポリブチレンテレフタレート及びナイロン等の絶縁耐力の大きな合成樹脂材料により一体形成されている。支持部材41は両接触刃21a,21bの長手方向における中央付近及び先端寄りにおいてそれぞれ連結ピン43,44により連結されており、両接触刃21a,21bと一体的に移動可能とされている。この支持部材41の下部は両接触刃21a,21b間から外方へ若干はみ出しており、当該支持部材41の下端部に前記絶縁バリヤ42が設けられている。絶縁バリヤ42は両接触刃21a,21bの腹側の側縁形状(円弧状)に沿う波板状に形成されており、当該絶縁バリヤ42の腹側(両接触刃21a,21bと反対側)の側面中央には軸着部45が突設されている。
【0021】
一方、図1に示すように、本体ケース12内の下部には、複数のリンク等からなるリンク機構(図示略)を介して本体ケース12の外部の操作ハンドル(図示略)に作動連結された回動軸22が設けられており、当該回動軸22にはレバー23が一体回動可能に固定されている。レバー23の先端には駆動リンク24の一端が回動可能に連結されており、当該駆動リンク24の他端はピン46により前記絶縁バリヤ42の軸着部45に回動可能に連結されている。従って、前記操作ハンドルが操作されると、可動電極21は前記リンク機構、回動軸22、レバー23及び駆動リンク24を介して軸20を中心に図1に二点鎖線で示す投入位置と同じく実線で示す開放位置との間を移動する。前記駆動リンク24については後に詳述する。可動電極21が前記開放位置にあるとき当該可動電極21の腹側の側縁(特に連結ピン44)と消弧装置17(正確には後述する磁性板110)との間の絶縁が確保される。
【0022】
<消弧装置>
次に、前記消弧装置17について詳細に説明する。図3に示すように、消弧装置17は、磁性体により板状に形成された複数の磁性板110と、絶縁性を有すると共に熱に曝されることにより分解して消弧性分解ガスを発生する合成樹脂材料により板状に形成された複数の消弧部材120とを備えている。各磁性板110及び各消弧部材120は可動電極21の移動方向に所定の間隔をおいて交互に配置されている。各磁性板110及び各消弧部材120はそれぞれ一対の支持部材130,130間に配置され一括して支持されている。以下、支持部材130、磁性板110及び消弧部材120の順に説明する。
【0023】
<支持部材>
まず、支持部材130について説明する。図4及び図5に示すように、支持部材130は絶縁性を有する合成樹脂材料又は無機材料により一体形成されており、固定電極15に固定用金具18を介して固定される基部131と同基部131に対して斜状をなす支持部132とを備えている。図5に示すように、支持部132には、2つを1組とする複数組(本実施形態では8組)の磁性板用支持孔133が同支持部132の長手方向において所定間隔毎に形成されている。また、支持部132において、各組の磁性板用支持孔133の上部にはそれぞれ消弧部材用支持孔134が形成されている。各消弧部材用支持孔134と各組の磁性板用支持孔133とは互いに連通している。そして、図3に併せ示されるように、消弧部材120及び磁性板110の支持部132への組付け作業時において、後述する消弧部材120の係合突部140を消弧部材用支持孔134へ内側から挿入することにより、同時に磁性板110の突起113を支持部材130に固定可能となっている。
【0024】
図3に示されるように、基部131の上面には傾斜面131aが形成されている。この傾斜面131aには最下層の消弧部材120の側縁部(後述する張出部129)の下面が密接している。また支持部132の後ろ側側面には最下層の消弧部材120の前側側縁部(後述する張出部129の前側側縁部)が密接している。これにより、アークIに曝されることによって消弧部材120から発生する消弧性分解ガスの消弧装置17内(最下層の消弧部材120と傾斜面131aとの間)からの漏洩が抑制される。
【0025】
また、図6に示すように、基部131の内側面には、絶縁壁135が形成されている。絶縁壁135は両支持部材130,130間に支持された磁性板110及び消弧部材120と平行をなすように形成されている。図7に併せ示すように、絶縁壁135は両支持部材130,130に支持された消弧部材120のうち最下層の消弧部材120の側縁部(後述する張出部129)の一部に重なるように設けられている。これにより、消弧性分解ガスの消弧装置17の両支持部材130,130側への外部漏洩が抑制される。さらに、図3に示されるように、両支持部材130,130はそれぞれ消弧装置17の前面側(即ち、後述する可動電極通過部αの開口側)に配置されている。両支持部材130,130が消弧装置17の後面から遠ざかった位置に配置されることにより、当該消弧装置17の後方へ放出された消弧性分解ガスの回り込みによる両支持部材130,130の汚損が抑制される。
【0026】
<磁性板>
次に、磁性板110について説明する。図9に示すように、磁性板110は磁性体によりW字板状に形成されている。本実施形態では、磁性体として、フェライト系ステンレス鋼鋼材を使用している。フェライト系ステンレス鋼鋼材は素材自体に防錆効果を有すると共に電磁力の発生に優れる。磁性板110はフェライト系ステンレス鋼鋼材製の板材をプレスにより打ち抜き、この後、焼鈍することにより形成されている。焼鈍とは、鋼を所定温度に加熱した後、ゆっくり冷却することにより、プレス加工時に加えられた磁性板110の残留応力による歪みを除去することである。
【0027】
磁性板110の前端縁(負荷側ブッシング14側の側縁)には接触刃21a,21bをそれぞれ通過可能とした一対の磁性板通路111a,111bが所定間隔をおいて形成されている。両磁性板通路111a,111bはそれぞれ後端側(奥)へ向うほど幅(図9における左右方向の長さ)が小さくなるテーパ状に切欠形成されている。磁性板110に発生する電磁力吸引力増大の観点から磁性板通路111a,111bの幅は極力狭くすることが望ましい。
【0028】
両磁性板通路111a,111bの最奥部にはそれぞれ切欠溝112a,112bが形成されている。両切欠溝112a,112bの幅はそれぞれ磁性板通路111a,111bの幅よりも小さくされている。両切欠溝112a,112bはそれぞれ磁性板通路111a,111bと同じ方向に、即ち奥方(磁性板110の後端側)へ延出されている。両磁性板通路111a,111bの最奥部と両切欠溝112a,112bとは滑らかに連続している。両切欠溝112a,112bは幅を一定とした平行溝とされている。
【0029】
磁性板110の両側縁の前端寄りには、それぞれ一対の突起113,113が形成されている。図6に併せ示されるように、両突起113,113は両支持部材130,130の磁性板用支持孔133にそれぞれ内側から係合している。この状態で、突起113の支持部材130外側面からの突出部分を外方からたがね等で打ち込んで塑性変形させることにより、当該突起113の磁性板用支持孔133からの抜け止めが図られる。
【0030】
<消弧部材>
次に、消弧部材120について説明する。図2に示すように、消弧部材120は絶縁性を有し、かつアーク熱により消弧性分解ガスを発生する合成樹脂材料(例えば四フッ化エチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂)によりW字板状に形成されている。従って、消弧部材120はアークとの接触により消弧性分解ガスを発生する。
【0031】
消弧部材120の前端縁(負荷側ブッシング14側の側縁)には接触刃21a,21bをそれぞれ通過可能とした一対の消弧部材通路121a,121bが所定間隔をおいて形成されている。両消弧部材通路121a,121bの最奥部にはそれぞれ奥溝122a,122bが形成されている。奥溝122a,122bは消弧部材通路121a,121bと同様に奥方(即ち、消弧部材120の後端縁側)へ前記切欠溝112a,112bと平行に延びている。また、奥溝122a,122bの幅は消弧部材通路121a,121bの幅よりも小さく、且つ磁性板110の切欠溝112a,112bの幅よりも大きくされている。
【0032】
図10に示すように、消弧部材120の裏面において、消弧部材通路121a,121bの互いに対向する内側縁にはそれぞれアーク接触壁123が突設されている。アーク接触壁123の内面は連続したフラット面123aとされている。アーク接触壁123(厳密には、アーク接触壁123のフラット面123a)は大電流開放時などにおいて当該大電流アークと接触して消弧性分解ガスを発生するアーク接触部材として機能する。
【0033】
図5に併せ示すように、各アーク接触壁123の最奥部にはそれぞれ消弧性分解ガスの開放口123bが形成されている。各開放口123bはそれぞれ同列になるように切欠形成されている。消弧部材120がアークに曝されることにより発生した消弧性分解ガスは各開放口123bを通って側方へ逃がされる。
【0034】
また、図10に示されるように、消弧部材120の裏面において、奥溝122a,122bの互いに対向する内側縁にはそれぞれブロック状の肉厚壁124が形成されている。各肉厚壁124の前端側側面(消弧部材通路121a,121b側の側面)は消弧部材通路121a,121bに面しており、消弧部材通路121a,121bの中心軸に対して直交するように形成されている。この肉厚壁124の前端側側面は、アークの奥方への移動を規制するアーク止壁部124aとして機能する。即ち、両消弧部材通路121a,121bの最奥部にはそれぞれアーク止壁部124aが形成されている。このため、微小電流開放時において当該微小電流域のアークIの奥方(消弧部材120の後端側)への移動は、肉厚壁124の前端側側面であるアーク止壁部124aにより規制される。微小電流域のアークIがアーク止壁部124aの付近に滞留することにより、当該アーク止壁部124aはアーク熱により溶け、消弧性分解ガスを発生する。
【0035】
図5及び図6に示すように、消弧部材120の表面及び裏面において、各アーク接触壁123のうち最も外側に位置する2つのアーク接触壁123と消弧部材120の外側縁との間にはそれぞれ間隔保持部材125が突設されている。間隔保持部材125は消弧部材120の前後方向における全長にわたって形成されている。図3併せ示すように、この間隔保持部材125は、支持部材130,130間において消弧部材120と磁性板110とを交互に積層配置したとき、各磁性板110に当接することにより当該各磁性板110の配置間隔を一定に保持する。
【0036】
また、図8に併せ示すように、間隔保持部材125の消弧部材120の裏面からの突出高さは、アーク接触壁123の消弧部材120の裏面からの突出高さよりも大きくされている。このため、間隔保持部材125は、支持部材130,130間において消弧部材120と磁性板110とを交互に積層配置したとき、アーク接触壁123、消弧部材120の表面及び同じく裏面はそれぞれ磁性板110に接触することはない。そして、アーク接触壁123、消弧部材120の表面及び同じく裏面と磁性板110との間には所定の隙間が形成される。換言すれば、アーク接触壁123と消弧部材120の表面及び裏面とがそれぞれ磁性板110に接触しない程度に間隔保持部材125の消弧部材120の表面及び裏面からの突出高さが設定されている。
【0037】
間隔保持部材125は消弧部材120と磁性板110と交互に積層配置したときに各消弧部材120の両側(図8における左側及び右側)において各磁性板110間を絶縁する絶縁バリヤを兼用する。また、各消弧部材120の間隔保持部材125は、消弧部材120と磁性板110と交互に積層配置したときに各消弧部材120間の両側を閉塞して前方及び後方にそれぞれ開口した空隙Sを形成する。
【0038】
さらに図5及び図10に示すように、消弧部材120の裏面において、アーク接触壁123と間隔保持部材125と消弧部材120の裏面とにより凹部126が形成されている。これにより消弧部材120の側方(消弧部材通路121a,121bの長手方向に対して直交する方向)における沿面距離の増大が図られる。
【0039】
加えて、消弧部材120について説明すると、図10に示すように、消弧部材120の奥溝122a,122bは空隙127a,127bを介して消弧装置17の後方(後端側)へ開口している。消弧部材120において、肉厚壁124の後端側の部位は各磁性板110の上下方向における絶縁を確保するための上下バリヤ部128とされている。図11(a),(b)に併せ示すように、上下バリヤ部128において、アーク接触壁123の後端側には肉厚部128aが形成されており、さらにこの肉厚部128aの後端側には消弧部材120の後端側へ向かうにつれて肉厚が小さくなるテーパ面128bが形成されている。この構成により、アークによる消耗に対処すると共に消弧性分解ガスの後方への円滑な放出が可能となる。
【0040】
そして例えば図6に併せ示されるように、各磁性板110及び各消弧部材120を支持部材130,130間に支持した状態において、各上下バリヤ部128はそれぞれ磁性板110の後端縁から大きく張り出している。これにより、遮断時の消弧性分解ガスを消弧装置17の後方へ円滑に案内可能となっている。また、消弧部材120において肉厚部128aの後端側に設けられたテーパ面128bにより消弧性分解ガスの消弧装置17内への戻りが抑制され、その消弧性分解ガスの戻りに起因して磁性板110間の雰囲気が短絡しやすい雰囲気となることが回避される。
【0041】
さらに、消弧部材120の両側縁において当該両側縁の中央よりも若干前端寄りの部位から後端までの範囲には張出部129が形成されている。即ち、消弧部材120を両支持部材130,130間に支持した状態において当該両支持部材130,130に干渉しないように張出部129の前後方向における長さが設定されている。また、磁性板110及び消弧部材120を両支持部材130,130間に支持した状態において、張出部129が磁性板110の両側縁からそれぞれ突出するように当該張出部129の張出し長さが設定されている。各張出部129により消弧装置17における側部の磁性板110と消弧部材120の積層方向の沿面距離が確保される。
【0042】
一方、消弧部材120の両側縁における前端側にはそれぞれ係合突部140が形成されている。図5に併せ示すように、係合突部140の上面と前記張出部129の上面とはそれぞれほぼ同一平面上に位置するように形成されている。両係合突部140,140はそれぞれ両支持部材130,130の消弧部材用支持孔134に内側から係合している。
【0043】
<磁性板と消弧部材との位置関係>
次に、前述のように構成した磁性板110と消弧部材120とを両支持部材130,130間に一括して支持したときの、当該磁性板110と消弧部材120との位置関係について説明する。図2に示すように、消弧装置17を消弧部材120及び磁性板110の積層方向において平面視したとき、消弧部材120の奥溝122a,122bと磁性板110の切欠溝112a,112bとの位置関係は次のようになっている。即ち、奥溝122a,122b内には磁性板110の切欠溝112a,112bの全体が位置していると共に、当該奥溝122a,122b内の最奥部には磁性板の一部が露出している。また、両消弧部材通路121a,121bの最奥部の内側には磁性板110が露出している。このため、固定電極15と可動電極21との間に発生したアークIはその遮断電流に応じて磁性板110の各露出部位に拘束される。具体的には、大電流域及び小電流域のアークIは両奥溝122a,122b内の最奥部に位置(露出)する磁性板110の後述するアーク拘束部γにおいて拘束される。また、微小電流域のアークIは両消弧部材通路121a,121bの最奥部付近に位置(露出)する磁性板110のアーク固定部150に拘束される。
【0044】
ここで図2に示されるように、本実施形態において、磁性板通路111a,111b及び消弧部材通路121a,121bは可動電極通過部αを構成する。可動電極通過部αより幅を狭くした消弧部材120の奥溝122a,122b及び磁性板110の切欠溝112a,112bはアーク誘導部βを構成する。磁性板110の切欠溝112a,112bの最奥部の平板部のうち消弧部材120の奥溝122a,122b内に露出した部位はアーク拘束部γを構成する。
【0045】
<駆動リンク>
次に、前記駆動リンク24について詳細に説明する。図12に示すように、駆動リンク24は、例えばポリブチレンテレフタレート及びナイロン等の絶縁耐力の大きな合成樹脂材料により角柱状に形成されており、当該駆動リンク24の上端部は側方へ湾曲するように形成されている。駆動リンク24の外周面において、固定電極15側の面及び導電棒19側の面にはそれぞれ複数の凹部31が当該駆動リンク24の軸方向へ所定間隔毎に形成されている。これにより、駆動リンク24の可動電極21側の連結部とレバー23側の連結部との間の沿面距離が確保される。
【0046】
図13に併せ示すように、駆動リンク24の外周面において、各凹部31が形成された面に対して直交する2つの面には、それぞれ四角板状の同相間バリヤ32が異相間方向(図13における左右方向)に張り出すように形成されている。また、駆動リンク24及び両同相間バリヤ32,32の固定電極15側の側面において、駆動リンク24と可動電極21との連結部寄りには四角板状の固定送風部材33が両同相間バリヤ32,32の外側縁間の全長にわたって突設されている。固定送風部材33は両同相間バリヤ32,32に対して直交するように形成されている。
【0047】
図1に二点鎖線で示すように、開閉器11の投入状態(閉路状態)において、同相間バリヤ32及び固定送風部材33はそれぞれ消弧装置17の下方に位置する。また、図1に実線で示すように、開閉器11の開放状態(開路状態)において、同相間バリヤ32は固定電極15と導電棒19との間に位置すると共に、固定送風部材33は消弧装置17の中央部に対応する。このように、駆動リンク24の長さ及び同相間バリヤ32に対する固定送風部材33の位置等が設定されている。そして固定送風部材33が図1に二点鎖線で示す投入位置から同じく実線で示す開放位置に移動することにより、消弧装置17側への風が発生する。この風圧により開路時において固定電極15と可動電極21との間に発生するアークは消弧装置17の奥方に押しやられる。
【0048】
<可動送風部材>
図12及び図14に示すように、前記絶縁バリヤ42の軸着部45には前記ピン46により可動送風部材201がその基端部を支点として回動可能に支持されている。図15(a),(b)に併せ示すように、可動送風部材201は例えばポリブチレンテレフタレート及びナイロン等の絶縁耐力の大きな合成樹脂材料により板状に形成されている。可動送風部材201の基端縁の中央には絶縁バリヤ42の軸着部45に連結された駆動リンク24を介在可能とした切欠201aが形成されている。また、可動送風部材201の基端側の2つの隅角部には、それぞれ基端に向かうにつれて幅狭となるようにテーパ201bが形成されている。さらに可動送風部材201の下面において切欠201aの開口端部の近傍には一対の円形状の軸受け202が互いに対向するように設けられている。図14に示されるように、可動送風部材201は両軸受け202が下方を向くように且つ両軸受け202,202間に駆動リンク24のレバー23に対する軸着側と反対側の端部(上端部)を介在させた状態に配置されている。そしてこの状態で前記ピン46が一方の軸受け202側から挿通されることにより可動送風部材201は駆動リンク24と共に軸着部45に回動可能に支持されている。
【0049】
図16に示すように、可動電極21が前記投入位置に保持されている投入状態(閉路状態)において、可動送風部材201は駆動リンク24(上部の湾曲部)と絶縁バリヤ42とにより挟まれると共に消弧装置17の下方を向く第1の位置P1に保たれる。
【0050】
図17に示すように、可動電極21を前記投入位置から前記開放位置へ移動させるために駆動リンク24が上方へ駆動されると、可動送風部材201は当該駆動リンク24と一体的に上方へ移動する。この際、可動送風部材201の下方への移動は当該可動送風部材201が駆動リンク24に当接することにより規制される。そして可動電極21が前記開放位置に達して開極が完了したとき、可動送風部材201は消弧装置17の下部を向く第2の位置P2にある。
【0051】
また、図18に示すように、可動電極21が前記開放位置に達して駆動リンク24が停止したとき、可動送風部材201は慣性力によりピン46を支点として上方へ回転する。そして可動送風部材201は絶縁バリヤ42に当接すると共に消弧装置17の上方を向く第3の位置P3に達した後、自重(重力)によりピン46を支点として下方へ回転する。そして図19に示すように、可動送風部材201の下方への移動は当該可動送風部材201が駆動リンク24(上部の湾曲部)に当接することにより規制され、第2の位置P2に保たれる。
【0052】
このように第1の位置P1〜第3の位置P3を採り得るように可動送風部材201は設けられている。そして可動送風部材201が図17に示される第2の位置P2から図18に示される第3の位置P3に移動することにより、消弧装置17側への風が発生する。この風圧により開路時において固定電極15と可動電極21との間に発生するアークは消弧装置17の奥方に押しやられる。
【0053】
<実施形態の作用>
次に、前述のように構成された開閉器の作用を説明する。まず、開閉器11の開路動作により固定電極15と可動電極21との間にアークが発生してから当該アークが消弧されるまでの概略について説明する。
【0054】
図1に二点鎖線で示す投入状態において、図示しない前記操作ハンドルが開路操作されると、回動軸22を中心としてレバー23が時計方向へ回動する。これに伴って、駆動リンク24は上方へ移動され、可動電極21が軸20を中心に時計方向へ回動する。可動電極21が固定電極15から離間すると、当該固定電極15と可動電極21との間、即ち固定電極15と両接触刃21a,21bとの間にはそれぞれアークI(図9参照)が発生する。
【0055】
図9に示されるように、このアーク柱の周囲には磁性板110の存在により片寄った磁束分布が発生する。右ねじの法則及びフレミング左手の法則に基づいて磁性板110に発生する電磁力により、アークIは常に磁性板110の奥の方(図9における矢印方向)へ駆動され、両磁性板通路111a,111b(図2参照)の最奥部を経て切欠溝112a,112bの奥に集中し固定される。この際、固定送風部材33が駆動リンク24とともに上方へ移動することにより発生する風圧、及び可動電極21が開放位置に達したときに可動送風部材201が第2の位置P2から第3の位置P3へ移動することにより発生する風圧により、アークIの磁性板110の奥方への移動が促進される。そしてアークIは切欠溝112a,112bの最奥部に集中して固定された状態で引き伸ばされると共に各磁性板110により分断され、陽極・陰極降下及び冷却等が有効に作用して、アーク電圧が急激に高められる。可動電極21が図1に実線で示す開放位置まで移動すると、アークは完全に消弧され開路動作が終了となる。閉路時には前述した開路時とは逆の動作が行われる。
【0056】
このような開路時に固定電極15と可動電極21との間に発生するアークIの挙動は遮断しようとする電流の大きさにより異なる。本実施形態では遮断しようとする電流を大電流域、小電流域及び微少電流域に分けてそれらを遮断する際の開閉器11の作用を以下に順に説明する。
【0057】
<1.大電流アークの遮断>
まず、例えば30A(アンペア)を超えるような大電流を遮断する際の開閉器11の作用を説明する。
【0058】
大電流アークはエネルギーが大きく各磁性板110に発生する電磁吸引力も強い。このため、大電流域のアークIはアーク固定部150に固定されることなく、一気に切欠溝112a,112bの奥、ひいては消弧部材120の後方へ駆動される。ここで、固定送風部材33が駆動リンク24とともに上方へ移動することにより発生する風圧、及び可動電極21が開放位置に達したときに慣性力により可動送風部材201が動作することにより発生する風圧によりアークIの後方への駆動が促進される。
【0059】
このとき、磁性板110と消弧部材120とが可動電極21の移動方向に交互に配置されていることにより、アークIは消弧部材120の上下バリヤ部128の上面(表面)及び下面(裏面)に積極的に接触しながら後方へ駆動される。そしてこの際、アーク熱により消弧部材120の上下バリヤ部128の上面、同じく下面及びアーク接触壁123からは消弧性分解ガスが発生し、この消弧性分解ガスにより消弧が促進される。大電流アークは励磁電流及び充電電流等の小電流アークに比べて発生する熱量も多いので、消弧部材120の上面及び下面からの消弧性分解ガス発生量は十分に確保される。また、アーク接触壁123及び肉厚壁124も大電流アークに曝されるのでそれらからも消弧性分解ガスが発生する。
【0060】
消弧部材120は陰性原子の一種であるフッ素を含む合成樹脂(本実施形態では、PFA)により形成されてので、アーク熱により発生した消弧性分解ガスにはアーク中の電子を吸着し易い性質を有する陰性原子の一種であるフッ素原子が含まれている。このフッ素原子がアーク中の電子を吸着することにより消弧性能(電流遮断性能)が高められる。
【0061】
また、磁性板110と消弧部材120とが可動電極21の移動方向に所定の間隔をおいて交互に配置していることにより、各消弧部材120の内面間に炭化物が連続して付着することが防止される。このため、消弧部材120の内面に連続した炭化面が形成されることがなく、消弧性能の劣化が抑制される。さらに、消弧部材120の裏面には凹部126が形成されており、これにより消弧部材120の側方における沿面距離が十分に確保されている。加えて、消弧部材120の側部には張出部129が形成されているので、アークIが各磁性板110の側方へ回り込むことが抑制され、各磁性板110の両側部間でのアークIの発生が防止される。
【0062】
前述したように、消弧部材通路121a,121b内で発生した消弧性分解ガス(即ち、アーク接触壁123から発生した消弧性分解ガス)及び肉厚壁124から発生した消弧性分解ガスはアーク接触壁123及び上下バリヤ部128の上下両面に案内されながら消弧部材120の後方へ導出される。特に大電流開放時においては、アークIの発生に伴って消弧性分解ガスは主に磁性板110及び消弧部材120の後方へ流れる。この消弧性分解ガスによりアークIが磁性板110及び消弧部材120の後方へ吹き飛ばされ、当該アークIがさらに引き伸ばされる。即ち、磁性板110及び消弧部材120の後方へ流れる消弧性分解ガスによるアーク吹き飛ばし効果により、消弧が促進される。尚、アーク接触壁123の外面はアーク発生部位の陰になるので、消弧性分解ガスに含まれる金属蒸気等が付着しにくくなっている。このため、消弧部材120の上下両面においてアーク接触壁123よりも外側の部位である両側縁部に連続した汚損面が形成されることがなく、各磁性板110間の沿面距離が確保される。
【0063】
図10に矢印で示すように、消弧部材120の後方へ導出されてきた消弧性分解ガスは大きく開口した前記空隙S(図8参照)を介して消弧装置17の後方へ導かれる。消弧性分解ガスは、消弧部材120の後方だけでなくアーク接触壁123の奥側に形成された開放口123bから側方へ抜け、この後後方に排出される。このため、消弧性分解ガスの排出が円滑に行われ、当該消弧性分解ガスが滞留することなく消弧装置17の後方へ円滑に抜けると共に、消弧装置17の内部には新しい雰囲気ガス(空気)が導入される。
【0064】
この結果、消弧装置17の奥溝122a,122bの後方における雰囲気の絶縁抵抗が高まり消弧に寄与する。さらに、新たに導入された雰囲気ガス(空気)により磁性板110が冷却され、消弧が促進される。消弧性能を一旦発揮した消弧性分解ガスは金属蒸気や遊離炭素を含んでおり再点弧の原因となるものの、消弧性分解ガスは速やかに磁性板110及び消弧部材120の後方へ導出される。そして、消弧装置17の内部の雰囲気が新しい雰囲気ガス(空気)に入れ替わることにより絶縁回復が図られ、再点弧が防止される。
【0065】
<2.小電流アークの遮断>
次に、充電電流及び励磁電流等の例えば30A以下の小電流を遮断する際の開閉器11の作用を説明する。
【0066】
図2に示すように、消弧部材通路121a,121b内には磁性板通路111a,111bの全てが露出しているので、アークIは消弧部材120に邪魔されることなく、可動電極21の回動に伴う遠心力と磁性板110に発生する電磁力の吸引作用とにより、磁性板110(厳密には、磁性板通路111a,111b)の奥へ円滑に駆動される。また、切欠溝112a,112bの幅は磁性板通路111a,111bの幅よりもいっそう小さくされているので、切欠溝112a,112bには磁性板通路111a,111bよりも強力な電磁吸引力が発生し、励磁電流アークや充電電流アークは当該切欠溝112a,112bの奥に吸引される。さらに、固定送風部材33が駆動リンク24とともに上方へ移動することにより発生する風圧、及び可動電極21が開放位置に達したときに慣性力により可動送風部材201が動作することにより発生する風圧により小電流域のアークIは磁性板110の切欠溝112a,112bの奥方への駆動が促進される。
【0067】
小電流域のアークIのエネルギーは大電流アークエネルギーより少なく、遮断時における消弧性分解ガス発生量は大電流開放時に比べて低下する。しかし、この小電流域のアークIは前記アーク誘導部β及び前記風圧により消弧装置17の最奥部に位置するアーク拘束部γに速やかに移行され、当該アーク拘束部γにおいて固定される。即ち、当該アーク拘束部γはアークスポットとなる。
【0068】
小電流域のアークIが、アーク拘束部γの周囲に位置する消弧部材120の肉厚壁124(図10参照)及び肉厚部128a(図11(a)参照)にそれぞれ接触することにより、当該肉厚壁124及び肉厚部128aからの消弧性分解ガスの放出が円滑に行われる。このアーク拘束部γで発生した消弧性分解ガスがアーク誘導部βで発生した消弧性分解ガスに加わることにより、消弧部材120の奥溝122a,122b内の消弧性分解ガス圧力が高められる。この圧力の高められた消弧性分解ガスに小電流域のアークIが接触することにより、当該アークIは消弧される。
【0069】
<3.微小電流アークの遮断>
次に、例えば小電流域において、5A以下の微小電流を遮断する際の開閉器11の作用を説明する。
【0070】
微小電流アークはエネルギーが非常に少なく、各磁性板110に発生する電磁力も弱い。このため、遮断要素として、微小電流アークに見合った消弧性分解ガスの安定した発生が必要となる。微小電流アークは、可動電極の回動に伴う遠心力と、少ないながらも磁性板110に発生する磁束とにより磁性板110(厳密には、切欠溝112a,112b)の奥へ円滑に駆動される。この際、駆動リンク24の駆動に伴う固定送風部材33の開放方向への移動により発生する風圧及び可動送風部材201が開極時の衝撃によりピン46を支点として上方へ円弧状動作することにより発生する風圧により、微小電流域のアークIの消弧装置17(可動電極通過部α)の奥方への駆動が促進される。
【0071】
即ち、可動電極21を図16に示される投入位置から図17に示される開放位置へ移動させるために駆動リンク24が上方へ駆動されたとき、固定送風部材33及び可動送風部材201はそれぞれ当該駆動リンク24とともに上方へ移動する。固定送風部材33は図16に示される消弧装置17の下方に対応する位置から図17に示される消弧装置17の中央よりも若干下部側に対応する位置まで移動する。その固定送風部材33の移動に伴って発生した風(雰囲気ガス流、即ち空気流)は消弧装置17の中央よりも下方の領域に吹き付けられ、当該風圧によりアークIは主にその下部側において消弧装置17の奥方への移動が促進される。図17に示されるようにアークIはその下部(固定電極15側)においては消弧装置17内に若干入り込んでいるものの、消弧装置17の中央付近から外部に出て可動電極21の先端部に至っている。
【0072】
可動電極21が前記開放位置に達して駆動リンク24が停止したとき、可動送風部材201は慣性力によりピン46を中心として上方へ回転する。具体的には、可動送風部材201は図17に示される消弧装置17の中段部よりも若干下段部側を向く第2の位置P2から図18に示される消弧装置17の上方を向く第3の位置P3へ移動する。この可動送風部材201の移動(円弧運動)により発生した風は消弧装置17の中段部から消弧装置17の上方までの領域に吹き付けられ、当該風圧により、消弧装置17の中段部から消弧装置17の上方までの領域に対応するアークIの消弧装置17の奥方への移動が促進される。図18に示されるように、アークIは消弧装置17の中段部に対応する部位を境に消弧装置17の奥方に入り込むように大きく湾曲し、消弧装置17の上部から外部に出て可動電極21の先端部に至っている。消弧装置17の中段部から可動電極21の先端部までのアークIの形状は可動電極21側に開口するC字状をなしている。
【0073】
アークIの消弧装置17の上段部に対応する部位が当該消弧装置17の奥方へ大きく入り込むのにつられて、アークIの消弧装置17の中段部から下段部に対応する部位の消弧装置17の奥方への移動がいっそう促進される。この微小電流域のアークIはアーク止壁部124aにより消弧装置17の奥方への移動が規制される。そして図19に示されるように微少電流域のアークIは消弧装置17の上段部から下段部へ向かって順次消弧性分解ガスの発生部位、即ち磁性板110のアーク固定部150に拘束(固定)される。最終的に微少電流域のアークIは消弧装置17の上段部から下段部までの全段において磁性板110のアーク固定部150に拘束される。
【0074】
このため、消弧部材通路121a,121bの最奥部(アーク固定部150の周辺)におけるアーク固定時間が確保される。この結果、微小電流域のアークIとアーク止壁部124aとの接触時間が確保され、エネルギーの少ない微小電流アークであっても当該アーク止壁部124aから消弧性分解ガスが安定して発生する。微少電流域のアークIは消弧装置17の全段にわたってアーク固定部150に拘束されることにより効果的に消弧性分解ガスに曝され、図20に示されるように消弧される。前述したように消弧性分解ガスは安定して発生するので開閉器11の遮断特性も安定する。
【0075】
またこれらの消弧性分解ガスは、消弧部材120の奥溝122a,122b内に滞留することはなく、アーク接触壁123の奥側に形成された開放口123bから速やかに側方へ抜け、そして消弧装置17の後方から外部に排出される(図10参照)。このため、金属蒸気等を含んだ古い消弧性分解ガス等が消弧部材通路121a,121b及び奥溝122a,122bの奥に滞留することが抑制され、常に新鮮な消弧性能の高い消弧性分解ガスが供給される。このため、消弧性分解ガスの入れ替わりがスムーズになり、再点弧が抑制される。尚、可動送風部材201はその上面が絶縁バリヤ42に当接する第3の位置P3に達した後、自重によりピン46を中心として下方へ回転する。そしてこの可動送風部材201の下方への移動は当該可動送風部材201が駆動リンク24の上部湾曲部に当接することにより規制される。
【0076】
以上、詳述したように、本実施形態の消弧装置17によれば、微小電流域のアークIに対する遮断時間(アーク時間)の大幅な短縮が図られる。また、大電流域から小電流域にかけての幅広い領域に対して安定した電磁力の発生が確保され、遮断性能が安定向上する。
【0077】
<実施形態の効果>
従って、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)駆動リンク24には、開路時における当該駆動リンク24の動作に連動して可動電極21と固定電極15との間に発生したアークIを磁性板110の磁性板通路111a,111b内へ押込むための気体流を発生させる可動送風部材201をその基端部を支点として回動可能に設けるようにした。このため、開路時の駆動リンク24の駆動が停止したとき、そのときの衝撃、即ち慣性力により可動送風部材201はその基端部を支点として駆動リンク24の移動方向へ回転する。その際に消弧装置17側への気体流が発生し、その気体流の風圧によりアーク発生空間の空気が撹拌されると共にアークIの磁性板110の奥方への移動が促進される。これはアーク電流のエネルギー不足により磁性板110に発生する電磁力が弱い微少電流域のアークIの遮断時に特に有効である。即ち、この風圧により微小電流域のアークIの可動電極通過部α奥方への駆動力が補われる。その結果、微小電流域のアークIの安定化が図られ、遮断性能を安定させることができる。従って、消弧性能が向上し、大電流域だけでなく小電流域のアークIを安定して消弧することができる。
【0078】
また、アークIとの接触により(即ち、アーク熱により)消弧部材120から発生した消弧性分解ガス、炭化物及び金属蒸気等のガス状生成物(電離気体)は、可動送風部材201により吹き付けられるそれらを含んでいない消弧装置17の外部の雰囲気ガス流(空気流)により当該消弧装置17の後方へ吹き飛ばされる。このため、消弧装置17内に前記電離気体等が滞留することはなく消弧性能が確保される。
【0079】
(2)可動送風部材201の基端部は駆動リンク24の一部に軸着するようにした。このため、可動送風部材201は駆動リンク24と連動する。そして駆動リンク24の駆動が停止したときには可動送風部材201は慣性力により駆動リンク24の移動方向へ回転し、その回転により消弧装置17側への気体流が発生する。従って、開路動作に合わせてタイミングよく可動送風部材201を動作させることができ、消弧性能が確保される。
【0080】
(3)駆動リンク24はピン46を介して可動電極21に回動可能に連結し、当該ピン46を介して可動送風部材201の基端部を駆動リンク24に回動可能に連結するようにした。可動送風部材201及び駆動リンク24を共通のピン46を使用してそれぞれ駆動リンク24及び可動電極21に連結することにより、部品点数の増大を抑制することができる。
【0081】
(4)可動送風部材201は、可動電極21が固定電極15に接触する閉路位置にある場合には消弧装置17の下方を向く第1の位置P1に保たれるように設けた。また、可動送風部材201は可動電極21の開路動作により消弧装置17の磁性板通路111a,111bの開口部側側面に沿うように上方へ移動して当該可動電極21が固定電極15と離間する開放位置に達した場合には消弧装置17の下段部を向く第2の位置P2に至るように設けた。そしてさらに可動送風部材201は第2の位置P2に達した場合には慣性力により自身の基端部を支点として可動電極21と消弧装置17との間の上方を向く第3の位置P3へ変位するように設けた。このため、可動送風部材201の動作により発生した気体流は、消弧装置17の下段部から消弧装置17の上方までの領域において吹き付けられる。従って、アークI(特に、微少電流域のアークI)を消弧装置17の奥方へ円滑に移動させることができる。また、消弧装置17の上方の領域においては、気体流の吹き付けによりアークIは引き延ばされるとともに吹消される。よって、速やかに消弧することができる。
【0082】
(5)駆動リンク24における可動送風部材201よりも下側には、開路時に当該駆動リンク24の動作に連動して可動電極21と固定電極15との間に発生したアークIを磁性板110の磁性板通路111a,111b内へ押込むための気体流を発生させる固定送風部材33を設けるようにした。この固定送風部材33は駆動リンク24の駆動により消弧装置17の下方を向く位置から消弧装置17の下段部を向く位置までの間を移動する。このため、駆動リンク24の駆動に伴う固定送風部材33の移動により発生した気体流は、消弧装置17の下方から消弧装置17の下段部までの領域に吹き付けられる。従って、可動送風部材201の動作により発生する気体流と固定送風部材33の移動により発生する気体流とにより、消弧装置17の全段にわたって効果的に気体流を吹き付けることができる。アークIは消弧装置17の全段にわたって効果的に奥方へ移動する。
【0083】
(6)駆動リンク24に対して軸着される可動送風部材201の基端部側の幅を同じく先端部側の幅よりも小さくするようにした。即ち、可動送風部材201は四角平板状に形成し、当該可動送風部材201の基端部側の下面には駆動リンク24に対する一対の軸受け202,202を互いに対向するように突設するようにした。そして当該可動送風部材201の両軸受け202,202側の2つの隅角部にはそれぞれ両軸受け202,202に向かうにつれて幅狭となるようにテーパ201b,201bを形成するようにした。このため、可動送風部材201を駆動リンク24に軸着する際、即ちピン46を可動送風部材201の軸受け202,202に挿通する際の、組立作業効率を向上させることができる。本実施形態のように、可動送風部材201の駆動リンク24に対する軸受け202,202を当該可動送風部材201の下面に形成するようにした場合には特に有効である。テーパ201b,201bを形成しないようにした場合、両軸受け202,202は可動送風部材201の裏面側にあることから、ピン46の挿通作業時に指及び工具等が当該可動送風部材201に干渉してピン46の挿通作業が行いにくくなる。ひいては可動送風部材201の組立作業効率の低下を招く。
【0084】
(7)磁性板通路111a,111bの最奥部には当該111a,111bよりも幅を小さくした切欠溝112a,112bを形成することにより開路時に固定電極15と可動電極21との間に発生したアークIを奥方へ誘導するアーク誘導部βを構成した。また、アーク誘導部βの奥方延長線上には当該アーク誘導部βにより誘導されたアークIを固定するアーク拘束部γを設けた。このため、特に小電流遮断時において小電流域のアークIに対して消弧性分解ガスを有効に発生させることができる。ひいては、速やかに小電流の遮断を完了することができる。
【0085】
(8)また、消弧部材通路121a,121bの最奥部には当該消弧部材通路121a,121bと直交するアーク止壁部124aを形成すると共に当該アーク止壁部124aの中央からさらに奥へ向うようにアーク押込み用の奥溝122a,122bを形成した。そして、消弧部材120のアーク止壁部124a周辺において、磁性板110を内側に、即ち消弧部材通路121a,121b内に露出させた。このため、微小電流遮断時において、アークエネルギーの不足に起因して、微小電流域のアークIはアーク止壁部124aにより奥方への駆動が規制されると共に、アーク固定部150に拘束される。このため、微少電流域のアークIは消弧部材120のアーク止壁部124a周辺に滞留し、当該アークIと消弧部材120との接触時間が確保される。消弧性分解ガスの発生が積極的に促され、この消弧性分解ガスにより微小電流域のアークIは消弧される。
【0086】
(9)さらに、アーク接触壁123における奥方には開放口123bを形成し、消弧部材通路121a,121bを側方へ開放させるようにした。このため、アーク止壁部124aの周辺における消弧性分解ガスは開放口123bを通って消弧部材120(消弧装置17)の側方へ円滑に排出される。アーク接触壁123周辺における消弧性分解ガスの滞留が抑制されると共に、新鮮な消弧性分解ガスがアーク接触壁123周辺に供給される。従って、消弧装置17の奥方への駆動力が小さい微小電流域のアークIを速やかに消弧することができる。
【0087】
(10)磁性体として、素材自体に防錆効果を有すると共に電磁力の発生に優れるフェライト系ステンレス鋼鋼材を使用するようにした。このため、磁性板110へのメッキ加工が不要であり、アーク熱によるメッキの剥離問題を考慮する必要もない。ちなみに、一般的に、磁性体としては鉄材が多く使用される。しかし、この場合、錆びに対するメッキ加工が必要である。また、アーク熱によるメッキの剥離問題を考慮する必要がある。
【0088】
<他の実施形態>
尚、前記実施形態は、次のように変更して実施してもよい。
・図21(a)に示すように、可動送風部材201の上面に板状の補助送風部材210をその基端部において回動可能に軸着するようにしてもよい。ここでは、補助送風部材210の基端部は可動送風部材201の上面における先端と基端との中央に軸支されている。このようにすれば、可動電極21の開極動作が完了したとき、慣性により補助送風部材210はその基端部を中心として駆動リンク24の移動方向へ回転し、その回転の際に消弧装置17(図21では図示略)側への気体流が発生する。可動送風部材201の動作により発生する気体流に加えて、補助送風部材210の動作により発生する気体流によりアーク発生空間の空気はいっそう撹拌されると共に、アークIの磁性板110の奥方への移動がいっそう促進される。また図21(b)に示すように、補助送風部材210を可動送風部材201の下面に設けるようにしてもよい。このようにしても、消弧装置17側への送風量の増大が図られる。
【0089】
・可動送風部材201の先端部側の重さが同じく基端部側の重さよりも重くなるように当該可動送風部材201を設けるようにしてもよい。例えば図22に示すように、可動送風部材201の先端部に重り211を設ける。このようにすれば可動電極21の開極動作が完了したときの可動送風部材201の慣性力が増大し、当該可動送風部材201の送風効果を向上させることができる。尚、ここでは重り211を可動送風部材201の下面先端部に設けるようにした場合について説明したが、当該可動送風部材201の上面先端部に重り211を設けるようにしてもよい。
【0090】
・図23に示すように、可動送風部材201には柔軟性を持たせて開路時の駆動リンクの動作に連動して当該可動送風部材201がピン46を中心として回転する際に、当該可動送風部材201の先端側が当該可動送風部材201の移動方向と反対側に撓むようにしてもよい。このようにすれば、駆動リンク24の駆動に伴って撓んだ可動送風部材201は時間差をもって原位置(元の状態)に弾性復帰し、これにより当該可動送風部材201により発生する風圧が高められる。ちなみに、可動送風部材201に柔軟性を持たせるための構成は、例えば可動送風部材201の少なくとも先端側の厚みを薄くしたり、可動送風部材201をゴム材等の弾性体により形成したりする。
【0091】
・本実施形態では、可動送風部材201を合成樹脂材料により一体形成するようにしたが、次のようにしてもよい。即ち、図24(a)に示すように、可動送風部材201はその基端部として駆動リンク24に固定されると共に弾性を有する取付け部材212と、同図に二点鎖線で示すように当該取付け部材212に装着される板状の送風部材本体213とから構成されている。図24(b)に併せ示すように、取付け部材212は送風部材本体213を挿入可能とした開口部212aを有する支持部212bと支持部212bの基端部に突設された複数個の固定部212cとを備えている。支持部212bの中央には駆動リンク24を配置可能とした切欠部212dが形成されており、当該切欠部212dの深さは駆動リンク24の同相間バリヤ32の表面からの突出高さに対応している。そして取付け部材212は各固定部212cを介して例えばボルト及びナットにより同相間バリヤ32に固定されている。ここで、ボルト及びナットは例えば絶縁性を有する合成樹脂材料により形成されたものを使用する。このように構成すれば、図24(c)に示すように、可動電極21(図24(a)〜図24(c)では図示略)の開極動作が完了した際、送風部材本体213の慣性力により取付け部材212が当該可動送風部材201の移動方向と反対側に弾性変形する。そして当該弾性変形した取付け部材212は時間差をもって原位置(元の状態)に弾性復帰し、これにより当該可動送風部材201により発生する風圧が高められる。
【0092】
・本実施形態では、消弧装置17を磁性板110と消弧部材120とを可動電極21の移動方向に交互に配置する構成としたが、次のようにしてもよい。即ち、各消弧部材120を省略し、複数枚の磁性板110を可動電極21の移動方向に一定間隔をおいて配置する構成とする。この場合、各磁性板110の磁性板通路111a,111bは可動電極通過部αを構成し、可動電極21は可動電極通過部αを各磁性板110と直交する方向において通過する。
【0093】
・本実施形態では、可動送風部材201を駆動リンク24とともにピン46を介して絶縁バリヤ42の軸着部45に回動可能に支持するようにしたが、当該ピン46を使用することなく別のピンを介して可動送風部材201を駆動リンク24に回動可能に支持するようにしてもよい。また、可動送風部材201は駆動リンク24の任意の部位に設けるようにしてもよい。例えば駆動リンク24の上端と固定送風部材33との間又は固定送風部材33よりも基端側(レバー23側)に可動送風部材201を回動可能に支持するようにしてもよい。
【0094】
・本実施形態では、可動送風部材201の基端側の2つの角隅部にはそれぞれテーパ201bを形成するようにしたが、テーパでなくてもよい。例えば可動送風部材201の基端に向かうにつれて幅狭となる円弧部を形成してもよい。このようにしても、可動送風部材201の軸受け202にピン46を挿通する際において、当該可動送風部材201と指等との干渉が低減し、当該可動送風部材201の組立作業効率が向上する。
【0095】
・本実施形態では、電源側ブッシング13の内端に固定電極15及び消弧装置17を設けると共に、負荷側ブッシング14の内端に可動電極21を回動可能に支持するようにしたが、次のようにしてもよい。即ち、電源側ブッシング13の内端に可動電極21を回動可能に支持すると共に、負荷側ブッシング14の内端に固定電極15及び消弧装置17を設けるようにしてもよい。
【0096】
・本実施形態では、消弧装置17をダブルブレード型の一点切りの開閉器11に使用したが、シングルブレード型の1点切りの開閉器に使用してもよい。またダブルブレード型又はシングルブレード型の2点切りの開閉器に使用してもよい。この場合、電源側ブッシング13及び負荷側ブッシング14の内端にそれぞれ消弧装置17を配置し、この両消弧装置17,17に対して、2枚又は1枚のZ字形の接触刃からなる可動電極を回転操作して二箇所の固定電極に対して開閉を行う構造が採用される。
【0097】
<他の技術的思想>
(イ)請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の開閉器において、前記可動送風部材の上面又は下面には当該可動送風部材と同方向へ回動する補助送風部材を軸着するようにした開閉器。このようにすれば、駆動リンクの駆動による可動電極の開放動作に伴って固定電極と可動電極との間に発生したアークは、補助送風部材の移動に伴って発生する風圧により消弧装置の磁性板の切欠通路の奥方への誘導がさらに促進される。
【0098】
(ロ)請求項1〜請求項5及び前記(イ)項のうちいずれか一項に記載の開閉器において、前記可動送風部材の先端部側の重さが同じく基端部側の重さよりも重くなるように当該可動送風部材を設けるようにした開閉器。このようにすれば、可動送風部材の慣性力が増大することにより、送風効果を向上させることができる。
【0099】
(ハ)前記(ロ)項に記載の開閉器において、前記可動送風部材の先端部に重りを設けることにより当該可動送風部材の先端部側の重さを同じく基端部側の重さよりも重くなるようにした開閉器。このようにすれば、送風部材の先端側に重りを設けるだけのため、構成が複雑になることはない。
【0100】
(ニ)請求項1〜請求項6及び前記(イ)項〜前記(ハ)項のうちいずれか一項に記載の開閉器において、前記可動送風部材の基端部側の幅を同じく先端部側の幅よりも小さくするようにした開閉器。このようにすれば、可動送風部材をその基端部を中心として回動可能に設ける際、可動送風部材自身が邪魔になりにくく当該可動送風部材の組立作業性を向上させることができる。
【0101】
(ホ)請求項1〜請求項6及び前記(イ)項〜前記(ニ)項のうちいずれか一項に記載の開閉器において、前記可動送風部材は四角平板状に形成し、当該可動送風部材の基端部側の下面には当該可動送風部材を回動可能に支持するための軸受けを設けると共に当該可動送風部材の軸受け側の2つの隅角部にはそれぞれ当該軸受けに向かうにつれて幅狭となるようにテーパを形成するようにした開閉器。このようにすれば、可動送風部材を軸受けを介して回動可能に設ける際、軸受け側の隅角部がテーパとされているので可動送風部材自身が邪魔になりにくく当該可動送風部材の組立作業性を向上させることができる。軸受けを可動送風部材の下面に設けるようにした場合には特に作業性向上効果がある。
【0102】
(ト)請求項2に記載の開閉器において、前記可動送風部材はその基端部として前記駆動リンクに固定されると共に弾性を有する取付け部材と、当該取付け部材に対して装着される送風部材本体とを備え、開路時における駆動リンクの動作に連動して前記送風部材本体は前記取付け部材が弾性変形することにより当該送風部材本体の移動方向と反対側に撓むようにした開閉器。このようにすれば、送風部材は開路時における駆動リンクの動作に連動して当該送風部材の移動方向と反対側に撓む。送風部材の移動が停止したときには、撓み方向とは反対方向へ弾性復帰し、その際にも電極間に発生したアークを磁性板の切欠通路内へ押し込む方向の風圧が発生する。なお、このような撓み動作も回動に含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本実施形態における開閉器の正断面図。
【図2】本実施形態における消弧装置の平面図。
【図3】本実施形態における消弧装置の正面図。
【図4】本実施形態における消弧装置のA矢視図。
【図5】本実施形態における消弧装置の分解斜視図。
【図6】本実施形態における消弧装置の分解斜視図。
【図7】本実施形態における消弧部材の要部下面図。
【図8】本実施形態における消弧装置のB矢視図。
【図9】本実施形態における磁性板の平面図。
【図10】本実施形態における消弧部材の下面図。
【図11】(a)は図10の1−1線断面図、(b)は、同じく2−2線断面図。
【図12】本実施形態における駆動リンクの正面図。
【図13】本実施形態における駆動リンクの側面図。
【図14】本実施形態の駆動リンク、可動送風部材及び絶縁バリヤの組み付け状態を示す斜視図。
【図15】(a)は本実施形態の可動送風部材の下面図、(b)は同じく側面図。
【図16】本実施形態における閉路状態の開閉器の要部正面図。
【図17】本実施形態における開路途中の開閉器の要部正面図。
【図18】本実施形態における開路途中の開閉器の要部正面図。
【図19】本実施形態における開路途中の開閉器の要部正面図。
【図20】本実施形態における開路状態の開閉器の要部正面図。
【図21】(a),(b)はそれぞれ別の実施形態の可動送風部材の概略正面図。
【図22】別の実施形態の可動送風部材の概略正面図。
【図23】別の実施形態の可動送風部材の概略正面図。
【図24】(a)は別の実施形態の可動送風部材の概略斜視図、(b)は別の実施形態の可動送風部材を構成する取付け部材の斜視図、(c)は別の実施形態の可動送風部材の側断面図。
【符号の説明】
【0104】
11…開閉器、12…本体ケース、13…電源側ブッシング(絶縁性支持部材)、14…負荷側ブッシング(絶縁性支持部材)、15…固定電極、17…消弧装置、21…可動電極、24…駆動リンク、33…固定送風部材、46…ピン(軸)、110…磁性板、111a,111b…磁性板通路(切欠通路)、I…アーク、201…可動送風部材、201b…テーパ、202…軸受け、210…補助送風部材、211…重り、212…取付け部材、213…送風部材本体、I…アーク、P1…第1の位置、P2…第2の位置、P3…第3の位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケース内に絶縁性支持部材を介して固定された固定電極と、前記本体ケース内に前記とは別の絶縁性支持部材を介して回動可能に設けられた可動電極と、当該可動電極に作動連結された駆動リンクとを備え、当該駆動リンクの駆動により前記可動電極が前記固定電極に対して接離するようにした開閉器において、
前記固定電極には、可動電極を通過可能とした切欠通路を有する複数枚の磁性板を可動電極の移動方向に所定の間隔をおいて配置して開路時には固定電極から離間した可動電極を前記切欠通路を順次通過させるようにした消弧装置を設け、
前記可動電極には、開路時の可動電極の動作に連動して可動電極と固定電極との間に発生したアークを磁性板の切欠通路内へ押込むための気体流を発生させる可動送風部材をその基端部を中心として回動可能に設けるようにした開閉器。
【請求項2】
本体ケース内に絶縁性支持部材を介して固定された固定電極と、前記本体ケース内に前記とは別の絶縁性支持部材を介して回動可能に設けられた可動電極と、当該可動電極に作動連結された駆動リンクとを備え、当該駆動リンクの駆動により前記可動電極が前記固定電極に対して接離するようにした開閉器において
前記固定電極には、可動電極を通過可能とした切欠通路を有する複数枚の磁性板を可動電極の移動方向に所定の間隔をおいて配置して開路時には固定電極から離間した可動電極を前記切欠通路を順次通過させるようにした消弧装置を設け、
前記駆動リンクには、開路時の駆動リンクの動作に連動して可動電極と固定電極との間に発生したアークを磁性板の切欠通路内へ押込むための気体流を発生させる可動送風部材をその基端部を中心として回動可能に設けるようにした開閉器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の開閉器において、
前記駆動リンクは軸を介して可動電極に回動可能に連結し、
前記可動送風部材の基端部は前記軸を介して駆動リンクに回動可能に連結するようにした開閉器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の開閉器において、
前記可動送風部材は、可動電極が固定電極に接触する投入位置にある場合には消弧装置の下方を向く第1の位置に保たれ、可動電極の開放動作により消弧装置の切欠通路の開口部側側面に沿うように移動して当該可動電極が固定電極と離間する開放位置に達して停止した場合には消弧装置の下部を向く第2の位置に至るとともに慣性力により自身の基端部を中心として消弧装置の上方を向く第3の位置へ変位するように設けた開閉器。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の開閉器において、
前記駆動リンクにおける可動送風部材よりも下側には、開路時に当該駆動リンクの動作に連動して可動電極と固定電極との間に発生したアークを磁性板の切欠通路内へ押込むための気体流を発生させる固定送風部材を設けるようにした開閉器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の開閉器において、前記可動送風部材には柔軟性を持たせて開路時における駆動リンクの動作に連動して当該可動送風部材の移動方向と反対側に撓むようにした開閉器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−80578(P2007−80578A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264069(P2005−264069)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【Fターム(参考)】