説明

開閉器

【課題】可動電極を操作する操作機構部の構造の簡素化と、コストの低減とを図ることができるようにした開閉器を提供する。
【解決手段】回転駆動される駆動軸301と、駆動軸301に後端部が固定された駆動レバー302と、駆動レバー302の先端に一端が連結され、他端が可動電極204に連結されたリンク305とにより可動電極204を操作する操作機構3を、固定電極側ユニット1と可動電極側ユニット2との間に設ける。リンク305を絶縁材料により形成し、駆動レバー302を金属材料により形成する。駆動レバー302に絶縁キャップ310を被せ、固定電極側ユニット1の充電部及び可動電極側ユニット2の充電部と駆動レバー302との間に必要な絶縁耐力を得るように、絶縁キャップ310の長さと絶縁キャップ310の各部の厚みとを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線路等に用いる開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されているように、高圧配電線路や特別高圧配電線路に用いる開閉器は、固定電極側ユニット及び可動電極側ユニットと、両ユニットの間に配置されて可動電極側ユニットを操作する操作機構と、電流を遮断した際に生じるアークを消滅させる消弧部とにより構成される。
【0003】
固定電極側ユニットは、固定電極用の支持碍子と該支持碍子に支持された固定電極とを備えており、可動電極側ユニットは、可動電極用の支持碍子と該支持碍子に支持金具を介して回動自在に支持された可動電極とを備えている。可動電極は、両ユニットの間に配置された操作機構により操作されて、固定電極に接触した状態になる閉路位置と、固定電極から所定の絶縁距離を隔てた状態になる開路位置との間を回動させられる。
【0004】
可動電極を操作する操作機構は、バネや電磁石等を備えた駆動機構により回転駆動される駆動軸と、この駆動軸に後端部が固定された駆動レバーと、駆動レバーの先端に一つのピンを介して一端が連結され、他端が可動電極に他のピンを介して連結されたリンクとを備えていて、駆動軸の一方向への回転に伴って可動電極を閉路位置に回動させ、駆動軸の他方向への回転に伴って可動電極を開路位置に回動させるように構成されている。この種の開閉器では、可動電極側ユニットの充電部(電圧が印加される導電部分)及び固定電極側ユニットの充電部と接地電位部である駆動レバーとの間を絶縁するために、駆動レバー及びリンクが共に合成樹脂により形成されている。
【0005】
消弧部は、可動電極が固定電極から離れた際に両電極間に生じるアークを消滅させる部分で、細隙消弧式など、種々の形式のものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−235608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、駆動レバーとリンクとを備えた操作機構により操作される開閉器においては、駆動レバーに大きな操作荷重がかかるため、駆動レバーの機械的強度を十分に大きくしておく必要がある。そのため従来の開閉器では、駆動レバーに十分な強度を持たせるために、駆動レバーを強度が高い高価な樹脂により形成する必要があった。
【0008】
また駆動レバーを樹脂により構成する場合、駆動レバーを駆動軸に固定するために、駆動軸に嵌合するボス部を駆動レバーに設けて、このボス部を駆動軸にネジで固定する構造を採用する必要があるため、駆動レバーの構造が複雑になって、駆動レバーを成形する金型が高価になり、その製造コストが高くなるのを避けられなかった。
【0009】
従って、従来の開閉器は、駆動レバーを構成する樹脂として高価なものを必要とすることと相俟って、コストが高くなるのを避けられなかった。また駆動レバーを樹脂により形成すると、その機械的強度を確保するために駆動レバーが大形になるため、開閉器が大形化するという問題もあった。
【0010】
上記のような問題が生じるのを防ぐため、駆動レバーを金属により形成することが考えられる。しかしながら、駆動レバーを金属により形成すると、接地電位にある駆動レバーが駆動軸から可動電極側ユニットの充電部側及び(又は)固定電極側ユニットの充電部側に突出した状態で配置されることになるため、可動電極側ユニットの充電部と対地間及び(又は)固定電極側ユニットの充電部と対地間の絶縁距離が短くなり、開閉器の大形化を招くことなく、充電部と対地間の絶縁耐力を確保するための絶縁設計が難しくなるという新たな問題が生じる。
【0011】
駆動レバーを金属により形成する場合、可動電極側ユニットの充電部と駆動レバーとの間の距離及び(又は)固定電極側ユニットの充電部と駆動レバーとの間の距離を長くする設計をすれば、必要な絶縁耐力を得ることができる。しかしながら、各充電部と駆動レバーとの間の距離を長くすると、固定電極側ユニットと可動電極側ユニットとの間の間隔が広がり、それに伴って可動電極が大形になるため、開閉器が大形化するのを避けられない。また可動電極が大形になると、可動電極の質量が大きくなって、操作機構にかかる操作荷重が重くなるため、操作機構が大形になるだけでなく、開閉動作速度が低下して電流の遮断性能が低下するのを避けられない。
【0012】
本発明の目的は、充電部と対地間の絶縁性能を低下させたり、可動電極及び操作機構の大形化を招いたりすることなく、駆動レバーを金属により形成して、操作機構部の機械的強度の向上と、コストの低減とを図ることができるようにした開閉器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、固定電極を有する固定電極側ユニットと、固定電極に接触した状態になる閉路位置と該固定電極から所定の絶縁距離を隔てた状態になる開路位置との間を回動するように設けられた可動電極を有する可動電極側ユニットと、回転駆動される駆動軸と該駆動軸に後端部が固定された駆動レバーと該駆動レバーの先端に第1のピンを介して一端が連結され、他端が可動電極に第2のピンを介して連結されたリンクとを有する操作機構とを備えて、駆動軸の一方向への回転に伴って可動電極を閉路位置に回動させ、駆動軸の他方向への回転に伴って可動電極を開路位置に回動させるように構成された開閉器を対象とする。
【0014】
本発明においては、操作機構のリンクが絶縁材料により形成され、駆動レバーが金属材料により形成される。また第1のピンを貫通させるピン貫通孔を備えて駆動レバーの少なくとも先端寄りの部分を覆うように形成された絶縁キャップが駆動レバーに被せた状態で設けられ、固定電極側ユニットの充電部と駆動レバーとの間及び可動電極側ユニットの充電部と駆動レバーとの間にそれぞれ必要な絶縁耐力が得られるように、駆動レバーの長さ方向に測った絶縁キャップの長さと、絶縁キャップの各部の厚み寸法とが設定される。
【0015】
上記のように、駆動レバーに被せた状態で配置される絶縁キャップを設けて、固定電極側ユニットの充電部及び可動電極側ユニットの充電部と駆動レバーとの間に必要な絶縁耐力を確保するように、絶縁キャップの長さと絶縁キャップの各部の厚み寸法とを設定すると、駆動レバーを金属により形成しても、固定電極側ユニットの充電部と駆動レバーとの間及び可動電極側ユニットの充電部と駆動レバーとの間の距離を必要以上に長くすることなく、固定電極側ユニットの充電部と駆動レバーとの間及び可動電極側ユニットの充電部と駆動レバーとの間の絶縁耐力を確保することができる。そのため、各充電部と対地間の絶縁耐力を低下させたり、可動電極及び操作機構の大形化を招いたりすることなく、駆動レバーを金属により形成して、操作機構部の機械的強度の向上と、コストの低減とを図ることができる。また駆動レバーを金属により形成するので、成形のために高価な金型を必要とする合成樹脂製の駆動レバーを用いる場合に比べて製造コストの低減を図ることができる。
【0016】
本発明の好ましい態様では、絶縁キャップに設けられたピン貫通孔が、第1のピンの外径よりも大きい内径を有して、該ピン貫通孔の内周と第1のピンの外周との間に隙間が形成されている。
【0017】
上記のように構成すると、開閉器を操作する際に第1のピンから絶縁キャップに力が加わるのを防ぐことができるので、開閉操作時に絶縁キャップに無理な力が加わって、絶縁キャップが損傷するのを防ぐことができる。
【0018】
本発明の好ましい態様では、第1のピンが金属により形成され、第1のピンの露出部分を覆うピンカバーが絶縁キャップに一体に設けられている。
【0019】
上記のように構成すると、第1のピンが金属により形成される場合に、その露出部分(リンクから外部に突出した部分)を絶縁物により覆って固定電極側ユニットの充電部及び可動電極側ユニットの充電部から隠すことができるため、第1のピンの機械的強度を低下させることなく、固定電極側ユニットの充電部と接地電位部との間及び可動電極側ユニットの充電部と接地電位部との間の絶縁耐力を確保することができる。
【0020】
本発明の他の好ましい態様では、第1のピンが金属により形成され、第1のピンの露出部分を覆うピンカバーがリンクに取り付けられている。
【0021】
上記のように構成した場合も、第1のピンが金属により形成される場合に、その露出部分を絶縁物により覆って固定電極側ユニットの充電部及び可動電極側ユニットの充電部から隠すことができるため、各充電部と接地電位部との間の絶縁耐力を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、駆動レバーに被せた状態で配置される絶縁キャップを設けて、固定電極側ユニットの充電部及び可動電極側ユニットの充電部と駆動レバーとの間に必要な絶縁耐力が得られるように、絶縁キャップの長さと絶縁キャップの各部の厚み寸法とを設定したので、駆動レバーを金属により形成しても、固定電極側ユニットの充電部と駆動レバーとの間及び可動電極側ユニットの充電部と駆動レバーとの間の距離を必要以上に長くすることなく、固定電極側ユニットの充電部と駆動レバーとの間及び可動電極側ユニットの充電部と駆動レバーとの間の絶縁耐力を確保することができる。従って、各充電部と対地間の絶縁性能を低下させたり、可動電極及び操作機構の大形化を招いたりすることなく、駆動レバーを金属により形成して、操作機構部の機械的強度の向上と、コストの低減とを図ることができる。また駆動レバーを金属により形成するので、成形のために高価な金型を必要とする合成樹脂製の駆動レバーを用いる場合に比べて製造コストの低減を図ることができる。
【0023】
本発明において、駆動レバーの先端とリンクとを連結する第1のピンの露出部分を覆うピンカバーを絶縁キャップに一体に設けるか、またはリンクに取付けるようにした場合には、第1のピンを金属により形成する場合に、該第1のピンの露出部分が絶縁の弱点になるのを防ぐことができるため、第1のピンを金属により形成して操作機構の機械的強度を低下させることなく、かつ可動電極及び操作機構の大形化を招くことなく、固定電極側ユニットの充電部と接地電位部との間及び可動電極側ユニットの充電部と接地電位部との間の絶縁耐力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係わる開閉器が開路状態にあるときの要部の構成を示した側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わる開閉器が閉路状態にあるときの要部の構成を示した側面図である。
【図3】図1及び図2に示された開閉器の可動電極の支持部の構造を示した要部の正面図である。
【図4】図1及び図2に示された開閉器の駆動レバーとリンクとの連結部の構造の一例を示した要部の正面図である。
【図5】図1及び図2の実施形態で用いる駆動レバーの拡大側面図である。
【図6】(A)は本発明の他の実施形態で採用される駆動レバーとリンクとの連結部の構造の一例を模式的に示した要部の正面図、(B)は(A)に示された絶縁キャップを模式的に示した上面図である。
【図7】本発明の他の実施形態で採用される駆動レバーとリンクとの連結部の構造の一例を模式的に示した要部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1及び図2は、本実施形態に係わる開閉器の一相分の構成を示したもので、図1は同開閉器が開路している状態を示し、図2は同開閉器が閉路している状態を示している。これらの図において、1は固定電極側ユニット、2は可動電極側ユニット、3は両ユニットの間に配置された操作機構である。
【0026】
固定電極側ユニット1は、図示しないフレームに一端が取り付けられた第1の支持碍子(固定電極支持用碍子)101と、第1の支持碍子101の他端に固定された板状の第1の支持導体102と、第1の支持導体102に固定された固定電極103とからなっている。
【0027】
固定電極103は、第1の支持導体102に接した状態で配置されてボルト104により支持導体102に締結された板状の基部103aと、基部103aの幅方向の両端から同じ側に(支持碍子1から離れる方向に)立ち上がった一対の側板部103b,103bとを有し、一対の側板部103b,103bの先端にそれぞれ後記する可動電極を接触させる接点部103c,103cが形成されている。一対の側板部103b,103bは、図1及び図2の紙面と直角な方向に相対するように設けられているため、図1及び図2には、一方の側板部103bのみが現れている。
【0028】
第1の支持導体102には、端子部102aが設けられている。端子部102aには、開閉器の固定電極側の外部端子を構成するために図示しない開閉器のケースの側壁を貫通した状態で設けられるブッシング(図示せず。)の中心導体が接続される。
【0029】
可動電極側ユニット2は、図示しないフレームに一端が取り付けられた第2の支持碍子(可動電極支持用碍子)201と、第2の支持碍子2の他端に固定された板状の第2の支持導体202と、第2の支持導体202に固定された可動電極支持金具203と、この支持金具に回動自在に支持された可動電極204とからなっている。
【0030】
図3に示されているように、可動電極支持金具203は、第2の支持導体202の上に配置された板状の基部203aと、基部203aの幅方向の一端から支持碍子201と反対側に起立した起立板部203bとを一体に有するL字形の部材からなっている。支持金具203は、その基部203aがボルト205より支持導体202に締結されることにより支持碍子201に取り付けられている。
【0031】
可動電極204は、鎌形の可動電極本体204aと、可動電極本体204aにボルト及びナットにより締結された板状の脚部構成部材204b(図3参照)とからなっている。図1ないし図3に示されているように、可動電極本体204aは、後端部が可動電極支持金具203の起立板部203bの先端に連結される板状の脚部204a1と、脚部204a1の先端側に該脚部204a1と板面を平行させた状態で設けられたレの字型の板状頭部204a2と、脚部204a1の先端と頭部204a2の後端部とを連結するように設けられた傾斜板部204a3とからなっていて、頭部204a2の先端に接点部204a4が形成されている。
【0032】
図3に示されている脚部構成部材204bは、可動電極本体204aの脚部204a1から頭部204a2の後端部にかけての部分の形状とほぼ同様の形状を有する板状の部材からなっている。脚部構成部材204bは、可動電極本体204aの脚部204a1と板面を平行させた状態で配置されて、その先端が可動電極本体204aの頭部204a2の後端部にボルト205及びナット206により締結されている。可動電極本体204aの脚部204a1の先端部及び脚部構成部材204bの先端寄りの部分には、後記するリンクを連結する連結部を構成する耳部204a5及び204b5が形成されている。
【0033】
可動電極204は、その脚部204a1の後端部と脚部構成部材204bの後端部との間に可動電極支持金具203の起立板部203bの先端寄りの部分を受入れた状態で配置されて、軸207により支持金具203に回動自在に支持されている。軸207は、可動電極本体204aの脚部204a1の後端部と、可動電極支持金具203の起立板部203bの先端部と、脚部構成部材204bの後端部とを貫通した状態で設けられて、抜け止めピン208により抜け止めが図られている。軸207の一端には拡大径部207aが形成されて、拡大径部207aと脚部構成部材204bとの間に圧縮バネ209(図3参照)が設けられ、この圧縮バネにより、可動電極204と可動電極支持金具203の起立板部203bとの間に接触圧力が付与されている。
【0034】
第2の支持導体202には、端子部202aが設けられている。端子部202aには、開閉器の可動電極側の外部端子を構成するために図示しない開閉器のケースの側壁を貫通した状態で取り付けられるブッシング(図示せず。)の中心導体が接続される。
【0035】
本実施形態において、第1の支持碍子101及び第2の支持碍子201は、それぞれの軸線を平行させ、かつそれぞれの軸線を同一平面上に位置させた状態で配置されている。可動電極204は、操作機構3によって操作されることにより、図2に示したようにその接点部204a4が固定電極103の接点部の間に進入して固定電極に接触した状態になる閉路位置と、図1に示したように接点部204a4が固定電103から所定の絶縁距離を隔てた状態になる開路位置との間を、支持碍子101の軸線と支持碍子201の軸線とを含む平面上で回動させられる。
【0036】
可動電極204を操作する操作機構3は、バネや電磁石を備えた駆動装置により一方向及び他方向に回転駆動される駆動軸301と、駆動軸301に後端部が固定された駆動レバー302と、駆動レバー302の先端に第1のピン303を介して一端が連結され、可動電極204の脚部204a1及び脚部構成部材204bにそれぞれ突設された耳部204a5及び204b5に第2のピン304を介して他端が連結されたリンク305とを備えている。操作機構3は、駆動軸301の一方向への回転に伴って可動電極204を、図2に示す閉路位置まで回動させ、駆動軸301の他方向への回転に伴って可動電極204を図1に示す開路位置まで回動させる。
【0037】
本実施形態では、駆動レバー302が金属材料により形成されていて、駆動レバー302の一端に設けられた孔302aに駆動軸301が嵌合されている。駆動レバー302の一端は、適宜の手段により駆動軸301に固定される。本発明において、駆動レバー302の一端を駆動軸301に固定する手段は特に限定されないが、本実施形態では、駆動レバー302の孔302aの内周部が駆動軸301の外周に円周溶接されることにより、駆動レバー302の一端が駆動軸301に固定されている。
【0038】
本実施形態では、図4に示したように、絶縁材料からなるリンク305が2枚設けられて、2枚のリンク305,305がそれぞれの板面を平行させた状態で配置され、2枚のリンク305,305の一端の間に駆動レバー302の先端が、またリンク305,305の他端の間に可動電極204の耳部204a5,204b5が挿入されている。駆動レバー302の先端とリンク305,305とを連結する第1のピン303及びリンク305,305と可動電極204とを連結する第2のピン304は金属により形成されている。
【0039】
本実施形態では、駆動レバー302の他端側に、合成樹脂からなる絶縁キャップ310が被されて、この絶縁キャップ310により、固定電極側ユニット1の充電部(固定電極103及び支持導体102)と接地電位にある駆動レバー302との間及び可動電極側ユニット2の充電部(可動電極204、可動電極支持金具203及び支持導体202)と駆動レバー302との間が絶縁されている。
【0040】
絶縁キャップ310は、駆動レバー302の厚み方向に相対する側壁部310a,310aと駆動レバー302の先端面に当接する端部壁310bとを有する袋状の形状に形成されていて、駆動レバー302の先端側から該駆動レバーに被された状態で設けられている。
【0041】
絶縁キャップ310の相対する側壁部310a,310aには、駆動レバー302の先端部とリンク305,305の一端とを連結するピン303を貫通させるためのピン貫通孔310a1,310a1(図5参照)が形成されている。駆動レバー302の先端とリンク305,305の一端とを連結する第1のピン303がピン貫通孔310a1,310a1の内周に接して絶縁キャップ310に無理な力が加わるのを防ぐため、図5に示したように、ピン貫通孔310a1の内径が、第1のピン303の外径よりも大きく設定されている。
【0042】
第1のピン303の抜け止めを図るため、第1のピン303のリンク305から外部に突出した部分に抜け止めピン306が取り付けられている。また第2のピン304の抜け止めを図るため、第2のピン304のリンク305から外部に突出した部分に抜け止めピン307が取り付けられている。
【0043】
本実施形態の開閉器では、駆動レバー302とリンク305,305とを第1のピン303により連結した状態で、絶縁キャップ310が駆動レバー302とその両側のリンク305,305との間に介在させられて、絶縁キャップ310により、固定電極側ユニット1の充電部と駆動レバー302との間及び可動電極側ユニット2の充電部と駆動レバー302との間の絶縁が図られるようになっている。
【0044】
即ち、開閉器が開路状態及び閉路状態にあるときに固定電極側ユニット1の充電部と駆動レバー302(接地電位部)との間及び可動電極側ユニット2の充電部と駆動レバー302との間にそれぞれ必要とされる絶縁耐力を持たせるように、駆動レバー302の長さ方向に測った絶縁キャップ310の長さL(図5参照)と、絶縁キャップ310の各部の厚み寸法とが設定される。
【0045】
絶縁キャップ310を設計するに当っては、駆動レバー302と固定電極側ユニット1の充電部との間の位置関係及び駆動レバー302と可動電極側ユニット2の充電部との間の位置関係を考慮して、絶縁の弱点になりやすい部分の絶縁を強化するように、絶縁キャップ310の長さL及び各部の厚み寸法を設定する。
【0046】
図示の例では、駆動レバー302の先端が可動電極側ユニット2の支持碍子201の基部の近傍にあって、開閉器が開路状態にあるときに、駆動レバー302の先端が、可動電極側ユニットの充電部のうち、可動電極204を支持している支持導体202に近づいた状態になるため、駆動レバー302の先端部付近が絶縁の弱点になるおそれがある。従って図示の例では、絶縁キャップ310の駆動レバー302の先端部を覆う部分の厚み寸法を特に厚くしておく。また駆動レバー302と固定電極側ユニット1の充電部との間に必要な絶縁耐力が得られるように、絶縁キャップ310の長さLを設定する。
【0047】
この種の開閉器は、可動電極204が固定電極103から離れた際に生じるアークを消滅させるために、可動電極204の接点部204a4の移動通路に沿って細隙消弧型などの消弧機構が設けられるが、この消弧機構の図示は省略されている。
【0048】
固定電極側ユニット1、可動電極側ユニット2及び操作機構3は、図示しない開閉器ケース内に収容されて、該ケース内に設けられたフレームまたは該ケースの内面に支持される。開閉器ケースには、固定電極側ユニット1の端子部102a及び可動電極側ユニット2の端子部202aにそれぞれ中心導体が接続されるブッシングが取り付けられ、これらのブッシングにより開閉器の外部端子が構成される。
【0049】
上記のように、大きな操作荷重がかかる駆動レバー302を金属により形成すると、操作機構3の機械的強度を向上させることができる。また駆動レバー302を金属により形成すると、これを樹脂により形成する場合に比べて、その強度を確保するために必要な断面積を小さくすることができるため、駆動レバー302をコンパクトに構成することができる。
【0050】
更に上記のように、駆動レバー302に絶縁キャップ310を被せて、この絶縁キャップ310により可動電極側ユニット及び固定電極側ユニットの充電部と駆動レバー302(接地電位部)との間を絶縁するようにしておくと、駆動レバー302を金属により形成しても、各ユニットの充電部と対地間の絶縁強度を確保することができるため、駆動レバーを樹脂により形成する場合のように操作機構の大形化を招くことなく、その機械的強度を高めることができる。
【0051】
上記の説明では、開閉器の一相分の構成を示したが、三相の配電線をそれぞれ流れる電流をオンオフする三相用の開閉器を構成する場合には、三相の開閉器をそれぞれ構成する固定電極側ユニット1及び可動電極側ユニット2を、三相に共通の駆動軸301の軸線方向に並べて配置して、各相の開閉器を操作する操作機構の駆動レバー302の後端部を共通の駆動軸301に固定する。
【0052】
上記の実施形態では、操作機構3の駆動軸301を、固定電極側ユニット1の支持碍子101の近傍に配置したが、操作機構3の駆動軸301を、可動電極側ユニット2の支持碍子201の近傍に配置する構成をとる場合にも本発明を適用することができる。操作機構3の駆動軸301を、可動電極側ユニット2の支持碍子201の近傍に配置する場合には、開閉器の開路時に駆動レバー302の先端が支持碍子101に固定された支持導体102に近づくため、駆動レバー302の先端が絶縁の弱点になり易い。この場合も、絶縁キャップ310の先端部の厚み寸法を厚くしておくことにより、必要な絶縁耐力を得ることができる。
【0053】
図1ないし図5に示した実施形態において、駆動レバー302の先端とリンク305,305とを連結する第1のピン303としては、操作機構の強度設計上の観点から、金属製のものを用いることが好ましいが、金属製のピン303を用いると、このピン303が絶縁の弱点になるおそれがある。このような問題が生じるのを防ぐためには、第1のピン303の露出部分を覆うピンカバーを絶縁キャップ310に一体に設けるか、または該ピンカバーをリンク305,305に取付けておくようにするのが好ましい。
【0054】
図6(A)は、絶縁キャップ310に、ピン303のリンク305,305から外部に突出した部分を覆うピンカバー311,311を一体に形成した例を示している。図6(B)に示されているように、ピンカバー311,311には、リンク305,305と駆動レバー302との間に生じる相対的な回動運動を許容するためにリンク305,305の一端寄りの部分をスライド自在に嵌合させる切り欠き部312,312が形成されている。
【0055】
図6に示したように、絶縁キャップ310に、金属製のピン303の露出部分を覆うピンカバー311,311を一体に設けておくと、ピン303を固定電極側ユニット1の充電部及び可動電極側ユニット2の充電部から隠すことができるため、ピン303が絶縁の弱点となるおそれをなくすことができる。
【0056】
図7は、駆動レバー302の先端をリンク305,305の一端に連結するピン303のリンク305,305から外部に突出した部分を覆うピンカバー320,320を、リンク305,305に取り付けた例を示している。図示のピンカバー320は、リンク305に嵌合した状態で配置される基部320aと、ピン303のリンク305,305から外部に突出した部分(露出部分)を覆うカバー部320bとを一体に有している。図示のピンカバー320は、駆動レバー302とリンク305,305とをピン303で連結した後に、ピン303の露出部分を覆う位置にカバー部320bを配置して、その基部320aをリンク305に嵌合させた状態で、適宜の固定手段によりリンク305に固定する。
【0057】
ピンカバー320をリンク305に対して固定する固定手段としては、例えば、ピンカバー320の基部320aをリンク305に締結するネジ321を用いることができる。このネジは絶縁物からなっていることが好ましい。
【0058】
図7に示したように、ピンカバー320を設けた場合も、第1のピン303を固定電極側ユニット1の充電部及び可動電極側ユニット2の充電部から隠すことができるため、第1のピン303が絶縁の弱点となるおそれをなくすことができる。
【符号の説明】
【0059】
1 固定電極側ユニット
101 第1の支持碍子(固定電極支持用碍子)
102 第1の支持導体
103 固定電極
2 可動電極側ユニット
201 第2の支持碍子
202 第2の支持導体
203 可動電極支持金具
204 可動電極
3 操作機構
301 駆動軸
302 駆動レバー
303 第1のピン
304 第2のピン
305 リンク
310 絶縁キャップ
311 ピンカバー
320 ピンカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極を有する固定電極側ユニットと、前記固定電極に接触した状態になる閉路位置と該固定電極から所定の絶縁距離を隔てた状態になる開路位置との間を回動するように設けられた可動電極を有する可動電極側ユニットと、回転駆動される駆動軸と該駆動軸に後端部が固定された駆動レバーと該駆動レバーの先端に第1のピンを介して一端が連結され、他端が前記可動電極に第2のピンを介して連結されたリンクとを有する操作機構とを備えて、前記駆動軸の一方向への回転に伴って前記可動電極を閉路位置に回動させ、前記駆動軸の他方向への回転に伴って前記可動電極を開路位置に回動させるように構成された開閉器において、
前記リンクは絶縁材料により形成され、
前記駆動レバーは金属材料により形成され、
前記第1のピンを貫通させるピン貫通孔を備えて前記駆動レバーの少なくとも先端寄りの部分を覆うように形成された絶縁キャップが前記駆動レバーに被せた状態で設けられ、
前記固定電極側ユニットの充電部と前記駆動レバーとの間及び前記可動電極側ユニットの充電部と前記駆動レバーとの間にそれぞれ必要な絶縁耐力が得られるように、前記駆動レバーの長さ方向に測った前記絶縁キャップの長さと、前記絶縁キャップの各部の厚み寸法とが設定されていること、
を特徴とする開閉器。
【請求項2】
前記絶縁キャップに設けられたピン貫通孔は、前記第1のピンの外径よりも大きい内径を有して、該ピン貫通孔の内周と前記第1のピンの外周との間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の開閉器。
【請求項3】
前記第1のピンは金属により形成され、
前記第1のピンの露出部分を覆うピンカバーが前記絶縁キャップに一体に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の開閉器。
【請求項4】
前記第1のピンは金属により形成され、
前記第1のピンの露出部分を覆うピンカバーが前記リンクに取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の開閉器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−25973(P2013−25973A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158660(P2011−158660)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)