説明

開閉式屋根

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は円形ドーム屋根を縦割りし、これらが互いに回動移動して重なり合う移動屋根にて構成してある重ね回転移動式の開閉式屋根に関する。
【0002】
【従来の技術】建物の開放感を得るために屋根を移動させ得る構造の開閉式屋根には、折りたたみ方式と重ね方式とがあり、またそれらの複合方式が存在する。本発明は重ね方式に係り、スタジアム級のドーム屋根では頂点から放射方向へ分断した屋根部材の頂点を回転可能に結合し、底辺は台車で支持したものが従来の重ね回転移動式による開閉式屋根であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】重ね回転移動式の開閉式屋根は、移動屋根の底辺を走行台車で支持し、その横応力には台車部分で抵抗するものである。したがって、屋根の横剛性に強度不足を生じ易い欠点があった。それ故に、この種の屋根を開閉式とする場合には重ね上下移動式を採用する場合が多いのである。しかし、重ね上下移動式では開閉に伴う動力容量差が大きく、動力装置の面で不利である。
【0004】本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は重ね回転式の開閉式屋根の欠点を解消することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の開閉式屋根は、ドーム屋根のドーム頂点から放射状に分割構成した屋根部材の一部あるいは全部を、円周方向へ移動させて互いに重なる位置に回動自在に配置した回動屋根とし、これらをドームの高さ中間レベル、かつドームを囲繞するように水平に配置した環状梁で回動方向へ走行可能に吊持したのである。
【0006】
【作用】放射状に分割構成した屋根部材から成るドーム屋根において、屋根部材を回動方向へ走行させ、すなわちドームの円周方向へ沿って走行移動させたとき、互いが重なり合う重ね回転移動式の開閉屋根であって、その移動する屋根部材の中間レベル相当位置に対応してドーム外周を囲繞した環状梁が各移動屋根、すなわち回動屋根を吊持している。この吊持点によって回動屋根の上下のみならず、中間レベルにおいても回動屋根を支持していることになるので、風に対する耐力も含めて横応力に耐え易い構成を得ている。
【0007】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例について図面を参照にして詳細に説明する。図1にドーム屋根に適用した開閉式屋根1の躯体の概略を示している。地上から或る程度の高さ迄は内側に観客席を階段形に設置構成した外壁3が円形に設けてある。その上方に環状梁5は外壁3の中心側へ若干屈曲傾斜させた屈曲梁7で支持している。環状梁5の円の中心はドーム平面の中心点と一致させ、また屈曲梁7の屈曲率はドームの縦方向曲線に平行なものとしている。そして、屈曲梁7は外壁3上にドーム中心から外周方向へ45度の角度毎に8本立設し、これら8本の屈曲梁7で環状梁5を強固に支持しているのである。
【0008】更に、屈曲梁7の内側、かつ環状梁5の内側を通ってドーム屋根を形成するアーチ梁9が複数設けてある。このアーチ梁9の一部梁9Aは基端部が固定してあって、固定屋根11の骨組を形成するが、他は外壁3の上端部近傍に敷設した軌道上に台車(図示せず)で走行自在に支持している。上記軌道は無論、外壁3に沿って円形に敷設してある。またアーチ梁9のうち、固定屋根11を形成するものではない梁9の頂部は固定屋根11用のアーチ梁9Aの頂部に固設した軸芯13に回動自在に連結している。なお、固定屋根11は必ずしも必要ではない点に本発明の特徴があるため、各アーチ梁9の頂部は全て軸芯に回動自在に連結し、固定形のアーチ梁9Aを省略してもよい。すなわち、図3及び図5にて後述するが、環状梁5を有する本発明においては、各アーチ梁9を環状梁5にて支持することが十分可能だからである。
【0009】叙述躯体による開閉式屋根1は固定したアーチ梁9Aの頂部よりも順次にレベルを低く形成したアーチ梁9で回動屋根15を構成し、固定屋根11の下に各回動屋根15は軸芯13を回動軸にして重なり合うとき、全開状態になるが、図2は各回動屋根15が所定の定位置に移動した全閉状態を示している。すなわち、図3R>3に示す如く各屋根11、15は重量軽減を図りながら移動を容易にするために膜をアーチ梁9、9Aに張り渡した膜屋根になっており、固定形のアーチ梁9A側にて固定屋根11を構成した下に回動屋根15が重なり合っている。この図は環状梁5の中途を縦断した断面なので、最下層の回動屋根15Aを環状梁5で吊持している点については図上に表われていないが、固定屋根11の真下になる回動屋根15と同じ構成である。環状梁5の底面にはC形鋼の開口面を下に向けたような形状のガイドレール17を添設し、その中に走行自在な車輪19が設置してある。一方、アーチ梁9の円周方向には受梁21を渡しており、吊り金具23で車輪19の車軸と受梁21とを連結している。このようにして回動屋根15についてはその荷重を環状梁5で受け止め負担しながら回動移動による開閉を行っている。したがって、回動屋根15が移動するときは受梁21を車輪19で吊持し、ガイドレール17中を車輪19が走行移動すると言ってもよく、図4に示すように、左右両翼の回動屋根15がその手前側の回動屋根15の方に重なり合うように移動し、左右のみを開くこともできるのである。しかし、図4R>4中の固定屋根11を回動屋根15に置換すれば、全開時の屋根相互の重なり位置を自由に選択できるので、図5R>5のように、アーチ梁9の頂部間に軸24を通し、更に軸24の上端に笠25を固定し、軸24で軸受27を支持するとともに、軸受27にて各回動屋根15−15…を受け止め、各回動屋根15が重なり合う上下の隣接水平面間の動きを軸受27で円滑にしながら各回動屋根15の荷重負担と位置決めとを行っている。笠25は軸受27部分を雨水等から保護するためのものである。
【0010】
【発明の効果】以上詳細に説明したように本発明の開閉式屋根によればドーム屋根の頂点から放射方向へ分割構成した屋根部材が円周方向へ回動移動する回動屋根で、かつそれらの屋根部材は互いに重複する半径なので、天面部分の開放だけではなく、垂直方向も開放するようになり、開口率の高さ、開放感の大きさではドーム屋根を開閉式とした場合の利点を確保できるほか、ドーム高さの中間レベルにドームを囲繞するように配置した環状梁で回動屋根を吊持しているので、回動屋根の支持点が上下のみならず中間位置にも存在し、横風や揺れに強い開閉式屋根を構成できる効果がある。また環状梁によって回動屋根の荷重を分担する結果、底部にある支持台車の支持荷重及び横剛性に対する負担を軽減できるとともに、施工工事に際しても頂点での応力の均衡に注意する必要性や屋根組立時の支持構造を軽減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の開閉式屋根を適用した場合の躯体を例示する側面図である。
【図2】その屋根が全閉状態を示す平面図である。
【図3】躯体を説明するために環状梁を途中から縦断した断面図である。
【図4】部分的に開いた状態を示す平面図である。
【図5】躯体の頂部を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 開閉式屋根 2 外壁
5 環状梁 7 屈曲梁
9 アーチ梁 11 固定屋根
13 軸芯 15 回動屋根
17 ガイドレール 19 車輪
21 受梁 23 吊り金具
24 軸 25 笠
27 軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ドーム屋根のドーム頂点から放射状に分割構成した屋根部材の一部あるいは全部を、円周方向へ移動させて互いに重なる位置に回動自在に配置した回動屋根とし、これらをドームの高さ中間レベル、かつドームを囲繞するように水平に配置した環状梁で回動方向へ走行可能に吊持したことを特徴とする開閉式屋根。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【特許番号】第2792361号
【登録日】平成10年(1998)6月19日
【発行日】平成10年(1998)9月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−270596
【出願日】平成4年(1992)10月8日
【公開番号】特開平6−117044
【公開日】平成6年(1994)4月26日
【審査請求日】平成8年(1996)10月17日
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【参考文献】
【文献】特開 平2−194229(JP,A)
【文献】特開 平3−262859(JP,A)
【文献】特開 平5−59779(JP,A)
【文献】特開 平4−131452(JP,A)