説明

間接排水用器具

【課題】やりとり作業が容易であり、排水振動が生じても配管が抜けにくい間接排水用器具を提供する。
【解決手段】機器からの排水を排水管に間接排水するための間接排水用器具Aである。間接排水用器具Aは、内部と外部とを連通させる通気口2cと、排水を流入させる流入口2bと、排水を流出させる流出口2dとが形成され、その内部に排水口空間1が形成された本体部2と、本体部2の流入口2bの周囲から略上下および/または略下方に延び、機器から延びる配管Bが挿入される挿入ガイド3と、配管Bが挿入されると配管Bに押されることによって撓み、その撓み変形に伴って生じる弾性力によって配管Bを保持する弾性片3bと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器からの排水を間接排水する場合に使用される間接排水用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
水を排出する機器やドレンが発生する機器等のうち、一部の種類の機器では、排水を排水管に直接排出することが禁止され、間接排水を行うことが義務づけられている。
【0003】
従来の間接排水用器具として、例えば、特許文献1に記載された間接排水用器具が知られている。この間接排水用器具は、有底円筒状の排水受けと、排水受けに形成され、排水管に接続される接続口と、排水受けの上端開口を覆う網目状の目皿とを備えている。目皿は上下逆さまの姿勢で排水受けの上端に取り付けられ、目皿の上面は排水受けの上端開口よりも高い位置に配置されている。これにより、目皿の上面と排水受けの上端開口との間に、所定の高さの空間、すなわち排水口空間が形成されている。目皿の上面の中央には円筒状の差込部が設けられ、機器から延びる配管が上記差込部に差し込まれる。上記配管の下端部は目皿の上面に支持され、上記配管の下端部と排水受けとの間に所定の間隔が確保される。これにより、間接排水が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−182749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、この種の機器を施工する際には、予め機器および間接排水用器具を設置した後、配管を介してそれらを接続するという作業を行う。その際には、まず、配管の下端部を間接排水用器具の差込部に挿入し、次に、配管を持ち上げるようにして、配管の上端部を機器の排水口に嵌め込む。あるいは、まず、配管の上端部を機器の排水口に嵌め込み、次に、配管を下げ降ろすことによって、配管の下端部を間接排水用器具の差込部に挿入する。このような作業は、「やりとり作業」と称される。
【0006】
ところで、機器から間接排水用器具に向かって排水が排出される際に、配管が振動する場合がある。以下では、この振動を排水振動と称する。配管の下端部が間接排水用器具の差込部にしっかりと嵌め込まれていないと、排水振動を受け続けることによって配管が抜けてしまうおそれがある。一方、配管の抜けを防止するために、配管の下端部を差込部に対して強固に固定することも考えられる。しかしそれでは、やりとり作業が困難となってしまう。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、やりとり作業が容易であり、排水振動が生じても配管が抜けにくい間接排水用器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る間接排水用器具は、機器からの排水を排水管に間接排水するための間接排水用器具であって、内部と外部とを連通させる通気口と、排水を流入させる流入口と、排水を流出させる流出口とが形成され、その内部に排水口空間が形成された本体部と、前記本体部の前記流入口の周囲から略上方および/または略下方に延び、前記機器から延びる配管が挿入される挿入ガイドと、前記配管が挿入されると前記配管に押されることによって撓み、その撓み変形に伴って生じる弾性力によって前記配管を保持する弾性片と、を備えたものである。
【0009】
前記間接排水用器具によれば、通気口と排水口空間とが形成された本体部を有しており、流入口から流入した排水は、本体部を通過した後、流出口から流出する。これにより、機器からの排水は間接排水されることになる。
【0010】
前記間接排水用器具では、配管を挿入ガイドに挿入するだけで、配管が略上下方向に真っ直ぐに挿入される。また、配管を挿入した際に、弾性片が撓み変形し、その際に生じる弾性力によって配管をしっかりと保持する。排水振動が生じると、配管には、比較的小さな力が様々な方向に不規則に発生する。しかしながら、上述の通り、配管は真っ直ぐに挿入された状態で弾性片にしっかりと保持され、また、弾性片は排水振動に応じて変位可能であるので、排水振動を受けても配管は抜けにくくなる。一方、やりとり作業の際には、配管には、挿入方向または挿入方向と正反対の方向に(すなわち、一方向に)比較的大きな力が加えられる。上述の通り、配管は弾性片の弾性力によって保持されているだけなので、例えば挿入方向と正反対の方向に比較的大きな力で引っ張ると、配管の位置を容易にずらすことができる。そのため、やりとり作業の際に、配管を容易に持ち上げることができる。あるいは、配管を容易に下げ降ろすことができる。したがって、前記間接排水用器具によれば、やりとり作業の容易化と、排水振動による配管の抜けの防止とを両立させることができる。
【0011】
前記挿入ガイドは、軸方向に延びるスリットが形成された筒状体からなり、前記筒状体の前記スリットを挟んで周方向に隣り合う複数の部分が、前記弾性片を構成していてもよい。
【0012】
このことにより、挿入ガイドと弾性片とを兼用することができ、構成の簡単化を図ることができる。
【0013】
前記筒状体は、前記本体部の外部に設けられていてもよい。
【0014】
このことにより、スリットを通じて、挿入ガイドに対する配管の挿入長さを容易に視認することができる。したがって、やりとり作業が容易になる。
【0015】
前記筒状体の内周面には、内側に突出する凸状部が設けられていてもよい。
【0016】
このことにより、配管は筒状体の凸状部に接触することになり、筒状体と配管との接触面積が小さくなる。そのため、配管の挿入が容易になる。また、やりとり作業が容易になる。
【0017】
前記スリットは、前記筒状体の軸方向の全体にわたって形成されていてもよい。
【0018】
このことにより、筒状体が撓み変形しやすくなり、配管の挿入およびやりとり作業が容易になる。
【0019】
前記弾性片は、下側にいくほど半径方向内側に位置するように傾斜していてもよい。
【0020】
このことにより、配管を深く差し込むほど、配管は弾性片にしっかりと保持されることになる。
【0021】
前記本体部は、上面部を有し且つ下端が開口した略筒状の中空体からなり、前記流入口は前記上面部に形成され、前記通気口は前記中空体の側面に形成され、前記中空体の前記下端が前記流出口を構成し、前記筒状体は、前記上面部から略上方に延び、前記筒状体の外径は、前記中空体の前記上面部の外径よりも小さくてもよい。
【0022】
このことにより、コンパクトな間接排水用器具を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、やりとり作業が容易であり、排水振動が生じても配管が抜けにくい間接排水用器具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る間接排水用器具の第1実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【図2】間接排水用器具の使用状態を示す正面図である。
【図3】間接排水用器具の流入孔にゴム管からなる配管が挿入された状態を示す平面図である。
【図4】本発明に係る間接排水用器具の第2実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は一部断面を含む正面図である。
【図5】(a)は第2実施形態に係る間接排水用器具の平面図、(b)は同底面図である。
【図6】第2実施形態に係る間接排水用器具の流入孔に配管が挿入された状態を示し、(a)は一部断面を含む正面図、(b)は一部断面を含む平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る間接排水用器具の一実施形態を説明する。
【0026】
図1(a)に示すように、本実施形態に係る間接排水用器具Aは、本体部2と挿入ガイド3と係止片5を備えている。間接排水用器具Aは、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂により一体成形されており、本体部2と挿入ガイド3と係止片5とは一体的に形成されている。ただし、係止片5は本体部2を排水管Cに取り付けるためのものであり、本体部2と排水管Cとを接着剤で取り付ける場合等では、必ずしも必要ではない。本体部2と挿入ガイド3とは別体に形成され、互いに組み立てられていてもよい。
【0027】
本体部2は中空の円錐台から構成されている。本体部2の内部には、排水口空間1が形成されている。排水口空間1の高さHは、50cm以上が好ましい。本実施形態では、高さHは50cmに設定されている。図1(b)に示すように、本体部2の上面部2aの中央には、流入口2bが形成されている。図1(a)に示すように、本体部2の側面は格子状に形成されており、本体部2の内部と外部とを連通させる複数の通気口2cが形成されている。このように本体部2の側面が格子状に形成されていることにより、小石やゴミ等の異物の侵入が防止されている。本体部2の下部には、下方に開いた流出口2dが形成されている(図1(c)参照)。
【0028】
挿入ガイド3は、略上下方向(言い換えると、軸方向)に延びるスリット3aが形成された筒状体3Aからなっている。筒状体3Aは、本体部2の流入口2bの周囲から略上方に延びている。ただし、本発明において、挿入ガイド3は流入口2bの周囲から略下方に延びていてもよく、略上方および略下方の両方向に延びていてもよい。筒状体3Aの上端部の内径dは、配管Bの下端部の外径d´と略同一に設定されている。なお、筒状体3Aの外径Dは、本体部2の上面部2aの外径D´よりも小さい。筒状体3Aは、下側にいくほど内径が小さくなるように形成されている。
【0029】
図1(b)に示すように、スリット3aは周方向に沿って90度毎に形成され、合計4個形成されている。図1(a)に示すように、スリット3aは、筒状体3Aの軸方向の全体にわたって形成されている。言い換えると、スリット3aの上下方向長さは筒状体3Aの上下方向長さと等しくなっている。スリット3aは、下側にいくほど横幅が狭くなるように形成されている。ただし、スリット3aの数、上下方向の長さ、および横幅は、決してこれらに限定される訳ではなく、適宜変更することが可能である。筒状体3Aのスリット3aを挟んで周方向に隣り合う複数の部分は、弾性片3bを構成している。弾性片3bの下端部は、本体部2の上面部2aに連続している。弾性片3bは、下端部を支点として撓み変形可能に構成されている。弾性片3bは、下側にいくほど半径方向内側に位置するように傾斜している。本実施形態では、弾性片3bの垂直方向からの傾斜角度は約1°に設定されている。ただし、弾性片3bの傾斜角度は特に限定されない。また、弾性片3bは傾斜していなくてもよい。
【0030】
筒状体3Aの内周面、すなわち弾性片3bの内面には、凸状部7が形成されている。凸状部7は、上下方向に延びる線状に形成されている。ただし、凸状部7は、点状に形成されていてもよい。本実施形態では、凸状部7は弾性片3bの中央に形成されている。筒状体3Aの全体では、合計4個の凸状部7が周方向に等間隔に配置されている。なお、前述の通り、筒状体3Aは下側にいくほど内径が小さくなっているので、凸状部7は下側にいくほど内側に迫り出している。凸状部7の先端は曲面状に形成されている。ただし、凸状部7の個数や先端部の形状は、特に限定される訳ではない。また、本実施形態では、凸状部7は弾性片3bの上下方向の全体にわたって設けられているが、その一部に設けられていてもよい。
【0031】
係止片5は本体部2の下端に設けられ、略下方に向かって延びている。厳密には、係止片5は、下側の部分ほど半径方向外側に位置するように傾斜している。図1(c)に示すように、本実施形態では、4個の係止片5が本体部2の周方向に沿って配置されている。係止片5は、内側に向かって撓み変形自在である。係止片5の下端部の外周面には、外側に突出する凸部8が形成されている。本体部2を排水管Cに向かって上方から差し込むと、係止片5は内側に向かって撓み、排水管Cの内部にはめ込まれる。そして、係止片5は、外側に向かって広がろうとする弾性力によって、排水管Cに係止される。これにより、本体部2は排水管Cに取り付けられる。ただし、本体部2を排水管Cに取り付けるための構造は、特に限定される訳ではない。係止片5は、排水管Cの外側に係止されるものであってもよい。すなわち、排水管Cが間接排水用器具Aの下端部の内側に嵌め込まれるようになっていてもよい。
【0032】
間接排水用器具Aは、例えば図2に示すように、給湯器Eに発生するドレンを排水管Cに排出する用途等に用いることができる。潜熱回収用の二次熱交換器を備えた給湯器Eでは、燃焼ガスが二次熱交換器によって冷却され、燃焼ガスに含まれる水分が凝縮してドレンが発生する。このドレンは酸性の排水であり、また、その温度も高いため、間接排水を行わなければならない。間接排水用器具Aは、給湯器Eに接続された配管Bと、排出管Cとの間に設置される。
【0033】
ここで、給湯器E、配管Bおよび間接排水用器具Aの施工方法について説明する。まず、給湯器Eを所定の箇所に設置する。次に、間接排水用器具Aを排水管Cに取り付ける。その後、給湯器Eと間接排水用器具Aとの間に配管Bを設置する。配管Bは一体物であってもよいが、給湯器Eおよび間接排水用器具Aの位置に応じて、施工現場で組み立ててもよい。例えば、塩化ビニル等からなるパイプ22やエルボ23等を適宜組み合わせることによって、施工現場において配管Bを容易に製作することができる。なお、間接排水用器具Aの本体部2の上面部2aを、パイプカット時の目安として利用することができる。すなわち、上面部2aの高さ位置でパイプ22の下端をカットすることにより、適切な長さの配管Bを容易に得ることができる。なお、配管Bの下端部の外径d´(図1(a)参照)は、間接排水用器具Aの挿入ガイド3(言い換えると、筒状体3A)の内径dと略同一とすることが好ましい。
【0034】
配管Bは、以下のようなやりとり作業によって設置される。まず、配管Bの下端部を間接排水用器具Aの挿入ガイド3に上方から差し込む。この際、配管Bの下端部の外周面は、挿入ガイド3の弾性片3bの凸状部7と線接触し、凸状部7に対して摺動する。弾性片3bは配管Bから半径方向外向きに広がるような力を受け、撓み変形を行う。このようにして、配管Bは挿入ガイド3に案内されて円滑に挿入され、配管Bの挿入作業は容易に行われる。
【0035】
次に、配管Bを持ち上げ、配管Bの上端部を給湯器Eの排水口21に挿入する。この際、配管Bの下端部は上方、すなわち、挿入ガイド3から抜ける方向に移動する。配管Bの下端部は弾性片3bに弾性力によって保持されているだけなので、配管Bの下端部は、弾性片3bの凸状部7と接触しながら、上方に向かって円滑に移動する。そのため、配管Bを持ち上げる作業は容易に行われる。
【0036】
ところで、配管Bを持ち上げすぎると、配管Bの下端部が挿入ガイド3から抜けてしまうおそれがある。ところが本実施形態によれば、挿入ガイド3は本体部2の外部に位置しているため、スリット3aを通じて配管Bの下端の位置を容易に目視することができる。したがって、配管Bの下端の位置を確認しながらやりとり作業を進めることができ、そのような配管Bの抜けを防止することができる。
【0037】
配管Bの上端部を給湯器Eの排水口21に挿入した後は、配管Bの上端部を排水口21に固定する。その固定方法は何ら限定されないが、例えば、配管Bの上端部と排水口21とを接着するようにしてもよい。以上により、給湯器E、間接排水用器具A、および配管Bの施工が完了する。
【0038】
本実施形態によれば、配管Bを挿入ガイド3に挿入するだけで、配管Bを容易に且つ真っ直ぐに挿入することができる。配管Bを間接排水用器具Aに取り付ける際に、特殊な工具は不要である。また、配管Bは、撓み変形可能な弾性片3bに挟まれることによって保持されているので、大きな力で上向きに引っ張ると、比較的容易に上方にずらすことができる。そのため、やりとり作業の際に、配管Bを容易に持ち上げることができる。したがって、やりとり作業を容易に行うことができる。
【0039】
排水振動の際には、配管Bは比較的小さな力で不規則な方向に引っ張られる。本実施形態によれば、配管Bは挿入ガイド3によって、真っ直ぐに挿入された状態に保たれる。また、配管Bは弾性片3bによって保持されている。そのため、比較的小さな力で不規則な方向に引っ張られた場合には、弾性片3bは配管Bを挟み込んだまま、排水振動に応じて弾性変形を行う。したがって、排水振動による配管Bの抜けを防止することができる。
【0040】
本実施形態によれば、挿入ガイド3はスリット3aが形成された筒状体3Aからなり、筒状体3Aのスリット3aを挟んで周方向に隣り合う複数の部分が弾性片3bを構成している。これにより、挿入ガイド3と弾性片3bとを兼用することができ、構成の簡単化を図ることができる。
【0041】
また、本実施形態では、筒状体3Aは本体部2の外部に設けられている。そのため、スリット3aを通じて、配管Bの挿入長さを容易に目視することができる。したがって、やりとり作業が更に容易になる。
【0042】
図1(b)に示すように、筒状体3Aの内周面には、内側に突出する凸状部7が設けられている。そのため、配管Bと筒状体3Aとの接触面積を小さくすることができ、配管Bの挿入およびやりとり作業が容易になる。
【0043】
スリット3aの長さは特に限定されないが、本実施形態では図1(a)に示すように、スリット3aは筒状体3Aの軸方向(すなわち、上下方向)の全体にわたって形成されている。そのため、弾性片3bが撓み変形しやすくなり、配管Bの挿入およびやりとり作業が更に容易になる。
【0044】
また、本実施形態によれば、弾性片3bは、下側にいくほど半径方向内側に位置するように傾斜している。そのため、配管Bを深く差し込むほど、配管Bは弾性片3bにしっかりと保持されることになる。
【0045】
図1(a)および(b)に示すように、筒状体3Aは本体部2の上側に設けられ、筒状体3Aの外径Dは本体部2の上面部2aの外径D´よりも小さい。これにより、本体部2を上方に延長し、挿入ガイド3を本体部2の内部に配置するもの(例えば、後述する図4(b)の第2実施形態参照)に比べて、間接排水用器具Aの小型化を図ることができる。ただし、本発明は本実施形態に限定されず、挿入ガイド3を本体部2の内部に配置することも可能である。
【0046】
なお、前述の説明では、配管Bは合成樹脂製の管であり、容易に変形しないいわゆる剛性を有する管であった。しかし、配管Bはいわゆる可撓性を有する管であってもよく、例えば、ゴム管であってもよい。なお、ゴム管を用いる場合には、やりとり作業は不要となる。
【0047】
ところで、通常、ゴム管の外径と略同一の内径を有する孔にゴム管を挿入しようとすると、大きな力で挿入しなければならず、また、ゴム管の断面形状が大きく変形してしまうことがある。すなわち、ゴム管がつぶれてしまう場合がある。しかし、本実施形態に係る間接排水用器具Aによれば、筒状体3Aの内径と略同一の外径を有するゴム管を使用しても、弾性片3bが広がるように撓み変形を起こすので、ゴム管の挿入は容易であり、また、ゴム管がつぶれてしまうおそれが少ない。本実施形態では、弾性片3bの内面に凸状部7が設けられているが、ゴム管の外周面は、これら凸状部7によって略均等の押圧力を受ける。そのため、図3に示すように、ゴム管は凸状部7の近傍で局所的に変形するが、全体的には均等な形状を保つことになる。このように、本実施形態によれば、ゴム管の断面形状が大きく変形してしまうことはない。そのため、ゴム管はしっかりと保持されることになる。
【0048】
したがって、本実施形態によれば、配管Bとしてゴム管を用いた場合にも、配管Bの施工が容易になる。また、排水振動による配管Bの抜けが生じにくくなる。
【0049】
<第2実施形態>
第1実施形態では、挿入ガイド3と弾性片3bとが兼用されていたが、挿入ガイド3と弾性片3bとが別体であってもよい。図4および図5に示すように、第2実施形態に係る間接排水用器具Aは、挿入ガイド3が本体部の内部に向かって延びる筒状体3Aからなり、弾性片3bが、本体部2の流入口2bの周縁から半径方向内向きに延び、互いに周方向に並んだ複数の突出片からなっているものである。
【0050】
図4に示すように、本実施形態に係る間接排水用器具Aは、周面がメッシュ状に形成された中空の本体部2を備えている。本体部2の周面には、多数の通気口2cが形成されている。本体部2の上面部2aの中央には、流入口2bが形成されている。挿入ガイド3を構成する筒状体3Aは、流入口2bの周囲から下方に延びており、本体部2の内部に配置されている。本実施形態の挿入ガイド3は、円筒からなっている。図4(b)および図5(a)に示すように、弾性片3bは、流入口2bの周縁から半径方向内向きに延びている。各弾性片3bは、平面視略三角形状に形成されている。これにより、本体部2の上面部2aには、放射状のスリット3aが形成されている。
【0051】
その他の構成は第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0052】
図6(a)および(b)に示すように、配管Bが上方から差し込まれると、配管Bは挿入ガイド3に案内されて真っ直ぐに挿入される。この際、弾性片3bは配管Bに押し下げられ、下向きに撓む。その結果、配管Bは弾性片3bに挟まれ、その弾性力によって保持される。
【0053】
本実施形態においても、やりとり作業の容易化と、排水振動による配管Bの抜けの防止とを両立させることができる。また、本実施形態によれば、挿入ガイド3が本体部2の内部に配置されるので、挿入ガイド3が傷つきにくくなる。
【0054】
なお、本実施形態においても、配管Bとして、合成樹脂製の管の他、ゴム管等を用いることができる。
【0055】
<変形例>
上記各実施形態では、本体部2の周面は格子状やメッシュ状に形成されているが、本体部2の具体的な構成は決してこれに限定される訳ではない。本体部2は通気が可能で、且つ排水口空間1を有するように構成されていればよく、例えば、上下方向に延びる複数本の支柱のみによって、周面が構成されていてもよい。
【0056】
また、上記各実施形態では、配管Bのやりとり作業を考慮して、配管Bの一端部が本体部2内に過度に進入することを規制する手段は設けていないが、挿入ガイド3または本体部2の内部に、配管Bの過度の進入を規制するストッパーを設けてもよい。
【0057】
前述の説明では、やりとり作業として、配管Bの下端部を間接排水用器具Aの挿入ガイド3に挿入し、次に、配管Bを持ち上げることによって配管Bの上端部を給湯器Eの排水口21に嵌め込む作業を説明した。しかし、配管Bの接続に際しては、それとは逆のやりとり作業を行ってもよい。すなわち、まず、配管Bの上端部を給湯器Eの排水口21に嵌め込み、次に、配管Bを下げ降ろすことによって、配管Bの下端部を間接排水用器具Aの挿入ガイド3に挿入してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 排水口空間
2 本体部
2a 上面部
2b 流入口
2c 通気口
2d 流出口
3 挿入ガイド
3A 筒状体
3a スリット
3b 弾性片
7 凸状部
A 間接排水用器具
B 配管
C 排水管
E 給湯器(機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器からの排水を排水管に間接排水するための間接排水用器具であって、
内部と外部とを連通させる通気口と、排水を流入させる流入口と、排水を流出させる流出口とが形成され、その内部に排水口空間が形成された本体部と、
前記本体部の前記流入口の周囲から略上方および/または略下方に延び、前記機器から延びる配管が挿入される挿入ガイドと、
前記配管が挿入されると前記配管に押されることによって撓み、その撓み変形に伴って生じる弾性力によって前記配管を保持する弾性片と、
を備えた間接排水用器具。
【請求項2】
前記挿入ガイドは、軸方向に延びるスリットが形成された筒状体からなり、
前記筒状体の前記スリットを挟んで周方向に隣り合う複数の部分が、前記弾性片を構成している、請求項1に記載の間接排水用器具。
【請求項3】
前記筒状体は、前記本体部の外部に設けられている、請求項2に記載の間接排水用器具。
【請求項4】
前記筒状体の内周面には、内側に突出する凸状部が設けられている、請求項2または3に記載の間接排水用器具。
【請求項5】
前記スリットは、前記筒状体の軸方向の全体にわたって形成されている、請求項2〜4のいずれか一つに記載の間接排水用器具。
【請求項6】
前記弾性片は、下側にいくほど半径方向内側に位置するように傾斜している、請求項2〜5のいずれか一つに記載の間接排水用器具。
【請求項7】
前記本体部は、上面部を有し且つ下端が開口した略筒状の中空体からなり、
前記流入口は前記上面部に形成され、前記通気口は前記中空体の側面に形成され、
前記中空体の前記下端が前記流出口を構成し、
前記筒状体は、前記上面部から略上方に延び、
前記筒状体の外径は、前記中空体の前記上面部の外径よりも小さい、請求項2〜5のいずれか一つに記載の間接排水用器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−162947(P2011−162947A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23806(P2010−23806)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】