説明

間葉系幹細胞の分化誘導方法

【課題】間葉系幹細胞の分化誘導に関する新たな技術の提供。
【解決手段】ヒト間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)の分化誘導の方法であって、デンドリマー化合物で修飾された培養面を有する細胞培養容器で前記間葉系幹細胞を培養することを含む、間葉系幹細胞の分化誘導方法。末端にD−グルコースが結合した世代数の異なるデントリマーで修飾された平面培養面を備える市販の角型8ウェルプレート(ポリスチレン製、表面積9.6cm2/ウェル)を使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間葉系幹細胞の分化誘導方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の再生医療研究の大きな流れの1つは、未分化な幹細胞を人為的に分化誘導し、目的とする組織や臓器を体外又は体内で再構築させようとすることである。そのなかでも間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells: MSCs)は、その多様な分化能から、再生医療へ応用できる有力な細胞供給源として期待されている。その一方で、間葉系幹細胞を目的の分化状態へ分化誘導する方法は現在研究開発段階にある。現在の間葉系幹細胞の分化誘導用法に関する研究の多くは、液相での可溶性因子(培地成分)による分化制御に関するものである。
【0003】
なお、細胞を培養する容器の培養面(培養培地が接触する底面)を修飾する技術の1つに、培養面をデンドリマー化合物で修飾する技術がある。下記特許文献1及び2は、細胞のトランスポータが取り込み可能な物質(D−グルコース)を末端に有するデンドリマー化合物で修飾された培養面、及び、前記培養面により細胞の固定化を促進することを開示する。下記非特許文献1及び2は、D−グルコースを提示するデンドリマー修飾培養面で培養されたヒト上皮細胞における、焦点接着の促進、及び形態変化を報告する。下記非特許文献3は、D−グルコースを提示するデンドリマー修飾培養面で培養されたラビット関節軟骨細胞における、形態変化及び移動への影響を報告する。さらに、下記非特許文献4は、マウスのES細胞(胚性幹細胞)の未分化状態が、D−グルコースを提示するデンドリマー修飾培養面を用いた培養で維持されることを報告する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−192406号公報
【特許文献2】特開2005−245224号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kim et al., J. Biosci. Bioeng., vol. 103 (2007) 192-199, "Response of Human Epithelial Cells to Culture Surfaces with Varied Roughness Prepared by Immobilizing Dendrimers with/without D-Glucose Display"
【非特許文献2】Kim et al., J. Biosci. Bioeng., vol.105 (2008) 319-326, "Glucose Transporter Mediation Responsible for Morphological Changes of Human Epithelial Cells on Glucose-Displayed Surfaces"
【非特許文献3】M. Kino-oka et al. Biomaterials 28 (2007) 1680-1688, "Morphological regulation of rabbit chondrocytes on glucose-displayed surface"
【非特許文献4】S. Mashayekhan et al. Biomaterials 29 (2008) 4236-4243, "Enrichment of undifferentiated mouse embryonic stem cells on a culture surface with a glucose-displaying dendrimer"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、間葉系幹細胞の分化誘導に関する新たな技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、間葉系幹細胞の分化を誘導方法であって、デンドリマー化合物で修飾された培養面を有する細胞培養容器で前記間葉系幹細胞を培養することを含む間葉系幹細胞の分化誘導方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、間葉系幹細胞の分化誘導の因子として、固相因子であるデンドリマー修飾培養面を提供できる。また、本発明よれば、間葉系幹細胞の分化誘導の固相因子としてのデンドリマー修飾培養面の使用を含む間葉系幹細胞の分化誘導が可能となる。さらにまた、本発明によれば、好ましくは、細胞増殖を伴う間葉系幹細胞の分化誘導が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、コントロール面(PS面)(a)、世代数1のデンドリマー修飾面(G1面)(b)、世代数3のデンドリマー修飾面(G3面)(c)、及び世代数5のデンドリマー修飾面(G5面)(d)の培養面で培養された間葉系幹細胞の、培養1日後、3日後、及び7日後の顕微鏡観察写真を示す図である。
【図2】図2は、PS面、G1面、G3面、及びG5面の培養面上で間葉系幹細胞を7日間培養した後、横紋筋・平滑筋細胞の分化マーカーであるデスミンの染色(緑)と、核染色(赤)とを行った顕微鏡観察写真を示す図である。
【図3】図3は、PS面、G1面、G3面、及びG5面の培養面上で間葉系幹細胞を7日間培養した後、軟骨系細胞の分化マーカーであるII型コラーゲンの染色(赤)を行った顕微鏡観察写真を示す図である。
【図4】図4は、0%、50%、及び100%のD−グルコースが提示された世代数が3、4、及び5(G3、G4、及びG5)のデンドリマー修飾培養面上で培養された間葉系幹細胞の、培養4日後及び7日後の顕微鏡観察写真を示す図である。
【図5】図5は、間葉系幹細胞をG5面の培養面上で7日間培養して得られた細胞集塊を、デスミン、MHC Fast Skeletal、cTnT及びII型コラーゲンのそれぞれのマーカーに対する蛍光免疫染色(緑)並びに核染色(Topro-3,青)した顕微鏡観察写真の一例を示す。
【図6】図6は、本発明にかかるデンドリマー修飾面の培養面を使用せずに作製した間葉系幹細胞の細胞集塊を、デスミン、MHC Fast Skeletal、cTnT、II型コラーゲン及びCD105のそれぞれのマーカーに対する蛍光免疫染色(緑)並びに核染色(Topro-3,青)した顕微鏡観察写真の一例を示す。
【図7】図7は、PS面、G1面、G3面、及びG5面の培養面上で間葉系幹細胞を7日間培養した後、デスミン、cTnT及びミオシン重鎖のそれぞれのマーカーに対する蛍光免疫染色(緑)並びに核染色(Topro,青)を行った顕微鏡観察写真の一例を示す。
【図8】図8は、PS面、G1面、G3面、及びG5面の培養面上で間葉系幹細胞を培養した場合の、培養時間と細胞密度との関係を示すグラフである。
【図9】図9は、PS面又はG5面で7日間培養した後、細胞をトリプシン処理してPS面上で再培養して5日目の細胞を顕微鏡観察した写真の一例を示す。
【図10】図10は、PS面又はG5面で7日間培養した後、細胞をトリプシン処理してPS面上で再培養して5日目の細胞の、デスミン、cTnT、MHC Fast Skeletal及びα-平滑筋アクチンのそれぞれのマーカーに対する蛍光免疫染色(緑)並びに核染色(Topro,青)後の顕微鏡観察写真の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、デンドリマー化合物で修飾された培養面で間葉系幹細胞を培養すると、汎用される平面培養面での培養では分化を誘導しない培養条件、例えば、分化誘導のための培地成分又は分化誘導培地を添加若しくは使用しない培養条件であっても、間葉系幹細胞の分化を誘導できるという知見に基づく。本発明は、好ましくは、さらに、前記の間葉系幹細胞の分化誘導が細胞増殖を伴いながら行うことができるという知見に基づく。
【0011】
すなわち、本発明は下記を含む;
[1]間葉系幹細胞の分化を誘導方法(以下、「本発明の分化誘導方法」ともいう。)であって、デンドリマー化合物で修飾された培養面を有する細胞培養容器で前記間葉系幹細胞を培養することを含む、間葉系幹細胞の分化誘導方法;
[2]前記分化が横紋筋・平滑筋系の細胞への分化であり、前記デンドリマー化合物の世代数が1以上である、[1]記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法;
[3]前記分化が軟骨系の細胞への分化であり、前記デンドリマー化合物の世代数が4以上である、[1]記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法;
[4]前記分化が、心筋系細胞への分化であり、
前記デンドリマー化合物の世代数が、4以上である、[1]記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法。
[5]前記細胞のトランスポータが取り込み可能な物質が前記培養面に提示されており、前記化合物は前記デンドリマー化合物の末端に結合している、[1]から[4]のいずれかに記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法;
[6]前記デンドリマー化合物は、カチオン性基を有する構成単位を含む、[1]から[5]のいずれかに記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法;
[7]前記細胞のトランスポータが取り込み可能な物質は、D−グルコース、D−フルクトース、及びD−ガラクトースからなる群から選択される少なくとも1つの糖である、[5]又は[6]に記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法;
[8]間葉系幹細胞を[1]から[7]のいずれかに記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法により分化の方向付けを行うことを含む、分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞の製造方法;
[9]前記分化の方向付けは、細胞増殖を伴う、[8]記載の細胞の製造方法;
[10][8]又は[9]記載の細胞の製造方法により製造され得る、分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞;
[11]間葉系幹細胞を[1]から[6]のいずれかに記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法により分化の方向付けを行うことを含む、分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞を含む生体材料の製造方法;
[12]前記分化の方向付けは、細胞増殖を伴う、[11]記載の生体材料の製造方法;[13][11]又は[12]記載の生体材料の製造方法により製造され得る、分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞を含む生体材料;
[14]間葉系幹細胞の分化誘導を行うためのキットであって、デンドリマー化合物で修飾された培養面を有する細胞培養容器、及び、[1]から[7]のいずれかに記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法が記載された取扱説明書を含む、間葉系幹細胞の分化誘導キット;
[15]デンドリマー化合物で修飾された培養面を有する細胞培養容器で間葉系幹細胞を培養することを含む、間葉系幹細胞由来の丸い形態をした細胞集塊を製造する方法;
[16]前記デンドリマー化合物の世代数が、4以上である、[15]記載の製造方法;
[17]間葉系幹細胞のトランスポータが取り込み可能な物質が前記培養面に提示されており、
前記化合物は前記デンドリマー化合物の末端に結合している、[15]又は[16]に記載の製造方法;
[18]前記トランスポータが取り込み可能な物質は、D−グルコース、D−フルクトース、及びD−ガラクトースからなる群から選択される少なくとも1つの糖である、[17]記載の製造方法。
【0012】
[間葉系幹細胞]
本明細書において、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)とは、好ましくは、多種類の間葉系組織を構成する細胞に分化し得る体性幹細胞をいう。間葉系幹細胞としては、ヒトへの臨床応用の点から、哺乳類の間葉系幹細胞が好ましく、霊長類の間葉系幹細胞がより好ましく、ヒトの間葉系幹細胞がさらに好ましい。また、間葉系幹細胞は、骨髄、脂肪、筋肉等に存在しうるが、本発明における間葉系幹細胞としては、特に制限されず、骨髄、脂肪、筋肉のいずれの組織から得られた間葉系幹細胞であってもよい。したがって、本明細書において間葉系幹細胞を使用することは、間葉系幹細胞を含む細胞集団を使用することを含んでもよい。また、本発明における間葉系幹細胞は、市販のものや細胞バンクから得られるものであってもよい。
【0013】
本発明における間葉系幹細胞は、継代培養されたものであってもよい。継代回数は特に制限されないが、分化能の維持という観点から、1〜50回が好ましく、1〜30回がより好ましく、1〜10回がさらに好ましい。本発明における間葉系幹細胞は、軟骨系の細胞及び横紋筋・平滑筋系の細胞への分化能を有することが好ましい。
【0014】
本発明における間葉系幹細胞は、間葉系幹細胞のマーカーが陽性であることが好ましい。間葉系幹細胞のマーカーとしては公知のマーカーを使用できる。ヒト間葉系幹細胞の場合、例えば、CD105、Stro−1、CD106、及びCD271の少なくとも1つの細胞表面マーカーが陽性であることが好ましい。
【0015】
[間葉系幹細胞の分化誘導]
本明細書において、間葉系幹細胞の分化誘導とは、間葉系幹細胞を未分化状態から分化を開始させることを含み、好ましくは、未分化状態から未分化状態では検出されない間葉系組織特異的な分化マーカーが検出され得る状態とすることを含む。当業者であれば、間葉系組織特異的な分化マーカー及びその検出方法を適宜選択し、該分化マーカーが検出されるか否かを判断することができる。
【0016】
間葉系組織特異的な分化マーカーとしては、細胞膜に存在する糖、タンパク質などを含む細胞表面マーカー;細胞内に存在するmRNA、タンパク質、酵素などを含む細胞内マーカー;細胞外に分泌されるペプチド、タンパク質、酵素、化合物などを含む細胞外マーカー;などが挙げられる。分化マーカーの検出方法としては、特に制限されず、標識抗体を用いる方法(染色法、フローサイトメトリー、ELISAなど)、酵素活性を利用した染色法、RT−PCR法などが挙げられる。
【0017】
間葉系組織特異的な分化マーカーの検出法としては、以下の方法が挙げられる。軟骨系細胞への分化誘導を確認する方法としては、例えば、II型コラーゲン染色法が挙げられる。脂肪細胞への分化誘導を確認する方法としては、例えば、オイルレッドO染色法が挙げられる。骨系細胞への分化誘導を確認する方法としては、例えば、ALP染色法が挙げられ、横紋筋・平滑筋系細胞への分化誘導を確認する方法としては、例えば、デスミン染色法が挙げられる。心筋系細胞への分化誘導を確認する方法としては、例えば、cTnT(cardiac troponic T)染色法が挙げられる。骨格筋系細胞への分化誘導を確認する方法としては、例えば、ミオシン重鎖染色法が挙げられる。血管系細胞への分化誘導を確認する方法としては、例えば、CD31染色法が挙げられる。但し、分化マーカーの検出方法は、これらに限定されない。
【0018】
本明細書において、「軟骨系細胞」とは、軟骨細胞、軟骨芽細胞、及び軟骨細胞への分化が方向付けされた細胞を含み、好ましくは、軟骨細胞特異的な分化マーカーを発現する細胞を含み、より好ましくはII型コラーゲン染色法で染色され得る細胞を含む。また、本明細書において、「横紋筋・平滑筋系細胞」とは、筋芽細胞、横紋筋及び又は平滑筋の筋細胞、筋芽細胞への分化が方向付けされた細胞を含み、好ましくは、筋芽細胞特異的な分化マーカーを発現する細胞を含み、より好ましくはデスミン染色法で染色され得る細胞を含む。本明細書において、「心筋系細胞」とは、心筋細胞、心筋芽細胞、心筋組織を構成し得る細胞、心筋細胞又は心筋芽細胞への分化が方向付けされた細胞を含み、好ましくは、心筋細胞又は心筋芽細胞特異的な分化マーカーを発現する細胞を含み、より好ましくはcTnT染色法で染色され得る細胞を含む。本明細書において、「骨系細胞」とは、骨芽細胞、骨細胞、及び骨芽細胞への分化が方向付けされた細胞を含む。
【0019】
本明細書において、「分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞」とは、未分化の間葉系幹細胞よりも特定の間葉系組織の細胞に特異的な性質を示すように変化した細胞をいい、好ましくは、未分化の間葉系幹細胞では発現していない或いは検出されない分化マーカーを発現している或いは検出され得る細胞をいう。
【0020】
[デンドリマー化合物]
本明細書において、デンドリマー化合物は、培養面の修飾に用いられる。デンドリマー化合物の修飾により、平面な培養面にナノメートルオーダーの凹凸が形成されうる。デンドリマー化合物としては、特に制限されず、上述のように、培養面にナノメートルオーダーの凹凸を形成できるものを使用でき、例えば、公知のポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーや、特開2005−192406号公報に開示される下記式(I)又は(II)で表わされるポリイミノアミンデンドリマーなどが挙げられる。また、細胞の培養面への固定化を促進する点からは、本発明に用いるデンドリマー化合物は、デンドリマー化合物の枝状部分を構成する分子(デンドロン)がカチオン性であることが好ましく、特に末端基がアミノ基であることがより好ましい。
【0021】
【化1】

【0022】
上記式(I)及び(II)において、Xは培養面又は培養面に結合した結合性基を示す。また、上記式(I)において、nは1以上の整数である。
【0023】
培養面を修飾するデンドリマー化合物の形成方法としては、デンドリマー化合物の枝状部分を構成する分子(デンドロン)を平面培養面に直接、或いはリンカーとなる化合物を介して結合させて形成する方法(Divergent法)が挙げられる。具体的には上記非特許文献1(Kim et al., J. Biosci. Bioeng., vol. 103 (2007) 192-199)に開示される方法が挙げられる。なお、本明細書においてデンドリマー化合物の世代数とは、枝状部分の分岐数をいい、例えば、上記式(I)で表わされるデンドリマー化合物においてn=1のとき、世代数は2であり、以下G2と表すこともある。また、上記式(II)で表されるデンドリマー化合物の世代数は1であり、G1と表すこともある。デンドリマー化合物の世代数は当業者であれば目的の世代数に適宜設計でき、具体的には後述する実施例のように設計できる。
【0024】
培養面を修飾するデンドリマー化合物の分岐方向の末端(例えば、上記式(I)及び(II)におけるアミノ基)には、必要に応じて、様々な物質を結合させてもよい。所望の物質を末端に結合することにより、該物質を培養する間葉系幹細胞に提示することができる。細胞の培養面への固定化を促進する点からは、デンドリマー化合物の末端に結合させる物質としては、細胞のトランスポータが取り込み可能な物質であることが好ましい。細胞のトランスポータが取り込み可能な物質としては、間葉系幹細胞の形態変化及び又は分化誘導を促進する点から、L−アミノ酸、及びD−グルコース、D−フルクトース、D−ガラクトースなどの糖が好ましい。一方、好ましさは劣る実施形態において、取り込み可能なトランスポータが細胞に存在しない物質(例えば、L−グルコース)をデンドリマー化合物の末端に結合させてもよい。
【0025】
[培養面]
本発明に用いる培養面は、上述したとおり、デンドリマー化合物で修飾された培養面であって、培養面にナノメートルオーダーの凹凸が形成されている培養面であることが好ましい。前記凹凸は、原子間力顕微鏡(AFM)で測定される表面粗さ(Ra)が、1〜10nmであることが好ましく、2〜7nmがより好ましい。上述したとおり、間葉系幹細胞の形態変化及び又は分化誘導を促進する点から、培養面には前記の細胞のトランスポータが取り込み可能な物質が提示されていることが好ましい。
【0026】
[間葉系幹細胞の分化誘導方法]
本発明の間葉系幹細胞の分化誘導方法は、上述のようにデンドリマー化合物で修飾された培養面を有する細胞培養容器で、間葉系幹細胞を培養することを含む分化誘導方法である。前記細胞培養容器は、修飾培養面を備える以外は通常の細胞培養で用いられるものと同様の材質、形状、大きさの細胞培養容器を使用できる。培養条件も、通常の条件、例えば4−6%CO2、好ましくは5%CO2下、例えば35−38℃、好ましくは37℃という条件を採用できる。培養培地は、間葉系幹細胞を未分化状態で培養する培地又は間葉系幹細胞の増殖用の培地を使用できる。すなわち、間葉系幹細胞の分化誘導が起こらない培養条件(例えば、分化誘導のための培地や分化誘導のための培地成分を使用しない培養条件)であっても、平面培養面をデンドリマー修飾培養面とするだけで間葉系幹細胞の分化誘導が行え、好ましくは、細胞増殖を伴う分化誘導が行える。但し、本発明の分化誘導方法は、デンドリマー修飾培養面の使用に加え、分化誘導のための培地及び又は培地の使用を含んでもよい。
【0027】
したがって、本発明によれば、間葉系幹細胞の分化誘導の因子として、固相因子であるデンドリマー修飾培養面を提供できる。そして、本発明よれば、間葉系幹細胞の分化誘導の固相因子であるデンドリマー修飾培養面の使用を含む、間葉系幹細胞の分化誘導が可能となる。さらに、本発明によれば、好ましくは、細胞増殖を伴う間葉系幹細胞の分化誘導が可能となる。なお、細胞増殖促進の観点からは、デンドリマー化合物の世代数が若いほど好ましい。
【0028】
さらにまた、本発明によれば、後述するとおり、デンドリマー化合物の世代数を調節することにより、間葉系幹細胞に対して異なる細胞への分化の方向付けをすることができる。例えば、世代数1以上であれば、横紋筋・平滑筋系細胞へ分化の方向付けが可能となり、世代数4以上であれば、さらに、軟骨系細胞及び心筋系細胞へ分化の方向付けが可能となる。
【0029】
[横紋筋・平滑筋系細胞への分化誘導]
したがって、本発明の一実施形態は、間葉系幹細胞の横紋筋・平滑筋系細胞への分化誘導方法であって、世代数が1以上のデンドリマー化合物で修飾された培養面を有する細胞培養容器で前記間葉系幹細胞を培養することを含む分化誘導方法である。この実施形態における本発明によれば、好ましくは、間葉系幹細胞に対する分化誘導とともに、間葉系幹細胞に対する横紋筋・平滑筋系細胞への分化の方向付けが可能となり、さらに好ましくは、細胞増殖を伴う、間葉系幹細胞の横紋筋・平滑筋系細胞への分化の方向付けが可能となる。デンドリマー化合物の世代数としては、好ましくは、1〜10、1〜8、又は1〜6である。細胞が培養面の平面方向に伸びた形態の細胞集団を得る点からは、世代数は1〜3が好ましい。また、細胞が丸い形態をした細胞集塊を得る点からは、世代数は、4以上が好ましく、4〜7がさらに好ましく、4〜6がより好ましい。
【0030】
横紋筋・平滑筋系細胞への分化を促進する点からは、間葉系幹細胞のトランスポータが取り込み可能な物質が、デンドリマー化合物の末端に結合することにより、前記修飾培養面に提示されていることが好ましく、横紋筋・平滑筋系細胞への分化を促進する点から、前記物質としては、L−アミノ酸、及びD−グルコース、D−フルクトース、D−ガラクトースなどの糖が好ましく、D−グルコース、D−フルクトース、及びD−ガラクトースがより好ましく、D−グルコースがさらに好ましい。上述のとおり、横紋筋・平滑筋系細胞への分化は、例えば、横紋筋・平滑筋系細胞に特異的な分化マーカー(例えば、デスミン)が陽性であることを基準に判断できる。
【0031】
[軟骨系細胞への分化誘導]
また、本発明のその他の実施形態は、間葉系幹細胞の軟骨系細胞への分化誘導方法であって、世代数が4以上のデンドリマー化合物で修飾された培養面を有する細胞培養容器で前記間葉系幹細胞を培養することを含む分化誘導方法である。この実施形態における本発明によれば、間葉系幹細胞に対する分化誘導とともに、間葉系幹細胞に対する軟骨系細胞への分化の方向付けが可能となり、さらに好ましくは、細胞増殖を伴う、間葉系幹細胞の軟骨系細胞への分化の方向付けが可能となる。軟骨系細胞への分化を促進する点からは、前記世代数は、4〜10又は4〜8が好ましく、4〜6がより好ましく、5がさらに好ましい。
【0032】
軟骨系細胞への分化を促進する点からは、間葉系幹細胞のトランスポータが取り込み可能な物質が、デンドリマー化合物の末端に結合することにより、前記修飾培養面に提示されていることが好ましく、軟骨系細胞への分化を促進する点から、前記物質としては、L−アミノ酸、及びD−グルコース、D−フルクトース、D−ガラクトースなどの糖が好ましく、D−グルコース、D−フルクトース、及びD−ガラクトースがより好ましく、D−グルコースがさらに好ましい。上述のとおり、軟骨系細胞への分化は、例えば、軟骨系細胞に特異的な分化マーカー(例えば、II型コラーゲン)が陽性であることを基準に判断できる。
【0033】
[心筋系細胞への分化誘導]
また、本発明のその他の実施形態は、間葉系幹細胞の心筋系細胞への分化誘導方法であって、世代数が4以上のデンドリマー化合物で修飾された培養面を有する細胞培養容器で前記間葉系幹細胞を培養することを含む分化誘導方法である。この実施形態における本発明によれば、間葉系幹細胞に対する分化誘導とともに、間葉系幹細胞に対する心筋系細胞への分化の方向付けが可能となる。心筋系細胞への分化を促進する点からは、前記世代数は、4〜10又は4〜8が好ましく、4〜6がより好ましく、5又は6がさらに好ましい。
【0034】
心筋系細胞への分化を促進する点からは、間葉系幹細胞のトランスポータが取り込み可能な物質が、デンドリマー化合物の末端に結合することにより、前記修飾培養面に提示されていることが好ましく、心筋系細胞への分化を促進する点から、前記物質としては、L−アミノ酸、及びD−グルコース、D−フルクトース、D−ガラクトースなどの糖が好ましく、D−グルコース、D−フルクトース、及びD−ガラクトースがより好ましく、D−グルコースがさらに好ましい。上述のとおり、心筋系細胞への分化は、例えば、心筋系細胞に特異的な分化マーカー(例えば、cTnT)が陽性であることを基準に判断できる。
【0035】
世代数が4以上のデンドリマー化合物で修飾された培養面で間葉系幹細胞を培養すると、前述のとおり、丸い形態をした細胞集塊を形成できる。後述の実施例で示すとおり、この細胞集塊の表面部(表層部)に位置する細胞は、II型コラーゲン陽性の軟骨系細胞への分化の方向付けがされた細胞となる傾向を示す。一方、該細胞集塊の表面部(表層部)以外の部分に相当する内部に位置する細胞は、心筋系細胞への分化の方向付けがされた細胞となる傾向を示す。なお、細胞集塊における表面部(表層部)及び内部は、後述する実施例に示すようにマーカー染色したデータを参照して判断することができる。
【0036】
したがって、間葉系幹細胞の軟骨系細胞への分化誘導方法にかかる一実施形態においては、さらに、世代数が4以上のデンドリマー化合物で修飾された培養面を有する細胞培養容器で培養することで得られた細胞集塊から該細胞集塊の表面部(表層部)に位置する細胞であって、好ましくは軟骨系細胞への分化の方向付けがされた細胞を分離することを含んでもよい。
【0037】
同様に、間葉系幹細胞の心筋系細胞への分化誘導方法にかかる一実施形態においては、さらに、世代数が4以上のデンドリマー化合物で修飾された培養面を有する細胞培養容器で培養することで得られた細胞集塊から該細胞集塊の内部に位置する細胞であって、好ましくは心筋系細胞への分化の方向付けがされた細胞を分離することを含んでもよい。
【0038】
間葉系幹細胞の心筋系細胞への分化誘導方法にかかるその他の実施形態においては、分離された該細胞集塊の内部に位置する細胞、好ましくは心筋系細胞への分化の方向付けがされた細胞を、デンドリマー修飾されていない平面培養面の細胞培養容器で培養することを含んでもよい。該細胞集塊から分離された心筋系細胞への分化の方向付けがされた細胞は、好ましくは、デンドリマー修飾されていない平面培養面に戻して培養してもcTnTなどの心筋系細胞に特異的な分化マーカーの陽性を維持できる。
【0039】
前述のとおり、本発明の分化誘導方法によれば、好ましくは、分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞を製造できる。
【0040】
[細胞の製造方法]
したがって、本発明は、その他の態様として、本発明の分化誘導方法により間葉系幹細胞に対して分化の方向付けを行うことを含む、分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞の製造方法(以下、「本発明の細胞の製造方法」ともいう。)に関する。本発明の細胞の製造方法によれば、好ましくは、細胞増殖を伴いながら、分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞を製造できる。また、本発明の細胞の製造方法によれば、組織工学、再生医療、再生医工学等における生体材料又は細胞供給源(細胞ソース)として使用可能な、分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来細胞を製造できる。
【0041】
本発明の細胞の製造方法により製造され得る細胞としては、前述のとおり、横紋筋・平滑筋系細胞へ分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来細胞、軟骨系細胞へ分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来細胞、及び、心筋系細胞へ分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来細胞が挙げられる。
【0042】
本発明の細胞の製造方法の一実施形態として、横紋筋・平滑筋系細胞へ分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来細胞の製造方法であって、上述した横紋筋・平滑筋系細胞への分化誘導方法により間葉系幹細胞を培養することを含む製造方法が挙げられる。また、本発明の細胞の製造方法のその他の実施形態として、軟骨系細胞へ分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来細胞の製造方法であって、上述した軟骨系細胞への分化誘導方法により間葉系幹細胞を培養することを含む製造方法が挙げられる。さらにまた、本発明の細胞の製造方法のその他の実施形態として、心筋系細胞へ分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来細胞の製造方法であって、上述した心筋系細胞への分化誘導方法により間葉系幹細胞を培養することを含む製造方法が挙げられる。
【0043】
本発明は、さらにその他の態様として、分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞を含む生体材料又は細胞供給源の製造方法であって、本発明の分化誘導方法により間葉系幹細胞に対して分化の方向付けを行うこと、或いは、本発明の細胞の製造方法により分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞を製造することを含む、製造方法に関する。本発明の生体材料又は細胞供給源の製造方法によれば、好ましくは、細胞増殖を伴いながら、分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞を含む生体材料又は細胞供給源を製造できる。
【0044】
また、前述のとおり、本発明の分化誘導方法は、従来間葉系幹細胞の分化誘導に使用される分化誘導のための培地及び又は分化誘導のための培地成分を使用しなくても行うことができるから、本発明の細胞の製造方法によれば、好ましくは、これらの分化誘導培地及び又は培地成分と未接触である(接触した経歴がない)、分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来細胞を製造でき、さらに好ましくは、細胞増殖を伴いながら、前記細胞を製造できる。
【0045】
本発明により製造され得る細胞、生体材料、又は細胞供給源は、好ましくは、再生医療の分野に使用され得る。例えば、心筋系細胞へ分化の方向付けがされた細胞は、好ましくは、心筋の修復に適用され、軟骨系細胞へ分化の方向付けがされた細胞は、好ましくは、関節軟骨の修復に適用され、横紋筋・平滑筋系細胞へ分化の方向付けがされた細胞は、好ましくは、筋肉組織の修復に適用され得る。或いは、本発明により製造され得る細胞、生体材料、又は細胞供給源は、好ましくは、創薬スクリーニングにおける細胞アッセイの用途にも使用され得る。但し、本発明により製造され得る細胞、生体材料、又は細胞供給源の用途はこれらに限定されない。
【0046】
[キット]
本発明は、さらにその他の態様として、間葉系幹細胞の分化誘導を行うためのキットであって、デンドリマー化合物で修飾された培養面を有する細胞培養容器、及び、本発明の分化誘導方法を説明する記載を含む取扱説明書を含む間葉系幹細胞の分化誘導キット(以下、「本発明の分化誘導キット」ともいう。)に関する。本発明の分化誘導キットは、さらに、間葉系幹細胞を含んでもよい。なお、本発明の分化誘導キットにおける取扱説明書は、本発明の分化誘導キットに同梱されることなくウェブ上で提供される形態であってもよい。本発明の分化誘導キットにおける培養面及び細胞培養容器は、前述のものを使用できる。分化誘導の効率化の点から、前述のとおり、間葉系幹細胞のトランスポータが取り込み可能な物質が、デンドリマー化合物の末端に結合することにより、前記修飾培養面に提示されていることが好ましく、前記物質としては、L−アミノ酸、及びD−グルコース、D−フルクトース、D−ガラクトースなどの糖が好ましく、D−グルコース、D−フルクトース、及びD−ガラクトースがより好ましく、D−グルコースがさらに好ましい。
【0047】
本発明の分化誘導キットの一実施形態は、細胞培養容器が世代数1以上、好ましくは1〜10、1〜8、1〜6、1〜3、又は4〜6のデンドリマー化合物で修飾された培養面を有し、間葉系幹細胞に対して横紋筋・平滑筋系細胞への分化誘導を行うキットである。この実施形態における本発明の分化誘導キットによれば、間葉系幹細胞に対する分化誘導とともに、間葉系幹細胞に対する横紋筋・平滑筋系細胞への分化の方向付けが可能となり、好ましくは、横紋筋・平滑筋系細胞への分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞を製造でき、より好ましくは、細胞増殖を伴いながら、横紋筋・平滑筋系細胞への分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞を製造できる。
【0048】
本発明の分化誘導キットのその他の実施形態は、細胞培養容器が世代数4以上、好ましくは4〜10又は4〜8、より好ましくは4〜6、さらに好ましくは5のデンドリマー化合物で修飾された培養面を有し、間葉系幹細胞に対して軟骨系細胞及び/又は心筋系細胞への分化誘導を行うキットである。この実施形態における本発明の分化誘導キットによれば、間葉系幹細胞に対する分化誘導とともに、間葉系幹細胞に対する軟骨系細胞及び/又は心筋系細胞への分化の方向付けが可能となり、好ましくは、軟骨系細胞及び/又は心筋系細胞への分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞を製造でき、より好ましくは、細胞増殖を伴いながら、軟骨系細胞及び/又は心筋系細胞への分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞を製造できる。
【0049】
[治療方法]
本発明は、さらにその他の態様として、本発明の細胞の製造方法で製造され得る細胞の使用を含む治療方法及び又は再生医療方法に関する。例えば、軟骨を欠損した対象の間葉系幹細胞を用いて本発明の細胞の製造方法により軟骨系細胞への分化が誘導された細胞を調製し、前記細胞を対象の軟骨欠損部位に移植する治療又は再生医療の方法が挙げられる。前記移植は、例えば、コラーゲンゲルスポンジなどに前記細胞を播種し、そのスポンジを欠損部に配置するなどして行うことができる。また、例えば、拡張型心筋症の対象の間葉系幹細胞を用いて本発明の細胞の製造方法により横紋筋・平滑筋系細胞又は心筋系細胞への分化が誘導された細胞を調製し、それらの細胞から筋芽細胞シート(心機能回復材)を製造する拡張型心筋症の治療又は再生医療の方法が挙げられる。すなわち、本発明の治療方法及び又は再生医療方法は、前記心機能回復材を対象の心臓の外部に被覆して心臓壁面への血管を誘導し、心筋細胞を修復し、心機能の回復を目指す、拡張型心筋症の治療又は再生医療の方法である。なお、本発明における治療方法及び又は再生医療方法はこれらに限定されない。
【0050】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0051】
末端にD−グルコースが結合した世代数の異なるデントリマーで修飾された培養面においてヒト間葉系幹細胞を培養した。培養面の作製方法及び細胞培養条件は、下記のとおり。
【0052】
[培養面の準備]
デンドリマーで修飾された培養面は、平面培養面(Plain surface)を備える出発材料として市販の角型8ウェルプレート(ポリスチレン製、表面積9.6cm2/ウェル、Nunc社製)を使用し、下記のように作製した。また、この8ウェルプレートの平面培養面をコントロール面(以下、「PS面」ともいう。)として使用した。
【0053】
〔世代数1(G1)のD−グルコース提示デンドリマー面の作製〕
G1のD−グルコース提示デンドリマー面(G1面)は、無菌条件下において下記4ステップで作製した。
ステップ1:出発材料である前記平面培養面上にヒドロキシル基を提示させるために、50μmol/mlのカリウムtert−ブトキシド(t−BuOK)水溶液をウェルに添加し、室温で1時間静置した。その後、前記ウェルを滅菌水で3回洗浄した。
ステップ2:360μmol/mlのグルタルアルデヒド水溶液を前記ウェルに添加し、室温で1時間静置し、その後多量の滅菌水で洗浄した。前記ウェルに360μmol/mlのトリス(2−アミノエチル)アミン水溶液(pH9.0)を添加して1時間静置してデンドロン構造を形成し、滅菌水で洗浄した。
ステップ3:デンドリマー末端にD−グルコースを提示させるため、0.5μmol/mlのD−グルコース水溶液を前記ウェルに添加して2時間静置した。
ステップ4:0.5μmol/mlの水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を前記ウェルに添加して24時間静置した。前記ウェルを滅菌水で洗浄し、D−グルコースが提示されたデンドリマーで修飾された培養面を得た。
【0054】
〔世代数3及び5(G3及びG5)のD−グルコース提示デンドリマー面の作製〕
G3及びG5のD−グルコース提示デンドリマー面(G3面及びG5面)は、上記ステップ1の後、上記ステップ2をそれぞれ3回及び5回繰り返してデンドリマーの世代数を3及び5とし、その後、上記ステップ3及びステップ4を行うことにより作製した。
【0055】
[使用した細胞]
ヒト間葉系幹細胞として、ヒト骨髄間葉系幹細胞(Lonza社製)を使用した。
【0056】
[使用した培地]
上記デンドリマー修飾培養面上での培養培地として、10%FBS(ウシ胎児血清)を含むDMEM培地(ダルベッコ改変イーグル培地)(Sigma社製)を使用した。また、前記間葉系幹細胞の増殖用培地としては、ヒト骨髄間葉系幹細胞培養培地(Lonza社製)を使用した。
【0057】
[培養条件]
細胞培養は、37℃、5%CO2雰囲気下で行った。なお、細胞のウェルへの接種濃度
は、5×103cell/cm2とした。
【0058】
[培細胞分化評価]
間葉系幹細胞の分化は、下記表1の分化マーカー染色法を用いて確認した。なお、10%FBS(ウシ胎児血清)を含むDMEM培地を用いて、PS面で培養したヒト間葉系幹細胞は、下記表1の分化マーカー染色に対して全てが陰性であった。
【0059】
【表1】

【0060】
[細胞形態変化及びその結果]
PS面、G1面、G3面、及びG5面上で上記間葉系幹細胞を上記培養条件で培養し、1、3、及び7日後の細胞の形態を顕微鏡観察した。その結果の一例を図1に示す。図1は、PS面(a)、G1面(b)、G3面(c)、及びG5面(d)の培養面で培養された間葉系幹細胞の、培養1日後、3日後、及び7日後の顕微鏡観察写真を示す図である。
【0061】
図1に示すとおり、PS面、G1面、及びG3面の培養面上で培養した間葉系幹細胞は平面方向に伸張した形態を示す傾向があった。一方、G5面の培養面上で培養した場合、細胞の形態は丸くなり、幾つかの細胞が塊になって球状の細胞集塊が形成された。また、該細胞集塊は、培養日数とともに大きくなる傾向があった。
【0062】
[分化の方向付けの確認:横紋筋・平滑筋系への分化]
PS面、G1面、G3面、及びG5面の培養面上で間葉系幹細胞を7日間培養した後、デスミン染色を行って、該分化マーカーの有無を確認した。その結果の一例を図2に示す。図2は、横紋筋・平滑筋系細胞及び平滑筋系細胞の分化マーカーであるデスミンの染色(緑)と核染色(赤)とを行った顕微鏡観察写真を示す図である。なお、G5面での培養結果については、平面(上面)の写真に加え、断側面の共焦点顕微鏡観察写真を示す。
【0063】
図2に示すとおり、PS面の培養面上で培養した間葉系幹細胞ではデスミン染色陰性であったが、G1面及びG3面の培養面上で培養した間葉系幹細胞はデスミン染色陽性であった。したがって、G1面及びG3面の培養面上で培養した間葉系幹細胞は、横紋筋・平滑筋系の細胞への分化の方向付けがされたことがわかる。
【0064】
また、G5面の培養面上で培養した間葉系幹細胞は、前述のとおり細胞集塊を形成し、デスミン染色したところ、図2に示すとおり、細胞集塊の表面に位置する細胞がデスミン染色陽性を示した。
【0065】
[分化の方向付けの確認:軟骨系への分化]
PS面、G1面、G3面、及びG5面の培養面上で間葉系幹細胞を7日間培養した後、II型コラーゲン染色を行って、該分化マーカーの有無を確認した。その結果の一例を図3に示す。図3は、軟骨系細胞の分化マーカーであるII型コラーゲンの染色(赤)を行った顕微鏡観察写真を示す図である。
【0066】
図3に示すとおり、PS面、G1面、及びG3面の培養面で培養した間葉系幹細胞ではII型コラーゲン染色陰性であったが、G5面の培養面で培養した間葉系幹細胞はデスミン染色陽性であった。したがって、G5面の培養面上で培養した間葉系幹細胞は、軟骨系細胞への分化の方向付けがされたことがわかる。
【0067】
以上、示したとおり、PS面での培養においてはヒト間葉系幹細胞の分化の誘導が起こらない培養条件(例えば、分化誘導のための馴化培地や分化誘導のための培地成分を使用しない培養条件)であっても、培養面をPS面からG1又はG3面とするだけでヒト間葉系幹細胞の分化の誘導及び横紋筋・平滑筋系細胞への分化の方向付けができ、培養面をPS面からG5面とするだけでヒト間葉系幹細胞の分化の誘導及び横紋筋・平滑筋系細胞への分化の方向に加え、軟骨系細胞への分化の方向付けができることが示された。
【実施例2】
【0068】
提示されるD−グルコースの量が0%、50%、及び100%となるデンドリマー修飾培養面を作製し、これらの培養面においてヒト間葉系幹細胞を培養した。培養面の作製方法及び細胞培養条件は、下記のとおり。D−グルコースの提示量は、L−グルコースの混合率で調節した。なお、ヒト細胞には、L−グルコースを取り込み可能なトランスポータが存在しない。
【0069】
[培養面の準備]
デンドリマーで修飾された培養面は、平面培養面(Plain surface)を備える出発材料として市販の角型8ウェルプレート(ポリスチレン製、表面積9.6cm2/ウェル、Nunc社製)を使用し、下記のように作製した。
【0070】
〔100%D−グルコース提示デンドリマー面の作製〕
世代数3、4、及び5(G3、G4、及びG5)の100%D−グルコース提示デンドリマー面は、無菌条件下において下記4ステップで作製した。
ステップ1:出発材料である前記平面培養面上にヒドロキシル基を提示させるために、50μmol/mlのカリウムtert−ブトキシド(t−BuOK)水溶液をウェルに添加し、室温で1時間静置した。その後、前記ウェルを滅菌水で3回洗浄した。
ステップ2:360μmol/mlのグルタルアルデヒド水溶液を前記ウェルに添加し、室温で1時間静置し、その後多量の滅菌水で洗浄した。前記ウェルに360μmol/mlのトリス(2−アミノエチル)アミン水溶液(pH9.0)を添加して1時間静置してデンドロン構造を形成し、滅菌水で洗浄した。G3、G4、及びG5の培養面を作製する場合、このステップ2を、それぞれ、3、4、及び5回繰り返した。
ステップ3:デンドリマー末端にD−グルコースを提示させるため、0.5μmol/mlのD−グルコース水溶液を前記ウェルに添加して2時間静置した。
ステップ4:0.5μmol/mlの水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を前記ウェルに添加して24時間静置した。前記ウェルを滅菌水で洗浄し、100%のD−グルコースが提示されたデンドリマー培養面(G3、G4、及びG5)を得た。
【0071】
〔0%及び50%D−グルコース提示デンドリマー面の作製〕
0%D−グルコース提示デンドリマー面(G3、G4、及びG5)は、上記ステップ3における0.5μmol/mlのD−グルコース水溶液を、0.5μmol/mlのL−グルコース水溶液とした以外は前述の100%D−グルコース提示デンドリマー面(G3、G4、及びG5)と同様にして作製した。また、50%D−グルコース提示デンドリマー面(G3、G4、及びG5)は、上記ステップ3における0.5μmol/mlのD−グルコース水溶液を、D−グルコース及びL−グルコースを等量含みグルコース濃度が0.5μmol/mlのグルコース水溶液とした以外は前述の100%D−グルコース提示デンドリマー面(G3、G4、及びG5)と同様にして作製した。
【0072】
[使用した細胞]
ヒト間葉系幹細胞として、ヒト骨髄間葉系幹細胞(Lonza社製)を使用した。
【0073】
[使用した培地]
上記デンドリマー修飾培養面上での培養培地として、10%FBS(ウシ胎児血清)を含むDMEM培地(ダルベッコ改変イーグル培地)(Sigma社製)を使用した。また、前記間葉系幹細胞の増殖用培地としては、ヒト骨髄間葉系幹細胞培養培地(Lonza社製)を使用した。
【0074】
[培養条件]
細胞培養は、37℃、5%CO2雰囲気下で行った。なお、細胞のウェルへの接種濃度は、5×103cell/cm2とした。
【0075】
[細胞形態変化及びその結果]
0%、50%、及び100%D−グルコース提示デンドリマー(G3、G4、及びG5)で修飾された培養面上で上記間葉系幹細胞を上記培養条件で培養し、4及び7日後の細胞の形態を顕微鏡観察した。その結果の一例を図4に示す。
【0076】
図4に示すとおり、G3面の培養面上で培養した間葉系幹細胞は、グルコースの提示量に関らず、平面方向に伸張した形態を示した。一方、G4及びG5面の培養面上で培養した場合、細胞の形態は丸くなり、幾つかの細胞が塊になって球状の細胞集塊が形成された。細胞集塊を形成する細胞の数は、G4面よりもG5面の方が多かった。また、細胞集塊を形成する細胞の数は、D−グルコースの提示が多いほど多かった。よって、細胞集塊の形成は、デンドリマーの世代数が多いほど、また、D−グルコースの提示が多いほど、促進されることが示された。
【実施例3】
【0077】
[分化の方向付けの確認:心筋系への分化]
G5面の培養面上で、間葉系幹細胞を7日間培養して細胞集塊を得た。使用した間葉系幹細胞、培養条件等は、実施例1と同様である。次に、この細胞集塊に対して、骨格筋系細胞に特異的なマーカー(デスミン、MHC fast Skeletal)、心筋系細胞に特異的なマーカー(デスミン、cTnT)、及び軟骨系細胞に特異的なマーカー(II型コラーゲン)に対する蛍光免疫染色を行った。染色の程度を確認するためTopro−3により核染色も同時に行った。その観察結果を図5に示す。
【0078】
図5に示すとおり、デスミン及びcTnTは、細胞集塊全体的に発現していた。一方、MHC fast Skeletal及びII型コラーゲンは、表面(表層部)において発現が確認された。したがって、該細胞集塊においては、表面(表層部)の細胞は軟骨系細胞への分化の方向付けがされているが、該細胞集塊の内部の細胞は心筋系細胞への分化の方向付けがされていることが確認された。
【0079】
[デンドリマー修飾面の役割の確認]
上記のような心筋系細胞への分化誘導には、デンドリマー修飾培養面上での培養が必要であることを確認するため、細胞非接着性の丸底98ウェルプレートを利用して間葉系幹細胞の細胞集塊を作製した。細胞培養容器を細胞非接着性の丸底98ウェルプレートとした以外は、細胞培養条件は実施例1と同様とした。次に、得られた細胞集塊に対してデスミン、MHC fast Skeletal、cTnT、II型コラーゲン、及びCD105の各マーカーに対する蛍光免疫染色を行った。なお、CD105は、未分化の間葉系幹細胞のマーカーの1つである。その観察結果を図6に示す。
【0080】
図6に示すとおり、デスミンが細胞集塊の周囲で若干の発現が観察されたが、図5とは対照的に、MHC fast Skeletal、cTnT、及びII型コラーゲンの各マーカーについては陰性であった。また、間葉系幹細胞の未分化状態を示すCD105が陽性であった。したがって、間葉系幹細胞を単に細胞集塊とするだけでは心筋細胞の分化誘導には不十分であり、デンドリマー修飾培養面上での培養が必要であることが確認された。
【0081】
[PS面、G1面、G3面における心筋系細胞への分化の有無]
PS面、G1面、及びG3面における心筋系細胞への分化誘導の有無を確認した。実施例1に記載の培養条件と同様の条件下において、PS面、G1面、G3面、及びG5面の培養面上で間葉系幹細胞を7日間培養した。その後、デスミン、MHC fast Skeletal、及びcTnTに対する蛍光免疫染色を行って顕微鏡観察した。その結果を図7に示す。
【0082】
図7に示すとおり、細胞集塊を形成しないPS面、G1面、及びG3面では、cTnTマーカーが陰性であった。よって、心筋系細胞への分化誘導には、デンドリマー修飾培養面上での細胞集塊の形成が必要であることが示唆された。
【0083】
[分化誘導と細胞増殖の関係]
PS面、G1面、G3面、及びG5面の培養面上で間葉系幹細胞を培養するときの培養時間と細胞増殖の関係を確認した。具体的には、実施例1に記載の細胞培養条件下で培養し、所定の時間ごとに細胞密度を計測した。その結果を図8に示す。
【0084】
図8に示すとおり、PS面、G1面、及びG3面の培養面上では、間葉系幹細胞に由来する細胞は増殖し続けた。一方、G5面上での培養では間葉系幹細胞に由来する細胞はある一定の時間から増殖が止まった。G5面上での増殖停止は、心筋系細胞への分化との関連が示唆される。
【0085】
なお、本実施例3の結果は、ロット違いのヒト骨髄間葉系幹細胞でも再現された。
【実施例4】
【0086】
[細胞分化可塑性]
G5面の培養面で間葉系幹細胞を7日間培養して心筋系細胞への分化が方向付けられた細胞集塊を得て、その細胞集塊をトリプシン処理して乖離させた細胞をPS面の培養面に移して再培養した。対照として、PS面の培養面で7日間培養した間葉系幹細胞を同様にトリプシン処理したのち、PS面の培養面で再培養した。使用した細胞、培養条件は実施例1と同様である。再培養の5日目に顕微鏡観察により細胞の形態を確認し、さらに、様々な分化マーカーの発現を確認した。
【0087】
細胞の形態観察結果を図9に示す。G5面の培養後にPS面で再培養した細胞(図9下)は、通常の間葉系幹細胞及びPS面の培養後にPS面で再培養した細胞(図9上)に比べてやや扁平な多角形状を示した。
【0088】
次に、デスミン、cTnT、MHC Fast Skeletal及びα-平滑筋アクチンのマーカーに対する蛍光免疫染色の結果を図10に示す。PS面の培養後にPS面で再培養した細胞では、これらのマーカーは全て陰性であった。一方、G5面の培養後にPS面で再培養した細胞の多くは、デスミン及びcTnTのマーカーが陽性であった。したがって、G5面の培養面で誘導された心筋系細胞へ分化は、細胞分化安定性的に優れていることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、例えば、組織工学の分野、再生医療の分野、再生医工学の分野などにおいて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間葉系幹細胞の分化誘導の方法であって、
デンドリマー化合物で修飾された培養面を有する細胞培養容器で前記間葉系幹細胞を培養することを含む、間葉系幹細胞の分化誘導方法。
【請求項2】
前記分化が、横紋筋・平滑筋系の細胞への分化であり、
前記デンドリマー化合物の世代数が、1以上である、請求項1記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法。
【請求項3】
前記分化が、軟骨系の細胞への分化であり、
前記デンドリマー化合物の世代数が、4以上である、請求項1記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法。
【請求項4】
前記分化が、心筋系細胞への分化であり、
前記デンドリマー化合物の世代数が、4以上である、請求項1記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法。
【請求項5】
間葉系幹細胞のトランスポータが取り込み可能な物質が前記培養面に提示されており、
前記化合物は前記デンドリマー化合物の末端に結合している、請求項1から4のいずれかに記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法。
【請求項6】
前記デンドリマー化合物は、カチオン性基を有する構成単位を含む、請求項1から5のいずれかに記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法。
【請求項7】
前記トランスポータが取り込み可能な物質は、D−グルコース、D−フルクトース、及びD−ガラクトースからなる群から選択される少なくとも1つの糖である、請求項5又は6に記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法。
【請求項8】
間葉系幹細胞を請求項1から7のいずれかに記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法により分化の方向付けを行うことを含む、分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞の製造方法。
【請求項9】
前記分化の方向付けは、細胞増殖を伴う、請求項8記載の細胞の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の細胞の製造方法により製造され得る、分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞。
【請求項11】
間葉系幹細胞を請求項1から7のいずれかに記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法により分化の方向付けを行うことを含む、分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞を含む生体材料の製造方法。
【請求項12】
前記分化の方向付けは、細胞増殖を伴う、請求項11記載の生体材料の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の生体材料の製造方法により製造され得る、分化の方向付けがされた間葉系幹細胞由来の細胞を含む生体材料。
【請求項14】
間葉系幹細胞の分化誘導を行うためのキットであって、
デンドリマー化合物で修飾された培養面を有する細胞培養容器、及び、
請求項1から7のいずれかに記載の間葉系幹細胞の分化誘導方法が記載された取扱説明書を含む、間葉系幹細胞の分化誘導キット。
【請求項15】
デンドリマー化合物で修飾された培養面を有する細胞培養容器で間葉系幹細胞を培養することを含む、間葉系幹細胞由来の丸い形態をした細胞集塊を製造する方法。
【請求項16】
前記デンドリマー化合物の世代数が、4以上である、請求項15記載の製造方法。
【請求項17】
間葉系幹細胞のトランスポータが取り込み可能な物質が前記培養面に提示されており、
前記化合物は前記デンドリマー化合物の末端に結合している、請求項15又は16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記トランスポータが取り込み可能な物質は、D−グルコース、D−フルクトース、及びD−ガラクトースからなる群から選択される少なくとも1つの糖である、請求項17記載の製造方法。

【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−200745(P2010−200745A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185191(P2009−185191)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】