説明

防振ブッシュ

【目的】 入力荷重の大小に応じてバネ定数を変化させてバネ特性を二段とする。またバネ定数の切換え時期を調節し、第二段のバネ定数を調節し、更にインナースリーブ1とアウタースリーブ2の径方向変位を所定距離迄に制限する。
【構成】 弾性体3を軸方向に並ぶ複数の分割体に分割し、互いに隣り合う分割体の間に空間4を設定し、分割体同士を所定値以上の大きさの荷重が入力したときに互いに接触させる。また空間4内にストッパ7を挿入する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、防振ブッシュの改良に関する。本考案の防振ブッシュは例えばリニアモータ用の防振ブッシュとして用いられる。
【0002】
【従来の技術】
従来から、剛材製のインナースリーブと剛材製のアウタースリーブを同心上に配置し、両スリーブの間に軸方向に単体のゴム状弾性材製の弾性体を介装した防振ブッシュが知られている。この防振ブッシュは径方向の入力荷重を受けて両スリーブを互いに変位させ、変位に伴って弾性体を弾性変形させ、この弾性変形により入力荷重を吸収してダンピング効果を奏するものである。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
上記従来技術には、入力荷重の大小に拘らずこれを受ける弾性体のバネ定数が常に一定であるために、バネ特性が一段であり、大きな入力荷重を高いバネ定数をもって硬く受け、小さな入力荷重を低いバネ定数をもって柔らかく受けるといった使い分けができない問題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本考案は以上の点に鑑み、上記従来技術にみられる問題を解消すべく案出されたものであって、この目的を達成するため、インナースリーブとアウタースリーブの間にゴム状弾性材製の弾性体を介装した防振ブッシュにおいて、前記弾性体を軸方向に並ぶ複数の分割体に分割し、互いに隣り合う前記分割体の間に空間を設定し、前記分割体同士が所定値以上の大きさの荷重が入力したときに互いに接触するものであることを特徴とする防振ブッシュを提供する(請求項1)。また前記空間内にストッパを挿入したことを特徴とする防振ブッシュを提供する(請求項2)。
【0005】
【作用】
入力荷重の大きさが所定値より小さい場合は、弾性体の分割体が互いに接触することなくそれぞれ別個に弾性変形する。入力荷重の大きさが所定値より大きい場合は、分割体が空間を無くすようにして互いに接触する。分割体はこの接触により互いに干渉し、すなわち相手方があることによってそれ以上の弾性変形をしづらくなる。したがってこの干渉作用の有無により接触の前後においてバネ定数が変化することになり、バネ特性が二段になる。空間内に挿入するストッパはこのバネ定数の切換え時期を調節し、第二段のバネ定数を調節し、更に両スリーブの径方向変位を所定距離迄に制限する。
【0006】
【実施例】
つぎに本考案の実施例を図面にしたがって説明する。
【0007】
図1および図2は本考案の第一実施例を示しており、この実施例では弾性体3のみならずインナースリーブ1およびアウタースリーブ2もそれぞれ軸方向に分割されている。
すなわち、剛材製のインナースリーブ1が軸方向に並ぶ三個の分割体1a,1b,1cに分割され、分割体1a,1b,1c同士が互いに接着されている。また剛材製のアウタースリーブ2が軸方向に並ぶ三個の分割体2a,2b,2cに分割され、分割体2a,2b,2c同士が互いに接着されている。またゴム状弾性材製の弾性体3が軸方向に並ぶ三個の分割体3a,3b,3cに分割され、分割体3a,3b,3cの間に空間4が設定され、分割体3a,3b,3c同士が所定値以上の大きさの荷重が入力したときに空間4を無くすようにして互いに接触するようになっている。弾性体3の分割体3a,3b,3cはそれぞれ円周方向に二等配されている。尚、この防振ブッシュは製造時、1a,2a,3aを第一組、1b,2b,3bを第二組、1c,2c,3cを第三組として組毎に加硫成形され、成形後に軸方向に直列に接着される。
【0008】
上記構成の防振ブッシュにはその径方向に大小様々な大きさの荷重が入力するが、入力荷重の大きさが所定値より小さい場合は、両スリーブ1,2の変位が小さいために、弾性体3の分割体3a,3b,3cが互いに接触することなくそれぞれ別個に弾性変形する。これに対して入力荷重の大きさが所定値より大きい場合は、両スリーブ1,2の変位が大きいために、分割体3a,3b,3cが空間4を無くすようにして互いに接触する。互いに隣り合う分割体3a,3b,3cはこの接触により互いに干渉し、すなわち相手方があることによってそれ以上の弾性変形をしづらくなる。したがってこの干渉作用の有無により接触の前後においてバネ定数が変化することになり、バネ特性が二段になり、大きな入力荷重を高いバネ定数をもって硬く受け、小さな入力荷重を低いバネ定数をもって柔らかく受けるといった使い分けが可能となる。
また上記構成の防振ブッシュを従来の空間4の無い防振ブッシュと比較すると次のことが言える。すなわち、軸方向の長さが或る程度長い防振ブッシュを考えた場合、従来の空間4の無い防振ブッシュだと、弾性体の軸方向中央部が弾性変形時の逃げ場が無いために変形しづらく、このため本来のダンピング効果が得られないことがある。これに対して上記構成の防振ブッシュによれば、弾性体3の全ての部分が空間4を弾性変形時の逃げ場として容易に変形するために、本来のダンピング効果を得易いものである。
【0009】
図3および図4は本考案の第二実施例を示しており、この実施例ではインナースリーブ1、アウタースリーブ2および弾性体3がそれぞれ一部品により構成されている。
弾性体3は円筒形の一部品であるが、その外周面または内周面(図では外周面)に七本の環状溝5が形成されており、この環状溝5によって軸方向に並ぶ八個の分割体3a,3b・・・3hが確保され、またこの環状溝5をもって分割体3a,3b・・・3hの間の空間4が設定されている。分割体3a,3b・・・3h同士が所定値以上の大きさの荷重が入力したときに空間4を無くすようにして互いに接触することは第一実施例と同じである。
またこの防振ブッシュは製造時、両スリーブ1,2の間に弾性体3を軸方向の一方から圧入するものであって、圧入後における各空間4の軸方向長さを設計どおりに設定し得るように、各空間4に環状のスペーサ6が組み込まれている。
【0010】
図5は本考案の第三実施例を示しており、第一実施例における防振ブッシュの空間4にそれぞれ環状のストッパ7を挿入したものである。
ストッパ7の材質はこれをゴム状弾性材とすることと剛材とすることの二通りが考えられる。
ストッパ7の材質をゴム状弾性材とした場合には次の作用効果を奏する。すなわち空間4にこのストッパ7があると、この分、空間4の容積が減少するために弾性体3の分割体3a,3b,3cが互いに早く、すなわちストッパ7が無い場合と比較して小さな荷重が入力した段階で接触するようになり、このストッパ7の大きさ次第でバネ定数の切換え時期を調節することができる。またこのストッパ7の硬さ、柔らかさ次第で当該防振ブッシュの第二段のバネ定数を調節することができる。
ストッパ7の材質を剛材とした場合には次の作用効果を奏する。すなわちこのストッパ7の大きさ次第でバネ定数の切換え時期を調節することができることはゴム状弾性材の場合と同じである。またこのストッパ7があることにより両スリーブ1,2の径方向変位が所定距離迄に制限されるために、弾性体3に大きな負担が掛かるのを防止して弾性体3の耐久性を向上させることができる。
【0011】
図6は本考案の第四実施例を示しており、第二実施例と同じようにインナースリーブ1、アウタースリーブ2および弾性体3をそれぞれ一部品により構成した上で、第三実施例と同じように空間4内にそれぞれ環状のストッパ7を挿入したものである。
【0012】
尚、上記した各実施例において、インナースリーブ1、アウタースリーブ2および弾性体3のそれぞれの分割数は単なる例示に過ぎない。
【0013】
【考案の効果】
本考案は次の効果を奏する。すなわち、弾性体を軸方向に並ぶ複数の分割体に分割し、互いに隣り合う分割体の間に空間を設定し、分割体同士を所定値以上の大きさの荷重が入力したときに互いに接触させるようにしたために、接触の前後においてバネ定数が変化してバネ特性が二段になり、大きな入力荷重を高いバネ定数をもって硬く受け、小さな入力荷重を低いバネ定数をもって柔らかく受けるといった使い分けが可能となる。また空間内にストッパを挿入した場合には、上記効果に加えて、バネ定数の切換え時期を調節し、第二段のバネ定数を調節し、更に両スリーブの径方向変位を所定距離迄に制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の第一実施例に係る防振ブッシュの断面図
【図2】図1におけるA−A線断面図
【図3】本考案の第二実施例に係る防振ブッシュの断面図
【図4】図3におけるB−B線断面図
【図5】本考案の第三実施例に係る防振ブッシュの断面図
【図6】本考案の第四実施例に係る防振ブッシュの断面図
【符号の説明】
1 インナースリーブ
2 アウタースリーブ
3 弾性体
3a,3b・・・3h 分割体
4 空間
5 環状溝
6 スペーサ
7 ストッパ

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 インナースリーブ1とアウタースリーブ2の間にゴム状弾性材製の弾性体3を介装した防振ブッシュにおいて、前記弾性体3を軸方向に並ぶ複数の分割体に分割し、互いに隣り合う前記分割体の間に空間4を設定し、前記分割体同士が所定値以上の大きさの荷重が入力したときに互いに接触するものであることを特徴とする防振ブッシュ。
【請求項2】 請求項1の防振ブッシュにおいて、空間4内にストッパ7を挿入したことを特徴とする防振ブッシュ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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