説明

防水パンの堤防構造

【課題】 エプロンを前に出すことなく回転させて良好に着脱できるとともに、洗い場側からの洗い水の浴槽側への流れ込みを防ぐことのできる防水パンの堤防構造を提供する。
【解決手段】 洗い場2側と浴槽5側を仕切り、左右両壁間に亘って配設される浴室用防水パン1の堤防4は、エプロン6の下端が当接される洗い場2側の当り面4aが直線状に形成されているとともに、左右両端側には、エプロン6の下端よりも浴槽5側へ位置する後退部4b,4bが形成され、この後退部4b,4bの洗い場2側に、エプロン6の回転スペースとなり、また、浴槽からの溢れ水の導水場所として利用できるスペースSが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水パンにおける堤防の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、洗い場にカウンターが取り付けられている場合でも、浴槽からエプロンを着脱する時に、前に出すことなく防水パンの堤防上で回転させて着脱できる構造のものが存在する。
【特許文献1】特開2002−345669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、エプロンを防水パンの堤防上で回転させて着脱させるものであるため、堤防を切り欠くか、堤防に干渉しない位置にエプロンを配置しており、そのため洗い場側から洗い水が浴槽側へ流れ込みやすく、浴槽の下に汚れが溜まる原因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、エプロンを回転させて着脱することができ、また、洗い場側からの洗い水が浴槽側に流れ込みにくくなる防水パンの堤防構造を提供せんとするものであり、その請求項1は、洗い場側と浴槽側を仕切り左右両壁間に亘って配設される浴室用防水パンの堤防において、該堤防は、エプロンの下端が当接される洗い場側の当り面が直線状に形成されているとともに、左右両端側には、前記エプロンの下端よりも浴槽側へ位置する後退部が形成されていることである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の浴室用防水パンの堤防は、エプロンの下端が当接される洗い場側の当り面が直線状に形成され、左右両端側には、エプロンの下端よりも浴槽側へ位置する後退部が形成されていることにより、カウンターが取り付けられている場合でも、後退部を利用してエプロンを回転させて、良好にエプロンを着脱することができ、また、堤防の直線状の当り面にエプロンの下端を当接させて重ね合わせることで、洗い場側からの洗い水の浴槽側への流れ込みを防ぐことができるものとなる。
また、堤防の後退部を利用して、浴槽回りの隙間から漏れ出た水を樋などを通して良好に洗い場側へ排水させることも可能となる。
【実施例】
【0006】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、防水パン上に設置した浴槽にエプロンを回転させて取り付けできる状態を示した平面構成図である。
【0007】
本例の防水パン1は、図2の平面構成図で示すように、洗い場2と、浴槽5を設置する浴槽設置面3間を仕切る堤防4が上方へ立ち上げて一体形成されており、この堤防4は、防水パン1の外周の壁パネル載置面1a,1a側の左右両端側が、浴槽設置面3側へ向かって湾曲状に形成された後退部4b,4bとなっており、この後退部4b,4bにより、洗い場2側に向いたスペースS,Sが形成されている。
【0008】
即ち、堤防4の洗い場2側の立上面はエプロン6の下端が当接される直線状の当り面4aとなっており、この直線状の当り面4aの左右端側で、エプロンの下端よりも浴槽側へ位置する後退部4b,4bが形成されており、当り面4aの延長線よりも浴槽設置面3側に洗い場2側へ開放されたスペースSが形成されている。
【0009】
浴槽5の洗い場2側に着脱可能に取り付けられるエプロン6は、その左右両端側が左右のスペースS,Sの洗い場2側に配置され、このスペースS内を利用して、図1のように回転させて着脱することができ、カウンター7が洗い場2に設置されている場合でも、エプロン6を前に出すことなく良好にスペースS内で回転させて着脱できるものである。
【0010】
また、図3の斜視図で示すように、エプロン6の左右両端側の下面には、左右のスペースS,Sの洗い場2側を塞ぐようにして、エプロンサイドスペーサー10,10が洗い場2側から嵌め込まれ、エプロン6が固定されるものであり、固定状態では、エプロン6の下端は図4に示すように、堤防4の当り面4aの洗い場2側に垂設されて、エプロン6の下端が当り面4aと重ね合わされた状態で当接されるものである。
従って、堤防4の洗い場2側に立ち上がる直線状の当り面4aに、エプロン6の下端が重ね合わせ状に当接されるため、洗い場2側からの洗い水が浴槽設置面3側へ流れ込むことが良好に防がれ、浴槽設置面3側に汚れが溜まることがないように構成されている。
【0011】
なお、図1に示すように、浴槽5の上面のフランジの外周から漏れ出す溢れ水を受け止めるために、浴槽5の外周のフランジの下方には樋8が配設され、この樋8で溢れ出た水を受け止めて、スペースS内に立設される縦樋8aを通し、良好に浴槽5からの溢れ水をスペースSの空間内に縦樋8aで導いて、洗い場2側へ良好に排水できるように構成されている。
【0012】
即ち、左右端側のスペースSの部分の拡大平面図を図5に示し、また図6には、図5の洗い場側から見た正面構成図を示す。
スペースSの洗い場2側には、前述したようにエプロンサイドスペーサー10が嵌め込まれており、このエプロンサイドスペーサー10の底面には、傾斜状に横方向に間隔をおいて複数の底羽根板10a,10a,10aが形成されており、この複数の底羽根板10a,10a間で傾斜状の水路R,Rが形成され、縦樋8aを通してスペースS内に導入された浴槽5からの溢れ水は、この水路R,R,Rを通して洗い場2側へ良好に排出することができるものである。
【0013】
なお、底羽根板10a,10a,10aは、洗い場2側から押し寄せる洗い水がスペースS内に勢いよく流れ込むのを防ぐために、傾斜状に形成されているのである。
このようにスペースSは、エプロン6の着脱時の回転スペースとして利用することができるとともに、浴槽の溢れ水を良好に排水させるための導水スペースとしても有効に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】上面に浴槽を設置し、エプロンを回転させて取り付ける状態を示す防水パンの平面構成図である。
【図2】浴槽を設置する前の防水パンの平面構成図である。
【図3】エプロンを取り付けた状態の浴槽の斜視構成図である。
【図4】浴槽のエプロンの取付状態の側面縦断面構成図である。
【図5】堤防の左右端に形成されたスペースの部分の拡大平面構成図である。
【図6】図5を洗い場側から見た正面拡大構成図である。
【符号の説明】
【0015】
1 防水パン
1a 壁パネル載置面
2 洗い場
3 浴槽設置面
4 堤防
4a 当り面
4b 後退部
5 浴槽
6 エプロン
7 カウンター
8 樋
8a 縦樋
10 エプロンサイドスペーサー
10a 底羽根板
S スペース
R 水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗い場側と浴槽側を仕切り左右両壁間に亘って配設される浴室用防水パンの堤防において、該堤防は、エプロンの下端が当接される洗い場側の当り面が直線状に形成されているとともに、左右両端側には、前記エプロン下端よりも浴槽側へ位置する後退部が形成されていることを特徴とする防水パンの堤防構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−9529(P2006−9529A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192165(P2004−192165)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】