説明

防水パン及びその製造方法

【目的】 アジャストボルトの調節代が大で、製造が容易な防水パンの提供を目的とする。
【構成】 防水パン1の裏面を補強する補強面材3には、所定位置に突出する突起部3a,3a,3aが形成され、この突起部3a,3a,3a内にはナット4,4,4が埋設されており、この各ナット4,4にアジャストボルト6,6を螺合させることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ユニットバスルーム等の底面を構成する防水パン及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその課題】従来、ユニットバスルーム等の底面を構成する防水パンは図4のようにFRPで形成されており、この防水パン51の裏面には、補強用の角材からなる補強フレーム52が所定位置に井桁状に設けられており、この補強フレーム52の下面にナット53が溶接され、このナット53に対し下方よりアジャストボルト54が螺合されたものとなっており、アジャストボルト54をナット53に螺進退させて、床面Fからの防水パン51の高さ調節が可能に構成されている。このような図4の構造においては、補強フレーム52にもアジャストボルト54の貫通する貫通孔を形成させる必要があり、又、アジャストボルト54の調節代は補強フレーム52の内寸の範囲内に限定され、アジャストボルト54の調節代を大きくすることができないという問題点があり、又、補強フレーム52の存在する位置にしかアジャストボルト54を設けることができないという問題点があった。
【0003】又、図5に示すような防水パン61の裏面に補強面材62が貼着等され、補強されているタイプにおいては、補強面材62の下面に、支持金具63をビス65により取付け、この支持金具63のナット部63aに下方よりアジャストボルト64を螺合させる構造が採用されており、このような構造においては、支持金具63をビス65を介し補強面材62に取付ける手間が掛かり、又、補強面材62がウレタン等で形成されている場合にはビス65の効きが悪く、支持金具63の取付強度の信頼性に欠けるという問題点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、アジャストボルトの調節代を大きくすることができ、アジャストボルト取付位置の自由度を確保できる防水パン及びその製造方法を提供せんことを目的とし、その第1の要旨は、防水パンの裏面を補強する補強面材には、所定位置に下方へ突出する突起部が形成され、該突起部内には、アジャストボルトを螺合可能なナットが埋設されていることである。又、第2の要旨は、防水パンの裏面に密閉空間を形成して型を配設し、前記密閉空間内にはアジャストボルト用のナットを配設するとともに、該密閉空間内にウレタン等の補強面材を注入充填して硬化させ、該補強面材内に前記ナットを埋設することを特徴とする防水パンの製造方法に存する。
【0005】
【作用】前記第1の要旨においては、防水パンの裏面の補強面材には突起部が形成され、この突起部内にナットが埋設されているため、このナットに対し下方よりアジャストボルトを螺合させて、アジャストボルトにより防水パンの床面からの高さを良好に調節することができる。又、第2の要旨において、防水パンの裏面に型を用いて補強面材を注入充填して硬化させる際に、予めナットを埋設させることができ、自由な位置にナットを埋設することが可能であり、従来のようなナットの溶接または支持金具の取付け等の手間を要せず、補強面材の成形と同時にナットを所定位置に埋設することができ、製造が容易なものとなる。
【0006】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、防水パンの製造過程の断面構成図であり、FRPで形成された防水パン1を裏返しにし、その底面1aを上側に配置させて、この底面1aの上方に木または樹脂製の型2を配置させる。この型2の外周には型側枠2aが全周に亘り配置されており、型2を防水パン1上に載置すると底面1aと型2間に密閉した空間が形成されることとなる。
【0007】この密閉した空間内に、外方よりホース等を用いて、例えばウレタンを注入し、密閉空間内部で充填したウレタンを発泡させ、ウレタンを硬化させて、底面1aの裏面に補強面材3を一体状に形成することができる。なお、本例では、予め前記型2の所定位置にボルト5を配設しておき、このボルト5の内側には高さの高い高ナット4を螺合させ、ナット4は型2の内側すなわち密閉空間内に配置されるようにしておき、この状態で前述した如く密閉空間内にウレタンを注入することにより、形成される補強面材3内の所定位置にナット4,4を埋設させることができる。なお、型2のボルト5の位置に薄肉部を形成しておけば、この部分が補強面材3の突起部3aとなり、この突起部3a内に前記ナット4を埋設させれば強度が良好に確保されることとなる。
【0008】図2には、突起部3a内に埋設されたナット4の裏側からの要部斜視図を示す。なお、本例では、防水パン1の浴槽設置側と洗い場面側でそれぞれ型2,2を用いて補強面材3,3を形成するようにしたものであるが、一体型を用いて防水パン1の裏面全域に補強面材3を形成することもできる。
【0009】なお、本例では補強面材3をウレタンで形成したものを例示したが、ウレタンの他に、他の熱硬化性樹脂等の流動性樹脂を用いることもでき、又、発泡レジンコンクリートを注入して形成することもでき、さらに中空ビーズ入りのセメント等を注入充填して補強面材3を形成することもできる。又、注入時に圧力を掛けながら注入し形成することも可能である。
【0010】図1の状態において注入した補強面材3が硬化した後には、ボルト5,5を外して型2を脱型し、この状態で防水パン1の裏面に埋設されたナット4に対しアジャストボルト6,6,6をそれぞれ螺合させ、防水パン1を反転させ床面F上の所定位置に図3のように配置させ、アジャストボルト6,6,6を適宜ナット4,4に対し螺進退させて、防水パン1の床面Fからの高さを良好にアジャストボルト6の調整により調節することができる。
【0011】このように本例では、補強面材3の形成時にナット4を所定位置に埋設するものであるため、従来のように補強フレームにナット53を溶接する必要もなく、又、図5のように別体の支持金具63を取付ける必要もなく、作業工数が減少し、防水パン1を容易に製造することが可能となる。又、ナット4の配置位置は前記型2の形状及び配置位置等を適宜変更することにより容易に調整され、アジャストボルト6の取付位置の自由度が従来のものに比べて確保される。又、アジャストボルトの調節代を補強フレーム等に妨害されることなく大きくすることができ、アジャストボルト6による高さ調節がより良好なものとなる。
【0012】
【発明の効果】本発明は、防水パンの裏面を補強する補強面材には、所定位置に下方へ突出する突起部が形成され、該突起部内には、アジャストボルトを螺合可能なナットが埋設されていることにより、従来のようにナットを溶接したり別体の支持金具を取付ける必要がなく、埋設されたナットに直接アジャストボルトを螺合させて、アジャストボルトを螺進退させることにより容易に防水パンの高さ調節が可能となり、又、補強フレーム等に妨害されることなくアジャストボルトの調節代を大きく取ることができる。又、防水パンの裏面に密閉空間を形成して型を配設し、前記密閉空間内にはアジャストボルト用のナットを配設するとともに、該密閉空間内にウレタン等の補強面材を注入充填して硬化させ、該補強面材内に前記ナットを埋設する防水パンの製造方法においては、防水パンの裏面に補強面材を形成させる時に、同時に所定位置にアジャストボルト用のナットを埋設することができ、防水パンの製造が容易となる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】防水パンの製造過程の断面構成図である。
【図2】補強面材に形成された突起部内に埋設されたナットの斜視構成図である。
【図3】製造された防水パンにアジャストボルトを取付けて床面上に設置した状態の断面構成図である。
【図4】従来のアジャストボルトの取付構造の要部断面構成図である。
【図5】従来のアジャストボルトの取付構造を示す要部構成図である。
【符号の説明】
1 防水パン
2 型
2a 型側枠
3 補強面材
3a 突起部
4 ナット
5 ボルト
6 アジャストボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】 防水パンの裏面を補強する補強面材には、所定位置に下方へ突出する突起部が形成され、該突起部内には、アジャストボルトを螺合可能なナットが埋設されていることを特徴とする防水パン。
【請求項2】 防水パンの裏面に密閉空間を形成して型を配設し、前記密閉空間内にはアジャストボルト用のナットを配設するとともに、該密閉空間内にウレタン等の補強面材を注入充填して硬化させ、該補強面材内に前記ナットを埋設することを特徴とする防水パンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平7−158137
【公開日】平成7年(1995)6月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−339601
【出願日】平成5年(1993)12月3日
【出願人】(000000479)株式会社イナックス (1,429)