説明

防汚性を有する履物

【目的】 雨が降った泥道や工場内の油が飛散した場所を歩行したときに、泥、水、油などの汚れが履物本底周囲に付着し、洗濯しても汚れが落ちにくく非常に見苦しい状況であり、このような汚れ防止するための防汚性を有する履物の構造を提案するものである。
【構成】 履物本底、テープ、トウガード等の表面に、非粘着性と離型性を有するフッ素またはシリコン系の樹脂オイルをコーティングすることにより、泥、水、油による汚れを防止するとともに、一度付いた汚れも簡易に落とせる防汚性のある履物の構造である。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、雨が降った泥道や工場等の油が飛散した場所を歩行した時に、泥6、水、油などの汚れが履物の本底2周囲に付着し、洗濯しても汚れが落ちにくく非常に見苦しい状況を克服し、防汚性を有する履物の構造を提案するものである。
【0002】
【従来の技術】
防汚性に対する履物の素材としては、甲布3にフッ素系またはシリコン系の樹脂を加工した製品はあるが、ゴムまたは樹脂で構成される履物本底2及びその周囲のテープ4、トウガード5等は、汚れが付着しやすく落ちにくい。
【0003】
【考案が解決しようとする問題点】
フッ素またはシリコン系の樹脂を甲布3にコーティングした履物は、甲布3の部分では、泥6、水、油などの汚れをはじきやすい構成となっていますが、本底2、テープ4、トウガード5等の底周囲については防汚対策がないため、甲布3と比較して逆に汚れが目立ち気になる問題があります。
【0004】
本考案では、フッ素またはシリコン系の樹脂をコーティングした甲布3と、フッ素またはシリコン系の樹脂オイルをコーティングした本底2、テープ4、トウガード5等を組み合わせることにより、防汚性のある履物の構造を可能としている。
【0005】
【問題点を解決するための手段】
本考案は、履物本底2及び周囲のテープ4、トウガード5等の表面に、フツ素またはシリコン系の樹脂オイルをコーティングすることにより、雨が降った泥道や工場内の油が飛散した場所を歩行しても、本底2及びテープ4、トウガード5表面のコーティング材1の撥水、撥油、防汚性効果により、本底2及びその周囲が、泥6、水、油などの汚れをはじくとともに、一度付いた汚れも簡易に落とせる。
【0006】
【作 用】
泥6、水、油等の汚れに対して、ゴムまたは樹脂で構成される履物の本底2、テープ4、トウガード5等は、表面が粘着性を有しており、この粘着効果により足元周辺で発生する汚れが付着しやすく、非常に汚れやすい。このようなゴムまたは樹脂で構成される履物の本底2、テープ4、トウガード4等の表面を、化学的に不活性で非粘着性、離型性にすぐれたフッ素またはシリコン系の樹脂オイルでコーティングすることにより、汚れの付着が難しく付着しても簡易に落とせる効果がある。
【0007】
本考案の防汚性のメカニズムについて、シリコン系樹脂オイルの化学構造で説明すると、シリコンはヘリックス構造(コイル状)で、コイル構造の外側に位置するメチル基が自由に回転できるため撥水性、離型性などの独特の界面特性を発揮する。
【0008】
【実施例】
本考案における防汚性を有する履物の構造について具体的に述べると、ゴムまたは樹脂で構成される本底2、テープ4、トウガード5の表面を、フッ素またはシリコン系樹脂オイルでスプレー塗布またはディッピングしてコーティングすることにより、防汚性を有する履物の構造を可能としている。
【0009】
以下本考案におけるコーティング材1、本底2、テープ4、トウガード5の材質について詳細に述べると、コーティング材1は、化学的に不活性で非粘着性、離型性にすぐれたフッ素系またはシリコン系の樹脂オイルで、粘度は0.5から100Pa・Sの範囲が使用可能であり、本考案では粘度が1から5Pa・Sの範囲のコーティング材1が、コーティング作業性及び防汚性能に優れていた。
【0010】
次に本底2、テープ4、トウガード5及びコーティング材1の材質について述べると、本底2、テープ4、トウガード5のゴム配合材質は、ゴムに天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、ウレタンゴム等が使用され、配合剤には硫黄、充てん剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤等が使用され、密閉式混練機またはオープンロールでゴムと配合剤を混練りし、一定厚さにシーティングし裁断されたり、ホットプレスで加硫成型されたものが使用される。
【0011】
樹脂の場合は、ポリ塩化系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーが使用され、トランスファー成型機で本底1が成型される。
【0012】
図面に基づいて本考案の履物の防汚メカニズムについて説明すると、第1図における実施例において、泥6がテープ4表面に対して付着した状況を示しており、コーティング材1表面が、化学的に不活性で非粘着性であるため、泥の付着が難しく、仮に付着した場合でも水洗いで簡易に落とせる防汚性能を有している。
【0013】
本考案の実施例であるコーティング材1を使用してなる本底2と甲布3を接着する方法の一実施例としては、本底2の接着表面をバフがけし、ウレタン系又はクロロプレン系の処理剤を塗布し、次にウレタン系又はクロロプレン系の接着剤を塗布しておき、甲布3の接着面にもウレタン系またはクロロプレン系の処理剤を塗布し、次にウレタン系又はクロロプレン系の接着剤を塗布して、本底2と甲布3を貼り合わせる。
【0014】
【考案の効果】
本考案における防汚性を有する履物の構造において、本底2、テープ4、トウガード5の表面に使用されるコーティング材1は、泥6、水、油などの汚れを防止するとともに、一度付いた汚れも簡易に落とせる特徴があり、繰り返し洗濯しても防汚性能効果が長持ちする。
【図面の簡単な説明】
【図 1】本考案における実施例斜視図
【図 2】第1図のA−B線断面図
【符号の説明】
1.コーティング材
2.本底
3.甲布
4.テープ
5.トウガード
6.泥

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】ゴムまたは樹脂で構成される履物本底、テープ、トウガードの表面に、フッ素またはシリコン系の樹脂オイルをコーティングした構造を有する履物に関する。

【図1】
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【図2】
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【登録番号】第3020155号
【登録日】平成7年(1995)10月25日
【発行日】平成8年(1996)1月19日
【考案の名称】防汚性を有する履物
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平7−8202
【出願日】平成7年(1995)7月3日
【出願人】(000232896)株式会社ニチマン (2)