説明

防災システム

【課題】火源探査や消火を行う複数の防災ロボットを有する防災システムにおいて消火活動を行う最適な防災ロボットの選択を防災ロボットが相互の情報交換により自律的に行い集中監視装置の負担を軽減する。
【解決手段】防災システムは、火災検出部と火災検出部の火災検出信号が入力される制御部とを備える複数の防災ロボットが防護区画に配設され、防災ロボットは、他の防災ロボットと状態情報を送受信する送受信部と、自身および他の防災ロボットの状態情報を記憶する記憶部と、を備え、制御部は、送受信部によって他の防災ロボットから受信した状態情報に対して、自身の状態情報を加えて更新された状態情報を記憶部に記憶させるとともに、送受信部によって他の防災ロボットに送信するものであって、上記複数の防災ロボットは、それぞれの更新された状態情報によって火災火源に最も近い防災ロボットを特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防護区画に複数の防災ロボットを配置する防災システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火源より赤外線を検出する焦電素子等の指向性をもたせたセンサを水平および垂直角度に駆動走査し、火源を検出したときに検出角度に放水ノズルをセットして消火剤を放射する消火ロボットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−2759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の走査型火災検知器など火災火源をリモートセンシングする火源検出装置は、集中監視装置に検出装置の情報を集めて火源位置を特定している。このため、集中監視装置は通信装置、記憶装置、情報処理装置などのハードウェアおよび火源位置を演算するプログラムや防護区画の空間的位置データを備えねばならず、物件個々に地図情報等を登録する労力を要し、高価なシステムとなっている。
また、このような火源検出装置と連動して局所放水を行う消火ロボットは、これらを複数台設置して広い空間を防護する場合にそれぞれが勝手に消火活動を行うと必要台数以上の消火ロボットから放水が行われ、消火ポンプの容量不足、水圧低下、水源不足を招く危険があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、火源探査や消火を行う防災ロボットを複数有する防災システムにおいて、火災区域の特定または消火活動を行う最適な防災ロボットの選択も防災ロボットが相互の情報交換により自律的に行い、集中監視装置または集中制御装置を簡易で安価なものとする防災システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る防災システムは、火災に基づく物理的現象を検出する火災検出部と上記火災検出部の火災検出信号が入力される制御部とを備える複数の防災ロボットが防護区画に配設される防災システムにおいて、上記防災ロボットは、他の防災ロボットと状態情報を送受信する送受信部と、自身および他の防災ロボットの状態情報を記憶する記憶部と、を備え、上記制御部は、上記送受信部によって他の防災ロボットから送信した状態情報に対して、自身の状態情報を加えて更新された状態情報を上記記憶部に記憶させるとともに、上記送受信部によって他の防災ロボットに送信するものであって、上記複数の防災ロボットは、それぞれの更新された状態情報によって火災火源に最も近い防災ロボットを特定する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る防災システムは、防護区画内に配置された複数の防災ロボットがそれぞれ独自に火災火源を探査し、互いに火源方向情報を含む状態情報を送受信し、その状態情報から火災火源に最も近い防災ロボットを特定し、特定した防災ロボットから火源方向に帯状に放水するので、集中監視装置または集中制御装置における情報処理の負担を低減することができるとともに、物件個々に地図情報等を登録する労力も必要としないし、機器や制御を標準化でき安価なシステムとすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る防災システムの構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る防災ロボットの構成図である。
【図3】防護区画に6個の防災ロボットを配置する様子を示す図である。
【図4】防災ロボットに予め設定された図3に示した配置例におけるプリセットデータである。
【図5】火災受信機から火災信号が入力されたときに防護区画を防災ロボットで火災火源を探査して放水するまでの手順の一部を示す図である。
【図6】火災受信機から火災信号が入力されたときに防護区画を防災ロボットで火災火源を探査して放水するまでの手順の他の一部を示す図である。
【図7】火災受信機から火災信号が入力されたときに防護区画を防災ロボットで火災火源を探査して放水するまでの手順の残りの部分を示す図である。
【図8】防災ロボット間で行われる一部の通信の様子を示す図である。
【図9】防災ロボット間で行われる他の一部の通信の様子を示す図である。
【図10】防災ロボット間で通信される情報の一部を示す図である。
【図11】防災ロボット間で通信される情報の他の一部を示す図である。
【図12】火災フラグが立った防災ロボットで行う判定動作の様子を示す図である。
【図13】一部の防災ロボットが故障しているときの通信の様子を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態2に係る防災システムにおいて火災受信機から火災信号が入力されたときに防護区画を防災ロボットで火災火源を探査して放水するまでの手順の一部を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態2に係る防災システムにおいて火災受信機から火災信号が入力されたときに防護区画を防災ロボットで火災火源を探査して放水するまでの手順の残りの部分を示す図である。
【図16】この発明の実施の形態3に係る防災システムにおいて火災受信機から火災信号が入力されたときに防護区画を防災ロボットで火災火源を探査して放水するまでの手順の一部を示す図である。
【図17】この発明の実施の形態3に係る防災システムにおいて火災受信機から火災信号が入力されたときに防護区画を防災ロボットで火災火源を探査して放水するまでの手順の残りの部分を示す図である。
【図18】防災ロボットの消火装置を具備しない火災覚知用防災ロボットとして用い、火源に最も近い防災ロボットを判定することによって火災区域を判定するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の防災システムの好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る防災システムの構成図である。
この発明の実施の形態1に係る防災システムは、図1に示すように、防護区画1に配置される火災感知器2、火災感知器2からの感知信号に従って火災信号を発する火災受信機3、火災信号が発せられたとき連動して防災ロボット5を自動的に起動して火源探査や消火を指令したり、防災ロボット5を手動で遠隔操作したりする中央操作盤4、防護区画1に設置される防災ロボット5、消火用水を送水する加圧送水装置6、各防災ロボット5に消火用水を送水する遠隔操作弁7、および、防災ロボット5を手動で遠隔操作する図示しない現地操作盤を備える。
【0010】
防災ロボット5は、自動火災報知設備の火災発報に連動して全自動で火災検出および消火活動を行う自動運転モードと、中央操作盤4から遠隔手動操作で消火活動を行う中央操作モードと、自身が配置された防護区画内に配置された図示しない現地操作盤から遠隔手動操作で消火活動を行う現地操作モード、の3つの運転モードを備えている。
中央操作盤4または現地操作盤は、自動運転モードと、中央操作モードと、現地操作モードとのいずれかを随時排他的に設定操作でき、その状態を盤面に表示する。
【0011】
図2は、この発明の実施の形態1に係る防災ロボット5の構成図であり、詳しくは、送受信部を除いて特開2001−46541号公報に記載されている。そして、防災ロボット5は、平常時火災検出部11および放水手段12を函体内に格納し、火災受信機3から火災信号を受けた中央操作盤4からの指令で起動し、火災検出部11と放水手段12を露出させる。そして、火災に基づく物理的現象を検出する火災検出部11の1つである赤外線リニアセンサ11aが旋回し、探査範囲内の火災火源Fを探査して熱源方向を特定し、その熱源方向へ火災検出部11の他の1つである炎検知部11bを指向させてその熱源が火災火源Fであることが確定すると、放水手段12としての放水部12aを火災火源Fの角度に指向・停止する。
【0012】
また、防災ロボット5は、旋回軸を中心に赤外線リニアセンサ11a、炎検知部11bおよび放水部12aを備え、これらを旋回駆動する旋回駆動部13と旋回位置を検出する位置検出部14を備える。
また、防災ロボット5は、中央操作盤4からの指令で起動し、火災検出部11と旋回駆動部13を制御し、火災検出部11の火災検出信号と位置検出部14の位置情報が入力されるとともに、遠隔操作弁7、中央操作盤4および図示しない現地操作盤と信号授受を行う制御部15、無線通信で他の防災ロボット5と情報を送受する送受信部16、および、送受信部16が入手する状態情報および自身の状態情報を記憶する記憶部17を備える。なお、中央操作盤4および図示しない現地操作盤との信号授受は前記送受信部16を介しても良い。
送受信部16は、他の防災ロボット5から状態情報を受信し、制御部15は、受信した状態情報に自身の状態情報を追加して新たな状態情報を生成し、記憶部17に記憶した後、送受信部16は、その生成する新たな状態情報を他の防災ロボット5に送信する。なお、状態情報には、現在の運転モード、遠隔操作弁7の開閉状況、関連機器の故障情報等と、後述する各防災ロボット5を基準とした火災火源Fの方向、フラグ、獲得ポイントと、を含んでいる。
また、防災ロボット5は、状態情報に基づき、他の火災を検出した防災ロボットから火災に臨む角度に関する情報を受信し、受信した火災の角度に関する情報と自身が火災を臨む角度に関する情報とを対比することにより、火災火源Fに最も近い防災ロボット5を特定し、放水部12aに消火活動を行わせる。
【0013】
図3は、防護区画1に6個の防災ロボット5を配置する様子を示す図である。
この発明の実施の形態1に係る防災システムでは、図3に示すように、防護区画1に6個の防災ロボット5を配置している。なお、防護区画1に配置する防災ロボット5の数は防護区画1の大きさ、形状に従って適宜決定すれば良い。そして、防災ロボット5には識別情報としてアドレスN1〜N6が付けられている。
そして、各防災ロボット5には探査範囲境界線C1〜C6により区画される探査範囲が定まっている。
尚、隣接する防災ロボット5の間の距離は見通し距離にあり、無線通信は微弱電波によって容易に成立するが、赤外線通信を行っても良い。また、情報交換を防護区画1内に配置された特定の情報交換機を介して行っても良く、後述するプリセットデータをこの情報交換機に登録しても良い。
無線通信の相手の防災ロボット5が最終のアドレス(例えば、N6)の場合、最終のアドレスの防災ロボット5は最初のアドレス(例えば、N1)の防災ロボット5を相手として無線通信により情報交換を行い、情報交換はリング状に行われる。
【0014】
図4は、図3に示された配置状況に応じて防災ロボット5に予め設定されたプリセットデータの例である。
各防災ロボット5には、方向軸原点が設定されているが、具体的には正面から時計方向に90度回転した方向を原点とする水平方向の角度を表すものとする。そして、隣接する防災ロボット5と結ぶ直線(以下、「基準線」と称す)の識別情報RL1〜RL11、隣接する防災ロボット5の識別情報N1〜N6、および、方向軸原点から基準線までの反時計方向に回転する角度がプリセットデータとして記憶部17に記憶されている。
【0015】
例えば、アドレスN1の防災ロボット5は、図4に示すように、アドレスN2、N5、N6の防災ロボット5と隣接するので、それぞれと結ぶ基準線RL1、RL2、RL3が設定され、角度は0度、45度、90度である。
同様に、図4に示すように、アドレスN2〜N6の防災ロボット5にも、それぞれ基準線の識別情報、基準線に対応する防災ロボット5のアドレス、および、方向軸原点からの基準線までの反時計方向に回転する角度が記憶されている。
【0016】
防災ロボット5は、記憶部17に待機フラグ、確定フラグ、放水フラグ、火災フラグ、基準線フラグが設けられている。そして、火災受信機3から火災信号を受信した中央操作盤4が自動的に連動して防災ロボット5を起動すると、探査範囲内の火災火源Fを旋回探査し、火災火源Fが確定していないときには、待機フラグ、確定フラグ、放水フラグ、火災フラグを立てず、火災火源Fが確定したときは、待機フラグ、火災フラグを立てるとともに基準線の両端に位置する防災ロボット5が共に該当する基準線フラグを立てる。また、そのとき、若番の基準線から火災火源Fに向かう角度、対向の基準線から火災火源Fに向かう角度を算出し、記憶する。
【0017】
図10および図11は、防災ロボット間で通信される情報を示す図である。
火災受信機3から火災信号が入力された中央操作盤4が自動的に防災ロボット5を起動すると、最初のアドレスの防災ロボット5、図3の例ではアドレスN1の防災ロボット5が探査範囲内の火災火源Fの旋回探査の結果に基づいて状態情報を生成し、その状態情報を次のアドレスN2の防災ロボット5に送信する。状態情報は、図10に示すように、待機フラグ、確定フラグ、放水フラグ、火災フラグ、基準線フラグ、各防災ロボット5の獲得ポイントから構成されている。待機フラグは火災火源Fを最初に検出した防災ロボット5が後述する所定の判定待ち時間の間立てるフラグである。確定フラグは、火災火源Fに最も近い防災ロボット5が確定されたとき立てられるフラグである。放水フラグは、放水を開始した防災ロボット5が放水している間立てるフラグである。火災フラグは、火災火源Fを検出した防災ロボット5が立てるフラグである。基準線フラグは火災フラグが立てられた2台の防災ロボット間を結ぶ基準線に立てられるフラグである。
【0018】
図8と図9は、防災ロボット間で行われる通信の様子を示す図である。
アドレスN2の防災ロボット5は、図8に示すように、アドレスN1の防災ロボット5から送信されたデータ(状態情報)を正しく受信したときアドレスN1の防災ロボット5に「ACK」信号を返信し、アドレスN1の防災ロボット5はアドレスN2の防災ロボット5に「NEXT」信号を送信する。そして、「NEXT」信号を受信した防災ロボット5は、図8、図9に示すように、受信した状態情報に自身の状態情報を追加することにより新たな状態情報を生成し、生成した新たな状態情報を次のアドレスの防災ロボット5に送信する。
【0019】
図5から図7は、火災受信機3から火災信号が入力された中央操作盤4が自動的に防護区画1内の防災ロボット5を起動したときに防護区画1の防災ロボット5が火災火源Fを探査して自動消火するまでの手順を示す図である。なお、火災火源FはアドレスN2、N5、N6の防災ロボット5の探査範囲内にあり、火災探査の結果、アドレスN2、アドレスN6、アドレスN5の防災ロボット5の順に火災火源Fを検出したものとし、図10に示すように、火災火源Fを検出した防災ロボット5は火災フラグを立てて情報交換時に送信する。
【0020】
これらの図においては、後述する所定の判定待ち時間が経過するまでは、例えば、1番目に、アドレスN1の防災ロボット5からアドレスN2の防災ロボット5にアドレスN1の状態情報が送信され(通信経路P1)、2番目に、アドレスN2の防災ロボット5からアドレスN3の防災ロボット5にアドレスN1、N2の状態情報が送信され(通信経路P2)、3番目に、アドレスN3の防災ロボット5からアドレスN4の防災ロボット5にアドレスN1〜N3の状態情報が送信される(通信経路P3)。
そして、4番目に、アドレスN4の防災ロボット5からアドレスN5の防災ロボット5にアドレスN1〜N4の状態情報が送信され(通信経路P4)、5番目に、アドレスN5の防災ロボット5からアドレスN6の防災ロボット5にアドレスN1〜N5の状態情報が送信され(通信経路P5)、6番目に、アドレスN6の防災ロボット5からアドレスN1の防災ロボット5にアドレスN1〜N6の状態情報が送信される(通信経路P6)。
ここでは、最初のアドレスの防災ロボット5を起点として反時計回りに順送りしたが、状態情報の通信経路や送信順序は適宜設定される。
【0021】
図5(a)は、中央操作盤4から自動運転指令が防災ロボット5に発せられた時点から6台の防災ロボット5で火源探査を開始し、まだ火災火源Fを発見していないときの状態情報の送受信の様子を示す図である。
アドレスN1の防災ロボット5は、火災火源Fを確定していないので、待機フラグ、確定フラグ、放水フラグ、火災フラグを立てずに、状態情報を次のアドレス、この例ではアドレスN2の防災ロボット5に送信する。状態情報は、図10の図面番号(5a)通信経路P1の行に示すように、待機フラグ、確定フラグ、放水フラグ、火災フラグ、基準線フラグが立てられておらず、各防災ロボット5の獲得ポイントが0から構成されている。
【0022】
アドレスN2の防災ロボット5は、火災火源Fを確定していないので、待機フラグ、確定フラグ、放水フラグ、火災フラグを立てずに、状態情報を次のアドレスN3の防災ロボット5に送信する。このときの状態情報は、図10の図面番号(5a)通信経路P2の行のように、待機フラグ、確定フラグ、放水フラグ、火災フラグ、基準線フラグが立てられておらず、各防災ロボット5の獲得ポイントが0から構成されている。
同様に、アドレスN3〜N6の防災ロボット5は、火災火源Fを確定していないので、待機フラグ、確定フラグ、放水フラグ、火災フラグを立てずに、図10の図面番号(5a)通信経路P3〜P6の行のように、待機フラグ、確定フラグ、放水フラグ、火災フラグ、基準線フラグが立てられておらず、各防災ロボット5の獲得ポイントが0から構成されている状態情報が送信される。
【0023】
図5(b)は、アドレスN2の防災ロボット5が火災火源Fを検出し、火災と判定した時の状態情報の送受信の様子をアドレスN1の防災ロボット5を起点として示した図である。
アドレスN6の防災ロボット5から「NEXT」信号を受信したアドレスN1の防災ロボット5は、火災火源Fを確定していないので、図10の図面番号(5b)通信経路P1の行のように、待機フラグ、確定フラグ、放水フラグ、火災フラグ、基準線フラグが立てられておらず、各防災ロボット5の獲得ポイントが0から構成されている状態情報をアドレスN2の防災ロボット5に送信する。
【0024】
アドレスN2の防災ロボット5は、既に火災火源Fを確定しているので、自身の状態情報として記憶している待機フラグおよび火災フラグは立っており、図10の図面番号(5b)通信経路P2の行のように、待機フラグおよびアドレスN2の火災フラグが立てられ、確定フラグ、放水フラグ、基準線フラグが立てられておらず、各防災ロボット5の獲得ポイントが0から構成されている状態情報をアドレスN3の防災ロボット5に送信する。引き続いてアドレスN3〜N6の防災ロボット5は火災火源Fを確定していないので、図10の図面番号(5b)通信経路P3から図面番号(5b)通信経路P6の行のように、アドレスN2の防災ロボット5が待機フラグと火災フラグとが立てられたままの状態情報が送信される。
【0025】
図5(c)は、アドレスN6の防災ロボット5がアドレスN2の防災ロボット5に続いて火災火源Fを検出し、火災と判定した時の状態情報の送受信の様子をアドレスN1の防災ロボット5を起点として示した図である。
アドレスN6の防災ロボット5から「NEXT」信号を受信したアドレスN1の防災ロボット5は、火災火源Fを確定していないので、図10の図面番号(5c)通信経路P1の行のように、待機フラグ、アドレスN2の火災フラグが立てられ、確定フラグ、放水フラグ、基準線フラグが立てられておらず、各防災ロボット5の獲得ポイントが0から構成されている状態情報をアドレスN2の防災ロボット5に送信する。
【0026】
アドレスN2からN5の防災ロボット5は、直前の通信から現在までの間に、変化がないので、図10の図面番号(5c)通信経路P2から図面番号(5c)通信経路P5の行のように、アドレスN2の防災ロボット5が待機フラグと火災フラグとが立てられたままの状態情報が送信される。
アドレスN6の防災ロボット5は、既に火災火源Fを確定しているので、火災フラグ、アドレスN2の防災ロボット5との間の基準線RL7のフラグを立て、図10の図面番号(5c)通信経路P6の行のように、待機フラグ、アドレスN2の火災フラグ、アドレスN6の火災フラグおよび基準線RL7のフラグが立てられ、確定フラグ、放水フラグおよび他の基準線のフラグが立てられておらず、各防災ロボット5の獲得ポイントが0から構成されている状態情報をアドレスN1の防災ロボット5に送信する。
【0027】
図6(a)は、アドレスN5の防災ロボット5がアドレスN2、N6の防災ロボット5に続いて火災火源Fを検出し、火災と判定した時の状態情報の送受信の様子をアドレスN1の防災ロボット5を起点として示した図である。
アドレスN6の防災ロボット5から「NEXT」信号を受信したアドレスN1の防災ロボット5は、火災火源Fを確定していないので、図10の図面番号(6a)通信経路P1の行のように、待機フラグ、アドレスN2の火災フラグ、アドレスN6の火災フラグ、基準線RL7のフラグが立てられ、確定フラグ、放水フラグ、他の基準線フラグが立てられておらず、各防災ロボット5の獲得ポイントが0から構成されている状態情報をアドレスN2の防災ロボット5に送信する。
【0028】
アドレスN2からN4の防災ロボット5は、直前の通信から現在までの間に、変化がないので、図10の図面番号(6a)通信経路P2から図面番号(6a)通信経路P4の行のように、そのままの状態情報が送信される。
アドレスN5の防災ロボット5は、既に火災火源Fを確定しているので、火災フラグ、アドレスN2の防災ロボット5との間の基準線RL6、アドレスN6の防災ロボット5との間の基準線RL11のフラグを立て、図10の図面番号(6a)通信経路P5の行のように、待機フラグ、アドレスN2の火災フラグ、アドレスN5の火災フラグ、アドレスN6の火災フラグ、基準線RL6のフラグ、基準線RL7のフラグおよび基準線RL11のフラグが立てられ、確定フラグ、放水フラグが立てられておらず、各防災ロボット5の獲得ポイントが0から構成されている状態情報をアドレスN6の防災ロボット5に送信する。
【0029】
図6(b)は、アドレスN2の防災ロボット5が最初に火災判定してから所定の判定待ち時間が経過したことから待機フラグを降ろし、火源に最も近い防災ロボット5を判定する判定動作をアドレスN2の防災ロボット5で行うときの状態情報の送受信の様子をアドレスN1の防災ロボット5を起点として示した図である。
アドレスN6の防災ロボット5から「NEXT」信号を受信したアドレスN1の防災ロボット5は、火災火源Fを確定していないので、図11の図面番号(6b)通信経路P1の行のように、待機フラグ、アドレスN2の火災フラグ、アドレスN5の火災フラグ、アドレスN6の火災フラグ、基準線RL6のフラグ、基準線RL7のフラグ、基準線RL11のフラグが立てられ、確定フラグ、放水フラグ、他の基準線フラグが立てられておらず、各防災ロボット5の獲得ポイントが0から構成されている状態情報をアドレスN2の防災ロボット5に送信する。
【0030】
アドレスN2の防災ロボット5は、最初に火災フラグを立てた防災ロボット5であるので、待機フラグを予め定める判定待ち時間の間に亘って立て、この間の通信は図5(b)、(c)、図6(a)のようにリング状に繰り返す。これは個々の防災ロボット5に検出所要時間の差があるので、探査範囲内にある防災ロボット5がすべて火源検出するまで判定動作を行わないようにするためである。
判定待ち時間の間、火災フラグの立った防災ロボット5を互いに結んだ直線、すなわち判定動作に要する基準線RL6、RL7、RL11のフラグを順次立て、判定動作に備える。
【0031】
判定待ち時間が経過すると、待機フラグを立てたアドレスN2の防災ロボット5は待機フラグを降ろしてリング状の通信を止め、図6(b)の如く火災フラグの立っているアドレスN5の防災ロボット5、アドレスN6の防災ロボット5と火源角度情報を順次交換し、火源位置に最も近い防災ロボット5を判定する判定動作に入る。
【0032】
図12は、火災フラグが立っている防災ロボット5で行われる判定動作の詳細を示す。
まず、アドレスN2の防災ロボット5は、アドレスN5の防災ロボット5から火源角度情報を入手する。火源角度情報は、火災火源FのアドレスN5の防災ロボット5の方向軸原点からの角度θ5−F(例えば60°)と基準線RL6のアドレスN5の防災ロボット5の方向軸原点からの角度θ5−6を入手する。アドレスN2の防災ロボット5には、基準線RL6のアドレスN2の防災ロボット5の方向軸原点からの角度θ2−6、火災火源FのアドレスN2の防災ロボット5の方向軸原点からの角度θ2−F(例えば100°)が記憶されている。
基準線RL6と火災火源Fとの偏り角、基準線RL6とアドレスN2の防災ロボット5の中心と火災火源Fとを結ぶ線との交差角の絶対値φ2−6と、基準線RL6とアドレスN5の防災ロボット5の中心と火災火源Fとを結ぶ線との交差角の絶対値φ5−6は、式(1)、式(2)で求められ、図4に示した、予めプリセットしておいた各基準線の角度データを用いて以下のように求められる。
【0033】
φ2−6=|θ2−F−θ2−6|=|100−90|=10 (1)
φ5−6=|θ5−F−θ5−6|=|60−90|=30 (2)
【0034】
基準線RL6とアドレスN5の防災ロボット5の中心と火災火源Fとを結ぶ線との交差角の絶対値φ5−6が基準線RL6とアドレスN2の防災ロボット5の中心と火災火源Fとを結ぶ線との交差角の絶対値φ2−6より大きいことから、火災火源Fに対してアドレスN5の防災ロボット5が近いので、アドレスN5の防災ロボット5が獲得ポイント1を得る。
【0035】
次に、アドレスN2の防災ロボット5は、アドレスN6の防災ロボット5から火源角度情報を入手する。火源角度情報は、火災火源FのアドレスN6の防災ロボット5の方向軸原点からの角度θ6−F(例えば160°)と基準線RL7のアドレスN6の防災ロボット5の方向軸原点からの角度θ6−7を入手する。アドレスN2の防災ロボット5には、基準線RL7のアドレスN2の防災ロボット5の方向軸原点からの角度θ2−7、火災火源FのアドレスN2の防災ロボット5の方向軸原点からの角度θ2−F(例えば100°)が記憶されている。
基準線RL7と火災火源Fとの偏り角、基準線RL7とアドレスN2の防災ロボット5の中心と火災火源Fとを結ぶ線との交差角の絶対値φ2−7と、基準線RL7とアドレスN6の防災ロボット5の中心と火災火源Fとを結ぶ線との交差角の絶対値φ6−7は、式(3)、式(4)で求められ、図4に示した、予めプリセットしておいた各基準線の角度データを用いて以下のように求められる。
【0036】
φ2−7=|θ2−F−θ2−7|=|100−135|=35 (3)
φ6−7=|θ6−F−θ6−7|=|160−135|=25 (4)
【0037】
基準線RL7とアドレスN2の防災ロボット5の中心と火災火源Fとを結ぶ線との交差角の絶対値φ2−7が基準線RL7とアドレスN6の防災ロボット5の中心と火災火源Fとを結ぶ線との交差角の絶対値φ6−7より大きいことから、火災火源Fに対してアドレスN2の防災ロボット5が近いので、アドレスN2の防災ロボット5が獲得ポイント1を得る。
【0038】
図6(c)は、火災フラグが立っているアドレスN5の防災ロボット5で判定動作する様子を示す図である。
アドレスN2の防災ロボット5は、上述の如く、基準線フラグが立った基準線RL6、RL7に対して判定動作を完了したら、獲得ポイントを記憶するとともに判定済みの基準線RL6と基準線RL7のフラグを降ろす。そして、図11の図面番号(6c)通信経路P1のように、アドレスN2、N5、N6の火災フラグ、基準線RL11のフラグが立てられ、獲得ポイントを含み、待機フラグ、確定フラグ、消火フラグが立てられていない状態情報をアドレスN5の防災ロボット5に送信する。
【0039】
アドレスN5の防災ロボット5は、自身に火災フラグが立っていることと、待機フラグが降りていること、確定フラグが立っていないこと、基準線フラグが立っている基準線があることを確認し、基準線フラグが立っている基準線RL11の対象のアドレスN6の防災ロボット5から火源角度情報を入手する。ここで入手する火源角度情報とは、基準線RL11のアドレスN6の防災ロボット5の方向軸原点からの角度θ6−11、火災火源FのアドレスN6の防災ロボット5の方向軸原点からの角度θ6−F(例えば160°)である。アドレスN5の防災ロボット5は、基準線RL11のアドレスN5の防災ロボット5の方向軸原点からの角度θ5−11、火災火源FのアドレスN5の防災ロボット5の方向軸原点からの角度θ5−F(例えば60°)が記憶されている。
基準線RL11と火災火源Fとの偏り角、基準線RL11とアドレスN5の防災ロボット5の中心と火災火源Fとを結ぶ線との交差角の絶対値φ5−11と、基準線RL11とアドレスN6の防災ロボット5の中心と火災火源Fとを結ぶ線との交差角の絶対値φ6−11は、式(5)、式(6)で求められ、図4に示した、予めプリセットしておいた各基準線の角度データを用いて以下のように求められる。
【0040】
φ5−11=|θ5−F−θ5−11|=|60−0|=60 (5)
φ6−11=|θ6−F−θ6−11|=|160−180|=20 (6)
【0041】
基準線RL11とアドレスN5の防災ロボット5の中心と火災火源Fとを結ぶ線との交差角の絶対値φ5−11が基準線RL11とアドレスN6の防災ロボット5の中心と火災火源Fとを結ぶ線との交差角の絶対値φ6−11より大きいことから、火災火源Fに対してアドレスN5の防災ロボット5が近いので、アドレスN5の防災ロボット5が獲得ポイント1を得て、合計で獲得ポイント2を得る。
【0042】
図7(a)は、火災フラグが立っているアドレスN6の防災ロボット5で判定動作する様子を示す図である。
アドレスN5の防災ロボット5は、基準線フラグが立った基準線RL11に対して判定動作を完了したら、獲得ポイントを記憶するとともに判定済みの基準線RL11のフラグを降ろす。そして、図11の図面番号(7a)通信経路P1のように、アドレスN2、N5、N6の火災フラグが立てられ、獲得ポイントを含み、待機フラグ、確定フラグ、消火フラグ、基準線フラグが立てられていない状態情報をアドレスN6の防災ロボット5に送信する。
【0043】
アドレスN6の防災ロボット5は、自身に火災フラグが立っていることと、待機フラグが降りていることと、確定フラグが立っていないこと、基準線フラグが立てられた基準線がないので、最も火災火源Fに近い防災ロボット5は獲得ポイントが最高点2のアドレスN5の防災ロボット5と確定しており、確定フラグを立て判定動作を終了する。そして、アドレスN6の防災ロボット5は、図11の図面番号(7a)通信経路P2のように、確定フラグ、アドレスN2、N5、N6の火災フラグが立てられ、獲得ポイントを含み、待機フラグ、消火フラグが立てられていない状態情報をアドレスN1の防災ロボット5に送信する。
【0044】
なお、判定待ち時間が経過して判定動作に入ると、リング状の通信を止め、火災フラグの立っている防災ロボット5間で情報交換の通信を行うとしたが、リング状の通信を継続したまま、火災フラグの立っている防災ロボット5の状態情報を順次伝達することによって情報交換を行っても良い。
【0045】
図7(b)は、判定動作が完了した時点の状態情報をリング状に防災ロボット5に伝達する様子を示す図である。
アドレスN1の防災ロボット5は、確定フラグが立っていることと、自身の火災フラグが立っていないことから、放水動作を行わないで、アドレスN2の防災ロボット5に図11の図面番号(7b)通信経路P1に示す状態情報を伝達する。
【0046】
アドレスN2の防災ロボット5は、確定フラグが立っていることと、自身の火災フラグが立っていることを確認するが、獲得ポイントが最高点2ではないので、放水動作を行わないで、アドレスN3の防災ロボット5に図11の図面番号(7b)通信経路P2に示す状態情報を伝達する。
アドレスN3、N4の防災ロボット5は、確定フラグが立っていることと、自身の火災フラグが立っていないことから、放水動作を行わないで、次のアドレスの防災ロボット5に図11の図面番号(7b)通信経路P3、P4に示す状態情報を伝達する。
【0047】
アドレスN5の防災ロボット5は、確定フラグが立っていることと、自身の火災フラグが立っていることと、獲得ポイントが最高点であることを確認し、放水動作を開始し、圧力スイッチ等による動作確認信号によって放水フラグを立てる。
アドレスN5の防災ロボット5は、図11の図面番号(7b)通信経路P5のように、確定フラグ、放水フラグ、アドレスN2、N5、N6の火災フラグが立てられ、獲得ポイントを含み、待機フラグが立てられていない状態情報をアドレスN6の防災ロボット5に送信する。
【0048】
図7(c)は、放水が開始された以降に状態情報をリング状に防災ロボット5に伝達する様子を示す図である。
アドレスN6の防災ロボット5は、図11の図面番号(7c)通信経路P1のように、確定フラグ、放水フラグ、アドレスN2、N5、N6の火災フラグが立てられ、獲得ポイントを含み、待機フラグが立てられていない状態情報をアドレスN1の防災ロボット5に送信する。以降も状態情報を次のアドレスに伝達する。
確定フラグが立ってから所定時間を超過しても放水フラグが立たない場合は、獲得ポイント次点のアドレスN2の防災ロボット5が放水動作を開始する。すなわち、アドレスN5の防災ロボット5が故障していても防災システムは停止しない。
【0049】
なお、防災ロボット5から次のアドレスの防災ロボット5に状態情報を送信したときに、無応答であったり、自己診断による故障等、消火活動に参加できない等の理由で受信ができなかったことを示す「NAK」信号が戻ってきたりしたときには、更に次のアドレスの防災ロボット5に状態情報を送信する。例えば、図13に示すように、アドレスN2の防災ロボット5からアドレスN3の防災ロボット5に状態情報を送信したときにアドレスN3の防災ロボット5から「NAK」信号が戻された場合、アドレスN2の防災ロボット5からアドレスN4の防災ロボット5に状態情報を送信する。
【0050】
また、アドレスN4の防災ロボット5からアドレスN5の防災ロボット5に状態情報を送信したときに所定の時間経過しても応答がないとき、アドレスN4の防災ロボット5からアドレスN5の防災ロボット5に状態情報を繰り返し送信し、それでも応答がないとき、アドレスN4の防災ロボット5からアドレスN5の防災ロボット5に状態情報を送信する。
【0051】
従って、一部に故障した防災ロボット5があってもこれを情報交換のリングから切り離すことができ、残りの防災ロボット5でリング状に情報交換を継続し、防災システムの停止を防止できる。
また、判定動作を開始する前に通信が再開した場合は、切り離されていた防災ロボット5を情報交換のリングに戻すことができる。
【0052】
この発明の実施の形態1に係る防災システムは、防護区画1内に配置された複数の防災ロボットがそれぞれ独自に火災火源Fを探査し、互いに火災火源Fの角度情報を送受信し、その角度情報から火災火源Fに最も近い防災ロボットを特定し、特定した防災ロボットから放水するので、中央操作盤4または集中監視装置または集中制御装置の負担を低減することができるとともに、物件個々に地図情報等を登録する労力も必要としないし、機器や制御を標準化でき安価なシステムとすることができる。
また、一部の防災ロボットが故障しても正常な防災ロボットで火災火源Fを検知するとともに正常な防災ロボットのうち最も火災火源Fに近いものから放水するので、防災システム全体がダウンしてしまうということを防げる。
【0053】
実施の形態2.
図14は、防護区画1にアドホック通信を用いて状態情報を送受信する防災ロボットを配置した様子を示す図である。
図14(a)は、火災受信機3から火災信号が入力された中央操作盤4が、連動して防災ロボット5を起動したときの様子を示す図である。
防護区画1に配置された6個の防災ロボット5は、火災受信機3からの火災信号に連動して、中央操作盤4が火源探査や消火を指令し、一斉にすべての防災ロボット5が火源探査を開始する。
図14(b)は、最初に火災火源Fを検知した防災ロボット5の通信の様子を示す図である。
識別番号N5の防災ロボット5が火災火源Fを最初に検知した場合、識別番号N5の防災ロボット5が、火災フラグを立てた送信スロットを送信する送信期間と残りの防災ロボット5から送信される信号を受信する受信期間とを有する同期信号を送信する。
【0054】
図14(c)は、火災火源Fを識別番号N3の防災ロボット5以外の防災ロボット5が検知したときの通信の様子を示す図である。
識別番号N5の防災ロボット5で同期信号が発せられた後で火災火源Fを検知した防災ロボット5は、識別番号N5の防災ロボット5に同期信号の受信期間で送信要求を行う。送信要求が正しく行われていないとき、所定の間隔で所定の回数の送信要求をリトライする。なお、他の防災ロボット5の送信を受信したとき、その送信期間中はその他の防災ロボットは送信を待機し、送信要求の衝突を防ぐようにする。
送信要求が正しく行われたとき、識別番号N5の防災ロボット5は送信要求のあった防災ロボット5に対してタイムスロットを割り当てる。
【0055】
図15(a)は、火災火源Fを識別番号N3の防災ロボット5以外の防災ロボット5が火源角度情報を送信する様子を示す図である。
この例では識別番号N3の防災ロボット5以外の防災ロボット5で火災火源Fが検知された。そこで、識別番号N3の防災ロボット5以外の防災ロボット5は割り当てられたタイムスロットを利用して、識別番号N5の防災ロボット5と自身を結ぶ基準線、基準線の自身の方向軸原点からの角度、火災火源Fの自身の方向軸原点からの角度を送信する。
例えば、識別番号N1の防災ロボット5は、基準線RL2、基準線RL2の自身の方向軸原点からの角度θ1−2、火災火源Fの自身の方向軸原点からの角度θ1−Fを送信する。同様に、識別番号N2の防災ロボット5は、基準線RL6、基準線RL6の自身の方向軸原点からの角度θ2−6、火災火源Fの自身の方向軸原点からの角度θ2−Fを送信する。同様に、識別番号N4の防災ロボット5は、基準線RL10、基準線RL10の自身の方向軸原点からの角度θ4−10、火災火源Fの自身の方向軸原点からの角度θ4−Fを送信する。同様に、識別番号N6の防災ロボット5は、基準線RL11、基準線RL11の自身の方向軸原点からの角度θ6−11、火災火源Fの自身の方向軸原点からの角度θ6−Fを送信する。
【0056】
識別番号N5の防災ロボット5は、基準線RL2の自身の方向軸原点からの角度θ5−2、基準線RL6の自身の方向軸原点からの角度θ5−6、基準線RL10の自身の方向軸原点からの角度θ5−10、基準線RL11の自身の方向軸原点からの角度θ5−11、火災火源Fの自身の方向軸原点からの角度θ5−Fが記憶されている。
図15(b)は、識別番号N5の防災ロボット5で行う判定動作の様子を示す図である。
そして、基準線RL2、RL6、RL10、RL11それぞれに対して火災火源Fとの偏り角を求めて、偏り角の大きい方に獲得ポイントを与えて、最高の獲得ポイントを得た防災ロボット5が火災火源Fに最も近いと判定し、放水を指令する。放水が指令された防災ロボット5は、残りの防災ロボット5に放水禁止を指令する。
【0057】
図15(c)は、識別番号N5の防災ロボット5で放水を行う様子を示す図である。
放水が指令された防災ロボット5が放水を開始する。
【0058】
実施の形態3.
図16は、防護区画1にアドホック通信を用いて状態情報を送受信する防災ロボット5を配置した様子を示す図であり、防災ロボット5が中継通信を行う場合を示している。
図16(a)は、最初に火災火源Fを検知した防災ロボット5の通信の様子を示す図である。
識別番号N6の防災ロボット5が火災火源Fを最初に検知した場合、識別番号N6の防災ロボット5が、火災フラグを立てた送信スロットを送信する送信期間と残りの防災ロボット5から送信される信号を受信する受信期間とを有する同期信号を送信する。この同期信号は、例えば識別番号N1、N2、N5の防災ロボット5に伝搬する。
【0059】
図16(b)は、火災火源Fを識別番号N3の防災ロボット5以外の防災ロボット5が検知したときの通信の様子を示す図である。
識別番号N6の防災ロボット5で同期信号が発せられた後で火災火源Fを検知した防災ロボット5は、識別番号N6の防災ロボット5に同期信号の受信期間で送信要求を行う。このとき識別番号N4の防災ロボット5は識別番号N5の防災ロボット5からの通信を傍受して、識別番号N5の防災ロボット5に識別番号N6の防災ロボット5との中継を要求する。
【0060】
図16(c)は、識別番号N5の防災ロボット5が中継を行う様子を示す図である。
識別番号N5の防災ロボット5は、自身に割り当てられたタイムスロットを利用して、識別番号N4の防災ロボット5に中継通信を許可する。なお、この中継通信の許可の通信を識別番号N6の防災ロボット5も傍受するが、識別番号N5の防災ロボット5からのデータと認識せずに、次に、識別番号N5の防災ロボット5を経由した識別番号N4の防災ロボット5からの状態情報を受信する。
【0061】
図17(a)は、識別番号N5の防災ロボット5と識別番号N4の防災ロボット5の通信の様子を示す図である。
識別番号N4の防災ロボット5は識別番号N5の防災ロボット5に割り当てられたタイムスロットに同期して、その待ち受け期間に中継用のデータを送信する。
図17(b)は、識別番号N5の防災ロボット5が中継を行う様子を示す図である。
識別番号N5の防災ロボット5は、割り当てられたタイムスロットを利用して、識別番号N4の防災ロボット5からのデータを識別番号N6の防災ロボット5に中継送信する。
【0062】
この例では識別番号N3の防災ロボット5以外の防災ロボット5で火災火源Fが検知された。そこで、識別番号N3の防災ロボット5以外の防災ロボット5は割り当てられたタイムスロットまたは中継通信を利用して、識別番号N6の防災ロボット5と自身を結ぶ基準線、基準線の自身の方向軸原点からの角度、火災火源Fの自身の方向軸原点からの角度を送信する。
識別番号N1の防災ロボット5は、基準線RL3、基準線RL3の自身の方向軸原点からの角度θ3−3、火災火源Fの自身の方向軸原点からの角度θ1−Fを送信する。同様に、識別番号N2の防災ロボット5は、基準線RL7、基準線RL7の自身の方向軸原点からの角度θ2−7、火災火源Fの自身の方向軸原点からの角度θ2−Fを送信する。同様に、識別番号N4の防災ロボット5は、基準線RL10の自身の方向軸原点からの角度θ4−10、火災火源Fの自身の方向軸原点からの角度θ4−Fを送信する。同様に、識別番号N5の防災ロボット5は、基準線RL11、基準線RL11の自身の方向軸原点からの角度θ6−11、火災火源Fの自身の方向軸原点からの角度θ5−Fを送信する。
【0063】
識別番号N6の防災ロボット5は、基準線RL3の自身の方向軸原点からの角度θ6−3、基準線RL7の自身の方向軸原点からの角度θ6−7、基準線RL10の自身の方向軸原点からの角度θ6−10、基準線RL11の自身の方向軸原点からの角度θ6−11、火災火源Fの自身の方向軸原点からの角度θ6−Fが記憶されている。
そして、基準線RL3、RL7、RL10、RL11それぞれに対して火災火源Fとの偏り角を求めて、偏り角の大きい方に獲得ポイントを与えて、最高の獲得ポイントを得た防災ロボット5が火災火源Fに最も近いと判定し、放水を指令する。放水が指令された防災ロボット5は、残りの防災ロボット5に放水禁止を指令する。
【0064】
図17(c)は、識別番号N6の防災ロボット5で放水を行う様子を示す図である。
放水が指令された識別番号N6の防災ロボット5が放水を開始する。
【0065】
実施の形態4.
図18は、これまで説明した防災ロボットの消火装置を具備しない火災覚知用防災ロボットとして用い、火源に最も近い防災ロボットを判定することによって火災区画を判定するものである。すなわち、隣接する防災ロボットと等距離の線を描くことによって火災区画の境界線を定める。これによって避難誘導を行う為の火災位置概略を知ることができる。
【0066】
防災ロボット5は、標識となる光源および旋回軸に取付けられる光源検出手段を備えても良く、防災ロボット5は、旋回動作に先だって光源を点灯または点滅する。また、防災ロボット5は、火災火源Fを旋回探査するときに、光源検出手段により他の防災ロボット5の光源が点灯または点滅していることを検出し、他の防災ロボット5の方向を検出した結果に基づいてプリセットデータを構築しても良く、このような機能を持つことで、事前にプリセットデータを入力する必要がなくなり、より機器や制御を標準化することができる。
【0067】
以上説明した防災ロボットは固定設備であるが、自律走行型としても良い。自らの所在データをGPS、慣性航法装置、建物に設置された無線標識等によって把握し、共通の座標として送信データに加え、前述の判定動作において防災ロボットすべてと総当たりの情報交換を行う事により、最も火源に近い防災ロボットを特定することができる。
また、火源角度が判るので火源に接近して消火活動を行うこともできる。
【0068】
この発明に係る防災システムは、アトリウム、展示場、体育館、屋内競技場、大規模店舗、事務所等の防火対象空間において、火災時の火災区域の自動検出を行う防災ロボット、あるいは火源への局所放水によって自動消火を行う防災ロボットに関する。
個々の装置は単純動作を行うが、これらが相互に関係し合うことによって全体的に知能的な動作となる、一種の人工知能に相当する。
ここでは主として位置判定に適用し、大空間の火災覚知システムにおける火災区域の自動判定や、可動式ヘッドを有する消火システムにおける放水装置の自動選択に応用している。
【符号の説明】
【0069】
1 防護区画、2 火災感知器、3 火災受信機、4 中央操作盤、5 防災ロボット、6 加圧送水装置、7 遠隔操作弁、11 火災検出部、11a 赤外線リニアセンサ、11b 炎検知部、12 放水手段、12a 放水部、13 旋回駆動部、14 位置検出部、15 制御部、16 送受信部、17 記憶部、F 火災火源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災に基づく物理的現象を検出する火災検出部と上記火災検出部の火災検出信号が入力される制御部とを備える複数の防災ロボットが防護区画に配設される防災システムにおいて、
上記防災ロボットは、
他の防災ロボットと状態情報を送受信する送受信部と、
自身および他の防災ロボットの状態情報を記憶する記憶部と、
を備え、
上記制御部は、上記送受信部によって他の防災ロボットから送信された状態情報に対して、自身の状態情報を加えて更新された状態情報を上記記憶部に記憶させるとともに、上記送受信部によって他の防災ロボットに送信するものであって、
上記複数の防災ロボットは、それぞれの更新された状態情報によって火災火源に最も近い防災ロボットを特定することを特徴とする防災システム。
【請求項2】
上記防災ロボットは、消火手段を備え、
火災に最も近い防災ロボットの消火手段が消火活動を行うことを特徴とする請求項1に記載の防災システム。
【請求項3】
上記防災ロボットは、GPSにより自身の位置情報を把握することを特徴とする請求項1または2に記載の防災システム。
【請求項4】
上記防災ロボットは、標識となる光源と、旋回駆動する軸に取付けられる光源検出手段と、を備え、
複数の上記防災ロボットが互いの方向を検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の防災システム。
【請求項5】
上記防災ロボットは、自律走行することを特徴とする請求項3または4に記載の防災システム。
【請求項6】
上記防災ロボットは、自動火災報知設備の火災発報に連動して全自動で火災検出および消火活動を行う自動運転モードと、中央操作盤から手動で消火活動を行う中央操作モードと、自身が配置された防護区画内に配置された現地操作盤から手動で消火活動を行う現地操作モードと、を備え、
上記中央操作盤または上記現地操作盤は、自動運転モードと、中央操作モードと、現地操作モードとのいずれかを排他的に設定操作できることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の防災システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−206279(P2011−206279A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77153(P2010−77153)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】