説明

防災面付き保護帽

【課題】顔全体をシールド可能であって、保護帽内に収納することができる防災面付き保護帽を提供する。
【解決手段】防災面を第1シールド部材4と第2シールド部材5により構成する。収納ガイド部材3を帽体2の内側前部に取付ける。第1シールド部材4を、収納ガイド部材3に形成した収納ガイド孔13に係止部材14によって係止する。第1シールド部材4と第2シールド部材5を、それぞれに形成したスライド孔15、16を介して係止部材(スライダー17aとホルダー18b、18c)によって連結する。第1シールド部材4と第2シールド部材5を最上位置までスライドさせたとき、両シールド部材4、5は収納ガイド部材3の前面側に重なって配設され帽体2内に収納される。一方、最下位置までスライドさせたとき、両シールド部材4、5によって顔の上部と下部が覆われ顔全体が保護される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔面全体を覆うシールドを備えた防災面付き保護帽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
落下物や飛翔物、あるいは転落の危険の虞がある場所では安全上の理由から作業者はヘルメット(保護帽)を着用するのが通常である。そして、建設、建築、土木工事現場でのはつり時には飛散物が発生し、また、電気設備工事等の電極短絡時にはアーク(電気放電)あるいはその飛散物が発生するため、それらから顔を保護するために、着用されるヘルメットにはシールド(防災面)部材が必要とされていた。
従来から、ヘルメットに顔面シールドを開閉自在に取り付けて、必要に応じて顔面を保護するようにしたヘルメットは存在していた。しかし、そのヘルメットは、顔面シールドを支持軸を中心に回転させる機構であり、該顔面シールドは本体の表面に露出して設けられているものであるため、見栄えが悪いだけでなく、ヘルメット表面で物が引っ掛かる虞があり安全性に欠ける問題があった。
そこで、下記特許文献1には、ヘルメット殻体の前頭部を二重シェル構造にして、その収納空間内に顔面シールドを納めるようにしたヘルメットが開示されている。このヘルメットによれば、顔面シールドを円滑に開閉することができる他、高い構造強度と安全性を確保することができるとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−82518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のヘルメットでは、顔面シールドを収納するために、殻体の前頭部の表面をトップカバーで覆設して二重シェル構造にするため、さらには、一部材からなる大きな顔面シールドを収納空間内にそのまま収納するためヘルメット自体の形状が大きくなってしまうという欠点があった。
【0005】
そこで、本願発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、保護帽(ヘルメット)自体は従来の大きさを維持しながら、顔全体をシールド可能な防災面を保護帽内に収納することができる防災面付き保護帽の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る防災面付き保護帽の発明は、作業者の顔を保護する防災面を帽体内に収納するための収納ガイド部材が、帽体と該帽体内に取り付けられているハンモックとに固定された防災面付き保護帽において、
前記防災面は、顔に近い側に配設される第1シールド部材と、遠い側に配設される第2シールド部材とから構成され、
前記第1シールド部材は、前記収納ガイド部材に形成された収納ガイド孔にガイド係止部材を介して係止され、該収納ガイド孔に沿って顔の上下方向へスライド可能に設けられ、前記帽体内に収納された状態の位置から顔の上部を覆った状態の位置までの間を移動し、
前記第2シールド部材は、前記第1シールド部材に形成された第1スライド孔にスライド係止部材を介して係止され、前記第1スライド孔に沿って顔の上下方向へスライド可能であると共に、第2シールド部材に形成された第2スライド孔に同一の前記スライド係止部材を係止させ、前記スライド係止部材に対して、前記第2スライド孔に沿って顔の上下方向へスライド可能に設けられ、前記第1シールド部材に重なった状態の位置から顔の下部を覆った状態の位置までの間を移動し、
前記防災面は、両シールド部材が重なった状態で前記帽体と収納ガイド部材の間の空間内に収納され、また、両シールド部材によってそれぞれ顔の上部と下部を覆うことにより顔全体を覆うように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
防災面は作業者の顔面全てを覆うことが可能なシールド面であり、複数のシールド部材から構成されている。また、防災面は帽体内に収納可能に構成されており、収納の際には複数のシールド部材が、互いに重なった状態で帽体内に収納される。
収納ガイド部材は、帽体(シェル)の内側前部から両側部に配設された、例えば、合成樹脂等からなる薄板状の部材である。帽体内には衝撃吸収用のハンモックが取り付けられており、前記収納ガイド部材は、帽体とハンモックとの間に配設される。衝撃吸収ライナーが配備される場合は、前記収納ガイドとハンモックの間に配設される。収納ガイド部材は、その両側部が帽体の内壁に固定され、前部がハンモックに固定されている(両側部の固定はハンモックと共に帽体の内壁に固定されるようにしてもよい)。これにより、帽体の内側前部には、帽体内壁と収納ガイド部材の面との間に隙間が形成され、この隙間が防災面(第1シールド部材と第2シールド部材)を収納するための収納空間となる。
【0008】
収納ガイド部材には、防災面を帽体内に誘導するための収納ガイド孔が、帽体の開口縁部から内部(帽体天井部)方向に形成されている。収納ガイド孔は、長孔形状を有しており、複数本形成されている。該収納ガイド孔には第1シールド部材がガイド係止部材を介して係合されており、第1シールド部材はこの収納ガイド孔に沿ってスライドし、顔の上下方向へ移動可能である。第1シールド部材は、顔の左右方向および上下方向の曲面に対応する曲率を有した略帯状の合成樹脂等からなる。第1シールド部材は、上方向へスライドしたとき、収納ガイド部材と重なる位置まで移動し、収納ガイド部材の前面側に重なった状態で帽体内に収納される。一方、下方向へスライドしたときには、収納ガイド部材の下部と第1シールド部材の上部の僅かな部分が左右方向帯状の部分で重なった位置まで移動し、作業者の目および鼻を覆う状態、すなわち顔の上部分を覆う状態で配設される。
【0009】
第1シールド部材と第2シールド部材の左右両側部には、それぞれ顔の上下方向に延びる長孔形状のスライド孔(第1スライド孔と第2スライド孔)が形成されている。これらのスライド孔には共通する1つのスライド係止部材が係合され、係止部材の背面側に第1シールド部材が配置され前面側に第2シールド部材が配置される。第2シールド部材は、係止部材と共に第1シールド部材の第1スライド孔に沿ってスライドし、顔の上下方向へ移動可能である。また、第2シールド部材は、スライド係止部材に対して第2シールド部材に形成された第2スライド孔の方向へスライドし、同じく顔の上下方向へ移動可能である。第2シールド部材は、顔の左右方向および上下方向の曲面に対応する曲率を有した略帯状の合成樹脂等からなる。第2シールド部材は、第1スライド孔に沿って最上部までスライドし、かつ、スライド係止部材に対して最上部までスライドしたとき、第1シールド部材と重なる位置まで移動し、第1シールド部材の前面側に配設される。一方、第1スライド孔に沿って最下部までスライドし、かつ、スライド係止部材に対して最下部までスライドしたときには、第1シールド部材の下部と第2シールド部材の上部の僅かな部分が左右方向帯状の部分で重なった位置まで移動し、作業者の口および喉を覆う状態、すなわち顔の下部分を覆う状態で配設される。
【0010】
また、上記課題を解決するために、請求項2に係る発明は、請求項1の防災面付き保護帽において、前記第1シールド部材と第2シールド部材とは同じ曲率を有した三次曲面からなり、
前記第1スライド孔と第2スライド孔は、前記第1シールド部材と第2シールド部材の左右両側部に顔の上下方向へ前記三次曲面シールドの曲率に合わせて形成され、
前記スライド係止部材は、前記第1シールド部材と第2シールド部材との間に配置されるスライダーと、前記第1シールド部材の内側から前記第1スライド孔を介して前記スライダーに嵌着される第1ホルダーと、前記第2シールド部材の外側から前記第2スライド孔を介して前記スライダーに嵌着される第2ホルダーとから構成され、
前記第1シールド部材の表面と第2シールド部材の裏面間には前記スライダーの厚さ分の隙間が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
防災面を構成する2つのシールド部材は、それぞれが顔の曲面(左右方向曲面および上下方向曲面)に対応した曲率を有する三次曲面の部材からなる。各シールド部材の左右両側部に形成されているスライド孔は、同一の曲率中心を有した孔であり、かつ、シールド部材の曲率と同じ曲率を有するように形成されている。そして、スライド係止部材のスライダーを挟んでスライダーの背面側に第1シールド部材、前面側に第2シールド部材が配置される。したがって、各シールド部材をこのスライド孔に沿ってスライドさせ両シールド部材を前後に重ねて配置させたときも、あるいはシールド部材のスライド時においても、第1シールド部材と第2シールド部材と間にはスライド係止部材を構成するスライダーが配設されているため、このスライダーの厚さ分だけ両シールド部材間には一様の隙間が生じ、各シールド部材の曲面同士が接触して擦れ合うことがなく傷がつき難い。
【0012】
また、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明は、請求項1又は2の防災面付き保護帽において、前記第1スライド孔と第2スライド孔は、前記第1シールド部材と第2シールド部材をそれぞれ最下位置までスライドさせて前記防災面により顔全体を覆ったとき、第1シールド部材の左右方向の下部と第2シールド部材の左右方向の上部とが重なって配置される位置まで形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
第1シールド部材は第1スライド孔に沿って最下位置までスライドさせたとき、作業者の目および鼻を覆う状態、すなわち顔の上部分を覆う状態で配設され、また、第2シールド部材は第2スライド孔に沿って最下位置までスライドさせたとき、作業者の口および喉を覆う状態、すなわち顔の下部分を覆う状態で配設される。したがって、第1シールド部材の下部と第2シールド部材の上部との僅かな左右方向帯状の重なり部分は、作業者の鼻の下部から口の上部の近傍に配設されることとなるため、作業者の視界に帯状部分が入ることはなく、作業性を低下させることもない。
【0014】
また、上記課題を解決するために、請求項4に係る発明は、請求項3の防災面付き保護帽において、前記第2スライド孔は、その上部において曲率中心の位置を変化させて形成されており、前記第2シールド部材を前記第2スライド孔に沿ってその最下位置までスライドさせたとき、第2シールド部材が第1シールド部材に近づくように変移し、前記重なって配置される両シールド部分間の隙間がなくなり両部材が密着するように構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
第1シールド部材の第1スライド孔と第2シールド部材の第2スライド孔とは同一の曲率を有しているが、第2シールド部材の第2スライド孔はその曲率を同一としながらも長孔形状のうち下部と上部とで形成位置を相違させ段差を有して設けられている。すなわち、下部の孔と上部の孔とで曲率の中心位置を異ならせ、上部の孔の位置をシールド部材の側端部から僅かな分(両シールド部材間に配設されるスライダーの厚さ分)だけ内側にずらした位置に形成している。このように第2シールド部材のスライド孔の軌跡のみを変移させることにより、第2シールド部材を下方にスライドさせたとき、すなわち、スライド係止部材が第2シールド部材のスライド孔の上部に係止したとき、第2シールド部材はスライド孔の変移分だけ第1シールド部材方向へ近づき、両シールド部材は、左右方向帯状の重なる部分において接触し、隙間のない一面の防災面として顔面の全てが覆われる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の防災面付き保護帽によれば、顔全体をシールド可能な防災面を、分割した複数のシールド部材から構成し、各シールド部材をスライド可能に設け、これらを重ね合わせた状態で帽体内に収納可能とし、また、各シールド部材を引き伸ばして顔全体をシールド可能としたので、保護帽自体の大きさを従来通りに維持しつつ作業者の顔全体を確実に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る防災面付き保護帽の分解斜視図である。
【図2】図1の収納ガイド部材と第1シールド部材と第2シールド部材を組み合わせた図であり、(a)は第1シールド部材を最下位置までスライドさせ、第2シールド部材を最上位置までスライドさせた状態を表わし、(b)は第1シールド部材および第2シールド部材を共に最下位置までスライドさせた状態を表わす。
【図3】(a)は防災面(第1シールド部材および第2シールド部材)を帽体内に収納した状態を表わす図であり、(b)は第1シールド部材と第2シールド部材を重ね合わせたまま第1シールド部材を最下位置までスライドさせ帽体の外部に配設させた状態を表わす図であり、(c)は第1シールド部材と第2シールド部材を共に最下位置までスライドさせ帽体の外部に配設させた状態を表わす図である。
【図4】本発明に係る防災面付き保護帽を装着した作業者が防災面を帽体内に収納した状態を表わす図であり、(a)はその正面図で、(b)はその側面図である。
【図5】作業者の顔が防災面によって覆われた状態を表わす図であり、(a)はその正面図で、(b)はその側面図である。
【図6】第1シールド部材と第2シールド部材に係合するスライド係止部材の一形態を示す図2(a)のE−E線における断面図である。
【図7】図6と同じスライド係止部材の図2(a)のF−F線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る防災面付き保護帽の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、防災面付き保護帽1は、帽体(シェル)2、収納ガイド部材(シールガイド)3、第1シールド部材(アイシールド)4、第2シールド部材(フェイスガード)5、ライナー6、および図示は省略されているが帽体2に着装されるハンモック、ヘッドバンド、アゴひも等の部品から構成されている。
【0019】
帽体2は、頭部を覆う半球状の部材であり、硬い殻体(例えば、FRP樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂等)から構成されている。収納ガイド部材3は、第1シール部材4および第2シール部材5を帽体2内へガイド収納するため、あるいは帽体2内から帽対2外(顔の前面)へとガイドするための部材であり、合成樹脂を射出成形加工又は、合成樹脂板の打ち抜き加工したものである。収納ガイド部材3は帽体2内に取付固定される。第1シールド部材4および第2シールド部材5は、防災面を構成する部材であり、スライド可能に設けられており、帽体2外へスライド展開されたとき顔の上部と下部をそれぞれ覆い得る。両シールド部材4、5は合成樹脂を射出成形加工または板曲げ加工により成形したものであり、透明または半透明(スモーク、着色品)状からなる。この形態では、防災面が第1シールド部材4および第2シールド部材5の2つのシールド部材から構成されているが、この形態に限定されず、分割された複数の部材から構成されるものであれば3つ以上のシールド部材から構成されるものであってもよい。
【0020】
保護帽に通常使用されるハンモックおよびヘッドバンド(図示せず)は、帽体を頭部に保持し、帽体と共に頭部への衝撃を緩和する部材であり、本発明でも使用される。ライナー6は、頭部に加わる衝撃を吸収するための部材であり、例えば、発泡スチロールからなり、帽体2とハンモックの間に配設される。アゴひもは、帽体2が頭部から外れるのを防ぐための部材である。
【0021】
収納ガイド部材3は、帽体2内の前部から両側部に配設され、その下部周方向には取付孔11、12が設けられている。この取付孔のうち両側部の取付孔11は帽体2の内壁に取付固定され、中央部の取付孔12はハンモックに取付固定される。これにより、帽体2内の前部には帽体2の内壁と収納ガイド部材3の外面との間に空間が形成され、この空間が第1シールド部材4および第2シールド部材5の収納空間となる。
【0022】
また、収納ガイド部材3には複数本の長孔からなる収納ガイド孔13が、保護帽1を装着した作業者の顔の上下方向に沿って、すなわち、帽体2の開口縁部から内部(帽体天井部)へ向かうように形成されている。収納ガイド孔13は防災面(第1シールド部材4および第2シールド部材5)を帽体2内に誘導するため、あるいは帽体2内に収納されている防災面を帽体外部へ誘導するためのガイド孔であり、該収納ガイド孔13には、ガイド係止部材14a、14b、14cを介して第1シールド部材4が係合される。第1シールド部材4は、この収納ガイド孔13に沿ってスライドし、顔の上下方向へ移動可能である。
【0023】
第1シールド部材4は、概略マスク形状を有し、左右両側部の上下方向の幅よりも中央付近での上下方向の幅の方がやや広く形成されており、かつ、顔の左右方向および上下方向の曲面に対応した曲率を有する三次曲面から構成されている。第1シールド部材4の両側部に顔の上下方向に延びる長孔形状のスライド孔(第1スライド孔)15が形成されている。スライド孔15は第1シールド部材4の曲面の曲率と同じ曲率を有して形成されている。詳しくは後述するが、スライド孔15の曲率を第1シールド部材4の曲率と同様に形成することにより、第1シールド部材4と第2シールド部材5とはスライド時に互いに擦れ合うことがなく傷の発生を防止できる。
【0024】
第2シールド部材5は、第1シールド部材と同様に概略マスク形状を有し、左右両側部の上下方向の幅よりも中央付近での上下方向の幅の方がやや広く形成されている。そして、顔の左右方向および上下方向の曲面に対応した曲率を有する三次曲面から構成されており、この曲率は第1シールド部材4の曲率と同じ値に形成されている。また、第2シールド部材5の両側部には、顔の上下方向に延びる長孔形状のスライド孔(第2スライド孔)16が形成されている。スライド孔16は第2シールド部材5の曲面の曲率と同じ曲率を有して形成されているが、その下部領域の孔と上部領域の孔とで曲率中心の位置が異なるように形成されている。つまり、スライド孔16は途中から孔の軌道が変移して形成されている。詳しくは図2以下に基づいて後述する。
【0025】
第1シールド部材4と第2シールド部材5とは、スライド孔15と16に係合する共通のスライド係止部材17(17a、17b、17c)によって連結されている。第1シールド部材4と第2シールド部材5の間にスライダー17aが配設され、第1シールド部材4の内側(背面側)から第1スライド孔15を介して内側ホルダー17bがスライダー17aに係着され、第2シールド部材5の外側(前面側)から第2スライド孔16を介して外側ホルダー17cがスライダー17aに係着されている。この構成により、第1シールド部材4はスライダー17aに対して第1スライド孔15に沿って該孔15の長さ分だけスライドし、顔の上下方向に移動可能である。また、第2シールド部材5はスライダー17aに対して第2スライド孔16に沿って該孔16の長さ分だけスライドし、顔の上下方向に移動可能である。スライド係止部材17に関しては、図6、7に基づいてさらに後述する。
【0026】
図2は、収納ガイド部材3と第1シールド部材4と第2シールド部材5とを連結させ、各シールド部材を収納ガイド孔13と第1、第2スライド孔15、16に沿ってスライドさせた状態を表わしている。図(a)は、第1シールド部材4を収納ガイド部材3の収納ガイド孔13に沿ってその孔13の最下位置までスライドさせ、かつ、第2シールド部材5を第1シールド部材4の第1スライド孔15に沿ってスライド係止部材17と共にその孔15の最上位置までスライドさせ、さらに、第2シールド部材5をスライド係止部材17に対して上方へスライドさせて第2シールド部材5の第2スライド孔16の最下位置にスライド係止17を係止させたものである。収納ガイド部材3と第1シールド部材4とは、収納ガイド部材3の下部と第1シールド部材4の上部の斜線で示される左右方向帯状の領域21で重なって配設されている。第1シールド部材4と第2シールド部材5とは、第2シールド部材5が第1シールド部材4の前面側に重なって第1シールド部材4の領域内に第2シールド部材5が含まれるように配設されている。
【0027】
図(b)は、第1シールド部材4を収納ガイド部材3の収納ガイド孔13に沿ってその孔13の最下位置までスライドさせ、かつ、第2シールド部材5を第1シールド部材4の第1スライド孔15に沿ってスライド係止部材17と共にその孔15の最下位置までスライドさせ、さらに、第2シールド部材5をスライド係止部材17に対して下方へスライドさせて第2シールド部材5の第2スライド孔16の最上位置にスライド係止17を係止させたものである。このとき、第1シールド部材4と第2シールド部材5とは、第1シールド部材4の下部と第2シールド部材5の上部の斜線で示される左右方向帯状の領域22で重なって配設され、一様な曲面で顔全体を覆うシールド面を形成している。
【0028】
上記したように、第1シールド部材4の左右方向および上下方向の曲面の曲率は、第2シールド部材5の左右方向および上下方向の曲面の曲率とそれぞれ同じ曲率に形成されている。また、第1シールド部材4と第2シールド部材5の間にスライダー17aが配設されている。さらに、スライド孔15と16は、中心角の等しい位置に、第1シールド部材4、第2シールド部材5の曲面の曲率と同じ曲率を有して形成されている。したがって、各シールド部材4、5をスライド孔15、16に沿ってスライドさせ両シールド部材4と5を前後に重ねて配置させたときも、あるいは第2シールド部材5のスライド時においても、第1シールド部材4と第2シールド部材5との間(図2(a)の矢印23で示す位置)には、スライド係止部材を構成するスライダー17aの厚さ分の隙間が形成され、各シールド部材4と5の曲面同士が接触して擦れ合うことがなく傷がつき難い。
【0029】
また、上記したように、第2シールド部材5のスライド孔16は、その下部領域の孔と上部領域の孔とで曲率中心の位置が相違して形成され、その途中から孔16の軌道が変移して形成されている(図1および図2(a)参照)。これを第1シールド部材4のスライド孔15と対比して言うと、スライド孔16の下部領域の孔の中心角とスライド孔15の中心角とは等しく形成され、スライド孔16の上部領域の孔の中心角はスライド孔15の中心角よりも少し小さな中心角で形成されている。この構成により、第2シールド部材5がスライド孔16の下部領域に沿ってスライドしているときは、上記のように第1シールド部材4と第2シールド部材5との間にスライダー17aの厚さ分の隙間が形成されているが、スライド孔16の上部領域に達したとき、孔16の軌道の変移により第2シールド部材5がその変移分だけ第1シールド部材4に近づく。そして、第2シールド部材5を最下位置までスライドさせたとき、図2(b)の両者が重なる帯状の領域22では、第1シールド部材4と第2シールド部材5間の隙間がなくなり、両者は密着した状態となる。これにより、第1シールド部材4から第2シールド部材5までの一様な曲面で顔全体を覆うことが可能となる。
【0030】
本防災面付き保護帽1は、防災面使用時には防災面をスライド開放させて作業者の目を保護することができるだけでなく、顔全体を覆い保護することができ、防災面未使用時にはスライド収納して防災面を帽体内に収納することができる保護帽である。図3(a)は、防災面(第1シールド部材4および第2シールド部材5)を帽体2内に収納したときの状態を示している。第2シールド部材5を第1シールド部材4のスライド孔15および第2シールド部材5のスライド孔16に沿って最上位置までスライドさせ、第1シールド部材4を収納ガイド孔13に沿って最上位置までスライドさせている。防災面は、収納ガイド部材3の上面側に第1シールド部材4が重なり、その上面側に第2シールド部材5が重なって帽体2の内壁と収納ガイド部材3との間に設けられた収納空間に収納されている。
【0031】
図3(b)は、第1シールド部材4を収納ガイド部材3の収納ガイド孔13に沿って最下位置までスライドさせ、第2シールド部材5を第1シールド部材4のスライド孔15および第2シールド部材5の2スライド孔16に沿って最上位置までスライドさせたときの状態を示している。第1シールド部材4の上面側に第2シールド部材5が重なって配置され、両シールド部材4、5によって顔の上部分を覆い得る状態まで開放されている。図3(a)と(b)とで示されたように、第1シールド部材4は、帽体2内の位置から顔の上部分を覆う位置までスライドし顔の上下方向に移動可能である。
【0032】
図3(c)は、第1シールド部材4を収納ガイド部材3の収納ガイド孔13に沿って最下位置までスライドさせ、かつ、第2シールド部材5を第1シールド部材4のスライド孔15および第2シールド部材5の2スライド孔16に沿って最下位置までスライドさせたときの状態を示している。第1シールド部材4によって顔の上部分を覆い、第2シールド部材5によって顔の下部分を覆い得る状態まで開放されている。図3(b)と(c)とで示されたように、第2シールド部材5は、スライド孔15、16に沿って顔の上部分を覆う位置から顔の下部分を覆う位置までスライドし顔の上下方向に移動可能である。
【0033】
図4(a)、(b)に示すように、スライド収納された防災面(第1シールド部材4と第2シールド部材5)は、帽体2の内側前部に重なって配設される。同じ曲率の曲面を有する複数部分に分割されたシールド部材(この形態では2つのシールド部材)を重ねて収納することができるので収納スペースを小さくすることができ、帽体2の形状を拡大させることなく従来の大きさの帽体を使用できる。
【0034】
図5(a)、(b)に示すように、スライド開放された防災面のうち第1シールド部材4は、その上部が収納ガイド部材3の収納ガイド孔13に係止された状態で、顔の目および鼻の上部を覆うように配設され、第2シールド部材5は、その上両側部がスライド孔15、16を介してスライド係止部材17によって第1シールド部材4と係着された状態で、顔の口、あごおよび喉の上部を覆うように配設されている。一様な曲率を有した第1シールド部材4および第2シールド部材5によって顔全体を覆うことができ確実に安全を確保できる。また、第1シールド部材4と第2シールド部材5との重なり領域22は、鼻から口の間の上方に配設されるので、この領域22によって作業者の視界がさえぎられることはなく、この点でも安全を確保できる。
【0035】
図6、7に示すスライド係止部材の形態では、第1シールド部材4のスライド孔15と第2シールド部材5のスライド孔16に、スライド係止部材を構成するスライダー17aが係合し、該スライダー17aの凹部31、32に、ホルダー17b、17cが嵌着される(矢印33、34)。このときシールド部材4、5のスライド孔縁部がスライダー17aとホルダー17b、17c間に挟まれる。第1シールド部材4および第2シールド部材5は、スライダー17aに対して矢印35および36の方向へスライドし、顔の上下方向へ移動することになる。スライダー17aとホルダー17b、17cは、図2、図6等に示すように縦長形状のもので、嵌め込みタイプのものであるため、スライドさせたとき係合するシールド部材4、5がグラツキ難く安定性に優れている。なお、スライダー17aとホルダー17b、17cは、嵌め殺しタイプのものでも、取り外し可能のものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 防災面付き保護帽
2 帽体
3 収納ガイド部材
4 第1シールド部材
5 第2シールド部材
6 ライナー
13 収納ガイド孔
15 第1スライド孔
16 第2スライド孔
17a スライダー
17b、17c ホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の顔を保護する防災面を帽体内に収納するための収納ガイド部材が、帽体と該帽体内に取り付けられているハンモックとに固定された防災面付き保護帽において、
前記防災面は、顔に近い側に配設される第1シールド部材と、遠い側に配設される第2シールド部材とから構成され、
前記第1シールド部材は、前記収納ガイド部材に形成された収納ガイド孔にガイド係止部材を介して係止され、該収納ガイド孔に沿って顔の上下方向へスライド可能に設けられ、前記帽体内に収納された状態の位置から顔の上部を覆った状態の位置までの間を移動し、
前記第2シールド部材は、前記第1シールド部材に形成された第1スライド孔にスライド係止部材を介して係止され、前記第1スライド孔に沿って顔の上下方向へスライド可能であると共に、第2シールド部材に形成された第2スライド孔に同一の前記スライド係止部材を係止させ、前記スライド係止部材に対して、前記第2スライド孔に沿って顔の上下方向へスライド可能に設けられ、前記第1シールド部材に重なった状態の位置から顔の下部を覆った状態の位置までの間を移動し、
前記防災面は、両シールド部材が重なった状態で前記帽体と収納ガイド部材の間の空間内に収納され、また、両シールド部材によってそれぞれ顔の上部と下部を覆うことにより顔全体を覆うように構成されていることを特徴とする防災面付き保護帽。
【請求項2】
前記第1シールド部材と第2シールド部材とは同じ曲率を有した三次曲面からなり、
前記第1スライド孔と第2スライド孔は、前記第1シールド部材と第2シールド部材の左右両側部に顔の上下方向へ前記三次曲面シールドの曲率に合わせて形成され、
前記スライド係止部材は、前記第1シールド部材と第2シールド部材との間に配置されるスライダーと、前記第1シールド部材の内側から前記第1スライド孔を介して前記スライダーに嵌着される第1ホルダーと、前記第2シールド部材の外側から前記第2スライド孔を介して前記スライダーに嵌着される第2ホルダーとから構成され、
前記第1シールド部材の表面と第2シールド部材の裏面間には前記スライダーの厚さ分の隙間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防災面付き保護帽。
【請求項3】
前記第1スライド孔と第2スライド孔は、前記第1シールド部材と第2シールド部材をそれぞれ最下位置までスライドさせて前記防災面により顔全体を覆ったとき、第1シールド部材の左右方向の下部と第2シールド部材の左右方向の上部とが重なって配置される位置まで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防災面付き保護帽。
【請求項4】
前記第2スライド孔は、その上部において曲率中心の位置を変化させて形成されており、前記第2シールド部材を前記第2スライド孔に沿ってその最下位置までスライドさせたとき、第2シールド部材が第1シールド部材に近づくように変移し、前記重なって配置される両シールド部分間の隙間がなくなり両部材が密着するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の防災面付き保護帽。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−17093(P2011−17093A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160886(P2009−160886)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(394000529)名和興産株式会社 (3)
【Fターム(参考)】