説明

防災頭巾

【課題】高い衝撃吸収性、防護性、耐熱性を備え、さらに、携帯性にも優れた防災頭巾を提供する。
【解決手段】防災頭巾1は、中央部分で二つ折りされた折り曲げ部2aを有する長尺のアラミド繊維体で形成され、アラミド繊維体の長手方向両端部のうち、一端部を開閉自在な開放端2bとし、他端部を折り曲げ部2aから所定長縫着して閉鎖端2cとし、開放端2bを開いて形成される開口から頭部に装着される。防災頭巾1は、折り曲げ部2aを含み少なくとも頭頂部を保護する頭頂部保護部2と、頭頂部保護部2から両側に延設され少なくとも側頭部を保護する側頭部保護部3とを有し、頭頂部保護部2には、低反発ウレタンで構成されたクッション部材が設けられ、開放端2bを閉じた状態で、三つ折りに折り畳み可能とし、折り畳んだときの縦横のサイズがA4サイズと同程度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震や火事等の災害時に使用する防災頭巾に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭や学校等において、地震や火災などの災害時に身の安全を守るために、防災頭巾が備えられている。一般的な防災頭巾は、表面及び裏面を綿織物とし、その内部に綿を入れた構造になっており、中央部分から略二つに折られた形に形成されている。そして、この防災頭巾は、正面中央部を押し開いて形成される開口から頭部に装着され、落下物からの衝撃をある程度吸収し、避難者を保護するための機能を有している。
【0003】
上記のような防災頭巾に関して、避難者の保護機能を強化したり、使い勝手を向上させるために様々な提案をなされている。例えば、特許文献1に記載の防災頭巾は、防災頭巾の内側にポケットを縫い付けておき、避難時に必要なハンカチやタオルなどの小物をポケットに収納できるようにしている。また、特許文献2には、防災生地を使用することで、頭部、肩、背中を炎から防ぐと共に、小さく畳めるようにして、ポケットやバッグに収納できる構造にした携帯用防災頭巾が記載されている。
【0004】
しかしながら、上記のような防災頭巾は、災害時の過酷な使用環境を考えると、耐衝撃性や、耐熱性、防炎性、遮熱性等において不十分なものであった。特に、大都市圏において、例えばマグニチュード7クラスの大地震が発生した場合には、地震そのものに加え、大規模な火災に巻き込まれる可能性が高く、このようなケースでは、落下物の衝撃を吸収しつつ、火災に対しても有効な防災頭巾が必要とされる。
【0005】
これに対して、例えば、特許文献3には、表面にアラミド繊維織物、裏面に綿織物、中間にフェノール樹脂繊維のフェルト層が挿入された構造を有する防災用頭巾が記載されている。頭巾の表面にアラミド繊維織物を使用することで、地震、火事等の際高所から落下したガラス破片や、飛散したガラス破片等の危険物が頭部に当たった場合でも、怪我を防止できるという優れた効果に加え、耐熱性にも優れているため、頭部や肩などを炎から保護することができる。また、この防災用頭巾は、未使用時には、折り畳んで座布団や枕として使用できるようにもなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−313614号公報
【特許文献2】実用新案登録第3101081号公報
【特許文献3】特開平9−10341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献3に記載の防災用頭巾は、未使用時に座布団や枕として使用することができても、携帯性について何ら考慮されていないため、かばん等に入れて持ち歩くには嵩張ってしまい、望ましくない。従って、例えば、通勤途中や、外出時に災害にあったときには、使用することができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、高い衝撃吸収性、防護性、耐熱性を備え、さらに、携帯性にも優れた防災頭巾を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、中央部分で二つ折りされた折り曲げ部を有する長尺のアラミド繊維体で形成され、該アラミド繊維体の長手方向両端部のうち、一端部を開閉自在な開放端とし、他端部を前記折り曲げ部から所定長縫着して閉鎖端とし、前記開放端を開いて形成される開口から頭部に装着可能な防災頭巾であって、該防災頭巾は、前記折り曲げ部を含み少なくとも頭頂部を保護する頭頂部保護部と、該頭頂部保護部から両側に延設され少なくとも側頭部を保護する側頭部保護部とを有し、前記頭頂部保護部には、低反発ウレタンで構成されたクッション部材が設けられ、前記開放端を閉じた状態で、三つ折りに折り畳み可能とし、該折り畳んだときの縦横のサイズがA4サイズと同程度であることを特徴としたものである。
【0010】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記アラミド繊維体は、表面がアルミニウムコートされていることを特徴としたものである。
【0011】
第3の技術手段は、第1又は第2の技術手段において、前記防災頭巾の後部下側中央付近であって、前記側頭部保護部同士を縫着する位置に、前記防災頭巾を頭部に固定するための紐部材が縫い付けられていることを特徴としたものである。
【0012】
第4の技術手段は、第1〜第3のいずれか1の技術手段において、前記側頭部保護部の少なくとも一方の内側には、ポケットが設けられていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、頭巾の表地及び裏地にアラミド繊維を使用すると共に、頭頂部に対応する部分には低反発ウレタンからなるクッション部材を設けているため、高い衝撃吸収性、防護性、耐熱性を実現できると共に、頭巾を折り畳んだ状態でA4サイズと同程度になるため、携帯性を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による防災頭巾を使用する際に斜めから見たときの状態の一例を示す図である。
【図2】図1の防災頭巾を正面から見たときの状態を示す図である。
【図3】図1の防災頭巾を背面から見たときの状態を示す図である。
【図4】本発明による防災頭巾の未使用時の状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の防災頭巾に係る好適な実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明による防災頭巾を使用する際に斜めから見たときの状態の一例を示す図である。図2は、図1の防災頭巾1を正面から見たときの状態を示す図である。図3は、図1の防災頭巾1を背面から見たときの状態を示す図である。図中、1は防災頭巾を示す。この防災頭巾1は、中央部分で二つ折りされた折り曲げ部2aを有する長尺のアラミド繊維体で形成され、このアラミド繊維体の長手方向両端部のうち、一端部を開閉自在な開放端2bとし、他端部を折り曲げ部2aから所定長縫着して閉鎖端2cとし、開放端2bを開いて形成される開口から頭部に装着されるように構成されている。
【0017】
そして、防災頭巾1は、折り曲げ部2aを含み少なくとも頭頂部を保護する頭頂部保護部2と、頭頂部保護部2から両側に延設され少なくとも側頭部を保護する側頭部保護部3(3a,3b)とを有する。頭頂部保護部2には、低反発ウレタンで構成されたクッション部材が設けられている。そして、防災頭巾1は、後述の図4で説明するように、開放端2bを閉じた状態で、三つ折りに折り畳み可能とし、折り畳んだときの縦横のサイズがA4サイズ(210mm×297mm)と同程度となるように構成されている。
【0018】
ここで、防災頭巾1の表地、裏地には、アラミド繊維が使用されている。アラミド繊維としては、例えば、帝人株式会社製のコーネックス(登録商標)が好適である。このコーネックス(登録商標)は、ISO15025燃焼性試験に合格し、消防服等にも使用されている素材であり、防護性に加え、耐熱性、防炎性、遮熱性に優れたものである。アラミド繊維は、芳香族ポリアミド系の繊維であり、芳香族ポリアミドには官能基がベンゼン核のパラの位置に結合しているパラ型と、メタの位置に結合しているメタ型とがある。上記のコーネックス(登録商標)は、メタ型であり、ポリエステル並みの繊維性能(強伸度、弾性率、比重、風合い、色など)をもち、空気中で溶融することなく、400℃ではじめて分解、炭化を開始する耐熱性、さらに、限界酸素指数(LOI値)29以上の防炎性、難燃性を合わせ持っている。
【0019】
このアラミド繊維を防災頭巾1に使用することで、火災に巻き込まれた場合でも避難者を安全に保護することができ、避難時に高所から落下したガラス破片や、飛散したガラス破片等の危険物が頭部に当たった場合でも、怪我を防ぐことができる。また、頭頂部保護部2には、低反発ウレタンで構成されるクッション部材が設けられているため、優れた衝撃吸収性を実現することができ、落下物による衝撃を効果的に吸収することができる。また、低反発ウレタンを使用しているため、防災頭巾1を使用しないときは、防災頭巾1を折り畳んだ状態で、例えば枕や座布団として使用することもできる。
【0020】
なお、防災頭巾1を構成するアラミド繊維体は、表面(表地)がアルミニウムコートされていてもよい。アルミニウムコートすることで、輻射熱の反射機能を付与することができるため、防炎性を一層高めることができ、火災等の高温の場所でも活動し易くすることができる。
【0021】
図1に示すように、この防災頭巾1は、中央部分で二つ折りされたアラミド繊維体の後部が縫着され、前部が開放されているため、防災頭巾1を頭部に装着すると、耳の部分に隙間ができるようになっている。このため避難時に外部からの音を聞き逃す心配がなく、より安全に避難することができる。
【0022】
また、頭頂部保護部2(図1の色付けされた部分)には、低反発ウレタンで構成されるクッション部材が設けられているが、このクッション部材は、アラミド繊維体の裏面側(すなわち、頭部側の面)に取り付けられている。そして、このクッション部材をカバーするためのカバー部材(図示せず)もアラミド繊維で形成されている。
【0023】
また、側頭部保護部3の少なくとも一方の内側に、ポケット4を設けるようにしてもよい。図1の例では、側頭部保護部3aの下方内側に1つのポケット4が設けられているが、ポケット4は複数個設けるようにしてもよく、ポケット4を設ける位置は図示の位置に限定されるものではない。また、側頭部保護部3b側にポケット4を設けるようにしてもよいし、側頭部保護部3a,3bの両方にポケット4を設けるようにしてもよい。このようにポケット4を側頭部保護部3の内側に設けることで、避難時に必要な小物類を収納することができるため、使い勝手を格段に向上させることができる。なお、ポケット4は必須ではないため、ポケット4のない形態であってもよいことは言うまでもない。
【0024】
また、図3に示すように、防災頭巾1の後部下側中央付近であって、側頭部保護部3a,3b同士を縫着する位置に、防災頭巾1を頭部に固定するための紐部材5が縫い付けられている。側頭部保護部3a,3bとは閉鎖端2cで縫着されており、紐部材5は、縫い付け位置5aで防災頭巾1に縫い付けられている。避難者は、防災頭巾1を頭部に被せた状態で、この紐部材5を結ぶことで、防災頭巾1を頭部に確実に固定することができる。
【0025】
また、防災頭巾1の後ろ側に、夜間時に効果的な標識用テープ(反射板)を取り付けるようにしてもよい。この標識用テープ(図示せず)としては、例えば、光が当たったとき明るく黄色に光る反射テープ、あるいは、暗闇でも青く光る夜光性の半導体発光テープ、あるいは、これらを併用したテープなどが好適である。
【0026】
なお、図3において、閉鎖端2cは、防災頭巾1の後部を所定長(本例では折り曲げ部2aから分離部6までの長さ)だけ縫着しており、側頭部保護部3a,3bの全長に渡って縫着していない。こうすることで、側頭部保護部3a,3bを分離部6で分離することができるため、防災頭巾1を頭部に装着したときに、肩部分にも側頭部保護部3a,3bがかかり、頭部から肩部分まで防災頭巾1で保護することができる。これにより、頭部のみならず、肩部分まで含めたより広い範囲を防災頭巾1で保護することができる。
【0027】
図4は、本発明による防災頭巾1の未使用時の状態の一例を示す図である。図4(A)は開口端2bを閉じて広げた(折り畳まれていない)状態を示し、図4(B)は図4(A)の防災頭巾1を折り畳んだ状態を示す。図4(A)のように開放端2bを閉じた状態から、三つ折りに折り畳む、具体的には、図示の折り位置で三つ折りに折り畳むことで、図4(B)の状態にすることができる。この際、防災頭巾1を折り畳んだときの縦横のサイズ(X,Y)はA4サイズ(210mm×297mm)と同程度となる。例えば、X=約180mm、Y=約300mmで、厚さは約30mmとなり、コンパクトに折り畳むことができる。なお、図4(A)の折り畳む前の状態における防災頭巾1の縦横のサイズは、例えば、約300mm×約550mmである。
【0028】
また、防災頭巾1の重量は、290g以下とすることが望ましい。これは、目安として、500mlのペットボトル1本分の重さ(内容物込み)が500g程度であることを考えれば、非常に軽量と言え、持ち運びが簡単である。
【0029】
上記のように、本発明の防災頭巾1はコンパクトに折り畳むことができ、また、軽量であるため、かばん等に入れて容易に持ち出すことができる。従って、通勤途中や外出時に災害にあった場合でも、避難者は防災頭巾1を使用して安全に避難することが可能となる。また、防災頭巾1は折り畳んだときのサイズがコンパクトであるため、オフィスの引き出しや机などにも場所をとらずに収納することもできる。
【0030】
このように本発明によれば、頭巾の表地及び裏地にアラミド繊維を使用すると共に、頭頂部に対応する部分には低反発ウレタンからなるクッション部材を設けているため、高い衝撃吸収性、防護性、耐熱性を実現できると共に、頭巾を折り畳んだ状態でA4サイズと同程度で軽量且つコンパクトであるため、携帯性を格段に向上させることができる。
また、頭巾の内側にポケットを設けたため、使い勝手を良くすることができる。さらに、頭巾を使用しないときは、折り畳んで、例えば枕や座布団として使用することができるため、利便性が向上する。
【符号の説明】
【0031】
1…防災頭巾、2…頭頂部保護部、2a…折り曲げ部、2b…開放端、2c…閉鎖端、3,3a,3b…側頭部保護部、4…ポケット、5…紐部材、5a…縫い付け位置、6…分離部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部分で二つ折りされた折り曲げ部を有する長尺のアラミド繊維体で形成され、該アラミド繊維体の長手方向両端部のうち、一端部を開閉自在な開放端とし、他端部を前記折り曲げ部から所定長縫着して閉鎖端とし、前記開放端を開いて形成される開口から頭部に装着可能な防災頭巾であって、
該防災頭巾は、前記折り曲げ部を含み少なくとも頭頂部を保護する頭頂部保護部と、該頭頂部保護部から両側に延設され少なくとも側頭部を保護する側頭部保護部とを有し、
前記頭頂部保護部には、低反発ウレタンで構成されたクッション部材が設けられ、
前記開放端を閉じた状態で、三つ折りに折り畳み可能とし、該折り畳んだときの縦横のサイズがA4サイズと同程度であることを特徴とする防災頭巾。
【請求項2】
前記アラミド繊維体は、表面がアルミニウムコートされていることを特徴とする請求項1に記載の防災頭巾。
【請求項3】
前記防災頭巾の後部下側中央付近であって、前記側頭部保護部同士を縫着する位置に、前記防災頭巾を頭部に固定するための紐部材が縫い付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防災頭巾。
【請求項4】
前記側頭部保護部の少なくとも一方の内側には、ポケットが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防災頭巾。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−22039(P2013−22039A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156307(P2011−156307)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(592004600)株式会社たまき (8)
【Fターム(参考)】